説明

流動棚

【課題】簡単な構成で供給棚から切替棚に物品を1個ずつ供給できる流動棚を提供すること。
【解決手段】傾斜角度によって物品を受入方向に搬送する受入姿勢と排出方向に搬送する排出姿勢とに切替可能な切替棚20と、切替棚20に向けて下向きに傾斜する供給棚40と、切替棚20から排出方向に向けて下向きに傾斜する排出棚60とを有する流動棚1であって、供給棚40において物品が搬送されない停止状態と物品が搬送される解除状態とに制御することができる第1の係止片110と第2の係止片120とからなるストッパ機構100を有し、第1の係止片110は、切替棚20が受入姿勢のときに解除状態、排出姿勢のときに停止状態であり、第2の係止片120は、切替棚20が受入姿勢のときに停止状態、排出姿勢のときに解除状態であること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を搬送するための流動棚に関し、特に物品の搬送方向を変化させるための切替棚を有する流動棚に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流動棚として、傾斜の向きが切替可能で物品の搬送方向を受入方向と排出方向とに替えることができる切替棚と、切替棚に向けて下向きに傾斜する供給棚と、切替棚から排出側に向けて下向きに傾斜する排出棚とを有し、供給棚に物品の搬送を制御するためのストッパ機構が設けられているものがある。このような流動棚は、例えば、工場における部品供給に利用される。これは、ケースに入れられた製品組立用の部品が供給棚から切替棚に搬送され、該切替棚においてケースが一旦停止したときに部品供給がなされ、その後、排出棚にケースのみが搬送されるものである。
【0003】
例えば特許文献1に記載の流動棚では、供給棚に物品の流動を制御するためのストッパ機構が設けられており、該ストッパ機構は物品の流動によって摺動するセンサ杆の動作に連動している。このセンサ杆は、切替棚の上方に設けられた摺動杆に摺動可能に取付されており、物品が供給棚から切替棚に受け入れられると、物品によって押圧されるものである。物品がセンサ杆を押圧するとストッパ機構が動作して物品が切替棚に搬送されないようになる。
【0004】
また、特許文献2に記載の流動棚では、供給棚に物品の流動を制御するための第1の係止片及び第2の係止片からなるストッパ機構が設けられており、該ストッパ機構は回動自在に軸支された連結杆からなる。該連結杆の回動は連結杆に設けられた連携索に連動している。この連結索は一端が連結杆に当接し、他端が排出棚下端の物品止めに設けられており、物品が切替棚から搬出棚に搬送されて物品止めに設けられた連結索を押圧するようになっている。物品が連結索を押圧すると、連結杆が回動し物品が切替棚に搬送されないようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−62888号公報(請求項1,[0014]〜[0019])
【特許文献2】特開2005−298131号公報(請求項1,[0009]〜[0011])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示される発明は、物品がセンサ杆を押圧することによってストッパ機構が動作するため、切替棚が受入姿勢である場合において物品がセンサ杆を押圧するまではストッパ機構が動作しない。そのため切替棚における物品の流下が遅い場合には、物品がセンサ杆を押圧するより早く次の物品がストッパ機構を通過してしまう虞がある。
【0007】
また、特許文献2に開示される発明は、物品が排出棚下端の連結索を押圧することによってストッパ機構が動作するため、切替棚が排出姿勢である場合において排出棚下端の物品を移動させてしまうと次の物品が供給棚を流下し切替棚に落下してしまう虞がある。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、切替棚に物品を1個ずつ供給できる流動棚を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明による流動棚は、傾斜角度によって物品を受入方向に搬送する受入姿勢と排出方向に搬送する排出姿勢とに切替可能な切替棚と、該切替棚に向けて下向きに傾斜する供給棚と、前記切替棚から排出方向に向けて下向きに傾斜する排出棚とを有する流動棚であって、前記供給棚において物品が搬送されない停止状態と物品が搬送される解除状態とに制御することができる第1の係止部と第2の係止部とからなるストッパ機構を有し、前記第1の係止部は、前記切替棚が前記受入姿勢のときに前記解除状態であり、前記切替棚が前記排出姿勢のときに前記停止状態であり、前記第2の係止部は、前記第1の係止部より上流側に位置し、前記切替棚が前記受入姿勢のときに前記停止状態であり、前記切替棚が前記排出姿勢のときに前記解除状態であることを特徴とする。
