説明

浄化槽

【課題】 本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、軽量であり、さらに設置後に内部および外部の圧力にも十分耐え、浄化槽内の容量を無駄なく利用して汚水を処理する浄化槽を提供することを目的としている。
【解決手段】 周囲にフランジを有した上槽と、周囲にフランジを有した下槽と、上記上槽と下槽とをフランジを介して接合した内部空間に配置される複数の仕切板とを備え、上記上槽の仕切板にて区画された最大容量部側壁厚みが、上槽の他区画側壁厚みと同等以下であり、上記下槽の仕切板にて区画された最大容量部側壁厚みが、下槽の他の区画側壁厚みと同等以上である浄化槽。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土中に埋設されて一般家庭等から排出される生活雑排水等を処理する浄化槽に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の浄化槽について、図4を用いて説明する。
この種の浄化槽において、槽体が少なくとも上槽1と下槽4の2つに分割されるフランジ接合方式の浄化槽では、一般に、周囲にフランジ3を有した上槽と、周囲にフランジ3を有した下槽と、上記上槽と下槽とをフランジ3を介して接合して組み立てられている。
【0003】
浄化槽の内部には、浄化槽としての機能上内部を区画する複数の仕切板を有しており、嫌気槽、好気槽、および消毒槽など各機能別に区画されており、各区画は排水を効率よく浄化するための各種部材を充填し、流水路を設けてある。この種の浄化槽は、し尿処理だけの単独槽としても、あるいはし尿と家庭排水の両方を浄化処理する合併浄化槽としても使用できる。
【0004】
また、この種の浄化槽は、合併処理としての用途が増加していく中で、大型化が進んでいる一方で、特許文献1に記載されるように、変形防止のため、凹凸形状のリブ構造2を設けて、構造体としての剛性を確保している。
【特許文献1】特許3177078号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示すものは、上下槽に凹凸リブ2を設けることで、浄化槽の内部および外部からの圧力に対応させようとしており、当該リブ2の数が増えれば増えるほど、浄化槽の重量が増え、必ずしも軽くて強い構造物が得られない。
また、リブによって、浄化槽内も凹凸が発生し、短絡流や死水域が発生しやすくなり、容量を無駄にしてしまう。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、軽量であり、さらに設置後に内部および外部の圧力にも十分耐え、浄化槽内の容量を無駄なく利用して汚水を処理する浄化槽を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下のものに関する。
(1)周囲にフランジを有した上槽と、周囲にフランジを有した下槽と、上記上槽と下槽とをフランジを介して接合した内部空間に配置される複数の仕切板とを備え、上記上槽の仕切板にて区画された最大容量部側壁厚みが、上槽の他区画側壁厚みと同等以下であり、上記下槽の仕切板にて区画された最大容量部側壁厚みが、下槽の他の区画側壁厚みと同等以上である浄化槽。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、浄化槽の重量を軽量化することができるとともに、浄化槽の外槽の材料費を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の浄化槽の1実施例について図1を用いて説明する。
浄化槽の上槽5は、天板6と長手方向の側壁7と短手方向の側壁8、8‘に囲まれて、周囲にフランジ9を有し、下側が開口していると共に、天板6のマンホール取付箇所10、11、12には、マンホール形状に合わせた開口を有している。
また、仕切板の挿入部13、14、15には、仕切板挿入時にガイドとなるように、リブが設けられている。このリブは、嫌気槽16、17、好気槽18および処理水槽19を仕切板で区分するために設けられている。
さらに、一方の短手方向の側壁8には、排水の流入口20が設けられ、もう一方の短手方向の側壁8’には、処理水の流出口21が設けられている。
【0010】
浄化槽の下槽22は、底板23と、長手方向の側壁24と、短手方向の側壁25、25‘に囲まれて、周囲にフランジ26を有し、上側が開口している。
また、仕切板の挿入部27、28、29には、仕切板挿入時にガイドとなるように、リブが設けられている。このリブは、嫌気槽16、17、好気槽18および処理水槽19を仕切板で区分するために設けられている。
【0011】
図1に示す浄化槽の上槽5と下槽22材質は、繊維強化プラスチック(FRP)、塩化ビニル、ポリプロピレン、メタセシス重合性環状オレフィンによって形成される架橋重合体等が用いられるが、好ましくは、メタセシス重合性環状オレフィンによって形成される架橋重合体を用いられる。
【0012】
