説明

流量制御装置

【課題】機械的駆動装置を特に必要とすることなく遠隔操作が可能で、従って安価であり、しかも流路開放時の流体圧力損失が低い流量制御装置を得ることを目的とする。
【解決手段】ハウジング1内の空間2に、それぞれ第1の径を有する第1の円筒面4とこの第1の円筒面4と同軸で第1の径より小さい第2の径を有する第2の円筒面5、および所定の深さを有し第2の円筒面5に開口する環状溝6からなる開閉動作空間部3を形成し、この開閉動作空間部6内に、環状溝6の側面と気密に当接して配設され、環状溝6の底面から導入する制御流体の圧力変化によりその外径が変化する環状弾性体10および環状弾性体10内に配設された環状バネ11を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体や気体の流量を調節制御する流量制御装置に関し、特に、遠隔操作が簡単に行え、流路開放時における流体圧力損失の低減が可能な流量制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、水処理場や各種化学プラント等では、各種の液体、気体の供給、流量を制御するため、各種の流量制御弁が大量に使用される。特に、流路開放時の流体圧力損失が低いことを要求される流量制御弁は、一般に、開位置と閉位置との間の弁の駆動変位が大きく、これを遠隔操作で実現するためには、電動機や電磁弁等の機械的駆動装置を備えたものが必要とされる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
以上のように、遠隔操作式であって、しかも、流路開放時の流体圧力損失が低いことを要求される流量制御弁は、電動機や電磁弁等の機械的駆動装置を備えたものが必要とされ、コストが高くなると共に、これら駆動装置の保守にも費用が掛かり、全体として経済性に改善の余地があった。
この発明は以上のような要請に応えるもので、機械的駆動装置を特に必要とすることなく遠隔操作が可能で、従って安価であり、しかも流路開放時の流体圧力損失が低い流量制御装置を得ることを目的とする。
また、流路開放時の流体圧力損失が低く、温度の異常で自動的に流路を遮断できる流量制御装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明に係る流量制御装置は、内部に空間を有するハウジング、このハウジングに形成され空間の一端に連通する被制御流体導入口、ハウジングに形成され空間の他端に連通する被制御流体導出口、ハウジングに形成され制御流体を導入する制御流体導入口、空間内の一端と他端との間に形成された開閉動作空間部、およびこの開閉動作空間部に設けられ、制御流体導入口からの制御流体の圧力に応じて開閉動作空間部における被制御流体の通路断面を制御する開閉制御体を備えた流量制御装置であって、
開閉動作空間部は、空間内面を形成する、それぞれ第1の径を有する第1の円筒面とこの第1の円筒面と同軸で第1の径より小さい第2の径を有する第2の円筒面、および所定の深さを有し第2の円筒面に開口する環状溝で形成されており、
開閉制御体は、開閉動作空間部内に環状溝の側面と気密に当接して配設され、環状溝の底面から導入する制御流体の圧力変化によりその外径が変化する環状弾性体からなるものである。
【0005】
また、この発明に係る流量制御装置は、内部に空間を有するハウジング、このハウジングに形成され空間の一端に連通する被制御流体導入口、ハウジングに形成され空間の他端に連通する被制御流体導出口、空間内の一端と他端との間に形成された開閉動作空間部、およびこの開閉動作空間部に設けられ、開閉動作空間部における被制御流体の通路断面を制御する開閉制御体を備えた流量制御装置であって、
開閉動作空間部は、空間内面を形成する、それぞれ第1の径を有する第1の円筒面とこの第1の円筒面と同軸で第1の径より小さい第2の径を有する第2の円筒面、および所定の深さを有し第2の円筒面に開口する環状溝で形成されており、
開閉制御体は、開閉動作空間部内に環状溝の側面と気密に当接して配設された環状弾性体、および温度によって環状弾性体の外径が変化するよう、温度によって異なる形状を取るよう記憶され環状弾性体と一体に構成された形状記憶合金を備えたものである。
【発明の効果】
【0006】
