説明

流通供用物管理システム

【課題】消費電力を低減して電池の寿命を延ばし、メンテナンスの頻度を低減させる。
【解決手段】荷物を運搬する際にその荷物と共に移動して再利用される複数のパレット等の流通供用物の在庫及び流通を管理する流通供用物管理システムである。前記各流通供用物にそれぞれ装着され、電源を内蔵して、内部に記録された当該各流通供用物の識別情報等を送信する無線タグを備えた。当該各無線タグは、前記各流通供用物の識別情報等を送信する送信手段と、起動する時間を設定するタイマーと、通常は前記各無線タグをスリープ状態にして、前記タイマーで設定された時間になったときに当該各無線タグをそれぞれずらして起動させて前記識別情報等を送信させ、送信完了後にスリープ状態に戻す制御手段とを少なくとも有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物流業等で荷物を運搬するパレット等のように、再利用する流通供用物の在庫及び流通を管理する流通供用物管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
流通業界で荷物の運搬に供される流通供用物としてパレットがあるが、このパレットは荷物と共に複数の拠点間を不規則に移動している。即ち、物流業者等においては、荷物をパレットに収容して複数の拠点間を移動させている。このとき、荷物はその位置等が管理されているが、この荷物を収容するパレットそのものは管理するにあたらないものと考えられてきた。しかし、物流規模の増大により、行方不明となって散逸するパレットや、所在地間で在庫が遍在して空パレットを荷物とした輸送などのコストが増大してきている。そのために、パレットの在庫を管理したいとする要望が高まっている。
【0003】
このような要望に対して種々の発明が提案されている。
【0004】
特許文献1の発明は、広域物流におけるパレットの在庫を管理し、パレット回送計画を立案する物流パレット管理装置である。利用者の要求を受け入れるとともに、立案されたパレット回送計画を表示するユーザインタフェースと、パレットの入出庫に関する情報を自動獲得する無線タグ装置と、獲得されたパレットの情報や立案されたパレット回送計画の情報を蓄積する蓄積手段と、蓄積手段の情報を読出し、ユーザの求めるパレット回送計画を策定する装置本体とを設けたものであり、自動収集したパレット管理情報に基づいて、ユーザの求める多様なパレット回送計画を策定し、ユーザに提示するものである。
【0005】
また、特許文献2および3の発明では、専用端末あるいは汎用端末によって、バーコードやIDタグを読み取り、定期的に所在位置を管理することで、所在地毎の数量を管理している。
【0006】
さらに、特許文献4の発明では、買い物かごに送信タグを取り付け、任意のエリアに設置したリーダーと通信を行うことで、任意エリア内の客数を集計する技術も提案されている。
【特許文献1】特開平9−134395号公報
【特許文献2】特開2004−149230号公報
【特許文献3】特開2006−199427号公報
【特許文献4】特開平10−340329号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1の発明では、タグの使用手段が明示されていないが、一般的に自動取得を実施しょうとすると、電力供給に課題がある。近傍電磁界による誘導電力で稼動させるパッシブタグの場合、タグからリーダーまでの距離が数cm〜数10cmしかとれず、人手でリーダーをタグにかざすか、高価なゲート装置を設置する必要がある。しかし、人手でリーダーをタグにかざす場合は作業効率が悪い。即ち、リーダーの通信可能エリアは狭く、リーダーと1度に通信できるIDタグは単数、もしくは少数であり、決まった時間に全測定対象物の情報を入手することは困難である。
【0008】
また、特許文献2および3の発明では、バーコードやIDタグを読み取って所在地毎の数量を管理しているが、この場合は、リーダー読み取り等の作業は運転手等が行うことになる。しかし、このリーダー読み取り等の作業は、新たに追加される作業であり、運転手等の負担が増えて実現が難しい。
【0009】
さらに、特許文献4の発明では、買い物かごに送信タグを取り付け、この送信タグとゲート装置のリーダーとの間で通信を行うことで客数を集計するが、このゲート装置は高価な装置であるため、この装置をパレット管理に用いると高価なシステムとなる。
【0010】
