説明

流動物の通電加熱装置

【課題】通電加熱で生じる流動物の温度ムラを緩和・解消するとともに、通電加熱部への付着を抑制し、焦げ付きの発生を抑えて連続運転時間を大幅に延長することができる流動物の通電加熱装置を提供すること。
【解決手段】流動物を流路1内で連続的に流動させながらジュール加熱する流動物の通電加熱装置において、流路1を、直線状に形成した非導電性の直管部材2と、直管部材2の両端部に配設した導電性を有する曲管部材3とで構成し、曲管部材3にジュール加熱用の電源4を接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動物の通電加熱装置に関し、特に、通電加熱で生じる流動物の温度ムラを緩和・解消するとともに、通電加熱部への付着を抑制し、焦げ付きの発生を抑えて連続運転時間を大幅に延長することができる流動物の通電加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体食品材料や固液混合食品材料、高粘性流体状食品材料等、チューブ状管路内を移送可能な程度の流動性のある食品材料を、調理ないし殺菌処理するために、該流動性食品材料をサニタリーポンプ等により管路内を連続的に移送させながら、該管路内でジュール加熱する流動物の通電加熱装置が知られている。
【0003】
このような流動物の通電加熱装置として、例えば、特許文献1に記載の装置がある。
この通電加熱装置は、管路を矩形状断面を有する角筒状に形成し、該角筒状断面の管路の対向する2面に長尺の平面状の電極板を平行に配設し、加熱の均一化や洗浄性の向上を図っている。
【0004】
また、特許文献2には、リング状の電極を、円筒状の管路に長手方向に間隔をあけて配設した通電加熱装置が開示されている。
【特許文献1】実開平4−103497号公報
【特許文献2】特開平7−250760号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の平面状の電極板を用いた通電加熱装置では、管路の壁面付近で流動物の流速が遅くなることから、流動物の滞留により流れが不均一になり温度ムラ(過加熱)が生じるという問題があった。
【0006】
また、上記のリング状の電極を用いた通電加熱装置では、図1(b)に示すように、管路11の壁面付近の電流密度が高くなることから、管路11の半径方向の中心部と壁面付近とで電流密度が不均一になり温度ムラが生じ、また、温度ムラが電極付近の過電流によるスパークの原因ともなり、特許文献2において採用されているような、流動物を攪拌する攪拌手段が必要になる等、装置の構造が複雑になるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記従来の流動物の通電加熱装置が有する問題点に鑑み、通電加熱で生じる流動物の温度ムラを緩和・解消するとともに、通電加熱部への付着を抑制し、焦げ付きの発生を抑えて連続運転時間を大幅に延長することができる流動物の通電加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の流動物の通電加熱装置は、流動物を流路内で連続的に流動させながらジュール加熱する流動物の通電加熱装置において、前記流路を、直線状に形成した非導電性の直管部材と、該直管部材の両端部に配設した導電性を有する曲管部材とで構成し、前記曲管部材にジュール加熱用の電源を接続したことを特徴とする。
【0009】
この場合において、曲管部材を挟んで複数の直管部材を連続して配設するとともに、下流側の直管部材を上流側の直管部材より長く形成することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の流動物の通電加熱装置によれば、流動物を流路内で連続的に流動させながらジュール加熱する流動物の通電加熱装置において、前記流路を、直線状に形成した非導電性の直管部材と、該直管部材の両端部に配設した導電性を有する曲管部材とで構成し、前記曲管部材にジュール加熱用の電源を接続することから、曲管部材により通電域を広くし、直管部材の流路断面全体にほぼ均一に通電することができ、これにより、電流密度の不均一さを緩和し流動物の温度ムラを減少させるとともに、過電流によるスパークの発生を抑制し、焦げ付きの発生を抑えて連続運転時間を大幅に延長することができる。
また、曲管部材を配設することにより、この部分を流れる流動物の混合を促進し、温度ムラを緩和・解消するとともに、直管部材を配置する際の自由度を高くして、通電加熱装置をコンパクトにすることが可能となる。
さらに、曲管部材にジュール加熱用の電源を接続することから、特に電極部材を設ける必要がなく構造を簡略化するとともに、流動物の滞留をなくし、かつ洗浄性を向上させることができる。
【0011】