この発明に係る流量制御装置は、以上のように、例えば、閉路状態にある場合、制御流体の圧力を下げるのみで、環状弾性体の外径が減少し、これによって、空間の第1の円筒面との間に隙間が発生し、この隙間の寸法に第1の円筒面の周長をかけた面積の大きな流路断面が確保され、低圧力損失での流路開放が実現する。
【0007】
また、この発明に係る流量制御装置は、以上のように、例えば、低圧力損失での流路開放中に、温度が所定以上上昇すると、形状記憶合金の形状が高温時の記憶形状に変形し、これに伴い環状弾性体の外径が増大して第1の円筒面と当接し自動的に流路を遮断することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1および図2は、この発明の実施の形態1における流量制御装置の構成、動作を説明するための断面図で、図1は、開路状態、図2は、閉路状態を示す。図において、全体は、外径が円筒形のハウジング1に組み込まれている。ハウジング1は、例えば、アルミニゥムや鉄の鋳物に一部機械加工を施して製作され、上段部1A、下段部1B、そして中段部1Cから構成されている。詳細な図示は省略しているが、上段部1Aの軸中心位置に下方に突出して形成された雄ねじ部を、中段部1Cの軸中心位置に形成された雌ねじ部に螺合することで、上段部1Aと中段部1Cとが一体に結合されている。上段部1Aと下段部1Bとは、下段部1Bの上部周縁部に一定間隔で形成された雌ねじ部に上段部1Aから雄ねじを螺合することにより一体に結合されている。
【0009】
ハウジング1の内部には空間2が形成されており、流量制御の対象流体である被制御流体を導入する導入口7は、上段部1Aに設けられており、空間2の一端7Aに連通する構造となっている。被制御流体を導出するための導出口8は、下段部1Bに設けられており、空間2の他端8Aに連通する構造となっている。
下段部1Bの内面円筒部分は、第1の径を有する第1の円筒面4に仕上げられている。上段部1Aと中段部1Cとの内面円筒部分は、第1の径より小さい第2の径を有する第2の円筒面5に仕上げられている。
更に、上段部1Aと中段部1Cとの組み合わせ体には、所定の深さの第2の円筒面5に開口する、後述する環状弾性体10を挿入する環状溝6が形成されている。環状溝6の両側面は、挿入される環状弾性体10との滑りが良くなるようフッ素樹脂加工がなされている。そして、この第1の円筒面4と第2の円筒面5と環状溝6とで形成される空間を開閉動作空間部3と称するものとする。
被制御流体の流量を制御するための制御流体を導入する制御流体導入口9が上段部1Aに設けられており、開孔9Aを介して環状溝6の底面に連通する構造となっている。
【0010】
環状弾性体10は、図示のように、断面が中空でその内径中央で分離された略C字状の形状に成形されており、その上下両外表面が環状溝6の側面と気密に当接するようになっている。また、制御流体導入口9からの制御流体が、環状弾性体10の中空内に導入される構造となっている。更に、この環状弾性体10の中空内には、環状バネ11が挿入されており、その蓄勢力により、環状弾性体10の外径を低減させる方向に作用するようになっている。
この発明では、環状弾性体10と環状バネ11とにより開閉制御体を構成する。
なお、環状弾性体10の材料としては、主として、被制御流体の種別や温度等の使用条件を考慮して、フッ素ゴム、シリコンゴム、ニトリルゴム等を適宜選択して使用する。
【0011】
次に、開閉操作の要領について説明する。図1は、流路開路位置に操作した場合を示し、制御流体の圧力P1は、例えば、P1=0Mpa(ゲージ圧)に操作している。環状弾性体10は、最も外径を小さくした形状で環状溝6内に収まっており、開閉動作空間部3においては、第1の径の第1の円筒面4と環状弾性体10の外径との間に所定の間隙が生じ、この間隙の寸法と第1の円筒面4の周長を掛けた面積の流路断面が確保される。従って、その流路断面の形態から流体圧力損失は極めて小さい値となり、例えば、大きな流量Q1の被制御流体を導入口7から導入して導出口8から導出することができる。
【0012】
図2は、流路閉路位置に操作した場合を示す。制御流体の圧力P2は、例えば、P2=1.0Mpaに操作しており、この圧力を受けて環状弾性体10は、環状バネ11の収縮力に抗して伸張しその一部先端が環状溝6からはみ出し、第1の円筒面4に当接して開閉動作空間部3における流路断面を完全に閉塞して被制御流体の流量Q2は0となっている。