また、決まった時間に複数の測定対象物の情報を入手する場合は、通信の輻輳を避ける必要がある。このためには、IDタグが送信の前に自身以外の電波の有無をチェックするキャリアセンスを行うことで、通信の輻輳を避けることが可能である。しかし、測定対象物の数が非常に多い場合には、送信が重なる可能性が高く、場合によっては送信が完了するまでのリトライの回数が非常に多いタグも発生することとなる。そして、リトライの回数が多いと消費電力が多くなり、電池交換のためのメンテナンスの頻度が高くなってしまう。この場合、入出力を記録させるためにタグを常時稼動させておくと、数日から数ケ月で電池を交換しなければならなくなり、実用的ではないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、荷物を運搬する際にその荷物と共に移動して再利用される複数の流通供用物の在庫及び流通を管理する流通供用物管理システムにおいて、前記各流通供用物にそれぞれ装着され、電源を内蔵して、内部に記録された当該各流通供用物の識別情報等を送信する無線タグを備え、当該各無線タグが、前記各流通供用物の識別情報等を送信する送信手段と、起動する時間を設定するタイマーと、通常は前記各無線タグをスリープ状態にして、前記タイマーで設定された時間になったときに当該各無線タグをそれぞれずらして起動させて前記識別情報等を送信させ、送信完了後にスリープ状態に戻す制御手段とを少なくとも有することを特徴とする。
【0012】
これにより、前記制御手段が、通常は前記各無線タグをスリープ状態にしており、タイマー以外は電力を消費しない。前記タイマーで設定された時間になったときは、当該各無線タグをそれぞれずらして起動させて、前記識別情報等を送信させ、送信完了後に、無駄な電力を消費しないスリープ状態に戻す。
【発明の効果】
【0013】
前述のように、前記制御手段が、通常は前記各無線タグをスリープ状態にして、設定時間になったとき、各無線タグをそれぞれずらして起動させて、前記識別情報等を送信させ、送信完了後にスリープ状態に戻すため、無駄な電力を消費しないで、各無線タグの電池交換の期間を延ばすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態にかかる流通供用物管理システムについて添付図面を基に説明する。
【0015】
本実施形態にかかる流通供用物管理システムは、流通業界等において荷物の運搬に供される流通供用物を管理するためのシステムである。ここでは、流通供用物として、荷物を運搬するに際して荷物を収容するパレットを例に説明する。
【0016】
まず、パレットに収容される荷物の流れの一例について図2を基に概説する。ここでは荷物は、3段階で収集される。具体的にはまず、複数の取扱店1からトラック2で荷物が収集されて、第1の集積場であるセンター3に集められる。地域ごとにセンター3が設置され、その地域の取扱店1を廻ったトラックが荷物をその地域のセンター3に搬送する。センター3に集められた荷物は、パレット4に積み込まれて、このパレット4単位で第2の集積場であるベース5に搬送される。このベース5で、パレット4内の荷物が配達先毎に仕分けされて、新たなパレット4に積み替えられる。そして、このパレット4はトラック2に積み込まれて配達側のベース5に搬送される。
【0017】
配達側のベース5では、パレット4内の荷物が配達側のセンター3毎に仕分けられて、新たなパレット4に積み替えられる。そして、このパレット4毎トラックに積み込まれて配達側のセンター3に搬送される。
【0018】
配達側のセンター3では、パレット4内の荷物が、配達側の取扱店1毎に仕分けられてトラックに積み込まれて、配達側の取扱店1に搬送される。
【0019】
この一連の荷物の流れにおいて、パレット4は、収集側のセンター3からベース5へ、収集側のベース5から配達側のベース5へ、配達側のベース5からセンター3へと、荷物と共にそれぞれ移動する。そして、荷物は図2中の左の取扱店1から右の取扱店1へ移動すると共に、それと逆に右の取扱店1から左の取扱店1へも移動するが、移動する荷物の量は不規則に変動する。このため、パレット4はいずれかのセンター3やベース5に偏在する事態が生ずる。
【0020】
流通供用物管理システム11は、各センター3及び各ベース5の間を移動する多数のパレット4の現在在庫を全て把握して、パレット4の偏在を解消するためのシステムである。流通供用物管理システム11は、図3に示すように、パレット4に装着された無線タグ12と、センター3及びベース5にそれぞれ設けられる無線アクセスポイント13と、無線アクセスポイント13から受信した情報を管理する拠点管理端末14と、ベース5の拠点管理端末14及びセンター3の無線アクセスポイント13に接続されるネットワーク15と、このネットワーク15を介してベース5の拠点管理端末14及びセンター3の無線アクセスポイント13にそれぞれ接続されて無線タグ12の情報を収集して管理するセンター管理装置16とから構成されている。
