説明

流量計測装置及び方法

【課題】一定量の流体が通過する度に音又は振動を発生する機構を備える流体流通路を流れる流体の流量を、前記音又は振動に基づいて、外部から正確に計測する。
【解決手段】流量計測装置2は、ガスメータ1が発する音を検出するマイクロフォン21と、マイクロフォン21が抽出した音波信号を用いて、ガス流量を求めるための演算処理を行う装置本体22を含む。装置本体22の演算処理装置25には、前記音波信号に由来する波形データの自己相関を算出し、当該波形データに内在する周期性を求める相関検出部273と、前記周期性からガスメータ1が発する音の発生周期を推定して、ガスメータ1を通過するガスの流量を算出する流量算出部28とが備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばガスメータのように、一定量の流体が通過する度に音又は振動を発生する機構を備える流体流通路を流れる流体の流量を、その流通路内に計器等を割り入れることなく、外部から計測できる流量計測装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般住宅、商店や工場等の事業所、ビルディング等のガス需要家には、そのガス消費量を計測するためのガスメータが備えられている。このガスメータは、一般的に積算流量計であり、一ヶ月単位でのガス消費量を計測することを主目的としている。このため、メータの分解能は低く、短時間(例えば1分〜1時間程度)単位でのガス流量計測には不向きである。そもそも、この種のガスメータは、目視計測を前提としたメータであるため、単位時間当たりのガス流量に基づいて機器の制御動作を行うという利用には適していない。このようなガス流量計測を行うために、新たにガス流量計をガス配管に組み入れることも考えられるが、需要家の理解が得られ難く、またガス供給事業者以外の者がこのような配管工事を行うことは実質的に不可能である。
【0003】
特許文献1には、このような問題を解決する一つの手法が開示されている。すなわち、ガスメータのような乾式流量計が、一定量の流体が通過する度に音又は振動を発生することに着目し、特許文献1の流量計測システムでは、前記音又は振動を計測する。そして、所定の閾値レベルを超える音又は振動をカウントすることで、乾式流量計を通過する流体の流量を計測する。前記閾値レベルを設定するのは、乾式流量計が発する音又は振動とノイズとを峻別するためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−17325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、乾式流量計が実際に発する音又は振動は、乾式流量計を通過する流体の流量により変化する。本発明者の実験に依れば、例えば現在汎用されているガスメータでは、ガスの使用量が多いときには比較的大きな音が発生し、ガスの使用量が少ないときには比較的小さい音が発生する。従って、特許文献1の手法では、ガスの使用状況に応じて前記閾値レベルを逐次設定しないと、ガスメータの発生音とノイズとを峻別することができず、すなわち、音の発生周期を的確に捉えることができず、正確なガス流量計測ができないことになる。このような閾値レベルの流動化は実際には困難であり、閾値方式には限界がある。
【0006】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたもので、一定量の流体が通過する度に音又は振動を発生する機構を備える流体流通路を流れる流体の流量を、前記音又は振動に基づいて、外部から一層正確に計測できる流量計測装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面に係る流量計測装置は、一定量の流体が通過する度に音又は振動を発生する機構を備える流体流通路の外部に付設される流量計測装置であって、前記機構が発生する音又は振動を検出し、その音又は振動を波形データとして出力する検出手段と、前記波形データの自己相関を算出し、当該波形データに内在する周期性を求める周期検出手段と、前記周期性から前記音又は振動の発生周期を推定して、前記流体流通路内における前記流体の流量を算出する流量算出手段と、を備えることを特徴とする(請求項1)。
【0008】
