流路を用いた検出方法及び相互作用検出方法、並びに検出装置
【課題】試料の検出と同時に、試料を含有する層流の状況を検出することが可能な検出方法を提供すること。
【解決手段】流路内を通流する試料の検出方法であって、前記試料を含有するサンプル流をシース流で挟み込むことにより、検出方向に面する前記流路の壁面に対して垂直に積層された状態の層流を形成する第1層流形成工程と、該第1層流形成工程を経た後に、前記層流を、前記壁面に対して平行な積層状態となるように曲折させる層流曲折工程と、該層流曲折工程を経た後に、前記試料の検出を行う試料検出工程と、を少なくとも行う検出方法を提供する。
【解決手段】流路内を通流する試料の検出方法であって、前記試料を含有するサンプル流をシース流で挟み込むことにより、検出方向に面する前記流路の壁面に対して垂直に積層された状態の層流を形成する第1層流形成工程と、該第1層流形成工程を経た後に、前記層流を、前記壁面に対して平行な積層状態となるように曲折させる層流曲折工程と、該層流曲折工程を経た後に、前記試料の検出を行う試料検出工程と、を少なくとも行う検出方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路を用いた検出方法に関する。より詳しくは、流路内を通流する試料を検出する検出方法、流路内における物質間の相互作用を検出する相互作用検出方法、並びに、前記検出方法及び相互作用検出方法に適した検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、流路やキャピラリー、あるいは2次元又は3次元のプラスチックやガラス等の基板上に形成した流路中に、細胞や微生物等の生体微小粒子、マイクロビーズなどの微小粒子等を通流させ、これらを物理的手段や光学的手段等によって検出し、解析や分離等を行ったり、前記流路中で、物質間の相互作用や反応を進行させて、これらを物理的手段や光学的手段等によって検出を行ったりする技術が進展している。
【0003】
当該技術は、疾病診断、薬物等の化合物スクリーニング、法医学、遺伝情報の網羅的解析、生体物質の機能解析、プロテオーム解析、生体内反応の解析、食品分野、農業分野、工学分野、犯罪鑑識分野などでは、既に重要な基幹技術となりつつある。このような流路を用いた微小粒子等の解析又は分離の手法の代表的な一例としては、フローサイトメトリーと呼ばれる分析手法がある。
【0004】
フローサイトメトリーとは、解析の対象となる微小粒子等を流体中に流し込み、該微小粒子の列を形成し、整列した該微小粒子にレーザ光等を照射することにより、各微小粒子から発せられた蛍光や散乱光を検出することで微小粒子の解析を行い、更には、解析結果に基づいて、微小粒子の分取を行う分析手法である。
【0005】
フローサイトメトリーのように、流路等に通流させた試料の検出等を行う場合には、一般的に、試料を含有させた層流を形成することにより、該層流中で検出対象となる細胞等を整然と搬送しながら、物理的手段や光学的手段等による検出が行われる。
【0006】
層流の形成方法について、フローサイトメトリーを例に挙げて、より具体的に説明すると、例えば、三叉路形の流路などでは、その両側の流路にシース流と呼ばれる細胞等のサンプルの整流を促すための流体媒体を一定の流量で流入させ、更に、三叉路流路の中央流路に検出対象となる細胞等を含むサンプル流を一定の流量で注入する。この時、流路内のレイノルズ数が比較的小さいために、流路中のlaminar flow(層流)の原理によりそれぞれの流れは互いに混合されず、層を成した流れ(層流)が形成される。
【0007】
このように、流路等に通流させた試料の検出や分取等を精度良く行うには、層流をいかに制御できるか否かが重要である。例えば、特許文献1には、簡便に精度高く細胞等の微粒子を分別するために、微粒子の移動方向を制御できるマイクロチップとして、基板上に、微粒子含有溶液導入流路と、当該流路の少なくとも一方の側部に配置されたシース流形成流路と、導入された微粒子を計測するための微粒子計測部位と、該微粒子計測部位の下流に設置された微粒子を分別回収するための2以上の微粒子分別流路と、微粒子計測部位から微粒子分別流路への流路口付近に設置された微粒子の移動方向を制御するための2以上の電極を有する微粒子分別マイクロチップが開示されている。
【0008】
また、特許文献2には、微小流動の流体の流れを効率良く制御又は集束させる方法として、中央チャネル(流路)内にサンプル流体を流し、集束チャネル(流路)内にシース流を流し、シース流体の流速を制御することにより、サンプル流体の流れを制御または集束させる方法が開示されている。
【0009】
更に、特許文献3では、非安定なフロー(層流)を安定させるための技術として、シース流に水の粘度よりも高い粘度を与えるために、粘度増加剤を添加したシース流を使用する技術を提案している。
【特許文献1】特開2003−107099号公報
【特許文献2】特開2004−93553号公報
【特許文献3】特表2004−500562号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
流路等に通流させた試料の検出や分取等を精度良く行うには、層流をいかに制御できるか否かが重要であり、前記の様に、従来から、層流を制御する技術や層流を安定させる技術が開発されている。
【0011】
しかし、従来の方法では、目的の試料を流路に通流させる前に、予め、目的の試料に対応した参照スペクトルビーズや参照直径ビーズ等を流路内に通流させ、最適な層流の位置、層流の量、光照射位置、受光位置、光源パワー、印加電圧等を決定する必要があり、煩雑であった。
【0012】
また、流路中は、流路壁側での通流抵抗や流路壁の表面張力等の影響により、層流の幅や位置が、検出中に変化する場合がある。また、サンプル液中には、大きさや性質の異なる試料が存在することが多いため、検出中に、対象の試料に最適な層流の位置、層流の量、光照射位置、受光位置、光源パワー、印加電圧等を変化させたい場合もある。
【0013】
この場合、従来の方法では、検出中に、試料を含有する層流の状況を検出することができないため、検出中に、層流の位置、層流の量、光照射位置、受光位置、光源パワー、印加電圧等を制御することは難しかった。
【0014】
更に、従来は、流路内を通流する流体の層流形状を、検出方向に対して平行若しくは垂直方向に制御することが難しく、精度の高い検出を行うことが難しかった。
【0015】
そこで、本発明では、目的の試料の検出と同時に、試料を含有する層流からの情報を検出することが可能な検出方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明では、まず、流路内を通流する試料の検出方法であって、
前記試料を含有するサンプル流をシース流で挟み込むことにより、検出方向に面する前記流路の壁面に対して垂直に積層された状態の層流を形成する第1層流形成工程と、
該第1層流形成工程を経た後に、前記層流を、前記壁面に対して平行な積層状態となるように曲折させる層流曲折工程と、
該層流曲折工程を経た後に、前記試料の検出を行う試料検出工程と、
を少なくとも行う検出方法を提供する。
本発明に係る検出方法では、前記第1層流形成工程を経た後に、該第1層流形成工程において形成された前記層流の層流幅及び/又は位置を検出する層流情報検出工程を更に行うことも可能である。
前記試料検出工程では、前記層流情報検出工程において検出された層流情報に基づいて、前記試料の検出を行うとより好適である。
前記層流曲折工程では、前記層流を、検出方向に面する前記流路の壁面に対して平行な積層状態となるように曲折させれば、その方法は特に限定されないが、例えば、(1)前記層流の通流方向をX方向とすると、前記層流をY軸方向に略90度曲折させる第1曲折工程と、(2)前記層流をZ軸方向に略90度曲折させる第2曲折工程と、を少なくとも行えば、確実に前記層流を、前記壁面に対して平行な積層状態となるように曲折させることができる。
本発明に係る検出方法では、前記試料検出工程を行う前に、前記層流の層流幅及び/又は位置を制御する層流制御工程を行うことも可能である。
また、本発明に係る検出方法では、前記試料検出工程を行う前に、前記試料検出工程における検出条件を制御する検出条件制御工程を行うことも可能である。
本発明に係る検出方法では、前記第1層流形成工程において積層状態の層流を形成するが、更に、前記層流曲折工程を経た後に、前記層流を、前記積層状態の両側方向からシース流で更に挟み込む第2層流形成工程を行うと好適である。
また、前記第2層流形成工程を経た2以上の層流を合流させることにより、複数の層流を形成する第3層流形成工程を行うとより好適である。
前記層流情報検出工程及び前記試料検出工程における具体的な検出方法は、層流の情報及び試料の情報が検出できれば特に限定されないが、例えば、光学的方法を用いて検出を行うことが可能である。
【0017】
本発明では、次に、流路内を通流する物質Aと物質B間の相互作用を検出する方法であって、
物質Aを含有するサンプル流を、少なくとも一部に物質Bを含有するシース流で挟み込むことにより、検出方向に面する前記流路の壁面に対して垂直に積層された状態の層流を形成する第1層流形成工程と、
該第1層流形成工程を経た後に、前記層流を、前記壁面に対して平行な積層状態となるように曲折させる層流曲折工程と、
該層流曲折工程を経た後に、前記物質Aと物質B間の相互作用の検出を行う相互作用検出工程と、
を少なくとも行う相互作用検出方法を提供する。
本発明に係る相互作用検出方法では、前記第1層流形成工程を経た後に、該第1層流形成工程において形成された前記層流の層流幅及び/又は位置を検出する層流情報検出工程を更に行うことも可能である。
前記相互作用検出工程では、前記層流情報検出工程において検出された層流情報に基づいて、前記物質Aと物質B間の相互作用の検出を行うとより好適である。
前記層流曲折工程では、前記層流を、検出方向に面する前記流路の壁面に対して平行な積層状態となるように曲折させれば、その方法は特に限定されないが、例えば、(1)前記層流の通流方向をX方向とすると、前記層流をY軸方向に略90度曲折させる第1曲折工程と、(2)前記層流をZ軸方向に略90度曲折させる第2曲折工程と、を少なくとも行えば、確実に前記層流を、前記壁面に対して平行な積層状態となるように曲折させることができる。
本発明に係る相互作用検出方法では、前記相互作用検出工程を行う前に、前記層流の層流幅及び/又は位置を制御する層流制御工程を行うことも可能である。
また、本発明に係る相互作用検出方法では、前記相互作用検出工程を行う前に、前記相互作用検出工程における検出条件を制御する検出条件制御工程を行うことも可能である。
本発明に係る相互作用検出方法では、前記第1層流形成工程において積層状態の層流を形成するが、更に、前記層流曲折工程を経た後に、前記層流を、前記積層状態の両側方向からシース流で更に挟み込む第2層流形成工程を行うと好適である。
また、前記第2層流形成工程を経た2以上の層流を合流させることにより、複数の層流を形成する第3層流形成工程を行うとより好適である。
前記層流情報検出工程及び前記相互作用検出工程における具体的な検出方法は、層流の情報及び物質Aと物質B間の相互作用が検出できれば特に限定されないが、例えば、光学的方法を用いて検出を行うことが可能である。
【0018】
本発明では、更に、流路内を通流する試料の検出装置であって、
前記通流方向をX方向とした場合に、Y軸方向に略90度に流路が曲折する第1曲折部と、Z軸方向に略90度に流路が曲折する第2曲折部と、を少なくとも備える流路と、
前記第1曲折部及び第2曲折部の少なくとも上流側の流路において、前記試料を含有する層流の層流幅及び/又は位置を検出する第1検出部と、
前記第1曲折部及び第2曲折部の少なくとも下流側の流路において、前記試料の検出を行う第2検出部と、
を少なくとも備える検出装置を提供する。
【0019】
ここで、本発明で用いる技術用語の定義付けを行う。本発明における「試料」とは、細胞や微生物、リポソーム、DNA、タンパク質などの生体関連微小粒子、あるいはラテックス粒子やゲル粒子、工業用粒子などの合成粒子、あるいは、固体に限らず液体状の物質など、流路1内を通流可能な物質であれば、全て包含する。
【0020】
本発明における「シース流」とは、試料を含有するサンプル流の整流を促すための流体媒体をいい、サンプル流の整流を損なわなければ、何らかの物質を含有するものも含む概念である。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る検出方法では、目的の試料の検出を行うと同時に、試料を含有する層流からの情報を検出することが可能である。そのため、目的の試料の検出を行う前段階の準備工程を省略でき、また、検出中に個々の検出条件を制御することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための好適な形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0023】
<検出方法>
図1は、本発明に係る検出方法のフロー図である。
【0024】
本発明に係る検出方法は、流路内を通流する試料を検出するための方法であって、第1層流形成工程(I)と、層流曲折工程(II)と、試料検出工程(III)と、を少なくとも行う方法である。また、必要に応じて、層流情報検出工程(IV)を行うことが可能である。以下、それぞれの工程について、詳細に説明する。
【0025】
(I)第1層流形成工程
第1層流形成工程(I)は、試料を含有するサンプル流F1をシース流F21、F22で挟み込むことにより、検出方向D1に面する流路1の壁面1d1に対して垂直に積層された状態の層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を形成する工程である(図1フロー図参照)。図2を用いて詳しく説明する。
【0026】
図2は、本発明に係る検出方法に用いることができる流路1の斜視模式図である。
【0027】
本発明に係る検出方法を行い得る流路1の形態は、層流を形成し得る形態であれば特に限定されず、自由に設計することができる。例えば、図2に示す形態に限らず、2次元又は3次元のプラスチックやガラス等の基板上に形成した流路1においても、本発明に係る検出方法を行うことが可能である。
【0028】
また、前記流路1の流路幅、流路深さ、流路断面形状も、層流を形成し得る形態であれば特に限定されず、自由に設計することができる。例えば、流路幅1mm以下のマイクロ流路においても、本発明に係る検出方法を行うことが可能である。特に、流路幅10μm以上1mm以下程度のマイクロ流路を用いれば、本発明に係る検出方法をより好適に行うことができる。
【0029】
流路1には、図2中符号D1で示す検出方向D1に面した流路1の壁面1d1に対して、垂直に積層された状態の層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を形成する。層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)の形成は、図2に示すように、試料を含有するサンプル流F1をシース流F21、F22で挟み込むことにより行う。
【0030】
サンプル流F1をシース流F21、F22で挟み込む具体的方法は、流路1の壁面1d1に対して垂直に積層された状態の層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を形成できれば特に限定されず、公知のあらゆる方法を採用することができる。好適な一例としては、図3に示すように、流路1に、サンプル流用流路11とシース流用流路12とを設け、サンプル流用流路11の両側からシース流用流路12を合流させることにより、サンプル流用流路11から導入されるサンプル流F1を、シース流用流路12から導入されるシース流F21、F22で両側から挟み込むことができる。
【0031】
(II)層流曲折工程
層流曲折工程(II)は、第1層流形成工程(I)を経た後に、層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を、検出方向D2に面する流路1の壁面1d2に対して平行な積層状態となるように曲折させる工程である(図1フロー図参照)。
【0032】
層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を、検出方向D2に面する流路1の壁面1d2に対して平行な積層状態とすることで、後述する試料検出工程(III)を好適に行うことができる。図4を用いて詳しく説明する。
【0033】
図4は、層流曲折工程(II)の前後の流路1内を比較する図であり、図4中符号(i)で示す図は、図2中検出方向D1、D2から視た流路1を示す断面模式図であり、符号(ii)で示す図は、検出方向D1、D2に対して側方S1、S2から視た流路1を示す断面模式図であり、符号(i−1)、(ii−1)で示す図は、それぞれ層流曲折工程(II)を行う前の流路1を示す断面模式図であり、符号(i−2)、(ii−2)で示す図は、それぞれ層流曲折工程(II)を行った後の流路1を示す断面模式図である。
【0034】
図4(i−1)に示す通り、層流曲折工程(II)を行う前は、層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)が、検出方向D1に面する流路1の壁面1d1に対して垂直に積層された状態になっているため、検出方向D1から視た場合、各層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)の層流幅(サンプル流幅f1、シース流幅f21、f22)及び位置を、正確に検出することができる。
【0035】
