流量計
【課題】ガス漏れ等の微少流量からガスの通常使用状態における大流量までを簡易に、しかも精度良く検出することのできる流量計を提供する。
【解決手段】並列に設けられ、主流路を通流する流体を分流して通流すると共に上記主流路を通流する流体の流量に応じて分流比が受動的に変化する第1および第2の流路と、これらの第1および第2の流路の少なくとも一方に設けられた流量センサとを備える。例えば上記第1および第2の流路は、流路断面積の異なる流路として、或いはメッシュ体の一部に設けたメッシュ欠損部により形成される。或いは上記第1および第2の流路は、その一方にパドル機構を組み込むことにより実現される。
【解決手段】並列に設けられ、主流路を通流する流体を分流して通流すると共に上記主流路を通流する流体の流量に応じて分流比が受動的に変化する第1および第2の流路と、これらの第1および第2の流路の少なくとも一方に設けられた流量センサとを備える。例えば上記第1および第2の流路は、流路断面積の異なる流路として、或いはメッシュ体の一部に設けたメッシュ欠損部により形成される。或いは上記第1および第2の流路は、その一方にパドル機構を組み込むことにより実現される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路構造を工夫することで微少流量に対する流量センサの検出感度を高くすると共に、大流量に対する検出感度を抑えることで上記流量センサによる計測ダイナミックレンジを広くした流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
熱式の流量センサを用いた流量計において、その検出感度を高めて微少流量を検出するべく、流量センサを壁面に取り付けた流路の内部を、その流体通流方向に沿って複数の平行な微小流路に区画することで上記壁面位置での流速を高めることや、その流路の途中にノズル部を設けることで該ノズル部での流速を高めることが提唱されている(例えば特許文献1,2を参照)。
【特許文献1】特開平4−69521号公報
【特許文献2】特開平11−173896号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら上述したようにして微少流量に対する検出感度を高くした場合、これに伴って大流量に対する検出感度も高くなるので、大流量の通流時には流量センサの出力が飽和し、その計測ができなくなると言う問題がある。これ故、例えば最大計測流量が30,000[L/h]程度のガスメータ等において、5[L/h]程度の微少な漏れ流量までを精度良く検出することが困難であった。
【0004】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、その目的は、ガス漏れ等の微少流量からガスの通常使用状態における大流量までを簡易に、しかも精度良く検出することのできる流量計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した目的を達成するべく本発明に係る流量計は、その流路構造を工夫することによって流量センサの出力を飽和させることなく、例えば5[L/h]程度の微少流量から30,000[L/h]程度の大流量までを計測し得るようにしたもので、基本的には
<a> 並列に設けられ、主流路を通流する流体を分流して通流すると共に上記主流路を通流する流体の流量に応じて分流比が受動的に変化する第1および第2の流路と、
<b> これらの第1および第2の流路の少なくとも一方に設けた流量センサと
を具備したことを特徴としている。尚、「分流比が変化する」とは、分流比を変化させる為に外部から電流等のエネルギの供給を必要としないことを意味する。
【0006】
ちなみに前記第1および第2の流路は、前記主流路の流路断面を該主流路の流体通流方向に沿って空間的に区画して形成されるものであって、例えば前記第1および第2の流路の少なくとも一方は、前記主流路を通流する流体の流量に応じて上記流体に対する流路抵抗を受動的に変化させて、前記第1および第2の流路間での分流比を変化させるように構成される。
【0007】
具体的には前記第1および第2の流路を、例えば前記主流路の流体通流方向に沿って設けられた隔壁体により該主流路の流路断面を区画して形成し、特に前記第1の流路を前記第2の流路に比較して微小な流路断面を有する流路空間として形成することが好ましい。特に前記第1の流路に、流体の流れに対する所定長の助走区間を確保し、この助走区間の下流側にその流路断面積を絞り込んだ幅狭部を設け、この幅狭部に前記流量センサを組み込むことが好ましい。
【0008】
或いは前記第1の流路は、前記主流路の流路断面の全体を覆って設けられるメッシュ体の一部に、例えば前記主流路の流路断面に比較して微小な領域部として形成したメッシュ欠損部の下流側に形成される層流領域からなる。そして前記第2の流路は、前記層流領域との間で前記主流路の流路断面を等価的に区画して形成される、前記メッシュ体の下流側における前記層流領域以外の領域として実現される。ちなみに上記メッシュ欠損部を備えたメッシュ体を、流体の通流方向に前記メッシュ欠損部の位置を揃えて複数枚設けるようにしても良い。
【0009】
尚、前記第1および第2の流路を、前記主流路の流体通流方向に沿って設けられた隔壁体により該主流路の流路断面を区画して形成し、流体の流速に応じて上記流体に対する流路抵抗が変化するパドル機構を前記第2の流路に設けることで、上記パドル機構の開度によって変化する該第2の流路の流路抵抗に応じて前記第1および第2の流路間での分流比が可変するように構成することも可能である。
【0010】
また好ましくは前記第2の流路に、流体の流れに沿って該流路を複数の平行な微細流路に区画する格子状の仕切板を設けるようにしても良い。更には前記格子状の仕切板を所定の長さの格子体を形成したものとして実現し、前記第2の流路に上記格子体を前記流体の通流方向に複数個直列に配列すると共に、これらの格子体の間にそれぞれメッシュ体を介在させることも好ましい。また前記第2の流路に第2の流量センサを設け、この第2の流量センサの併用して流量計測を行うことで大流量に対する計測精度の低下を補償することも有用である。
【発明の効果】
【0011】
上述した基本構成の流量計によれば、並列に設けられた第1の流路と第2の流路との分流比が主流路を通流する流体の流量に応じて受動的に変化する。従って、例えば主流路を通流する流体の流量が少ないときには第1の流路に対する分流比が高く、上記主流路を通流する流体の流量が多くなるに従って上記第1の流路に対する分流比が低くなる場合には、上記第1の流路に流量センサを設けておくことで、該流量センサにて微少流量から大流量までを検出することが可能となる。
【0012】
即ち、上述した場合、主流路を通流する流量が微少である場合には、上記流体の殆どを第1の流路に通流させることでその微少流量を確実に検出させ、大流量の場合にはその流量の大部分を第2の流路に通流させ、第1の流路を通流する流体の流量を抑えることができる。従って主流路を通流する流体の流量が増大するに従って、第1の流路を通流する流量を前述した分流比に応じて抑制することができるので、流量センサを飽和させることなしに微少流量から大流量までを一括して検出することが可能となる。
【0013】
また前記第1の流路に、前記流体の流れに対する助走区間を確保した後、その流路断面積を絞り込む幅狭部を設けておき、この幅狭部に前記流量センサを組み込むようにすれば、第1の流路に導かれた微少流量の流速を上記幅狭部において早めることができる。この結果、流量センサによる検出感度を実質的に高めることができ、微少流量を容易に検出することが可能となる。特に上記幅狭部は大流量に対する流路抵抗として作用するので、第1および第2の流路間の分流比を受動的に変化させる上で極めて有効に作用する。また前述したメッシュ体や格子体、更にはパドル機構は小流量に対する流路抵抗として作用するので、これらもまた第1および第2の流路間の分流比を受動的に変化させる上で極めて有効に作用する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明に係る流量計について説明する。
この流量計は、ガスメータとして好適なものであって、例えば通流ガスの質量流量を検出する熱式流量センサを用いて構成される。特に図示しないが上記熱式流量センサは、例えばシリコン基板やガラス基板上に形成した肉薄のダイヤフラム上に、発熱抵抗素子を間にして流体の通流方向に一対の感温抵抗素子を設けたものからなり、そのセンサ面に沿って通流する流体による該センサ面近傍の温度分布の変化から上記流体の流量(流速)を検出するように構成される。
【0015】
図1は本発明に係る流量計の基本構成を示す図で、流体(例えばガス)を通流する主流路1の途中に上記流体を分流して通流する第1および第2の流路2,3を並列に設けて構成される。特に上記第1および第2の流路2,3は、主流路1を通流する流体の流量(流速)Vに応じて、上記第1の流路2の流路抵抗R1と、第2の流路3の流路抵抗R2とを受動的に変化させ、これによって第1および第2の流路2,3間の分流比を変化させるものからなり、等価的には図2に示すような抵抗回路をなす。即ち、第1および第2の流路2,3は、例えば主流路1を通流する流体の流量(流速)Vに応じてその流路抵抗R1,R2が図3に示すように受動的に変化するものであって、上記流路抵抗R1,R2に応じて流体を流量I1,I2に分流してそれぞれ通流し、その分流比[I1/(I1+I2)]が図4に示すように前記流体の流量(流速)Vにより変化する流路構造をなす。
【0016】
尚、第1および第2の流路2,3の一方だけが、主流路1を通流する流体の流量(流速)Vに応じてその流路抵抗R1、または流路抵抗R2を受動的に変化させるものであっても良い。この場合には、流路抵抗R1またはR2の変化に伴って前記第1および第2の流路2,3間の分流比[I1/(I1+I2)]が変化することになる。そしてこのような流路構造を有する流量計の、上述した第1および第2の流路2,3の少なくとも一方に前述した熱式流量センサ4が組み込まれる。
【0017】
さて前述した第1および第2の流路2,3は、例えば図5(a),(b)に示すように主流路1を形成する配管(大径パイプ)5の内部に、その流体通流方向に沿って設けた隔壁体としての小径パイプ6により、上記配管5の内部空間を流路断面方向に区画することにより形成される。尚、図5(a)は流路の縦断面構造を示しており、図5(b)は上記流路の横断面構造を示している。
【0018】
そしてこの場合には、前記小径パイプ6により配管5の内部空間を区画して形成される第1および第2の流路2,3の流路断面積の違いや、配管5の内部における層流の速度分布の違い、更には小径パイプ6の壁面のよる流速勾配の変化等により、第1および第2の流路2,3の流路抵抗R1,R2が、該配管5を通流する流体の流量(流速)Vにより異なる変化を呈する。
【0019】
具体的には配管5を通流する流体の流量(流速)Vが少ない場合には、小径パイプ6の内部空間として形成される流路断面積の微小な第1の流路2の流路抵抗R1は、前記小径パイプ6の外部空間として形成される流路断面積の大きい第2の流路3の流路抵抗R2よりも若干大きいだけである。但し、小径パイプ6を配管5の中心部に設けた場合、もともと配管5の中心部における流速がその周辺部よりも若干速い速度分布を呈するので、前記第1および第2の流路2,3にそれぞれ流れる流体の速度は略等しく、実質的には第1および第2の流路2,3の流路抵抗R1,R2は略同程度であると看做し得る。
