説明

浄水機能付き水栓

【課題】 水質浄化用カートリッジの外周側を原水流路としているにもかかわらず、水質浄化用カートリッジの外周面から有害物質が原水中に流出してしまうことがないものとする。
【解決手段】 一端側に原水導入部を、他端側に吐水部を備え、原水導入部と吐水部との間に水質浄化用カートリッジを交換可能に収容しているスパウトを備える。水質浄化用カートリッジの外周側から水質浄化用カートリッジ内を透過して吐水部に至る浄水流路と、水質浄化用カートリッジを透過することなく吐水部に至る原水流路とを切り換える切換部を備える。原水導入部から切換部を経て吐水部に至る原水流路は、浄化用カートリッジの外周面から隔壁を介して区画された流路を浄化用カートリッジの外周側に備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水質浄化カートリッジをシャワーヘッドの把持部内に交換可能に配した浄水機能付き水栓に関するものである。
【背景技術】
【0002】
台所または厨房、洗面所あるいは風呂場等で用いられる水栓において、使用時に吐出する水およびまたは湯を浄化する能力を具備した浄水機能付きのものがある。この種の水栓で、特許第4354597号公報には、原水と浄水とを選択的に吐出することができるようにするために、水栓における止水弁部と吐水口との間の筒状部内に円筒形の水質浄化用カートリッジを交換可能に配置するとともに、上記筒状部内に水質浄化用カートリッジ内を通過する浄水流路と、原水がそのまま流れる原水流路と、両流路の切り換え手段とを設けたものが示されている。
【0003】
ところで円筒形の水質浄化用カートリッジは、一般に軸方向一端側にあって活性炭などが納められた第1浄水部と、軸方向他端側にあって中空糸膜が納められた第2浄水部とを備え、第1浄水部ではその外周面から水が流入して第1浄水部内の中央空間部に至り、次いで上記第2浄水部を経て軸方向の他端側から流出する構成となっている。
【0004】
従って上記筒状部内の中央部を水質浄化用カートリッジが占めており、この関係で上記公報に記載のものでは、水質浄化用カートリッジの外周側を原水流路としても用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4354597号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記公報に記載のものでは、水質浄化用カートリッジの外周部を原水流路としても用いていたことから、原水使用時には水質浄化用カートリッジの外周面に沿って原水が流れるものであり、この時、水質浄化用カートリッジの第1浄水部で捕らえられていた有害物質が原水に流出混入してくるという問題があった。
【0007】
本発明はこのような点に鑑みなされたものであって、水質浄化用カートリッジの外周側を原水流路としているにもかかわらず、水質浄化用カートリッジの外周面から有害物質が原水中に流出してしまうことがない浄水機能付き水栓を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、一端側に原水導入部を、他端側に吐水部を備え、上記原水導入部と上記吐水部との間に水質浄化用カートリッジを交換可能に収容しているスパウトを備えるとともに、水質浄化用カートリッジの外周側から水質浄化用カートリッジ内を透過して上記吐水部に至る浄水流路と、水質浄化用カートリッジを透過することなく上記吐水部に至る原水流路と、水が通過する流路を上記浄水流路とするか上記原水流路とするかを切り換える切換部とを備えた浄水機能付き水栓であって、上記原水導入部から上記切換部を経て上記吐水部に至る上記原水流路は、上記浄化用カートリッジの外周面から隔壁を介して区画された流路を浄化用カートリッジの外周側に備えていることに特徴を有している。原水を吐出する際には、水質浄化用カートリッジの外周面から区画されたところを流れるようにしたものである。
【0009】
上記切換部は、上記水質浄化用カートリッジの浄水吐出部に連通する浄水流路を開閉する浄水用弁と、上記原水流路を開閉する原水用弁とを備えたものであるとともに、軸方向に一体的に可動とされた上記浄水用弁と上記原水用弁は、軸方向一方に駆動された時に浄水流路を閉じて原水流路を開き、軸方向他方に駆動された時に浄水流路を開いて原水流路を閉じるものであることが好ましい。
【0010】
殊に、上記浄水用弁と上記原水用弁とは連動部材を介して相互に連結されたものであるとともに、上記浄水用弁は上記連動部材に対して上記浄水流路を閉じる方向にばね付勢されたものとしたり、上記原水用弁は上記連動部材に対して上記原水流路を閉じる方向にばね付勢されたものとすることが好ましい。
