説明

流路切替バルブのためのホルダ及びそれを備える装置

【課題】流路切替バルブをホルダに着脱することを容易とし、且つ、切替バルブがホルダから脱落することを防止する技術を提供する。
【解決手段】本発明の実施形態は、少なくとも一本の腕を有する流路切替ハンドルを具備する流路切替バルブのためのホルダを含む。このホルダは、前記ハンドルを受容する第一位置及び第二位置を有し、ここで該ハンドルは前記第一及び第二位置の間を摺動可能であり、前記第一位置においては前記流路切替バルブと前記ホルダとを離合自在とし、前記第二位置においては、前記ハンドルの少なくとも一本の腕が前記ホルダから離れることを阻害することによって、前記流路切替バルブが前記ホルダから脱落することを防止するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路切替バルブを保持すると共に該バルブの流路接続を切り替えるためのホルダ、及びそのホルダを備える装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の流路の間の接続を切り替える手段として、二方活栓や三方活栓などが知られている。三方活栓とは、図1および図2に描かれるように、胴体101に3本の枝管102a〜102cがT字型に接続されると共に、胴体101の中に凸字型の流路切替具106が回動自在に内蔵されており、この流路切替具106を回転させることにより、3本の枝管102a〜102cの流路を切り替える流路切替バルブである。図2A〜Dに描かれるように、流路切替具106が図2Aの位置にあるときは、枝管102aと102b、102aと102c、102bと102cの間の流路が全て開いているが、図2Bの状態では、枝管102bと102cと間の流路のみが開いており、図2Cの状態では枝管102aと102bとの間の流路のみが開いており、図2Dの状態では枝管102aと102cの間の流路のみが開く。流路切替具106にはハンドル104が設けられており、このハンドルを回転させることにより、流路切替具106を回転させ、流路の切替を行うことができる。図1に描かれるハンドル104はT型の延びる3本の腕を有しているが、腕を1本しか有さないハンドルを具備する三方活栓も市販されている。
【0003】
このような流路切替手段は様々な分野で利用されているが、その利用分野の一つとして、薬剤製造装置がある。薬剤の製造には複数の液体又は気体原料を混合又は反応させる工程があり、原料の流送や混合、精製等の多数の工程を多くのラインを利用して行う。このとき、目的に応じた作業を行うため、三方活栓を初めとする流路切替バルブがラインの分岐点に多数使用されている。薬剤の製造中は外部との接触をできる限り少なくすることが好ましいので、バルブの切り替え操作は機械制御で行うように構成されることが多い。このため、切替バルブをモータやアクチュエータと言った回転機構に接続されたホルダに固定し、外部制御によって流路を切り替えることが行われてきた。
【0004】
ところで、医薬品の製造においては、製造ラインの汚染を防止するために、製造終了ごとに、当該製造ラインの全体又は一部を洗浄又は交換することが望ましい。このような目的から、シリンジやタンク、各種チューブや切替バルブなどを含む製造ライン全体を、制御装置に着脱可能な形態とした種々の製造システムが考案され、実用化されている。例えば、特開2004−279192の0026及び0027段落並びに図1及び2には、製造ライン全体をカートリッジにまとめ、カートリッジ全体を着脱可能とすることが開示されている。
【0005】
製造ラインを交換する際、新しい製造ラインの切替バルブを制御装置のホルダへ取り付ける必要が生じる。この際、取り付けが甘いと切替バルブがホルダから浮いてしまい、製造ラインの固定が不十分になるのみならず、ホルダの回転によって切替バルブの流路変更を行うことができなくなってしまう。また、当初はホルダに適切に取り付けられていても、切替動作を繰り返していくうちにバルブがホルダから浮き上がってしまい、同様に制御不能になる場合もある。
【0006】
特公平8−14344の図1には、切替バルブを制御部に固定するための脱落防止機構が開示されており、三方活栓2のハンドル10を回転駆動部の穴10に装着した後、その上からストッパー32をかぶせて固定することが記載されている(特に2頁右欄13行〜3頁左欄21行および図1〜3を参照。)
【特許文献1】特公平8−14344号公報
【特許文献2】特開2004−279192号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特公平8−14344の脱落防止機構は場所をとり、着脱にも時間がかかる。特に、特開2004−279192のように製造ラインの全体を交換する必要がある場合、取り付けなければならない切替バルブの数が多数に上り、特公平8−14344のような脱落防止機構にバルブを一つ一つ取り付けていくのは時間と手間がかかる。また、多数のバルブやチューブなどが狭い範囲に密集しているため、特公平8−14344のような脱落防止機構を設けることが物理的にできない場合もあり、たとえ設けることができたとしても、スペースが狭いために作業が非常に困難になることも予想される。
【0008】
本発明に係る技術はかかる事情に鑑みて開発されたものであり、切替バルブの着脱を容易とし、且つ、切替バルブの脱落を防止することを目的として開発されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態は、少なくとも一本の腕を有する流路切替ハンドルを具備する流路切替バルブ用のホルダを含む。このホルダは、
・ 前記ハンドルを受容する第一位置及び第二位置を有し、ここで該ハンドルは前記第一及び第二位置の間を摺動可能であり、
・ 前記第一位置においては前記流路切替バルブと前記ホルダとを離合自在とし、
・ 前記第二位置においては、前記ハンドルの少なくとも一本の腕が前記ホルダから離れることを阻害することによって、前記流路切替バルブが前記ホルダから脱落することを防止する、
ように構成されることを特徴とする。
【0010】
上記の構成によれば、切替バルブをホルダに取り付けるときは、上記第一位置において切替バルブをホルダに合わせ、そこからスライドさせて第二位置へと移動させるという簡単な動作だけで、切替バルブがホルダから脱落不能とすることができる。また、バルブをホルダから取り外すときも、バルブを第二位置から第一位置へとスライドさせるだけで、バルブがホルダから分離可能になるので、やはり非常に簡単な動作で取り外しを行うことができる。
【0011】
したがって、上記の構成によれば、切替バルブとホルダの着脱を極めて容易に行うことが可能となるだけでなく、切替バルブがホルダから脱落することを確実に防止することができる。
【0012】
