説明

浄水器用カートリッジ

【課題】中空糸膜の浄水能力を最大限に活用することができると共に、この場合でも中空糸膜の充填密度を十分な値に確保することができる浄水器用カートリッジの提供。
【解決手段】活性炭部10より中空糸膜部20を小径とし、それらの境界部に段差部22を設ける。活性炭部10は、活性炭の充填量を規定の総ろ過水量を得るために要求される最少充填量に設定し、かつ、直径及び軸方向長さを当該最少充填量に応じた直径及び軸方向長さに設定して、上側キャップ12及び下側キャップ11の外径を対応する直径に設定している。一方、中空糸膜部20は、中空糸膜の充填量を中空糸膜用の浄水能力としての規定の総ろ過水量を得るために要求される最少充填量に設定すると共に、中空糸膜ケース21の直径を、上側キャップ12及び下側キャップ11の外径よりも小さく、かつ、前記最少充填量の中空糸膜を密に充填して収納する直径としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛇口一体型浄水器や浄水器専用水栓等の連続式の浄水器(最小動水圧以上の原水を連続的に浄化する浄水器)に内蔵して好適に使用することができる浄水器用カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、据置き型浄水器や蛇口一体型浄水器や浄水器専用水栓等の連続式の浄水器は、水道水である原水の通水経路上に浄水器用カートリッジを収納及び装着して、浄水器用カートリッジにより原水中の有害物質や微生物を除去して浄化し、浄化後の水(浄水)を浄水器の吐水口から吐出している。この種の浄水器用カートリッジとしては、例えば、特許文献1に記載の技術がある。
【0003】
特許文献1には、一般的な浄水器用カートリッジの構造が開示されている。具体的には、浄水器用カートリッジは、一般に、ろ材(典型的には活性炭)を収納するろ材収納部と、中空糸膜を収納する中空糸膜収納部とで主体が構成され、ろ材収納部に収納したろ材の底面や外周面(特許文献1の場合は外周面)から供給した原水をろ材の内部(特許文献1の場合はろ材の軸心方向に延びる円筒状の中空空間)に動水圧によって供給し、ろ材によって原水中の有害物質(所定径以下の有機物やカビ臭原因物質等)を吸着によりろ過して除去した後、ろ材通過後の水を中空糸膜に供給し、前記ろ材によって除去できない有害物質(所定径以上の細菌や微生物やさび等)を次段(下流側の)中空糸膜の膜分離作用によってろ過して除去するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−88125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、本発明者らは、従来の浄水器用カートリッジが、特許文献1に記載の技術も含め、主に活性炭からなる吸着作用によるろ材(以下「吸着ろ過材」という。)と、中空糸膜からなる膜分離作用によるろ材(以下、「膜分離ろ過材」という。)とを単純円筒状の収納部の上流側及び下流側にそれぞれ収納して配置する一方、収納部については、主に、吸着ろ過材の仕様(能力及び寸法・形状)に合わせてその寸法・形状を設定している点に着目した。即ち、従来の浄水器用カートリッジでは、まず、吸着ろ過材の浄水能力(基準(JIS S 3201)により吸着ろ過材用に設定された総ろ過水量、即ち、吸着ろ過材に要求される吸着成分の除去率が当初の除去率の80%となるときの総ろ過水量)が規定の浄水能力以下とならないよう、吸着ろ過材の種類及び充填量を設定して当該吸着ろ過材の寸法(直径及び軸方向長さ)を決定し、当該寸法の吸着ろ過材に対応する寸法となるよう前記収納部の寸法を設定している。したがって、単純円筒状の収納部の直径は、全体として、吸着ろ過材の外径に対応する直径(内径)となり、これに合わせて、収納部において中空糸膜を収納する収納部の下流側部分の直径(内径)も、上記吸着ろ過材を収納する上流側部分の直径(内径)とほぼ同一の内径となる。
【0006】