【0011】
そして、上記原水流路中に設けられた複数の原水通過口を夫々開閉する複数の原水栓棒で原水用弁が形成され、上記複数の原水栓棒は、上記連動部材に対して異なるクリアランスを有する状態で連動部材に連結されていてもよい。
【0012】
また、上記スパウトの先端部に配された押し釦と、該押し釦を押し込んだ位置と復帰した位置とで保持する機構とを備えて、操作に応じて上記切換部を駆動して上記流路を切り換える上記押し釦は、その外面に押し込み深さによるところの流路切換状態を示す表示部を備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、原水の吐出時には、浄化用カートリッジの外周面から隔壁を介して区画された流路を流れるために、水質浄化用カートリッジの外周側を原水流路としているにもかかわらず、水質浄化用カートリッジの外周面から有害物質が原水中に流出してしまうことがないものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態の一例における浄水吐出設定時のスパウトの縦断面図である。
【図2】同上の原水吐出設定時のスパウトの縦断面図である。
【図3】図1中のA−A線断面を示すものであるとともにストレート吐水設定時の横断面図である。
【図4】図1中のA−A線断面を示すものであるとともに散水設定時の横断面図である。
【図5】同上の側面図である。
【図6】同上のスパウトの吐出部の正面図である。
【図7】同上のスパウトの分解斜視図である。
【図8】同上の水質浄化用カートリッジの斜視図である。
【図9】同上の押し釦とラッチ部の分解斜視図である。
【図10】同上の切換部の分解斜視図である。
【図11】他例における原水栓棒と栓棒ベースの断面図である。
【図12】更に他例における原水栓棒と栓棒ベースの断面図である。
【図13】別の例における部分縦断面図である。
【図14】同上の吐出部の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下本発明を図示の実施の形態の一例に基づいて説明すると、図示例の水栓は、台所の流しや洗面所などで使用されるもので、図5に示すように、水あるいは湯または湯水混合水を通止水する止水部を内蔵した本体部1と、該本体部1における接続口10に対して着脱自在であるとともに上記止水部を通過した原水がフレキシブルホース3を通じて供給されるシャワーヘッドタイプのスパウト2とからなるもので、水質浄化用カートリッジ4はスパウト2内に収納されるために、ここでは本体部1の詳細については説明を省略する。
【0016】
筒状のものとして形成されている上記スパウト2は、その先端側の下部に吐水部21を、先端面に原水と浄水との切り換え操作用の押し釦22を、上記吐水部21の側面に原水の吐出をストレートとするかシャワーとするかの切り換えのための切り換え棒23を備えたもので、図1に示すように、主ケース25と、主ケース25内に固定される弁ケース50と、弁ケース50の後端側に連結される筒状ケース26と、筒状ケース26の更に後端側に連結される根元側筒状ケース27とで器体が形成されるとともに、上部化粧カバー20aと下部化粧カバー20b及び根元側化粧カバー20cによって外面が被覆されたものとなっている。
【0017】
前記本体部1の接続口10には、上記根元側筒状ケース27の後端開口部が嵌合することで着脱自在となり、上記フレキシブルホース3は根元側化粧カバー20cの外面から差し込まれるクリップ24によって根元側筒状ケース27に水密的に連結される。
【0018】
そして上記筒状ケース26とこれの後端側に螺合連結される根元側筒状ケース27とによって囲まれる空間内には、カートリッジ収納ケース28を介して前記水質浄化用カートリッジ4が収納される。
【0019】
この水質浄化用カートリッジ4は、図1及び図8に示すように、中空糸膜42を内蔵するとともにプラグ430を備えた先端キャップ43で先端が閉じられたケース40の後端に管45を接続するとともに、管45の外周に活性炭や多孔質セラミック等からなる円筒状の濾過材41を配置し、後端が閉じられるとともに周壁に通過口を備えている管45の後端部に後方キャップ44を連結したものとして形成されている。
【0020】