このような容易な取り付け方法は、多数の切替バルブを含む製造ラインアセンブリを制御装置に取り付ける場合に、特に有益である。制御装置側に、当該アセンブリが有する切替バルブの場所に対応する位置に、第一位置から第二位置へのスライド方向を各々揃えてホルダを配設することにより、複雑で規模の大きなラインアセンブリであっても、第一位置に合わせて第二位置へとスライドするという、極めて簡単な作業だけで制御装置に取り付けることが可能となる。
【0013】
ハンドルの腕がホルダから離れることを阻害する構成の一例として、前記第二位置において、前記ハンドルの少なくとも一本の腕を溝部に収容すると共に、前記溝部の開口部の少なくとも一部を、部分的に又は完全に塞ぐ構造を設ける構成を採用することができる。腕が溝部に収容されていることから、溝壁に挟まれて腕の移動が制限されると共に、開口部の少なくとも一部が塞がれていることから、腕が開口部から落ちてしまうこともない。このように、ハンドルの腕がホルダから脱落することを防止することによって、バルブの脱落が防止される。
【0014】
従って、本発明の実施形態は、前記ハンドルを前記第一位置から前記第二位置に摺動させる際、前記ハンドルの少なくとも一本の腕がその延伸方向と同じ方向に平行移動するように構成される流路切替バルブ用ホルダであって、前記第二位置において、上部に邪魔板を設けた構造の下部に前記少なくとも一本の腕を収容することにより、該腕が前記ホルダから離れることを阻害する、流路切替バルブ用ホルダを含む。
【0015】
前記開口部の一部を塞ぐための構成の一例として、前記開口部の上部の少なくとも一部に渡される邪魔板またはピンを採用することができる。また、前記開口部の上部の少なくとも一部分において、前記溝の側壁の上部が該開口部の中央側に迫り出すように形成することにより、該部分の開口部が部分的に塞ぐこととしてもよい。
【0016】
ハンドルの腕がホルダから離れることを阻害する構成の別の例として、前記第二位置において、前記ハンドルの少なくとも一本の腕を、前記ホルダ本体に立設した、上部が閉じた門状の構造に通すこととしてもよい。腕がホルダから浮き上がろうとしても、門状構造の梁部に衝突するため、浮き上がることはできない。これによってバルブの脱落が防止される。
【0017】
ホルダには、ハンドルの腕を側方から支持する構造が設けられることが好ましい。これは、ハンドルを回転させるべくホルダが回転するとき、腕を押してその回転力をホルダに伝えるためである。従って、一方の回転方向においてハンドルの腕に回転力を伝える第一の支持部と、他方の回転方向においてハンドルの腕に回転力を伝える第二の支持部の2つが必要である。第一の支持部と第二の支持部は、ハンドルの同じ腕に対して設けられてもよいし、それぞれ異なる腕に設けられてもよい。これらの支持部は、壁面状や柱状の構造を呈することができる。壁面や柱の高さは、腕を十分に押すことができるような高さに定められることが好ましい。
【0018】
ハンドルの形状がT字型である場合、前記第二位置において、T字の横棒にあたる二本の腕の各々について、その少なくとも一部分を溝状または門状の構造で挟むように形成されることが好ましい。このような形状によれば、ホルダが回転する際に、その回転力を効果的にハンドルに伝えることができ、バルブの切替動作をスムーズに行うことが可能となる。
【0019】
ハンドルの腕がホルダから離れることを阻害する構成の別の例として、ハンドルを前記第一位置から前記第二位置に摺動させる際、その少なくとも一本の腕が該腕の延伸方向とは異なる方向に平行移動するように構成し、前記第二位置において、前記平行移動の方向に開口する構造であって断面がコの字状又はU字状を呈する構造に前記少なくとも一本の腕の少なくとも一部を収容するという構成を用いることができる。コの字状又はU字状構造の天井部分によって、腕がホルダから離れることが阻害される。
【0020】
本発明に従う流路切替バルブ用ホルダの実施形態は、該流路切替バルブ用ホルダに組み合わされる流路切替バルブの軸部の少なくとも一部が係合する係合部を有することができる。例えば、バルブの軸部が円柱である場合、その円柱形状の少なくとも一部が嵌合しうる湾曲部を有することができる。このような係合部は、上記第二位置において、切替バルブとホルダの位置決めを行うために有利である。
【0021】
本発明の実施形態は、本発明によって具現化される流路切替バルブ用ホルダを回動可能に配設した装置を含む。また本発明の実施形態は、複数の流路切替バルブ用ホルダを各々回動可能に配設した装置であって、前記複数の流路切替バルブ用ホルダの少なくとも一つが、本発明によって具現化される流路切替バルブ用ホルダである、装置を含む。かかる装置の典型的なものは、薬剤等の製造のために、多数の切替バルブを操作して原料を流送したり混合したりする必要のある、薬剤製造装置である。
【0022】
本発明の好適な実施形態のいくつかのものは添付の特許請求の範囲に特定されている。しかし本発明の実施形態は、特許請求の範囲や明細書及び図面に明示的に記載されるものに限定されず、本発明の思想を逸脱することなく、様々な形態をとることが可能である。本発明は、本願特許請求の範囲や明細書及び図面に明示的に開示されるか否かにかかわらず、これらの書類から教示されうるあらゆる新規かつ有益な構成を、その範囲に含むものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明のより深い理解に資するために、本発明の実施形態の一例を添付図面を参照しながら説明する。まず、図3〜図8を用いて本発明の実施形態の典型的な例となりうる、三方活栓用ホルダ300の外観、及びその使用態様を説明する。
【0024】
図3は、本発明による三方活栓用ホルダ300の外観を描いた図であり、図3Aは斜視図、図3Bは上面図である。
【0025】
ホルダ300は、円柱状の部材302を削り出して製作されることができる。部材302の材質は、ステンレスなど錆びにくい材質であることが望ましい。部材302の上面部には、谷地部306を削り出すことにより、略半円形の断面を有する台地部308,略四半円形の断面を有する台地部310,および第3の台地部312が形成される。図3に描かれるように、台地部308〜312の崖面は、谷地部306から垂直に切り立つように形成される。実施形態によっては別の角度であってもよい。
【0026】
略半円形の台地部308の崖面の一部308aと、略四半円形の台地部310の崖面の一部310aは、互いに平行に相対するように形成される。従って、崖面308a,310aおよび谷地部306で囲まれる空間は、上部に開口部を有する断面がコの字型の溝状を呈する。このようにして形成される溝部314に、三方活栓のハンドルの腕の一本が収容される。崖面308aと310aとの間には邪魔板316が渡され、溝部314の開口部が一部塞がれる。この邪魔板316のために、溝部314に収容されたハンドルの腕が、その開口部から外れてしまうことが防止される。図3において、邪魔板316は細長い板状の構造として描かれているが、実施形態によっては、より幅の広い板状であったり、逆に細いピン状の構造であってもよい。
