説明

流路構造体

【課題】流路の耐圧性を向上することができる流路構造体を提供する。
【解決手段】
マイクロ流体装置1は、連続相100及び分散相101が流入される流路構造体2等を備える。流路構造体2は、管の内側に形成され、第1の径を有する貫通流路21と、貫通流路21に合流するように、管に周方向に渡って形成され、前記第1の径よりも小さい第2の径を有する複数の微細流路23とを備え、複数の微細流路23から貫通流路21への開放部24は、流体が微細流路23から貫通流路21に流れたときに粒状となる構造を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、分散相が流れる第1流路と、連続相とマイクロスフィアを含む相が流れる第2流路とを連通する多数の貫通孔が形成されたマイクロスフィアの製造装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このマイクロスフィアの製造装置は、間隔をあけて取り付けられた第1プレート、中間プレート及び第2プレートを備え、第1プレートと中間プレートとの間に第1流路が形成され、中間プレート及び第2プレートとの間に第2流路が形成され、中間プレートには第1流路と第2流路とを連通する多数の貫通孔が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-119841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、流路の耐圧性を向上することができる流路構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、上記目的を達成するため、以下の流路構造体を提供する。
【0007】
[1]管の内側又は外側に形成され、第1の径を有する第1の流路と、前記管の外側又は内側から前記第1の流路に合流するように、前記管に周方向に渡って形成され、前記第1の径よりも小さい第2の径を有する複数の第2の流路とを備え、前記複数の第2の流路から前記第1の流路への出口部は、流体が前記第2の流路から前記第1の流路に流れたときに粒状となる構造を有する流路構造体。
【0008】
[2]前記出口部は、前記第2の径よりも大きく開放された開放部を備えた前記[1]に記載の流路構造体。
【0009】
[3]前記出口部は、前記周方向において隣り合う開放部同士が連結されている前記[2]に記載の流路構造体。
【0010】
[4]前記出口部は、前記周方向において隣り合う開放部同士を仕切る仕切り部を有する前記[2]に記載の流路構造体。
【0011】
[5]前記複数の第2の流路は、前記軸方向に沿って複数段設けられた前記[1]に記載の流路構造体。
【0012】
[6]前記複数の第2の流路は、隣り合う前記段において前記周方向の位置が重ならないように設けられた前記[5]に記載の流路構造体。
【0013】
[7]前記複数の第2の流路は、前記管の外側又は内側から前記第1の流路に合流するまでに複数の流路に分岐された前記[1]に記載の流路構造体。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比べて、流路の耐圧性を向上することができる。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、開放部を備えていない場合に比べて、第1の流路を流れる流体の影響を受けることなく、第2の流路を流れる流体を粒状にすることができる。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、周方向において隣り合う開放部同士が連結されていない出口部を有する場合に比べて、流路構造体を形成する工程を簡素化することができる。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、仕切り部を有さない出口部を有する場合に比べて、粒状物同士の結合を抑制することができる。
【0018】
請求項5に係る発明によれば、複数の第2の流路が複数段設けられていない場合に比べて、第1の流路を流れる流体に第2の流路から流れた粒状物を均一に分散することができる。