そして、本発明者らは、上記のように吸着ろ過材の直径に合わせて収納部の直径を設定し、当該収納部の下流側部分に中空糸膜を充填して収納すると、中空糸膜の充填量が中空糸膜に要求される浄水能力(基準(JIS S 3201)により中空糸膜用に設定された総ろ過水量、即ち、中空糸膜による膜分離時のろ過流量が当初のろ過流量の50%となるときの総ろ過水量)を大きく超える浄水能力となることを鋭意研究の結果見出した。即ち、本発明者らの知見によれば、従来の連続式浄水器で使用される浄水器用カートリッジでは、中空糸膜の浄水能力が必要以上の浄水能力となり、吸着ろ過材の製品寿命が終了したとき(規定の浄水能力未満となったとき)でも、中空糸膜の浄水能力に余剰があり中空糸膜の製品寿命はまだ残存しているにもかかわらず、中空糸膜は吸着ろ過材と一体化されているため、浄水器用カートリッジ全体の交換に伴って廃棄されることになり、中空糸膜の余剰能力を活用できない(余剰能力分だけ無駄になる)ことになる。一方、本発明者らは、吸着ろ過材の浄水能力が規定値未満となった時点で中空糸膜の浄水能力も規定値未満となるようにすると、中空糸膜の充填量を従来の充填量よりも相当程度減少する必要があり、この場合、収納部の下流側部分に当該充填量の中空糸膜を充填して収納すると、中空糸膜の各中空糸間の間隙が大きくなりすぎてしまう(充填密度が小さくなりすぎてしまう)ことから、中空糸膜本来の膜分離作用による除去効果を減少するおそれがあり、この点を改善する必要性に想到した。
【0007】
また、本発明者らは、浄水器用カートリッジの収納部の形状が単純円筒状であると、特に、浄水器専用水栓等の装着対象に適用した場合に、当該浄水器専用水栓において設置面から上方に立設される浄水器用カートリッジの収容部の外観形状や意匠が、浄水器用カートリッジの外観形状である単純円筒状に対応する単純形状に限定されることにも着目した。即ち、本発明者らは、浄水器専用水栓等の装着対象の外観形状を多様化してそのデザイン性乃至意匠性を向上する点からも、従来の浄水器用カートリッジの収納部分の構成を改善する必要性に想到した。
【0008】
そこで、本発明は、吸着ろ過材の浄水能力が規定値未満となった時点で中空糸膜の浄水能力も規定値未満となるようにすることにより中空糸膜の浄水能力を最大限に活用することができると共に、この場合でも中空糸膜の充填密度を十分な値に確保することができ、更に、装着対象の浄水器の外観形状を多様化してそのデザイン性乃至意匠性を向上することができる浄水器用カートリッジの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る浄水器用カートリッジは、連続式の浄水器に装着自在とされた規定の浄水能力を有する浄水器用カートリッジであって、吸着ろ過部及び膜分離ろ過部を備える。吸着ろ過部は、吸着ろ過材と前記吸着ろ過材を、その外部から内部へと通水自在とし、かつ、内部を通過した後に所定部位の出水部から外部へと出水自在となるように保持する保持部とからなる。また、膜分離ろ過部は、中空糸膜と、前記吸着ろ過部の保持部の出水部と連通する内部空間を有し、前記中空糸膜を前記内部空間に充填して収納する密閉容器状をなし、かつ、前記中空糸膜の開口端を外部に開放して露出する収納部とからなり、前記吸着ろ過部の軸方向の下流側に同軸状となるよう一体的に連結する。前記吸着ろ過部は、前記吸着ろ過材の充填量を前記吸着ろ過材用の浄水能力としての規定の総ろ過水量(例えば、JIS S 3201に規定の除去率80%での総ろ過水量)を得るために要求される最少充填量に設定し、かつ、前記吸着ろ過材の直径及び軸方向長さを当該最少充填量に応じた直径及び軸方向長さに設定して前記吸着ろ過材を形成すると共に、当該吸着ろ過材を保持する前記保持部の外径を当該吸着ろ過材の直径の外径に対応する直径に設定している。一方、前記膜分離ろ過部は、前記中空糸膜の充填量を前記中空糸膜用の浄水能力としての規定の総ろ過水量(例えば、JIS S 3201に規定のろ過流量50%での総ろ過水量)を得るために要求される最少充填量に設定すると共に、前記収納部の直径を、前記吸着ろ過部の保持部の直径よりも小さく、かつ、前記最少充填量の中空糸膜を密に充填して収納する直径としている。
【0010】
請求項2に係る浄水器用カートリッジは、請求項1の構成において、前記吸着ろ過部の吸着ろ過材は活性炭である。また、前記吸着ろ過部は、前記活性炭の充填量及び容積を前記活性炭用の浄水能力としての規定の総ろ過水量を得るために要求される最少充填量及び最小容積に設定し、かつ、前記活性炭の直径及び軸方向長さを当該最少充填量及び最小容積に応じた直径及び軸方向長さに設定して前記活性炭を円筒状に形成すると共に、当該活性炭を保持する前記保持部の外径を当該活性炭の外径とほぼ同一の外径に設定している。一方、前記膜分離ろ過部は、前記中空糸膜の充填量を前記中空糸膜用の浄水能力としての規定の総ろ過水量を得るために要求される最少充填量に設定すると共に、前記収納部を、前記吸着ろ過部の保持部の直径よりも小さく、かつ、前記最少充填量の中空糸膜を密に充填して収納する直径の円筒状をなす中空糸膜ケースにより構成している。そして、前記中空糸膜ケースにおいて前記活性炭と連結する境界部に設けた段差部によって前記活性炭の上流端側に一体的に連結している。