【0010】
物品の搬送方向において、受入方向とは供給棚から切替棚に向かう方向であり、排出方向とは切替棚から排出棚に向かう方向である。ストッパの操作機構には物品の動作・状態(物品がどこにあるか等)が関係しておらず、切替棚の傾斜角度によって停止状態と解除状態とが制御される。そのため、切替棚の状態(傾斜角度)と係止部の状態(停止状態、解除状態)とは一定の対応関係を有することになる。
【0011】
切替棚が受入姿勢の場合には、第1の係止部が解除状態であり第2の係止部が停止状態であるから、それまで第1の係止部によって係止されていた物品は切替棚に流下するが第2の係止部より上流にある物品は流下しない。そして、切替棚が排出姿勢の場合には、第1の係止部が停止状態であり第2の係止部が解除状態であるから、供給棚の物品が切替棚側に流下してしまうことがない。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡単な構成で供給棚から切替棚に物品を1個ずつ供給できる流動棚を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】流動棚の構成例を示す正面図である。
【図2】流動棚の構成例を示す平面図である。
【図3】流動棚の構成例を示す右側面図である。
【図4】流動棚のストッパ部材の構成例を示す右側面図である。
【図5】流動棚による物品の搬送状態を示す模式図である。
【図6】流動棚による物品の搬送状態を示す模式図である。
【図7】流動棚による物品の搬送状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。便宜上、同一の作用効果を奏する部分には同一の符号を付け、その説明を省略する。
【0015】
図1は流動棚の正面図、図2は同平面図、図3は同右側面図をそれぞれ示す。流動棚1は傾斜の向きが切替可能で物品10(例えば組立部品等が搬送用のケースに入れられたもの)の搬送方向を受入方向と排出方向とに替えることができる切替棚20と、切替棚20に向けて下向きに傾斜する供給棚40と、切替棚20から排出側に向けて下向きに傾斜する排出棚60とが、例えばパイプ部材からなる支柱3(3a〜3d)と該支柱間に連結される梁5(5a〜5f)とからなる支持枠8によって支持されて構成されている。
【0016】
切替棚20は、パイプ部材を矩形に連結してなる底部21と、パイプ部材からなり物品10の受入方向において物品10を支持するための支持部23と、物品10が搬送方向に対して横方向にずれないために設けられる横ガイド部25とからなる。該横ガイド部25は2本のパイプ部材で構成されたL字状を呈し、一端が支持部23に他端が底部21に連結されている。底部21には搬送方向に沿って中央と両側とにローラ部27(27a,27b,27c)が設けられ、切替棚20が傾斜した際に物品10が搬送されやすくなっている。また支持部23には、物品10を受け入れる際に物品10の衝撃を緩和するための緩衝材23aが設けられる。これは、例えば支持部23を構成するパイプ部材にスポンジカバー等を被せることによってなされる。横ガイド部25は、受入方向(支持部側)に向かって徐々に狭くなるように設けられており、反対に供給棚40側はローラ部27の幅より広くなっている。このため、物品10を受け入れる際に物品10がぶれるようでも横ガイド部25の内側に搬送されやすくなっている。
【0017】
底部21の搬送方向における略中間位置には、搬送方向に直交する向きに回動軸29が設けられ、該回動軸29は支持枠8の梁5aに対して回動可能に支持されている。切替棚20の回動範囲は、支持枠8に横設された規制部材7a,7bによって規制されている。排出方向側が上向きに回転する場合は、排出方向側の端部が供給棚40の下流側端部の高さと略同じ高さになったときに回転が規制部材7aによって規制される。この状態(受入姿勢)のとき供給棚40から切替棚20に物品10が搬送される。また、排出方向側が下向きに回転する場合は、排出方向側の端部が排出棚60の上流側端部の高さと略同じ高さになったときに回転が規制部材7bによって規制される。この状態(排出姿勢)のとき切替棚20から排出棚60に物品10が搬送される。
【0018】
切替棚20の底部21には、回動軸29よりも受入方向側の位置に下向きに突出させた2本の作動杆31,31が左右に固設されている。該作動杆31,31の端部にはそれぞれ軸部材32の端部が回動自在に支持され、該軸部材32の中間位置にはエアシリンダ35のロッド34の先端部分が回動自在に支持されている。なお、エアシリンダ35の下端部は支持枠に回動自在に支持されている。エアシリンダ35は作業者が例えばフットスイッチ36を作動操作することによってロッド34が伸張し、解除操作することによってロッド34が収縮する。切替棚20はエアシリンダ35のロッド34が収縮した状態で受入姿勢をとっているが、エアシリンダ35のロッド34が伸張すると、ロッド34によって軸部材32及び作動杆31が押し上げられることにより排出姿勢へと切り替わる。このとき軸部材32は回動軸29を中心として円弧状の軌道を描くため、これに伴ってエアシリンダ35が下端部を支点に回動する。