【0021】
無線タグ12は、パレット4に装着されてそのパレット4を識別するためのタグである。この無線タグ12は、図4に示すように、筐体18と、操作部19とから構成されている。筐体18は、パレット4の棒材4Aに固定バンド4Bで固定されている。なお、これは一例であり、筐体18の取付方法は特に限定するものではない。公知の種々の取付方法を用いることができる。
【0022】
筐体18内には、図5に示すように、タイマー21、制御手段22、送信手段23、受信手段24、記憶手段25、電源26等を備えて構成されている。
【0023】
タイマー21は、定期的に無線タグ12を起動させるためのタイマーである。このタイマー21は、例えば毎朝9時に起動するようにセットされる。設定時刻は適宜選択する。送信手段23は、パレット4の識別情報等を送信するための装置である。この送信手段23としては、公知の装置を用いることができる。受信手段24は、センター管理装置16から送信される信号を受信するための装置である。この受信手段24としては、公知の装置を用いることができる。無線タグ12は通常、パレット4の識別情報等を送信するだけだが、必要に応じてデータの書き込みも行われる。その際には、この受信手段24でセンター管理装置16から送信される信号を受信する。記憶手段25は、パレット4の識別情報等を記憶するためのメモリである。この記憶手段25は、必要に応じて、識別情報が書き換えられたり、他の情報が書き込まれたりする。
【0024】
制御手段22は、前記タイマー21及び後述する操作部19の入庫ボタン29等で起動されて、前記送信手段23、受信手段24及び記憶手段25等をそれぞれ制御するための装置である。具体的にはこの制御手段22は、前記タイマー21で定期的に、前記操作部19の入庫ボタン29等で不定期に、記憶手段25の識別情報等を送信手段23で送信する機能を備えている。具体的には、図8のフローチャートの機能を備えている。ここで前記タイマー21の場合は毎日定時(毎朝9時等)に、前記入庫ボタン29又は出庫ボタン30の場合はこれらが押されることで、無線タグ12を起動させる(ステップS1)。これにより、無線タグ12は、識別情報等を、無線アクセスポイント13を介して拠点管理端末14に通知し、ネットワーク15を介してセンター管理装置16に通知する(ステップS2)。なお、センター3では、その空間が小さいため、1つの無線アクセスポイント13が設けられているだけのところがほとんどである。このため、センター3では、無線タグ12は、識別情報を、無線アクセスポイント13に通知し、ネットワーク15を介してセンター管理装置16に通知する。
【0025】
各無線タグ12の制御手段22には遅延機能が格納されている。多数のパレット4の無線タグ12がタイマー21で設定された時間に同時に起動すると、同一の周波数でアクセスしようとして輻輳するために、遅延機能で時間をずらして起動させる。例えば以下の時間Tに起動させる。
【0026】
T=T0+ランダム数[0...1]×Td
ここで、T0は毎日測定の基本時刻(例えば午前9時)、Tdは設定時間(例えば1800秒)、ランダム数[0...1]は0から1までの任意の数である。
【0027】
1回の通信にかかる時間が50msとすると、36000個の無線タグ12が輻輳をさけて起動させることができる。無線タグ12は、起動すると、通信前に通信可能な周波数のスキャンを行い、この通信可能な周波数で通信を行う。
【0028】
なお、設定時間Tdはここでは1800秒(30分)としたが、この時間は、無線タグ12の個数に合わせて通信が輻輳しない範囲で設定する。
【0029】
各無線タグ12における通信の後(タイマー21による定時の起動時間以外)は、「スリープ状態」と呼ばれる、タイマー21以外は電力を消費しないモードに切り換えられる(ステップS3)。
【0030】
また、無線タグ12の操作部19の入庫ボタン29及び出庫ボタン30を押した場合も同様に、無線タグ12に電源26が投入されてスリープ状態から起動され、識別情報及び所在地情報と共に、「入庫」または「出庫」の情報を、無線アクセスポイント13を介して拠点管理端末14又はセンター管理装置16に通知する。
【0031】