架橋重合体を形成するためのメタセシス重合性環状オレフィンとしては、メタセシス重合性シクロアルケン基を分子中に1〜2個含有するものが使用される。好ましくは、ノルボルネン骨格を分子中に少なくとも1つ有する化合物である。これらの具体例としては、ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン、シクロペンタジエン−メチルシクロペンタジエン共二量体、5−エチリデンノルボルネン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、5−シクロヘキセニルノルボルネン、1,4,5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、1,4−メタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチリデン−1,4,5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチリデン−1,4,5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−ヘプタヒドロナフタレン、1,4,5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−ヘキサヒドロナフタレン、エチレンビス(5−ノルボルネン)などを挙げることができ、これらの混合物も使用することができる。特にジシクロペンタジエンまたはそれを50モル%以上、好ましくは70モル%以上含む混合物が好適に用いられる。
【0013】
図1に示す浄化槽の内部構造を、図2を用いて説明する。
浄化槽は、浄化槽としての機能上浄化槽内部に、区画するための仕切板30、31、32が必要であるが、この仕切板30、31、32は、隣接する嫌気槽16と嫌気槽17、嫌気槽17と好気槽18、好気槽18と処理水槽19を隔てるものであれば特に制限されるものではない。
しかしながら、浄化槽構造体として、内圧、外圧に対する変形防止には重要であり、該仕切板に剛性の高い材料あるいは構造とすることにより、浄化槽全体の変形を防止することができる。
【0014】
浄化槽の組立後の状態を図3を用いて説明する。
浄化槽は、上槽5と下槽22とを、フランジ9、26を介して接合し、内部空間に仕切板30、31、32を備え、上槽5の最大容量部側壁である上槽嫌気槽第1室38の厚みが、上槽の他の区画側壁である上槽嫌気槽2側壁39、上槽好気槽側壁40、上槽処理水槽側壁41の厚みと同等以下であり、下槽22の仕切板にて区画された最大容量部側壁である下槽嫌気槽1側壁42の厚みが、下槽の他の区画側壁である下槽嫌気槽2側壁43、下槽好気槽側壁44、下槽処理水槽側壁45の厚みと同等以上とする。
【0015】
最大容量部は、浄化槽全体に対し40〜60%の容積を占めているのが好ましく。より好ましくは、45〜55%の容積を占めている構造を好適に用いることができる。
また、最大容量部側壁厚みは、10mm以下の厚みを有しているものが好ましく。より好ましくは、4mm以下の厚みを好適に用いることができる。
【0016】
上槽の最大容量部側壁の厚みを他区画側壁の厚みと同等以下にできるのは、最大容量部側壁が、嫌気槽ろ床上部空間であるため、水圧による圧力がかかるのみであり、変形量が大きくても、槽の破損等に至らないレベルであれば、問題無いためである。
一方、上槽5のその他の側壁部は、上部にも、ろ材47、48およびろ材の押え部材50a、51aが設けられており(図2参照)、ろ材47、48の漏れや押え部材50a、51aの破損等を防ぐ必要があり、また、上部にはマンホールが近接して設けられているため、マンホールの枠部分の高低差が発生して、マンホールが閉まりづらくなる等の問題が発生する可能性があるため、肉厚を厚くして、変形を抑える必要がある。
このとき、リブ等で剛性をもたせても良いが、ろ材押さえ部材の形状等が複雑になり、短絡流が発生したり、死水域ができ易くなるため、肉厚で調整するほうが好ましい。
【0017】
下槽22の最大容量部側壁の厚みを他区画側壁の厚みと同等以上にする必要があるのは、最大容量部側壁は、水圧による圧力を支えるだけでなく、嫌気槽として固液分離された汚泥を貯留するため、他の側壁部にくらべかかる力が大きいためである。このとき、下槽22の変形は、上槽5の変形量が大きいと、上槽5に引っ張られてフランジ部9、26周辺において大きく変形してしまいそうだが、フランジ形状がリブと同様の効果を発揮して剛性をもつので、上槽5の変形の影響は少ない。
【実施例】
【0018】
以下、実施例を挙げて、本発明を説明する。なお、実施例は説明のためのものであって、本発明はこれらに限定されるわけではない。まず、図1を用いて実施例を説明する。
図1の外形形状で、側壁の肉厚を変化させたものを実施例1として制作し、肉厚の同じものを比較例1として制作した。実施例1及び比較例1の浄化槽は、その材質を共にジシクロペンタジエンとした。
【0019】
実施例1と比較例1の各浄化槽の容量、各区画間の寸法は、同じにしており、浄化槽内部の有効容量を2.091立米とし、嫌気槽16の容量を1.035立米とし、嫌気槽17の容量を0.517立米とし、好気槽18の容量を0.400立米とし、処理水槽19の容量を0.139立米とし、各槽の比率を表1に示す。
但し、嫌気槽1(符号16)と処理水槽(符号19)の寸法は、外槽内面から仕切板までの寸法である。表1より最大容量部は嫌気槽1(符号16)であることが分かる。
【0020】
【表1】