また、本発明の他の局面に係る流量計測方法は、一定量の流体が通過する度に音又は振動を発生する機構を備える流体流通路の外部において、前記機構が発生する音又は振動を検出するステップと、前記検出された音又は振動から波形データを生成するステップと、前記波形データの自己相関を算出し、当該波形データに内在する周期性を求めるステップと、前記周期性から前記音又は振動の発生周期を推定するステップと、前記機構において一の音又は振動が発生するのに要する前記流体の単位流量と、前記推定された発生周期とから、前記流体流通路内における前記流体の流量を求めるステップと、を含むことを特徴とする(請求項6)。
【0009】
これらの構成によれば、音又は振動の発生レベルに依拠して前記音又は振動の発生周期が求められるのではなく、音又は振動に基づく波形データの周期性を自己相関演算で検出することで、前記音又は振動の発生周期が求められる。このような周期性は、一定量の流体が通過する度に音又は振動を発生する機構である以上、流体の流量に拘わらず把握し得る。従って、前記機構が発生する音又は振動の強度や周波数が変化しても、的確に音又は振動の発生周期を検出でき、前記流体の流量を正確に算出することができる。
【0010】
上記構成において、前記流体が気体であり、前記音又は振動を発生する機構が、前記気体の積算流量を検出する乾式流量計であることが望ましい(請求項2)。この構成によれば、例えばガスメータのような乾式流量計を通過する流体の流量を、特に配管工事等を行うことなく、外部から計測することが可能となる。
【0011】
上記構成において、前記検出手段は、前記音又は振動を検出可能な第1のサンプリング周期で生成された第1波形データを出力し、前記周期検出手段は、前記第1波形データを所定の時間単位で区画し、その区画毎に平均値を求めることで、サンプリング周期が前記第1のサンプリング周期よりも低い第2波形データを生成する波形圧縮部を備えることが望ましい(請求項3)。
【0012】
一般に前記機構が発生する音又は振動は1〜3kHz程度のものであり、これを検出するには、前記検出手段は、これよりも短い周期(例えば8kHz)で音又は振動をサンプリングする必要が有る。このようなサンプリング周期で取得された第1波形データは、あまりにもデータ量が多すぎて演算処理に大きな負荷がかかると共に、自己相関を取り難いという不具合が生じることがある。そこで、波形圧縮部で第1波形データを圧縮した第2波形データを生成させることで、その後の自己相関の算出処理を簡素化することが可能となる。
【0013】
この場合、前記周期検出手段は、前記第2波形データ上において所定の時間幅のテンプレート波形を設定するテンプレート設定部と、前記テンプレート波形を基準時間単位で前記第2波形データ上を順次シフトさせ、前記テンプレート波形との相関を求めると共に相関ピークを検出する相関検出部と、を備えることが望ましい(請求項4)。この構成によれば、自己相関の算出処理を効率的に行わせることができる。
【0014】
また、前記テンプレート設定部は、前記テンプレート波形を、所定の期間毎に最新の第2波形データに基づいて更新することが望ましい(請求項5)。この構成によれば、流量の変化に対応して、適切なテンプレートを逐次設定させることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、一定量の流体が通過する度に音又は振動を発生する機構を備える流体流通路を流れる流体の流量を、前記音又は振動に基づいて、外部から正確に計測できる流量計測装置及び方法を提供することができる。従って、例えば単位時間当たりの流体流量に基づいて他の機器の制御動作を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る流量計測装置のガスメータに対する設置状況を示す模式的な図である。
【図2】流量計測装置の構成を示すブロック図である。
【図3】音の波形データの一例を示すグラフである。
【図4】図3の波形データを圧縮した波形データを示すグラフである。
【図5】テンプレート波形の一例を示すグラフである。
【図6】自己相関を求める処理を説明するための模式図である。
【図7】自己相関の算出結果を示すグラフである。
【図8】流量計測装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態につき詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る流量計測装置2のガスメータ1に対する設置状況を示す模式的な図である。ガスメータ1は、一般住宅、商店や工場等の事業所、ビルディング等のガス需要家単位で設置され、そのガス需要家におけるガス使用量の積算値を計測するものである。