【0027】
台地部308及び台地部310が軸孔304の円周部に接する部分の崖面308b及び310bは、上から見た輪郭が軸孔304の円周に沿って湾曲するように形成される。これらの湾曲部は、三方活栓のハンドルの軸部の形状に合わせて形成され、ハンドルが取り付けられた時にその軸部が湾曲部308b及び310bにぴったり嵌まるようになっている。これによってハンドルとホルダ300の位置決めが行われる。なお、この例では湾曲部308b及び310bの輪郭は軸孔304の円周に合わせて形成されているが、この輪郭は軸孔304の円周に合わせて作られることが大事なのではなく、三方活栓のハンドルの軸部の形状に合わせて作られることが大事であることは留意すべきである。
【0028】
略四半円形の台地部310の崖面の一部310aに直交する崖面310cは、三方活栓がホルダ300に取り付けられた状態で、そのT字型のハンドルの縦腕を側面から支持する。すると、すなわち崖面310aはT字型のハンドルの2本の横腕の1本を側面から支持することになる。従ってホルダ300は、T字型のハンドルを有する三方活栓を保持するために最適化されている。
【0029】
第3の台地部312は、崖面の一部312a(図4b参照)が、略四半円形の台地部310の崖面310aと同じ面内に位置するように形成され、また312aと別の崖面312b(図4b参照)が、台地部310の崖面310cに平行になるように形成される。崖面312aは、三方活栓がホルダ300に取り付けられたときに、そのT字型のハンドルの横腕の一本を側面から支持する。崖面312bは、三方活栓のハンドルをホルダ300に取り付ける工程の一時点において、ハンドルの腕とホルダ300の位置決めを行うために用いられることができる。台地部310の崖面310bと第3の台地部312の崖面312cとの間は大きな間隔が開いており、ホルダ300上で三方活栓がスライドしうる空間が確保される。
【0030】
略半円形の台地部308における、軸孔304を中心にして崖面308aとは反対側に位置する崖面308cは、三方活栓のハンドルの腕が溝部314をスライドするときにその軸部の摺動が阻害されないように、崖面308aと平行に形成され、崖面308cと軸部304の中心との距離が、少なくとも三方活栓の軸部の半径と同じであるように形成される。
【0031】
部材302の中心軸の部分には貫通軸孔304を形成してもよく、この孔はホルダ300が装着される制御装置の回転アクチュエータに装着されるために用いられることができる。また孔304は、三方活栓の軸部の一部を収容するために用いられることもできる。
【0032】
図4は、ホルダ300に取り付けられる三方活栓のハンドル400を模式的に描いた図である。ハンドル400は、円柱状の軸部402の周りにT字型に設けられる腕404,406,408を有する。ハンドル400が図3のホルダ300に取り付けられるとき、軸部402の外縁部が崖面308b及び310bに嵌まり、腕408は前述の溝部314に収容される。腕406は、崖面310cに側面から支持され、腕404は崖面312aに側面から支持される。
【0033】
図5は、ハンドル400をホルダ300に取り付ける様子を説明するための図である。ハンドル400をホルダ300に取り付けるためには、まず図5Aに描かれるように、ハンドル400をホルダ300の中心部から離れた位置で受容させる。図5Aの例では、ハンドル400の腕404と腕406が台地部312の崖面312aおよび312bに接し、軸部402の上部は台地部308の崖面308cに接している。またハンドル400の腕408は、溝部314に少しだけ挟められている。これらによって、ハンドル400をホルダ300に取り付けるための初期位置の位置決めが行われることができる。
【0034】
なお、初期位置において位置決めが行われる必要は必ずしもないので、取り付け作業の開始時に図5Aのように腕404と腕406が台地部312に接している必要はなく、腕408が邪魔板316に接触しないようにハンドル400をホルダ300に取り付けることができればそれでよい。
【0035】
図5Aに例示されるように、取り付け作業の開始時においては、ハンドル400がホルダ300の上方へ移動することを強固に妨げる構造は設けられていないので、ハンドル400はホルダ300から自由に着脱することが可能である。ただし、実施形態によっては溝314の幅を多少狭くとるなどとすることによって、腕408が溝314から抜くときに抵抗がかかるようにし、もって図5Aの状態でも多少の保持力をハンドル400に及ぼすことができるように構成してもよい。
【0036】
ハンドル400をホルダ300に取り付けるためには、図5Aの状態から、ハンドル400を図の右方向、すなわち溝部314に沿って中心から外側の方へスライドさせる。ハンドルの軸部402が崖面308b及び310bに当接することにより、ハンドル400の摺動は停止されることになり、ハンドル400とホルダ300の位置決めが行われる。このときの状態が図5Bに描かれる。
【0037】
図5Bの状態において、腕408は、溝部314の中に完全に収容され、崖面308aおよび310aによってその両側面が支持されている。また、腕408は邪魔板316の下側を通されるため、邪魔板316が邪魔になって溝部314から外れることができない。崖面308aおよび310aや邪魔板316と腕408の距離は、実装において、具体的要求に従って適宜定められねばならない。崖面308a,310aや邪魔板316と腕408との間隔が事実上0であれば、腕408はこれらによって非常に強固に保持されることになる。逆に上記の間隔に余裕を持たせれば、溝部314の中で腕408の多少の遊びを許容することになるであろう。本発明の実施形態はそのいずれをも含むものであることは、留意すべきである。
【0038】
ハンドルの軸部402の外周面は、湾曲する崖面308bおよび310bに当接し、これによってハンドルの回転軸とホルダの回転軸の位置が合わせられる。腕406は、崖面310cによって側方から支持され、ホルダ300が矢印502の方向へ回転せしめられるとき、崖面310cに押されてその回転力を受け、ハンドル400を回転せしめる。腕404・408も、崖面312a・308aによってそれぞれ側方から支持され、ホルダ300が矢印502の方向へ回転せしめられるとき、同様にその回転力を受ける。ホルダ300が矢印504の方向へ回転せしめられるときは、ホルダ300の回転力は崖面310aを介してハンドルの腕408へと伝えられる。崖面308a,310a,310c,312aの高さは、腕404,406,408を押す際に腕に十分力を伝えることが可能な高さに定められることが好ましい。