これにより、無線タグ12は、図1に示すように、通常スリープ状態になっており、タイマー21で設定時間になったときと、操作部19の入庫ボタン29及び出庫ボタン30が押されたときだけ、起動状態になって識別情報等を送信し、送信完了後はすぐにスリープ状態に戻るように制御されている。さらに、制御手段22は、入庫ボタン29又は出庫ボタン30が設定時間以上押され続けたとき、無線タグ12を起動しない機能を備えている。入庫ボタン29又は出庫ボタン30が設定時間以上(例えば10秒以上)押され続ける状態は、トラックの運転手による操作ではあり得ない。運転手が押す場合には、長くても数秒程度である。入庫ボタン29及び出庫ボタン30が長時間押され続けることがある態様としては、隣のパレット4にボタンが接触したりして押されたとき等であり、この場合は運転手により押されたものではないと判断して、無線タグ12を起動させない。また、起動している場合は、スリープ状態にする。
【0032】
電源26は、前記タイマー21や制御手段22等に電力を供給するための電源である。この電源26は、メンテナンスを容易にするために、通常の乾電池等の、容易に入手できるものを用いる。
【0033】
操作部19は、パレット4の識別情報の送信等を行う部分である。操作部19は、筐体18の表面に設けられている。操作部19は、荷物の種別を選択する選択ダイヤル28と、センター3又はベース5への入庫ボタン29と、センター3又はベース5からの出庫ボタン30とから構成されている。選択ダイヤル28は、本実施形態では、荷物の種類や有無等を選択できるようになっている。入庫ボタン29は、センター3やベース5へパレット4が入庫されるときに、運転手等によって押されるボタンである。入庫ボタン29は、パレット4をトラック2から降ろすときや、降ろした後にセンター3等へ搬入するときに押される。出庫ボタン30は、センター3やベース5からパレット4が出庫されるときに、運転手等によって押されるボタンである。出庫ボタン30は、パレット4をトラック2へ積み込むときや、センター3等から搬出するときに押される。
【0034】
無線アクセスポイント13は、無線タグ12と交信するための装置である。無線アクセスポイント13には、ルーティングのみを行う第1無線アクセスポイントと、拠点管理端末14やセンター管理装置16と接続するゲートウエイ機能を有する第2無線アクセスポイントとがある。ルーティングのみを行う無線アクセスポイント13(第1無線アクセスポイント)をポイントZRとする。ゲートウエイ機能を有する無線アクセスポイント13(第2無線アクセスポイント)をポイントZCとする。
【0035】
センター3では、図3に示すように、空間が小さいため、ポイントZCのみを設けている。空間が大きい場合は、その大きさに応じてポイントZRも設ける。ポイントZCは、それが設定されたセンター3又はベース5の所在地情報を無線タグ12の識別情報等に添付する機能を備えている。これにより、ポイントZCは、パレット4に取り付けられた無線タグ12の識別情報等と、そのパレット4の所在地情報とを合わせて、拠点管理端末14等へ送信するようになっている。
【0036】
ベース5では、図3,6に示すように、複数のポイントZRと、1つのポイントZCが設けられている。無線アクセスポイント13は、IEEE802.15.4/ZigBee(TM)などのセンサーネットワーク向けの近距離無線システムで構成されている。このような近距離無線システムで無線アクセスポイント13を構成することで、各ポイントZR及びポイントZCを、相互に無線でルーティングして、配線することなしに簡易にネットワークを構築することができる。複数のポイントZRの設置間隔は、図7に示すように、電波の到達距離に応じて設定される。IEEE802.15.4/ZigBeeでは、電波の到達距離が30m程度あるため、ポイントZR及びポイントZCの設置間隔は、20m程度に設定する。なお、無線タグ12のシステムも同じ無線方式を採用している。また、センター3で用いるネットワークも同様である。
【0037】
無線アクセスポイント13は、センター3及びベース5の天井等に設定されて、屋内配線によって電力が常時供給されている。これにより、無線アクセスポイント13は、常時通信可能状態となっており、無線タグ12が定期的に、又は不定期に送信される情報を受信するようになっている。具体的には、センター3又はベース5内の任意の位置のパレット4に取り付けられた無線タグ12が起動すると、その無線タグ12は最寄りの無線アクセスポイント13とアクセスするが、その無線アクセスポイント13はルーティングを行うポイントZRあるいはゲートウエイ機能をもつポイントZCにアクセスする。そして、ルーティングを行うポイントZRにアクセスした場合は、ゲートウエイ機能をもつポイントZCまで、他のルーティング機能をもつポイントZRをホッピングして、ポイントZCにアクセスするようになっている。この機能により、ポイントZRがセンター3及びベース5内の全域をカバーして、パレット4をどこに置いても、ルーティング機能によりポイントZCまで通信できるようになっている。即ち、ポイントZRの相互の距離が適切に保たれていれば、ポイントZCまで通信可能なネットワークを構築することができ、パレット4をセンター3やベース5内のどこに置いても、無線タグ12とポイントZCとが通信可能となる。なお、前記無線アクセスポイントをホッピングする技術としては、特開2006−135911号公報に記載のシステム等を用いることができる。