しかし、図4(ii−1)の側方S1から視た図に示す通り、検出方向D1からサンプル流F1中の試料Cの情報を検出しようとしても、検出軸上D11に試料Cが複数重なっているため、試料Cからの情報を別個に精度良く検出することは難しい。
【0036】
そこで、層流曲折工程(II)を行うことにより、図4(ii−2)に示すように、層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を、検出方向D2に面する流路1の壁面1d2に対して平行な積層状態とすることで、検出軸上D21上に試料Cが複数重なることを防げるため、後述する試料検出工程(III)において、試料Cからの情報を正確に検出することが可能となる。
【0037】
また、後述する層流情報検出工程(IV)で得た層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)の層流幅(サンプル流幅f1、シース流幅f21、f22)及び、流路1における位置が、層流曲折工程(II)後には、検出方向D2から視た流路1内の深さ方向の位置情報になるため、後述する試料検出工程(III)において、試料Cからの情報を精度良く検出することが可能となる。
【0038】
なお、層流曲折工程(II)を行った後は、検出方向D2から視ると、図4(i−2)に示すように、試料Cを含有するサンプル流F1が、流路1の全面に渡って観察されてしまうため、各層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)の層流幅(サンプル流幅f1、シース流幅f21、f22)及び位置を検出することは難しい。
【0039】
このように、層流曲折工程(II)を設け、更に、該層流曲折工程(II)の前後において、各検出を行うことで、層流曲折工程(II)の前には、後述する層流情報検出工程(IV)において、各層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)の層流幅(サンプル流幅f1、シース流幅f21、f22)及び位置を検出することができ、層流曲折工程(II)の後には、後述する試料検出工程(III)において、試料Cからの情報を正確に検出することができる。
【0040】
層流曲折工程(II)では、層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を、検出方向D2に面する流路1の壁面1d2に対して平行な積層状態となるように曲折させれば、その方法は特に限定されず、任意の方法を用いて自由に曲折させることができる。
【0041】
例えば、図2及び図3に示すように、(1)層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)の通流方向をX方向とすると、層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)をY軸方向に略90度曲折させる第1曲折工程と、(2)層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)をZ軸方向に略90度曲折させる第2曲折工程と、を少なくとも行えば、層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を、確実に、壁面1d2対して平行な積層状態とすることができる。
【0042】
なお、第1曲折工程(1)と第2曲折工程(2)を行う順番は特に限定されず、第1曲折工程(1)を経た後に第2曲折工程(2)を行っても、第2曲折工程(2)を行った後に第1曲折工程(1)を行ってもよい。
【0043】
また、第1曲折工程(1)は、層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)をY軸方向に曲折できれば、図5及び図6に示すように、流路の深さH分程度の曲折であっても、その後に第2曲折工程(2)を行うことにより、壁面1d2対して平行な積層状態とすることができる。
【0044】
また、図7に示すように、(1)層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)をY軸方向に略90度曲折させる第1曲折工程と、(2)層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)をZ軸方向に略90度曲折させる第2曲折工程と、(3)層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)をX軸方向に略90度曲折させる第2曲折工程と、を少なくとも行うことにより、層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を、壁面1d2に対して平行な積層状態とすることができる。この場合、流路1全体がほぼ同一軸上に形成されるため、特に、流路1を、2次元又は3次元のプラスチックやガラス等の基板上に形成する場合など面積が限られている場合などに有効である。
【0045】
なお、前記の層流曲折方法の例示では、第1曲折工程(1)、第2曲折工程(2)、及び第3曲折工程(3)のいずれも層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を、ほぼ直角に曲折しているが、90度±20度程度は許容範囲である。また、これに限定されず、例えば、図8に示すように、流路1を略螺旋状にすることで、層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を曲折させることも可能である。
【0046】
以上説明した層流曲折工程(II)は、図示しないが、2次元又は3次元のプラスチックやガラス等の基板上に形成した流路1において行うことも可能である。この場合、層流曲折工程(II)では、基板に対して垂直に積層された状態の層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を、基板に対して平行な積層状態となるように曲折させることとなる。
【0047】
(III)試料検出工程
試料検出工程(III)は、層流曲折工程(II)を経た後に、試料Cからの情報を検出する工程である(図1フロー図参照)。
【0048】
試料検出工程(III)では、サンプル流F1に含有される試料Cの検出ができれば、その検出方法は特に限定されず、公知の方法を自由に採用することができる。例えば、光学的方法、電気的方法、磁気的方法などを挙げることができ、特に、本発明においては、光学的方法が好適である。
【0049】
光学的方法としては、例えば、蛍光測定、散乱光測定、透過光測定、反射光測定、回折光測定、紫外分光測定、赤外分光測定、ラマン分光測定、FRET測定、FISH測定その他各種スペクトラム測定等の方法が挙げられる。また、電荷結合素子(CCD)やComplementary Metal Oxide Semiconductor(CMOS)などのエリア撮像素子を用いて検出を行えば、一画面全体の試料Cから発せられるイメージを光電変換することができる。
【0050】
具体的な一例を挙げると、図2中矢印D2方向から光照射を行い、該光照射によってサンプル流F1中の試料Cから発生される蛍光や散乱光を、光検出器により検出することにより、試料Cを検出することができる。
【0051】
光学的方法を採用する場合における光照射の種類は特に限定されないが、試料から蛍光や散乱光を確実に発生させるためには、光方向、波長、光強度が一定の光が望ましい。一例としては、レーザやLED(Light Emission Diode:発光ダイオード)を挙げることができる。
【0052】
また、光学的方法を採用する場合における光照射方法は特に限定されないが、例えば、図2中符号W2で示すように、照射スポットを流路1幅方向に走査させながら光学的情報を検出しても、図2中符合L2で示すように、照射スポットを流路1通流方向に走査させながら光学的情報を検出してもよい。
【0053】
電気的方法としては、例えば、サンプル流F1に含有される試料Cに関する抵抗値、容量値(キャパシタンス値)、インダクタンス値、インピーダンス、電極間の電界の変化値等の測定を行う方法が挙げられる。
【0054】
磁気的方法としては、例えば、サンプル流F1に含有される試料Cの表面に磁性体を修飾し、磁化、磁界変化、磁場変化等の測定を行う方法が挙げられる。
【0055】
なお、後述する層流情報検出工程(IV)を行う場合には、層流情報検出工程(IV)において検出された層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)の層流幅(サンプル流幅f1、シース流幅f21、f22)及び/又は位置情報に基づいて、試料Cの検出を行うことが望ましい。層流情報検出工程(IV)では、層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)の層流幅(サンプル流幅f1、シース流幅f21、f22)、及び流路1における位置情報が検出されるため、サンプル流F1に含有される試料Cを確実に精度良く検出することが可能となるからである。
【0056】
(IV)層流情報検出工程
層流情報検出工程(IV)は、第1層流形成工程(I)において形成された層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)の層流幅及び流路1における位置を検出する工程である(図1フロー図参照)。
【0057】
具体的には、第1層流形成工程(I)において、積層状態に形成された層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)の層流幅及び流路1における位置を、積層状態の断面側(図2中符号D1参照)から検出する。
【0058】
層流情報検出工程(IV)では、層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)の層流幅及び流路1における位置が検出できれば、その検出方法は特に限定されず、公知の方法を自由に採用することができる。例えば、光学的方法、電気的方法、磁気的方法などを挙げることができ、特に、本発明においては、光学的方法が好適である。
【0059】
光学的方法としては、例えば、蛍光測定、散乱光測定、透過光測定、反射光測定、回折光測定、紫外分光測定、赤外分光測定、ラマン分光測定、FRET測定、FISH測定その他各種スペクトラム測定等の方法が挙げられる。また、電荷結合素子(CCD)やComplementary Metal Oxide Semiconductor(CMOS)などのエリア撮像素子を用いて検出を行えば、一画面全体の流路1から発せられるイメージを光電変換することができる。
【0060】
具体的な一例を挙げると、図2中矢印D1方向から光照射を行い、該光照射によってサンプル流F1やシース流F21、F22に含有される試料C等の物質から発生される蛍光や散乱光を、光検出器により検出することにより、サンプル流F1、シース流F21、F22の層流幅及び流路1における位置を検出することができる。
【0061】
光学的方法を採用する場合における光照射の種類は特に限定されないが、試料から蛍光や散乱光を確実に発生させるためには、光方向、波長、光強度が一定の光が望ましい。一例としては、レーザやLED(Light Emission Diode:発光ダイオード)を挙げることができる。
【0062】
また、光学的方法を採用する場合における光照射方法は特に限定されないが、例えば、図2中符号W1で示すように、照射スポットを流路幅方向に走査させながら光学的情報を検出してもよい。
【0063】
電気的方法としては、例えば、サンプル流F1やシース流F21、F22に含有される試料C等の物質に関する抵抗値、容量値(キャパシタンス値)、インダクタンス値、インピーダンス、電極間の電界の変化値等の測定を行う方法が挙げられる。
【0064】
磁気的方法としては、例えば、サンプル流F1やシース流F21、F22に含有される試料C等の物質の表面に磁性体を修飾し、磁化、磁界変化、磁場変化等の測定を行う方法が挙げられる。
【0065】
このように、本発明に係る検出方法では、前記第1層流形成工程(I)を行うことにより、検出方向D1に面する流路1の壁面1d1に対して垂直に積層された状態の層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を形成するため、続いて行う層流情報検出工程(IV)において、層流サンプル流F1、シース流F21、F22)の層流幅及び流路1における位置などを、正確に検出することが可能となる。
【0066】
本発明に係る検出方法は、以上説明した第1層流形成工程(I)、層流曲折工程(II)、試料検出工程(III)、を少なくとも行い、必要に応じて、層流情報検出工程(IV)を行う方法であるが、以下の層流制御工程(V)、検出条件制御工程(VI)、第2層流形成工程(VII)、第3層流形成工程(VIII)を、更に必要に応じて、適宜行うことが可能である。以下、各工程について、詳しく説明する。
【0067】
(V)層流制御工程
層流制御工程(V)は、試料検出工程(III)を行う前に、層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)の層流幅(サンプル流幅f1、シース流幅f21、f22)及び/又は流路1における位置を制御する工程である(図1フロー図参照)。
【0068】
層流制御工程(V)は、試料検出工程(III)を行う前に行えばよく、例えば図1のフロー図に示すように、層流曲折工程(II)を行う前に行っても、層流曲折工程(II)を行った後に行っても良い。ただし、層流情報検出工程(IV)を行う場合には、層流情報検出工程(IV)を経た後に行うことが望ましい。層流情報検出工程(IV)において検出された層流情報に基づいて、層流制御を行うことができるからである。以下、層流制御方法の具体例を、図9から12を用いて説明する。
【0069】
図9は、層流情報検出工程(IV)を経た後の層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を積層状態の側方から見た断面摸式図であり、図9中符号(i)で示す図は、層流制御工程(V)を行う前を、符号(ii)で示す図は、層流制御工程(V)を行った後を示している。
【0070】
層流情報検出工程(IV)において、図9(i)に示すように、シース流幅f21がシース流幅f22に比べて狭く、サンプル流F1の位置が流路1の中央部からずれていることが、検出された場合、例えば、シース流F21の送液量を増量することにより、図9(ii)に示すように、シース流幅f21とシース流幅f22をほぼ同一にし、サンプル流F1の位置を流路1の中央部へ制御することができる。
【0071】
なお、本実施形態では、サンプル流F1の位置を流路1の中央部へ制御しているが、これに限定されず、サンプル流F1、シース流F21、F22の送液量を必要に応じて増減し、サンプル流F1の位置を流路1の任意の位置に自由に制御することが可能である。
【0072】
図10は、層流情報検出工程(IV)を経た後の図9とは異なる層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を積層状態の側方から見た断面摸式図であり、図10中符号(i)で示す図は、層流制御工程(V)を行う前を、符号(ii)で示す図は、層流制御工程(V)を行った後を示している。
【0073】
層流情報検出工程(IV)において、図10(i)に示すように、サンプル流F1の流路幅f1が、試料Cの粒径より大きいことが検出された場合、例えば、流路1幅方向に2つ以上の試料Cが重なった状態で通流されてしまったり、ひいては試料Cの順番が入れ替わってしまったりすることもあり、試料検出工程(III)における検出精度が低下してしまう恐れがある。
【0074】
そこで、シース流F21、F22の送液量を増量することにより、図10(ii)に示すように、サンプル流F1の流路幅f1を試料Cの粒径に合わせるように、層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を制御することで、例えば、試料Cを光学的に検出する際などには、検出スポット内に細胞や微小粒子等の試料Cを1個ずつ配列させることができ、別個に検出を行うことが可能となるなど、試料検出工程(III)における検出精度を向上させることができる。
【0075】
図11は、層流情報検出工程(IV)を経た後の図9及び図10とは異なる層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を積層状態の側方から見た断面摸式図であり、図11中符号(i)で示す図は、層流制御工程(V)を行う前を、符号(ii)で示す図は、層流制御工程(V)を行った後を示している。なお、図11符号Vで示す破線曲線は、流路1内の流体速度分布を示すハーゲンポアズイユ(Hagen-Poiseuille)速度曲線である。
【0076】
流路1内は、流路壁側での通流抵抗や流路壁の表面張力等の影響により、流体速度分布曲線Vが示すように、流路1中央部の流速が最も早く、流路壁へ近づくに従って流速が遅くなる。
【0077】
そのため、図11(i)に示すように、サンプル流F1が流路1の中央部を通流すると、サンプル流F1中の試料Cの流速も早くなり、試料検出工程(III)における検出感度が低下する場合が生じる。
【0078】
そこで、例えば、図11(ii)に示すように、シース流F21の送液量を減らし、シース流F22の送液量を増量することで、サンプル流F1をシース流F21側へ偏らせるように制御することにより、サンプル流F1の流速を遅くし、試料検出工程(III)における検出感度を向上させることができる。
【0079】
