説明

流動性を有する味噌含有飼料

【課題】他の飼料との混合性に優れ、かつ防カビ作用及び食欲増進作用を有する味噌含有飼料を提供する。
【解決手段】本発明に係る味噌含有飼料は、せん断作用を有する撹拌混装置を用いて味噌を一定の割合で水不溶性の粉末飼料(不溶性飼料)と均一に混合、混練して得られる。得られた飼料は流動性が高く、他の飼料との混合性に優れ、かつ防カビ作用及び食欲増進作用を有するものであり、家畜の各種疾病の防止・予防にも効果的である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家畜用の飼料に関し、特に濃厚飼料に混合して使用する飼料に関する。
【背景技術】
【0002】
日本の気候は高温多湿であり畜産に関しては好ましい環境ではない。特に梅雨時には飼料及び飼料タンク内にカビや細菌が増殖し易く、これらの二次代謝産物として産出されるマイコトキシン等の毒素により、子牛の発育低下や下痢など家畜に甚大な損害をもたらしている(非特許文献1)。高温多湿の影響は肉牛、乳牛、豚等の家畜の健康状態にも及び、食欲の低下が体重や乳量の低下をもたらし、さらには各種の疾病を引き起こす原因にもなっている。
【0003】
これらに対処するため、防カビに関してはピロリン酸、ピロリン酸ナトリウム及びピロリン酸カルシウムの飼料への添加が認められている。また抗菌に関してはアンプロリウム・エトパベ−ト等の合成抗菌剤、アビラマイシン等の抗生物質の添加が認められている。これに関連する技術として、カキガラを主体とする飼料添加物の防カビ剤の製造方法が開示されている(特許文献1)。
【0004】
一方、食欲の増進に関しては、甘草、ステビア抽出物、クコ葉、ビワ葉、ニンジン等の生薬とマンノース及び/又はマンノオリゴ糖を有効性成分とする飼料の嗜好性改善剤が提案されている(特許文献2)。また放牧牛への嗜好性携帯固形飼料が検討され、少量の繋ぎに小麦粉を用い、米糠と味噌の1:1を混合して自然乾燥した固形物の嗜好性が良好であることが報告されている(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平2−15188号公報
【特許文献2】特開2007−202526号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】小形芳美、サイレージのマイコトキシン汚染が黒毛和種子牛の発育と疾病に与える影響、日獣会誌、2007年、60号、p.785
【非特許文献2】恵茂樹、放牧牛の携帯用補助飼料の開発、JGLOBAL:JSTPlus、新たに普及に移しうる試験研究等の成果、平成20年(CD-ROM)、ROMBUNNO.20、p.45
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、防カビ剤や抗菌剤は家畜及びそれを食するヒトにとっても安全性が保証されたものではなく、これらの連続的な摂取は食品安全性においてあまり好ましいものではない。またカキガラを主体とする飼料添加物は、現在ではピロリン酸と同様に十分な防カビ効果は得られないことが分かっている。
【0008】
一方、特許文献2で示された甘草、ステビア抽出物等の嗜好改善剤では十分な食欲増進効果は得られず、さらには濃厚飼料に配合する際、または単独で給与する際に手間と時間を要し、実際的ではないことが分かった。
【0009】
米糠と味噌混合固形物の場合は嗜好性が改善されるが、味噌は比重が大きく、ペースト状であるため、そのままの性状では他の成分との混合性が悪く、撹拌しても均一に混合することは容易ではないことから、多くの家畜を飼育するには作業性の点から実際的ではない。
【0010】
本発明は、上記観点からなされたものであり、他の飼料との混合性に優れ、かつ防カビ作用及び食欲増進作用を有する味噌含有飼料を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る味噌含有飼料は、味噌と不溶性飼料を含む原料を、せん断力を加えながら混合及び混練を行うことにより、粉体もしくは顆粒体または粉体及び顆粒体の混合体としたことを特徴とする。
【0012】
味噌としては、米味噌、麦味噌、豆味噌またこれらの混合した調合味噌を用いることができる。また不溶性飼料としては、フスマ、糠、ビート粕、コーンコブ破砕物等の植物乾燥飼料、トウモロコシ、オーツヘイ、モミガラ、セルロース等の種々の破砕物もしくは粉末を用いることができる。