【0038】
図3の拠点管理端末14は、ポイントZCから送信された、パレット4の無線タグ12からのデータを収集して、ネットワーク15を介してセンター管理装置16へ送信するための装置である。
【0039】
ネットワーク15は、各センター3及び各ベース5に位置する各パレット4の無線タグ12からのデータを、センター管理装置16へ送信するための通信網である。ネットワーク15は、センター3のポイントZCと、ベース5の拠点管理端末14と、センター管理装置16とにそれぞれ接続されている。
【0040】
センター管理装置16は、毎日定刻に送信されるデータ(パレット4に取り付けられた無線タグ12の識別情報等と、そのパレット4の所在地情報とを合わせたデータ)を収集して、全域でのパレット4の管理をするための装置である。具体的には、センター管理装置16で収集した前記データから、所在地毎に区別可能な識別情報をカウントして、定刻に各パレット4が位置する場所(センター3又はベース5)、荷物の収納の有無(空のパレット4か否か)等を、日時在庫情報として集計する。さらに、入庫ボタン29又は出庫ボタン30の押下時点での情報から、パレット4の所在地毎の数量の増減を、時系列に集計する。このセンター管理装置16は、情報管理端末32と、データベース33とから構成されている。情報管理端末32は、ネットワーク15を介して受信した識別情報等と所在地情報とを集計するための装置である。データベース33は、情報管理端末32で集計されたデータを保存するための装置である。
【0041】
[動作]
以上のように構成された流通供用物管理システム11は、次のように動作する。
【0042】
センター3やベース5にある全てのパレット4の無線タグ12は、制御手段22のタイマー21によって、設定時間(例えば朝9時)に起動される。これにより、各無線タグ12は、図8のフローチャートのように、それぞれに割り当てられた前記時間Tに起動して、パレット4の識別情報及び荷物の種別情報を送信する。無線タグ12での送信を前記時間Tに基づいて僅かずつずらすので、リトライの回数を少なくして、送信する。この情報は、ポイントZCで添付される所在地情報と共に、ネットワーク15を介してセンター管理装置16に通知される。無線タグ12は、この通知の後は、スリープ状態に切り換えられる。
【0043】
センター管理装置16では、全無線タグ12からの情報を入手して、前記日時在庫情報として集計する。
【0044】
さらに、パレット4は、出庫ボタン30が押された後の移動過程(例えば、パレット4がトラック2から降ろされるときや、センター3等の内部に搬入されるときであって、無線アクセスポイント13と通信できるとき)に入庫ボタン29が運転手等によって押される。また、センター3等から搬出された後の移動過程(例えば、パレット4がトラック2に積み込まれるときや、センター3等の内部から搬出されるとき等であって、無線アクセスポイント13と通信できるとき)に出庫ボタン30が運転手等によって押される。
【0045】
これにより、入庫ボタン29や出庫ボタン30が押された無線タグ12は起動して、パレット4の識別情報及び所在地情報等と共に、「入庫」または「出庫」の情報を、無線アクセスポイント13を介してセンター管理装置16に通知する。無線タグ12は、この通知の後は、スリープ状態に切り換えられる。
【0046】
センター管理装置16では、この情報を基に、パレット4の所在地毎の数量の増減を、時系列に集計する。
【0047】
これにより、センター管理装置16が把握する在庫情報は、1日のうちで、最大値、最小値をもつグラフになり、全パレット4の1日の動向を把握する。これにより、過剰気味のセンター3等から不足気味のセンター3等へパレット4の移動を促して、パレット4の偏在を縮小していく。
【0048】
[効果]
以上のように、無線タグ12は、タイマー21で設定時間になったときと、操作部19の入庫ボタン29及び出庫ボタン30が押されたときだけ起動することで、100ms程度に起動時間を短くして、1日のうちのほとんどをスリープ状態に維持されるため、ほとんど電力を消費せず、無線タグ12の電源26の寿命を大幅に伸ばすことができる。さらに、各無線タグ12は、起動させる時間を前記時間Tに基づいて僅かずつずらすことで、通信の輻輳を避けて、リトライの回数を大幅に低減でき、消費電力を大幅に低減することができる。これにより、例えば数日から数ケ月で電池交換をしなければならなかった従来の無線タグの電源26を、5年以上交換不要とすることができる。この結果、電池交換のためのメンテナンスの頻度を大幅に低減させることができ、ランニングコストの低減を図ることができる。