なお、本実施形態では、サンプル流F1の流速を遅くする制御を行っているが、特にこれに限定されず、例えば、試料検出工程(III)における検出速度を速めるために、サンプル流F1を流路1の中央部を通流させるように制御し、サンプル流F1の流速を早めることも可能である。
【0080】
このような流体速度の制御は、図12に示す方法によっても実現させることが可能である。図12は、層流情報検出工程(IV)を経た後の図9から図11とは異なる層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を積層状態の側方から見た断面摸式図であり、図12中符号(i)で示す図は、層流制御工程(V)を行う前を、符号(ii)で示す図は、層流制御工程(V)を行った後を示している。
【0081】
一般に、流路1へ同一圧で流体を導入した場合、流路幅Hが2倍になると、流速は1/4倍に減速する。そこで、図12(ii)に示すように、流路幅Hを2倍にすることで、サンプル流F1の流速VをV/4へ減速するように制御することができ、試料検出工程(III)における検出感度を向上させることができる。
【0082】
なお、本実施形態では、サンプル流F1の流速を遅くする制御を行っているが、特にこれに限定されず、例えば、試料検出工程(III)における検出速度を速めるために、流路幅Hを狭くして、サンプル流F1の流速Vを加速させるように制御することも可能である。また、流路幅Hに限らず、流路の深さや断面形状等を変化させることで、サンプル流F1の流速Vを変化させることも可能である。
【0083】
(VI)検出条件制御工程
検出条件制御工程(VI)は、試料検出工程(III)を行う前に、試料検出工程(III)における検出条件を制御する工程である(図1フロー図参照)。
【0084】
検出条件制御工程(VI)は、少なくとも試料検出工程(III)を行う前に行えばよく、例えば図1のフロー図に示すように、層流曲折工程(II)を行う前に行っても、層流曲折工程(II)を行った後に行っても良い。また、図示しないが、後述する第2層流形成工程(VII)及び第3層流形成工程(VIII)を行う前に行っても、第2層流形成工程(VII)及び第3層流形成工程(VIII)を行った後に行っても良い。ただし、層流情報検出工程(IV)を行う場合には、層流情報検出工程(IV)を経た後に行うことが望ましい。層流情報検出工程(IV)において検出された層流情報に基づいて、検出条件制御を行うことができるからである。
【0085】
検出条件制御工程(VI)では、試料検出工程(III)における検出条件の制御を行うが、制御を行う検出条件は特に限定されない。例えば、光照射スポットの位置、照射スポットの形状、光照射強度、パルス幅、パルス比率、焦点位置、光検出器の増幅率、光照射器の増幅率等を制御することができる。
【0086】
検出条件制御の一例について図13を用いて説明する。図13は、層流情報検出工程(IV)を経た後の層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を積層状態の側方から見た断面摸式図であり、図13中符号(i)で示す図は、検出条件制御工程(VI)を行う前を、符号(ii)で示す図は、検出条件制御工程(VI)を行った後を示している。
【0087】
例えば、層流情報検出工程(IV)において、図13(i)に示すように、シース流幅f21がシース流幅f22に比べて狭く、サンプル流F1の位置がシース流F21側へ偏っていることが検出された場合、図13(ii)に示すように、光照射スポットの位置をサンプル流F1の通流位置に制御することで、試料検出工程(III)における検出精度を向上させることができる。
【0088】
従来、流路1を通流する試料Cの検出を行う場合には、流路1の中央部に目的の試料Cを含む層流(サンプル流F1)を形成させ、該試料Cに向かって光照射等を行い、試料C検出を行っていた。しかし、この方法では、検出中は、試料Cからの情報のみしか得ることができないため、検出等に最適な検出条件を、検出中に制御することが困難であった。そのため、予め、試料Cに対応した参照スペクトルビーズや参照直径ビーズ等を流通させ、検出に最適な検出条件を特定した後に、実際に試料Cを通流させて検出を行うという、前準備工程が必要であった。
【0089】
しかし、本発明に係る検出方法では、実際に試料Cを流路1内に通流させた状態で、層流情報検出工程(IV)を行い、この情報を検出条件制御に用いることができるため、予め、試料Cに対応した参照スペクトルビーズや参照直径ビーズ等を流通させるような前準備工程を行う必要がない。そのため、検出時間の短縮や検出精度の向上が実現できる。
【0090】
(VII)第2層流形成工程
第2層流形成工程(VII)は、層流曲折工程(II)を経た後に、積層状態の層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を、積層状態の両側方向からシース流F23、F24で更に挟み込む工程である(図1フロー図参照)。図14及び図15を用いて詳しく説明する。
【0091】
図14及び図15は、本発明に係る検出方法に用いることができる図2、図3、図5から図8とは異なる流路1の斜視模式図である。
【0092】
層流曲折工程(II)を経ると、流路1には、図14及び図15中符号D2で示す検出方向D2に面した流路1の壁面1d2に対して、平行に積層された状態の層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)が形成されている。そこへ、積層状態の両側方向からシース流F23、F24で更に挟み込むと、図14及び図15に示すように、サンプル流F1が流路1の中心部に収束された状態の層流を形成することができる。
【0093】
層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)をシース流F23、F24で挟み込む具体的方法は、サンプル流F1が流路1の中心部に収束された状態の層流を形成することができれば特に限定されず、公知のあらゆる方法を採用することができる。好適な一例としては、図14及び図15に示すように、層流曲折工程(II)を経た後の流路1の両側からシース流用流路13を合流させることにより、サンプル流F1が流路1の中心部に収束された状態の層流を形成することができる。
【0094】
このように、第2層流形成工程(VII)を行うことで、サンプル流F1を流路1の中心部に収束された状態に形成すれば、検出方向D2及び側方S2のいずれから視た場合も、試料Cを整然と列を成した状態で検出することができる。
【0095】
(VIII)第3層流形成工程
第3層流形成工程(VIII)は、第2層流形成工程(VII)を経た2以上の層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を合流させることにより、複数の層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を形成する工程である(図1フロー図参照)。図16を用いて詳しく説明する。
【0096】
図16中符号(i)で示す図は、本発明に係る検出方法に用いることができる基板T上に形成した流路1の上方視平面模式図であり、符号(ii)で示す図は、図16(i)中符号R1で示す破線円部分の流路1の断面模式図である。符号111は、サンプル流導入口を、符号121及び131は、シース流導入口をそれぞれ示す。なお、本実施形態では、基板T上に流路1を設けているが、特にこの形態に限定されず、例えば、図14又は図15に示す流路1を複数合流させた流路を用いることも可能である。
【0097】
第2層流形成工程(VII)を経ると、流路1には、サンプル流F1が流路1の中心部に収束された状態の層流(サンプル流F1、シース流F21、F22、F23、F24)が形成されている(図16(ii)参照)。この層流(サンプル流F1、シース流F21、F22、F23、F24)を図16(i)に示すように2以上合流させると、図17に示すような複数の層流(サンプル流F1、シース流F21、F22、F23、F24)が形成される。
【0098】
図17中符号(i)で示す図は、図16(i)中符号R2で示す破線円部分の流路1を、検出方向D2から視た断面模式図であり、符号(ii)で示す図は、図16(i)中符号R2で示す破線円部分の流路1を、通流方向から視た断面模式図である。
【0099】
第3層流形成工程(VIII)を行うと、図17に示すように、検出方向D2から視て、複数のサンプル流F1を、形成することができる。そのため、例えば、それぞれのサンプル流F1に含有させる試料Cの種類を変えることにより、一度に何種類もの試料Cの検出を行うことができ、検出時間の大幅な短縮が実現できる。
【0100】
以上説明した検出方法で検出することが可能な試料Cは、細胞や微生物、リポソーム、DNA、タンパク質などの生体関連微小粒子、あるいはラテックス粒子やゲル粒子、工業用粒子などの合成粒子、あるいは、固体に限らず液体状の物質など、流路1内を通流可能な物質であれば、全て包含する。
【0101】
<相互作用検出方法>
本発明に係る相互作用検出方法は、流路内を通流する物質Aと物質B間の相互作用を検出するための方法であって、第1層流形成工程(I)と、層流曲折工程(II)と、相互作用検出工程(III)と、を少なくとも行う方法である。また、必要に応じて、層流情報検出工程(IV)、を行うことが可能である。更に必要に応じて、層流制御工程(V)、検出条件制御工程(VI)、第2層流形成工程(VII)、第3層流形成工程(VIII)を行うことも可能である。それぞれの工程は、前述した検出工程のそれぞれの工程と同様であるので、以下、相互作用検出方法特有の事項について、図18及び図19を用いて説明する。
【0102】
図18は、本発明に係る相互作用検出方法を行う際の流路1内の様子を説明するための図であり、層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を、積層状態の側方から見た断面摸式図である。
【0103】
本発明に係る相互作用検出方法では、サンプル流F1に物質Aを含有させ、シース流F21、F22の少なくとも一方に物質Bを含有させ、これら物質Aと物質B間で進行する相互作用を検出する。なお、本実施形態では、シース流F21に物質Bを含有させているが、これに限定されず、シース流F22に物質Bを含有させても、シース流F21及びシース流F22の両方に物質Bを含有させても良い。
【0104】
また、シース流F21とシース流F22に、異なる種類の物質Bを含有させて、異なる相互作用を同時に検出することも可能である。
【0105】
物質Aは、流路1内を通流可能な物質であれば、特に限定されない。例えば、細胞や微生物、リポソーム、DNA、タンパク質などの生体関連微小粒子、あるいはラテックス粒子やゲル粒子、工業用粒子などの合成粒子などを挙げることができる。なお、サンプル流F1に含有させる物質Aは、単一の物質に限らず、複数の物質を同時に含有させて、異なる複数の相互作用を検出することも可能である。
【0106】
物質Bは、流路1内を通流可能な物質であり、かつ、物質Aと相互作用し得る物質であれば特に限定されず、例えば、蛍光色素等の蛍光物質、抗体、放射性物質、マイクロビーズ、pH調整液、濃度調整液、溶血液、生理食塩水などあらゆる試薬や調製液、薬液などが挙げられる。蛍光物質としては、例えば、Cascade Blue、Fluorescein isothiocyanate(FITC)、Phycoerythrin(PE)、Phycoerythrin-Cy5(PE-Cy5)、Phycoerythrin-Cy7(PE-Cy7)、Texas Red、Allophycocyanin(APC)、Allophycocyanin-Cy7 (APC-Cy7)等が挙げられる。なお、シース流F21、F22に含有させる物質Bは、単一の物質に限らず、複数の物質を同時に含有させて、異なる複数の相互作用を検出することも可能である。
【0107】
これらの物質A及び物質Bを流路1内で相互作用させることにより、物質A及び物質Bを流路1内に通流させながら、物質Aを物質Bで化学的又は物理的に修飾することができる。
【0108】
また、この場合、図18中符号L3で示すように、相互作用検出を流路1の通流方向に走査させながら行うことにより、物質Aの物質Bによる修飾量を、流路1の任意の位置毎に検出することができ、この修飾量をフィードバックすることにより、物質Bの種類やシース流F21の流量等を制御することも可能である。即ち、流路1内の流体の速度を予め設定しておけば、相互作用が検出された位置から、その物質の反応時間を算出することが可能である。
【0109】
更に、本発明に係る相互作用検出方法を用いれば、流路1内での相互作用の有無を検出することにより、物質Bと相互作用を行う物質Aをスクリーニングする方法、例えば、HIV(Human Immunodeficiency Virus)の陽性反応などに応用することができる。
【0110】
図19は、本発明に係る相互作用検出方法を行う際の流路1内の様子を説明するための図であり、図18とは異なる層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を積層状態の側方から見た断面摸式図である。
【0111】
本実施形態では、シース流F21の流速v1をシース流22の流速v2より早く設定している。このようにサンプル流F1の両側のシース流F21とシース流22の流速v1及びv2を異ならせることで、図19に示すように、サンプル流F1中の物質Aが回転する。
【0112】
この場合、例えば、シース流F22に生理食塩水等を用いることにより、物質Aに結合した不純物質や、修飾不完全な物質Bなどを洗浄することも可能である。
【0113】
以上説明した相互作用検出方法を、図16及び図17に示すように、複数の層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)が形成された流路1内で行う場合、例えば、それぞれのサンプル流F1に異なる種類の物質Aを含有させたり、それぞれのシース流F21、F22、F23、F24に異なる種類の物質Bを含有させたりすることで、一度に複数の修飾や、スクリーニングを行うことが可能となる。
【0114】
<検出装置>
図20は、本発明に係る検出装置2の一実施形態に係る概念を示す斜視模式である。本発明に係る検出装置2は、大別すると、流路1と、第1検出部31と、第2検出部32と、を少なくとも備える。以下、それぞれの構成、機能等について詳細に説明する。
【0115】
(1)流路1
本発明に係る検出装置2に用いることができる流路1は、前記試料の検出を行う第2検出部と、前記第1検出部によって検出が行われる流路位置と、前記第2検出部によって検出が行われる流路位置と、の間に、前記流路の前記第1検出部側の壁面に対して垂直に積層された状態の層流を、前記第2検出部側の壁面に対して平行な積層状態となるように曲折させる曲折部を少なくとも備える。
【0116】
本発明に係る検出部に備える前記曲折部は、前記層流を、前記第1検出部側の壁面に対して垂直に積層された状態から、前記第2検出部側の壁面に対して平行な積層状態となるように曲折させることができれば、その構造は特に限定されないが、本実施形態では、一例として、前記通流方向をX方向とした場合に、Y軸方向に略90度に流路が曲折する第1曲折部101と、Z軸方向に略90度に流路が曲折する第2曲折部102と、を少なくとも備えた曲折部を挙げて以下説明する。
【0117】
本実施形態では、このような第1曲折部101、第2曲折部102を備えることで、流路1内に形成された層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)の積層方向を変更することができる。
【0118】
例えば、図20に示すように、検出方向D1に面する流路1の壁面1d1に対して垂直に積層された状態の層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を、第1曲折部101及び第2曲折部102を通流させることにより、検出方向D2に面する流路1の壁面1d2に対して平行に積層された状態へ変更することができる。
【0119】
なお、第1曲折部101と第2曲折部102は、図20に示す形態に限定されず、例えば、図21に示すように、第1曲折部101は、流路1の深さH分程度の曲折であっても、その後に第2曲折部102を通流させることにより、層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を、壁面1d2対して平行な積層状態とすることができる。
【0120】
流路1の流路幅、流路深さ、流路断面形状は、層流を形成し得る形態であれば特に限定されず、自由に設計することができる。例えば、流路幅1mm以下のマイクロ流路1を、本発明に係る検出装置に用いることが可能である。特に、流路幅10μm以上1mm以下程度のマイクロ流路を用いれば、本発明に係る検出方法及び相互作用検出方法をより好適に行うことができる。
【0121】
流路1の第1曲折部101及び第2曲折部102の上流には、図22に示すように、サンプル流用流路11と該サンプル流用流路11の両側から合流するシース流路12を設けることもできる。サンプル流用流路11とシース流用流路12を設けることにより、サンプル流用流路11から導入されるサンプル流F1を、シース流用流路12から導入されるシース流F21、F22で両側から挟み込んだ状態の層流を簡単に形成することができる。
【0122】
また、流路1の第1曲折部101及び第2曲折部102の下流には、図22に示すように、流路1の両側から合流するシース流路13を設けることもできる。シース流用流路13を設けることにより、サンプル流F1が流路1の中心部に収束された状態の層流を形成することができる。
【0123】
