説明

流水検知装置

【課題】 流水検知装置の点検やメンテナンスの際にスイッチの作動を防止する信号停止手段を簡易な操作により実現可能であり、さらに紛失のおそれのない流水検知装置を提供する。
【解決手段】 スプリンクラー設備配管に設置される本体1内に開閉自在に設置された弁体7を有し、該弁体7の開放により変位するロッド11の一端側にはリミットスイッチ17が設置され、ロッド11の変位によってリミットスイッチ17が作動して信号が出力される流水検知装置において、ロッド11の変位を阻止可能な係止片20を本体外部に設置し、該係止片20の移動によりロッド11の変位を阻止するロック状態と、変位を許容するロック解除状態とを切換え可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火設備配管上に設置される流水検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
流水検知装置は、スプリンクラー設備や泡消火設備等の消火設備配管上に設置され、配管内の流水を検知して信号を出力する装置である。
【0003】
流水検知装置の内部は逆止弁構造をしており、弁により内部が一次側室と二次側室に分けられ弁体は常時閉止状態にある。一次側室および二次側室は常時充水されており、一次側室に接続された配管(以下、「一次側配管」とする)は水源と接続され、二次側室に接続された配管(以下、「二次側配管」とする)はスプリンクラーヘッドや泡ヘッド等の散布ヘッドが設置されている。
【0004】
流水検知装置は二次側配管に設置された散布ヘッドの作動を検知するために設置されており、例えばスプリンクラーヘッドが作動すると、二次側配管内に充水されている水がスプリンクラーヘッドより放出されることで二次側配管内が減圧する。それにより流水検知装置の二次側室内の圧力も減少し、弁体に作用している圧力による力のバランスが崩れて、一次側室側から弁体に作用する力が二次側室側から弁体に作用する力を上回り弁体が開放される。
【0005】
この弁体の開放を検知してスイッチ装置が作動され信号が出力される。出力された信号は建物の管理室等に設置されている監視装置と接続されており、監視装置からの信号によって管理人等にスプリンクラーヘッドが作動したことを知らせる。
【0006】
上記に示す逆止弁構造の流水検知装置は、弁体が着座している弁座に外部へ通じる穴が穿設されており、該穴と圧力スイッチが接続され、圧力スイッチが信号を発生するタイプ(例えば、特許文献1参照。)や、弁体の開放による変位を検知して信号を出力するタイプ(例えば、特許文献2、3参照。)がある。
【0007】
上記の流水検知装置において、非火災時である点検やメンテナンスの際にスイッチが作動して信号が出力されると館内に火災警報が出力されるおそれがあることから、スイッチの作動を防ぐために信号停止手段が設けられている。
【0008】
例えば特許文献1の流水検知装置においては弁座に穿設された穴と圧力スイッチとの間の通水路に信号停止弁が設置されている。該信号停止弁を閉止すると流水検知装置の弁体が開いた際に弁座に穿設された穴から流入した水が信号停止弁で遮断される。圧力スイッチまで水が到達しないので圧力スイッチが作動することを防止できる。
【0009】
また特許文献2、3の流水検知装置にはターミナルボックスが備えられてあり、該ターミナルボックス内には、弁体の開放動作によって信号を出力するリミットスイッチと、リミットスイッチを作動させる作用を有するリミットスイッチ押圧手段が設けられている。該リミットスイッチとリミットスイッチ押圧手段の間に、信号出力停止手段であるピースを挿入させてリミットスイッチ押圧手段がリミットスイッチ側へ移動することを阻止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実公平6−14780号公報
【特許文献2】国際公開第2009/57236号
【特許文献3】国際公開第2009/130903号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
流水検知装置は一般的に建物内の目立たない場所に設置されていることが多い。特にマンション等の共同住宅に設置される場合はガスメーター等が設置されるメーターボックス内に流水検知装置が設置されていることがあり、後者の流水検知装置においては小さなピースをリミットスイッチ近傍の所定位置に差し込む作業が困難な場合がある。
【0012】
メーターボックス内は薄暗く、さらにターミナルボックス内にリミットスイッチが設置されていることから、電灯を照らしながらターミナルボックスの蓋を外して所定位置にピースを差し込む作業は作業者の負担が大きいものであった。またピースは小さな部品であることから紛失しやすいものであった。
【0013】