【0039】
上述のように、図5Bの状態においては、邪魔板316に阻害されて腕408が溝部314から外れることが防止されるため、ハンドル400がホルダ300から脱落することを防止することができる。従って、三方活栓のホルダ300への取り付けは、まずハンドル400を図5Aに描かれる位置でホルダ300に押しつけ、そのまま図5Bに描かれる位置までハンドル400ごと三方活栓をスライドさせるだけで、行うことができる。従って非常に簡単な操作で三方活栓をホルダに取り付けることができ、なおかつ三方活栓の脱落を防止することができる。
【0040】
ホルダ300が回転するときに、その回転力をハンドル400により確実に伝達することができるような、ホルダ300の変形例301を図5C〜図5Eに示す。図3〜図5Bと同じ要素については、これらの図と同じ符号を付して説明を省略する。ホルダ301は、ホルダ300に比べて、台地部308の、台地部312と対向する部分が、台地部312の方へ迫り出しているところが異なっている。その他の部分はホルダ300と同様である。
【0041】
この迫り出し部308dは、ハンドル400を収容したとき、その腕404を崖面で側方から支持するように設けられる(図5E参照)。ホルダ300は、矢印504の方向に回転する時、ハンドル400に回転力を伝える部分は崖面310aしかなかったが、ホルダ301は、崖面310aに加えて迫り出し部308dの崖面によっても(腕404を押すことによって)ハンドル400に回転力を伝えることができるため、ホルダ300に比べて、より確実に回転力を伝えることができる。
【0042】
また、迫り出し部308dは台地部312に向かい合う部分にのみ設けられるため、ハンドル400の取り付け作業の初期段階において、軸部402が受容されるスペースは十分に確保される(図5D参照)。
【0043】
ハンドル400をホルダ301に取り付けるときは、まず、図5Dに描かれるように、腕408が邪魔板316に接触しないようにハンドル400をホルダ301に受容させる。次にハンドルの軸部402が台地部308及び310に当接するまで、ハンドル400を溝314の方向にスライドさせる(図5E参照。)図5Dおよび図5Eは、ホルダ300の説明で用いた図5A及び図5Bに対応する。図5Dの状態では、ハンドル400の上部にホルダ301の構成要素は何も存在しないため、ハンドル400とホルダ301は取り外し自在である。図5Eの状態では、腕408の上方に邪魔板316が存在するため、腕408は溝314から浮き上がることができず、これによってハンドル400のホルダ301からの脱落が防止される。ハンドル400のホルダ301への取り付けは、ホルダ300円の取り付けと同様、ホルダとの取り外しが自在な位置から脱落防止位置へとハンドルをスライドさせるだけで行うことができ、極めて容易に行うことができる。
【0044】
ホルダ300は、図7に描かれるような装置で使用されることができる。装置700は、図6に描かれるような薬品製造ラインアセンブリ600を制御するための制御装置である。先に薬品製造ラインアセンブリ600の概要を説明すると、アセンブリ600は、複数の三方活栓602a〜f,複数のシリンジ604a〜d,複数の容器606a及び606b,ヒータ608,複数の配管チューブ610a,610bなどを備える。配管チューブ610aから流入する原料が、容器606bに達するまでに、三方活栓やシリンジなどの要素が適宜制御されて所定の混合・反応が行われ、薬品の製造が行われる。なお、ここで説明された薬品製造ラインアセンブリ600は、その機能と構造を非常に一般的・抽象的に説明したものであり、実際に用いられるラインアセンブリは、遙かに複雑なものであることができる。
【0045】
このような薬品製造ラインアセンブリ600が取り付けられる制御装置700は、三方活栓602a〜fの位置に対応して設けられる三方活栓ホルダ702a〜f,シリンジ604a〜dを固定するシリンジホルダ704a〜d,及びシリンジ604a〜dを作動させるためのアクチュエータ706a〜dなどを有する。三方活栓ホルダ702a〜fは、それぞれ独立に回動可能に配設され、薬品製造の処方に従って三方活栓602a〜fの流路を切り替える。なお、ここで説明された制御装置700も、図6を用いて説明された薬品製造ラインアセンブリ600と同様に、その機能と構造を非常に一般的・抽象的に説明したものであり、実際に用いられる制御装置はこれより遙かに複雑なものでありうる。
【0046】
制御装置700において、三方活栓ホルダ702a〜fの少なくとも1つは、図3及び図5に描かれる三方活栓ホルダ300である。三方活栓ホルダ300の三方活栓脱落防止機能により、制御装置700の動作中における三方活栓602a〜f全体の脱落が防止される。三方活栓ホルダ702a〜fの全てが本発明に従う三方活栓ホルダであってもよいが、そのうちのいくつかだけが本発明に従う三方活栓ホルダである場合であることもできる。三方活栓602a〜fが互いに接続されて一体化しているため、一つの三方活栓の脱落が防止されると、隣接する三方活栓の脱落も防止されるため、一部のホルダだけが本発明に従う三方活栓ホルダである場合であっても、三方活栓列全体の脱落が防止されうる。試作結果によれば、5個のホルダに対して1個が本発明に従うホルダであればよく、より確実に三方活栓を取り付けたい場合でも、3個中1個であればよい。ただし、列の端に位置する三方活栓を取り付けるホルダは、本発明に従うホルダであることが好ましい。制御装置700においては、ホルダ702a,702d,702fの3つだけが本発明に従う三方活栓ホルダ300であり、その他は三方活栓の脱落防止機能を有さないホルダである。これだけでも、三方活栓602a〜fの全てに対し、ホルダ702a〜fからの脱落が十分防止される。
【0047】
ラインアセンブリ600を制御装置700に装着する場合は、まず三方活栓602a〜fの腕を全て同じ方向に揃えると共に、ホルダ702a〜fも同じ方向に揃え、対応する三方活栓とホルダがそれぞれ図5Aに描かれる位置になるように調整する。そして、ラインアセンブリ600を制御装置700に押しつけながら、対応する三方活栓とホルダがそれぞれ図5Bに描かれる位置になるようにスライドさせる。これだけの作業で、図5Bに描かれるように三方活栓のハンドルの一本の腕が溝314と邪魔板316で囲まれた領域に入り込み、邪魔板316に阻害されてハンドルがホルダから浮くことができなくなり、もって602a〜fがホルダ702a〜fから浮き上がったり脱落したりすることが防止される。
【0048】
