説明

浄化槽の囲い板

【課題】浄化槽の周壁や隔壁に取り付ける前の保管や運搬時に嵩張り難くする。
【解決手段】浄化槽の槽本体の周壁又は槽本体の内側を区画する隔壁に対する取付け部26を設け、周壁又は隔壁の壁面にその取付け部を取り付けることによってその壁面を半割筒状に囲み、その囲み空間内に壁面に沿った被処理水の流路を形成する浄化槽の囲い板であって、略扁平に展開した形状の板状部材28に、他の板部分よりも剛性が小さい易可撓部29を、板面の一定方向に沿って一連に設け、板状部材の易可撓部を一連に屈曲させて半割筒状に変形した状態で、周壁又は隔壁に取り付け自在に構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄化槽の槽本体の周壁又は前記槽本体の内側を区画する隔壁に対する取付け部を設け、前記周壁又は前記隔壁の壁面に前記取付け部を取り付けることによってその壁面を半割筒状に囲み、その囲み空間内に前記壁面に沿った被処理水の流路を形成する浄化槽の囲い板に関する。
【背景技術】
【0002】
上記浄化槽の囲い板は、従来、樹脂などで取付け部と共に半割筒状に一体成型してある(周知慣用技術であり、先行技術文献情報を開示できない)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このため、浄化槽の周壁や隔壁に取り付ける前の保管や運搬時に嵩張り易い欠点がある。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、浄化槽の周壁や隔壁に取り付ける前の保管や運搬時に嵩張り難くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1特徴構成は、浄化槽の槽本体の周壁又は前記槽本体の内側を区画する隔壁に対する取付け部を設け、前記周壁又は前記隔壁の壁面に前記取付け部を取り付けることによってその壁面を半割筒状に囲み、その囲み空間内に前記壁面に沿った被処理水の流路を形成する浄化槽の囲い板であって、略扁平に展開した形状の板状部材に、他の板部分よりも剛性が小さい易可撓部を板面の一定方向に沿って一連に設け、前記板状部材の前記易可撓部を一連に屈曲させて半割筒状に変形した状態で、前記周壁又は前記隔壁に取り付け自在に構成してある点にある。
【0005】
〔作用及び効果〕
略扁平に展開した形状の板状部材に、他の板部分よりも剛性が小さい易可撓部、つまり、他の板部分よりも変形し易い部分を、板面の一定方向に沿って一連に設け、その板状部材の易可撓部を一連に屈曲させて半割筒状に変形した状態で、周壁又は隔壁に取り付け自在に構成してあるので、周壁又は隔壁に取り付ける前は、略扁平に展開した形状の板状部材として保管したり運搬することができ、周壁や隔壁に取り付ける際には、板状部材の易可撓部を一連に屈曲させた半割筒状に形成して取り付けることができ、浄化槽の周壁や隔壁に取り付ける前の保管や運搬時に嵩張り難い。
【0006】
本発明の第2特徴構成は、前記板状部材における前記易可撓部の両側を挟む板面部分のうちの、その易可撓部を一連に屈曲させることによって外隅部を形成する板面部分の夫々に、前記易可撓部との境界に沿って略一連に突出する第1リブを設けてある点にある。
【0007】
〔作用及び効果〕
板状部材における易可撓部の両側を挟む板面部分のうちの、その易可撓部を一連に屈曲させることによって外隅部を形成する板面部分の夫々に、易可撓部との境界に沿って略一連に突出する第1リブを設けたので、易可撓部を一連に屈曲させた半割筒状に形成して、周壁又は隔壁に取り付けた状態で、易可撓部の両側に、その易可撓部との境界に沿って略一連の第1リブを突出させておくことができる。
従って、浄化槽の維持管理のために、例えばバキュームホースなどの機材を浄化槽内に出し入れする際に、機材の易可撓部への衝突を、易可撓部の両側に突出している第1リブでガードして、機材の衝突による易可撓部の破損を防止できるとともに、易可撓部の両側の板面部分の変形に伴って易可撓部も変形し、その結果、易可撓部が破損するような事態も防止できる。
【0008】