そこで本発明では、上記問題に鑑み、点検やメンテナンスの際にスイッチの作動を防止する信号停止手段を簡易な操作により実現可能であり、さらに紛失のおそれのない流水検知装置を提供することを目的としている。

【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために本発明が提案する流水検知装置を以下に示す。
【0015】
すなわち、スプリンクラー設備配管に設置される本体内に開閉自在に設置された弁体を有し、該弁体の開放により変位するロッドの一端側にはリミットスイッチが設置され、ロッドの変位によってリミットスイッチが作動して信号が出力される流水検知装置において、ロッドの変位を阻止可能な係止片を本体外部に設置し、該係止片の移動によりロッドの変位を阻止するロック状態と、変位を許容するロック解除状態とを切換え可能とした。
【0016】
本発明の流水検知装置によれば、本体外部に設置された係止片を移動させることでロッドの変位を阻止し、ロッドの変位によって作動するリミットスイッチからの信号出力を防止できる。
その際、係止片を移動させることでロッドをロック状態とロック解除状態とに切換え可能であり、係止片の位置によってリミットスイッチの信号出力が阻止された状態かどうかを作業者が判断することができる。
係止片は作業者が手で掴んで操作可能な程度の大きさとし、例えば従来例の信号停止弁のハンドル程度の大きさにすることで、辺りが薄暗くても目視により係止片の位置の判断や操作が可能である。
さらに係止片を本体外部に設置したことで、従来例のように紛失のおそれが無くなった。
【0017】
前記係止片は、リミットスイッチが設置されているベース上に設置され、一端がロッドの変位を阻止する係合部であり、他端は係止片の移動を操作する操作部を有する。
係止片にロッドの変位を阻止する係合部と、係止片の移動を操作する操作部を設けたことで、作業者が操作部を操作することで容易にロッドの移動を阻止可能なロック状態またはロック解除状態に切換えを行うことができる。
【0018】
前記係止片において、ロック状態を保持可能とした。
係止片のロック状態を保持可能としたことで、作業者がその場を離れた際に振動や係止片等の自重によって係止片が動き、ロック状態が解除されてしまうことを防止可能である。
【0019】
係止片は、ロック状態においてベースと接合可能な手段を有する。
これによれば、ロック状態において係止片がベースと接合され、ロック状態を保持できるものである。
【0020】
ロック状態において、係止片の一部がベースからはみ出した状態となる。
これによれば、作業者は操作部とベースの位置関係によってリミットスイッチから信号が出力できない状態となっていることを容易に判断することができる。
【0021】
係止片の回動角度範囲を規制する部材およびスライド移動方向を規制する部材を設置した。
これによれば、係止片の移動可能範囲・方向を制限することができ、係止片が他の構成部材と干渉することを防止できる。
【0022】
係止片をベース側に付勢する部材を設置した。
これによれば、係止片を移動させる際に適度な負荷を与えることで、係止片の自重や、周囲の振動等によって係止片が動いてしまうことを防止できる。また、先の効果によってロック状態時においてはロック状態を保持する作用も有する。
【0023】
ロッドは中間部分で軸支されており、弁体が閉止した状態においてロッドの他端側が弁体と接触している。
これによれば、ロッドは弁体の開放動作により回動可能な構成であり、係止片の操作によりロッドをロック状態にすることでロッドの回動動作を阻止可能とした。さらにロック状態において弁体が開放した際には、ロッドをロック状態にしたことで弁体やロッド等の構成部品に過度な負荷が加わらないように構成することが可能である。
【0024】
ロッドは、弁座から本体外部へ通じる穴に接続された圧力スイッチ内に設置され、前記穴から流入してきた水の圧力により変位する
これによれば、ロッドと弁体は非接触構造であり、ロッドを係止片の操作によってロック状態にしても弁体やロッドに過度な負荷が加わらないように構成することが可能である。

【発明の効果】
【0025】
上記の流水検知装置によれば、リミットスイッチを作動させるロッドの変位を係止片によって阻止可能であり、さらにリミットスイッチの信号出力停止状態(ロック状態)とロック解除状態が係止片とベースの位置関係により簡易に判断できる。またベース上に係止片を設置してロック状態・ロック解除状態の切換えを可能としたことで、薄暗い場所においても容易に操作可能とし、紛失のおそれも無くなった。

【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1実施形態の流水検知装置の断面図
【図2】X1−X1断面図
【図3】X2−X2断面図
【図4】係止片が設置されたベース構造の説明図(ロック解除状態)
【図5】Y−Y断面図
【図6】係止片の回動軸部分の分解斜視図
【図7】図4のロック状態