【0019】
請求項6に係る発明によれば、複数の第2の流路が隣り合う段において周方向の位置が重なる場合に比べて、第2の流路を流れる流体の粘性が低い場合でも、その流体を粒状にすることができる。
【0020】
請求項7に係る発明によれば、複数の第2の流路が第1の流路に合流するまでに複数の流路に分岐されていない場合に比べて、流体から粒状物に生産する際の管の単位長さ当たりの生産効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1(a)は、本発明の第1の実施の形態に係るマイクロ流体装置の一例を示す斜視図、図1(b)は、図1(a)のA−A線断面図である。
【図2】図2(a)は、本発明の第1の実施の形態に係る流路構造体の構成例を示す拡大断面図、図2(b)は、図2(a)のB−B線断面図である。
【図3】図3は、第1乃至第7の薄膜パターンの一例を示す平面図である。
【図4】図4(a)〜(f)は、流路構造体の製造工程の一例を示す模式図である。
【図5】図5(a)〜(c)は、開放部における分散相の流れを示す模式図である。
【図6】図6(a)は、本発明の第2の実施の形態に係る流路構造体の構成例を示す拡大断面図、図6(b)は、図6(a)のC−C線断面図である。
【図7】図7(a)は、本発明の第3の実施の形態に係るマイクロ流体装置の一例を示す斜視図、図7(b)は、図7(a)のD−D線断面図である。
【図8】図8(a)は、本発明の第3の実施の形態に係る流路構造体の構成例を示す拡大断面図、図8(b)は、図8(a)のE−E線断面図である。
【図9】図9は、第1乃至第7の薄膜パターンの一例を示す平面図である。
【図10】図10は、本発明の第4の実施の形態に係る流路構造体の構成例を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1の実施の形態]
図1(a)は、本発明の第1の実施の形態に係るマイクロ流体装置の一例を示す斜視図、図1(b)は、図1(a)のA−A線断面図である。
【0023】
このマイクロ流体装置1は、上方の導入口30に連続相100が導入される第1の導入管3と、側方の導入口40に分散相101が導入される第2の導入管4と、連続相100と分散相101とから分散液102を生成する流路構造体2と、流路構造体2により生成された分散液102を下方の排出口50から排出する排出管5と、流路構造体2の上面20a及び下面20bに第1の導入管3、排出管5をそれぞれ支持するとともに、流路構造体2の外周面20cを覆うように第2の導入管4を支持するハウジング6とから構成されている。
【0024】
ここで、分散液102は、分散相101が粒状となって連続相100に分散した分散系(エマルション)であり、本実施の形態では、分散液102を生成する乳化装置として流路構造体2を用いる。
【0025】
第1の導入管3は、例えば、内径1500μmの円筒形状を有し、導入口30に導入された連続相100を、流路構造体2の後述する貫通流路に供給する。
【0026】
第2の導入管4は、流路構造体2の外周を覆うように設けられており、導入口40に導入された分散相101を、流路構造体2の後述する複数の微細流路に供給する。
【0027】
排出管5は、第1の導入管3と同様に、内径1500μmの円筒形状を有する。
【0028】
なお、第1の導入管3、第2の導入管4及びハウジング6の周囲には、加熱用ヒータ、冷却用クーラ等の連続相100及び分散相101を所定の温度に調整する温度調整部が設けられていてもよい。
【0029】
(流路構造体)
図2(a)は、本発明の第1の実施の形態に係る流路構造体の構成例を示す拡大断面図、図2(b)は、図2(a)のB−B線断面図である。この流路構造体2は、第1の導入管3及び排出管5と同心の円管であり、その円管の内側に上面20aと下面20bとを貫通する貫通流路(第1の流路)21と、その円管の軸方向に沿って設けられた第1乃至第3の微細流路段22A〜22Cとを備える。
【0030】