本発明の第3特徴構成は、前記板状部材に、前記易可撓部に対して交差する方向に沿って略一連に突出する第2リブと、その第2リブの倒れ止め部材とを設けてある点にある。
【0009】
〔作用及び効果〕
板状部材に、易可撓部に対して交差する方向に沿って略一連に突出する第2リブを設けてあるので、易可撓部以外の板状部材の変形を防止できる。
そして、第2リブの倒れ止め部材を設けたので、易可撓部を一連に屈曲させた半割筒状に形成して、周壁又は隔壁に取り付けた状態で、浄化槽の維持管理のために、例えばバキュームホースなどの機材を浄化槽内に出し入れする際に、機材が第2リブに衝突しても、その第2リブの変形や倒れを防止し易い。
尚、倒れ止め部材を、槽内側に臨ませる外周形状が、第2リブの突出端部側と板状部材の板面側とに亘って、板面側ほど第2リブから離れるように一連に傾斜している板材で形成して、板状部材と第2リブとに固定し、第2リブを左右方向に沿わせて周壁又は隔壁に取り付けた場合は、浄化槽の維持管理のために、例えばバキュームホースなどの機材を浄化槽内に出し入れする際に、その機材が倒れ止め部材に引っ掛かり難く、機材も、倒れ止め部材や第2リブも破損し難い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図6は、生活排水(汚水)を被処理水として浄化処理するための本発明による浄化槽を示し、図1,図2に示すように、マンホール1などを備えた槽本体2の内側を第1隔壁3と第2隔壁4とで区画して、被処理水を嫌気処理する嫌気槽Aと、嫌気槽Aで嫌気処理した被処理水を好気処理する好気槽Bと、好気槽Bで好気処理した被処理水を沈殿処理する沈殿槽Cとに区画し、沈殿槽Cの被処理水をオーバーフローで流入させて消毒処理する消毒槽Dを設けて、沈殿槽Cで固形分を沈殿させた被処理水を、消毒槽Dを介して、流出口としての流出管6から外部に排出可能に構成してある。
【0011】
前記嫌気槽Aは、被処理水が流入管7を通して外部から流入する固液分離槽A1と、固液分離槽A1で固液分離された被処理水を嫌気処理する嫌気処理槽A2とに樹脂製第3隔壁5で区画して、嫌気処理槽A2で嫌気処理した被処理水を第1隔壁3に設けてある流入口8からオーバーフローで好気槽Bに流入させるように構成してあり、固液分離槽A1で固液分離された被処理水を嫌気処理槽A2に移流させる移流口9の複数(本実施形態では二つ)を第3隔壁5に開口させてある。
【0012】
前記固液分離槽A1には、水平断面形状が略コの字状の第1バッフル10を、その上端部分で流入管7の出口側を取り囲む状態で槽壁に固定して、流入管7を通して固液分離槽A1に流入する被処理水の流動方向を下向きに規制してある。
【0013】
前記移流口9の各々は、図3に示すように、直線部を上下方向に沿わせ、かつ、円弧部を槽中央側に配置してある半円形に形成して、固液分離槽A1における被処理水の通常運転状態での最高液面Eと固液分離槽A1の内底面最下部との間の略中央の中間高さ位置に水平方向に並べて配置してあり、固液分離槽A1における被処理水の各移流口9への流入経路を第3隔壁5の壁面に沿わせる案内部材11を、各移流口9毎に各別に設けてある。
【0014】
前記案内部材11は、第3隔壁5の左右方向中心側から移流口9を覆う半割椀状に形成してあり、第3隔壁5の壁面に沿った略水平方向に槽壁側に向けて開口する開口部12を設けて、固液分離槽A1における被処理水が槽壁側から第3隔壁5に沿って開口部12に流入した後、案内部材11の内周面に沿って案内されて移流口9に流入するように構成してある。
【0015】
前記嫌気処理槽A2は、被処理水中に含まれる溶解性有機物質を嫌気性濾床13の濾材に付着生息している嫌気性微生物によって分解処理する嫌気性濾床槽で構成してあり、左右の移流口9を左右両側に亘って一連に囲む平面視で略コの字状の樹脂製囲い板14を、第3隔壁5の嫌気処理槽A2側に固定し、その囲い板14を嫌気処理槽A2における被処理水の通常運転状態での最高液面Eよりも高い位置に延設して、囲い板14の下端側を通過した被処理水が嫌気性濾床13に流入して嫌気処理された後、第1隔壁3に設けてある流入口8からオーバーフローで好気槽Bに流入するように構成してある。
【0016】