【0011】
請求項3に係る浄水器用カートリッジは、請求項1または2の構成において、前記膜分離ろ過部は、前記収納部の外周面に、通水方向に沿った矢印状の表示部を設けている。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る浄水器用カートリッジは、吸着ろ過材の浄水能力が規定値未満となった時点で中空糸膜の浄水能力も規定値未満となるようにすることにより中空糸膜の浄水能力を最大限に活用することができると共に、この場合でも中空糸膜の充填密度を十分な値に確保することができ、更に、装着対象の浄水器の外観形状を多様化してそのデザイン性乃至意匠性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は本発明の一実施の形態に係る浄水器用カートリッジの全体構成を示す斜視図である。
【図2】図2は本発明の一実施の形態に係る浄水器用カートリッジの部品構成を示す分解斜視図である。
【図3】図3は本発明の一実施の形態に係る浄水器用カートリッジの正面図である。
【図4】図4は本発明の一実施の形態に係る浄水器用カートリッジの側面図である。
【図5】図5は本発明の一実施の形態に係る浄水器用カートリッジの平面図である。
【図6】図6は本発明の一実施の形態に係る浄水器用カートリッジの底面図である。
【図7】図7は本発明の一実施の形態に係る浄水器用カートリッジの内部構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態という)を説明する。なお、各実施の形態を通じ、同一の部材、要素または部分には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0015】
本発明の一実施の形態に係る浄水器用カートリッジは、連続式の浄水器のうち、特に、浄水器専用水栓用のカートリッジとして好適に使用されるものであり、浄水器専用水栓のカートリッジ内蔵部に収容して装着されるものである。なお、図示はしないが、浄水器専用水栓とは、通常の水栓と同様の外観を有する一方で、原水吐水機能を有さず、浄水吐水機能のみを有する水栓であり、接地面から起立する円筒状部分をカートリッジ内蔵部としたものである。浄水器専用水栓は、水源(水道の元栓)からの所定動水圧の原水をカートリッジ内蔵部に供給し、カートリッジ内蔵部内の浄水器用カートリッジによって浄化した後、カートリッジ内蔵部から延びる吐水パイプに供給し、吐水パイプの吐水口から浄水を吐出する。一方、本実施の形態の、浄水器用カートリッジは、図1に示すように、吸着ろ過部としての活性炭部10と、膜分離ろ過部としての中空糸膜部20からなる。
【0016】
[活性炭部10]
活性炭部10は、保持部としての下側キャップ11及び上側キャップ12間に活性炭15を挟持して保持した全体構成となっている。詳細には、下側キャップ11は、所定直径の浅い円形キャップ状をなし、円盤状部分の外周から上方に直交して延びるよう(短い円筒状の)外周側係止部11aを一体形成している。また、下側キャップ11は、その底面中心部に、上方に直交して延びるよう、かつ、外周側係止部11aより若干長い突出長となるよう、所定直径(小径)の所定円筒状をなす内周側係止部11bを一体形成している。なお、下側キャップ11の底面(図1の上面)における外周側係止部11aと内周側係止部11bとの間のリング板状部分には、対応する所定直径の連続円環状(または破線を円環状に連続した断続円環状)をなす溝部11cが、複数(合計3個)、一定間隔をおいて同心状となるよう、所定深さで形成されている。また、上側キャップ12は、所定直径の浅い円形キャップ状をなし、円盤状部分の外周から下方に直交して延びるよう(短い円筒状の)外周側係止部12aを一体形成している。上側キャップ12の直径(外径及び内径)は下側キャップ11の直径(外径及び内径)と同一に設定されている。
【0017】