なお、図22に示す検出装置2の場合も、第1曲折部101と第2曲折部102は、図22に示す形態に限定されず、例えば、図23に示すように、第1曲折部101は、流路1の深さH分程度の曲折であっても、その後に第2曲折部102を通流させることにより、層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を、壁面1d2対して平行な積層状態とすることができる。
【0124】
流路1は、図20から図23の形態に限定されず、自由に設計することができる。例えば、図24に示すように、2次元又は3次元のプラスチックやガラス等の基板T上に形成した流路1を、本発明に係る検出装置に用いることも可能である。更に、図25に示すように、複数の流路1を合流させて用いることも可能である。
【0125】
なお、符号111は、サンプル流導入口を、符号121及び131は、シース流導入口をそれぞれ示す。シース流導入口121、131は、それぞれのシース流用流路12、13に、各1つずつ個別に設けているが、特にこの形態に限定されない。例えば、各シース流用流路12、13のシース流導入口121a、131aと、シース流導入口121b、131b(図26(i)参照)とを、図26(ii)、(iii)、(iv)に示すようにそれぞれ共通のシース流導入口121、131とすることで、基板T上のシース流導入口121、131の数を削減することができ、シース流導入の作業効率を上げることが可能となる。
【0126】
(2)第1検出部31
第1検出部31では、流路1の第1曲折部101及び第2曲折部102の少なくとも上流において、層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)の層流幅及び流路1における位置を検出する。
【0127】
第1検出部では、層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)の層流幅及び流路1における位置が検出できれば、その検出方法は特に限定されず、公知の方法を自由に採用することができる。例えば、光学的方法、電気的方法、磁気的方法などを挙げることができ、特に、本発明においては、光学的方法が好適である。
【0128】
光学的方法としては、例えば、蛍光測定、散乱光測定、透過光測定、反射光測定、回折光測定、紫外分光測定、赤外分光測定、ラマン分光測定、FRET測定、FISH測定その他各種スペクトラム測定等の方法が挙げられる。また、電荷結合素子(CCD)やComplementary Metal Oxide Semiconductor(CMOS)などのエリア撮像素子を用いて検出を行えば、一画面全体の試料Cから発せられるイメージを光電変換することができる。
【0129】
光学的方法を採用する場合における光照射の種類は特に限定されないが、試料から蛍光や散乱光を確実に発生させるためには、光方向、波長、光強度が一定の光が望ましい。一例としては、レーザやLED(Light Emission Diode:発光ダイオード)を挙げることができる。
【0130】
また、光学的方法を採用する場合における光照射方法は特に限定されないが、例えば、図20中符号W1で示すように、照射スポットを流路幅方向に走査させながら光学的情報を検出してもよい。
【0131】
電気的方法としては、例えば、サンプル流F1やシース流F21、F22に含有される試料C等の物質に関する抵抗値、容量値(キャパシタンス値)、インダクタンス値、インピーダンス、電極間の電界の変化値等の測定を行う方法が挙げられる。
【0132】
磁気的方法としては、例えば、サンプル流F1やシース流F21、F22に含有される試料C等の物質の表面に磁性体を修飾し、磁化、磁界変化、磁場変化等の測定を行う方法が挙げられる。
【0133】
本発明に係る検出装置2に備える第1検出部31の個数は、特に限定されず、図25に示すように、流路1を複数設ける場合などには、第1検出部31も複数備えることも自由である。
【0134】
なお、図25に示す実施形態の場合でも、1つの第1検出部31を走査させることにより、複数の流路1内の層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)の層流幅及び流路1における位置を検出することも可能である。
【0135】
(2)第2検出部32
第2検出部32では、流路1の第1曲折部101及び第2曲折部102の少なくとも下流において、試料Cから発せられる情報を検出する。なお、検出方法は、第1検出部31と同様に自由に選択することができる。
【0136】
第2検出部32における検出条件は、第1検出部31で得た層流情報に基づいて、制御することが可能である。例えば、光照射スポットの位置、照射スポットの形状、光照射強度、パルス幅、パルス比率、焦点位置、光検出器の増幅率、光照射器の増幅率等を制御することができる。
【0137】
本発明に係る検出装置2に備える第2検出部32の個数も、特に限定されず、複数備えることも自由である。例えば、図示しないが、流路1内での相互作用などの反応量の違いを、流路1の位置毎に検出したい場合など、流路1の通流方向に複数の第2検出部32を備えることもできる。
【0138】
なお、この場合、1つの第2検出部32を走査させることにより、流路1の位置毎に反応量の違いを検出することも可能である。
【0139】
以上のように、本発明に係る検出装置2は、実際に試料Cを検出する第2検出部32とは別に、流路1内の層流情報を検出する第1検出部31を備えているため、試料1を流路1内に通流させた状態で、層流情報の検出を行い、この情報を第2検出部32による試料Cの検出条件制御に用いることができる。そのため、予め、試料Cに対応した参照スペクトルビーズや参照直径ビーズ等を流通させるような前準備工程を行う必要がなく、検出時間の短縮や検出精度の向上が実現できる。
【0140】
また、本発明に係る検出装置2は、第1曲折部101と第2曲折部102とを備える流路1を備えているため、第1検出部31による層流情報検出後に、流路1内の層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)の積層方向を変更することができる。そのため、第1検出部31と第2検出部32からの検出を、同一方向から行うことが可能である。従って、装置の小型化等を実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】本発明に係る検出方法のフロー図である。
【図2】本発明に係る検出方法に用いることができる流路1の斜視模式図である。
【図3】本発明に係る検出方法に用いることができる図2とは異なる流路1の斜視模式図である。
【図4】層流曲折工程(II)の前後の流路1内を比較する図であり、図4(A)は、検出方向Dから視た流路1を示す断面模式図であり、図4(ii)は、検出方向Dに対して側方から視た流路1を示す断面模式図であり、図4(i−1)、(ii−1)は、それぞれ層流曲折工程(II)を行う前の流路1を示す断面模式図であり、図4(i−2)、(ii−2)は、それぞれ層流曲折工程(II)を行った後の流路1を示す断面模式図である。
【図5】本発明に係る検出方法に用いることができる図2及び図3とは異なる流路1の斜視模式図である。
【図6】本発明に係る検出方法に用いることができる図2、図3及び図5とは異なる流路1の斜視模式図である。
【図7】本発明に係る検出方法に用いることができる図2、図3、図5及び図6とは異なる流路1の斜視模式図である。
【図8】本発明に係る検出方法に用いることができる図2、図3、図5から図7とは異なる流路1の斜視模式図である。
【図9】層流情報検出工程(IV)を経た後の層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を積層状態の側方から見た断面摸式図であり、図9(i)は、層流制御工程(V)を行う前を、図9(ii)は、層流制御工程(V)を行った後を示す断面摸式図である。
【図10】層流情報検出工程(IV)を経た後の図9とは異なる層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を積層状態の側方から見た断面摸式図であり、図10(i)は、層流制御工程(V)を行う前を、図10(ii)は、層流制御工程(V)を行った後を示す断面摸式図である。
【図11】層流情報検出工程(IV)を経た後の図9、及び図10とは異なる層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を積層状態の側方から見た断面摸式図であり、図11(i)は、層流制御工程(V)を行う前を、図11(ii)は、層流制御工程(V)を行った後を示す断面摸式図である。
【図12】層流情報検出工程(IV)を経た後の図9から図11とは異なる層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を積層状態の側方から見た断面摸式図であり、図12(i)は、層流制御工程(V)を行う前を、図12(ii)は、層流制御工程(V)を行った後を示す断面摸式図である。
【図13】層流情報検出工程(IV)を経た後の層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を積層状態の側方から見た断面摸式図であり、図13(i)は、検出条件制御工程(VI)を行う前を、図12(ii)は、検出条件制御工程(VI)を行った後を示す断面摸式図である。
【図14】本発明に係る検出方法に用いることができる図2、図3、図5から図8とは異なる流路1の斜視模式図である。
【図15】本発明に係る検出方法に用いることができる図2、図3、図5から図8、及び図14とは異なる流路1の斜視模式図である。
【図16】図16(i)は、本発明に係る検出方法に用いることができる基板T上に形成した流路1の上方視平面模式図であり、図16(ii)は、図16(i)中符号R1で示す破線円部分の流路1の断面模式図である。
【図17】図17(i)は、図16(i)中符号R2で示す破線円部分の流路1を、検出方向D2から視た断面模式図であり、図17(ii)は、図16(i)中符号R2で示す破線円部分の流路1を、通流方向から視た断面模式図である。
【図18】本発明に係る相互作用検出方法を行う際の流路1内の様子を説明するための図であり、層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を積層状態の側方から見た断面摸式図である。
【図19】本発明に係る相互作用検出方法を行う際の流路1内の様子を説明するための図であり、図18とは異なる層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を積層状態の側方から見た断面摸式図である。
【図20】本発明に係る検出装置2の一実施形態に係る概念を示す斜視模式図である。
【図21】本発明に係る検出装置2の図20とは異なる実施形態に係る概念を示す斜視模式である。
【図22】本発明に係る検出装置2の図20及び図21とは異なる実施形態に係る概念を示す斜視模式である。
【図23】本発明に係る検出装置2の図20から図22とは異なる実施形態に係る概念を示す斜視模式である。
【図24】本発明に係る検出装置2の図20及び図22とは異なる実施形態に係る概念を示す斜視模式である。
【図25】本発明に係る検出装置2の図20から図24とは異なる実施形態に係る概念を示す斜視模式である。
【図26】本発明に係る検出装置2に用いることが可能な流路1の構成例を示す上方視平面模式図である。
【符号の説明】
【0142】
1 流路
D1、D2 検出方向
F1 サンプル流
F21、F22、F23、F24 シース流
1d1、1d2 流路壁
11 サンプル流用流路
12、13 シース流用流路
C 試料
f1 サンプル流幅
f21、f22 シース流幅
T 基板
111 サンプル流導入口
121、131シース流導入口
A 物質A
B 物質B
2 検出装置
101 第1曲折部
102 第2曲折部
31 第1検出部
32 第2検出部
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路を用いた検出方法に関する。より詳しくは、流路内を通流する試料を検出する検出方法、流路内における物質間の相互作用を検出する相互作用検出方法、並びに、前記検出方法及び相互作用検出方法に適した検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、流路やキャピラリー、あるいは2次元又は3次元のプラスチックやガラス等の基板上に形成した流路中に、細胞や微生物等の生体微小粒子、マイクロビーズなどの微小粒子等を通流させ、これらを物理的手段や光学的手段等によって検出し、解析や分離等を行ったり、前記流路中で、物質間の相互作用や反応を進行させて、これらを物理的手段や光学的手段等によって検出を行ったりする技術が進展している。
【0003】
当該技術は、疾病診断、薬物等の化合物スクリーニング、法医学、遺伝情報の網羅的解析、生体物質の機能解析、プロテオーム解析、生体内反応の解析、食品分野、農業分野、工学分野、犯罪鑑識分野などでは、既に重要な基幹技術となりつつある。このような流路を用いた微小粒子等の解析又は分離の手法の代表的な一例としては、フローサイトメトリーと呼ばれる分析手法がある。
【0004】
フローサイトメトリーとは、解析の対象となる微小粒子等を流体中に流し込み、該微小粒子の列を形成し、整列した該微小粒子にレーザ光等を照射することにより、各微小粒子から発せられた蛍光や散乱光を検出することで微小粒子の解析を行い、更には、解析結果に基づいて、微小粒子の分取を行う分析手法である。
【0005】
フローサイトメトリーのように、流路等に通流させた試料の検出等を行う場合には、一般的に、試料を含有させた層流を形成することにより、該層流中で検出対象となる細胞等を整然と搬送しながら、物理的手段や光学的手段等による検出が行われる。
【0006】
層流の形成方法について、フローサイトメトリーを例に挙げて、より具体的に説明すると、例えば、三叉路形の流路などでは、その両側の流路にシース流と呼ばれる細胞等のサンプルの整流を促すための流体媒体を一定の流量で流入させ、更に、三叉路流路の中央流路に検出対象となる細胞等を含むサンプル流を一定の流量で注入する。この時、流路内のレイノルズ数が比較的小さいために、流路中のlaminar flow(層流)の原理によりそれぞれの流れは互いに混合されず、層を成した流れ(層流)が形成される。
【0007】
このように、流路等に通流させた試料の検出や分取等を精度良く行うには、層流をいかに制御できるか否かが重要である。例えば、特許文献1には、簡便に精度高く細胞等の微粒子を分別するために、微粒子の移動方向を制御できるマイクロチップとして、基板上に、微粒子含有溶液導入流路と、当該流路の少なくとも一方の側部に配置されたシース流形成流路と、導入された微粒子を計測するための微粒子計測部位と、該微粒子計測部位の下流に設置された微粒子を分別回収するための2以上の微粒子分別流路と、微粒子計測部位から微粒子分別流路への流路口付近に設置された微粒子の移動方向を制御するための2以上の電極を有する微粒子分別マイクロチップが開示されている。
【0008】
また、特許文献2には、微小流動の流体の流れを効率良く制御又は集束させる方法として、中央チャネル(流路)内にサンプル流体を流し、集束チャネル(流路)内にシース流を流し、シース流体の流速を制御することにより、サンプル流体の流れを制御または集束させる方法が開示されている。
【0009】
更に、特許文献3では、非安定なフロー(層流)を安定させるための技術として、シース流に水の粘度よりも高い粘度を与えるために、粘度増加剤を添加したシース流を使用する技術を提案している。
【特許文献1】特開2003−107099号公報
【特許文献2】特開2004−93553号公報
【特許文献3】特表2004−500562号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
流路等に通流させた試料の検出や分取等を精度良く行うには、層流をいかに制御できるか否かが重要であり、前記の様に、従来から、層流を制御する技術や層流を安定させる技術が開発されている。
【0011】
しかし、従来の方法では、目的の試料を流路に通流させる前に、予め、目的の試料に対応した参照スペクトルビーズや参照直径ビーズ等を流路内に通流させ、最適な層流の位置、層流の量、光照射位置、受光位置、光源パワー、印加電圧等を決定する必要があり、煩雑であった。
【0012】
また、流路中は、流路壁側での通流抵抗や流路壁の表面張力等の影響により、層流の幅や位置が、検出中に変化する場合がある。また、サンプル液中には、大きさや性質の異なる試料が存在することが多いため、検出中に、対象の試料に最適な層流の位置、層流の量、光照射位置、受光位置、光源パワー、印加電圧等を変化させたい場合もある。
【0013】
この場合、従来の方法では、検出中に、試料を含有する層流の状況を検出することができないため、検出中に、層流の位置、層流の量、光照射位置、受光位置、光源パワー、印加電圧等を制御することは難しかった。
【0014】
更に、従来は、流路内を通流する流体の層流形状を、検出方向に対して平行若しくは垂直方向に制御することが難しく、精度の高い検出を行うことが難しかった。
【0015】
そこで、本発明では、目的の試料の検出と同時に、試料を含有する層流からの情報を検出することが可能な検出方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明では、まず、流路内を通流する試料の検出方法であって、
前記試料を含有するサンプル流をシース流で挟み込むことにより、検出方向に面する前記流路の壁面に対して垂直に積層された状態の層流を形成する第1層流形成工程と、
該第1層流形成工程を経た後に、前記層流を、前記壁面に対して平行な積層状態となるように曲折させる層流曲折工程と、