【0020】
しかし上記流量(流速)Vが増加すると、これに伴って小径パイプ6の壁面における流体との接触抵抗に起因する速度勾配が増大し、流路断面積の微小な上記第1の流路2の流路抵抗R1が増大する。即ち、流量に応じて流路抵抗R1が受動的に変化する。この結果、配管5を通流する流体の流量(流速)Vが増大するに従って第1の流路2に流体が流れ難くなり、第2の流路3との間の分流比が変化することになる。
【0021】
従って第1の流路2に流量センサ4を設けておけば、配管5を通流する流体の流量(流速)Vが微少である場合には、その流量が第1および第2の流路2,3の流路断面積に応じて分流されるだけなので、上記流量センサ4にて上記微少流量を確実に検出することができる。また配管5を通流する流体の流量(流速)Vが増大した場合には、第1の流路2の流路抵抗R1の増大に伴って第1および第2の流路2,3間における分流比が変化し、第1の流路2を通流する流体の流量の増大が抑制されるので、前記流量センサ4を飽和させることなく、その流量を検出することが可能となる。
【0022】
この際、第2の流路3に、大流量を高精度に検出し得る第2の流量センサ4aを設けておけば、第1の流路2に設けた流量センサ4における大流量の検出精度の低下を補うことができる。但し、上記第2の流量センサ4aによれば微少流量を高精度に検出することができないので、微少流量の検出は前述したように第1の流路2に設けた流量センサ4に委ねることになる。
【0023】
尚、図6(a),(b)にそれぞれ示すように小径パイプ6の途中に、その管径(流路断面積)を絞り込んだ幅狭部(ノズル部)6aを設けておけば、配管5を通流する流体の流量(流速)Vの増大に伴って第1の流路2の流路抵抗R1を更に大きく変化させることができる。即ち、小径パイプ6の途中に幅狭部(ノズル部)6aが存在すると、該小径パイプ6に入り込んだ流体は該小径パイプ6内を圧縮されながら通流し、その流速が高められた状態で前記幅狭部6aを通過することになる。この際、配管5を通流する流体の流量(流速)Vが少ない場合には、小径パイプ6内における流体の圧縮の度合いは少なく、上記流量(流速)Vが増加するに従って前記小径パイプ6内における流体の圧縮の度合い大きくなる。このことは少流量時には流路断面積の小さい第1の流路2の流路抵抗R1が小さく、その流量が増加するに従って上記第1の流路2の流路抵抗R1が次第に大きくなることを意味する。これに対して流路断面積の大きい第2の流路3の流路抵抗R2は、その流量(流速)Vの変化に拘わらず殆ど変化することはない。
【0024】
従って上述した流路構造の第1の流路2に流量センサ4を設けておくことにより、流量に応じて第1および第2の流路2,3間の分流比を変化させ、大流量時における第1の流路2を通流する流量を抑えることができるので、流量センサ4を飽和させることなしに少流量から大流量までを確実に検出することが可能となる。特に上述した幅狭部6aに流量センサ4を設けておけば、当該幅狭部6aにて第1の流路2を通流する流体の速度を速くすることができるので、微少な流量であってもこれを高感度に検出することが可能となる。
【0025】
また従来技術のように流路の長手方向に沿って異なる流量域を設けることはせずに、前記流量センサ4と前記第2の流量センサ4aとは流路周面の同一周方向に設けられている。この為、従来技術では流量域毎に必要な流路長さが、大流量域と小流量域それぞれに対してその長手方向に沿って必要であったが、本願発明では、異なる流量域を設けるに際し、各流量センサを流路周面の同一周方向に設けたので、流量域に必要な流路長さが一つで済む。これ故、従来技術に比べて流路長さが長大にならないから、流量計を小型化し得る構成とすることができた。
【0026】
ところで前記第1および第2の流路2,3を、例えば図7(a),(b)に示すように主流路1を形成する配管5の内部に、その流路断面を覆うようにして設けられるメッシュ体7により、該メッシュ体7の下流側の空間を前記配管5の流路断面方向に区画して形成することもできる。尚、図7(a)は流路の縦断面構造を示しており、図7(b)は上記流路の横断面構造を示している。
【0027】
上記メッシュ体7は、その一部にメッシュ欠損部(切り欠き)7aを形成したものであって、上記メッシュ欠損部7aが前記配管5の流路断面の一部に位置付けられるようにして前記配管5の流体通流方向に直交させて設けられる。このようにして配管5に組み込まれるメッシュ体7は、前記メッシュ欠損部7aをその流路抵抗R1が零[0]の領域として作用させ、該メッシュ体7自体は配管5を通流する流体の流量(流速)Vに応じてその流路抵抗R2が変化する受動体として機能する。
【0028】
このようなメッシュ体7により該メッシュ体7の下流側の領域に形成される流体の流れが異なる部位として前記第1および第2の流路2,3が、配管5の内部を等価的に区画して形成される。具体的には第1の流路2は、前記メッシュ欠損部7aを通過して該メッシュ欠損部7aの下流側に形成される層流領域として実現される。そして前記第2の流路3は前記メッシュ体7の下流側における前記層流領域以外の領域、つまりメッシュ体7を通過した流体の通流領域として実現される。
【0029】
このようなメッシュ体7を備えた流路構造によれば、該配管5を通流する流体がメッシュ欠損部7aを通過するか、或いはメッシュ体7を通過するかによって異なる流路抵抗を受けることになる。換言すれば配管5を通流する流体の流量(流速)Vが微少である場合には、メッシュ体7での流路抵抗(圧損)が大きいので上記流体の殆どが流路抵抗のないメッシュ欠損部7aを通って流れる。従ってメッシュ欠損部7aの下流側である第1の流路2の形成領域を通流する流量が多くなり、これに対してメッシュ体7の下流側である第2の流路3の形成領域を通流する流量は殆どなくなる。しかし配管5を通流する流体の流量(流速)Vが増大すると、前記メッシュ体7での流路抵抗(圧損)に打ち勝って該メッシュ体7を通して流れる流体の量が次第に増大し、メッシュ体7およびメッシュ欠損部7aをそれぞれ通過する流体の分流比、つまり第1および第2の流路2,3に流れ込む流体の分流比が変化する。
【0030】
従って第1の流路2に流量センサ4を設けておけば、配管5を通流する流体の流量(流速)Vが微少である場合には、その微少な流量の殆どが第1の流路2(メッシュ欠損部7a)に流れるので、上記流量センサ4にて上記微少流量を確実に検出することができる。また配管5を通流する流体の流量(流速)Vが増大した場合には、上記流体がメッシュ体7を通して第2の流路3に流れるので、その分、前記第1の流路2(メッシュ欠損部7a)に流れる流量が抑えられる。そして第1の流路2の流路抵抗R1の増大に伴って第1および第2の流路2,3間の分流比が変化し、第1の流路2を通流する流体の流量の増大が抑制されるので、前述した実施形態と同様に前記流量センサ4を飽和させることなく、その流量を検出することが可能となる。
【0031】
この際、第2の流路3に、大流量を高精度に検出し得る第2の流量センサ4aを設けておけば、第1の流路2に設けた流量センサ4における大流量の検出精度の低下を補うことができる。但し、流量(流速)Vが微小な場合、第2の流路3には殆ど流体が流れることがないことと相俟って上記第2の流量センサ4aによる上記微少流量の検出は殆ど不可能である。従って微少流量の検出は第1の流路2(メッシュ欠損部7aの下流)に設けた流量センサ4に委ねることになる。
【0032】
ところで前述した第1および第2の流路2,3を、例えば図8(a),(b)に示すように実現することもできる。尚、図8(a)は流路の縦断面構造を示しており、図8(b)は上記流路の横断面構造を示している。この流路構造は、主流路1を構成する配管5の内部に、その流体通流方向に沿って板状の隔壁体8を設けて上記主流路1の内部空間を第1および第2の流路2,3に区画すると共に、更に第2の空間3をその流体通流方向に仕切るようにパドル機構9を設けて構成される。
【0033】
このパドル機構9は、例えばヒンジを介して傾倒自在に支持されて第2の流路3を閉塞するように設けられた弁体9aを備えたものであって、第2の流路3を通流する流体の圧力を受けて傾倒して該第2の流路3に隙間を形成し、この隙間を通して流体を通流するように機能する流路抵抗体からなる。特にこのパドル機構9は、第2の流路3を通流する流体の流量(流速)Vに応じて上記板体9aにより形成される隙間の大きさ(開度)を変化させて、その流路抵抗を受動的に変化させる可変型の抵抗素子として機能を呈する。
【0034】
このようなパドル機構9を備えた流路構造を有する流量計によれば、主流路1を通流する流体の流量が微少である場合には、第2の流路3に設けられたパドル機構9が該第2の流路3を閉塞するので、上記微少流量の流体は専ら第1の流路2を通流する。そして主流路1を通流する流体の流量が増大するに従って、その流体圧力を受けて前記パドル機構9の弁体9aが開いてその流路抵抗が低下するので、上述した流体は第1および第2の流路2,3に分流して通流することになる。
【0035】
従って第1の流路2に流量センサ4を設けておけば、微少流量時にはその流体の殆どが第1の流路2を通流するので上記微少流量を確実に検出することが可能となる。また流量が増大したときには、その流量増大に伴ってパドル機構9の弁体9aが開き、これによって流体が第1および第2の流路2,3に分流されるので、第1の流路2を通流する流体の流量の増大が抑制される。この結果、流量センサ4の飽和を抑えながらその流量検出を行うことが可能となるので、上述した微少流量から大流量までを一貫して検出することが可能となる。
【0036】
尚、大流量の通流時には、上述したように第1の流路2を通流する流量が抑制されるので、その分、流量センサ4による流量検出精度が低下する。従って第2の流路3に、大流量を高精度に検出し得る第2の流量センサ4aを設けておけば、第1の流路2に設けた流量センサ4における大流量の検出精度の低下を補うことができる。但し、流量(流速)Vが微少な場合には、第2の流路3には殆ど流体が流れることがないので、該第2の流量センサ4aによる上記微少流量の検出は殆ど不可能である。従って微少流量の検出は第1の流路2に設けた流量センサ4に委ねることになる。
【0037】
以上、図5(a),(b)ないし図8(a),(b)をそれぞれ参照して流体の流量に応じて分流比が変化する第1および第2の流路2,3の構成例について説明したように、本発明に係る流量計は、微少流量の通流時と大流量の通流時とでその分流比が受動的に変化する第1および第2の流路2,3の少なくとも一方に流量センサ4を組み込んで構成される。特に微少流量時に分流比が高くなり、大流量時に分流比が低くなる側の流路に流量センサ4を組み込むことで、該流量センサ4にて微少流量から大流量までを一貫して検出し得るようにしている。
【0038】