前記囲い板14は、図7に示すように、帯板状の複数のリブ23,24,25と第3隔壁5に対する左右の取付け部26とを一体成型し、各取付け部26を介して第3隔壁5の壁面に取り付けることによって、第3隔壁5の嫌気処理槽A2側の壁面を半割矩形筒状に囲んで、その囲み空間27内に壁面に沿った被処理水の流路を形成できるように設けてあり、この囲い板14が被処理水の流動状態の一例としての流動方向を制御する制御部材の一例を構成している。
【0017】
図8は、第3隔壁5に取り付ける前の囲い板14を示し、略扁平に展開した矩形の板状部材28に、他の板部分よりも薄肉で剛性が小さい二つの互いに平行な易可撓部29を、板状部材28の左右側辺に平行な一定方向に沿って左右対称に一連に設けるとともに、板状部材28の左右側辺の各端面に取付け部26を一体に設けてあり、図7に示すように、各易可撓部29を一連に屈曲させて、中央板部分30と左右の側板部分31とで囲む半割矩形筒状に変形した状態で、各易可撓部29を上下方向に沿わせて、第3隔壁5に取り付け自在に構成してある。
【0018】
前記板状部材28における各易可撓部29の両側を挟む板面部分のうちの、図8(ロ)に仮想線で示すように、その易可撓部29を一連に屈曲させることによって外隅部を形成する板面部分の夫々に、易可撓部29との境界に沿って略一連に突出する帯板状の第1リブ23を設けてあるとともに、左右の側板部分31の外側辺に沿って略一連に突出する帯板状の第3リブ25を設けてある。
【0019】
また、各易可撓部29に対して略直角に交差する方向に沿って、中央板部分30の左右の第1リブ23に亘って略一連に突出する帯板状の複数の第2リブ24と、各側板部分31の第1リブ23と第3リブ25とに亘って略一連に突出する帯板状の複数の第2リブ24と、各第2リブ24の倒れ止め部材33の複数とを、板状部材28に一体成型してある。
【0020】
前記倒れ止め部材33の各々は、図8(ニ)に示すように、槽内側に臨ませる外周形状が、第2リブ24の突出端部側と板状部材28の板面側とに亘って、板面側ほど第2リブ24から離れるように一連に傾斜している、側面視で略三角形の板材を第2リブ24と板状部材28とに一体成型して設けてあり、板状部材28の上下方向中間位置の第2リブ24にはその上下両面に設けてある。
【0021】
前記取付け部26は、図9,図10に示すように、第3隔壁5に複数の円形の隔壁貫通孔34を形成して、係合部材35を隔壁貫通孔34の外周部に係合させる被係合部42を設けるとともに、その隔壁貫通孔34の外周部に係合する一対の係合片36を備えた複数の係合部材35を各側板部分31の第3リブ25に一体成型して構成してあり、各係合部材35は、第3リブ25を挟んで第2リブ24に対向する箇所の各々に設けてある。
【0022】
前記係合部材35の各々は、図9に示すように、隔壁貫通孔34に挿通した状態でその隔壁貫通孔34の内側に入り込ませる円柱状基部37と、隔壁貫通孔34から突出させる軸部38とを同芯状に設けるとともに、軸部38の先端頭部39に一対の係合片36を設けて構成してある。
【0023】
前記一対の係合片36は、隔壁貫通孔34に対する挿通方向で後方側端部どうしが隔壁貫通孔34の径よりも大きく離間するように、挿通方向上手側に向けてハの字状に拡げた姿勢で先端頭部39に設けてあり、正面視で隔壁貫通孔34よりも小径の先端頭部39を隔壁貫通孔34に押し込むことにより、後方側端部どうしが互いに近接するように係合片36を強制的に弾性変形させて、隔壁貫通孔34から抜け出た係合片36の復帰変形で、図10に示すように、隔壁貫通孔34の外周部に抜け止め状態で係合させるように構成してある。
【0024】
前記隔壁貫通孔34周りには、その隔壁貫通孔34の外周部に係合している係合片36を囲んで、メンテナンス用のバキュームホースなどの他物との引っ掛かりや衝突などから保護する円筒状の保護部材40を一体成型してあり、また、各係合部材35における円柱状基部37の軸部38側外周面には、隔壁貫通孔34を通した被処理水の通流を防止できるように、円柱状基部37と隔壁貫通孔34の内周面との隙間を塞ぐ円環状の止水フィン41を薄肉鍔状に一体形成してある。
【0025】