また、上側キャップ12は、外周側係止部12aから半径方向内側に所定距離を置いた位置に係合部としての段差部12bを上方に突出するよう一体形成している。段差部12bの直径(外径)は外周側係止部12aの外径よりも所定距離だけ小さい直径に設定されている。更に、上側キャップ12は、その底面(図1の下面)の中心部に、下方に直交して延びるよう、かつ、外周側係止部12aより若干長い突出長となるよう、所定直径(小径)の所定円筒状をなす内周側係止部12cを一体形成している。上側キャップ12の内周側係止部12cの直径(外径)は下側キャップ11の内周側係止部11bの直径(外径)とほぼ同一(正確にはコンマミリ程度小さい直径)に設定されている。なお、内周側係止部12cの内周面により、内周側係止部12cの内径と同一の直径の断面円形をなす出水部としての連通孔12dが形成されている。また、上側キャップ12の底面(図1の下面)における外周側係止部12aと内周側係止部12cとの間のリング板状部分には、対応する所定直径の連続円環状(または破線を円環状に連続した断続円環状)をなす溝部11cが、複数(合計4個)、一定間隔をおいて同心状となるよう、所定深さで形成されている。
【0018】
活性炭15は、前記上側キャップ12及び下側キャップ11間に嵌合装着して保持されるものであり、上側キャップ12及び下側キャップ11の内径とほぼ同一(正確にはコンマミリ程度小さい直径)の外径を有する単純円筒状に成形されている。また、円筒状の活性炭15の内周面により、上側キャップ12の内周側係止部12cの内径とほぼ同一(正確にはコンマミリ程度小さい直径)の直径の断面円形をなし、活性炭15の中心部で軸方向の全長にわたって軸心上を延びる浄水流路15Aが形成されている。活性炭15は、繊維状活性炭を圧縮成形等によって前記直径の単純円筒状に成形した固形状活性炭からなる。また、活性炭15は、その材質(繊維状活性炭の種類等)に応じて決定される所定の充填量及び充填密度を有し、また、その直径(外径及び内径)と軸方向長さとにより決定される所定の容積を有している。更に、図2に示すように、活性炭15の外周面の全面には、不織布16が接着等によって貼付されている。図3及び図4に示すように(図1及び図2では図示略)、不織布16の両端縁は、不織布16の上下両端(平行端縁)に対して同一傾斜角度で傾斜する傾斜状端縁とされ、その傾斜状端縁側の所定幅部分を重ね合せて傾斜状の重ね合せ部(図3中の一対の細線で囲まれる部分)を形成している。なお、活性炭15の浄水流路15Aの上端部(上側の約1/4程度の長さ部分)には、不織布16Aが貼着されている。
【0019】
[中空糸膜部20]
中空糸膜部20は、収納部としての中空糸膜ケース21内に多数の中空糸からなる中空糸膜27を所定の充填量及び所定の充填密度で充填した構成となっている。詳細には、中空糸膜ケース21の主要部(下端を除き高さ方向の大部分を占める部分)は、前記活性炭部10の上側キャップ12の直径(外径)より所定寸法だけ小さい直径(外径)の円筒状をなしている。また、中空糸膜ケース21は、その外径よりも厚み分(厚みの2倍)だけ小さい内径を有し、当該内径で軸方向に延びる断面円筒状の内部空間20Aを内部に形成している。更に、中空糸膜ケース21は、その下端の外周縁から外方へと直交して張り出すよう、略リング状またはフランジ状の段差部22を一体形成している。段差部22は、中空糸膜ケース21の下端から外方に延びた後下方に緒抗して突出するリング状のキャップ形状をなしている。段差部22の内径は、上側キャップ12の段差部12bの外径と同一とされ、段差部22を段差部12bの外周側に密接して係合(浅く嵌合)自在となっている。更に、中空糸膜ケース21の上端部外周面には、その全周にわたって周方向に延びるOリング溝23が形成されている。Oリング溝23には対応する直径のシール材としてのOリング25が弾性的に装着して保持される。また、中空糸膜ケース21の外周面には、周方向に180度の角度を置いて対向する一対の部位(正面及び背面)に、それぞれ、上方に向かう白抜き矢印状の表示部24が(中空糸膜ケース21の外周面から若干浮き上がるようにした浮かし彫り等)によって設けられている。表示部24の内部には、「水流方向」の文字が刻設等により設けられている。
【0020】
中空糸膜27は、多数の中空糸を束ねた後U字状に折り曲げて折り曲げ部分が下方になるよう中空糸膜ケース21内に挿入して充填されている。また、中空糸膜27は、各中空糸の両端を面一に(即ち、中空糸の軸方向と直交する同一平面上に位置するよう)揃え、その開口側端部を中空糸ケース21の開口端部にポッテイングにより固定してポッティング部28とすることにより、中空糸膜ケース21に保持及び固定されている。そして、中空糸膜27は、中空糸膜ケース21内部に配置される部分の外周面が中空糸膜ケース21内の内部空間20Aに面すると共に、ポッティング部28で各中空糸の両端(開口端)が外部に開口(即ち、開放して露出)している。即ち、中空糸膜27の各中空糸の先端(U字状に折り曲げた両端)の開口が、それぞれ、吐水孔29を構成し、中空糸膜27の吐水孔29全体で、中空糸膜ケース21の先端(上端)と面一となる吐出口を構成している。