具体的には微少流量の殆どを流量センサ4が設けられた流路(前述した例では第1の流路2)に導くことで実質的にその流速(見掛け上の流量)を高くし、これによって微少流量を確実に検出し得るようにしている。一方、大流量に対しては上記流量センサ4が設けられた流路(第1の流路2)に導かれる流量を抑えることでその流速の増大を抑え、これによって前記流量センサ4を飽和させることなくその流量検出を行わせるものとなっている。従って本発明に係る流量計によれば、例えば配管5のひび割れや傷に起因するガス漏れによる5[L/h]程度の微少流量から、通常のガス使用状態おける最大30,000[L/h]程度の大流量までを、1つの流量センサ4にて一貫して計測することが可能となり、その実用的利点が多大である。また他方の流路(前述した例では第2の流路3)に、通常のガス使用状態おける流量を高精度に検出し得る大流量用の第2の流量センサ4aを設けておけば、前述した流量センサ4の検出精度が大流量時に粗くなることを補うことが可能となるので、実用上、問題なくガス流量の計測を行うことが可能となる。
【0039】
また従来のように大流量域と小流量域とを長手方向に沿って個別に設けることなく、前記流量センサ4と前記第2の流量センサ4aとを流路周面の同一周方向に設け、定められた流路長において大流量域と小流量域とをそれぞれ形成している。従って大流量計測領域と小流量計測領域とをそれぞれ形成するに必要な流路長さを共通化することができる。故に流量計を小型化できる構成とすることができる。
【0040】
次に本発明に係る流量計の具体的な構成例について説明する。
図9は本発明の第1の実施形態に係る流量計の流路構造を、その流体通流方向に分解して模式的に示す図であり、図10はその要部の断面構造を模式的に示す図である。この流量計は、矩形状の流路断面を有する配管11の内部空間を、その流路断面方向に複数の微小な流路に区画する格子体12を主体として構成される。上記格子体12は、配管11の流体通流方向に沿って平行に設けられた複数の板状の隔壁体を格子状に組み合わせて構成される。特にこの実施形態で用いられる格子体12は、例えば後述するように流量センサが組み込まれるセンサ格子体12aと、このセンサ格子体12aの上流側に設けられる第1および第2の前格子体12b,12c、および上記センサ格子体12aの下流側に設けられる第1および第2の後格子体12d,12eとからなる。
【0041】
ちなみにこれらの格子体12(12a,12b〜12e)は、例えば略正方形の流路断面形状をなす複数(多数)の微小流路13をマトリックス状に配列形成すると共に、略長方形の流路断面形状をなし、上記微小流路13の略2倍の流路断面積をなす2つの微小流路14を形成したものからなる。これらの2つの微小流路14は、例えば格子体12の辺部において、隣接する2つの微小流路13を区画する板状の隔壁体を取り除くことによって形成される。そしてこれらの格子体12(12a,12b〜12e)は、図9に示すように各格子体12(12a,12b〜12e)の間にメッシュ体(金網)15(15a,15b,15c,15d)をそれぞれ挟み込んで流体の通流方向に重ね合わせられて、流体の通流方向に連なる複数の流路を形成する。尚、上記各メッシュ体(金網)15は、専ら、前述した格子体12を通して通流する流体を整流する役割を担う。
【0042】
ちなみに格子体12(12a,12b〜12e)により区画された上記複数(多数)の微小流路13は、これらのまとまりとして捉えることで流路断面積の大きな流路を形成していると看做し得る。またこれらの微小流路13,14は、それぞれその流路断面積の違いにより流体の流れに対して異なる流路抵抗を示す。従って、例えば微小流路13のまとまりが前述した第2の流路3に相当し、前記2つの微小流路14はそれぞれ前述した第1の流路2に相当すると看做し得る。
【0043】
尚、センサ格子体12aに形成された2つの微小流路14の一方には、図10に示すようにその流路の略中間位置にノズル14aが設けられ、その流路断面積が絞り込まれている。このノズル14aが設けられた微少流路14は微少流量検出用(低速用)として用いられ、上記ノズル14aにて流路断面積を絞り込んだ位置には低速用流量センサ16aが組み込まれる。また他方の微少流路14は大流量検出用(高速用)として用いられ、その略中間位置には高速用流量センサ16bが組み込まれる。これらの2つの微小流路14は、前述した微小流路13のまとまりから切り離された流路として看做すことで、前述した流量に応じて分流比が変化する第1および第2の流路3として捉えることもできる。
【0044】
このような格子体12を用いて流路を区画した流路構造を有する流量計によれば、第2の流路3を形成する複数の微小流路13の各流路断面積が、流量センサ16a,16bが組み込まれる微小流路14に比較して狭く、その流路抵抗が大きいので、配管11を通流する流体が微少流量である場合には、その流体は主として流路抵抗の小さい微小流路14に流れ込む。そして配管11を通流する流体の流量が増大するに従って前記微小流路13の流路抵抗に打ち勝って該微小流路13にも流体が流れ込むようになる。
【0045】
この結果、流体流量の増大に伴って前記微小流路13に流れ込む流体流量と、微小流路14に流れ込む流体流量との分流比が変化する。そして流量センサ16a,16bが設けられた微小流路14を通流する流体の流量は、その流量の増大に伴って次第に抑制されることになる。従って微小流路14に設けられた流量センサ16a,16bの微少流量に対する検出感度を高くし、また大流量の通流時には微小流路14に分流されて流れ込む流量を抑制することができるので、上記流量センサ16a,16bの飽和を抑えながら流量検出を行わせることが可能となる。
【0046】
また上記流路構造を有する流量計においては、前述したように低速用流量センサ16aが組み込まれる一方の微小流路14の略中央位置には、その流路断面積を絞り込んだノズル部14aが設けられている。そしてこのノズル部14aが設けられたセンサ格子体12aの上流側に設けられた前記第1および第2の前格子体12b,12cは、微小流路14に流れ込む流体に対する助走区間を形成しており、この助走区間に流れ込んだ流体の全てを前記ノズル部14aに送り込むものとなっている。この結果、微小流路14に流れ込んだ流体は、前記ノズル部14aによる流路断面積の絞り込みによってその流速が高められので、該微小流路14のノズル部14aに設けられた低速用流量センサ16aは、より高精度に微少流量を検出することが可能となる。特に上記低速用流量センサ16aは、ノズル部14aを形成していない他方の微小流路14に設けられた高速用流量センサ16bよりも高感度に微少流量を検出することが可能となる。
【0047】
図11は、前述したように格子体12を設けてその流路を複数の微小流路13,14に区画した流路構造おける流量検出感度の向上を確認した実験データであり、格子体12を設けない場合と、格子体12を設けた場合における流量センサ出力の変化を対比して示している。この実験データから、格子体12を設けない場合よりも格子体12を設けて流路を微小流路13,14に区画した方が流量センサ16a,16bによる流量検出感度が向上することが裏付けられた。また特に図示しないが、格子体12の長さを長くした方が、検出感度の向上を図り得ることも明らかとなった。これは格子体12の長さ(流路長)が長くなる程、流量に対する前述した複数の微小流路13,14間の流路抵抗の変化の差が大きくなる為であると考えられる。
【0048】
また図12は、格子体12によって形成される複数の微小流路13,14の流路断面積(間口幅)の比率を変化させたときの、微少流量に対する流量センサ出力の変化を示している。尚、図11において基準とは、流量センサ16が設けられる微小流路14の間口幅(流路断面積)と、その他の微小流路13の間口幅(流路断面積)とを等しくした場合を示している。そして4倍および8倍として示すパラメータは、それぞれ流量センサ16が設けられる微小流路14の間口幅(流路断面積)を微小流路13の間口幅(流路断面積)の4倍および8倍に設定した場合を示している。
【0049】
この図12に示す実験データから、流量センサ16が設けられる微小流路14の間口幅(流路断面積)を、その他の微小流路13の間口幅(流路断面積)よりも大きくすることで、微少流量域における流体が上記微小流路13に流れ込み難くなり、その分、上記流量センサ16が設けられる微小流路14に多くの流量が流れ込んで、流量センサ16による微少流量の検出感度が高まることが裏付けられる。
【0050】
また図13は、前述したメッシュ体(金網)15の有無による効果を確認したものであり、微少流量から大流量に亘るセンサ出力の変化を対比して示している。尚、メッシュ体(金網)15を設けない場合とは、前述した図9に示した流路構造からメッシュ体(金網)15を省略した構造、つまり格子体12だけで流路構造を構成した場合を示している。
この図13に示す特性から明らかなように、メッシュ体(金網)15を設けることによって微小流路13,14をそれぞれ通流する流体に対する整流効果が大きくなり、安定した流量検出が可能となることのみならず、瞬時の流量計測精度も高め得ることが判る。また上記図13に示す実験データから、微少流量域での流量の変化に対するセンサ出力の変化が急峻であり、該微少流量域での前記流量センサ16による検出感度が高いことが判る。また同時に流量が増大するに従って流量の変化に対するセンサ出力の変化がブロードになっていることから、大流量域での前記流量センサ16による検出感度が徐々に低く抑えられていることが判る。
【0051】
この大流量域での前記流量センサ16の検出感度の抑制は、前述したノズル部14aでの圧力損失が、その流速(流量)の2乗に比例して増大し、この結果、ノズル部14a(微少流路14)を通過する流量が制限されて微少流路13に流れ込む流量が増える為である。そして上記流路構造を採用した流量計によれば、流量センサ16を飽和させることなく、微少流量から大流量までを一貫して計測可能であることが裏付けられる。
【0052】
また図14は、前述した2つの微小流路14にそれぞれ設けられた低速用流量センサ16aおよび高速用流量センサ16bの流量に対するセンサ出力の変化を示している。この図14に示すデータから明らかなように、ノズル部14aを設けて流路断面積を絞り込んだ微小流路14に設けた低速用流量センサ16aの出力は、流量が増加するに従ってその変化の割合が抑制されており、ブロードな変化を呈する。この現象は、前記ノズル部14aでの圧損に伴って該ノズル部14aを通る流体の流量が抑制される為である。これに対して高速用流量センサ16bが設けられた側の微小流路14にはノズル部14aが設けられていないので、流量の増大に伴うセンサ出力の変化割合の抑制は、該微小流路14と前述した微小流路13との間の分流比の変化に依存した分だけとなっている。
【0053】
この実験結果から微小流路13との間で分流比が変化する微小流路14での流量を、その微小流路14にノズル部14aを設けるか否かにより更に変化させることができ、ノズル部14aを設けることにより上記分流比の変化の割合を更に大きくして微少流量域での検出感度をより高めうることが判る。従って前述した2つの微小流路14に低速用流量センサ16aと高速用流量センサ16bとをそれぞれ設けておけば、互いに異なる検出特性にて微少流量域から大流量域までをそれぞれ一貫して計測することが可能となり、これらの各流量センサ16a,16bでの低流量域側および高流量域側での計測精度の不足を互いに補うことが可能となる。