流路構造体2の外形は、例えば、3000μmであり、その内径(第1の径)、すなわち、貫通流路21の直径は、1500μmである。なお、貫通流路21の断面形状は、円の他に、楕円でもよいし、多角形でもよい。
【0031】
第1乃至第3の微細流路段22A〜22Cの各々には、円管の外周面20cから内側の貫通流路21に合流するように形成された複数の微細流路(第2の流路)23と、複数の微細流路23が貫通流路21に合流する位置に形成された開放部(出口部)24とが設けられている。なお、微細流路段の数は、1段又は2段でもよいし、4段以上でもよい。
【0032】
複数の微細流路23は、円管の壁に周方向に渡って形成されている。図2(b)の例では、各微細流路段22A〜22Cには、12個の微細流路23が、均等な間隔、すなわち、30度(周期角度)毎にそれぞれ配置されている。そして、微細流路23は、隣り合う微細流路段22A〜22Cの間では、微細流路23の周方向の位置が重ならないように、例えば、周期角度の半分である15度ずつずらした状態で配置されている。なお、1つの微細流路段には、微細流路23を11個以下又は13個以上設けてもよい。
【0033】
微細流路23は、一辺の長さ(第2の径)が15μmの正方形の断面を有する。なお、微細流路23の断面形状は、円形でもよいし、多角形でもよい。
【0034】
開放部24は、微細流路23から貫通流路21への出口部に設けられており、分散相101が微細流路23から貫通流路21に流れたときに粒状となる構造を有する。この流体となる粒状となる構造は、形状及び大きさにより特定される。本実施の形態では、開放部24は、周方向において隣り合う開放部同士が連結されており、円管の内側にリング状に設けられており、開放部24の径方向の幅は、例えば、30μmである。
【0035】
また、流路構造体2は、円管の軸方向の断面に対応する第1乃至第7の薄膜パターン2A〜2Gが積層されて形成されている。第1乃至第7の薄膜パターン2A〜2Gは、例えば、15μmの厚みを有し、AlCu、Al,Ni、Cu等の金属や、セラミックス、Si、誘電体等の非金属等からなる。
【0036】
図3は、第1乃至第7の薄膜パターンの一例を示す平面図である。第1乃至第7の薄膜パターン2A〜2Gは、貫通流路21、複数の微細流路23及び開放部24の断面にそれぞれ相当する形状を有する。
【0037】
第1、第3、第5及び第7の薄膜パターン2A,2C,2E,2Gは、ドーナツ状の形状をそれぞれ有する。第1の薄膜パターン2Aは、貫通流路21と、第1の微細流路段22Aの上壁とに相当する形状を有する。第3の薄膜パターン2Cは、貫通流路21と、第1の微細流路段22Aの下壁と、第2の微細流路段22Bの上壁とに相当する形状を有する。第5の薄膜パターン2Eは、第2の微細流路段22Bの下壁と、第3の微細流路段22Cの上壁とに相当する形状を有する。第7の薄膜パターン2Gは、貫通流路21と、第3の微細流路段22Cの下壁とに相当する形状を有する。
【0038】
第2の薄膜パターン2Bは、貫通流路21と、第1の微細流路段22Aに配置された12個の微細流路23の側壁とに相当する形状を有する。第4の薄膜パターン2Dは、貫通流路21と、第2の微細流路段22Cに配置された12個の微細流路23の側壁とに相当する形状を有する。第6の薄膜パターン2Fは、貫通流路21と、第3の微細流路段22Cに配置された12個の微細流路23の側壁とに相当する形状を有する。
【0039】
なお、本実施の形態では、第2の薄膜パターン2Bと、第6の薄膜パターン2Fとは、同一の形状である。第4の薄膜パターン2Dは、第2及び第6の薄膜パターン2B,2Fに比べて周期角度を半分ずらしたものである。
【0040】
(製造方法)
次に、本発明の実施の形態に係るマイクロ流体装置の製造方法について説明する。
【0041】
(1)ドナー基板の作製
図4(a)〜(f)は、流路構造体の製造工程の一例を示す模式図である。ここでは、ドナー基板200を電鋳法を用いて作製する方法について説明する。
【0042】