該層流曲折工程を経た後に、前記試料の検出を行う試料検出工程と、
を少なくとも行う検出方法を提供する。
本発明に係る検出方法では、前記第1層流形成工程を経た後に、該第1層流形成工程において形成された前記層流の層流幅及び/又は位置を検出する層流情報検出工程を更に行うことも可能である。
前記試料検出工程では、前記層流情報検出工程において検出された層流情報に基づいて、前記試料の検出を行うとより好適である。
前記層流曲折工程では、前記層流を、検出方向に面する前記流路の壁面に対して平行な積層状態となるように曲折させれば、その方法は特に限定されないが、例えば、(1)前記層流の通流方向をX方向とすると、前記層流をY軸方向に略90度曲折させる第1曲折工程と、(2)前記層流をZ軸方向に略90度曲折させる第2曲折工程と、を少なくとも行えば、確実に前記層流を、前記壁面に対して平行な積層状態となるように曲折させることができる。
本発明に係る検出方法では、前記試料検出工程を行う前に、前記層流の層流幅及び/又は位置を制御する層流制御工程を行うことも可能である。
また、本発明に係る検出方法では、前記試料検出工程を行う前に、前記試料検出工程における検出条件を制御する検出条件制御工程を行うことも可能である。
本発明に係る検出方法では、前記第1層流形成工程において積層状態の層流を形成するが、更に、前記層流曲折工程を経た後に、前記層流を、前記積層状態の両側方向からシース流で更に挟み込む第2層流形成工程を行うと好適である。
また、前記第2層流形成工程を経た2以上の層流を合流させることにより、複数の層流を形成する第3層流形成工程を行うとより好適である。
前記層流情報検出工程及び前記試料検出工程における具体的な検出方法は、層流の情報及び試料の情報が検出できれば特に限定されないが、例えば、光学的方法を用いて検出を行うことが可能である。
【0017】
本発明では、次に、流路内を通流する物質Aと物質B間の相互作用を検出する方法であって、
物質Aを含有するサンプル流を、少なくとも一部に物質Bを含有するシース流で挟み込むことにより、検出方向に面する前記流路の壁面に対して垂直に積層された状態の層流を形成する第1層流形成工程と、
該第1層流形成工程を経た後に、前記層流を、前記壁面に対して平行な積層状態となるように曲折させる層流曲折工程と、
該層流曲折工程を経た後に、前記物質Aと物質B間の相互作用の検出を行う相互作用検出工程と、
を少なくとも行う相互作用検出方法を提供する。
本発明に係る相互作用検出方法では、前記第1層流形成工程を経た後に、該第1層流形成工程において形成された前記層流の層流幅及び/又は位置を検出する層流情報検出工程を更に行うことも可能である。
前記相互作用検出工程では、前記層流情報検出工程において検出された層流情報に基づいて、前記物質Aと物質B間の相互作用の検出を行うとより好適である。
前記層流曲折工程では、前記層流を、検出方向に面する前記流路の壁面に対して平行な積層状態となるように曲折させれば、その方法は特に限定されないが、例えば、(1)前記層流の通流方向をX方向とすると、前記層流をY軸方向に略90度曲折させる第1曲折工程と、(2)前記層流をZ軸方向に略90度曲折させる第2曲折工程と、を少なくとも行えば、確実に前記層流を、前記壁面に対して平行な積層状態となるように曲折させることができる。
本発明に係る相互作用検出方法では、前記相互作用検出工程を行う前に、前記層流の層流幅及び/又は位置を制御する層流制御工程を行うことも可能である。
また、本発明に係る相互作用検出方法では、前記相互作用検出工程を行う前に、前記相互作用検出工程における検出条件を制御する検出条件制御工程を行うことも可能である。
本発明に係る相互作用検出方法では、前記第1層流形成工程において積層状態の層流を形成するが、更に、前記層流曲折工程を経た後に、前記層流を、前記積層状態の両側方向からシース流で更に挟み込む第2層流形成工程を行うと好適である。
また、前記第2層流形成工程を経た2以上の層流を合流させることにより、複数の層流を形成する第3層流形成工程を行うとより好適である。
前記層流情報検出工程及び前記相互作用検出工程における具体的な検出方法は、層流の情報及び物質Aと物質B間の相互作用が検出できれば特に限定されないが、例えば、光学的方法を用いて検出を行うことが可能である。
【0018】
本発明では、更に、流路内を通流する試料の検出装置であって、
前記通流方向をX方向とした場合に、Y軸方向に略90度に流路が曲折する第1曲折部と、Z軸方向に略90度に流路が曲折する第2曲折部と、を少なくとも備える流路と、
前記第1曲折部及び第2曲折部の少なくとも上流側の流路において、前記試料を含有する層流の層流幅及び/又は位置を検出する第1検出部と、
前記第1曲折部及び第2曲折部の少なくとも下流側の流路において、前記試料の検出を行う第2検出部と、
を少なくとも備える検出装置を提供する。
【0019】
ここで、本発明で用いる技術用語の定義付けを行う。本発明における「試料」とは、細胞や微生物、リポソーム、DNA、タンパク質などの生体関連微小粒子、あるいはラテックス粒子やゲル粒子、工業用粒子などの合成粒子、あるいは、固体に限らず液体状の物質など、流路1内を通流可能な物質であれば、全て包含する。
【0020】
本発明における「シース流」とは、試料を含有するサンプル流の整流を促すための流体媒体をいい、サンプル流の整流を損なわなければ、何らかの物質を含有するものも含む概念である。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る検出方法では、目的の試料の検出を行うと同時に、試料を含有する層流からの情報を検出することが可能である。そのため、目的の試料の検出を行う前段階の準備工程を省略でき、また、検出中に個々の検出条件を制御することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための好適な形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0023】
<検出方法>
図1は、本発明に係る検出方法のフロー図である。
【0024】
本発明に係る検出方法は、流路内を通流する試料を検出するための方法であって、第1層流形成工程(I)と、層流曲折工程(II)と、試料検出工程(III)と、を少なくとも行う方法である。また、必要に応じて、層流情報検出工程(IV)を行うことが可能である。以下、それぞれの工程について、詳細に説明する。
【0025】
(I)第1層流形成工程
第1層流形成工程(I)は、試料を含有するサンプル流F1をシース流F21、F22で挟み込むことにより、検出方向D1に面する流路1の壁面1d1に対して垂直に積層された状態の層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を形成する工程である(図1フロー図参照)。図2を用いて詳しく説明する。
【0026】
図2は、本発明に係る検出方法に用いることができる流路1の斜視模式図である。
【0027】
本発明に係る検出方法を行い得る流路1の形態は、層流を形成し得る形態であれば特に限定されず、自由に設計することができる。例えば、図2に示す形態に限らず、2次元又は3次元のプラスチックやガラス等の基板上に形成した流路1においても、本発明に係る検出方法を行うことが可能である。
【0028】
また、前記流路1の流路幅、流路深さ、流路断面形状も、層流を形成し得る形態であれば特に限定されず、自由に設計することができる。例えば、流路幅1mm以下のマイクロ流路においても、本発明に係る検出方法を行うことが可能である。特に、流路幅10μm以上1mm以下程度のマイクロ流路を用いれば、本発明に係る検出方法をより好適に行うことができる。
【0029】
流路1には、図2中符号D1で示す検出方向D1に面した流路1の壁面1d1に対して、垂直に積層された状態の層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を形成する。層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)の形成は、図2に示すように、試料を含有するサンプル流F1をシース流F21、F22で挟み込むことにより行う。
【0030】
サンプル流F1をシース流F21、F22で挟み込む具体的方法は、流路1の壁面1d1に対して垂直に積層された状態の層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を形成できれば特に限定されず、公知のあらゆる方法を採用することができる。好適な一例としては、図3に示すように、流路1に、サンプル流用流路11とシース流用流路12とを設け、サンプル流用流路11の両側からシース流用流路12を合流させることにより、サンプル流用流路11から導入されるサンプル流F1を、シース流用流路12から導入されるシース流F21、F22で両側から挟み込むことができる。
【0031】
(II)層流曲折工程
層流曲折工程(II)は、第1層流形成工程(I)を経た後に、層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を、検出方向D2に面する流路1の壁面1d2に対して平行な積層状態となるように曲折させる工程である(図1フロー図参照)。
【0032】
層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を、検出方向D2に面する流路1の壁面1d2に対して平行な積層状態とすることで、後述する試料検出工程(III)を好適に行うことができる。図4を用いて詳しく説明する。
【0033】
図4は、層流曲折工程(II)の前後の流路1内を比較する図であり、図4中符号(i)で示す図は、図2中検出方向D1、D2から視た流路1を示す断面模式図であり、符号(ii)で示す図は、検出方向D1、D2に対して側方S1、S2から視た流路1を示す断面模式図であり、符号(i−1)、(ii−1)で示す図は、それぞれ層流曲折工程(II)を行う前の流路1を示す断面模式図であり、符号(i−2)、(ii−2)で示す図は、それぞれ層流曲折工程(II)を行った後の流路1を示す断面模式図である。
【0034】
図4(i−1)に示す通り、層流曲折工程(II)を行う前は、層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)が、検出方向D1に面する流路1の壁面1d1に対して垂直に積層された状態になっているため、検出方向D1から視た場合、各層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)の層流幅(サンプル流幅f1、シース流幅f21、f22)及び位置を、正確に検出することができる。
【0035】
しかし、図4(ii−1)の側方S1から視た図に示す通り、検出方向D1からサンプル流F1中の試料Cの情報を検出しようとしても、検出軸上D11に試料Cが複数重なっているため、試料Cからの情報を別個に精度良く検出することは難しい。
【0036】
そこで、層流曲折工程(II)を行うことにより、図4(ii−2)に示すように、層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を、検出方向D2に面する流路1の壁面1d2に対して平行な積層状態とすることで、検出軸上D21上に試料Cが複数重なることを防げるため、後述する試料検出工程(III)において、試料Cからの情報を正確に検出することが可能となる。
【0037】
また、後述する層流情報検出工程(IV)で得た層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)の層流幅(サンプル流幅f1、シース流幅f21、f22)及び、流路1における位置が、層流曲折工程(II)後には、検出方向D2から視た流路1内の深さ方向の位置情報になるため、後述する試料検出工程(III)において、試料Cからの情報を精度良く検出することが可能となる。
【0038】
なお、層流曲折工程(II)を行った後は、検出方向D2から視ると、図4(i−2)に示すように、試料Cを含有するサンプル流F1が、流路1の全面に渡って観察されてしまうため、各層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)の層流幅(サンプル流幅f1、シース流幅f21、f22)及び位置を検出することは難しい。
【0039】
このように、層流曲折工程(II)を設け、更に、該層流曲折工程(II)の前後において、各検出を行うことで、層流曲折工程(II)の前には、後述する層流情報検出工程(IV)において、各層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)の層流幅(サンプル流幅f1、シース流幅f21、f22)及び位置を検出することができ、層流曲折工程(II)の後には、後述する試料検出工程(III)において、試料Cからの情報を正確に検出することができる。
【0040】
層流曲折工程(II)では、層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を、検出方向D2に面する流路1の壁面1d2に対して平行な積層状態となるように曲折させれば、その方法は特に限定されず、任意の方法を用いて自由に曲折させることができる。
【0041】
例えば、図2及び図3に示すように、(1)層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)の通流方向をX方向とすると、層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)をY軸方向に略90度曲折させる第1曲折工程と、(2)層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)をZ軸方向に略90度曲折させる第2曲折工程と、を少なくとも行えば、層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を、確実に、壁面1d2対して平行な積層状態とすることができる。
【0042】
なお、第1曲折工程(1)と第2曲折工程(2)を行う順番は特に限定されず、第1曲折工程(1)を経た後に第2曲折工程(2)を行っても、第2曲折工程(2)を行った後に第1曲折工程(1)を行ってもよい。
【0043】
また、第1曲折工程(1)は、層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)をY軸方向に曲折できれば、図5及び図6に示すように、流路の深さH分程度の曲折であっても、その後に第2曲折工程(2)を行うことにより、壁面1d2対して平行な積層状態とすることができる。
【0044】
また、図7に示すように、(1)層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)をY軸方向に略90度曲折させる第1曲折工程と、(2)層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)をZ軸方向に略90度曲折させる第2曲折工程と、(3)層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)をX軸方向に略90度曲折させる第2曲折工程と、を少なくとも行うことにより、層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を、壁面1d2に対して平行な積層状態とすることができる。この場合、流路1全体がほぼ同一軸上に形成されるため、特に、流路1を、2次元又は3次元のプラスチックやガラス等の基板上に形成する場合など面積が限られている場合などに有効である。
【0045】
なお、前記の層流曲折方法の例示では、第1曲折工程(1)、第2曲折工程(2)、及び第3曲折工程(3)のいずれも層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を、ほぼ直角に曲折しているが、90度±20度程度は許容範囲である。また、これに限定されず、例えば、図8に示すように、流路1を略螺旋状にすることで、層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を曲折させることも可能である。
【0046】
以上説明した層流曲折工程(II)は、図示しないが、2次元又は3次元のプラスチックやガラス等の基板上に形成した流路1において行うことも可能である。この場合、層流曲折工程(II)では、基板に対して垂直に積層された状態の層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を、基板に対して平行な積層状態となるように曲折させることとなる。
【0047】
(III)試料検出工程
試料検出工程(III)は、層流曲折工程(II)を経た後に、試料Cからの情報を検出する工程である(図1フロー図参照)。
【0048】
試料検出工程(III)では、サンプル流F1に含有される試料Cの検出ができれば、その検出方法は特に限定されず、公知の方法を自由に採用することができる。例えば、光学的方法、電気的方法、磁気的方法などを挙げることができ、特に、本発明においては、光学的方法が好適である。
【0049】
光学的方法としては、例えば、蛍光測定、散乱光測定、透過光測定、反射光測定、回折光測定、紫外分光測定、赤外分光測定、ラマン分光測定、FRET測定、FISH測定その他各種スペクトラム測定等の方法が挙げられる。また、電荷結合素子(CCD)やComplementary Metal Oxide Semiconductor(CMOS)などのエリア撮像素子を用いて検出を行えば、一画面全体の試料Cから発せられるイメージを光電変換することができる。