【0054】
尚、図15は格子体12の長さ(流路長)の違いによって変化するセンサ出力特性を示している。この実験データから格子体12の長さを長くする程、ノズル部14aでの圧損の影響を受け難くなり、センサ出力を高め得ることが判る。この現象は、格子体12により区画された微小流路13,14の流路長が長い程、特にノズル部14aの上流側の助走区間が長い程、流体(ガス)の圧縮性により、主流路を通流する流量の変化に比較して微小流路14に流れ込む流量がさほど大きく変化しない為であると考えられる。従って微小流路14での助走区間を或る程度長く確保し、その流路抵抗を安定化するべく格子体12aの長さを長くした方が微小流路13,14間での分流比を、ノズル部14aの存在に拘わりなく、配管11を通流する流体の流量(流速)に応じて変化させることが可能となるので、微少流量を高感度に検出する上で非常に好ましいと言える。
【0055】
ところで先に流路断面を覆うように設けたメッシュ体7の一部にメッシュ欠損部7aを設けておけば、メッシュ欠損部7aを通過する流体とメッシュ体7を通過する流体との間に流れの差が生じ、該メッシュ体7の下流側に流量(流速)が異なる領域(第1および第2の流路2,3)が形成されることを述べた。従って図9に示した格子体12を用いて2種類の微小流路13,14を形成した流路構造に、更にメッシュ欠損部を備えたメッシュ体(金網)を組み込むことで、微少流量に対する検出精度を更に高くすることも可能である。
【0056】
図16はこのような観点に立脚して実現される本発明の第2の実施形態に係る流量計の流路構造を、その流体通流方向に分解して模式的に示す図であり、図17はその要部の断面構造を模式的に示す図である。尚、この実施形態に示す格子体12(12a,12b〜12e)は前述した実施形態と同様なものである。またこの第2の実施形態は、上記各格子体12(12a,12b〜12e)の間にそれぞれ挟み込まれるメッシュ体として、特にノズル部14aを設けた側の微小流路14の形成位置に対応させて矩形状のメッシュ欠損部17aを形成したメッシュ体(金網)17を用いた点を、前述した第1の実施形態と異にしている。
【0057】
上述した流路構造を形成して実現される流量計によれば、メッシュ欠損部17aに位置付けられてメッシュ体(金網)が存在しない微小流路14での流路抵抗(圧力損失)が小さい分、微少流量域において上記微小流路14に流れ込む流量が増えるので、微少流量に対する検出感度を先の実施形態以上に高めることが可能となる。このような効果を確かめるべく、メッシュ欠損部17aを形成したメッシュ体(金網)17を用いない場合(第1の実施形態)、メッシュ欠損部17aを形成したメッシュ体(金網)17を1枚だけ用いたもの、同様にして2枚用いたもの、更に3枚用いたもの、その全てにメッシュ欠損部17aを形成した場合について、微少流量域におけるセンサ出力について調べたところ、図18に示すような実験結果が得られた。
【0058】
この図18に示す実験データから明らかなように、メッシュ欠損部17aを形成したメッシュ体17を多く用いる程、センサ出力が増加しており、メッシュ体17による通流抵抗(圧力損失)が微小流路13,14間での分流比を高めて、微少流量の殆どを流量センサ16を組み込んだ微小流路14に導く上で有効に機能していることが判る。従って漏れに起因する5[L/h]程度の微少流量を高感度に検出し得ることが裏付けられた。
【0059】
また図19は上述した如く構成された流量計における低速用流量センサ16aおよび高速用流量センサ16bの出力特性を示している。これらの各センサ16a,16bの出力特性に示されるように、ノズル部14aが設けられ、メッシュ欠損部17aの形成位置に位置付けられた微小流路14に組み込んだ低速用流量センサ16aによれば、微少流量域における検出感度を十分大きくすることができる。但し、微少流量域における検出感度を十分大きくした分、大流量域での検出感度が低くなる。
【0060】
これに対してノズル部14aがなく、その流路にメッシュ体17が設けられた微小流路14に組み込んだ高速用流量センサ16bにおいては、微少流量域での検出感度をさほど高くすることはできないが、微少流量域から大流量域までの全計測範囲に亘ってその検出感度を略一定にすることができる。従ってこれらの低速用流量センサ16aおよび高速用流量センサ16bの各出力をそれぞれモニタすることにより、漏れに起因する5[L/h]程度の微少流量から、通常使用状態における最大30000[L/h]の大流量までの全計測範囲に亘って、その流量を精度良く検出することが可能となり、実用的利点が多大である。またこれらの各流量センサ16a,16bの出力を対比することで、センサ特性の経年変化をモニタすることが可能となる等の効果も奏せられる。
【0061】
尚、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば第1および第2の流路2,3の流路断面積の比は、計測仕様等に応じて定めれば良いものであり、また流体の種別によって異なる粘性等に応じて定めるようにしても良い。また図8および図17にそれぞれ示す実施形態においては、センサ格子体12aの上流側と下流側とにそれぞれ格子体を設け、流体通流方向に対称な流路構造としている。このような対称な流路構造は、流体の通流方向が正逆に反転する可能性があることを配慮したものであるが、流体の通流方向が一元的に決定されるような場合には、センサ格子体12aの上流側にだけ格子体12b,12cを設けるようにしても良い。またこのようにして格子体12により形成する流路の長さも、その仕様に応じて定めれば良いものである。
【0062】
前述したメッシュ体7,15,17としては、金網のみならず、ハニカム構造体やパンチングメタルのようなものであっても良い。更に前述した格子体12は、矩形状の流路断面を形成するものに代えて、いわゆるハニカム型の六角形状の流路断面や三角形状の流路断面を形成するものであっても良い。その他、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に係る流量計の基本構成を示す図。
【図2】図1に示す流量計の流路構造を等価的に示す図。
【図3】図1に示す流量計の第1および第2の流路の流量に対する流路抵抗の変化特性を示す図。
【図4】図1に示す流量計における第1および第2の流路間の分流比の変化を示す図。
【図5】図1に示す流量計における流路構造の第1の実現例を示す図。
【図6】図1に示す流量計における流路構造の第2の実現例を示す図。
【図7】図1に示す流量計における流路構造の第3の実現例を示す図。
【図8】図1に示す流量計における流路構造の第4の実現例を示す図。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る流量計の流路構造を、その流体通流方向に分解して模式的に示す図。
【図10】図9に示す流量計における流路の要部の断面構造を模式的に示す図。
【図11】図9に示す流量計の微少流量に対する検出感度の向上を確認した実験の、微少流量に対する流量センサ出力の変化を示す図。
【図12】流路断面積(間口幅)の比率を変化させたときの、微少流量に対する流量センサ出力の変化を示す図。
【図13】メッシュ体の有無により変化するセンサ出力を対比して示す図。
【図14】第1の実施形態における低速用流量センサおよび高速用流量センサの流量に対するセンサ出力の変化を示す図。
【図15】格子体の長さの違いによって変化するセンサ出力特性を示す図。
【図16】本発明の第2の実施形態に係る流量計の流路構造を、その流体通流方向に分解して模式的に示す図。
【図17】図16に示す流量計における流路の要部の断面構造を模式的に示す図。
【図18】メッシュ欠損部の有無によって変化する微少流量域におけるセンサ出力の変化を示す図。
【図19】第2の実施形態における低速用流量センサおよび高速用流量センサの流量に対するセンサ出力の変化を示す図。
【符号の説明】
【0064】
1 主流路
2 第1の流路
3 第2の流路
4 流量センサ
5 配管
6 小径パイプ(隔壁体)
7 メッシュ体(金網)
7a メッシュ欠損部
8 隔壁体
9 パドル機構
9a 弁体
11 配管
12 格子体
13,14 微小流路
14a ノズル部
15 メッシュ体(金網)
16a 低速用流量センサ
16b 高速用流量センサ
17 メッシュ体(金網)
17a メッシュ欠損部
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路構造を工夫することで微少流量に対する流量センサの検出感度を高くすると共に、大流量に対する検出感度を抑えることで上記流量センサによる計測ダイナミックレンジを広くした流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
熱式の流量センサを用いた流量計において、その検出感度を高めて微少流量を検出するべく、流量センサを壁面に取り付けた流路の内部を、その流体通流方向に沿って複数の平行な微小流路に区画することで上記壁面位置での流速を高めることや、その流路の途中にノズル部を設けることで該ノズル部での流速を高めることが提唱されている(例えば特許文献1,2を参照)。
【特許文献1】特開平4−69521号公報
【特許文献2】特開平11−173896号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら上述したようにして微少流量に対する検出感度を高くした場合、これに伴って大流量に対する検出感度も高くなるので、大流量の通流時には流量センサの出力が飽和し、その計測ができなくなると言う問題がある。これ故、例えば最大計測流量が30,000[L/h]程度のガスメータ等において、5[L/h]程度の微少な漏れ流量までを精度良く検出することが困難であった。
【0004】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、その目的は、ガス漏れ等の微少流量からガスの通常使用状態における大流量までを簡易に、しかも精度良く検出することのできる流量計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した目的を達成するべく本発明に係る流量計は、その流路構造を工夫することによって流量センサの出力を飽和させることなく、例えば5[L/h]程度の微少流量から30,000[L/h]程度の大流量までを計測し得るようにしたもので、基本的には
<a> 並列に設けられ、主流路を通流する流体を分流して通流すると共に上記主流路を通流する流体の流量に応じて分流比が受動的に変化する第1および第2の流路と、
<b> これらの第1および第2の流路の少なくとも一方に設けた流量センサと
を具備したことを特徴としている。尚、「分流比が変化する」とは、分流比を変化させる為に外部から電流等のエネルギの供給を必要としないことを意味する。
【0006】
ちなみに前記第1および第2の流路は、前記主流路の流路断面を該主流路の流体通流方向に沿って空間的に区画して形成されるものであって、例えば前記第1および第2の流路の少なくとも一方は、前記主流路を通流する流体の流量に応じて上記流体に対する流路抵抗を受動的に変化させて、前記第1および第2の流路間での分流比を変化させるように構成される。