上記主ケース25の先端側の内部に固定されている前記弁ケース50内には原水と浄水との切り換えのための切換部5が配設されている。この切換部5は、図10にも示すように、弁ケース50内に固定される弁ボディ58と、浄水用弁としての浄水栓棒54と、原水用弁としての複数本の原水栓棒55と、浄水栓棒付勢ばね57と、復帰ばね53と、栓棒ベース52と、主栓棒51とからなるもので、上記栓棒ベース52の中央に浄水栓棒54が軸方向に可動の状態で取り付けられて図10に示す止め輪59によって抜け止めされている。また、上記栓棒ベース52の周部に形成された複数の切欠に各原水栓棒55の一端の係合溝550が係合することで、栓棒ベース52に複数の原水栓棒55が連結されている。
【0021】
上記弁ボディ58の中央に設けられた浄水通過口586に浄水栓棒54が対向し、上記弁ボディ58の周部に周方向において等間隔で設けられた複数の原水通過口585に原水栓棒55が夫々挿通配置される。また、原水栓棒55の他端面には傘型のパッキン56が装着される。さらに弁ボディ58は二重筒状のものとして形成されて内筒内に上記浄水通過口586が形成されているとともに、内筒と外筒との間には軸方向の前後を区画する隔壁を有しており、上記原水栓棒55はこの隔壁も貫通しているとともに、上記原水栓棒55はパッキンによって隔壁に水密的に接している。
【0022】
そして、前記栓棒ベース52は、弁ケース50内において、弁ケース50内の軸方向に可動となっているとともに、上記復帰ばね53によって弁ボディ58から離れる方向に付勢されている。また栓棒ベース52に対して浄水栓棒54は前記浄水栓棒付勢ばね57によって弁ボディ58側に向けて付勢されている。
【0023】
このために、栓棒ベース52が復帰ばね53に抗して弁ボディ58に接近する時、浄水栓棒54は浄水栓棒付勢ばね57の付勢を受けた状態で浄水通過口586を閉じ、各原水栓棒55は各原水通過口585を開く。復帰ばね53の付勢で栓棒ベース52が弁ボディ58から離れる時、各原水栓棒55が各原水通過口585を上記復帰ばね53の付勢を受けた状態で閉じ、浄水栓棒54が浄水通過口586の端面開口から離れて浄水通過口586を開く。
【0024】
前記弁ケース50の先端側にはラチェットブロック6と前記押し釦22とが配設されている。上記ラチェットブロック6は、図9にも示すように、外ケース61と内ケース62と回転キャップ63とからなるもので、外ケース61は弁ケース50の先端にねじ固定される。内ケース62は後端面を前記栓棒ベース52に当接させる主栓棒51の先端に固定されるもので、外ケース61に対して軸方向にスライド自在となっているとともに、前記栓棒ベース52を付勢する復帰ばね53のばね付勢を主栓棒51を介して受ける。外ケース61内に配される回転キャップ63は、上記内ケース62と上記主栓棒51の先端側の段差部511との間に所要のクリアランスを有した状態で挟まれることで、主栓棒51及び内ケース62と共に軸方向に動くものであるとともに、主栓棒51や外ケース61及び内ケース62に対して軸回りに回転自在となっている。また、回転キャップ63はその後端側のフランジの外周縁から爪630を外周側に突出させている。
【0025】
押し釦22は上記内ケース62に連結されるもので、基部釦222と先端釦221の2つからなり、両者は色の異なるものとして形成されている。
【0026】
そして前記復帰ばね53に抗して押し釦22を押し込めば、主栓棒51を介して栓棒ベース52が押し込まれる。また、押し釦22と共に内ケース62が軸方向に動くとともに回転キャップ63も軸方向に動く。しかも、回転キャップ63の前記フランジと対向する後端面に形成されている傾斜面621が、回転キャップ63のフランジに形成された傾斜面631を押すことで回転キャップ63に軸回りの回転を与える。このために、押し釦22を復帰させた時、回転キャップ63はその外周縁から突出させた爪630を外ケース61における段差611に係止させる状態と、段差612に係止させる状態とが切り替わる。なお、前記段差611,612も傾斜したものとなっているために、回転キャップ63はこれら段差611,612と爪630との摺接によっても軸回りの回転を行って、押し釦22の押し込み操作毎の爪630の係止位置切り換えを行う。
【0027】
今、爪630が段差611に係止しているならば、押し釦22が押し込まれた状態が保持されることになり、この時、主栓棒51が栓棒ベース52を介して浄水栓棒54及び原水栓棒55を後方側に移動させるために、前述のように原水通過口585を開き、浄水通過口586を閉じる。
【0028】
この状態から再度押し釦22を押し込めば、回転キャップ63の爪630が段差612に係止するものとなり、この時には栓棒ベース52と主栓棒51とを介して復帰ばね53の付勢で押し釦22も復帰するとともに、前述のように原水通過口585が閉じられ、浄水通過口586が開かれる。