薬品製造ラインアセンブリは、一般的に、デッドボリウムを最少にするため三方活栓同士がチューブを介さず直接に接続される。従って、三方活栓同士の間隔は狭くなり、必然的にホルダ同士の間隔も狭くならざるを得なくなり、前掲特公平8−14344の図1に描かれるような脱落防止機構をホルダに設けることは、スペース的に困難である。また、三方活栓同士の間隔が狭いことから、手を入れて作業できるスペースも小さく、三方活栓の1つ1つに対して手作業で脱落防止機構を操作することも困難である。しかし本発明の三方活栓ホルダによれば、三方活栓が離合自在となる第一位置から、三方活栓のハンドルの離脱が防止される第二位置までスライドさせるという極めて簡単な作業のみで、三方活栓アセンブリをホルダへ固定することができる。留意すべき事は、上述のラインアセンブリの例600では三方活栓が僅か6個しか描かれていなかったが、実際には10個以上の三方活栓を有していることも珍しくはないことである。従って、本発明によって実現される装着の容易さは、現実の実装において、非常に大きな利点となるのである。
【0049】
図8は、ラインアセンブリ600を制御装置700に装着した状態を描いた図である。三方活栓602a〜fがホルダ702a〜fに装着されていることに加え、シリンジ604a〜dがシリンジホルダ704a〜dに固定されることにより、ラインアセンブリ600全体が制御装置700から脱落することが防止される。また、三方活栓602a〜fが互いに接続されていることから、これらの三方活栓のハンドルがホルダ702によって回転せしめられたとしても、三方活栓の本体は回転せず、したがって、三方活栓の流路の切り替えが行われることができる。図示する以外にも、三方活栓602a〜fの本体をそれらのハンドルに対して固定するための機構や、ラインアセンブリ600を制御装置700に確実に固定するための機構を備えることができる。
【0050】
次に図9〜14を用いて、本発明による三方活栓用ホルダの別の実施例をいくつか説明する。
【0051】
図9及び図10は、本発明による三方活栓用ホルダの第2の実施例を説明するための図であり、第2の実施例に係る三方活栓用ホルダ300'の要点を描いた図である。図中でホルダ300と同じ構造は図3と同じ符号を付して、説明を省略している。
【0052】
まず図9Aを参照すると、ホルダ300'も、ホルダ300の台地部308及び310に対応する台地部308'及び310'を有する。ホルダ300とは異なり、台地部308'と310'の間の溝部314'において、台地部308'から310'へ渡される邪魔板316のような構造は設けられていない。その代わり、ホルダ300'の縁に近い部分において、溝314'の溝壁となる台地部308'と310'の崖面の上部308'a及び310' aが、溝314'の開口部を塞ぐように溝314'の中央部側に迫り出している。これらの構造の違いの他は、ホルダ300とホルダ300'は同じ構造を有している。
【0053】
図9Bは、図9AのX−X'断面図、図9Cは図9AのY−Y' 断面図である。図9Bと図9Cを比べると分かるように、迫り出し部308'a及び310' aのため、溝314'の開口の広さは、ホルダの中央部側に比べて周縁部側で狭くなっている。そして、溝314'に収容される三方活栓のハンドルの腕は、迫り出し部308'a及び310' aに邪魔されて、溝314'の開口部から外れることが妨げられる。
【0054】
図10は、図4の三方活栓のハンドル400をホルダ300'に取り付ける様子を説明するための図である。図10Aは、取り付けを行う際の初期段階の状態を描いた図である。図10Aの状態では、ホルダ300'はハンドル400を中心から離れた位置で受容しており、ハンドル400の腕404と腕406が台地部312の崖面に接し、ハンドルの腕408は、溝部314'のホルダ中央に近い部位に少しだけ挿入されてる。以前に図5Aを用いて説明したホルダ300の場合と同じように、図10Aの状態においてはハンドル400をホルダ300'から離れることを防止する構造が設けられておらず、ハンドル400とホルダ300'は離合自在である。すなわち溝部314'の開口部は、ホルダ中央に近い部分では、腕408が入り込むことができる大きさに形成されねばならない。
【0055】
図10Aの状態から、ハンドル400を溝部314'に沿ってスライドさせると、図10Bに描かれる状態になる。図10Bの状態では、ハンドルの腕408が溝314'へ収容されると共に、迫り出し部308'a及び310' aによって、腕408が溝314'の開口部から外れることが妨げられる。これによって、ハンドル400がホルダ300'から脱落することが防止される。図10Cと図10Dは、それぞれ図10BのX−X'断面図およびY−Y' 断面図である。図10Cと図10Dを比べると、溝314'の末端部で、ハンドルの腕408の上部が迫り出し部308'a及び310' aによって一部覆われ、ハンドルの腕408が溝314'の開口部から外れることが不可能であることが分かる。
【0056】
従って、ホルダ300'への三方活栓の取り付けは、まず図10Aの状態になるように三方活栓のハンドルをホルダ300'に押しつけ、次いで溝314'に沿って図10Bの状態まで三方活栓をスライドさせるだけで、行うことができる。そして図10Bの状態では、ハンドルの腕が溝314'から浮き上がることが防止されるため、三方活栓がホルダ300'からずれてしまったり脱落してしまったりすることが防止される。すなわちホルダ300'は、従って非常に簡単な操作で三方活栓をホルダに取り付けることを可能とし、なおかつ三方活栓の脱落を確実に防止するという、前述のホルダ300と同様の利点を有している。
【0057】
図11及び図12は、本発明による三方活栓用ホルダの第3の実施例を説明するための図であり、第3の実施例に係る三方活栓用ホルダ300"の要点を描いた図である。図中でホルダ300と同じ構造は図3と同じ符号を付して、説明を省略する。
【0058】
まず図11を参照する。第一の実施例に係る三方活栓用ホルダ300に対する、第3の実施例に係る三方活栓用ホルダ300"の特徴は、ホルダ300の台地部310に対応する台地部310"の、T字型ハンドルの縦腕を側面から支持する部分の上部が谷地部306の方向に迫り出していることである。この迫り出し部310"cのため、T字型ハンドルの縦棒を支持する部分の形状は、横方向に開口部を有する断面がコの字状の横溝状を呈する。三方活栓がホルダ300"に取り付けられると、そのT字型ハンドルの縦棒は、この迫り出し部310"c、台地部310"、谷地部306で囲まれた横溝部1102に収容される。なお、横溝部1102に関する構造の他は、ホルダ300"の構造は前述のホルダ300の構造と同一である。
【0059】