【0007】
具体的には前記第1および第2の流路を、例えば前記主流路の流体通流方向に沿って設けられた隔壁体により該主流路の流路断面を区画して形成し、特に前記第1の流路を前記第2の流路に比較して微小な流路断面を有する流路空間として形成することが好ましい。特に前記第1の流路に、流体の流れに対する所定長の助走区間を確保し、この助走区間の下流側にその流路断面積を絞り込んだ幅狭部を設け、この幅狭部に前記流量センサを組み込むことが好ましい。
【0008】
或いは前記第1の流路は、前記主流路の流路断面の全体を覆って設けられるメッシュ体の一部に、例えば前記主流路の流路断面に比較して微小な領域部として形成したメッシュ欠損部の下流側に形成される層流領域からなる。そして前記第2の流路は、前記層流領域との間で前記主流路の流路断面を等価的に区画して形成される、前記メッシュ体の下流側における前記層流領域以外の領域として実現される。ちなみに上記メッシュ欠損部を備えたメッシュ体を、流体の通流方向に前記メッシュ欠損部の位置を揃えて複数枚設けるようにしても良い。
【0009】
尚、前記第1および第2の流路を、前記主流路の流体通流方向に沿って設けられた隔壁体により該主流路の流路断面を区画して形成し、流体の流速に応じて上記流体に対する流路抵抗が変化するパドル機構を前記第2の流路に設けることで、上記パドル機構の開度によって変化する該第2の流路の流路抵抗に応じて前記第1および第2の流路間での分流比が可変するように構成することも可能である。
【0010】
また好ましくは前記第2の流路に、流体の流れに沿って該流路を複数の平行な微細流路に区画する格子状の仕切板を設けるようにしても良い。更には前記格子状の仕切板を所定の長さの格子体を形成したものとして実現し、前記第2の流路に上記格子体を前記流体の通流方向に複数個直列に配列すると共に、これらの格子体の間にそれぞれメッシュ体を介在させることも好ましい。また前記第2の流路に第2の流量センサを設け、この第2の流量センサの併用して流量計測を行うことで大流量に対する計測精度の低下を補償することも有用である。
【発明の効果】
【0011】
上述した基本構成の流量計によれば、並列に設けられた第1の流路と第2の流路との分流比が主流路を通流する流体の流量に応じて受動的に変化する。従って、例えば主流路を通流する流体の流量が少ないときには第1の流路に対する分流比が高く、上記主流路を通流する流体の流量が多くなるに従って上記第1の流路に対する分流比が低くなる場合には、上記第1の流路に流量センサを設けておくことで、該流量センサにて微少流量から大流量までを検出することが可能となる。
【0012】
即ち、上述した場合、主流路を通流する流量が微少である場合には、上記流体の殆どを第1の流路に通流させることでその微少流量を確実に検出させ、大流量の場合にはその流量の大部分を第2の流路に通流させ、第1の流路を通流する流体の流量を抑えることができる。従って主流路を通流する流体の流量が増大するに従って、第1の流路を通流する流量を前述した分流比に応じて抑制することができるので、流量センサを飽和させることなしに微少流量から大流量までを一括して検出することが可能となる。
【0013】
また前記第1の流路に、前記流体の流れに対する助走区間を確保した後、その流路断面積を絞り込む幅狭部を設けておき、この幅狭部に前記流量センサを組み込むようにすれば、第1の流路に導かれた微少流量の流速を上記幅狭部において早めることができる。この結果、流量センサによる検出感度を実質的に高めることができ、微少流量を容易に検出することが可能となる。特に上記幅狭部は大流量に対する流路抵抗として作用するので、第1および第2の流路間の分流比を受動的に変化させる上で極めて有効に作用する。また前述したメッシュ体や格子体、更にはパドル機構は小流量に対する流路抵抗として作用するので、これらもまた第1および第2の流路間の分流比を受動的に変化させる上で極めて有効に作用する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明に係る流量計について説明する。
この流量計は、ガスメータとして好適なものであって、例えば通流ガスの質量流量を検出する熱式流量センサを用いて構成される。特に図示しないが上記熱式流量センサは、例えばシリコン基板やガラス基板上に形成した肉薄のダイヤフラム上に、発熱抵抗素子を間にして流体の通流方向に一対の感温抵抗素子を設けたものからなり、そのセンサ面に沿って通流する流体による該センサ面近傍の温度分布の変化から上記流体の流量(流速)を検出するように構成される。
【0015】
図1は本発明に係る流量計の基本構成を示す図で、流体(例えばガス)を通流する主流路1の途中に上記流体を分流して通流する第1および第2の流路2,3を並列に設けて構成される。特に上記第1および第2の流路2,3は、主流路1を通流する流体の流量(流速)Vに応じて、上記第1の流路2の流路抵抗R1と、第2の流路3の流路抵抗R2とを受動的に変化させ、これによって第1および第2の流路2,3間の分流比を変化させるものからなり、等価的には図2に示すような抵抗回路をなす。即ち、第1および第2の流路2,3は、例えば主流路1を通流する流体の流量(流速)Vに応じてその流路抵抗R1,R2が図3に示すように受動的に変化するものであって、上記流路抵抗R1,R2に応じて流体を流量I1,I2に分流してそれぞれ通流し、その分流比[I1/(I1+I2)]が図4に示すように前記流体の流量(流速)Vにより変化する流路構造をなす。
【0016】
尚、第1および第2の流路2,3の一方だけが、主流路1を通流する流体の流量(流速)Vに応じてその流路抵抗R1、または流路抵抗R2を受動的に変化させるものであっても良い。この場合には、流路抵抗R1またはR2の変化に伴って前記第1および第2の流路2,3間の分流比[I1/(I1+I2)]が変化することになる。そしてこのような流路構造を有する流量計の、上述した第1および第2の流路2,3の少なくとも一方に前述した熱式流量センサ4が組み込まれる。
【0017】
さて前述した第1および第2の流路2,3は、例えば図5(a),(b)に示すように主流路1を形成する配管(大径パイプ)5の内部に、その流体通流方向に沿って設けた隔壁体としての小径パイプ6により、上記配管5の内部空間を流路断面方向に区画することにより形成される。尚、図5(a)は流路の縦断面構造を示しており、図5(b)は上記流路の横断面構造を示している。
【0018】
そしてこの場合には、前記小径パイプ6により配管5の内部空間を区画して形成される第1および第2の流路2,3の流路断面積の違いや、配管5の内部における層流の速度分布の違い、更には小径パイプ6の壁面のよる流速勾配の変化等により、第1および第2の流路2,3の流路抵抗R1,R2が、該配管5を通流する流体の流量(流速)Vにより異なる変化を呈する。
【0019】
具体的には配管5を通流する流体の流量(流速)Vが少ない場合には、小径パイプ6の内部空間として形成される流路断面積の微小な第1の流路2の流路抵抗R1は、前記小径パイプ6の外部空間として形成される流路断面積の大きい第2の流路3の流路抵抗R2よりも若干大きいだけである。但し、小径パイプ6を配管5の中心部に設けた場合、もともと配管5の中心部における流速がその周辺部よりも若干速い速度分布を呈するので、前記第1および第2の流路2,3にそれぞれ流れる流体の速度は略等しく、実質的には第1および第2の流路2,3の流路抵抗R1,R2は略同程度であると看做し得る。
【0020】
しかし上記流量(流速)Vが増加すると、これに伴って小径パイプ6の壁面における流体との接触抵抗に起因する速度勾配が増大し、流路断面積の微小な上記第1の流路2の流路抵抗R1が増大する。即ち、流量に応じて流路抵抗R1が受動的に変化する。この結果、配管5を通流する流体の流量(流速)Vが増大するに従って第1の流路2に流体が流れ難くなり、第2の流路3との間の分流比が変化することになる。
【0021】
従って第1の流路2に流量センサ4を設けておけば、配管5を通流する流体の流量(流速)Vが微少である場合には、その流量が第1および第2の流路2,3の流路断面積に応じて分流されるだけなので、上記流量センサ4にて上記微少流量を確実に検出することができる。また配管5を通流する流体の流量(流速)Vが増大した場合には、第1の流路2の流路抵抗R1の増大に伴って第1および第2の流路2,3間における分流比が変化し、第1の流路2を通流する流体の流量の増大が抑制されるので、前記流量センサ4を飽和させることなく、その流量を検出することが可能となる。
【0022】
この際、第2の流路3に、大流量を高精度に検出し得る第2の流量センサ4aを設けておけば、第1の流路2に設けた流量センサ4における大流量の検出精度の低下を補うことができる。但し、上記第2の流量センサ4aによれば微少流量を高精度に検出することができないので、微少流量の検出は前述したように第1の流路2に設けた流量センサ4に委ねることになる。
【0023】
尚、図6(a),(b)にそれぞれ示すように小径パイプ6の途中に、その管径(流路断面積)を絞り込んだ幅狭部(ノズル部)6aを設けておけば、配管5を通流する流体の流量(流速)Vの増大に伴って第1の流路2の流路抵抗R1を更に大きく変化させることができる。即ち、小径パイプ6の途中に幅狭部(ノズル部)6aが存在すると、該小径パイプ6に入り込んだ流体は該小径パイプ6内を圧縮されながら通流し、その流速が高められた状態で前記幅狭部6aを通過することになる。この際、配管5を通流する流体の流量(流速)Vが少ない場合には、小径パイプ6内における流体の圧縮の度合いは少なく、上記流量(流速)Vが増加するに従って前記小径パイプ6内における流体の圧縮の度合い大きくなる。このことは少流量時には流路断面積の小さい第1の流路2の流路抵抗R1が小さく、その流量が増加するに従って上記第1の流路2の流路抵抗R1が次第に大きくなることを意味する。これに対して流路断面積の大きい第2の流路3の流路抵抗R2は、その流量(流速)Vの変化に拘わらず殆ど変化することはない。
【0024】
従って上述した流路構造の第1の流路2に流量センサ4を設けておくことにより、流量に応じて第1および第2の流路2,3間の分流比を変化させ、大流量時における第1の流路2を通流する流量を抑えることができるので、流量センサ4を飽和させることなしに少流量から大流量までを確実に検出することが可能となる。特に上述した幅狭部6aに流量センサ4を設けておけば、当該幅狭部6aにて第1の流路2を通流する流体の速度を速くすることができるので、微少な流量であってもこれを高感度に検出することが可能となる。
【0025】
また従来技術のように流路の長手方向に沿って異なる流量域を設けることはせずに、前記流量センサ4と前記第2の流量センサ4aとは流路周面の同一周方向に設けられている。この為、従来技術では流量域毎に必要な流路長さが、大流量域と小流量域それぞれに対してその長手方向に沿って必要であったが、本願発明では、異なる流量域を設けるに際し、各流量センサを流路周面の同一周方向に設けたので、流量域に必要な流路長さが一つで済む。これ故、従来技術に比べて流路長さが長大にならないから、流量計を小型化し得る構成とすることができた。
【0026】