【0021】
実施例1と比較例1との浄化槽の肉厚分布は、表2に示すようにした。表2より、実施例1において、最大容量部である嫌気槽1(符号16)の上槽側壁38の肉厚が3.5mmとなっており他区画側壁の肉厚に対し同等以下となっている。最大容量部である嫌気槽1(符号16)の下槽側壁42の肉厚は、6.7mmとなっており、他区画側壁肉厚に対し同等以上を確保していることが分かる。尚、表2に示す数値の単位は、全てmmである。
【0022】
【表2】

【0023】
実施例1及び比較例1の浄化槽を用いて、JIS A4101の剛性試験に基づき、槽内に規定水位まで水を張って変形量を測定した。JIS A4101より、浄化槽としての本体剛性は、浄化槽高さの1.5%以下かつ最大幅の3.0%以下という品質基準がある。実施例1及び比較例1の浄化槽は、浄化槽高さが1750mm、最大幅が980mmであることから、変形量は26.3mm以下かつ29.4mm以下であればよい。
【0024】
表3は、実施例1と比較例1の浄化槽の、各部位の変形量を示す。表3の結果から、実施例1に示す浄化槽は、JIS A4101の基準を満たしており、いずれの部分の変形量もろ材、ろ材押え部材およびろ材受け部材等の破損の発生等は無く、浄化槽の機能上問題無く、浄化槽を効率よく軽量化することが出来ていることが認められた。尚、表3に示す数値の単位は、全てmmである。
【0025】
【表3】

【0026】
図3の外形形状で、側壁の肉厚を変化させたものを実施例2として制作し、肉厚の同じものを比較例2として制作した。実施例1及び比較例1の浄化槽は、その材質を共にジシクロペンタジエンとした。
【0027】
実施例2と比較例2の各浄化槽の容量、各区画間の寸法は、同じにしており、浄化槽内部の有効容量を2.849立米とし、嫌気槽16の容量を1.468立米とし、嫌気槽17の容量を0.842立米とし、好気槽18の容量を0.400立米とし、処理水槽19の容量を0.139立米とし、各槽の比率を表4に示す。
【0028】
【表4】