【0018】
ガスメータ1(一定量の流体が通過する度に音又は振動を発生する機構を備える流体流通路)は、ガス(流体)の積算流量を検出する乾式流量計であって、ガス流量の計測動作を行う機構を内部に備えた本体部11と、ガス流量の計測結果を数値で表示するカウンタメータを含む表示部12と、商用ガス供給管路に接続された入口管101の端末が接続されるガス流入口13と、需要家の屋内ガス管路102の端末が接続されるガス流出口14とを備えている。
【0019】
本体部11は、ガス流量の計量のために、ガスの吸気及び排気動作を行う計量室を備える。計量室は、ガス圧によって往復移動するダイアフラムによって4つに区画され、排気・吸気を切替えるスライドバルブの動作によって、ガス流入口13から吸入されたガスは、4つの計量区画を順次通過してガス流出口14から排出される。このようなガスの吸入・排出によって生じるダイアフラムの往復運動がクランク軸を介して積算機構に伝達され、このダイアフラムの往復運動数に基づいて積算流量値が計測される。
【0020】
このように、ガスメータ1は上記のダイアフラムやクランク軸といった部品の機械的な動作に基づきガス流量を計測するので、その動作サイクルに起因して音(乃至は振動)を発生する。この動作音は、一定量のガスが通過する度に発生する周期的なものである。本実施形態では、ガスメータ1が発生する動作音に基づいて、入口管101から屋内ガス管路102へ流入するガスの流量、つまり当該需要家におけるガス使用量をガスメータ1とは別個に計測する流量計測装置2が、ガスメータ1に付設されている。
【0021】
流量計測装置2は、マイクロフォン21(検出手段)と、装置本体22とを含む。マイクロフォン21は、ガスメータ1が発する音(乃至は振動)を検出するもので、ガスメータ1の本体部11の外表面に添設若しくは近接して設置される。装置本体22は、マイクロフォン21と電気的に接続され、マイクロフォン21が抽出した音波信号を用いて、ガス流量を求めるための演算処理を行う。
【0022】
図2は、流量計測装置2の詳細構成を示すブロック図である。流量計測装置2は、増幅回路(AMP)23、音波検出回路24、演算処理装置(CPU)25及びインターフェイス回路(I/F)26を備えている。
【0023】
増幅回路23は、マイクロフォン21が検出した電気的な音波信号が入力され、該音波信号を増幅する。音波検出回路24は、増幅回路23から出力される音波信号を、例えば8kHzのサンプリング周期(第1のサンプリング周期)で検出して、原波形データ(第1波形データ)を生成する。なお、8kHzのサンプリング周期が選ばれるのは、ガスメータ1が発生する動作音は概ね1〜3kHz程度のものであり、この帯域の音を検出するためには、これよりも短い周期でサンプリングする必要が有るためである。
【0024】
演算処理装置25は、ガス流量を算出するための各種演算処理を行うもので、周期検出部27(周期検出手段)と、流量算出部28(流量算出手段)とを備える。周期検出部27は、前記音波波形データの自己相関を算出し、当該音波波形データに内在する周期性を求めるもので、波形圧縮部271、テンプレート設定部272及び相関検出部273を備えている。
【0025】
波形圧縮部271は、前記原波形データを所定の時間単位で区画し、その区画毎に平均値を求めることで、サンプリング周期が8kHzのサンプリング周期よりも低い圧縮波形データ(第2波形データ)を生成する。8kHz程度のサンプリング周期で取得された原波形データは、あまりにもデータ量が多すぎて演算処理に大きな負荷がかかると共に、自己相関を取り難いという不具合がある。そこで、波形圧縮部271は、原波形データを圧縮し、例えば数Hz〜100Hz程度の圧縮波形データを生成させることで、その後の自己相関の算出処理を簡素化させる。
【0026】
図3は、音波検出回路24から出力される原波形データ41の一例を示すグラフである。図3の原波形データ41には、2つの大きなピーク値、第1ピーク値41P1、第2ピーク値41P2が存在する。これらピーク値は、ガスメータ1の動作サイクルに起因して発生する音に対応する。ここでは、第1ピーク値41P1と第2ピーク値41P2との間隔は約2秒である。従って、この原波形データ41が検出されている状況では、ガスメータ1の本体部11が、約2秒間で一の計量単位の計測を実行していることになるので、その計量単位が既知であればガス流量を求めることができる。