【0050】
具体的な一例を挙げると、図2中矢印D2方向から光照射を行い、該光照射によってサンプル流F1中の試料Cから発生される蛍光や散乱光を、光検出器により検出することにより、試料Cを検出することができる。
【0051】
光学的方法を採用する場合における光照射の種類は特に限定されないが、試料から蛍光や散乱光を確実に発生させるためには、光方向、波長、光強度が一定の光が望ましい。一例としては、レーザやLED(Light Emission Diode:発光ダイオード)を挙げることができる。
【0052】
また、光学的方法を採用する場合における光照射方法は特に限定されないが、例えば、図2中符号W2で示すように、照射スポットを流路1幅方向に走査させながら光学的情報を検出しても、図2中符合L2で示すように、照射スポットを流路1通流方向に走査させながら光学的情報を検出してもよい。
【0053】
電気的方法としては、例えば、サンプル流F1に含有される試料Cに関する抵抗値、容量値(キャパシタンス値)、インダクタンス値、インピーダンス、電極間の電界の変化値等の測定を行う方法が挙げられる。
【0054】
磁気的方法としては、例えば、サンプル流F1に含有される試料Cの表面に磁性体を修飾し、磁化、磁界変化、磁場変化等の測定を行う方法が挙げられる。
【0055】
なお、後述する層流情報検出工程(IV)を行う場合には、層流情報検出工程(IV)において検出された層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)の層流幅(サンプル流幅f1、シース流幅f21、f22)及び/又は位置情報に基づいて、試料Cの検出を行うことが望ましい。層流情報検出工程(IV)では、層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)の層流幅(サンプル流幅f1、シース流幅f21、f22)、及び流路1における位置情報が検出されるため、サンプル流F1に含有される試料Cを確実に精度良く検出することが可能となるからである。
【0056】
(IV)層流情報検出工程
層流情報検出工程(IV)は、第1層流形成工程(I)において形成された層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)の層流幅及び流路1における位置を検出する工程である(図1フロー図参照)。
【0057】
具体的には、第1層流形成工程(I)において、積層状態に形成された層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)の層流幅及び流路1における位置を、積層状態の断面側(図2中符号D1参照)から検出する。
【0058】
層流情報検出工程(IV)では、層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)の層流幅及び流路1における位置が検出できれば、その検出方法は特に限定されず、公知の方法を自由に採用することができる。例えば、光学的方法、電気的方法、磁気的方法などを挙げることができ、特に、本発明においては、光学的方法が好適である。
【0059】
光学的方法としては、例えば、蛍光測定、散乱光測定、透過光測定、反射光測定、回折光測定、紫外分光測定、赤外分光測定、ラマン分光測定、FRET測定、FISH測定その他各種スペクトラム測定等の方法が挙げられる。また、電荷結合素子(CCD)やComplementary Metal Oxide Semiconductor(CMOS)などのエリア撮像素子を用いて検出を行えば、一画面全体の流路1から発せられるイメージを光電変換することができる。
【0060】
具体的な一例を挙げると、図2中矢印D1方向から光照射を行い、該光照射によってサンプル流F1やシース流F21、F22に含有される試料C等の物質から発生される蛍光や散乱光を、光検出器により検出することにより、サンプル流F1、シース流F21、F22の層流幅及び流路1における位置を検出することができる。
【0061】
光学的方法を採用する場合における光照射の種類は特に限定されないが、試料から蛍光や散乱光を確実に発生させるためには、光方向、波長、光強度が一定の光が望ましい。一例としては、レーザやLED(Light Emission Diode:発光ダイオード)を挙げることができる。
【0062】
また、光学的方法を採用する場合における光照射方法は特に限定されないが、例えば、図2中符号W1で示すように、照射スポットを流路幅方向に走査させながら光学的情報を検出してもよい。
【0063】
電気的方法としては、例えば、サンプル流F1やシース流F21、F22に含有される試料C等の物質に関する抵抗値、容量値(キャパシタンス値)、インダクタンス値、インピーダンス、電極間の電界の変化値等の測定を行う方法が挙げられる。
【0064】
磁気的方法としては、例えば、サンプル流F1やシース流F21、F22に含有される試料C等の物質の表面に磁性体を修飾し、磁化、磁界変化、磁場変化等の測定を行う方法が挙げられる。
【0065】
このように、本発明に係る検出方法では、前記第1層流形成工程(I)を行うことにより、検出方向D1に面する流路1の壁面1d1に対して垂直に積層された状態の層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を形成するため、続いて行う層流情報検出工程(IV)において、層流サンプル流F1、シース流F21、F22)の層流幅及び流路1における位置などを、正確に検出することが可能となる。
【0066】
本発明に係る検出方法は、以上説明した第1層流形成工程(I)、層流曲折工程(II)、試料検出工程(III)、を少なくとも行い、必要に応じて、層流情報検出工程(IV)を行う方法であるが、以下の層流制御工程(V)、検出条件制御工程(VI)、第2層流形成工程(VII)、第3層流形成工程(VIII)を、更に必要に応じて、適宜行うことが可能である。以下、各工程について、詳しく説明する。
【0067】
(V)層流制御工程
層流制御工程(V)は、試料検出工程(III)を行う前に、層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)の層流幅(サンプル流幅f1、シース流幅f21、f22)及び/又は流路1における位置を制御する工程である(図1フロー図参照)。
【0068】
層流制御工程(V)は、試料検出工程(III)を行う前に行えばよく、例えば図1のフロー図に示すように、層流曲折工程(II)を行う前に行っても、層流曲折工程(II)を行った後に行っても良い。ただし、層流情報検出工程(IV)を行う場合には、層流情報検出工程(IV)を経た後に行うことが望ましい。層流情報検出工程(IV)において検出された層流情報に基づいて、層流制御を行うことができるからである。以下、層流制御方法の具体例を、図9から12を用いて説明する。
【0069】
図9は、層流情報検出工程(IV)を経た後の層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を積層状態の側方から見た断面摸式図であり、図9中符号(i)で示す図は、層流制御工程(V)を行う前を、符号(ii)で示す図は、層流制御工程(V)を行った後を示している。
【0070】
層流情報検出工程(IV)において、図9(i)に示すように、シース流幅f21がシース流幅f22に比べて狭く、サンプル流F1の位置が流路1の中央部からずれていることが、検出された場合、例えば、シース流F21の送液量を増量することにより、図9(ii)に示すように、シース流幅f21とシース流幅f22をほぼ同一にし、サンプル流F1の位置を流路1の中央部へ制御することができる。
【0071】
なお、本実施形態では、サンプル流F1の位置を流路1の中央部へ制御しているが、これに限定されず、サンプル流F1、シース流F21、F22の送液量を必要に応じて増減し、サンプル流F1の位置を流路1の任意の位置に自由に制御することが可能である。
【0072】
図10は、層流情報検出工程(IV)を経た後の図9とは異なる層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を積層状態の側方から見た断面摸式図であり、図10中符号(i)で示す図は、層流制御工程(V)を行う前を、符号(ii)で示す図は、層流制御工程(V)を行った後を示している。
【0073】
層流情報検出工程(IV)において、図10(i)に示すように、サンプル流F1の流路幅f1が、試料Cの粒径より大きいことが検出された場合、例えば、流路1幅方向に2つ以上の試料Cが重なった状態で通流されてしまったり、ひいては試料Cの順番が入れ替わってしまったりすることもあり、試料検出工程(III)における検出精度が低下してしまう恐れがある。
【0074】
そこで、シース流F21、F22の送液量を増量することにより、図10(ii)に示すように、サンプル流F1の流路幅f1を試料Cの粒径に合わせるように、層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を制御することで、例えば、試料Cを光学的に検出する際などには、検出スポット内に細胞や微小粒子等の試料Cを1個ずつ配列させることができ、別個に検出を行うことが可能となるなど、試料検出工程(III)における検出精度を向上させることができる。
【0075】
図11は、層流情報検出工程(IV)を経た後の図9及び図10とは異なる層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を積層状態の側方から見た断面摸式図であり、図11中符号(i)で示す図は、層流制御工程(V)を行う前を、符号(ii)で示す図は、層流制御工程(V)を行った後を示している。なお、図11符号Vで示す破線曲線は、流路1内の流体速度分布を示すハーゲンポアズイユ(Hagen-Poiseuille)速度曲線である。
【0076】
流路1内は、流路壁側での通流抵抗や流路壁の表面張力等の影響により、流体速度分布曲線Vが示すように、流路1中央部の流速が最も早く、流路壁へ近づくに従って流速が遅くなる。
【0077】
そのため、図11(i)に示すように、サンプル流F1が流路1の中央部を通流すると、サンプル流F1中の試料Cの流速も早くなり、試料検出工程(III)における検出感度が低下する場合が生じる。
【0078】
そこで、例えば、図11(ii)に示すように、シース流F21の送液量を減らし、シース流F22の送液量を増量することで、サンプル流F1をシース流F21側へ偏らせるように制御することにより、サンプル流F1の流速を遅くし、試料検出工程(III)における検出感度を向上させることができる。
【0079】
なお、本実施形態では、サンプル流F1の流速を遅くする制御を行っているが、特にこれに限定されず、例えば、試料検出工程(III)における検出速度を速めるために、サンプル流F1を流路1の中央部を通流させるように制御し、サンプル流F1の流速を早めることも可能である。
【0080】
このような流体速度の制御は、図12に示す方法によっても実現させることが可能である。図12は、層流情報検出工程(IV)を経た後の図9から図11とは異なる層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を積層状態の側方から見た断面摸式図であり、図12中符号(i)で示す図は、層流制御工程(V)を行う前を、符号(ii)で示す図は、層流制御工程(V)を行った後を示している。
【0081】
一般に、流路1へ同一圧で流体を導入した場合、流路幅Hが2倍になると、流速は1/4倍に減速する。そこで、図12(ii)に示すように、流路幅Hを2倍にすることで、サンプル流F1の流速VをV/4へ減速するように制御することができ、試料検出工程(III)における検出感度を向上させることができる。
【0082】
なお、本実施形態では、サンプル流F1の流速を遅くする制御を行っているが、特にこれに限定されず、例えば、試料検出工程(III)における検出速度を速めるために、流路幅Hを狭くして、サンプル流F1の流速Vを加速させるように制御することも可能である。また、流路幅Hに限らず、流路の深さや断面形状等を変化させることで、サンプル流F1の流速Vを変化させることも可能である。
【0083】
(VI)検出条件制御工程
検出条件制御工程(VI)は、試料検出工程(III)を行う前に、試料検出工程(III)における検出条件を制御する工程である(図1フロー図参照)。
【0084】
検出条件制御工程(VI)は、少なくとも試料検出工程(III)を行う前に行えばよく、例えば図1のフロー図に示すように、層流曲折工程(II)を行う前に行っても、層流曲折工程(II)を行った後に行っても良い。また、図示しないが、後述する第2層流形成工程(VII)及び第3層流形成工程(VIII)を行う前に行っても、第2層流形成工程(VII)及び第3層流形成工程(VIII)を行った後に行っても良い。ただし、層流情報検出工程(IV)を行う場合には、層流情報検出工程(IV)を経た後に行うことが望ましい。層流情報検出工程(IV)において検出された層流情報に基づいて、検出条件制御を行うことができるからである。
【0085】
検出条件制御工程(VI)では、試料検出工程(III)における検出条件の制御を行うが、制御を行う検出条件は特に限定されない。例えば、光照射スポットの位置、照射スポットの形状、光照射強度、パルス幅、パルス比率、焦点位置、光検出器の増幅率、光照射器の増幅率等を制御することができる。
【0086】
検出条件制御の一例について図13を用いて説明する。図13は、層流情報検出工程(IV)を経た後の層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を積層状態の側方から見た断面摸式図であり、図13中符号(i)で示す図は、検出条件制御工程(VI)を行う前を、符号(ii)で示す図は、検出条件制御工程(VI)を行った後を示している。
【0087】
例えば、層流情報検出工程(IV)において、図13(i)に示すように、シース流幅f21がシース流幅f22に比べて狭く、サンプル流F1の位置がシース流F21側へ偏っていることが検出された場合、図13(ii)に示すように、光照射スポットの位置をサンプル流F1の通流位置に制御することで、試料検出工程(III)における検出精度を向上させることができる。
【0088】
従来、流路1を通流する試料Cの検出を行う場合には、流路1の中央部に目的の試料Cを含む層流(サンプル流F1)を形成させ、該試料Cに向かって光照射等を行い、試料C検出を行っていた。しかし、この方法では、検出中は、試料Cからの情報のみしか得ることができないため、検出等に最適な検出条件を、検出中に制御することが困難であった。そのため、予め、試料Cに対応した参照スペクトルビーズや参照直径ビーズ等を流通させ、検出に最適な検出条件を特定した後に、実際に試料Cを通流させて検出を行うという、前準備工程が必要であった。
【0089】
しかし、本発明に係る検出方法では、実際に試料Cを流路1内に通流させた状態で、層流情報検出工程(IV)を行い、この情報を検出条件制御に用いることができるため、予め、試料Cに対応した参照スペクトルビーズや参照直径ビーズ等を流通させるような前準備工程を行う必要がない。そのため、検出時間の短縮や検出精度の向上が実現できる。
【0090】
(VII)第2層流形成工程
第2層流形成工程(VII)は、層流曲折工程(II)を経た後に、積層状態の層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を、積層状態の両側方向からシース流F23、F24で更に挟み込む工程である(図1フロー図参照)。図14及び図15を用いて詳しく説明する。
【0091】
図14及び図15は、本発明に係る検出方法に用いることができる図2、図3、図5から図8とは異なる流路1の斜視模式図である。
【0092】
層流曲折工程(II)を経ると、流路1には、図14及び図15中符号D2で示す検出方向D2に面した流路1の壁面1d2に対して、平行に積層された状態の層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)が形成されている。そこへ、積層状態の両側方向からシース流F23、F24で更に挟み込むと、図14及び図15に示すように、サンプル流F1が流路1の中心部に収束された状態の層流を形成することができる。
【0093】
層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)をシース流F23、F24で挟み込む具体的方法は、サンプル流F1が流路1の中心部に収束された状態の層流を形成することができれば特に限定されず、公知のあらゆる方法を採用することができる。好適な一例としては、図14及び図15に示すように、層流曲折工程(II)を経た後の流路1の両側からシース流用流路13を合流させることにより、サンプル流F1が流路1の中心部に収束された状態の層流を形成することができる。
【0094】
このように、第2層流形成工程(VII)を行うことで、サンプル流F1を流路1の中心部に収束された状態に形成すれば、検出方向D2及び側方S2のいずれから視た場合も、試料Cを整然と列を成した状態で検出することができる。
【0095】
(VIII)第3層流形成工程
第3層流形成工程(VIII)は、第2層流形成工程(VII)を経た2以上の層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を合流させることにより、複数の層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を形成する工程である(図1フロー図参照)。図16を用いて詳しく説明する。