ところで前記第1および第2の流路2,3を、例えば図7(a),(b)に示すように主流路1を形成する配管5の内部に、その流路断面を覆うようにして設けられるメッシュ体7により、該メッシュ体7の下流側の空間を前記配管5の流路断面方向に区画して形成することもできる。尚、図7(a)は流路の縦断面構造を示しており、図7(b)は上記流路の横断面構造を示している。
【0027】
上記メッシュ体7は、その一部にメッシュ欠損部(切り欠き)7aを形成したものであって、上記メッシュ欠損部7aが前記配管5の流路断面の一部に位置付けられるようにして前記配管5の流体通流方向に直交させて設けられる。このようにして配管5に組み込まれるメッシュ体7は、前記メッシュ欠損部7aをその流路抵抗R1が零[0]の領域として作用させ、該メッシュ体7自体は配管5を通流する流体の流量(流速)Vに応じてその流路抵抗R2が変化する受動体として機能する。
【0028】
このようなメッシュ体7により該メッシュ体7の下流側の領域に形成される流体の流れが異なる部位として前記第1および第2の流路2,3が、配管5の内部を等価的に区画して形成される。具体的には第1の流路2は、前記メッシュ欠損部7aを通過して該メッシュ欠損部7aの下流側に形成される層流領域として実現される。そして前記第2の流路3は前記メッシュ体7の下流側における前記層流領域以外の領域、つまりメッシュ体7を通過した流体の通流領域として実現される。
【0029】
このようなメッシュ体7を備えた流路構造によれば、該配管5を通流する流体がメッシュ欠損部7aを通過するか、或いはメッシュ体7を通過するかによって異なる流路抵抗を受けることになる。換言すれば配管5を通流する流体の流量(流速)Vが微少である場合には、メッシュ体7での流路抵抗(圧損)が大きいので上記流体の殆どが流路抵抗のないメッシュ欠損部7aを通って流れる。従ってメッシュ欠損部7aの下流側である第1の流路2の形成領域を通流する流量が多くなり、これに対してメッシュ体7の下流側である第2の流路3の形成領域を通流する流量は殆どなくなる。しかし配管5を通流する流体の流量(流速)Vが増大すると、前記メッシュ体7での流路抵抗(圧損)に打ち勝って該メッシュ体7を通して流れる流体の量が次第に増大し、メッシュ体7およびメッシュ欠損部7aをそれぞれ通過する流体の分流比、つまり第1および第2の流路2,3に流れ込む流体の分流比が変化する。
【0030】
従って第1の流路2に流量センサ4を設けておけば、配管5を通流する流体の流量(流速)Vが微少である場合には、その微少な流量の殆どが第1の流路2(メッシュ欠損部7a)に流れるので、上記流量センサ4にて上記微少流量を確実に検出することができる。また配管5を通流する流体の流量(流速)Vが増大した場合には、上記流体がメッシュ体7を通して第2の流路3に流れるので、その分、前記第1の流路2(メッシュ欠損部7a)に流れる流量が抑えられる。そして第1の流路2の流路抵抗R1の増大に伴って第1および第2の流路2,3間の分流比が変化し、第1の流路2を通流する流体の流量の増大が抑制されるので、前述した実施形態と同様に前記流量センサ4を飽和させることなく、その流量を検出することが可能となる。
【0031】
この際、第2の流路3に、大流量を高精度に検出し得る第2の流量センサ4aを設けておけば、第1の流路2に設けた流量センサ4における大流量の検出精度の低下を補うことができる。但し、流量(流速)Vが微小な場合、第2の流路3には殆ど流体が流れることがないことと相俟って上記第2の流量センサ4aによる上記微少流量の検出は殆ど不可能である。従って微少流量の検出は第1の流路2(メッシュ欠損部7aの下流)に設けた流量センサ4に委ねることになる。
【0032】
ところで前述した第1および第2の流路2,3を、例えば図8(a),(b)に示すように実現することもできる。尚、図8(a)は流路の縦断面構造を示しており、図8(b)は上記流路の横断面構造を示している。この流路構造は、主流路1を構成する配管5の内部に、その流体通流方向に沿って板状の隔壁体8を設けて上記主流路1の内部空間を第1および第2の流路2,3に区画すると共に、更に第2の空間3をその流体通流方向に仕切るようにパドル機構9を設けて構成される。
【0033】
このパドル機構9は、例えばヒンジを介して傾倒自在に支持されて第2の流路3を閉塞するように設けられた弁体9aを備えたものであって、第2の流路3を通流する流体の圧力を受けて傾倒して該第2の流路3に隙間を形成し、この隙間を通して流体を通流するように機能する流路抵抗体からなる。特にこのパドル機構9は、第2の流路3を通流する流体の流量(流速)Vに応じて上記板体9aにより形成される隙間の大きさ(開度)を変化させて、その流路抵抗を受動的に変化させる可変型の抵抗素子として機能を呈する。
【0034】
このようなパドル機構9を備えた流路構造を有する流量計によれば、主流路1を通流する流体の流量が微少である場合には、第2の流路3に設けられたパドル機構9が該第2の流路3を閉塞するので、上記微少流量の流体は専ら第1の流路2を通流する。そして主流路1を通流する流体の流量が増大するに従って、その流体圧力を受けて前記パドル機構9の弁体9aが開いてその流路抵抗が低下するので、上述した流体は第1および第2の流路2,3に分流して通流することになる。
【0035】
従って第1の流路2に流量センサ4を設けておけば、微少流量時にはその流体の殆どが第1の流路2を通流するので上記微少流量を確実に検出することが可能となる。また流量が増大したときには、その流量増大に伴ってパドル機構9の弁体9aが開き、これによって流体が第1および第2の流路2,3に分流されるので、第1の流路2を通流する流体の流量の増大が抑制される。この結果、流量センサ4の飽和を抑えながらその流量検出を行うことが可能となるので、上述した微少流量から大流量までを一貫して検出することが可能となる。
【0036】
尚、大流量の通流時には、上述したように第1の流路2を通流する流量が抑制されるので、その分、流量センサ4による流量検出精度が低下する。従って第2の流路3に、大流量を高精度に検出し得る第2の流量センサ4aを設けておけば、第1の流路2に設けた流量センサ4における大流量の検出精度の低下を補うことができる。但し、流量(流速)Vが微少な場合には、第2の流路3には殆ど流体が流れることがないので、該第2の流量センサ4aによる上記微少流量の検出は殆ど不可能である。従って微少流量の検出は第1の流路2に設けた流量センサ4に委ねることになる。
【0037】
以上、図5(a),(b)ないし図8(a),(b)をそれぞれ参照して流体の流量に応じて分流比が変化する第1および第2の流路2,3の構成例について説明したように、本発明に係る流量計は、微少流量の通流時と大流量の通流時とでその分流比が受動的に変化する第1および第2の流路2,3の少なくとも一方に流量センサ4を組み込んで構成される。特に微少流量時に分流比が高くなり、大流量時に分流比が低くなる側の流路に流量センサ4を組み込むことで、該流量センサ4にて微少流量から大流量までを一貫して検出し得るようにしている。
【0038】
具体的には微少流量の殆どを流量センサ4が設けられた流路(前述した例では第1の流路2)に導くことで実質的にその流速(見掛け上の流量)を高くし、これによって微少流量を確実に検出し得るようにしている。一方、大流量に対しては上記流量センサ4が設けられた流路(第1の流路2)に導かれる流量を抑えることでその流速の増大を抑え、これによって前記流量センサ4を飽和させることなくその流量検出を行わせるものとなっている。従って本発明に係る流量計によれば、例えば配管5のひび割れや傷に起因するガス漏れによる5[L/h]程度の微少流量から、通常のガス使用状態おける最大30,000[L/h]程度の大流量までを、1つの流量センサ4にて一貫して計測することが可能となり、その実用的利点が多大である。また他方の流路(前述した例では第2の流路3)に、通常のガス使用状態おける流量を高精度に検出し得る大流量用の第2の流量センサ4aを設けておけば、前述した流量センサ4の検出精度が大流量時に粗くなることを補うことが可能となるので、実用上、問題なくガス流量の計測を行うことが可能となる。
【0039】
また従来のように大流量域と小流量域とを長手方向に沿って個別に設けることなく、前記流量センサ4と前記第2の流量センサ4aとを流路周面の同一周方向に設け、定められた流路長において大流量域と小流量域とをそれぞれ形成している。従って大流量計測領域と小流量計測領域とをそれぞれ形成するに必要な流路長さを共通化することができる。故に流量計を小型化できる構成とすることができる。
【0040】
次に本発明に係る流量計の具体的な構成例について説明する。
図9は本発明の第1の実施形態に係る流量計の流路構造を、その流体通流方向に分解して模式的に示す図であり、図10はその要部の断面構造を模式的に示す図である。この流量計は、矩形状の流路断面を有する配管11の内部空間を、その流路断面方向に複数の微小な流路に区画する格子体12を主体として構成される。上記格子体12は、配管11の流体通流方向に沿って平行に設けられた複数の板状の隔壁体を格子状に組み合わせて構成される。特にこの実施形態で用いられる格子体12は、例えば後述するように流量センサが組み込まれるセンサ格子体12aと、このセンサ格子体12aの上流側に設けられる第1および第2の前格子体12b,12c、および上記センサ格子体12aの下流側に設けられる第1および第2の後格子体12d,12eとからなる。
【0041】
ちなみにこれらの格子体12(12a,12b〜12e)は、例えば略正方形の流路断面形状をなす複数(多数)の微小流路13をマトリックス状に配列形成すると共に、略長方形の流路断面形状をなし、上記微小流路13の略2倍の流路断面積をなす2つの微小流路14を形成したものからなる。これらの2つの微小流路14は、例えば格子体12の辺部において、隣接する2つの微小流路13を区画する板状の隔壁体を取り除くことによって形成される。そしてこれらの格子体12(12a,12b〜12e)は、図9に示すように各格子体12(12a,12b〜12e)の間にメッシュ体(金網)15(15a,15b,15c,15d)をそれぞれ挟み込んで流体の通流方向に重ね合わせられて、流体の通流方向に連なる複数の流路を形成する。尚、上記各メッシュ体(金網)15は、専ら、前述した格子体12を通して通流する流体を整流する役割を担う。
【0042】
ちなみに格子体12(12a,12b〜12e)により区画された上記複数(多数)の微小流路13は、これらのまとまりとして捉えることで流路断面積の大きな流路を形成していると看做し得る。またこれらの微小流路13,14は、それぞれその流路断面積の違いにより流体の流れに対して異なる流路抵抗を示す。従って、例えば微小流路13のまとまりが前述した第2の流路3に相当し、前記2つの微小流路14はそれぞれ前述した第1の流路2に相当すると看做し得る。
【0043】
尚、センサ格子体12aに形成された2つの微小流路14の一方には、図10に示すようにその流路の略中間位置にノズル14aが設けられ、その流路断面積が絞り込まれている。このノズル14aが設けられた微少流路14は微少流量検出用(低速用)として用いられ、上記ノズル14aにて流路断面積を絞り込んだ位置には低速用流量センサ16aが組み込まれる。また他方の微少流路14は大流量検出用(高速用)として用いられ、その略中間位置には高速用流量センサ16bが組み込まれる。これらの2つの微小流路14は、前述した微小流路13のまとまりから切り離された流路として看做すことで、前述した流量に応じて分流比が変化する第1および第2の流路3として捉えることもできる。