【0029】
実施例2と比較例2との浄化槽の肉厚分布は、表5に示すようにした。表5より、実施例2において、最大容量部である嫌気槽1(符号16)の上槽側壁38の肉厚が3.5mmとなっており他区画側壁の肉厚に対し同等以下となっている。最大容量部である嫌気槽1(符号16)の下槽側壁42の肉厚は、6.7mmとなっており、他区画側壁肉厚に対し同等以上を確保していることが分かる。尚、表5に示す数値の単位は、全てmmである。
【0030】
【表5】

【0031】
実施例2及び比較例2の浄化槽を用いて、JIS A4101の剛性試験に基づき、槽内に規定水位まで水を張って変形量を測定した。JIS A4101より、浄化槽としての本体剛性は、浄化槽高さの1.5%以下かつ最大幅の3.0%以下という品質基準がある。実施例2及び比較例2の浄化槽は、浄化槽高さが1750mm、最大幅が980mmであることから、変形量は26.3mm以下かつ29.4mm以下であればよい。
【0032】
表6は、実施例2と比較例2の浄化槽の、各部位の変形量を示す。表6の結果から、実施例2に示す浄化槽は、JIS A4101の基準を満たしており、いずれの部分の変形量もろ材、ろ材押え部材およびろ材受け部材等の破損の発生等は無く、浄化槽の機能上問題無く、浄化槽を効率よく軽量化することが出来ていることが認められた。尚、表6に示す数値の単位は、全てmmである。
【0033】
【表6】

【0034】
本発明の浄化槽は、通常の浄化槽内部と同じであり、嫌気槽、好気槽、消毒槽など各材能別に区画されており、各区画は排水を効率良く浄化するための各種部材を充填し、かつ流水路を設けてある。本発明の浄化槽はし尿処理だけのいわゆる単独槽としても、あるいはし尿と家庭排水の両方を浄化処理する合併処理浄化槽としても使用できる。特に本発明の浄化槽は大型化、特に内容積が2m以上のものに適しており、今後環境対策の上から需要の大きい合併浄化槽の用途に特に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の1実施例である浄化槽の外形形状。
【図2】図1に示す浄化槽の内部構造。
【図3】本発明の別の実施例である浄化槽の外形形状
【図4】従来の浄化槽の形状。
【符号の説明】
【0036】
1…上槽、2…凹凸リブ、3…フランジ、4…下槽、5…上槽、6…天板、7…側壁、8,8‘…側壁、9…フランジ、10…マンホール取付箇所、11…マンホール取付箇所、12…マンホール取付箇所、13…上槽仕切板挿入部、14…上槽仕切板挿入部、15…上槽仕切板挿入部、16…嫌気槽1、17…嫌気槽2、18…好気槽、19…処理水槽、20…流入口、21…流出口、22…下槽、23…底板、24…側壁、25,25‘…側壁、26…フランジ、27…挿入部、28…挿入部、29…挿入部、30…仕切板、31…仕切板、32…仕切板、37…消毒槽、38…上槽嫌気槽1側壁、39…上槽嫌気槽2側壁、40…上槽好気槽側壁、41…上槽処理水槽側壁、42…下槽嫌気槽1側壁、43…下槽嫌気槽2側壁、44…下槽好気槽側壁、45…下槽処理水槽側壁、46…嫌気槽1ろ材、47…嫌気槽2ろ材、48…好気槽ろ材、49a…ろ材押え部材、49b…ろ材受け部材、50a…ろ材押え部材、50b…ろ材受け部材、51a…ろ材押え部材、51b…ろ材押え・受け部材、51c…ろ材受け部材。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲にフランジを有した上槽と、周囲にフランジを有した下槽と、上記上槽と下槽とをフランジを介して接合した内部空間に配置される複数の仕切板とを備え、上記上槽の仕切板にて区画された最大容量部側壁厚みが、上槽の他区画側壁厚みと同等以下であり、上記下槽の仕切板にて区画された最大容量部側壁厚みが、下槽の他の区画側壁厚みと同等以上である浄化槽。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−55323(P2008−55323A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−235485(P2006−235485)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(301050924)株式会社日立ハウステック (234)
【Fターム(参考)】