【0019】
供給棚40は、切替棚20側を下流として搬送方向に沿って中央と両端に設けられるローラ部47(47a,47b,47c)によって構成されている。両端のローラ部47a,47cには物品10が搬送中にぶれないためのガイド48a、48cが設けられている。この供給棚40は下流側に例えば約5度の傾斜角度となるように支持枠8に固設されている。
【0020】
排出棚60は、切替棚20側を上流として搬送方向に沿って中央と両端に設けられるローラ部67(67a,67b,67c)によって構成されている。両端のローラ部67a,67cには物品10が搬送中にぶれないためのガイド68a,68cが設けられている。この排出棚60は下流側に例えば約10度の傾斜角度となるように支持枠8に固設されている。このように、供給棚40の傾斜角度より排出棚60の傾斜角度のほうが大きくなるように設けられているため、物品10の確実な供給動作と、迅速な排出動作を行うことができる。
【0021】
図3、図4に示すように、供給棚40には物品10の流下(搬送)を規制するためのストッパ部材100が設けられている。ストッパ部材100には、供給棚40の下流側で物品10の流下を規制する第1の係止片110と第1の係止片110より上流側で物品10の流下を規制する第2の係止片120とが設けられる。第1の係止片110及び第2の係止片120は中央のローラ部47bの左右両側に設けられている。係止片(110,120)がローラ部47より上の位置に突出している場合には物品10が係止され搬送が規制(停止)される。反対に係止片(110,120)がローラ部47より下の位置になっている場合には物品10と係止片(110,120)が接触することがなく、物品10の搬送が規制されることがない。以下、係止片(110,120)がローラ部47の上に突出している状態を「停止状態」、係止部(110,120)がローラ部47より下にある状態を「解除状態」とする。
【0022】
第1の係止片110と第2の係止片120とはパイプ状の連結部115によって連結されている。連結部115の略中央には回動軸130が固設されており、該回動軸130は支持枠8の梁5gに対して回動自在に支持されている。実施例においては、連結部115に対して第1の係止片110は略直角に、第2の係止片120は鈍角に設けられており、第2の係止片120が第1の係止片110より長くなっている。これによって、第1の係止片110の先端部110aは第2の係止片120の先端部120aより回動軸130に近くなっている。また、第1の係止片110の先端部は第2の係止片120の先端部より、連結部115の中心軸115aから離れた位置となっている(図4参照)。
【0023】
ストッパ部材100は切替棚20の動作に連動して動作する。以下、その操作機構について詳述する。切替棚20の底部21に設けられた回動軸29には連結杆39が固定されており、該連結杆39は回動軸29から下方に向かって延在している。これによって、連結杆39は切替棚20の回動に伴って回動軸29を支点に同じ角度だけ回動する。
【0024】
また、ストッパ部材100を構成している連結部115に設けられた回動軸130には連結杆139が固定されており、該連結杆139は回動軸130から下方に向かって連結部115に対して所定の角度θをもって延在している。これによって、連結杆139は連結部115(ストッパ部材100)の回動にしたがって回動軸130を支点に同じ角度だけ回動する。
【0025】
そして、切替棚20に設けられた連結杆39の下端部と連結部115に設けられた連結杆139の下端部とはそれぞれ連動杆50の端部と遊着されている。このような構成によれば、切替棚20が受入姿勢から排出姿勢へと回動する場合には、この切替棚20の回動にしたがって連結杆39が回動し、該回動により連結杆39の下端部が円弧を描きながら連動杆50を張引する。これにより、連動杆50が連結杆139を回動させるため回動軸130が回動して連結部115が回動する。連結部115が回動することにより、連結部115に設けられた第1の係止片110の先端部110aがロール部47より上に突出し停止状態となり、それまで停止状態であった第2の係止片120がロール部47より下になり解除状態となる。なお、第1の係止片110の先端部110a及び第2の係止片120の先端部120aと回動軸130との位置関係は、第1の係止片110が停止状態となってから第2の係止片120が解除状態となるように調整されている。
【0026】