まず、所定の表面粗さを有するステンレス等からなる金属基板200aを準備する。次に、金属基板200a上に厚膜フォトレジストを塗布し、流路構造体2の各断面形状に対応したフォトマスクにより露光し、フォトレジストを現像する。これにより、各断面形状のポジネガ反転したレジストパターンを形成する。
【0043】
次に、このレジストパターンを有する金属基板200aをめっき浴に浸漬し、フォトレジストに覆われていない金属基板200aの表面にニッケルめっきを成長させる。
【0044】
次に、レジストパターンを除去することにより、図4(a)に示すように、金属基板200a上に、流路構造体2の各断面形状に対応した第1乃至第7の薄膜パターン2A〜2Gが形成されたドナー基板200が得られる。なお、図4(a)では、第3乃至第7の薄膜パターン2C〜2Gを省略している。
【0045】
なお、薄膜の形成方法としては、上記の電鋳法の他に、例えば、電子ビーム加熱蒸着法、抵抗加熱蒸着法、スパッタリング法、化学蒸着法等の真空蒸着法、スピンコート法等を用いてもよい。また、薄膜のパターニング方法としては、上記のフォトリソグラフィー法の他に、例えば集束イオンビーム(FIB)法、電子ビーム直接描画法等を用いてもよい。
【0046】
(2)薄膜パターンの積層
次に、図4(a)に示すように、ドナー基板200を図示しない真空槽内の下部ステージ(図示せず)に配置し、ターゲット基板201を上部ステージ(図示せず)に配置する。
【0047】
次に、真空槽内を排気し、高真空状態あるいは超真空状態にする。そして、下部ステージを上部ステージに対して相対的に移動させて、ターゲット基板201の直下にドナー基板200の第1の薄膜パターン2Aを位置決めし、ターゲット基板201の表面、及びドナー基板200の表面、すなわち、第1の薄膜パターン2Aの表面をFAB(Fast Atom Beam)処理により清浄化する。FAB処理とは、例えば、アルゴン、クリプトン、キセノン等の不活性ガスを高電圧で加速して接合面に照射し、接合面の酸化膜、不純物等を除去する処理をいう。本実施の形態では、不活性ガスとしてアルゴンを用いる。
【0048】
次に、図4(b)に示すように、上部ステージを移動させてターゲット基板201を降下させ、ターゲット基板201と第1の薄膜パターン2Aとを荷重を加えて圧接して常温接合する。そして、図4(c)に示すように、上部ステージを上昇させると、第1の薄膜パターン2Aが金属基板200aから剥離し、ターゲット基板201側に転写される。
【0049】
ここで、「常温接合」とは、上記のFAB処理によって清浄化された接合面同士を常温雰囲気で接触させ、原子同士を直接結合させる接合方法をいい,表面活性化接合ともいう。常温接合(表面活性化接合)の他に、清浄化された接合面同士が拡散を生じない程度の温度(例えば、100℃程度)で加熱して接合してもよい。
【0050】
次に、図4(d)に示すように、下部ステージを移動させ、ターゲット基板201の直下にドナー基板200上の第2の薄膜パターン2Bを位置決めし、ターゲット基板201側に転写された第1の薄膜パターン2Aの表面(金属基板200aに接触していた面)、及び第2の薄膜パターン2Bの表面にアルゴン原子ビームを照射して清浄化する。
【0051】
次に、図4(e)に示すように、上部ステージを下降させ、第1及び第2の薄膜パターン2A,2Bを常温接合させ、図4(f)に示すように、上部ステージを上昇させると、第2の薄膜パターン2Bが金属基板200aから剥離し、ターゲット基板201側に転写される。
【0052】
そして、第3乃至第7の薄膜パターン2C〜2Gについても、第1及び第2の薄膜パターン2A,2Bを転写したのと同様に、ドナー基板200とターゲット基板201との位置決め、接合、離間を繰り返すことにより、ターゲット基板201側に転写される。
【0053】
以上のようにして、ターゲット基板201上に転写された第1乃至第7の薄膜パターン2A〜2Gを上部ステージから取り外し、ターゲット基板201を除去することにより、第1乃至第7の薄膜パターン2A〜2Gからなる流路構造体2が作製される。
【0054】
(3)マイクロ流体装置の組み付け