【0027】
このように、原波形データ41から、第1、第2ピーク値41P1、41P2を観測することができるので、この原波形データ41自体からガスメータ1の動作状況を把握することが可能ではある。しかし、原波形データ41には、第1、第2ピーク値41P1、41P2の他に、いくつかのサブピーク41Sが存在する。これらサブピーク41Sと、第1、第2ピーク値41P1、41P2とを区別するために、所定の閾値を設定して真のピーク値のみを抽出する必要がある。図3の例では、例えば閾値を振幅値=20000に設定すれば、両ピーク値の峻別が可能となる。
【0028】
しかしながら、ガスメータ1が実際に発する音は、ガスメータ1を通過する流体の流量により変化する。現在汎用されているガスメータでは、ガスの使用量が多いときには比較的大きな音が発生し、ガスの使用量が少ないときには比較的小さい音が発生する。従って、例えば閾値を振幅値=20000に固定的に設定すると、サブピーク41Sと、第1、第2ピーク値41P1、41P2とを峻別することができない場合が生じる。つまり、正確なガス流量計測ができないことになる。
【0029】
そこで、本実施形態では、一般に需要家においてガスの使用状況は急激には変化しないことに着目し、原波形データ41の自己相関性を調べ、その周期性を求めることで、ガスメータ1における一の計量単位(つまり、音の発生周期)を求める。しかし、図3に示す原波形データ41は、一秒当たり8000サンプルのデータを有しており、数秒単位の周期を抽出するにはあまりにデータが多すぎる。つまり、原波形データ41に基づき自己相関処理を行っても、周期性を観測することができない。この点に鑑み、波形圧縮部271は原波形データ41を圧縮する。
【0030】
一例として、波形圧縮部271は、原波形データ41を1000サンプルの時間単位(0.125秒)で区画し、その1000サンプルの振幅値の平均値を求めることで、区画毎に一つの振幅データを作成する。これにより、図4に示すように、サンプリング周期が8Hzの圧縮波形データ42が生成される。この圧縮波形データ42には、原波形データ41の第1ピーク値41P1及び第2ピーク値41P2に対応した、第1ピーク値42P1及び第2ピーク値42P2が現れている。
【0031】
テンプレート設定部272は、圧縮波形データ42上において所定の時間幅のテンプレート波形を設定する。このテンプレート波形は、圧縮波形データ42の周期性を求めるための基準波形であり、テンプレート設定部272は、圧縮波形データ42上において基準時を設定し、その基準時の前、後、若しくは前後の、ある時間幅に存在するデータをテンプレート波形に設定する。テンプレート波形の時間幅は数秒程度であり、時間幅を固定的に設定しても良いし、可変式にしても良い。図5に、テンプレート設定部272が設定するテンプレート波形43の一例を示すグラフである。
【0032】
相関検出部273は、図5に示したようなテンプレート波形43を基準時間単位で圧縮波形データ42上を順次シフトさせ、テンプレート波形43との自己相関を求めると共に相関ピークを検出する処理を行う。具体的には、相関検出部273は、上記の基準時から圧縮波形データ42上においてテンプレート波形43を基準時間(0.125秒)単位でスライドさせ、テンプレート波形43と圧縮波形データ42との相関を求める。
【0033】
図6は、このスライド処理を模式的に示す図である。テンプレート波形43は、基準時Ztのデータの前後の時刻に、複数のデータを有している。このようなテンプレート波形43を基準時間単位でスライドさせ、そのスライド毎に自己相関値C1、C2、C3・・・を求める。圧縮波形データ42に一定の周期性がある場合、テンプレート波形43をスライドしてゆくと、その一定の周期でテンプレート波形43と圧縮波形データ42との相関ピークが現れる。そして、相関ピークが現れる間隔を求めることで、圧縮波形データ42の周期性、つまりガスメータ1の動作音発生周期が求められる。
【0034】
自己相関関数rは、テンプレート波形の数列をC、対称性を調べる数列をCとすると、r=C/Cで表すことができる。但し、Cは次式で表される。
【0035】
【数1】

【0036】