【図8】図3の流水検知装置が作動した際の説明図
【図9】第1実施形態の変形例a
【図10】第1実施形態の変形例b
【図11】第1実施形態の変形例c
【図12】第2実施形態の流水検知装置の断面図
【図13】図12の圧力スイッチの断面図
【図14】Z1−Z1断面図
【図15】第2実施形態の変形例の断面図
【図16】Z2−Z2断面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
第1実施形態(図1〜図8)
以下、この発明の第1実施形態を図1から図8を参照して説明する。
【0028】
第1実施形態の流水検知装置は、本体1、筐体2、排水弁3から構成される。
【0029】
本体1は中空形状であり内部は隔壁4によって一次側室Iと二次側室IIに分けられている。隔壁4には連通穴5が穿設されており、該連通穴5の二次側室II側には環状の弁座6が設置されている。
【0030】
弁座6の上には弁体7が着座しており、弁体7の周縁の一部には円筒状の軸受け8が形成され、弁棒9が軸受け8を貫通して本体1内に設置されている。弁体7は弁棒9を軸として二次側II方向へ回動自在な構成となっており、弁体7が回動すると弁座6から弁体7が離れて一次側室Iの流体が環状の弁座6内を通って二次側室IIに通過可能となる。
【0031】
弁体7の周縁には縁から突出して形成された突出部10が設けられている。該突出部10の弁座6側の面には、ロッド11の端11Aが接触しており、ロッド11は中間で軸支され、ロッド11は図中において上下に回動動作可能な構成である。
【0032】
ロッド11の弁体7と接触している端と反対側の端11Bは、本体1の側面外部に突出しており、筐体2により覆われている。図4から図7に示すように端11Bには、図中上側に突出して設けられたバネ座12が設置され、バネ座12の同軸上にはベースBに設置されたバネ座13が設けられており、両バネ座12、13の間に弾発体としてコイルバネ14が設けられている。
【0033】
コイルバネ14によりロッド11の端11Bは、常時において図中下方に付勢されている。ロッド11の中間の軸により端11Bの反対側の端11Aは図中上方つまり弁体7が開く方向に付勢されるが、コイルバネ14が作用する力は弁体7が開放しない程度の弱い力である。
【0034】
またロッド11の端11Bにはリミットスイッチ押圧片15に接触する接触子16が固定設置されている。接触子16はその先端にある湾曲形状のバネ部の作用によりリミットスイッチ押圧片15をリミットスイッチ17から遠ざける方向に付勢している。
【0035】
接触子16の先端のバネ部がリミットスイッチ押圧片15を付勢する方向には遅延機構18が設置されている。遅延機構18はリミットスイッチ押圧片15の動作を遅くする作用を有するものであり、エアダンパーやオイルダンパーを使用した構造のものが用いられている。遅延機構18の詳細な説明は省略する。
【0036】
リミットスイッチ押圧片15はリミットスイッチ17の方向に図示しない弾発体によって付勢されており、接触子16によりリミットスイッチ17方向への移動を阻止されている。
【0037】
図4から図7に示す筐体2のベースBは平板をL字状に屈曲させた形状をしており、ロッド11が貫通して本体1と接続される「第1の面」としての面B1と、面B1から屈曲して設けた「第2の面」としての面B2を有する。面B1にはリミットスイッチ17や遅延機構18を支持するブラケット19の端部が接続され、面B2には外部から端子台29に接続される導線を筐体2の内部に挿入する穴Hが穿設されている。
【0038】
面B1にはロッド11の端11Bが下方へ回動する動きを阻止可能な係止片20が設置される。係止片20は細長い板状をしており、中間部分に長穴21が穿設されている。係止片20の一端側はロッド11との係合部22となっており、先端側に向かって先細りとなるテーパー部22Aが形成されている。先端22Bは丸みを帯びた曲線状に形成されている。他端側は作業者が手で掴んで係止片20を動かす操作部23となっている。
【0039】
図6に示すように係止片20の長穴21の係合部22側には長穴21の幅より大きな径を有する穴21Aが穿設されている。穴21Aの径は後述のホルダー26の他端側の外周径より僅かに大きい。
【0040】
ホルダー26は円筒形状をしており内部の穴には後述のボルト24の牡ネジ部が挿通可能である。ホルダー26の一端には鍔部が形成されている。他端26Aの外周径は鍔部よりも小径であり、さらに係止片20の穴21Aより僅かに小径である。また他端26Aの外周には対向して形成された2つの平面26B、26Bを備えている。
【0041】