【0049】
また、運転手等が行う操作も、入庫ボタン29又は出庫ボタン30を押すだけの簡易なものとなり、さらにパレット4のトラック2への積み込みから出車まで、あるいは入車から積み下ろしまでの、どこの時点、場所で押してもかまわないため、作業性に優れ、運転手等にとってもあまり負担にならず、容易に行うことができる。
【0050】
また、センター管理装置16で、パレット4の在庫量の最小値等の日時変化をみることにより、所在地での在庫の蓄積、散逸を把握することができる。この結果、計画的に回収計画をたてることができる。また、在庫量の最大値と最小値の差はその所在地での必要量と想定されるので、在庫量の適正値を推定することができる。
【0051】
また、センター管理装置16では、識別情報と所在地情報を連携させたデータセットの履歴を持つことにより、所在地間での移動を把握することができ、所在地間の流動量の把握をすることができる。また、識別情報をキーにして、所在地の履歴情報を作成すると、パレット4の流れ、例えば最後に確認された所在地を知ることができ、散逸の発生頻度が高い所在地の特定など、適切な管理が可能となる。
【0052】
また、従来技術では、識別情報等を読み取るのに、タグからリーダーまでの距離が数cm〜数10cmしかとれなかったものが、30m程度離しても読み取ることができるため、作業効率が大幅に向上すると共に、流通供用物管理システムの大幅なコスト低減を図ることができる。
【0053】
さらに、従来技術では、リーダーと1度に通信できるIDタグが単数もしくは少数であったのに対して、数千の無線タグ12と同時に通信でき、決まった時間に全無線タグ12の情報を入手することが容易にできるようになる。
【0054】
[変形例]
前記実施形態では、流通業界で荷物の運搬に供される流通供用物としてパレットを例に説明したが、パレット以外でも本発明を適用することができる。例えば、部品等を収納する小物収納ケースや、複数の商品をまとめて縛るバンド等にも無線タグ12を取り付けることで、容易に管理することができる。なお、バンド等に取り付ける場合は、無線タグ12を薄型にしたり小型にしたりする。
【0055】
前記実施形態では、無線アクセスポイント13で用いるセンサーネットワーク技術としてZigBeeを用いたが、本発明はこれに限らず、消費電力は少し大きくなるが、電波の到達距離がより長くなるBluetooth等の他の規格を用いてもよい。大型の倉庫等においては、電波の到達距離が長いものを用いる。この場合も、前記実施形態同様の作用、効果を奏することができる。
【0056】
前記実施形態では、前記所在地情報を前記識別情報等に添付する機能を、ポイントZCに持たせたが、ベース5において設けられたポイントZRに持たせるようにしてもよい。この場合も前記同様の作用、効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係る流通供用物管理システムの無線タグの機能を示す模式図である。
【図2】本発明に係る流通供用物管理システムでの荷物及びパレットの流れを示す概略構成図である。
【図3】本発明に係る流通供用物管理システムを示す概略構成図である。
【図4】本発明に係る流通供用物管理システムの無線タグを示す斜視図である。
【図5】本発明に係る流通供用物管理システムの無線タグを示す機能ブロック図である。
【図6】本発明に係る流通供用物管理システムのベースでの無線アクセスポイントの構成を示す斜視図である。
【図7】本発明に係る流通供用物管理システムのベースでの無線アクセスポイントの構成を示す平面図である。
【図8】本発明に係る流通供用物管理システムの無線タグでの処理機能を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0058】
1 取扱店
2 トラック
3 センター
4 パレット
5 ベース
11 流通供用物管理システム
12 無線タグ
13 無線アクセスポイント
14 拠点管理端末
15 ネットワーク
16 センター管理装置
18 筐体
19 操作部
21 タイマー
22 制御手段
23 送信手段
24 受信手段
25 記憶手段
26 電源
28 選択ダイヤル
29 入庫ボタン
30 出庫ボタン
32 情報管理端末