次に図12を参照し、図4の三方活栓のハンドル400をホルダ300"に取り付ける様子を説明する。図12Aは、取り付けを行う際の初期段階の状態を描いた図である。図12Aの状態において、ハンドル400はホルダ300"において中心から離れた位置で受容されている。ハンドルの腕406は、台地部312と迫り出し部310"cの間隙からホルダ300"へ収容され、腕408は、溝部314のホルダ中心に近い部分に少しだけ挿入されている。前述の実施例と同様に、この状態ではハンドル400とホルダ300"とは離合自在でなければならない。従って、迫り出し部310"の迫り出しの度合いは、台地部312と迫り出し部310"cの間隙にハンドルの腕406が十分入り込めるように定められねばならない。
【0060】
図12Aの状態から、ハンドル400を溝部314に沿ってスライドさせると、図12Bに描かれる状態になり、ハンドルの腕406が横溝1102へ収容される。図12Aの状態では、迫り出し部310"cが腕406の(少なくとも一部の)上部を覆っているので、腕406がホルダ300"から浮き上がることができない。この様子は、図12Bの矢視図によく表されている。腕406が迫り出し部310"cで抑えられるため、ハンドル400がホルダ300"から浮き上がり、脱落することが防止される。
【0061】
ホルダ300"は、ホルダ300の場合と同様に、邪魔板316によって、腕408が溝部314の開口部から浮き上がることも防止している。すなわちホルダ300"は、ホルダ300のハンドル脱落防止機構に加えて、迫り出し部310"cによる追加のハンドル脱落防止機構をも備えているので、ホルダ300に加えて、より確実に三方活栓の浮き上がりや脱落を防止することができる。
【0062】
さらにホルダ300"への三方活栓の取り付けは、まず図12Aの状態になるように、ホルダ300"の開口部から三方活栓のハンドルをホルダ300"へ侵入させ、次いで図12Bの状態になるように、三方活栓を、そのハンドルの軸部402が台地部308及び310"に当接するまで溝314に沿ってスライドさせるだけで、完了することができる。すなわちホルダ300"は、前述の実施例に係る三方活栓用ホルダと同様に、簡単な操作で三方活栓を取り付けることが可能であるという利点も保持している。
【0063】
図11及び図12の実施例の更なる変形例として、邪魔板316を有さない実施形態も、本発明の範囲に含まれる。かかる実施例が図12Cに描かれている。図12Bと図12Cを比べると、図12Cの実施例にかかる三方活栓用ホルダ300"'には、邪魔板316が設けられていないことが分かる。しかしホルダ300"'のような実施形態であっても、迫り出し部310"cによってハンドルの腕406(図12B参照)の上方への移動が阻害されることから、三方活栓がホルダ300"'から脱落することを防止することができる。また、図12A,Bを用いて説明したと同様の方法で三方活栓をホルダ300"'に取り付けることができるので、取り付けの容易さという前述のホルダ300やホルダ300"と同様の利点を備えている。
【0064】
続いて、図13を参照して本発明による三方活栓用ホルダの第4の実施例を説明する。図13Aは、第4の実施例に係る三方活栓用ホルダ1300の上面図である。ホルダ1300は、前述の実施例に係るホルダ300とは異なり、その上面部1302に台地部を有しておらず、上面部1302は単なる平面状である。その代わりに上面部1302の上には、少なくとも6つのピン1304a〜1304fが立設されている。
【0065】
これらのピン1304a〜1304fは、三方活栓のT字型ハンドルの横腕を支持するように設けられる。ピン1304a及び1304bは、2本の横腕の一方を挟むことにより支持し、ピン1304c及び1304d,ピン1304e及び1304fは、それぞれ横腕の他方を挟むことにより支持する。したがって、ピン1304a,1304c,1304eは一直線上に並び、ピン1304b,1304d,1304fが一直線上に並ぶ。ピン1304aおよび1304bは、ホルダ300の軸孔304と同様の軸孔1301に対して一方の側に設けられ、ピン1304c〜1304fは、他方の側に設けられる。ピン1304a及び1304b、並びにピン1304e及び1304fは、上面部1302の縁側に寄って立設されるが、ピン1304c及び1304dは上面部1302の中央側に立設され、三方活栓のハンドルの軸部に当接し、ハンドルとホルダの位置決めを行うためにも利用される。ピン1304e及び1304fの上部には、ピン1306が渡され、したがってピン1304e,1304f,1306は、上部が閉じた門のような形状を呈し、ピン1306は門の梁部と言うことができる。
【0066】
続いて図13B及び13Cを参照し、図4の三方活栓のハンドル400をホルダ1300に取り付ける様子を説明する。ハンドル400をホルダ1300に取り付ける場合には、まず図13Bに描かれるように、ハンドルの腕404がピン1304a及び1304bに挟まれるように、ハンドルの腕408がピン1304c及び1304dに挟まれるように、ハンドル400を位置させる。この状態ではハンドル400がホルダ1300から離脱することを防止する構造がないため、ハンドル400とホルダ1300は離合自在である。
【0067】
次いで、ハンドル400を、これらのピン1304a〜1304dに案内されるようにピン1304e及び1304fの方向へスライドさせ、ハンドルの軸部402がピン1304c及び1304dに当接するところで止める。これで、ハンドル400とホルダ1300の位置関係は、図13Cに描かれる状態になる。図13Cの状態において、ハンドルの腕408は、ピン1304e,1304f,1306で形成される門状構造の中を通されている。したがって腕408は、ホルダ1300から離脱しようとしても、梁ピン1306が邪魔になり、離脱することができない。これによってハンドル400のホルダ1300からの浮き上がりや脱落が防止される。
【0068】
また、ホルダ1300への三方活栓の取り付けは、ハンドル400を図13Bに描かれる状態から図13Cに描かれる状態へとスライドさせるだけで行うことができるため、簡単な操作で三方活栓を取り付けることが可能であるという、前述のすべての実施例に係る三方活栓用ホルダの利点をも有している。
【0069】
図13Cを見ると理解されるように、ピン1304aは、ホルダ1300が矢印1310の方向に回転する時、ハンドルの腕408を側方から押してその回転力をハンドル400に伝える。同様にピン1304d及び1304fも、ホルダ1300が矢印1310の方向に回転する時にハンドルの腕404を側方から押し、その回転力をハンドル400に伝える。ホルダ1300が矢印1312の方向に回転する時は、ピン1304b,1304c,1304eが、それぞれ腕404,408を押してハンドル400を回転せしめる。従ってピン1304a〜fの高さは、腕404及び408を十分に押すことができるような高さに定められることが好ましい。
【0070】