【0044】
このような格子体12を用いて流路を区画した流路構造を有する流量計によれば、第2の流路3を形成する複数の微小流路13の各流路断面積が、流量センサ16a,16bが組み込まれる微小流路14に比較して狭く、その流路抵抗が大きいので、配管11を通流する流体が微少流量である場合には、その流体は主として流路抵抗の小さい微小流路14に流れ込む。そして配管11を通流する流体の流量が増大するに従って前記微小流路13の流路抵抗に打ち勝って該微小流路13にも流体が流れ込むようになる。
【0045】
この結果、流体流量の増大に伴って前記微小流路13に流れ込む流体流量と、微小流路14に流れ込む流体流量との分流比が変化する。そして流量センサ16a,16bが設けられた微小流路14を通流する流体の流量は、その流量の増大に伴って次第に抑制されることになる。従って微小流路14に設けられた流量センサ16a,16bの微少流量に対する検出感度を高くし、また大流量の通流時には微小流路14に分流されて流れ込む流量を抑制することができるので、上記流量センサ16a,16bの飽和を抑えながら流量検出を行わせることが可能となる。
【0046】
また上記流路構造を有する流量計においては、前述したように低速用流量センサ16aが組み込まれる一方の微小流路14の略中央位置には、その流路断面積を絞り込んだノズル部14aが設けられている。そしてこのノズル部14aが設けられたセンサ格子体12aの上流側に設けられた前記第1および第2の前格子体12b,12cは、微小流路14に流れ込む流体に対する助走区間を形成しており、この助走区間に流れ込んだ流体の全てを前記ノズル部14aに送り込むものとなっている。この結果、微小流路14に流れ込んだ流体は、前記ノズル部14aによる流路断面積の絞り込みによってその流速が高められので、該微小流路14のノズル部14aに設けられた低速用流量センサ16aは、より高精度に微少流量を検出することが可能となる。特に上記低速用流量センサ16aは、ノズル部14aを形成していない他方の微小流路14に設けられた高速用流量センサ16bよりも高感度に微少流量を検出することが可能となる。
【0047】
図11は、前述したように格子体12を設けてその流路を複数の微小流路13,14に区画した流路構造おける流量検出感度の向上を確認した実験データであり、格子体12を設けない場合と、格子体12を設けた場合における流量センサ出力の変化を対比して示している。この実験データから、格子体12を設けない場合よりも格子体12を設けて流路を微小流路13,14に区画した方が流量センサ16a,16bによる流量検出感度が向上することが裏付けられた。また特に図示しないが、格子体12の長さを長くした方が、検出感度の向上を図り得ることも明らかとなった。これは格子体12の長さ(流路長)が長くなる程、流量に対する前述した複数の微小流路13,14間の流路抵抗の変化の差が大きくなる為であると考えられる。
【0048】
また図12は、格子体12によって形成される複数の微小流路13,14の流路断面積(間口幅)の比率を変化させたときの、微少流量に対する流量センサ出力の変化を示している。尚、図11において基準とは、流量センサ16が設けられる微小流路14の間口幅(流路断面積)と、その他の微小流路13の間口幅(流路断面積)とを等しくした場合を示している。そして4倍および8倍として示すパラメータは、それぞれ流量センサ16が設けられる微小流路14の間口幅(流路断面積)を微小流路13の間口幅(流路断面積)の4倍および8倍に設定した場合を示している。
【0049】
この図12に示す実験データから、流量センサ16が設けられる微小流路14の間口幅(流路断面積)を、その他の微小流路13の間口幅(流路断面積)よりも大きくすることで、微少流量域における流体が上記微小流路13に流れ込み難くなり、その分、上記流量センサ16が設けられる微小流路14に多くの流量が流れ込んで、流量センサ16による微少流量の検出感度が高まることが裏付けられる。
【0050】
また図13は、前述したメッシュ体(金網)15の有無による効果を確認したものであり、微少流量から大流量に亘るセンサ出力の変化を対比して示している。尚、メッシュ体(金網)15を設けない場合とは、前述した図9に示した流路構造からメッシュ体(金網)15を省略した構造、つまり格子体12だけで流路構造を構成した場合を示している。
この図13に示す特性から明らかなように、メッシュ体(金網)15を設けることによって微小流路13,14をそれぞれ通流する流体に対する整流効果が大きくなり、安定した流量検出が可能となることのみならず、瞬時の流量計測精度も高め得ることが判る。また上記図13に示す実験データから、微少流量域での流量の変化に対するセンサ出力の変化が急峻であり、該微少流量域での前記流量センサ16による検出感度が高いことが判る。また同時に流量が増大するに従って流量の変化に対するセンサ出力の変化がブロードになっていることから、大流量域での前記流量センサ16による検出感度が徐々に低く抑えられていることが判る。
【0051】
この大流量域での前記流量センサ16の検出感度の抑制は、前述したノズル部14aでの圧力損失が、その流速(流量)の2乗に比例して増大し、この結果、ノズル部14a(微少流路14)を通過する流量が制限されて微少流路13に流れ込む流量が増える為である。そして上記流路構造を採用した流量計によれば、流量センサ16を飽和させることなく、微少流量から大流量までを一貫して計測可能であることが裏付けられる。
【0052】
また図14は、前述した2つの微小流路14にそれぞれ設けられた低速用流量センサ16aおよび高速用流量センサ16bの流量に対するセンサ出力の変化を示している。この図14に示すデータから明らかなように、ノズル部14aを設けて流路断面積を絞り込んだ微小流路14に設けた低速用流量センサ16aの出力は、流量が増加するに従ってその変化の割合が抑制されており、ブロードな変化を呈する。この現象は、前記ノズル部14aでの圧損に伴って該ノズル部14aを通る流体の流量が抑制される為である。これに対して高速用流量センサ16bが設けられた側の微小流路14にはノズル部14aが設けられていないので、流量の増大に伴うセンサ出力の変化割合の抑制は、該微小流路14と前述した微小流路13との間の分流比の変化に依存した分だけとなっている。
【0053】
この実験結果から微小流路13との間で分流比が変化する微小流路14での流量を、その微小流路14にノズル部14aを設けるか否かにより更に変化させることができ、ノズル部14aを設けることにより上記分流比の変化の割合を更に大きくして微少流量域での検出感度をより高めうることが判る。従って前述した2つの微小流路14に低速用流量センサ16aと高速用流量センサ16bとをそれぞれ設けておけば、互いに異なる検出特性にて微少流量域から大流量域までをそれぞれ一貫して計測することが可能となり、これらの各流量センサ16a,16bでの低流量域側および高流量域側での計測精度の不足を互いに補うことが可能となる。
【0054】
尚、図15は格子体12の長さ(流路長)の違いによって変化するセンサ出力特性を示している。この実験データから格子体12の長さを長くする程、ノズル部14aでの圧損の影響を受け難くなり、センサ出力を高め得ることが判る。この現象は、格子体12により区画された微小流路13,14の流路長が長い程、特にノズル部14aの上流側の助走区間が長い程、流体(ガス)の圧縮性により、主流路を通流する流量の変化に比較して微小流路14に流れ込む流量がさほど大きく変化しない為であると考えられる。従って微小流路14での助走区間を或る程度長く確保し、その流路抵抗を安定化するべく格子体12aの長さを長くした方が微小流路13,14間での分流比を、ノズル部14aの存在に拘わりなく、配管11を通流する流体の流量(流速)に応じて変化させることが可能となるので、微少流量を高感度に検出する上で非常に好ましいと言える。
【0055】
ところで先に流路断面を覆うように設けたメッシュ体7の一部にメッシュ欠損部7aを設けておけば、メッシュ欠損部7aを通過する流体とメッシュ体7を通過する流体との間に流れの差が生じ、該メッシュ体7の下流側に流量(流速)が異なる領域(第1および第2の流路2,3)が形成されることを述べた。従って図9に示した格子体12を用いて2種類の微小流路13,14を形成した流路構造に、更にメッシュ欠損部を備えたメッシュ体(金網)を組み込むことで、微少流量に対する検出精度を更に高くすることも可能である。
【0056】
図16はこのような観点に立脚して実現される本発明の第2の実施形態に係る流量計の流路構造を、その流体通流方向に分解して模式的に示す図であり、図17はその要部の断面構造を模式的に示す図である。尚、この実施形態に示す格子体12(12a,12b〜12e)は前述した実施形態と同様なものである。またこの第2の実施形態は、上記各格子体12(12a,12b〜12e)の間にそれぞれ挟み込まれるメッシュ体として、特にノズル部14aを設けた側の微小流路14の形成位置に対応させて矩形状のメッシュ欠損部17aを形成したメッシュ体(金網)17を用いた点を、前述した第1の実施形態と異にしている。
【0057】
上述した流路構造を形成して実現される流量計によれば、メッシュ欠損部17aに位置付けられてメッシュ体(金網)が存在しない微小流路14での流路抵抗(圧力損失)が小さい分、微少流量域において上記微小流路14に流れ込む流量が増えるので、微少流量に対する検出感度を先の実施形態以上に高めることが可能となる。このような効果を確かめるべく、メッシュ欠損部17aを形成したメッシュ体(金網)17を用いない場合(第1の実施形態)、メッシュ欠損部17aを形成したメッシュ体(金網)17を1枚だけ用いたもの、同様にして2枚用いたもの、更に3枚用いたもの、その全てにメッシュ欠損部17aを形成した場合について、微少流量域におけるセンサ出力について調べたところ、図18に示すような実験結果が得られた。
【0058】
この図18に示す実験データから明らかなように、メッシュ欠損部17aを形成したメッシュ体17を多く用いる程、センサ出力が増加しており、メッシュ体17による通流抵抗(圧力損失)が微小流路13,14間での分流比を高めて、微少流量の殆どを流量センサ16を組み込んだ微小流路14に導く上で有効に機能していることが判る。従って漏れに起因する5[L/h]程度の微少流量を高感度に検出し得ることが裏付けられた。
【0059】
また図19は上述した如く構成された流量計における低速用流量センサ16aおよび高速用流量センサ16bの出力特性を示している。これらの各センサ16a,16bの出力特性に示されるように、ノズル部14aが設けられ、メッシュ欠損部17aの形成位置に位置付けられた微小流路14に組み込んだ低速用流量センサ16aによれば、微少流量域における検出感度を十分大きくすることができる。但し、微少流量域における検出感度を十分大きくした分、大流量域での検出感度が低くなる。
【0060】