【0021】
[活性炭部10と中空糸膜部20の一体化]
上側キャップ12と下側キャップ11との間に(不織布16を外周面に貼付した)活性炭15を挟持して保持し、上側キャップ12及び下側キャップ11と活性炭15の上下両端部(対向する上端部の外周面部分)とを、それぞれ、ホットメルト接着剤等によって接着することにより、上記構成のとおり、活性炭15をその外部(不織布16を介した外周面)から内部(浄水流路15A)へと通水自在とし、かつ、内部(浄水流路15A)を通過した後に所定部位(上端中心部)の出水部としての連通孔12dから活性炭の外部(上方中心部)へと出水自在となるように保持した活性炭部10を製作することができる。また、中空糸膜27を密閉容器状の中空糸膜ケース21の内部空間20Aに上記のような形態で収容及び充填して、その開口端部をポッテイングして固定及び保持することにより、上記構成の中空糸膜部20を製作することができる。そして、このように製作した活性炭部10の上端(軸方向の下流側である下流端)に中空糸膜部20を同軸状となるよう一体的に連結することにより、本実施の形態の浄水器用カートリッジを得ることができる。即ち、中空糸膜部20の段差部22を活性炭部10の上側キャップ12の段差部12bに嵌合して、超音波溶着等の接着・結合技術により一体的に接合することにより、活性炭部10及び中空糸膜部20が同軸状に延びる段付き円柱状の外形を呈する本実施の形態の浄水器用カートリッジを製作することができる。
【0022】
[活性炭部10の活性炭15の充填量・容積・直径]
活性炭15は、規定の総ろ過水量を得るために活性炭15に要求される充填量及び容積となるような形状及び寸法を有している。具体的には、活性炭部10は、活性炭15の充填量を、当該吸着ろ過材としての活性炭用の浄水能力としての既定の総ろ過水量(即ち、典型的には、JIS S 3201で定義される、活性炭15の除去物質の除去率が当初の除去率(100%)に対して80%となるまでの総ろ過水量)を得るために要求される最少充填量に設定している。この活性炭15の最少充填量及び容積は、例えば、前記既定の総ろ過水量が3400L(除去率80%)の場合、本実施の形態のような繊維状の活性炭15では、活性炭15は、外径38mm、内径10mm、軸方向長さ50mmの円筒状に形成すれば、要求される充填量及び容積を満足することができる。なお、活性炭15の容積は、同一充填量でも、充填密度に応じて変化する。即ち、活性炭15の充填密度が高いと容積は小さくなり、充填密度が低いと容積は大きくなる。したがって、上側キャップ12及び下側キャップ11は、活性炭15の形状及び寸法に合わせて、その形状及び寸法が設定され、本実施の形態の場合、上側キャップ12及び下側キャップ11の外径は、活性炭の外径に対応する外径(正確には、不織布16の厚み分と上側キャップ12及び下側キャップ11のそれぞれの両側の厚み分を加算した分だけ大きな外径)に設定されている。
【0023】
[中空糸膜部20の中空糸膜27の直径・充填量・充填密度]
中空糸膜27は、規定の総ろ過水量を得るために中空糸膜27に要求される充填量及び充填密度となるように中空糸膜ケース21の内部空間20Aに収容して充填されている。具体的には、中空糸膜部20は、中空糸膜27の充填量を、当該膜分離ろ過材としての中空糸膜27用の浄水能力としての規定の総ろ過水量(即ち、典型的には、JIS S 3201で定義される、中空糸膜27を通過する水の流量であるろ過流量が当初のろ過流量(100%)に対して50%となるまでの総ろ過水量)を得るために要求される最少充填量に設定している。また、この中空糸膜27の最少充填量は、例えば、前記既定の総ろ過水量が3400L(ろ過流量50%)の場合、本実施の形態のような中空糸膜27(例えば、各中空糸の外径が約0.3mm、約0.4mmまたは約0.5mm程度のもの)では、中空糸膜ケース21を、外径32.3mm、最大内径29.5mm(最小内径27.2mm)、軸方向長さ72mmの円筒状に形成して、この中空糸膜ケース21の内部空間20Aに中空糸膜27を密に充填すれば、上記規定の浄水能力を達成するために要求される充填量及び充填密度を満足することができる。なお、中空糸膜の充填密度は、同一充填量でも、中空糸膜ケース21の(内径及び軸方向長さにより決定される)容積に応じて変化する。即ち、中空糸膜ケース21の容積が大きいと充填密度は低くなり、容積が小さいと充填密度は高くなる。本実施の形態では、上記中空糸膜27の充填量及び充填密度を満足すると、中空糸膜部20の直径(中空糸膜ケース21の直径)は、活性炭部10の直径(上側キャップ12及び下側キャップ11の外径)よりも、前記段差部22の水平方向への突出長だけ小さくなり、これにより、前記最少充填量の中空糸膜27を中空糸膜部20の内部空間20Aに密に充填して収納することができる。なお、「密に充填」とは、中空糸膜部20の内部空間20Aにおいて中空糸膜27の隣接する中空糸が密に接触する充填状態以外にも、中空糸の間に微小な隙間が存在する充填状態も含む。