ホルダー26の他端26Aには順にウェーブワッシャー27、ワッシャー25、係止片20の穴21Aが挿通される。これらの部品が挿通された状態でホルダー26の2つの平面26BをベースBより突出して形成された2つの突出部26Cの間に挿入すると、平面26Bが2つの突出部26Cの間に嵌合される。これによりホルダー26は回転を阻止された状態となる。その後、ボルト24をホルダー26の穴に挿通して2つの突出部26Cの間に螺刻された牝ネジNに螺合する。
【0042】
ここで係止片20の長穴21とホルダー26に形成された2つの平面26Bについて説明する。2つの平面26Bの間隔は、長穴21の幅寸法21Bより僅かに小さく形成されている。常時においてホルダー26の他端26Aは係止片20の穴21Aに挿通されており、平面26Bは長穴21と垂直に位置されるので長穴21とホルダー26の他端26Aはスライド移動できない。係止片20を、ホルダー26を支点として90°回動させると2つの平面26Bが長穴21と平行になり、長穴21とホルダー26の平面26Bがスライド移動可能となることで係止片20をロッド11側にスライド移動可能となる。これにより、係止片20はホルダー26の2つの平面26Bと長穴21とが平行になる位置(係止片20を元の位置から略90°回動させた位置)のみでスライド移動可能であり、スライド移動可能な方向が規制されている。
【0043】
上記のように係止片20を回動させる際に、ウェーブワッシャー27によって係止片20をB1面方向に付勢させ適度な負荷を与えることで、係止片20の自重や周囲の振動等によって係止片20が動いてしまうことを防止できる。また、これらの効果によってロック状態時においてはロック状態を保持可能である作用も有する。
【0044】
係止片20は常時において操作部23がベースB内に納まっている(ロック解除状態)。係止片20を回動させると、ロッド11の動きを阻止することができ、操作部23はベースBからはみ出した状態となる(ロック状態)。これより作業者は操作部23とベースBの位置関係によってリミットスイッチ17から信号が出力できない状態となっていることを容易に判断することができる。
【0045】
また作業者がロック状態のままカバーCをベースBに装着しようとしても、操作部23がベースBよりはみ出した状態となっているのでベースBにカバーCを装着することができない。作業者が作業に慣れていない場合でもカバーCがベースBに装着できないことで異常を感じ、他の熟練した作業者に報告することでロック状態を解除することができる。
【0046】
係止片20はベースBの縁寄りに設置されている。好ましくは流水検知装置の正面側から操作可能な位置に設ける。具体的には流水検知装置の正面をカバー1Aによって塞がれた開口1Bを設けた面とすると、筐体2は側面に設けられることからベースBの正面側の縁付近に係止片20を設置する。
【0047】
面B1上には係止片20を回動させる際の動作をガイドする突起としてストッパー28A、28Bが形成されている。係止片20をロック解除状態からロック状態になるように回動させると、係止片20はストッパー28Aに接触して元の位置から略90°回転した状態となる。突起28Aは係止片20をこれ以上回動させないためのストッパーの作用を有しており、係止片20は回動可能な角度範囲を規制されている。

【0048】
係止片20を長穴21に沿ってスライド移動させると係合部22のテーパー部22Aがロッド11の周面に沿って移動する。その際にロッド11が多少下側に傾いておりテーパー部22Aにロッド11が接触した状態でも引っ掛かりなくスムーズに係止片20をスライド移動することができる。と共に係止片20の先端22Bがストッパー28Bの縁の一部が丸みを帯びて形成させたガイド部28Cに接触しながらスライド移動する。
【0049】
係止片20のスライド移動により、係合部22の先端22Bがストッパー28B上に誘導され、テーパー部22Aと反対側の辺22Cがストッパー28Bと係合する。同時にストッパー28Aも係止片20の一辺と接触した状態となり、ストッパー28A、28Bと係止片20との間には殆ど隙間がない状態で保持される。これにより係止片20によってロッド11の動作を阻止したロック状態を保持することが可能である。
【0050】
カバーCは、ベースBに設置されたリミットスイッチ17や遅延機構18、端子台29を覆い、ゴミや水滴から保護するものである。このカバーCを外すとL字状のベースBに支持された筐体2の内部構造が大きく露出するので、筐体2に収容するリミットスイッチ17や端子台29等の結線作業や点検作業の作業性が良い。
【0051】
排水弁3は、点検やメンテナンス時に本体1内の流体を外部に排出するバルブであり、筐体2と反対側の面に設置されている。排水弁3の内部はアングル弁構造となっており、排出口は図1において下向きに設けられている。排水弁3の開閉操作を行なうハンドルは流水検知装置Aのカバー1Aが設けられた正面側に設置され、ハンドルの操作が行ないやすい位置に設けられている。
【0052】
続いて、第1実施形態の流水検知装置の動作について説明する。
【0053】