上記のようにして作製された流路構造体2に対して、図1に示すように、その上側に第1の導入管3、その下側に排出管5、その周囲に第2の導入管4をそれぞれ配置して、ハウジング6によりそれらを固定することにより、マイクロ流体装置1が製造される。
【0055】
(マイクロ流体装置の動作)
次に、本実施の形態に係るマイクロ流体装置1の動作について説明する。まず、第1の導入管3に設けられた導入口30に連続相100が導入されると、その連続相100は、第1の導入管3の内部を流れて、流路構造体2の貫通流路21に流入する。
【0056】
また、第2の導入管4に設けられた導入口40に分散相101が導入されると、その分散相101は、第2の導入管4の内部を流れることにより、流路構造体2の外周面20c全体に行き渡り、その分散相101は、外周面20cに設けられた各微細流路23に流入する。
【0057】
そして、微細流路23に流入した分散相101は、流路構造体2の内側方向に向かって流れ、微細流路23から開放部24に流れ込む。
【0058】
図5(a)〜(c)は、開放部における分散相の流れを示す模式図である。開放部24に流れ込んだ分散相101の界面は、図5(a)に示すように、微細流路23から開放部24に円弧状に膨らんだ状態となる。
【0059】
そして、開放部24の断面積は、微細流路23の断面積よりも広いことから、分散相101の界面は、図5(b)に示すように、その円弧状の径方向に拡散するとともに、その拡散により開放部24ではくびれ部101bが形成される。
【0060】
そして、分散相101の拡散がさらに進むと、図5(c)に示すように、くびれ部101bが切断されて、液滴101aが生成される。
【0061】
上記のようにして、各微細流路23から分散相101の液滴101aが次々に生成され、その液滴101aが貫通流路21を流れる連続相100に合流することにより、連続相100に液滴101aが分散された分散液102が、排出管5の排出口50から排出される。
【0062】
(実施例1)
次に、本発明の実施例1について説明する。この実施例1で用いたマイクロ流体装置1は、外径3000μm、内径1500μmの流路構造体2を有し、流路構造体2には、3つの微細流路段22A〜22Cが設けられている。そして、微細流路段22A〜22Cの各々には、一辺15μmの正方形の微細流路23が、約100μm間隔で47個配置されており、流路構造体2全体では、合計147個の微細流路23が配置されている。また、流路構造体2には、幅30μmの開放部24が設けられている。
【0063】
上記のマイクロ流体装置1において、第1の導入管3に連続相100として水を流量0.1ml/分で導入し、第2の導入管4に分散相101としてシリコーンオイルを流量0.01ml/分で導入した。その結果、粒径約40μmのシリコーンオイル分散液が、1170個/秒で排出管5から排出された。
【0064】
また、上記のマイクロ流体装置1において、第1の導入管3に連続相100として水を流量0.1ml/分で導入し、第2の導入管4に分散相101としてポリエステル前駆体を流量0.01ml/分で導入した。その結果、粒径約35μmのポリエステル分散液が、1170個/秒で排出管5から排出された。
【0065】
ここで、ポリエステル前駆体とは、重合トナーの原料となる物質であり、例えば、大豆油34g、イソフタル酸25g、無水トリメリット酸9g、トリメチロールプロパン31g、ジブチル酸化錫0.02gの混合液を、摂氏200度の窒素気流下で重縮合反応させて生成したものである。
【0066】
(比較例)
比較例として、上記した特許文献1に記載されたマイクロスフィアの製造装置であって、貫通孔の形状が9.5μm×23μm、その数が36個配置されたものを用いた。
【0067】
このマイクロスフィアの製造装置において、連続相100として水を流量0.1ml/分で導入し、分散相101としてシリコーンオイルを流量0.0033ml/分で導入した。その結果、シリコーンオイル分散液が、100個/秒で作製された。なお、分散相101の流量をこれ以上高速にした場合には、このマイクロスフィアの製造装置では、分散相101のリークや、製造装置の破損等が発生する可能性がある。
【0068】
[第2の実施の形態]