【0024】
[中空糸膜部20の中空糸膜27の充填密度の具体例]
上記のように、本実施の形態の浄水器用カートリッジは、中空糸膜部20の中空糸膜27の総ろ過水量(ろ過流量50%で3400L)を活性炭部10の総ろ過水量(除去率80%で3400L)と同一値に設定した上で、まず、活性炭部10の寸法(特に外径)を設定し、その後、中空膜部20の寸法(特に外径)を前記活性炭部10より所定寸法だけ小さくなるように設定し、これにより、全体が段付円柱状になるようにしている。即ち、本実施の形態の浄水器用カートリッジは、上記形状及び寸法の活性炭部10及び中空糸膜部20としたことにより、下端から上端に向かって段差部22で直径が所定寸法だけ小さくなる段付き円柱状となり、中空糸膜部20の直径及び容積が従来の単純円柱状のものよりも所定割合だけ小径及び小容積となる。これにより、本実施の形態の段付き円柱状の浄水器用カートリッジは、中空糸膜27の充填密度(中空糸膜の収容部の容積に占める中空糸膜の総容積の割合であり、中空糸膜ケース21の断面積に対する収容部中空糸膜27の合計断面積の割合に相当する)を、約75%〜約90%の範囲、好ましくは約80%〜約85%の範囲として、非常に高い密度とすることができ、従来の単純円柱状の浄水器用カートリッジと比較して、活性炭部10を同一直径及び同一軸方向長さと想定した場合に、中空糸膜27の充填密度を大幅に増大することができる。
【0025】
また、例えば、本実施の形態の浄水器用カートリッジは、上記例示の寸法のように、活性炭部10の直径より中空糸膜膜部20の中空糸膜ケース21の直径を小径(最大径2.95cm、最小径2.72cm)とした場合、中空糸膜ケース21の内径(即ち、内部空間20Aの直径)は、最大径の場合で2.95*2.95*3.14=27.33cmとなり、最小径の場合で2.72*2.72*3.14=23.23cmとなる。これに対し、従来例として上記活性炭部10と同一直径(最大径3.8cm、最小径3.6cm)の単純円筒状をなす浄水器用カートリッジの場合、中空糸膜ケースの内径(即ち、内部空間の直径)は、最大径の場合で3.8*3.8*3.14=45.34cmとなり、最小径の場合で3.6*3.6*3.14=40.69cm。したがって、本実施の形態の浄水器用カートリッジは、中空糸膜27の充填密度が、従来例の1.49倍乃至149%(従来例の最小値と本発明の最大値を比較した場合)、従来例の1.66倍乃至166%(従来例の最大値と本発明の最大値を比較した場合)、従来例の1.75倍乃至175%(従来例の最小値と本発明の最小値を比較した場合)、従来例の1.95倍乃至195%(従来例の最大値と本発明の最大値を比較した場合)となり、中空糸膜27の充填密度を従来よりも大幅に増大することができる。
【0026】
[作用及び効果]
本実施の形態の浄水器用カートリッジは、浄水器専用水栓等の浄水器のカートリッジ内蔵部に装着して使用される。このとき、浄水器のカートリッジ内蔵部に通水すると、カートリッジ内蔵部に進入した原水は、上流側の活性炭部10の外周面からその内部に進入するが、このとき、まず、不織布16によって比較的大きな粒径の物質が通過を遮断されて除去される。次に、不織布16からの水が活性炭15の内部に進入してその浄水流路15Aへと放出されるときに、活性炭15内部の吸着構造(多数の細孔)によって、遊離残留塩素、CAT(農薬)、2−MIB(カビ臭原因物質)、溶解性鉛が吸着除去されると共に、一定の濁り原因物質も吸着除去される。その後、活性炭15の浄水流路15Aに進入した水は、連通孔12dを介して中空糸膜部20の内部空間20A内に進入する。そして、活性炭部10から連通孔12dを介して供給された水(一次浄化された一次浄水)が、次段の下流側の中空糸膜部20の内部空間20A内に所定の水圧で吐出されて進入し、内部空間20Aに充填された中空糸膜27の外周面の多数の細孔から内部の軸方向に延びる貫通孔の内部に進入するときに、活性炭15によって捕捉されず活性炭15を通過した有害物質(細菌や原虫等の微生物、さび等)が、中空糸膜27の中空糸壁によって膜分離除去されると共に、残留する濁り原因物質も同様に膜分離除去される。