なお、閉路操作時の制御流体の圧力P2は、被制御流体の圧力より高い範囲で、環状弾性体10と環状バネ11の弾性力を考慮して設定する必要がある。
【0013】
再度、流路開路位置に操作する場合は、制御流体の圧力を下げて環状弾性体10を収縮させればよいが、例えば、閉路操作期間が長期間となった場合や、流量制御装置としての使用期間が長年月にわたり環状弾性体10の材質の経年劣化による弾性力の低下等による収縮力不足を考慮して、環状弾性体10の中空内に環状バネ11を挿入している。即ち、環状バネ11は常に収縮する方向に蓄勢されているので、流路開路操作に向けた環状弾性体10の収縮動作をこの環状バネ11の蓄勢力が補助し、確実な流路開路操作がなされる。
【0014】
以上のように、この発明の実施の形態1の流量制御装置においては、制御流体の圧力を調整することで流路開閉操作が可能となるので、特別の機械的駆動装置を必要とせず、安価な装置で遠隔開閉操作が実現する。かつ、流体開路操作時は、リング状の大きな流路断面が確保できるので、開路時の流体圧力損失を低くできる。
なお、環状弾性体10を断面中実のものとし、開閉制御体をこの環状弾性体10のみで構成するようにしてもよい。
【0015】
実施の形態2.
図3は、この発明の実施の形態2における流量制御装置で使用する環状弾性体10aおよび環状バネ11aを示す。特に、環状弾性体10aは、図に示すように、そのC字状断面の、下端から上方に突出して形成された舌片の先端が、上端に設けられた溝に嵌合し、断面内部に環状バネ11aを囲む袋状となる。
従って、特に、流路閉路位置から流路開路位置に操作する場合、環状バネ11aの収縮力が環状弾性体10aに確実に伝達され開路操作がより確実になされる。
【0016】
実施の形態3.
図4は、この発明の実施の形態3における流量制御装置の構成を示す断面図で、ここでは、開路位置操作状態を示している。先の実施の形態1での図1と異なるのは、開閉動作空間部3における、環状溝の形状のみである。即ち、この実施の形態3の図4の環状溝6aは、その溝幅(図の縦方向の寸法)が、径が大きくなるにつれて減少するように、その上下に位置する両側面が径方向にテーパ状に形成されている。
従って、特に、流路閉路位置から図4に示す流路開路位置に操作する場合、このテーパ面の効果により環状バネ11が収縮して図4に示す元の外形に復帰し易くなり、結果として開閉操作の信頼性が向上する。
【0017】
実施の形態4.
図5は、この発明の実施の形態4における流量制御装置の構成を示す断面図である。流路開路位置における流体圧力損失を小さくする点は、先の各実施の形態と同一の構成を採用しているが、開閉の動作原理が異なる。即ち、ここでは、制御流体は使用せず、開閉制御体は、環状溝6内に収められた環状弾性体12とこの環状弾性体12内に一体に埋め込まれた形状記憶合金13とから構成されている。そして、形状記憶合金13は、所定の温度範囲内では、図5に示すように、比較的小さい径の形状を記憶しているが、上記範囲を越えて温度が上昇すると、予め記憶している、大きな径の形状に自ら変形し、一体に形成された環状弾性体12を変形させてその外径を増大させ開閉動作空間部3における流路断面を閉塞して被制御流体の導出を阻止する。
【0018】
この実施の形態4の流量制御装置は、各種設備プラントにおいて要求され得る、温度の異常上昇時、被制御流体の導出を自動的に遮断する流量制御装置として利用することができる。外部からの制御手段を必要とすることなく、自ら自動的に上述した保護動作を実行するので、装置が簡便安価となり、また、被制御流体を導出する正常時に、その流路圧力損失が小さいので、特に、常時、大流量の流体を扱う用途に利用するとメリットが大きい。
【産業上の利用可能性】
【0019】
以上では、流量制御装置として動作する独立した装置として説明したが、この発明は、例えば、図1における、ハウジングの下段部1Bに近い形状に製作されたシリンダの漏れ試験等にも利用することができる。即ち、この場合は、ハウジングの上段部1Aおよび中段部1Cの部分を漏れ試験用の治具とし、この治具を上記シリンダに取り付けた状態で制御流体の圧力を高めて環状弾性体10により開閉動作空間部3における流路断面を閉塞し、導入口7から所定の試験圧力の流体を供給して漏れ試験を行うことができる。シリンダを含む機械装置の組み立て工程の途中で当該シリンダのみの漏れ試験が要求される場合等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の実施の形態1における流量制御装置の流路開路位置操作状態を示す断面図である。