【0096】
図16中符号(i)で示す図は、本発明に係る検出方法に用いることができる基板T上に形成した流路1の上方視平面模式図であり、符号(ii)で示す図は、図16(i)中符号R1で示す破線円部分の流路1の断面模式図である。符号111は、サンプル流導入口を、符号121及び131は、シース流導入口をそれぞれ示す。なお、本実施形態では、基板T上に流路1を設けているが、特にこの形態に限定されず、例えば、図14又は図15に示す流路1を複数合流させた流路を用いることも可能である。
【0097】
第2層流形成工程(VII)を経ると、流路1には、サンプル流F1が流路1の中心部に収束された状態の層流(サンプル流F1、シース流F21、F22、F23、F24)が形成されている(図16(ii)参照)。この層流(サンプル流F1、シース流F21、F22、F23、F24)を図16(i)に示すように2以上合流させると、図17に示すような複数の層流(サンプル流F1、シース流F21、F22、F23、F24)が形成される。
【0098】
図17中符号(i)で示す図は、図16(i)中符号R2で示す破線円部分の流路1を、検出方向D2から視た断面模式図であり、符号(ii)で示す図は、図16(i)中符号R2で示す破線円部分の流路1を、通流方向から視た断面模式図である。
【0099】
第3層流形成工程(VIII)を行うと、図17に示すように、検出方向D2から視て、複数のサンプル流F1を、形成することができる。そのため、例えば、それぞれのサンプル流F1に含有させる試料Cの種類を変えることにより、一度に何種類もの試料Cの検出を行うことができ、検出時間の大幅な短縮が実現できる。
【0100】
以上説明した検出方法で検出することが可能な試料Cは、細胞や微生物、リポソーム、DNA、タンパク質などの生体関連微小粒子、あるいはラテックス粒子やゲル粒子、工業用粒子などの合成粒子、あるいは、固体に限らず液体状の物質など、流路1内を通流可能な物質であれば、全て包含する。
【0101】
<相互作用検出方法>
本発明に係る相互作用検出方法は、流路内を通流する物質Aと物質B間の相互作用を検出するための方法であって、第1層流形成工程(I)と、層流曲折工程(II)と、相互作用検出工程(III)と、を少なくとも行う方法である。また、必要に応じて、層流情報検出工程(IV)、を行うことが可能である。更に必要に応じて、層流制御工程(V)、検出条件制御工程(VI)、第2層流形成工程(VII)、第3層流形成工程(VIII)を行うことも可能である。それぞれの工程は、前述した検出工程のそれぞれの工程と同様であるので、以下、相互作用検出方法特有の事項について、図18及び図19を用いて説明する。
【0102】
図18は、本発明に係る相互作用検出方法を行う際の流路1内の様子を説明するための図であり、層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を、積層状態の側方から見た断面摸式図である。
【0103】
本発明に係る相互作用検出方法では、サンプル流F1に物質Aを含有させ、シース流F21、F22の少なくとも一方に物質Bを含有させ、これら物質Aと物質B間で進行する相互作用を検出する。なお、本実施形態では、シース流F21に物質Bを含有させているが、これに限定されず、シース流F22に物質Bを含有させても、シース流F21及びシース流F22の両方に物質Bを含有させても良い。
【0104】
また、シース流F21とシース流F22に、異なる種類の物質Bを含有させて、異なる相互作用を同時に検出することも可能である。
【0105】
物質Aは、流路1内を通流可能な物質であれば、特に限定されない。例えば、細胞や微生物、リポソーム、DNA、タンパク質などの生体関連微小粒子、あるいはラテックス粒子やゲル粒子、工業用粒子などの合成粒子などを挙げることができる。なお、サンプル流F1に含有させる物質Aは、単一の物質に限らず、複数の物質を同時に含有させて、異なる複数の相互作用を検出することも可能である。
【0106】
物質Bは、流路1内を通流可能な物質であり、かつ、物質Aと相互作用し得る物質であれば特に限定されず、例えば、蛍光色素等の蛍光物質、抗体、放射性物質、マイクロビーズ、pH調整液、濃度調整液、溶血液、生理食塩水などあらゆる試薬や調製液、薬液などが挙げられる。蛍光物質としては、例えば、Cascade Blue、Fluorescein isothiocyanate(FITC)、Phycoerythrin(PE)、Phycoerythrin-Cy5(PE-Cy5)、Phycoerythrin-Cy7(PE-Cy7)、Texas Red、Allophycocyanin(APC)、Allophycocyanin-Cy7 (APC-Cy7)等が挙げられる。なお、シース流F21、F22に含有させる物質Bは、単一の物質に限らず、複数の物質を同時に含有させて、異なる複数の相互作用を検出することも可能である。
【0107】
これらの物質A及び物質Bを流路1内で相互作用させることにより、物質A及び物質Bを流路1内に通流させながら、物質Aを物質Bで化学的又は物理的に修飾することができる。
【0108】
また、この場合、図18中符号L3で示すように、相互作用検出を流路1の通流方向に走査させながら行うことにより、物質Aの物質Bによる修飾量を、流路1の任意の位置毎に検出することができ、この修飾量をフィードバックすることにより、物質Bの種類やシース流F21の流量等を制御することも可能である。即ち、流路1内の流体の速度を予め設定しておけば、相互作用が検出された位置から、その物質の反応時間を算出することが可能である。
【0109】
更に、本発明に係る相互作用検出方法を用いれば、流路1内での相互作用の有無を検出することにより、物質Bと相互作用を行う物質Aをスクリーニングする方法、例えば、HIV(Human Immunodeficiency Virus)の陽性反応などに応用することができる。
【0110】
図19は、本発明に係る相互作用検出方法を行う際の流路1内の様子を説明するための図であり、図18とは異なる層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を積層状態の側方から見た断面摸式図である。
【0111】
本実施形態では、シース流F21の流速v1をシース流22の流速v2より早く設定している。このようにサンプル流F1の両側のシース流F21とシース流22の流速v1及びv2を異ならせることで、図19に示すように、サンプル流F1中の物質Aが回転する。
【0112】
この場合、例えば、シース流F22に生理食塩水等を用いることにより、物質Aに結合した不純物質や、修飾不完全な物質Bなどを洗浄することも可能である。
【0113】
以上説明した相互作用検出方法を、図16及び図17に示すように、複数の層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)が形成された流路1内で行う場合、例えば、それぞれのサンプル流F1に異なる種類の物質Aを含有させたり、それぞれのシース流F21、F22、F23、F24に異なる種類の物質Bを含有させたりすることで、一度に複数の修飾や、スクリーニングを行うことが可能となる。
【0114】
<検出装置>
図20は、本発明に係る検出装置2の一実施形態に係る概念を示す斜視模式である。本発明に係る検出装置2は、大別すると、流路1と、第1検出部31と、第2検出部32と、を少なくとも備える。以下、それぞれの構成、機能等について詳細に説明する。
【0115】
(1)流路1
本発明に係る検出装置2に用いることができる流路1は、前記試料の検出を行う第2検出部と、前記第1検出部によって検出が行われる流路位置と、前記第2検出部によって検出が行われる流路位置と、の間に、前記流路の前記第1検出部側の壁面に対して垂直に積層された状態の層流を、前記第2検出部側の壁面に対して平行な積層状態となるように曲折させる曲折部を少なくとも備える。
【0116】
本発明に係る検出部に備える前記曲折部は、前記層流を、前記第1検出部側の壁面に対して垂直に積層された状態から、前記第2検出部側の壁面に対して平行な積層状態となるように曲折させることができれば、その構造は特に限定されないが、本実施形態では、一例として、前記通流方向をX方向とした場合に、Y軸方向に略90度に流路が曲折する第1曲折部101と、Z軸方向に略90度に流路が曲折する第2曲折部102と、を少なくとも備えた曲折部を挙げて以下説明する。
【0117】
本実施形態では、このような第1曲折部101、第2曲折部102を備えることで、流路1内に形成された層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)の積層方向を変更することができる。
【0118】
例えば、図20に示すように、検出方向D1に面する流路1の壁面1d1に対して垂直に積層された状態の層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を、第1曲折部101及び第2曲折部102を通流させることにより、検出方向D2に面する流路1の壁面1d2に対して平行に積層された状態へ変更することができる。
【0119】
なお、第1曲折部101と第2曲折部102は、図20に示す形態に限定されず、例えば、図21に示すように、第1曲折部101は、流路1の深さH分程度の曲折であっても、その後に第2曲折部102を通流させることにより、層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を、壁面1d2対して平行な積層状態とすることができる。
【0120】
流路1の流路幅、流路深さ、流路断面形状は、層流を形成し得る形態であれば特に限定されず、自由に設計することができる。例えば、流路幅1mm以下のマイクロ流路1を、本発明に係る検出装置に用いることが可能である。特に、流路幅10μm以上1mm以下程度のマイクロ流路を用いれば、本発明に係る検出方法及び相互作用検出方法をより好適に行うことができる。
【0121】
流路1の第1曲折部101及び第2曲折部102の上流には、図22に示すように、サンプル流用流路11と該サンプル流用流路11の両側から合流するシース流路12を設けることもできる。サンプル流用流路11とシース流用流路12を設けることにより、サンプル流用流路11から導入されるサンプル流F1を、シース流用流路12から導入されるシース流F21、F22で両側から挟み込んだ状態の層流を簡単に形成することができる。
【0122】
また、流路1の第1曲折部101及び第2曲折部102の下流には、図22に示すように、流路1の両側から合流するシース流路13を設けることもできる。シース流用流路13を設けることにより、サンプル流F1が流路1の中心部に収束された状態の層流を形成することができる。
【0123】
なお、図22に示す検出装置2の場合も、第1曲折部101と第2曲折部102は、図22に示す形態に限定されず、例えば、図23に示すように、第1曲折部101は、流路1の深さH分程度の曲折であっても、その後に第2曲折部102を通流させることにより、層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を、壁面1d2対して平行な積層状態とすることができる。
【0124】
流路1は、図20から図23の形態に限定されず、自由に設計することができる。例えば、図24に示すように、2次元又は3次元のプラスチックやガラス等の基板T上に形成した流路1を、本発明に係る検出装置に用いることも可能である。更に、図25に示すように、複数の流路1を合流させて用いることも可能である。
【0125】
なお、符号111は、サンプル流導入口を、符号121及び131は、シース流導入口をそれぞれ示す。シース流導入口121、131は、それぞれのシース流用流路12、13に、各1つずつ個別に設けているが、特にこの形態に限定されない。例えば、各シース流用流路12、13のシース流導入口121a、131aと、シース流導入口121b、131b(図26(i)参照)とを、図26(ii)、(iii)、(iv)に示すようにそれぞれ共通のシース流導入口121、131とすることで、基板T上のシース流導入口121、131の数を削減することができ、シース流導入の作業効率を上げることが可能となる。
【0126】
(2)第1検出部31
第1検出部31では、流路1の第1曲折部101及び第2曲折部102の少なくとも上流において、層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)の層流幅及び流路1における位置を検出する。
【0127】
第1検出部では、層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)の層流幅及び流路1における位置が検出できれば、その検出方法は特に限定されず、公知の方法を自由に採用することができる。例えば、光学的方法、電気的方法、磁気的方法などを挙げることができ、特に、本発明においては、光学的方法が好適である。
【0128】
光学的方法としては、例えば、蛍光測定、散乱光測定、透過光測定、反射光測定、回折光測定、紫外分光測定、赤外分光測定、ラマン分光測定、FRET測定、FISH測定その他各種スペクトラム測定等の方法が挙げられる。また、電荷結合素子(CCD)やComplementary Metal Oxide Semiconductor(CMOS)などのエリア撮像素子を用いて検出を行えば、一画面全体の試料Cから発せられるイメージを光電変換することができる。
【0129】
光学的方法を採用する場合における光照射の種類は特に限定されないが、試料から蛍光や散乱光を確実に発生させるためには、光方向、波長、光強度が一定の光が望ましい。一例としては、レーザやLED(Light Emission Diode:発光ダイオード)を挙げることができる。
【0130】
また、光学的方法を採用する場合における光照射方法は特に限定されないが、例えば、図20中符号W1で示すように、照射スポットを流路幅方向に走査させながら光学的情報を検出してもよい。
【0131】
電気的方法としては、例えば、サンプル流F1やシース流F21、F22に含有される試料C等の物質に関する抵抗値、容量値(キャパシタンス値)、インダクタンス値、インピーダンス、電極間の電界の変化値等の測定を行う方法が挙げられる。
【0132】
磁気的方法としては、例えば、サンプル流F1やシース流F21、F22に含有される試料C等の物質の表面に磁性体を修飾し、磁化、磁界変化、磁場変化等の測定を行う方法が挙げられる。
【0133】
本発明に係る検出装置2に備える第1検出部31の個数は、特に限定されず、図25に示すように、流路1を複数設ける場合などには、第1検出部31も複数備えることも自由である。
【0134】
なお、図25に示す実施形態の場合でも、1つの第1検出部31を走査させることにより、複数の流路1内の層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)の層流幅及び流路1における位置を検出することも可能である。
【0135】
(2)第2検出部32
第2検出部32では、流路1の第1曲折部101及び第2曲折部102の少なくとも下流において、試料Cから発せられる情報を検出する。なお、検出方法は、第1検出部31と同様に自由に選択することができる。
【0136】
第2検出部32における検出条件は、第1検出部31で得た層流情報に基づいて、制御することが可能である。例えば、光照射スポットの位置、照射スポットの形状、光照射強度、パルス幅、パルス比率、焦点位置、光検出器の増幅率、光照射器の増幅率等を制御することができる。
【0137】
本発明に係る検出装置2に備える第2検出部32の個数も、特に限定されず、複数備えることも自由である。例えば、図示しないが、流路1内での相互作用などの反応量の違いを、流路1の位置毎に検出したい場合など、流路1の通流方向に複数の第2検出部32を備えることもできる。
【0138】
なお、この場合、1つの第2検出部32を走査させることにより、流路1の位置毎に反応量の違いを検出することも可能である。
【0139】
以上のように、本発明に係る検出装置2は、実際に試料Cを検出する第2検出部32とは別に、流路1内の層流情報を検出する第1検出部31を備えているため、試料1を流路1内に通流させた状態で、層流情報の検出を行い、この情報を第2検出部32による試料Cの検出条件制御に用いることができる。そのため、予め、試料Cに対応した参照スペクトルビーズや参照直径ビーズ等を流通させるような前準備工程を行う必要がなく、検出時間の短縮や検出精度の向上が実現できる。
【0140】
また、本発明に係る検出装置2は、第1曲折部101と第2曲折部102とを備える流路1を備えているため、第1検出部31による層流情報検出後に、流路1内の層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)の積層方向を変更することができる。そのため、第1検出部31と第2検出部32からの検出を、同一方向から行うことが可能である。従って、装置の小型化等を実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】本発明に係る検出方法のフロー図である。
【図2】本発明に係る検出方法に用いることができる流路1の斜視模式図である。
【図3】本発明に係る検出方法に用いることができる図2とは異なる流路1の斜視模式図である。
【図4】層流曲折工程(II)の前後の流路1内を比較する図であり、図4(A)は、検出方向Dから視た流路1を示す断面模式図であり、図4(ii)は、検出方向Dに対して側方から視た流路1を示す断面模式図であり、図4(i−1)、(ii−1)は、それぞれ層流曲折工程(II)を行う前の流路1を示す断面模式図であり、図4(i−2)、(ii−2)は、それぞれ層流曲折工程(II)を行った後の流路1を示す断面模式図である。