第1実施形態の流水検知装置は、消火設備配管に設置され、一次側室Iは図示しないポンプおよび水源に通じる配管と接続され、二次側室IIに接続された配管の末端には図示しないスプリンクラーヘッドが設置されている。
【0054】
消火設備配管内は充水された状態にあり、流水検知装置の本体1の内部も一次側室Iおよび二次側室IIは充水状態にある。常時において、弁体7は弁座6の上に着座しており、一次側室Iから二次側室IIへの通水は遮断されている。
【0055】
火災が発生して二次側室II側の配管に設置されたスプリンクラーヘッドが作動すると、二次側室II側の配管内の水はスプリンクラーヘッドから放出されるので次第に減圧してくる。弁体7を閉止していた二次側室IIの水の圧力が減少し、一次側室Iの圧力より低くなると二次側室IIと一次側室Iの圧力差により弁体7は押し上げられ、軸9を支点に回動する。
【0056】
弁体7が弁座6から離れて開放したことにより一次側室Iの水は二次側室II側に送られる。それとともに弁体7に接触していたロッド11もコイルスプリング14の付勢力によって回動し、筐体2側の端11Bが図8のように下側に移動する。
【0057】
これにより端11Bの接触子16がリミットスイッチ押圧片15から離れ、リミットスイッチ押圧片15はリミットスイッチ17側へ移動を開始する。遅延機構18により所定時間経過後にリミットスイッチ押圧片15はリミットスイッチ17を作動させる。リミットスイッチ17は端子台29を介して管理人室等に設けた図示しない監視装置に接続されており、監視装置にリミットスイッチ17の作動が出力される。
【0058】
上記リミットスイッチ17の作動による信号によって前述のポンプが起動され、水源より作動したスプリンクラーヘッドへ送水が開始してスプリンクラーヘッドからは連続して水が散布され火災を消し止める。
【0059】
次に、第1実施形態の流水検知装置においてリミットスイッチの作動による信号出力を停止する手順について説明する。
【0060】
先ず、筐体2からカバーCを取り外す。係止片20の操作部23を持って係止片20を回動する(図4中では時計回りに回動する)。係止片20はストッパー28Aに当たり停止する。このとき係止片20は元の状態(ロック解除状態)から略90度回転した位置にある。次に係止片20を長穴21に沿ってスライド移動させる。
このとき、係止片20の回動角度が前述の90°よりも少ない角度で回動させた場合には、長穴21のスライド方向と長穴21に挿通されたホルダー26の2つの平面26Bが平行にならないので係止片20をスライド移動できない。
【0061】
係止片20をスライド移動させると、係合部22の先端22Bはストッパー28Bのガイド部28Cに沿って移動してストッパー28B上に誘導され、テーパー部22Aと反対側の辺22Cがストッパー28Bと係合する。これによりロック状態となり、弁体が開放動作した場合にも係止片20によってロッド11の動きを阻止するのでリミットスイッチ17から信号が出力されることを防止できる。
【0062】
上記のロック状態からロック解除状態へ係止片20を戻す手順は、上記と逆の手順により実現可能である。
【0063】

第1実施形態 変形例a (図9)
次に第1実施形態の変形例aについて図9を参照して説明する。
【0064】
第1実施形態の変形例aでは、第1実施形態の構成に加えてスライド動作を行う弾発体を設置したものである。
【0065】
図9に示す係止片20には弾発体を装着するための突起20Aが操作部23付近に形成されている。突起20Aに弾発体として環状のゴム30を掛け、さらに係止片20の回動軸31にもゴム30を掛ける。
【0066】
係止片20を回動させると、ゴム30の弾発力によって係止片20は長穴21に沿ってスライド移動可能である。第1実施形態のように作業者が係止片20を回動動作させた後にスライド動作を行う必要がなく、回動動作を行うのみでゴム30の弾発力により係止片20はスライド移動され、係止部22の辺22Cがストッパー28Bと係合できる。ゴム30によってロック状態を維持可能となる。
【0067】
上記において、弾発体として環状のゴム30にて説明したが、これを引張バネや錘、磁石に置き換えて構成することも可能である。
【0068】
第1実施形態 変形例b(図10)
次に第1実施形態の変形例bについて図10を参照して説明する。
【0069】
第1実施形態の変形例bでは、係合部22の形状を切り欠き状にしてロッド11を上下から挟み込んでロッド11の動作を阻止可能とした構成である。
【0070】
第1実施形態 変形例c(図11)
次に第1実施形態の変形例cについて図11を参照して説明する。
【0071】
第1実施形態の変形例cでは、ロック状態とロック解除状態との係止片の動作をスライド動作のみで実現可能な構成としたものである。
【0072】