【0013】
味噌と不溶性飼料の混合においては、せん弾力の付加機能を有する撹拌混合機を用いてペースト状の味噌を延ばし、不溶性飼料と混合・混練させながら飼料中に均一に分散させる。味噌と不溶性飼料の比率は濃厚飼料若しくはTMR飼料として他の飼料と容易に混合できる流動性が保たれるように設定する。ただし味噌の割合が過少であれば十分な嗜好性と防カビ効果が得られない。
【0014】
飼料中の味噌の含有率が5wt%以上であれば、十分な流動性のある飼料が得られる。味噌の含有率が70wt%以上になると飼料の流動性が低下し、飼料給与の際の作業性が悪化する。濃厚飼料若しくはTMR飼料としてこれらの味噌飼料を配合する場合、均一な濃厚飼料若しくはTMR飼料を得ることが容易ではない。味噌の含有量が5wt%以上70wt%以下であれば、得られた飼料は流動性が維持されるため、容易に濃厚飼料等に配合することが可能となる。
【0015】
味噌とフスマ、糠、ビート粕、コーンコブ等の植物乾燥飼料、トウモロコシ、オーツヘイ、モミガラ、セルロース等の種々の不溶性飼料の混合比が1:1の場合、嗜好性の改善の観点から濃厚飼料に5〜50wt%の割合で配合することが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の飼料は、原料に味噌を含むことにより防カビ作用及び食欲増進作用を効果あらしめたものであり、防カビ剤や抗菌剤を使用しないため、食品安全性に優れる。また飼料の性状が粉体もしくは顆粒体または粉体及び顆粒体の混合体であるため、流動性が高く、他の飼料との均一混合性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る味噌飼料を製造する方法について説明する。本発明の味噌飼料は、味噌及び不溶性飼料を均一に混合し、流動性のある顆粒状の味噌飼料粉末体を得る。またこれを利用してエクストルダー等の装置によりさらに大きい粒状体を得る。不溶性飼料の素材としては、植物飼料乾燥物(トウモロコシ全草、ライムギ、クローバー、アルファルファー、イナワラ、モミガラ、オーツヘイ)、フスマ、糠、デンプン粕乾燥物、モミガラ等の乾燥物で粉末化可能な種々のものを用いることができる。
【0018】
ここで、味噌と不溶性飼料との比は、例えば質量比で、味噌:不溶性飼料=4〜8:6〜2程度にすることができる。これは不溶性飼料の特性によって異なる。例えば、味噌:糠=4:6、味噌:フスマ=5:5、味噌:デンプン粕=7:3、味噌:オーツヘイ=6:4、味噌:デンプン粕=6:4にすると流動性ある良好な味噌飼料を得ることができる。
【0019】
これらの味噌飼料を単独で家畜に給与しても良いが、濃厚飼料及びTMR飼料として混合することもできる。味噌飼料の含有率が5wt%以上70wt%以下の場合であれば、流動性が維持され、給与や混合の際の取り扱いが容易である。
【0020】
味噌とフスマ、糠、ビート粕、コーンコブ等の植物乾燥飼料、トウモロコシ、コウリャン、セルロース等の種々の不溶性飼料の混合が1:1の場合、嗜好性の改善の観点から濃厚飼料に対して5〜50wt%の配合比が望ましい。
【実施例】
【0021】
(味噌飼料の流動性試験)
味噌飼料について、味噌と不溶性飼料の配合比率を変えて流動性試験を行った結果について説明する。不溶性飼料と味噌は多目的ミキサーHSH1600型の混合撹拌機(協全商事株式会社製)に入れ、8rpm、室温2時間の条件にて均一に混合し、10mmの篩に通し、整粒し、味噌飼料を製造した。
【0022】
不溶性飼料としてはフスマ、糠、オーツヘイ破砕物、モミガラ粉末、イナワラ破砕物、乾燥デンプン粕、乾燥おから及びセルロース末の8品目を使用し、それぞれに20〜80wt%の間で10%刻みで配合比を変えた味噌を添加した。味噌飼料の流動性は下記の要領で判定した。
【0023】
流動性良好:撹拌混合後、混合飼料の一定量(約100g)をガラス容器(1L)に入れ、回転させる時、混合物が回転に応じてスムーズに流動する。さらにこの約200gを手で固め、1mの高さから平らなコンクリートに自然落下させる時に顆粒状に分散する。
【0024】
流動性不良:上記装置で混合物を回転させる時、塊が認められ、回転に応じてスムーズに流動しない。また、上記方法で落下させても混合物の塊が認められる。
各味噌飼料の流動性の試験結果を表1に示した。
【0025】
【表1】