本実施の形態に係るマイクロ流体装置1は、隣り合う微細流路23から開放部24に流れた分散相101が開放部24で結合するのを防ぐように、開放部24が仕切られた流路構造体を備え、その他は、第1の実施の形態と同様に構成されている。
【0069】
図6(a)は、本発明の第2の実施の形態に係る流路構造体の構成例を示す拡大断面図、図6(b)は、図6(a)のC−C線断面図である。この流路構造体2は、第1乃至第3の微細流路段22A〜22Cを有し、その第1乃至第3の微細流路段22A〜22Cの各々には、第1の実施の形態と同様の貫通流路21、複数の微細流路23及び開放部24の他に、隣り合う微細流路23から流れた分散相101を仕切る仕切り部25が設けられている。仕切り部25の幅は、例えば、10μmである。
【0070】
また、流路構造体2は、第1の実施の形態と同様に、第1乃至第7の薄膜パターン2A〜2Gが積層されて形成されている。第1、第3、第5及び第7の薄膜パターン2A,2C,2E,2Gは、第1の実施の形態と同様の断面形状を有する。第2、第4、第6の薄膜パターン2B,2D,2Fは、貫通流路21と、12個の微細流路23の側壁と、仕切り部25に相当する形状を有する。
【0071】
マイクロ流体装置1の製造方法は、(1)ドナー基板の作製において、上記の断面形状を有する第1乃至第7の薄膜パターン2A〜2Gを形成する点が異なり、(2)薄膜パターンの積層、(3)マイクロ流体装置の組み付けについては、第1の実施の形態と同様のため、詳細な説明を省略する。
【0072】
上記構成において、第1の導入管3に導入された連続相100は、貫通流路21に流入するとともに、第2の導入管4に導入された分散相101は、各微細流路23に流入する。そして、各微細流路23に流入した分散相101は、開放部24に流れ込むと、仕切り部25により隣り合う微細流路23との間が仕切られた状態で液滴101aが生成され、その液滴101aが貫通流路21を流れる連続相100と合流することにより、分散液102が排出管5から排出される。
【0073】
(実施例2)
次に、本発明の実施例2について説明する。この実施例2では、上記の実施例1と同様の構成を有するマイクロ流体装置1を用いて、第1の導入管3に連続相100として水を流量0.1ml/分で導入し、第2の導入管4に分散相101として空気を流量0.01ml/分で導入した。その結果、粒径約45μmの気泡分散液が、670個/秒で排出管5から排出された。
【0074】
[第3の実施の形態]
第1の実施の形態に係るマイクロ流体装置1は、流路構造体2の外側から内側に向かって分散相101を流し、流路構造体2の内側を流れる連続相100に分散相101を合流させた。これに対し、本実施の形態に係るマイクロ流体装置1は、流路構造体2の内側から外側に向かって分散相101を流し、流路構造体2の外側を流れる連続相100に分散相101を合流させるものである。
【0075】
図7(a)は、本発明の第3の実施の形態に係るマイクロ流体装置の一例を示す斜視図、図7(b)は、図7(a)のD−D線断面図である。このマイクロ流体装置1は、側方の導入口70から連続相100が流入されるとともに、分散液102を下方の排出口71から排出する導入排出管7と、上方の導入口80から分散相101が流入される導入管8と、連続相100と分散相101とから分散液102を生成する流路構造体2と、流路構造体2の上面20aに導入管8を支持するとともに、流路構造体2の外周面20c及び下面20bを覆うように導入排出管7を支持するハウジング6とから構成されている。
【0076】
導入排出管7は、流路構造体2の外周を覆うように設けられており、導入口80に導入された連続相100を、流路構造体2の外周面20cと導入排出管7とにより形成された外側流路(第1の流路)28に供給する。また、導入管8は、導入口80に導入された分散相101を、流路構造体2の後述する中央流路に供給する。
【0077】
(流路構造体)
図8(a)は、本発明の第3の実施の形態に係る流路構造体の構成例を示す拡大断面図、図8(b)は、図8(a)のE−E線断面図である。この流路構造体2は、円管の内側に下面20bを貫通せずに上面20aから底部27まで設けられた中央流路26と、その円管の軸方向に沿って設けられた第1乃至第3の微細流路段22A〜22Cとを備える。