33 データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷物を運搬する際にその荷物と共に移動して再利用される複数の流通供用物の在庫及び流通を管理する流通供用物管理システムにおいて、
前記各流通供用物にそれぞれ装着され、電源を内蔵して、内部に記録された当該各流通供用物の識別情報等を送信する無線タグを備え、
当該各無線タグが、
前記各流通供用物の識別情報等を送信する送信手段と、
起動する時間を設定するタイマーと、
通常は前記各無線タグをスリープ状態にして、前記タイマーで設定された時間になったときに当該各無線タグをそれぞれずらして起動させて前記識別情報等を送信させ、送信完了後にスリープ状態に戻す制御手段とを少なくとも有することを特徴とする流通供用物管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の流通供用物管理システムにおいて、
前記制御手段が前記各無線タグを以下の式で設定した時間に起動させることを特徴とする流通供用物管理システム。
T=T0+ランダム数[0...1]×Td
ここで、T0は毎日測定の基本時刻、Tdは設定時間
【請求項3】
請求項1又は2に記載の流通供用物管理システムにおいて、
前記各無線タグが、前記各流通供用物が拠点に入庫するときに押される入庫ボタンと、前記各流通供用物が拠点から出庫するときに押される出庫ボタンとをさらに設け、
前記各無線タグの制御手段が、通常は前記各無線タグをスリープ状態にして、前記入庫ボタン又は出庫ボタンが押されたときに当該入庫ボタン又は出庫ボタンが押された無線タグを起動状態して前記識別情報等を送信させ、送信完了後にスリープ状態に戻すことを特徴とする流通供用物管理システム。
【請求項4】
請求項3に記載の流通供用物管理システムにおいて、
前記各無線タグの制御手段が、前記入庫ボタン又は出庫ボタンが設定時間以上押され続けたとき、前記無線タグを起動しない機能を備えたことを特徴とする流通供用物管理システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の流通供用物管理システムにおいて、
エリア内に位置する前記流通供用物の前記無線タグと交信して受信した前記識別情報等を転送するルーティング機能をもつ第1無線アクセスポイントと、前記無線タグと交信して又は前記第1無線アクセスポイントと交信して受信した前記識別情報等をネットワークへ送信するゲートウエイ機能をもつ第2無線アクセスポイントとを備え、
前記第1無線アクセスポイント又は第2無線アクセスポイントのいずれかに、前記識別情報等に所在地情報を添付する機能を備えたことを特徴とする流通供用物管理システム。
【請求項6】
請求項5に記載の流通供用物管理システムにおいて、
前記ルーティング機能をもつ第1無線アクセスポイントが複数設けられると共に、各第1無線アクセスポイントが、互いに通信可能であって、ホッピング機能を有することを特徴とする流通供用物管理システム。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の流通供用物管理システムにおいて、
前記無線アクセスポイントとネットワークを介して接続され、各無線タグの識別情報等と前記所在地情報とを管理する管理装置を備え、
当該管理装置が、前記タイマーによる設定時刻に送信される前記識別情報等と前記所在地情報を収集して全域での流通供用物の管理をすると共に、前記入庫ボタン又は出庫ボタンの押下時点での前記識別情報等と所在地情報を収集して、前記流通供用物の所在地毎の数量の増減を管理することを特徴とする流通供用物管理システム。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれか1項に記載の流通供用物管理システムにおいて、
前記無線タグ及び無線アクセスポイントの無線技術として、センサーネットワーク技術を用いたことを特徴とする流通供用物管理システム。
【請求項9】
請求項8に記載の流通供用物管理システムにおいて、
前記センサーネットワーク技術としてZigBeeを用いたことを特徴とする流通供用物管理システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−87876(P2008−87876A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−267791(P2006−267791)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
2.Bluetooth
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】