その後、中空糸膜27の各中空糸内部の水(二次浄化された二次浄水)は、中空糸膜27の吐水孔29から吐出される。なお、浄水器カートリッジの下流端にある中空糸膜部20の吐水孔29には、浄水器の吐水パイプに連通する連通孔が水密に対向しており、中空糸膜部20の吐水孔29から吐出された浄水は、浄水器の吐水パイプ内に流入して、吐水パイプ先端の吐水口から吐出される。なお、本実施の形態の浄水器用カートリッジでは、上記構成により、使用可能な最小動水圧が0.05MPaとなり、ろ過流量が2.0L/分となり、浄水能力(JIS S 3201試験による)が、遊離残留塩素、CAT、2−MIB及び溶解性鉛のいずれについても、総ろ過水量3400L(除去率80%)となり、濁りについても、総ろ過水量3400L(ろ過流量50%)となって、従来の蛇口一体型カートリッジ(スパウトインタイプ)等と比較して、非常に高い浄水能力を発揮することができる。
【0027】
このとき、上記のとおり、中空糸膜部20の中空糸膜ケース21が活性炭部10の外形に対して段差部22の分だけ小径の円筒状となっており、中空糸膜27の充填量を当該中空糸膜27自体に要求される浄水能力(例えば、ろ過流量50%で3400L)に必要な量(従来より少ない充填量)としているにもかかわらず、中空糸膜27を中空糸膜ケース21内に密度高く(中空糸が密に接触する状態で)充填することができ、上記規定の浄水能力を達成するために要求される充填量及び充填密度を満足することができる。したがって、中空糸膜27の浄水能力を必要最小限浄水能力とすることができ、活性炭15の寿命が終了したとき(規定の浄水能力未満となったとき)に、中空糸膜27の浄水能力が終了する(中空糸膜27の寿命が終了する)こととなる。その結果、活性炭15及び中空糸膜27を一体化していても、双方が交換時期にあるため、一方を無駄にする(浄水能力が残存するにもかかわらず廃棄する)ようなことがない。即ち、活性炭15の浄水能力が規定値未満となった時点で中空糸膜27の浄水能力も規定値未満となるため、浄水器用カートリッジ全体の交換に伴って、(特に従来のように)中空糸膜27の余剰能力を活用できない(余剰能力分だけ無駄になる)といった不具合を解消することができる。更に、このとき、中空糸膜27の充填量を従来の充填量よりも相当程度減少しても、中空糸膜ケース21に当該充填量の中空糸膜27を充填して収納すると、中空糸膜27の中空糸間の間隙が大きくなりすぎることはなく、上記のように、中空糸膜は必要な高い密度で充填されることから、中空糸膜27本来の膜分離作用による除去効果を十分に発揮する。
【0028】
また、本実施の形態の浄水器用カートリッジは、全体形状が段付き円筒状となり、下流側部分(先端側部分)が上流側部分(基端側部分)よりも小径となっているため、特に、浄水器専用水栓等の装着対象に適用した場合に、当該浄水器専用水栓において設置面から上方に立設される浄水器用カートリッジの収容部の外観形状や意匠を、浄水器用カートリッジの外観形状である段付き円筒状の径の違いに対応して異形状(例えば、先細のテーパー状となる変形円筒状等)の多様な形状とすることができ、浄水器専用水栓等の装着対象の外観形状を多様化してそのデザイン性乃至意匠性を向上することができる。
【0029】
更に、本実施の形態の浄水器用カートリッジは、全体形状が段付き円筒状であるため、浄水器用カートリッジの交換時等において浄水器用カートリッジを浄水器のカートリッジ内蔵部から抜き出すときに、活性炭部10と中空糸膜部20との境界部の段差部22に手の指先を引っ掛けて浄水器カートリッジを容易に取り出すことができ、交換作業を一層簡単に行うことができる。
【0030】
また、本実施の形態の浄水器用カートリッジは、中空糸膜部20の正面及び背面に、それぞれ、水流方向を表す上向き矢印状の表示部24を設けたため、浄水器用カートリッジの交換時等において浄水器用カートリッジを浄水器のカートリッジ内蔵部に挿入するときに、表示部24の表す方向によって浄水器用カートリッジの挿入方向を確認することができると共に、表示部24の表す方向に浄水器用カートリッジを配向して浄水器のカートリッジ内蔵部に挿入することで正確な装着作業を完了することができ、使用者が上流側と下流側とを間違えて挿入することを確実に防止することができる。
【0031】
[発明の範囲に関する補足]