【0078】
第1乃至第3の微細流路段22A〜22Cの各々には、円管の内側の中央流路26から外側の外側流路28に合流するように、円管に周方向に渡って形成された複数の微細流路(第2の流路)23と、複数の微細流路23が貫通流路21に合流する位置に形成された開放部(出口部)24とが設けられている。
【0079】
また、流路構造体2は、第1の実施の形態と断面形状が一部異なる第1乃至第7の薄膜パターン2A〜2Gが積層されて形成されている。
【0080】
図9は、第1乃至第7の薄膜パターンの一例を示す平面図である。第1乃至第7の薄膜パターン2A〜2Gは、中央流路26、複数の微細流路23、開放部24及び底部27の断面にそれぞれ相当する形状を有する。
【0081】
第1の薄膜パターン2Aは、中央流路26と、第1の微細流路段22Aの上壁とに相当する形状を有する。第3の薄膜パターン2Cは、中央流路26と、第1の微細流路段22Aの下壁と、第2の微細流路段22Bの上壁とに相当する形状を有する。第5の薄膜パターン2Eは、第2の微細流路段22Bの下壁と、第3の微細流路段22Cの上壁とに相当する形状を有する。第7の薄膜パターン2Gは、底部27に相当する形状を有する。
【0082】
第2の薄膜パターン2Bは、中央流路26と、第1の微細流路段22Aに配置された12個の微細流路23の側壁とに相当する形状を有する。第4の薄膜パターン2Dは、中央流路26と、第2の微細流路段22Cに配置された12個の微細流路23の側壁とに相当する形状を有する。第6の薄膜パターン2Fは、中央流路26と、第3の微細流路段22Cに配置された12個の微細流路23の側壁とに相当する形状を有する。
【0083】
マイクロ流体装置1の製造方法は、(1)ドナー基板の作製において、上記の断面形状を有する第1乃至第7の薄膜パターン2A〜2Gを形成する点が異なり、(2)薄膜パターンの積層、(3)マイクロ流体装置の組み付けについては、第1の実施の形態と同様のため、詳細な説明を省略する。
【0084】
上記構成において、導入排出管7の導入口70に導入された連続相100は、外側流路28に流入する。また、導入管8の導入口80に導入された分散相101は、中央流路26を介して各微細流路23に流入する。次に、各微細流路23に流入した分散相101は、流路構造体2の外側に設けられた開放部24に流れ込むことにより、分散相101の液滴101aが生成される。そして、その液滴101aが外側流路28に流入した連続相100と合流することにより、導入排出管7の排出口71から排出される。
【0085】
[第4の実施の形態]
本実施の形態に係るマイクロ流体装置1は、微細流路23が中央流路26に合流するまでに複数の流路に分岐されるとともに、隣り合う2つの微細流路23から流入された分散相101を仕切る仕切り部25が設けられた流路構造体2を備え、その他は、第3の実施の形態と同様に構成されている。
【0086】
図10は、本発明の第4の実施の形態に係る流路構造体の構成例を示す拡大断面図である。この流路構造体2は、第3の実施の形態と同様の開放部24、中央流路26及び底部27の他に、Y字状の分岐流路29と、隣り合う微細流路23から流れた分散相101を仕切る仕切り部25とを備える。
【0087】
分岐流路29は、中央流路26に接続された入口流路290と、入口流路290が2つに分岐されて開放部24に接続された2つの出口流路291とを有する。なお、分岐流路29は、1つの入口流路290が3つ以上の出口流路291に分岐されていてもよい。
【0088】
マイクロ流体装置1の製造方法は、(1)ドナー基板の作製において、上記の断面形状を有する第1乃至第7の薄膜パターン2A〜2Gを形成する点が異なり、(2)薄膜パターンの積層、(3)マイクロ流体装置の組み付けについては、第1の実施の形態と同様のため、詳細な説明を省略する。
【0089】