前記好気槽Bは、輪郭形状が略球形の多数の樹脂製担体15を槽内に流動可能に充填するとともに、ばっ気用散気管16を設けて、散気管16から吹き込んだ空気でそれらの担体15を攪拌しながらばっ気することにより、担体15の表面に付着生成している生物膜と被処理水とを繰り返し接触させて、被処理水中の有機物の分解除去や窒素化合物の酸化を行う担体流動槽で構成してあり、担体流出防止用の多孔板17を槽上部に設けてある。
【0026】
そして、第2隔壁4の下端側を沈殿槽C側に屈曲させて、好気処理した被処理水を第2隔壁4の下端と槽内底面との間の流出口18から沈殿槽Cに流出させるように構成し、槽底部に溜まった固形分を嫌気槽Aに返送する返送装置19を設けてある。
【0027】
前記嫌気処理槽A2内の被処理水を上向きに流動させて流入口8からオーバーフローさせる第2バッフル20を、第1隔壁3の嫌気処理槽A2側に設けてある。
【0028】
前記返送装置19は、エアリフトポンプ式の吸入管21を返送管22に連通接続するとともに、その吸入口を槽底部近くに開口させて、槽底部に溜まった固形分を、返送管22を通して、固液分離槽A1の第1バッフル10の内側から嫌気槽Aに返送できるように構成してある。
【0029】
〔その他の実施形態〕
1.本発明による浄化槽の囲い板は、単一の易可撓部のみを設けてあっても良い。また、易可撓部は3箇所以上設けてあっても良い。
2.本発明による浄化槽の囲い板は、第1リブや第2リブを断続的に設けてあっても良い。
3.本発明による浄化槽の囲い板は、浄化槽の槽本体の周壁に対する取付け部を設けてあっても良い。
4.本発明による浄化槽の囲い板は、周壁又は隔壁に対してボルトなどで取り付ける取付け部を設けてあっても良い。
5.上記実施形態では、易可撓部を上下方向に沿わせて制御部材を隔壁に取り付けたが、本発明はこれに限定されない。例えば易可撓部を左右方向や斜め方向に沿わせて取り付けても良い。
6.本発明による浄化槽の囲い板は、第1リブに倒れ止め部材を設けてあっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】浄化槽の内部を示す平面図
【図2】浄化槽の内部を示す側面図
【図3】図2のIII −III 線矢視図
【図4】図2のIV−IV線矢視図
【図5】図2のV−V線矢視図
【図6】図2のVI−VI線矢視図
【図7】要部の斜視図
【図8】(イ)要部正面図,(ロ)要部一部断面上面図,(ハ)要部一部断面側面図,(ニ)要部一部断面側面図
【図9】要部側面図
【図10】(イ)要部側面図,(ロ)要部一部断面側面図,(ハ)要部一部断面平面図
【符号の説明】
【0031】
2 槽本体
5 隔壁
23 第1リブ
24 第2リブ
26 取付け部
27 囲み空間
28 板状部材
29 易可撓部
32 外隅部
33 倒れ止め部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浄化槽の槽本体の周壁又は前記槽本体の内側を区画する隔壁に対する取付け部を設け、前記周壁又は前記隔壁の壁面に前記取付け部を取り付けることによってその壁面を半割筒状に囲み、その囲み空間内に前記壁面に沿った被処理水の流路を形成する浄化槽の囲い板であって、
略扁平に展開した形状の板状部材に、他の板部分よりも剛性が小さい易可撓部を板面の一定方向に沿って一連に設け、
前記板状部材の前記易可撓部を一連に屈曲させて半割筒状に変形した状態で、前記周壁又は前記隔壁に取り付け自在に構成してある浄化槽の囲い板。
【請求項2】
前記板状部材における前記易可撓部の両側を挟む板面部分のうちの、その易可撓部を一連に屈曲させることによって外隅部を形成する板面部分の夫々に、前記易可撓部との境界に沿って略一連に突出する第1リブを設けてある請求項1記載の浄化槽の囲い板。
【請求項3】
前記板状部材に、前記易可撓部に対して交差する方向に沿って略一連に突出する第2リブと、その第2リブの倒れ止め部材とを設けてある請求項1又は2記載の浄化槽の囲い板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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