また、曲管部材を挟んで複数の直管部材を連続して配設する場合、下流側の直管部材では上流側より流動物の温度が高くなって導電率が高くなるが、下流側の直管部材を上流側の直管部材より長く形成することにより、各直管部材に流れる電流値を均等にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の流動物の通電加熱装置の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0013】
図1〜図2に、本発明の流動物の通電加熱装置の一実施例を示す。
この流動物の通電加熱装置は、流動物を流路1内で連続的に流動させながらジュール加熱するもので、前記流路1を、直線状に形成した非導電性の直管部材2と、該直管部材2の両端部に配設した導電性を有する曲管部材3とで構成し、前記曲管部材3にジュール加熱用の電源4を接続している。
【0014】
直管部材2は、直線状の配管からなり、絶縁素材や絶縁素材のコーティング、ライニングによって曲管部材3から絶縁されている。
直管部材2は、曲管部材3を挟んで複数の直管部材2が連続するように配設されており、図2(a)に示す実施例では、下流側の直管部材2bが上流側の直管部材2aより長くなるように、また、さらに下流側の直管部材2cが上流側の直管部材2bより長くなるように、順次長さを違えて形成されている。
曲管部材3を挟んで複数の直管部材2を連続して配設する場合、下流側の直管部材2b、2cでは、上流側より流動物の温度が順次高くなって導電率が高くなるが、このように下流側の直管部材2b、2cを上流側の直管部材2aより順次長く形成することにより、各直管部材2a〜2cに流れる電流値を均等にすることができる。
【0015】
また、直管部材2は、曲管部材3で接続することにより、図2(b)に示すように、螺旋状に組み立てることができ、通電加熱装置をコンパクトにすることができる。
なお、直管部材2には、図2(a)に示すように、流動物を貯留するホッパ5と、該ホッパ5から一定量の流動物を連続して直管部材2に送出する送出ポンプ6とが設置されるとともに、流量計7、圧力計8及び温度計9が付設されている。
【0016】
曲管部材3は、図1(a)に示すように、直管部材2の円弧状に湾曲した導電性を有する金属管からなり、通電域を直管部材2の流路断面全体とすることにより、図1(b)に示す従来のリング状の電極に比べ、直管部材全体にほぼ均一に通電できるようにしている。
本実施例では、曲管部材3は90度のエルボからなるが、45度や180度等の他の角度の曲管部材3でも実施することができる。
また、曲管部材3の断面形状は、直管部材2との関係で、円形状断面、矩形状断面等の任意の断面形状とすることができる。
曲管部材3は、ジュール加熱用の電源4に接続されており、各曲管部材3に通電することにより、直管部材2を流れる流動物を連続的にジュール加熱する。
【0017】
図1(a)に示す本実施例の通電加熱装置と、図1(b)に示す従来の通電加熱装置とを用い、下記の条件で連続通電加熱試験を行った。
いずれの通電加熱装置も、4本の曲管部材3を挟んで3本の直管部材2a、2b、2cが連続するように配設されており、下流側の直管部材2b又は2cが上流側の直管部材2a又は2bより長くなるように、順次長さを違えて形成されている(図2(a)参照)。
いずれの通電加熱装置も、直管部材2は内径が21.2mmで、直管部材2a、2b、2cの長さは、上流側から順に、直管部材2aが100mm、直管部材2bが150mm、直管部材2cが200mmとなっている。
【0018】
(実験例1)
・処理物:CMC溶液
・処理量:50L/h
・電圧:320V
・粘度:800,000mPa・s(20℃)
(本実施例)
・18.4℃→28.0±0.4℃
(従来例)
・17.5℃→26.8±1.1℃
【0019】
その結果を、図3に示す。
本実施例の通電加熱装置は、直管部材の中心部で流動物の温度が安定していたが、従来例の通電加熱装置では流動物の温度が不安定であった。
【0020】
(実験例2)
・処理物:チーズ
・処理量:65L/h
・電圧:400V
・粘度:40,000mPa・s
・温度:95℃(目標温度)まで加熱する
(本実施例)
・60℃→95±2℃
【0021】
(実験例3)
・処理物:ゆで卵のマヨネーズ和え
・処理量:75L/h
・電圧:310V
・粘度:38,000mPa・s
・温度:85℃(目標温度)まで加熱する
(本実施例)
・60℃→85±1℃
【0022】
実験の結果、本実施例の通電加熱装置は、曲管部材3によって通電域を直管部材2の流路断面全体とし、直管部材全体にほぼ均一に通電することにより、中高粘性の流動物においても、電流密度の不均一さを緩和し流動物の温度ムラを減少させるとともに、過電流によるスパークの発生を抑制し、焦げ付きの発生を抑えることができた。