【0026】
表1より明らかなように、味噌の配合比が高くなるに伴い流動性が低下する傾向にあった。味噌80wt%以上では不溶性飼料の種類に関わらず流動性は不良であった。デンプン粕、乾燥オカラ、セルロース末は味噌70wt%までは良好な流動性を示した。この流動性試験から、不溶性飼料の特性に応じて味噌の含有率を調整して配合すれば、味噌飼料は不溶性飼料の種類に関わらず良好な流動性を示すことが明らかになった。
【0027】
またこの試験において、一般的に粗飼料に用いられる繊維性の高い草食系のものは乾燥物を破砕することで味噌の流動性が改善できることを見出した。芋、豆類の粕は乾燥することで味噌の含有率が高い場合においても均一に混合することが可能であり、味噌飼料の流動性を高めることができることを見出した。
【0028】
(味噌飼料の防カビ性試験)
次に、味噌飼料の防カビ性試験の結果について説明する。不溶性飼料のフスマ、糠、オーツヘイ破砕物、モミガラ粉末、イナワラ破砕物、乾燥デンプン粕、乾燥おから及びセルロース末を各々単独に全体の50wt%を撹拌混合機に採り、次に味噌を全体の50wt%添加する。これらを均一になるまでせん断力のある混合撹拌機にて均一に混合する。これをシャーレに採り、30℃、90%相対湿度の環境下で10日間おき、味噌飼料の防カビ効果を判定した。対照試験区として不溶性飼料のみも同様に試験を行った。この試験結果を表2に示す。さらにフスマに関しては味噌を0〜70wt%配合し、味噌濃度の効果についても調べた。この試験結果を表3に示す。
【0029】
【表2】

【0030】
【表3】

【0031】
表2に各不溶性飼料との味噌を混合した味噌飼料の防カビ効果を示した。評価は次の通りである。カビ発生が認められない:−、カビ発生が僅かに認められる:+、カビ発生が認められる:2+、シャーレ全面にカビが認められる:3+、シャーレ全面に顕著に認められる:4+。
いずれも味噌50wt%含有すると顕著な防カビ効果を示した。表3ではフスマにおける味噌飼料の防カビ効果を示した。味噌5wt%配合から効果が認められ、20wt%以上の配合ではその効果が顕著であった。
【0032】
(味噌飼料の嗜好性試験)
次に、味噌飼料に係る牛の嗜好試験を行った結果について説明する。各味噌飼料(味噌と不溶性飼料を均一に混合したもの)は不溶性飼料を撹拌混合機にて均一に約2時間、室温で混合し、各味噌含有の試験味噌飼料とした。得られた各味噌飼料を10頭の黒毛和種の牛にそれぞれ並べて約500g給与した。当該味噌飼料を好んで摂食した牛の頭数を計測して表4に示した。なお、対照例として味噌を含まないフスマを給与した。さらに、フスマ50wt%含有する味噌飼料を濃厚飼料「そお肥育飼料さくら」(南日本飼料株式会社製)に5〜60wt%配合し、同様に嗜好性試験を行った。この試験結果を表5に示す。
【0033】
【表4】

【0034】
【表5】

【0035】
フスマ配合の味噌飼料においては5wt%味噌以上にいずれも良好な嗜好性が認められた。また、味噌飼料の濃厚飼料への配合においても5wt%以上に明らかにその効果が認められた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
味噌と不溶性飼料を含む原料を、せん断力を加えながら混合及び混練を行うことにより、粉体もしくは顆粒体または粉体及び顆粒体の混合体としたことを特徴とする味噌含有飼料。
【請求項2】
不溶性飼料が、フスマ、糠、デンプン粕、乾燥おから、トウモロコシ末、モミガラ粉末、セルロース末、イナワラ破砕物、オーツヘイ破砕物の何れかであることを特徴とする請求項1に記載の味噌含有飼料。
【請求項3】
前記味噌が5〜70wt%含有されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の味噌含有飼料。
【請求項4】
前記味噌含有飼料を5〜50wt%配合することで防カビ作用を有する家畜用飼料。

【公開番号】特開2012−165683(P2012−165683A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29049(P2011−29049)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(502128442)株式会社鎌田工業 (8)
【出願人】(390027454)協全商事株式会社 (13)
【Fターム(参考)】