【0029】
前記吐水部21は、図6に示すように、浄水吐出口210と、ストレート吐出口211と散水口212の3つの吐出口を有しているとともに、前記切り換え棒23によって操作される切換弁7を内蔵している。
【0030】
上記切換弁7は、図3及び図4に示すように、その両端を吐水部21の両側面に露出させる切り換え棒23の中間部に連結されるばね受け70と、ばね受け70に被せられる弁体72と、両者の間に介在する付勢ばね71、そして主ケース50の内部に配設固定されるとともに2つの接続口75,76を有している吐水ケース74とからなるもので、上記弁体72は、切り換え棒23の軸方向操作によって左右に動き、図3に示すように、散水口212に連通する接続口76を閉じてストレート吐出口211に連通する接続口75を開く状態と、図4に示すように、接続口76を開いて接続口75を閉じる状態とを切り換える。
【0031】
また上記弁体72が納められる空間は、前記弁ケース50の外周壁に形成された図10に示す連通口502を通じて、前記弁ボディ58における隔壁よりも後方側の空間582に連通する。そして主ケース25に形成されている浄水吐出口210は、前記弁ケース50の外周壁に形成された図10に示す連通口501と、前記弁ボディ58の外周壁に形成された連通口581を通じて、浄水栓棒54が納められた空間に連通する。なお、弁ケース50における連通口501を設けた部分と連通口502とを設けた部分との間は、弁ケース50外周面に装着されて主ケース25内周面に接するパッキンによって仕切られている。
【0032】
前記本体部1における止水弁を開いた時、フレキシブルホース3を通じて前記筒状ケース26と根元側筒状ケース27とで囲まれるとともに水質浄化用カートリッジ4が納められた空間に原水が流入する。そして押し釦22の操作により、浄水通過口586が開いた状態(図1に示す状態)に設定されているならば、原水は濾過材41の外周面から濾過材41内を通り、管45の内部と中空糸膜42とを経て、浄化された浄水としてプラグ430から吐出される。ここにおいて、上記プラグ430は、前記カートリッジ収納ケース28の先端のプラグ280の内部に嵌り込んでおり、プラグ280は前記弁ボディ58の浄水通過口586に接続されていることから、上記浄水は、浄水通過口586を通過して浄水吐出口210に至り、浄水吐出口210から吐出される。
【0033】
図2に示すように、押し釦22を押し込んだ状態、つまりは原水通過口585が開き、浄水通過口586が閉じられた状態で本体部1の止水弁を開いた時には、フレキシブルホース3から水質浄化用カートリッジ4が納められた空間に流入した原水は、水質浄化用カートリッジ4の外周を小空間を介して囲んでいるカートリッジ収納ケース28の外周面と、筒状ケース26及び根元側筒状ケース27の内周面との間に設けられている流路を経て原水通過口585に至り、原水通過口585と弁ボディ58における隔壁より後方側の前記空間582を経て、切換弁7における弁体72の収納空間に達し、切り換え棒23の操作で選択的に開かれている接続口75もしくは接続口76を経てストレート吐出口211または散水口212から吐出される。
【0034】
浄水と原水の切り換え及び原水吐出をストレート吐出とするか散水口212からのシャワー吐出とするかの切り換えがいずれもスパウト2の先端部において行うことができるものである。また、原水の吐出時には、押し釦22における先端釦221のみが上部化粧カバー20aから露出しているものの、浄水吐出時には、先端釦221と異なる色の基部釦222も化粧カバー20aから露出するために、押し釦22が切り換え状態を表示する表示部材を兼ねており、浄水吐出状態に設定されているか、原水吐出状態に設定されているかを明確に判断することができる。
【0035】
そして原水吐出に設定した時の水質浄化用カートリッジ4付近での原水の流れは、水質浄化用カートリッジ4の外周面とは隔壁として機能することになるカートリッジ収納ケース28で区画された流路を通るものであり、このために水質浄化用カートリッジ4の濾過材41に捉えられている物質が混入してしまうことが殆どないものである。
【0036】
また、浄水と原水との切り換えのための切換部5は、前述のように、復帰ばね53で付勢された状態で原水栓棒55が原水通過口585を閉じ、浄水栓棒付勢ばね57で付勢された状態で浄水栓棒54が浄水通過口586を閉じるものであり、いずれもばねの付勢を受けた状態で閉じるために、構成部材の寸法的なばらつきやガタの影響を受けることなく、原水通過口585及び浄水通過口586を確実に閉じることができる上に、浄水に原水が混入してしまうようなこともないものである。また、過剰な力で閉じることがないために、構成部材の破損を防止することができて耐久性及び信頼性を向上させることができる。