【図5】本発明に係る検出方法に用いることができる図2及び図3とは異なる流路1の斜視模式図である。
【図6】本発明に係る検出方法に用いることができる図2、図3及び図5とは異なる流路1の斜視模式図である。
【図7】本発明に係る検出方法に用いることができる図2、図3、図5及び図6とは異なる流路1の斜視模式図である。
【図8】本発明に係る検出方法に用いることができる図2、図3、図5から図7とは異なる流路1の斜視模式図である。
【図9】層流情報検出工程(IV)を経た後の層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を積層状態の側方から見た断面摸式図であり、図9(i)は、層流制御工程(V)を行う前を、図9(ii)は、層流制御工程(V)を行った後を示す断面摸式図である。
【図10】層流情報検出工程(IV)を経た後の図9とは異なる層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を積層状態の側方から見た断面摸式図であり、図10(i)は、層流制御工程(V)を行う前を、図10(ii)は、層流制御工程(V)を行った後を示す断面摸式図である。
【図11】層流情報検出工程(IV)を経た後の図9、及び図10とは異なる層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を積層状態の側方から見た断面摸式図であり、図11(i)は、層流制御工程(V)を行う前を、図11(ii)は、層流制御工程(V)を行った後を示す断面摸式図である。
【図12】層流情報検出工程(IV)を経た後の図9から図11とは異なる層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を積層状態の側方から見た断面摸式図であり、図12(i)は、層流制御工程(V)を行う前を、図12(ii)は、層流制御工程(V)を行った後を示す断面摸式図である。
【図13】層流情報検出工程(IV)を経た後の層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を積層状態の側方から見た断面摸式図であり、図13(i)は、検出条件制御工程(VI)を行う前を、図12(ii)は、検出条件制御工程(VI)を行った後を示す断面摸式図である。
【図14】本発明に係る検出方法に用いることができる図2、図3、図5から図8とは異なる流路1の斜視模式図である。
【図15】本発明に係る検出方法に用いることができる図2、図3、図5から図8、及び図14とは異なる流路1の斜視模式図である。
【図16】図16(i)は、本発明に係る検出方法に用いることができる基板T上に形成した流路1の上方視平面模式図であり、図16(ii)は、図16(i)中符号R1で示す破線円部分の流路1の断面模式図である。
【図17】図17(i)は、図16(i)中符号R2で示す破線円部分の流路1を、検出方向D2から視た断面模式図であり、図17(ii)は、図16(i)中符号R2で示す破線円部分の流路1を、通流方向から視た断面模式図である。
【図18】本発明に係る相互作用検出方法を行う際の流路1内の様子を説明するための図であり、層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を積層状態の側方から見た断面摸式図である。
【図19】本発明に係る相互作用検出方法を行う際の流路1内の様子を説明するための図であり、図18とは異なる層流(サンプル流F1、シース流F21、F22)を積層状態の側方から見た断面摸式図である。
【図20】本発明に係る検出装置2の一実施形態に係る概念を示す斜視模式図である。
【図21】本発明に係る検出装置2の図20とは異なる実施形態に係る概念を示す斜視模式である。
【図22】本発明に係る検出装置2の図20及び図21とは異なる実施形態に係る概念を示す斜視模式である。
【図23】本発明に係る検出装置2の図20から図22とは異なる実施形態に係る概念を示す斜視模式である。
【図24】本発明に係る検出装置2の図20及び図22とは異なる実施形態に係る概念を示す斜視模式である。
【図25】本発明に係る検出装置2の図20から図24とは異なる実施形態に係る概念を示す斜視模式である。
【図26】本発明に係る検出装置2に用いることが可能な流路1の構成例を示す上方視平面模式図である。
【符号の説明】
【0142】
1 流路
D1、D2 検出方向
F1 サンプル流
F21、F22、F23、F24 シース流
1d1、1d2 流路壁
11 サンプル流用流路
12、13 シース流用流路
C 試料
f1 サンプル流幅
f21、f22 シース流幅
T 基板
111 サンプル流導入口
121、131シース流導入口
A 物質A
B 物質B
2 検出装置
101 第1曲折部
102 第2曲折部
31 第1検出部
32 第2検出部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路内を通流する試料の検出方法であって、
前記試料を含有するサンプル流をシース流で挟み込むことにより、検出方向に面する前記流路の壁面に対して垂直に積層された状態の層流を形成する第1層流形成工程と、
該第1層流形成工程を経た後に、前記層流を、前記壁面に対して平行な積層状態となるように曲折させる層流曲折工程と、
該層流曲折工程を経た後に、前記試料の検出を行う試料検出工程と、
を少なくとも行う検出方法。
【請求項2】
前記第1層流形成工程を経た後に、該第1層流形成工程において形成された前記層流の層流幅及び/又は位置を検出する層流情報検出工程を行うことを特徴とする請求項1記載の検出方法。
【請求項3】
前記試料検出工程では、前記層流情報検出工程において検出された層流情報に基づいて、前記試料の検出を行うことを特徴とする請求項2記載の検出方法。
【請求項4】
前記層流曲折工程では、下記(1)工程と、(2)工程とを少なくとも行うことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の検出方法。
(1)前記層流の通流方向をX方向とすると、前記層流をY軸方向に略90度曲折させる第1曲折工程。
(2)前記層流をZ軸方向に略90度曲折させる第2曲折工程。
【請求項5】
前記試料検出工程を行う前に、前記層流の層流幅及び/又は位置を制御する層流制御工程を行うことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の検出方法。
【請求項6】
前記試料検出工程を行う前に、前記試料検出工程における検出条件を制御する検出条件制御工程を行うことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の検出方法。
【請求項7】
前記層流曲折工程を経た後に、前記層流を、前記積層状態の両側方向からシース流で更に挟み込む第2層流形成工程を行うことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の検出方法。
【請求項8】
第2層流形成工程を経た2以上の層流を合流させることにより、複数の層流を形成する第3層流形成工程を行うことを特徴とする請求項7記載の検出方法。
【請求項9】
前記層流情報検出工程では、光学的な検出を行うことを特徴とする請求項2から8のいずれか一項に記載の検出方法。
【請求項10】
前記試料検出工程では、光学的な検出を行うことを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の検出方法。
【請求項11】
流路内を通流する物質Aと物質B間の相互作用を検出する方法であって、
物質Aを含有するサンプル流を、少なくとも一部に物質Bを含有するシース流で挟み込むことにより、検出方向に面する前記流路の壁面に対して垂直に積層された状態の層流を形成する第1層流形成工程と、
該第1層流形成工程を経た後に、前記層流を、前記壁面に対して平行な積層状態となるように曲折させる層流曲折工程と、
該層流曲折工程を経た後に、前記物質Aと物質B間の相互作用の検出を行う相互作用検出工程と、
を少なくとも行う相互作用検出方法。
【請求項12】
前記第1層流形成工程を経た後に、該第1層流形成工程において形成された前記層流の層流幅及び/又は位置を検出する層流情報検出工程を行うことを特徴とする請求項11記載の相互作用検出方法。
【請求項13】
前記相互作用検出工程では、前記層流情報検出工程において検出された層流情報に基づいて、前記物質Aと物質B間の相互作用の検出を行うことを特徴とする請求項12記載の相互作用検出方法。
【請求項14】
前記層流曲折工程では、下記(1)工程と、(2)工程とを少なくとも行うことを特徴とする請求項11から13のいずれか一項に記載の相互作用検出方法。
(1)前記層流の通流方向をX方向とすると、前記層流をY軸方向に略90度曲折させる第1曲折工程。
(2)前記層流をZ軸方向に略90度曲折させる第2曲折工程。
【請求項15】
前記相互作用検出工程を行う前に、前記層流の層流幅及び/又は位置を制御する層流制御工程を行うことを特徴とする請求項11から14のいずれか一項に記載の相互作用検出方法。
【請求項16】
前記相互作用検出工程を行う前に、前記相互作用検出工程における検出条件を制御する検出条件制御工程を行うことを特徴とする請求項11から15のいずれか一項に記載の相互作用検出方法。
【請求項17】
前記層流曲折工程を経た後に、前記層流を、前記積層状態の両側方向からシース流で更に挟み込む第2層流形成工程を行うことを特徴とする請求項11から16のいずれか一項に記載の相互作用検出方法。
【請求項18】
第2層流形成工程を経た2以上の層流を合流させることにより、複数の層流を形成する第3層流形成工程を行うことを特徴とする請求項17記載の相互作用検出方法。
【請求項19】
前記層流情報検出工程では、光学的な検出を行うことを特徴とする請求項12から18のいずれか一項に記載の検出方法。
【請求項20】
前記相互作用検出工程では、光学的な検出を行うことを特徴とする請求項11から19のいずれか一項に記載の相互作用検出方法。
【請求項21】
流路内を通流する試料の検出装置であって、
前記通流方向をX方向とした場合に、Y軸方向に略90度に流路が曲折する第1曲折部と、Z軸方向に略90度に流路が曲折する第2曲折部と、を少なくとも備える流路と、
前記第1曲折部及び第2曲折部の少なくとも上流側の流路において、前記試料を含有する層流の層流幅及び/又は位置を検出する第1検出部と、
前記第1曲折部及び第2曲折部の少なくとも下流側の流路において、前記試料の検出を行う第2検出部と、
を少なくとも備える検出装置。
【請求項1】
流路内を通流する試料の検出方法であって、
前記試料を含有するサンプル流をシース流で挟み込むことにより、検出方向に面する前記流路の壁面に対して垂直に積層された状態の層流を形成する第1層流形成工程と、
該第1層流形成工程を経た後に、前記層流を、前記壁面に対して平行な積層状態となるように曲折させる層流曲折工程と、
該層流曲折工程を経た後に、前記試料の検出を行う試料検出工程と、
を少なくとも行う検出方法。
【請求項2】
前記第1層流形成工程を経た後に、該第1層流形成工程において形成された前記層流の層流幅及び/又は位置を検出する層流情報検出工程を行うことを特徴とする請求項1記載の検出方法。
【請求項3】
前記試料検出工程では、前記層流情報検出工程において検出された層流情報に基づいて、前記試料の検出を行うことを特徴とする請求項2記載の検出方法。
【請求項4】
前記層流曲折工程では、下記(1)工程と、(2)工程とを少なくとも行うことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の検出方法。
(1)前記層流の通流方向をX方向とすると、前記層流をY軸方向に略90度曲折させる第1曲折工程。
(2)前記層流をZ軸方向に略90度曲折させる第2曲折工程。
【請求項5】
前記試料検出工程を行う前に、前記層流の層流幅及び/又は位置を制御する層流制御工程を行うことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の検出方法。
【請求項6】
前記試料検出工程を行う前に、前記試料検出工程における検出条件を制御する検出条件制御工程を行うことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の検出方法。
【請求項7】
前記層流曲折工程を経た後に、前記層流を、前記積層状態の両側方向からシース流で更に挟み込む第2層流形成工程を行うことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の検出方法。
【請求項8】
第2層流形成工程を経た2以上の層流を合流させることにより、複数の層流を形成する第3層流形成工程を行うことを特徴とする請求項7記載の検出方法。
【請求項9】
前記層流情報検出工程では、光学的な検出を行うことを特徴とする請求項2から8のいずれか一項に記載の検出方法。
【請求項10】
前記試料検出工程では、光学的な検出を行うことを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の検出方法。
【請求項11】
流路内を通流する物質Aと物質B間の相互作用を検出する方法であって、
物質Aを含有するサンプル流を、少なくとも一部に物質Bを含有するシース流で挟み込むことにより、検出方向に面する前記流路の壁面に対して垂直に積層された状態の層流を形成する第1層流形成工程と、
該第1層流形成工程を経た後に、前記層流を、前記壁面に対して平行な積層状態となるように曲折させる層流曲折工程と、
該層流曲折工程を経た後に、前記物質Aと物質B間の相互作用の検出を行う相互作用検出工程と、
を少なくとも行う相互作用検出方法。
【請求項12】
前記第1層流形成工程を経た後に、該第1層流形成工程において形成された前記層流の層流幅及び/又は位置を検出する層流情報検出工程を行うことを特徴とする請求項11記載の相互作用検出方法。
【請求項13】
前記相互作用検出工程では、前記層流情報検出工程において検出された層流情報に基づいて、前記物質Aと物質B間の相互作用の検出を行うことを特徴とする請求項12記載の相互作用検出方法。
【請求項14】
前記層流曲折工程では、下記(1)工程と、(2)工程とを少なくとも行うことを特徴とする請求項11から13のいずれか一項に記載の相互作用検出方法。
(1)前記層流の通流方向をX方向とすると、前記層流をY軸方向に略90度曲折させる第1曲折工程。
(2)前記層流をZ軸方向に略90度曲折させる第2曲折工程。
【請求項15】
前記相互作用検出工程を行う前に、前記層流の層流幅及び/又は位置を制御する層流制御工程を行うことを特徴とする請求項11から14のいずれか一項に記載の相互作用検出方法。
【請求項16】
前記相互作用検出工程を行う前に、前記相互作用検出工程における検出条件を制御する検出条件制御工程を行うことを特徴とする請求項11から15のいずれか一項に記載の相互作用検出方法。
【請求項17】
前記層流曲折工程を経た後に、前記層流を、前記積層状態の両側方向からシース流で更に挟み込む第2層流形成工程を行うことを特徴とする請求項11から16のいずれか一項に記載の相互作用検出方法。
【請求項18】
第2層流形成工程を経た2以上の層流を合流させることにより、複数の層流を形成する第3層流形成工程を行うことを特徴とする請求項17記載の相互作用検出方法。
【請求項19】
前記層流情報検出工程では、光学的な検出を行うことを特徴とする請求項12から18のいずれか一項に記載の検出方法。
【請求項20】
前記相互作用検出工程では、光学的な検出を行うことを特徴とする請求項11から19のいずれか一項に記載の相互作用検出方法。
【請求項21】
流路内を通流する試料の検出装置であって、
前記通流方向をX方向とした場合に、Y軸方向に略90度に流路が曲折する第1曲折部と、Z軸方向に略90度に流路が曲折する第2曲折部と、を少なくとも備える流路と、
前記第1曲折部及び第2曲折部の少なくとも上流側の流路において、前記試料を含有する層流の層流幅及び/又は位置を検出する第1検出部と、
前記第1曲折部及び第2曲折部の少なくとも下流側の流路において、前記試料の検出を行う第2検出部と、
を少なくとも備える検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
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【図11】
【図12】
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【図15】
【図16】
【図17】
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【図19】
【図20】
【図21】
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【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2009−162664(P2009−162664A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−1626(P2008−1626)
【出願日】平成20年1月8日(2008.1.8)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月8日(2008.1.8)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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