最後に、図14を用いて、ハンドルの腕が1本しかない三方活栓に適する本発明の実施形態の例を説明する。
【0071】
図14Aは、一本腕の三方活栓用ハンドル1400の概略を描いた図である。ハンドル1400は、図4の三方活栓用ハンドル400の軸部402に対応する軸部1402と、腕1404を有する。図2に描かれる3本腕の三方活栓100と同様に、このハンドル1400は、三方活栓の内部に設けられる流路切替具に結合しており、ハンドル1400を動かすと、流路の切り替えを行うことができる。
【0072】
図14Bは、一本腕ハンドル1400に適する本発明の実施例であるホルダ1410の上面図である。ホルダ1410も前述の実施例に係るホルダと同様に、ステンレス製などの円柱状部材を削り出して製作されることができる。ホルダ1410の中央部には、ホルダ300の軸孔304と同様の貫通孔1412が形成され、この貫通孔1412はホルダ1410を制御装置に取り付けるときなどに利用される。ホルダ1410の上面部には、前述の実施例に係るホルダ300などと同様に、谷地部1414が削りだされ、残った部分は台地部1416及び1418となる。台地部1416は、ホルダ300の台地部308と同様の形状を有しており、台地部1418は、台地部1416を反転させた形状を有している。台地部1416と1418は、その崖面が互いに平行になるように形成される。軸孔1412を中心とする一方の側において、台地部1416の崖面1416aと、台地部1418の崖面1418aとの間隔は、ハンドル1400の腕1404を収容可能な幅になるように定められる。また、軸孔1412の他方の側において、台地部1416の崖面1416cと、台地部1418の崖面1418cとの間隔は、ハンドル1400の軸部1402が摺動可能な幅になるように定められる。ハンドル1400が取り付けられたときに軸部1402が当接する台地部1416及び1418の部分1416b及び1418bは、軸部1402の形状に合わせて崖面が湾曲するように削りだされる。軸部1402が崖面1416b及び1418bに当接することにより、ハンドル1400とホルダ1410の位置決めが行われる。
【0073】
崖面1416aと崖面1418aとの間には、邪魔板1420が渡される。この邪魔板1420は、前述のホルダ300における邪魔板316と同様の目的で設けられるもので、崖面1416a及び1418aで規定される溝にハンドルの腕1404が収容されるとき、溝から腕1404が浮き上がって外れてしまうことを防止する。
【0074】
図14C及び14Dは、ハンドル1400のホルダ1410への取り付け方法を説明するための図である。ハンドル1400をホルダ1410に取り付ける場合には、まず、図14Cに描かれるように、ハンドル1400の軸部1402を、崖面1416c及び1418cで規定される溝の中に入れ、また腕1404を崖面1416a及び1418aで規定される溝の中に入れる。このとき、腕1404が、邪魔板1420に衝突しない位置で、ハンドル1400をホルダ1410に入れなければならない。図14Cに描かれる位置では、ハンドル1400がホルダ1410から脱落することを妨げる構造は設けられておらず、従ってハンドル1400はホルダ1410から離合自在である。
【0075】
図14Cに描かれる状態から、溝に沿ってハンドル1400をホルダ1410の中央部へ、軸部1402が崖面1416b及び1418bに当接するまでスライドさせると、ハンドル1400とホルダ1410の位置関係は図14Dに描かれるような状態になる。図14Dの状態では、腕1404が崖面1416a及び1418aで規定される溝に収容されると共に、邪魔板1420によって溝から浮き上がることが阻害されるため、ハンドル1400がホルダ1410から浮き上がったり脱落したりすることが防止される。
【0076】
また、ホルダ1410への三方活栓の取り付けは、ハンドル1400を図14Cに描かれる状態から図14Dに描かれる状態へとスライドさせるだけで行うことができるため、簡単な操作で三方活栓を取り付けることが可能であるという、前述のすべての実施例に係る三方活栓用ホルダの利点をも有している。
【0077】
以上、本発明の実施形態のいくつかの例を説明したが、これらの例は本発明の実施形態を限定する目的で挙げられたのではなく、あくまで本発明のより深い理解に資するために挙げられたものである。本発明の実施形態は上記の例に限定されるものではなく、本発明の思想を逸脱することなく、様々な形態をとり得ることは言うまでもない。上記の説明では、本実施例に係るホルダはステンレス製の円柱状部材の削り出しによって製作されることができると説明されたが、むろん、他の材質や他の方法によっても製造されることができる。例に挙げられたホルダの上面図を見ると、ホルダはすべて円形の断面を呈していたが、むろん、本発明の実施例に係るホルダが、すべて円形の断面を呈する必要はなく、他の様々な形状を有することができる。図面に描かれた各部材の形状や相対的な大きさも、本発明のより深い理解に資する目的のために単純化・理想化して描かれており、実際の実装においては、より複雑な形状をとりうるであろう。上述の例は全て三方活栓用のホルダであったが、本発明に係る技術は、少なくとも一本の腕を有するハンドルを備える他の流路切替バルブであっても適用できることは、本明細書の記述から直ちに理解されうるであろう。従って本発明の実施形態は、二方活栓など、他の流路切替バルブのためのホルダも含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】三方活栓の概要を説明するための図
【図2】三方活栓の概要を説明するための図
【図3】本発明の実施形態の一例である三方活栓用ホルダ300の外観図
【図4】三方活栓用ホルダ300に装着される三方活栓のハンドル400の概略図。
【図5A−B】ハンドル400のホルダ300への取り付けを説明するための図
【図5C−E】ホルダ300の変形例301を説明するための図
【図6】薬品製造ラインアセンブリ600の概念図
【図7】薬品製造ラインアセンブリ600用の制御装置700の概念図
【図8】薬品製造ラインアセンブリ600が制御装置700に装着された状態を描いた図
【図9】本発明の実施形態の別の例である三方活栓用ホルダ300'の要部を描いた図
【図10】ハンドル400のホルダ300'への取り付けを説明するための図
【図11】本発明の実施形態の別の例である三方活栓用ホルダ300"の要部を描いた図
【図12A−B】ハンドル400のホルダ300"への取り付けを説明するための図
【図12C】ホルダ300"の変形例であるホルダ300"'を説明するための図
【図13】本発明の実施形態の別の例である三方活栓用ホルダ1300を説明するための図
【図14】本発明の実施形態の別の例である三方活栓用ホルダ1410を説明するための図
【符号の説明】
【0079】