また、切替棚20が排出姿勢から受入姿勢へと回動する場合には、この切替棚20の回動にしたがって連結杆39が回動し、該回動により連結杆39の下端部が円弧を描きながら連動杆50を押圧する。これにより、連動杆50が連結杆139を回動させるため回動軸130が回動して連結部115が回動する。連結部115が回動することにより、連結部115に設けられた第1の係止片110の先端部110aがロール部47より下になり解除状態となり、それまで解除状態であった第2の係止片120の先端部120aがロール部47より上に突出し停止状態となる。なお、第1の係止片110の先端部110a及び第2の係止片120の先端部120aと回動軸130との位置関係は、第2の係止片120が停止状態となってから第1の係止片110が解除状態となるように調整されている。
【0027】
初期状態として、図5に示されるように、切替棚20が受入姿勢をとっており切替棚20に物品10aが載置され、供給棚40において停止状態である第2の係止片120によって2個の物品10b、10cが係止されている場合を例に、物品の搬送機構について説明する。
【0028】
まず、作業者によってフットスイッチ36が作動操作されることによってエアシリンダ35のロッド34が伸張し、切替棚20が受入姿勢から排出姿勢へと回動する。これによって切替棚20に載置されていた物品10aは排出棚60へと搬送され排出棚60の下流に設けられた支持部63に支持される。そして、切替棚20の回動に連動して連結部115が回動し第2の係止片120が停止状態から解除状態に移行する。第2の係止片120の解除に伴って2個の物品10b、10cは供給棚40を搬送されるが、第2の係止片120が解除されたときには既に第1の係止片110が停止状態となっているため、物品10b、10cは第1の係止片110によって係止され搬送が停止される(図6参照)。この状態において、第2の係止片120は物品10bの下方に位置している。
【0029】
次いで、作業者によってフットスイッチ36が解除操作されることによってエアシリンダ35のロッド34が収縮し、切替棚20が排出姿勢から受入姿勢へと回動する。この切替棚20の回動に連動して連結部115が回動し第2の係止片120が解除状態から停止状態に移行する。このとき第2の係止片120によって物品10bの底部が押し上げられ物品10bが搬送方向に傾く。そして、第1の係止片110が停止状態から解除状態に移行するため物品10bが供給棚40から切替棚20に搬送される。第1の係止片110が解除されたときには既に第2の係止片120が停止状態に移行しているため物品10cは第2の係止片120によって係止される(図7参照)。本実施例では切替棚20がどのような姿勢(傾斜角度)であっても、第1の係止片110か第2の係止片120の少なくとも一方が停止状態となっており、両方が同時に解除状態をとることがない。
【0030】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
例えば、支持枠、切替棚、ストッパ部材等にパイプ部材を用いる例を示したが、これに限られず、同様の作用効果を奏するものであればどのような部材を用いても構わない。切替棚の動作をエアシリンダによって行う例を示したが、これに限られず、切替棚を回動することができれば他の駆動装置であっても良い。
【符号の説明】
【0031】
1…流動棚、3…支柱、5…梁、7a,7b…規制部材、8…支持枠、10(10a〜10c)…物品、20…切替棚、21…底部、23…支持部、25…横ガイド部、27…ローラ部、29…回動軸、31…作動杆、32…軸部材、34…ロッド、35…エアシリンダ、36…フットスイッチ、39…連結杆、40…供給棚、47…ローラ部、50…連動杆、60…排出棚、67…ローラ部、100…ストッパ部材、110…第1の係止片、110a…先端部、115…連結部、120…第2の係止片、120a…先端部、130…回動軸、139…連結杆

【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜角度によって物品を受入方向に搬送する受入姿勢と排出方向に搬送する排出姿勢とに切替可能な切替棚と、該切替棚に向けて下向きに傾斜する供給棚と、前記切替棚から排出方向に向けて下向きに傾斜する排出棚とを有する流動棚であって、
前記供給棚において物品が搬送されない停止状態と物品が搬送される解除状態とに制御することができる第1の係止部と第2の係止部とからなるストッパ機構を有し、
前記第1の係止部は、前記切替棚が前記受入姿勢のときに前記解除状態であり、前記切替棚が前記排出姿勢のときに前記停止状態であり、
前記第2の係止部は、前記第1の係止部より上流側に位置し、前記切替棚が前記受入姿勢のときに前記停止状態であり、前記切替棚が前記排出姿勢のときに前記解除状態であることを特徴とする流動棚。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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