図7は、相関検出部273による自己相関データ44の算出結果の一例を示すグラフである。自己相関データ44には、第1〜第4相関ピーク44P1〜44P4の4つのピークが現れている。基準時(=0s)に現れている第1相関ピーク44P1は、C=Cであるので「1」となる。以下、時間t1、t2、t3を置いて、それぞれ第2、第3、第4相関ピーク44P2、44P3、44P4が現れている。この3つのピークは、圧縮波形データ42上における、テンプレート波形43と類似度が高いスライド位置で発生する。これら第1〜第4相関ピーク44P1〜44P4間の間隔、すなわち時間t1、t2、t3は約2秒であり、周期性を確認することができる。
【0037】
上記のように相関検出部273は、テンプレート波形43を用いて圧縮波形データ42の自己相関を調べた後、相関ピークを抽出し、これら相関ピークの発生間隔を求める。この発生間隔は、ガスメータ1の動作音の発生間隔となる。このような手法によれば、ガスメータ1の動作音がガス流量によって変化したとしても、また雑音をマイクロフォン21が拾っていたとしても、特に問題なく的確に動作音を抽出することができる。
【0038】
ここで、ガスの使用状況は急激に変化しないとはいえ、時間の経過に伴い変化する。すなわち、ガスメータ1の動作音の発生間隔が変化する。図7からも明らかな通り、基準時から時間的に最も離れている第4相関ピーク44P4は、第2、第3相関ピーク44P2、44P3に比べて相関ピーク値が低いことが判る。従って、テンプレート波形43は、所定の期間毎に、圧縮波形データ42に基づいて逐次更新される。このテンプレート波形43の更新は、例えば一定の時間毎(例えば5〜10秒毎)に更新する、一定の周期毎(例えば3〜5周期毎)に更新する、或いは、相関ピーク値が所定の閾値を下回った時に更新する手法などを採用することができる。
【0039】
流量算出部28は、相関検出部273が検出する相関ピークの周期が、ガスメータ1の動作音の発生周期であると推定して、ガスメータ1(屋内ガス管路102)を流れるガスの流量を算出する。具体的には流量算出部28は、ガスメータ1の本体部11における一の計量単位、つまり動作音が1回発生する当たりのガスの量に、相関ピークの周期として求められる動作音の発生回数を乗じることで、ガスの流量を算出する。
【0040】
インターフェイス回路26は、外部機器30と流量計測装置2とを通信可能に接続するために設けられている。外部機器30は、ガスを燃料とする機器であって、単位時間当たりのガスの消費量等をその制御要素の一つとして用いる機器であり、例えば燃料電池装置である。
【0041】
続いて、流量計測装置2の動作を、図8に示すフローチャートに基づいて説明する。演算処理装置25は、音波検出回路24から所定のタイミングで、マイクロフォン21が検出した音波信号の原波形データ41(図3参照)を、所定期間分だけ取得する(ステップS1)。そして、波形圧縮部271により、平均処理が施されて原波形データ41が圧縮され、圧縮波形データ42(図4参照)が作成される(ステップS2)。
【0042】
その後、テンプレート設定部272により、テンプレート波形が有効に設定されているか否かが確認される(ステップS3)。すなわち、テンプレート波形の設定の有無、並びに、設定されているテンプレート波形が期限切れでないか否かが確認される。テンプレート波形が有効でない場合(ステップS3でNO)、テンプレート設定部272は、圧縮波形データ42上において基準時を設定し、その基準時に基づいたある時間幅の中に存在する波形データをテンプレート波形43(図5参照)に設定する(ステップS4)。一方、テンプレート波形が有効である場合は(ステップS3でYES)、このステップS4はスキップされ、既設定済みのテンプレート波形が活用される。
【0043】
続いて、相関検出部273により、上記のテンプレート波形43を用いて、圧縮波形データ42の自己相関を求める処理が実行される(ステップS5)。この処理により、相関ピークが求められ、さらには相関ピーク間の時間を求めることで、相関ピークの発生周期が求められる(ステップS6)。この発生周期が、ガスメータ1の動作音の発生間隔に相当する。
【0044】
その後、流量算出部28により、ステップS6で求めた相関ピークの発生周期が、ガスの流量に換算され、単位時間当たりのガス流量が求められる(ステップS7)。そして、このガス流量データは、インターフェイス回路26を介して外部機器30へ出力されるものである(ステップS8)。その後、処理を継続するか否かが確認され(ステップS9)、継続する場合は(ステップS9でYES)、ステップS1に戻って処理が繰り返される。一方、継続されない場合は(ステップS9でNO)、処理を終える。