【0023】
かくして、本実施例の流動物の通電加熱装置は、流動物を流路1内で連続的に流動させながらジュール加熱する流動物の通電加熱装置において、前記流路1を、直線状に形成した非導電性の直管部材2と、該直管部材2の両端部に配設した導電性を有する曲管部材3とで構成し、前記曲管部材3にジュール加熱用の電源4を接続することから、曲管部材3により通電域を広くし、直管部材2の流路断面全体にほぼ均一に通電することができ、これにより、電流密度の不均一さを緩和し流動物の温度ムラを減少させるとともに、過電流によるスパークの発生を抑制し、焦げ付きの発生を抑えて連続運転時間を大幅に延長することができる。
また、曲管部材3を配設することにより、この部分を流れる流動物の混合を促進し、温度ムラを緩和・解消するとともに、直管部材2を配置する際の自由度を高くして、通電加熱装置をコンパクトにすることが可能となる。
さらに、曲管部材3にジュール加熱用の電源4を接続することから、特に電極部材を設ける必要がなく構造を簡略化するとともに、流動物の滞留をなくし、かつ洗浄性を向上させることができる。
【0024】
また、曲管部材3を挟んで複数の直管部材2a〜2cを連続するように配設する場合、下流側の直管部材2b又は2cでは上流側より流動物の温度が高くなって導電率が高くなるが、下流側の直管部材2b又は2cを上流側の直管部材2a又は2bより長く形成することにより、各直管部材2a〜2cに流れる電流値を均等にすることができる。
【0025】
以上、本発明の流動物の通電加熱装置について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、直管部材や曲管部材を断面矩形に形成するなど、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の流動物の通電加熱装置は、通電加熱で生じる流動物の温度ムラを緩和・解消するとともに、通電加熱部への付着を抑制し、焦げ付きの発生を抑えて連続運転時間を大幅に延長するという特性を有していることから、例えば、中高粘性の流動物の通電加熱装置の用途に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1(a)】本発明の流動物の通電加熱装置の一実施例を示す部分断面図である。
【図1(b)】流動物の通電加熱装置の従来例を示す部分断面図である。
【図2(a)】本発明の流動物の通電加熱装置において、直管部材を下流側ほど長くした実施例を示す正面図である。
【図2(b)】本発明の流動物の通電加熱装置において、流路を螺旋状にした実施例を示す斜視図である。
【図3】直管部材又は管路の中心部における流動物の温度変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0028】
1 流路
2 直管部材
3 曲管部材
4 電源
5 ホッパ
6 送出ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動物を流路内で連続的に流動させながらジュール加熱する流動物の連続通電加熱装置において、前記流路を、直線状に形成した非導電性の直管部材と、該直管部材の両端部に配設した導電性を有する曲管部材とで構成し、前記曲管部材にジュール加熱用の電源を接続したことを特徴とする流動物の連続通電加熱装置。
【請求項2】
曲管部材を挟んで複数の直管部材を連続して配設するとともに、下流側の直管部材を上流側の直管部材より長く形成したことを特徴とする請求項1記載の流動物の連続通電加熱装置。

【図1(a)】
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【図1(b)】
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【図2(a)】
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【図2(b)】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−193757(P2009−193757A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−31455(P2008−31455)
【出願日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【特許番号】特許第4195502号(P4195502)
【特許公報発行日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(000127237)株式会社イズミフードマシナリ (53)
【Fターム(参考)】