100 三方活栓
101 胴体
102a 枝管
102b 枝管
104 ハンドル
106 流路切替具
300 三方活栓用ホルダ
300' 第2の実施例に係る三方活栓用ホルダ
300" 第3の実施例に係る三方活栓用ホルダ
302 円柱状部材
304 貫通軸孔
306 谷地部
308 台地部
308a−c 崖面
310 台地部
310a−c 崖面
312 台地部
312a,b 崖面
314 溝部
316 邪魔板
400 三方活栓用ハンドル
402 軸部
404,406,408 腕
600 薬品製造ラインアセンブリ
602a-f 三方活栓
604a-d シリンジ
700 薬品製造ラインアセンブリ用制御装置
702a-f 三方活栓ホルダ
704a-d シリンジホルダ
1102 横溝部
1300 三方活栓用ホルダ
1301 軸孔
1302 上面部
1304a−f ピン
1306 ピン
1400 三方活栓用ハンドル
1402 軸部
1404 腕
1410 三方活栓用ホルダ
1412 軸孔
1414 谷地部
1416 台地部
1416a-c 崖面
1418 台地部
1418a-c 崖面
1420 邪魔板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一本の腕を有する流路切替ハンドルを具備する流路切替バルブ用のホルダであって、
・ 前記ハンドルを受容する第一位置及び第二位置を有し、ここで該ハンドルは前記第一及び第二位置の間を摺動可能であり、
・ 前記第一位置においては前記流路切替バルブと前記ホルダとを離合自在とし、
・ 前記第二位置においては、前記ハンドルの少なくとも一本の腕が前記ホルダから離れることを阻害することによって、前記流路切替バルブが前記ホルダから脱落することを防止する
ように構成される、流路切替バルブ用ホルダ。
【請求項2】
前記第二位置において、前記少なくとも一本の腕を溝部に収容すると共に、前記溝部の開口部の少なくとも一部を部分的に又は完全に塞ぐ構造を設けることにより、前記少なくとも一本の腕が前記ホルダから離れることを阻害する、請求項1に記載の流路切替バルブ用ホルダ。
【請求項3】
前記開口部の上部の少なくとも一部に渡される邪魔板またはピンによって、前記溝部の開口部の少なくとも一部を塞ぐ、請求項2に記載の流路切替バルブ用ホルダ。
【請求項4】
前記開口部の上部の少なくとも一部分において、前記溝の側壁の上部が該開口部の中央側に迫り出すように形成されることにより、該部分の開口部が部分的に塞がれる、請求項2に記載の流路切替バルブ用ホルダ。
【請求項5】
前記第二位置において、前記ハンドルの少なくとも一本の腕を、前記ホルダ本体に立設した、上部が閉じた門状の構造に通すことにより、該少なくとも一本の腕が前記ホルダから離れることを阻害する、請求項1に記載の流路切替バルブ用ホルダ。
【請求項6】
前記ハンドルを前記第一位置から前記第二位置に摺動させる際、前記少なくとも一本の腕が該腕の延伸方向と同じ方向に平行移動するように構成され、前記第二位置において、上部に邪魔板を設けた構造の下部に前記少なくとも一本の腕を収容することにより、該腕が前記ホルダから離れることを阻害する、請求項1に記載の流路切替バルブ用ホルダ。
【請求項7】
前記ハンドルを前記第一位置から前記第二位置に摺動させる際、前記少なくとも一本の腕とは異なる腕が該腕の延伸方向とは異なる方向に平行移動するように構成され、前記第二位置において、前記平行移動の方向に開口する構造であって断面がコの字状又はU字状の構造に前記異なる腕の少なくとも一部を収容することにより、該異なる腕が前記ホルダから離れることを阻害する、請求項2から5のいずれかに記載の流路切替バルブ用ホルダ。
【請求項8】
前記ハンドルを前記第一位置から前記第二位置に摺動させる際、前記少なくとも一本の腕が該腕の延伸方向とは異なる方向に平行移動するように構成され、前記第二位置において、前記平行移動の方向に開口する構造であって断面がコの字状又はU字状を呈する構造に前記少なくとも一本の腕の少なくとも一部を収容することにより、該腕が前記ホルダから離れることを阻害する、請求項1に記載の流路切替バルブ用ホルダ。
【請求項9】
二本の横腕を備えるハンドルを有する流路切替バルブのための、請求項1から8のいずれかに記載の流路切替バルブ用ホルダであって、前記第二位置において、前記二本の腕の各々について、その少なくとも一部分を溝状または門状の構造で挟むように形成される、流路切替バルブ用ホルダ。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の流路切替バルブ用ホルダであって、前記第二位置において、該流路切替バルブ用ホルダに組み合わされる流路切替バルブの軸部の少なくとも一部が当接する当接面であって、該一部の形状に一致する形状の当接面を有する、流路切替バルブ用ホルダ。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の流路切替バルブ用ホルダであって、前記ホルダが第一の方向に回転するときに、該ホルダに組み合わされる流路切替バルブのハンドルの少なくとも1本の腕に当接して該ホルダの回転力を前記ハンドルに伝達する第一の当接部と、前記ホルダが前記第一の方向とは反対方向の第二方向に回転するときに、該ホルダに組み合わされる流路切替バルブのハンドルの少なくとも1本の腕に当接して該ホルダの回転力を前記ハンドルに伝達する第二の当接部と、を備える、流路切替バルブ用ホルダ。
【請求項12】
請求項1から8のいずれかに記載の流路切替バルブ用ホルダを回動可能に配設した装置。
【請求項13】
複数の流路切替バルブ用ホルダを各々回動可能に配設した装置であって、前記複数の流路切替バルブ用ホルダの少なくとも一つが、請求項1から8のいずれかに記載の流路切替バルブ用ホルダである、装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A−B】
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【図5C−E】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A−B】
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【図12C】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−185880(P2009−185880A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−25578(P2008−25578)
【出願日】平成20年2月5日(2008.2.5)
【出願人】(000230250)日本メジフィジックス株式会社 (75)
【Fターム(参考)】