なお、本発明に係る浄水器用カートリッジでは、活性炭部の活性炭は、上記繊維状活性炭以外にも、粉状活性炭や粒状活性炭、または、これを選択的に組み合わせた混合材から所定円筒状に成形した固形状活性炭を使用することもできる。ただし、この場合も、活性炭の充填量及び容積は、上記のように、既定の浄水能力を満足できる最小値とすることで、過剰な量の活性炭による無駄をなくすことができる。また、このとき、中空糸膜の充填量は、上記のとおり、活性炭の充填量とは独立して設定され、中空糸膜自体に要求される既定の浄水能力を満足する最少充填量で収納部に充填することで、過剰な量の中空糸膜による無駄をなくすことができる。更に、本発明の浄水器用カートリッジは、連続式の浄水器であれば、浄水器専用水栓以外の浄水器に適用することができる。また、本発明の浄水器用カートリッジは、吸着ろ過部として、活性炭以外の公知の構成を採用することもでき、更に、吸着ろ過部の保持部も、上記以外の構成とすることができる。
【符号の説明】
【0032】
10:活性炭部(吸着ろ過部)
11:下側キャップ(保持部)、12:上側キャップ(保持部)
15:活性炭(吸着ろ過材)
20:中空糸膜部(膜分離ろ過部)
21:中空糸膜ケース(収納部)、22:段差部
24:表示部、27:中空糸膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続式の浄水器に装着自在とされた規定の浄水能力を有する浄水器用カートリッジであって、
吸着ろ過材と、前記吸着ろ過材を、その外部から内部へと通水自在とし、かつ、内部を通過した後に所定部位の出水部から外部へと出水自在となるように保持する保持部とからなる吸着ろ過部と、
中空糸膜と、前記吸着ろ過部の保持部の出水部と連通する内部空間を有し、前記中空糸膜を前記内部空間に充填して収納する密閉容器状をなし、かつ、前記中空糸膜の開口端を外部に開放して露出する収納部とからなり、前記吸着ろ過部の軸方向の下流側に同軸状となるよう一体的に連結された膜分離ろ過部とを備え、
前記吸着ろ過部は、前記吸着ろ過材の充填量を前記吸着ろ過材用の浄水能力としての規定の総ろ過水量を得るために要求される最少充填量に設定し、かつ、前記吸着ろ過材の直径及び軸方向長さを当該最少充填量に応じた直径及び軸方向長さに設定して前記吸着ろ過材を形成すると共に、当該吸着ろ過材を保持する前記保持部の外径を当該吸着ろ過材の直径の外径に対応する直径に設定し、
前記膜分離ろ過部は、前記中空糸膜の充填量を前記中空糸膜用の浄水能力としての規定の総ろ過水量を得るために要求される最少充填量に設定すると共に、前記収納部の直径を、前記吸着ろ過部の保持部の直径よりも小さく、かつ、前記最少充填量の中空糸膜を密に充填して収納する直径としたことを特徴とする浄水器用カートリッジ。
【請求項2】
前記吸着ろ過部の吸着ろ過材は活性炭であり、前記吸着ろ過部は、前記活性炭の充填量及び容積を前記活性炭用の浄水能力としての規定の総ろ過水量を得るために要求される最少充填量及び最小容積に設定し、かつ、前記活性炭の直径及び軸方向長さを当該最少充填量及び最小容積に応じた直径及び軸方向長さに設定して前記活性炭を円筒状に形成すると共に、当該活性炭を保持する前記保持部の外径を当該活性炭の外径とほぼ同一の外径に設定し、
前記膜分離ろ過部は、前記中空糸膜の充填量を前記中空糸膜用の浄水能力としての規定の総ろ過水量を得るために要求される最少充填量に設定すると共に、前記収納部を、前記吸着ろ過部の保持部の直径よりも小さく、かつ、前記最少充填量の中空糸膜を密に充填して収納する直径の円筒状をなす中空糸膜ケースにより構成し、前記中空糸膜ケースにおいて前記活性炭と連結する境界部に設けた段差部によって前記活性炭の上流端側に一体的に連結していることを特徴とする浄水器用カートリッジ。
【請求項3】
前記膜分離ろ過部は、前記収納部の外周面に、通水方向に沿った矢印状の表示部を設けたことを特徴とする請求項1または2記載の浄水カートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−240259(P2011−240259A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114844(P2010−114844)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成22年4月1日 株式会社早川バルブ製作所発行の「総合カタログ2010−2011」に発表
【出願人】(590006309)株式会社早川バルブ製作所 (18)
【Fターム(参考)】