上記構成において、導入排出管7の導入口70に導入された連続相100は、流路構造体2の外周面20cに到達する。また、導入管8の導入口80に導入された分散相101は、流路構造体2の中央流路26を介して各分岐流路29に流入する。
【0090】
次に、各分岐流路29の入口流路290に流入した分散相101は、流路構造体2の外側に向かって流れると、2つの出口流路291により2分岐されて開放部24に流れ込むことにより、分散相101の液滴101aが生成される。そして、その液滴101aが外周面20cに到達した連続相100と合流することにより、導入排出管7の排出口71から排出される。
【0091】
以上、第4の実施の形態に係る流路構造体について、第3の実施の形態と同様に構成されている場合を例に説明したが、第1の実施の形態又は第2の実施の形態における流路構造体2が、微細流路23が貫通流路21に合流するまでに複数の流路に分岐されるとともに、隣り合う2つの微細流路23から流入された分散相101を仕切る仕切り部25が設けられた構造であってもよい。
【0092】
[他の実施の形態]
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲内で種々に変形実施が可能である。例えば、上記各実施の形態では、複数の薄膜パターンを積層して流路構造体を作製したが、流路構造体の他に、第1及び第2の導入管及び排出管の断面に対応する薄膜パターンを形成して、流路構造体とともに第1及び第2の導入管及び排出管を一体化した構造体として製作してもよい。
【0093】
また、上記各実施の形態におけるマイクロ流体装置は、顔料、塗料、食用油等の各種の分散系の生成に用いることができる。
【符号の説明】
【0094】
1…マイクロ流体装置、2…流路構造体、2A〜2G…薄膜パターン、3…第1の導入管
4…第2の導入管、5…排出管、6…ハウジング、7…導入排出管、8…導入管、20a…上面、20b…下面、20c…外周面、21…貫通流路、22A〜22C…微細流路段、23…微細流路、24…開放部、25…仕切り部、26…中央流路、27…底部、28…外側流路、29…分岐流路、30…導入口、40…導入口、50…排出口、70…導入口、71…排出口、80…導入口、100…連続相、101…分散相、101a…液滴、101b…くびれ部、102…分散液、200…ドナー基板、200a…金属基板、201…ターゲット基板、290…入口流路、291…出口流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管の内側又は外側に形成され、第1の径を有する第1の流路と、
前記管の外側又は内側から前記第1の流路に合流するように、前記管に周方向に渡って形成され、前記第1の径よりも小さい第2の径を有する複数の第2の流路とを備え、
前記複数の第2の流路から前記第1の流路への出口部は、流体が前記第2の流路から前記第1の流路に流れたときに粒状となる構造を有する流路構造体。
【請求項2】
前記出口部は、前記第2の径よりも大きく開放された開放部を備えた請求項1に記載の流路構造体。
【請求項3】
前記出口部は、前記周方向において隣り合う開放部同士が連結されている請求項2に記載の流路構造体。
【請求項4】
前記出口部は、前記周方向において隣り合う開放部同士を仕切る仕切り部を有する請求項2に記載の流路構造体。
【請求項5】
前記複数の第2の流路は、前記軸方向に沿って複数段設けられた請求項1に記載の流路構造体。
【請求項6】
前記複数の第2の流路は、隣り合う前記段において前記周方向の位置が重ならないように設けられた請求項5に記載の流路構造体。
【請求項7】
前記複数の第2の流路は、前記管の外側又は内側から前記第1の流路に合流するまでに複数の流路に分岐された請求項1に記載の流路構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−201336(P2010−201336A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49476(P2009−49476)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】