【0045】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば次のような変形実施形態を取ることができる。
【0046】
(1)上記実施形態では、音又は振動を発生する機構を備える流体流通路の一例として都市ガスのガスメータ1を例示した。これに代えて、空気や酸素等の他の気体、水やオイル等の液体を計測する計量装置であって、一定量の流体が通過する度に音又は振動を発生する計量装置にも、本発明を適用することができる。また、一定量の流体が通過する度に音又は振動を発生する装置を含んでいれば、計量装置以外の装置であっても良い。
【0047】
(2)上記実施形態では、検出手段としてマイクロフォン21を例示し、マイクロフォン21が検出する音波信号を用いてガス流量を求める例を示した。これに代えて、振動センサを検出手段として用い、ガスメータ1の本体部11に密着させて、本体部11内で生じる動作に起因する振動を検出するようにしても良い。
【0048】
(3)上記実施形態では、流量計測装置2が求めたガス流量データを、インターフェイス回路26を介して外部機器30へ出力させる例を示した。これに代えて、外部機器30内に流量計測装置2の機能を内蔵させる構成としても良い。
【符号の説明】
【0049】
1 ガスメータ(乾式流量計)
11 本体部
12 表示部
2 流量計測装置
21 マイクロフォン(検出手段)
22 装置本体
23 増幅回路
24 音波検出回路
25 演算処理装置
26 インターフェイス回路
27 周期検出部(周期検出手段)
271 波形圧縮部
272 テンプレート設定部
273 相関検出部
28 流量算出部(流量算出手段)
30 外部機器



【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定量の流体が通過する度に音又は振動を発生する機構を備える流体流通路の外部に付設される流量計測装置であって、
前記機構が発生する音又は振動を検出し、その音又は振動を波形データとして出力する検出手段と、
前記波形データの自己相関を算出し、当該波形データに内在する周期性を求める周期検出手段と、
前記周期性から前記音又は振動の発生周期を推定して、前記流体流通路内における前記流体の流量を算出する流量算出手段と、
を備えることを特徴とする流量計測装置。
【請求項2】
前記流体が気体であり、
前記音又は振動を発生する機構が、前記気体の積算流量を検出する乾式流量計であることを特徴とする請求項1に記載の流量計測装置。
【請求項3】
前記検出手段は、前記音又は振動を検出可能な第1のサンプリング周期で生成された第1波形データを出力し、
前記周期検出手段は、前記第1波形データを所定の時間単位で区画し、その区画毎に平均値を求めることで、サンプリング周期が前記第1のサンプリング周期よりも低い第2波形データを生成する波形圧縮部を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の流量計測装置。
【請求項4】
前記周期検出手段は、
前記第2波形データ上において所定の時間幅のテンプレート波形を設定するテンプレート設定部と、
前記テンプレート波形を基準時間単位で前記第2波形データ上を順次シフトさせ、前記テンプレート波形との相関を求めると共に相関ピークを検出する相関検出部と、
を備えることを特徴とする請求項3に記載の流量計測装置。
【請求項5】
前記テンプレート設定部は、前記テンプレート波形を、所定の期間毎に最新の第2波形データに基づいて更新することを特徴とする請求項4に記載の流量計測装置。
【請求項6】
一定量の流体が通過する度に音又は振動を発生する機構を備える流体流通路の外部において、前記機構が発生する音又は振動を検出するステップと、
前記検出された音又は振動から波形データを生成するステップと、
前記波形データの自己相関を算出し、当該波形データに内在する周期性を求めるステップと、
前記周期性から前記音又は振動の発生周期を推定するステップと、
前記機構において一の音又は振動が発生するのに要する前記流体の単位流量と、前記推定された発生周期とから、前記流体流通路内における前記流体の流量を求めるステップと、を含むことを特徴とする流量計測方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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