【図2】同じく、流量制御装置の流路閉路位置操作状態を示す断面図である。
【図3】この発明の実施の形態2における流量制御装置で使用する環状弾性体10aおよび環状バネ11aを示す図である。
【図4】この発明の実施の形態3における流量制御装置の構成を示す断面図である。
【図5】この発明の実施の形態4における流量制御装置の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 ハウジング、2 空間、3 開閉動作空間部、4 第1の円筒面、
5 第2の円筒面、6,6a 環状溝、7 導入口、8 導出口、9 制御流体導入口、10,10a,12 環状弾性体、11,11a 環状バネ、13 形状記憶合金。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空間を有するハウジング、このハウジングに形成され上記空間の一端に連通する被制御流体導入口、上記ハウジングに形成され上記空間の他端に連通する被制御流体導出口、上記ハウジングに形成され制御流体を導入する制御流体導入口、上記空間内の上記一端と他端との間に形成された開閉動作空間部、およびこの開閉動作空間部に設けられ、上記制御流体導入口からの制御流体の圧力に応じて上記開閉動作空間部における上記被制御流体の通路断面を制御する開閉制御体を備えた流量制御装置であって、
上記開閉動作空間部は、上記空間内面を形成する、それぞれ第1の径を有する第1の円筒面とこの第1の円筒面と同軸で上記第1の径より小さい第2の径を有する第2の円筒面、および所定の深さを有し上記第2の円筒面に開口する環状溝で形成されており、
上記開閉制御体は、上記開閉動作空間部内に上記環状溝の側面と気密に当接して配設され、上記環状溝の底面から導入する上記制御流体の圧力変化によりその外径が変化する環状弾性体からなることを特徴とする流量制御装置。
【請求項2】
上記環状弾性体は、断面が中空のパイプ状に形成され、上記環状弾性体の外径を低減させる方向に蓄勢された環状バネを上記中空内に配設したことを特徴とする請求項1記載の流量制御装置。
【請求項3】
上記環状弾性体は、断面が中空でその内径中央で分離された略C字状で上記制御流体が上記中空内に導入されるように形成され、上記環状弾性体の外径を低減させる方向に蓄勢された環状バネを上記中空内に配設したことを特徴とする請求項1記載の流量制御装置。
【請求項4】
上記環状溝は、その溝幅が、径が大きくなるにつれて減少するように、その両側面が径方向にテーパ状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の流量制御装置。
【請求項5】
内部に空間を有するハウジング、このハウジングに形成され上記空間の一端に連通する被制御流体導入口、上記ハウジングに形成され上記空間の他端に連通する被制御流体導出口、上記空間内の上記一端と他端との間に形成された開閉動作空間部、およびこの開閉動作空間部に設けられ、上記開閉動作空間部における上記被制御流体の通路断面を制御する開閉制御体を備えた流量制御装置であって、
上記開閉動作空間部は、上記空間内面を形成する、それぞれ第1の径を有する第1の円筒面とこの第1の円筒面と同軸で上記第1の径より小さい第2の径を有する第2の円筒面、および所定の深さを有し上記第2の円筒面に開口する環状溝で形成されており、
上記開閉制御体は、上記開閉動作空間部内に上記環状溝の側面と気密に当接して配設された環状弾性体、および温度によって上記環状弾性体の外径が変化するよう、上記温度によって異なる形状を取るよう記憶され上記環状弾性体と一体に構成された形状記憶合金を備えたことを特徴とする流量制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−182951(P2007−182951A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−2290(P2006−2290)
【出願日】平成18年1月10日(2006.1.10)
【出願人】(502015452)株式会社 テクトリア (5)
【Fターム(参考)】