これに対してノズル部14aがなく、その流路にメッシュ体17が設けられた微小流路14に組み込んだ高速用流量センサ16bにおいては、微少流量域での検出感度をさほど高くすることはできないが、微少流量域から大流量域までの全計測範囲に亘ってその検出感度を略一定にすることができる。従ってこれらの低速用流量センサ16aおよび高速用流量センサ16bの各出力をそれぞれモニタすることにより、漏れに起因する5[L/h]程度の微少流量から、通常使用状態における最大30000[L/h]の大流量までの全計測範囲に亘って、その流量を精度良く検出することが可能となり、実用的利点が多大である。またこれらの各流量センサ16a,16bの出力を対比することで、センサ特性の経年変化をモニタすることが可能となる等の効果も奏せられる。
【0061】
尚、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば第1および第2の流路2,3の流路断面積の比は、計測仕様等に応じて定めれば良いものであり、また流体の種別によって異なる粘性等に応じて定めるようにしても良い。また図8および図17にそれぞれ示す実施形態においては、センサ格子体12aの上流側と下流側とにそれぞれ格子体を設け、流体通流方向に対称な流路構造としている。このような対称な流路構造は、流体の通流方向が正逆に反転する可能性があることを配慮したものであるが、流体の通流方向が一元的に決定されるような場合には、センサ格子体12aの上流側にだけ格子体12b,12cを設けるようにしても良い。またこのようにして格子体12により形成する流路の長さも、その仕様に応じて定めれば良いものである。
【0062】
前述したメッシュ体7,15,17としては、金網のみならず、ハニカム構造体やパンチングメタルのようなものであっても良い。更に前述した格子体12は、矩形状の流路断面を形成するものに代えて、いわゆるハニカム型の六角形状の流路断面や三角形状の流路断面を形成するものであっても良い。その他、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に係る流量計の基本構成を示す図。
【図2】図1に示す流量計の流路構造を等価的に示す図。
【図3】図1に示す流量計の第1および第2の流路の流量に対する流路抵抗の変化特性を示す図。
【図4】図1に示す流量計における第1および第2の流路間の分流比の変化を示す図。
【図5】図1に示す流量計における流路構造の第1の実現例を示す図。
【図6】図1に示す流量計における流路構造の第2の実現例を示す図。
【図7】図1に示す流量計における流路構造の第3の実現例を示す図。
【図8】図1に示す流量計における流路構造の第4の実現例を示す図。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る流量計の流路構造を、その流体通流方向に分解して模式的に示す図。
【図10】図9に示す流量計における流路の要部の断面構造を模式的に示す図。
【図11】図9に示す流量計の微少流量に対する検出感度の向上を確認した実験の、微少流量に対する流量センサ出力の変化を示す図。
【図12】流路断面積(間口幅)の比率を変化させたときの、微少流量に対する流量センサ出力の変化を示す図。
【図13】メッシュ体の有無により変化するセンサ出力を対比して示す図。
【図14】第1の実施形態における低速用流量センサおよび高速用流量センサの流量に対するセンサ出力の変化を示す図。
【図15】格子体の長さの違いによって変化するセンサ出力特性を示す図。
【図16】本発明の第2の実施形態に係る流量計の流路構造を、その流体通流方向に分解して模式的に示す図。
【図17】図16に示す流量計における流路の要部の断面構造を模式的に示す図。
【図18】メッシュ欠損部の有無によって変化する微少流量域におけるセンサ出力の変化を示す図。
【図19】第2の実施形態における低速用流量センサおよび高速用流量センサの流量に対するセンサ出力の変化を示す図。
【符号の説明】
【0064】
1 主流路
2 第1の流路
3 第2の流路
4 流量センサ
5 配管
6 小径パイプ(隔壁体)
7 メッシュ体(金網)
7a メッシュ欠損部
8 隔壁体
9 パドル機構
9a 弁体
11 配管
12 格子体
13,14 微小流路
14a ノズル部
15 メッシュ体(金網)
16a 低速用流量センサ
16b 高速用流量センサ
17 メッシュ体(金網)
17a メッシュ欠損部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列に設けられ、主流路を通流する流体を分流して通流すると共に上記主流路を通流する流体の流量に応じて分流比が受動的に変化する第1および第2の流路と、
これらの第1および第2の流路の少なくとも一方に設けられた流量センサと
を具備したことを特徴とする流量計。
【請求項2】
前記第1および第2の流路は、前記主流路の流路断面を該主流路の流体通流方向に沿って空間的に区画して形成されるものである請求項1に記載の流量計。
【請求項3】
前記第1および第2の流路の少なくとも一方は、前記主流路を通流する流体の流量に応じて上記流体に対する流路抵抗を受動的に変化させて、前記第1および第2の流路間での分流比を変化させるものである請求項1に記載の流量計。
【請求項4】
前記第1および第2の流路は、前記主流路の流体通流方向に沿って設けられた隔壁体により該主流路の流路断面を区画して形成されるものであって、
前記第1の流路は、前記第2の流路に比較して微小な流路断面を有する流路空間として形成されるものである請求項1に記載の流量計。
【請求項5】
前記第1の流路は、流体の流れに対する助走区間を確保した後にその流路断面積を絞り込んだ幅狭部を有し、この幅狭部に前記流量センサを組み込んだものである請求項4に記載の流量計。
【請求項6】
前記第1の流路は、前記主流路の流路断面の全体を覆って設けられるメッシュ体の一部に設けたメッシュ欠損部の下流側に形成される層流領域からなり、
前記第2の流路は、前記メッシュ体の下流側における前記層流領域以外の領域として前記層流領域との間で前記主流路の流路断面を等価的に区画して形成されるものである請求項1に記載の流量計。
【請求項7】
前記メッシュ体の一部に設けたメッシュ欠損部は、前記主流路の流路断面に比較して微小な領域部として形成したものである請求項5に記載の流量計。
【請求項8】
前記メッシュ欠損部を備えたメッシュ体は、流体の通流方向に前記メッシュ欠損部の位置を揃えて複数枚設けられるものである請求項6に記載の流量計。
【請求項9】
前記第1および第2の流路は、前記主流路の流体通流方向に沿って設けられた隔壁体により該主流路の流路断面を区画して形成されるものであって、
前記第2の流路には、流体の流速に応じて上記流体に対する流路抵抗が変化するパドル機構が設けられ、このパドル機構の開度によって変化する該第2の流路の流路抵抗に応じて前記第1および第2の流路間での分流比が可変されるものである請求項1に記載の流量計。
【請求項10】
前記第2の流路は、流体の流れに沿って該第2の流路を複数の平行な微細流路に区画する格子状の仕切板を備えたものである請求項3に記載の流量計。
【請求項11】
前記格子状の仕切板は、所定の長さの格子体を形成したものであって、
前記第2の流路は、上記格子体を前記流体の通流方向に複数個直列に配列すると共に、これらの格子体の間にそれぞれメッシュ体を介在させたものである請求項10に記載の流量計。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の流量計において、更に前記第2の流路に第2の流量センサを備えたことを特徴とする流量計。
【請求項1】
並列に設けられ、主流路を通流する流体を分流して通流すると共に上記主流路を通流する流体の流量に応じて分流比が受動的に変化する第1および第2の流路と、
これらの第1および第2の流路の少なくとも一方に設けられた流量センサと
を具備したことを特徴とする流量計。
【請求項2】
前記第1および第2の流路は、前記主流路の流路断面を該主流路の流体通流方向に沿って空間的に区画して形成されるものである請求項1に記載の流量計。
【請求項3】
前記第1および第2の流路の少なくとも一方は、前記主流路を通流する流体の流量に応じて上記流体に対する流路抵抗を受動的に変化させて、前記第1および第2の流路間での分流比を変化させるものである請求項1に記載の流量計。
【請求項4】
前記第1および第2の流路は、前記主流路の流体通流方向に沿って設けられた隔壁体により該主流路の流路断面を区画して形成されるものであって、
前記第1の流路は、前記第2の流路に比較して微小な流路断面を有する流路空間として形成されるものである請求項1に記載の流量計。
【請求項5】
前記第1の流路は、流体の流れに対する助走区間を確保した後にその流路断面積を絞り込んだ幅狭部を有し、この幅狭部に前記流量センサを組み込んだものである請求項4に記載の流量計。
【請求項6】
前記第1の流路は、前記主流路の流路断面の全体を覆って設けられるメッシュ体の一部に設けたメッシュ欠損部の下流側に形成される層流領域からなり、
前記第2の流路は、前記メッシュ体の下流側における前記層流領域以外の領域として前記層流領域との間で前記主流路の流路断面を等価的に区画して形成されるものである請求項1に記載の流量計。
【請求項7】
前記メッシュ体の一部に設けたメッシュ欠損部は、前記主流路の流路断面に比較して微小な領域部として形成したものである請求項5に記載の流量計。
【請求項8】
前記メッシュ欠損部を備えたメッシュ体は、流体の通流方向に前記メッシュ欠損部の位置を揃えて複数枚設けられるものである請求項6に記載の流量計。
【請求項9】
前記第1および第2の流路は、前記主流路の流体通流方向に沿って設けられた隔壁体により該主流路の流路断面を区画して形成されるものであって、
前記第2の流路には、流体の流速に応じて上記流体に対する流路抵抗が変化するパドル機構が設けられ、このパドル機構の開度によって変化する該第2の流路の流路抵抗に応じて前記第1および第2の流路間での分流比が可変されるものである請求項1に記載の流量計。
【請求項10】
前記第2の流路は、流体の流れに沿って該第2の流路を複数の平行な微細流路に区画する格子状の仕切板を備えたものである請求項3に記載の流量計。
【請求項11】
前記格子状の仕切板は、所定の長さの格子体を形成したものであって、
前記第2の流路は、上記格子体を前記流体の通流方向に複数個直列に配列すると共に、これらの格子体の間にそれぞれメッシュ体を介在させたものである請求項10に記載の流量計。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の流量計において、更に前記第2の流路に第2の流量センサを備えたことを特徴とする流量計。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2009−14601(P2009−14601A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−178359(P2007−178359)
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】
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