図11に示す係止片40は、第1実施形態と同様に細長い板状であり、一端側に長穴41が穿設されている。長穴41の近傍の縁には係合部42が形成されており、第1実施形態のテーパー部22Aに相当する曲線部42Aが設けられている。長穴41を挟んで曲線部42Aと反対側の縁にはストッパー44と係合する段部42Bが鉤状に形成されている。
【0073】
係止辺40の他端側は端部が折り曲げられ操作部43が形成されている。該操作部43を作業者が掴んで係止片40を操作可能である。また操作部43に「信号停止」等の表示を付すことも可能である。
【0074】
長穴41には第1実施形態と同様にボルト24が挿通されている。長穴41と操作部43の間の縁に近接してストッパー44がベースB上に設けられており、係止片40のスライド動作をガイドしている。
【0075】
上記実施形態の係止片40は図11(a)に示すように操作部43がベースBに納まっている状態をロック解除状態とし、図11(b)に示すように操作部43がベースBからはみ出している状態をロック状態とする。操作部43がベースBからはみ出した状態ではカバーCをベースBに取り付けできないことから、カバーCの取付け時に作業者がロック状態であることに気づいて操作部43を操作してロック解除状態にすることができる。
【0076】
上記に説明した第1実施形態およびその変形例において、ロック状態を保持可能な手段の他の実施形態として、係止片20の操作部23に錘を取り付け、ロック状態からロック解除状態へ戻す動作の際に負荷を加えることが可能である。
【0077】
また、係止片にベースと接合可能な手段を用いてロック状態を保持可能な他の実施形態として、ストッパー28B(44)を磁石により構成し、さらに係止片20(40)を鉄等の磁石に吸着可能な材質から構成すると、磁力によりロック状態を保持することが可能となる。
【0078】
第2実施形態(図12〜図14)
次に第2実施形態について図12から図14を参照して説明する。
【0079】
第2実施形態において第1実施形態と構成が同じ箇所については同符号を付して詳細な説明は省略する。第2実施形態では、ロッドと弁体が非接触である流水検知装置について説明する。
【0080】
図12に示す第2実施形態の流水検知装置について、本体や弁体の構成およびリミットスイッチ付近の構成は第1実施形態の流水検知装置と略同じであるので構成が同じ部分については同符号を付して詳細な説明は省略する。第1実施形態との差異点は、弁体7が着座している弁座6に本体1の外部へ通じる穴50が穿設されていることである。該穴50は、内部にリミットスイッチ17を有する圧力スイッチ51に接続されている。圧力スイッチ51は図13に示すように穴50を通ってきた水の圧力によりロッドが押し上げられレバー52が回動動作する構造になっている。レバー52の回動動作によりリミットスイッチ押圧片15の係止が解除されてリミットスイッチ17が作動する構成は第1実施形態と略同じである。
【0081】
上記のリミットスイッチ17等の構成品が配置されている圧力スイッチ51のベース53は平板状であり、リミットスイッチ17等の構成品はカバー51Aにより覆われていてゴミや埃の付着を防止している。
【0082】
ベース53の外側の面53Aには穴50が接続される中空状の接続部54が設置されている。ベース53の反対側(内側)の面53Bにはリミットスイッチ17やレバー52等が設置される。
【0083】
中空状の接続部54の上方(ベース53方向)には空間54Aが形成されており、該空間54A内を上下に仕切るダイアフラム55が設置され、穴50を通って接続部54内に流入してきた水がベース53側の空間に漏れないようにしている。ダイアフラム55にはダイアフラム55を貫通するロッド56が設置されており、該ロッド56はレバー52と係合しており、ロッド56の上下動作によりレバー52が回動動作可能な構成となっている。
【0084】
リミットスイッチ17はベース53の面53B側に設置される。リミットスイッチ17はロッド56に対して所定の位置に設置されるようにブラケット57内に位置決めされて設置される。ブラケット57は平板を屈曲させて形成した箱型の形状をしており、ブラケット57の各面がリミットスイッチ17を覆っている。ブラケット57はベース53にネジ58によって所定の位置に固定設置される。ブラケット57上にはリミットスイッチ17と接続された端子台59が設置されている。
【0085】
常時においてロッド56は穴50側(図中下方)に位置しているが、穴50から水が接続部54内に流入してくると、水の圧力によってダイアフラム55が図中上方へ膨らみ、ダイアフラム55の変形によってロッド56がレバー52側へ変位する。ロッド56の変位によりレバー52が回動動作して第1実施形態で説明した通りリミットスイッチ17が作動する。リミットスイッチ17の作動による信号が建物内の受信盤に伝送され、流水検知装置の作動を管理人等に伝える。
【0086】
上記の圧力スイッチにおいて、図14に示すように係止片70は細長い板状をしており、中間部に穴71が穿設されている。係止片70の一端側はロッド56の移動を阻止可能な係合部72となっている。他端側は作業者が手で掴んで係止片70を動かす操作部73となっている。
【0087】
係止片70は、ベース53上に設けたボルト24を穴71に挿通して回動自在に設置される。係止片70は常時(ロック解除状態)において操作部73がベース53内に納まっており、カバー51Aをベース53に装着可能である。また、操作部73の先端に形成した切り欠き73Aがブラケット57の一面57Aの縁に接触しており、ロック解除状態において必要以上に係止片70が回動することを阻止している。
【0088】
図14の点線で示すように係止片70を回動させると、係合部72がロッド56の上部に位置され、ロッド56の上方への動きを阻止することができる(ロック状態)。その際、操作部73はベースBからはみ出た状態となり、カバー51Aをベース53に装着することができない。これより作業者は操作部73とベース53の位置関係によってリミットスイッチ17から信号が出力できない状態となっていることを容易に判断することができる。
【0089】
係合部72の先端に突出して形成された突起部72Aは、ブラケット57の面57Bに当接して係止片70の回動可能な範囲を制限しており、ストッパーとしての作用を有する。
【0090】
続いて、第2実施形態の流水検知装置の動作について説明する。
【0091】
消火設備配管内は充水された状態にあり、流水検知装置の本体1の内部も一次側室Iおよび二次側室IIは充水状態にある。常時において、弁体7は弁座6の上に着座しており、一次側室Iから二次側室IIへの通水は遮断されている。
【0092】
火災が発生して二次側室II側の配管に設置されたスプリンクラーヘッドが作動すると、二次側室II側の配管内の水はスプリンクラーヘッドから放出されるので次第に減圧してくる。弁体7を閉止していた二次側室IIの水の圧力が減少したことで一次側室Iの水の圧力により弁体7は押し上げられ、軸9を支点に回動する。
【0093】
弁体7が弁座6から離れて開放したことにより一次側室Iの水は二次側室II側に送られる。と同時に弁座6に穿設された穴50にも水が流入して、穴50と接続された圧力スイッチ51に水が到達する。水は圧力スイッチ51の中空状の接続部54に流入してダイアフラム55をベース53側に膨張させる。ダイアフラム55に設置されたロッド56はダイアフラム55の膨張とともに図中上方へ変位してロッド56の先端に係合されたレバー52の一端を押し上げる。
【0094】
レバー52はロッド56の変位により回動され、リミットスイッチ押圧片15を係止していたレバー52の他端側がリミットスイッチ押圧片15から離れる。リミットスイッチ押圧片15はリミットスイッチ17側へ移動し、遅延機構18により所定時間経過後にリミットスイッチ押圧片15はリミットスイッチ17を作動させる。リミットスイッチ17は端子台59を介して管理人室等に設けた監視装置に接続されており、監視装置にリミットスイッチ17の作動が出力される。
【0095】
上記リミットスイッチ17の作動による信号で前述のポンプが起動され、水源より作動したスプリンクラーヘッドへ送水が開始してスプリンクラーヘッドからは連続して水が散布され火災を消し止める。
【0096】
次に、第2実施形態の流水検知装置においてリミットスイッチからの信号出力を停止する手順について説明する。
【0097】
先ず、圧力スイッチ51からカバー51Aを取り外す。このとき係止片70はベース53内に納まった状態にある(ロック解除状態)。係止片70の操作部73を持って係止片70を回動する。係止片70の突出部72Aはブラケット57の面57Bに接触して係止片70の回動が阻止される。この状態で係合部72がロッド56の上方に位置され、ロッド56の移動を阻止可能である(ロック状態)。また、操作部73はベース53からはみ出た状態にあり、この状態ではカバー51Aをベース53に装着することはできない。
【0098】
上記のロック状態からロック解除状態へ係止片70を戻す手順は、上記と逆の手順により実現可能である。
【0099】
第2実施形態 変形例a(図15〜図16)
次に第2実施形態の変形例について図15から図16を参照して説明する。
【0100】
第2実施形態の変形例は、ロック状態とロック解除状態との係止片の動作をスライド動作で実現可能な構成としたものである。
【0101】
図15および図16に示す係止片80は細長い板状をしており、中間部に長穴81が穿設されている。一端側に長穴81が穿設されている。係止片80の中間部には係合部82となっている。他端側は端部が折り曲げられ操作部83が形成されている。該操作部83を作業者が掴んで係止片80を操作可能である。また操作部83に「信号停止」等の表示を付すことも可能である。
【0102】
ベース53上には段付きの軸84が立設されており、軸84は中間部に段84Aが形成されており、ベース53側の外径に対してベース53と反対側の軸部84Bの外径はベース53側の外径より小さく形成されている。段84Aからベース53までの高さ寸法は、平時においてベース53からロッド56が突出した状態の高さよりも僅かに大きい。
【0103】
軸部84Bを長穴81に挿通させ、軸部84Bにより係止片80のスライド動作をガイドしている。また、係止片80は段84A上に載置される。
【0104】
ブラケット57には係止片80が通過可能な切り欠き85が形成されている。切り欠き85の位置は、前述の段84Aの高さ寸法と略同じである。切り欠き85の幅は、係止片80の厚さ寸法よりもやや大きく、係止片80のスライド動作をガイド可能であり、係止片80の上下方向への動きを阻止することが可能である。
【0105】
上記の係止片80は図16に示すように長穴81が穿設された側の端がベース53に納まっている状態をロック解除状態とし、図16の点線で示すように長穴81が穿設された側の端がベース53からはみ出している状態をロック状態とする。操作部83がベース53からはみ出した状態ではカバー51Aをベース53に取り付けできないことから、カバー51Aの取付け時に作業者がロック状態であることに気づいて操作部83を操作してロック解除状態にすることができる。
【0106】
上記に説明した第2実施形態およびその変形例において、ロック状態を保持する手段としてブラケット57の面57Bの係止片70(80)が接触する箇所に磁石を設置して構成すると、ロック状態時に磁石と係止片70(80)が磁力により吸着されロック状態を保持することが可能となる。

【符号の説明】
【0107】
1 本体
2 筐体
3 排水弁
4 隔壁
5 連通穴
6 弁座
7 弁体
8 軸受け
9 弁棒
10 突出部
11、56 ロッド
15 リミットスイッチ押圧片
16 接触子
17 リミットスイッチ
18 遅延機構
19、57 ブラケット
20、40、70、80 係止片
21、41、81 長穴
22、42、72、82 係合部
23、43、73、83 操作部
24 ボルト
27 ウェーブワッシャー
28A、28B、44 ストッパー
30 ゴム
31 回動軸
50 穴
51 圧力スイッチ
52 レバー
53、B ベース
55 ダイアフラム
71 穴
A 流水検知装置
C カバー




【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプリンクラー設備配管に設置される本体内に開閉自在に設置された弁体を有し、該弁体の開放により変位するロッドの一端側にはリミットスイッチが設置され、ロッドの変位によってリミットスイッチが作動して信号が出力される流水検知装置において、ロッドの変位を阻止可能な係止片を本体外部に設置し、該係止片の移動によりロッドの変位を阻止するロック状態と、変位を許容するロック解除状態とを切換え可能としたことを特徴とする流水検知装置。
【請求項2】
係止片は、リミットスイッチが設置されているベース上に設置され、一端がロッドの変位を阻止する係合部であり、他端は係止片の移動を操作する操作部である請求項1記載の流水検知装置。
【請求項3】
係止片は、ロック状態を保持可能である請求項1または請求項2記載の流水検知装置。
【請求項4】
係止片は、ロック状態においてベースと接合可能な手段を有する請求項1〜請求項3何れか1項記載の流水検知装置。
【請求項5】
ロック状態において、係止片の一部がベースからはみ出した状態となる請求項1〜請求項4何れか1項記載の流水検知装置。
【請求項6】
係止片の回動角度範囲を規制する部材を設置した請求項1〜請求項5何れか1項記載の流水検知装置。
【請求項7】
係止片のスライド移動方向を規制する部材を設置した請求項1〜請求項6何れか1項記載の流水検知装置。
【請求項8】
係止片をベース側に付勢する部材を設置した請求項1〜請求項7何れか1項記載の流水検知装置。
【請求項9】
ロッドは中間部分で軸支されており、弁体が閉止した状態においてロッドの他端側が弁体と接触している請求項1〜請求項8何れか1項記載の流水検知装置。
【請求項10】
ロッドは、弁座から本体外部へ通じる穴に接続された圧力スイッチ内に設置され、前記穴から流入してきた水の圧力により変位する請求項1〜請求項9何れか1項記載の流水検知装置。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−152182(P2011−152182A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−13792(P2010−13792)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000199186)千住スプリンクラー株式会社 (87)
【Fターム(参考)】