【0037】
上記実施例においては、栓棒ベース52の中央を付勢する単一の復帰ばね53が原水栓棒54の付勢も担っているものを示したが、図11に示すように、複数個の原水栓棒55の夫々に付勢ばね559を装着して、該付勢ばね559による付勢力を受けた状態で原水栓棒55が原水通過口585を閉じるようにしてもよい。図中556はばね受けであり、付勢ばね559は栓棒ベース52とばね受け556との間に配されている。
【0038】
また、栓棒ベース52と原水栓棒55との間の軸方向連結に関して、複数本の原水栓棒55で異なるクリアランスを持つものとしておくのも好ましい。図12に示すように、クリアランス557を設定した場合、押し釦22に押されることで栓棒ベース52が弁ボディ58側に動く時、各原水栓棒55が動き出すタイミングをずらすことができ、この結果、複数の原水通過口585が開くタイミングをずらすことができる。そして原水通過口585を開く動きは、原水栓棒55を原水圧に抗する方向の動きとなっていることから、徐々に通水されて止水時の水圧が徐々に開放されることになり、従って、浄水と原水の切換部5の操作荷重を低減することができる。また、複数の原水通過口585を一度に閉じることがないために、大流量を瞬時に止水するときに発生する水撃現象を低減することができて耐久性を向上させることができる。
【0039】
なお、複数の原水栓棒55の動きに差を持たせることは、図12に示す付勢ばね559を設けた例に限るものではなく、前述の復帰ばね53で原水栓棒55を付勢するものにおいても、原水栓棒55における栓棒ベース52と係合する前記係合溝550の溝幅を変えて異なるクリアランスを持つものとすることで実現することができる。
【0040】
図13及び図14に他の実施例を示す。これは前記実施例とほぼ同じ構成を持つものであるが、浄水専用の浄水吐出口210を設けずに、ストレート吐出口211(もしくは散水口212)から浄水も吐出するようにしたもので、原水通過口585を経た原水と、浄水通過口586を経た浄水のいずれもが、切換弁7における弁体72が配された空間を通るようにしている。
【符号の説明】
【0041】
1 本体部
2 スパウト
4 水質浄化用カートリッジ
5 切換部
6 ラチェットブロック
7 切換弁
22 押し釦
52 栓棒ベース
53 復帰ばね
54 浄水栓棒
55 原水栓棒
57 浄水栓棒付勢ばね
58 弁ボディ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側に原水導入部を、他端側に吐水部を備え、上記原水導入部と上記吐水部との間に水質浄化用カートリッジを交換可能に収容しているスパウトを備えるとともに、水質浄化用カートリッジの外周側から水質浄化用カートリッジ内を透過して上記吐水部に至る浄水流路と、水質浄化用カートリッジを透過することなく上記吐水部に至る原水流路と、水が通過する流路を上記浄水流路とするか上記原水流路とするかを切り換える切換部とを備えた浄水機能付き水栓であって、上記原水導入部から上記切換部を経て上記吐水部に至る上記原水流路は、上記浄化用カートリッジの外周面から隔壁を介して区画された流路を浄化用カートリッジの外周側に備えていることを特徴とする浄水機能付き水栓。
【請求項2】
上記切換部は、上記水質浄化用カートリッジの浄水吐出部に連通する浄水流路を開閉する浄水用弁と、上記原水流路を開閉する原水用弁とを備えたものであるとともに、軸方向に一体的に可動とされた上記浄水用弁と上記原水用弁は、軸方向一方に駆動された時に浄水流路を閉じて原水流路を開き、軸方向他方に駆動された時に浄水流路を開いて原水流路を閉じるものであることを特徴とする請求項1記載の浄水機能付き水栓。
【請求項3】
上記浄水用弁と上記原水用弁とは連動部材を介して相互に連結されたものであるとともに、上記浄水用弁は上記連動部材に対して上記浄水流路を閉じる方向にばね付勢されたものであることを特徴とする請求項2記載の浄水機能付き水栓。
【請求項4】
上記浄水用弁と上記原水用弁とは連動部材を介して相互に連結されたものであるとともに、上記原水用弁は上記連動部材に対して上記原水流路を閉じる方向にばね付勢されたものであることを特徴とする請求項2または3記載の浄水機能付き水栓。
【請求項5】
上記原水流路中に設けられた複数の原水通過口を夫々開閉する複数の原水栓棒で原水用弁が形成されているとともに、上記複数の原水栓棒は、上記連動部材に対して異なるクリアランスを有する状態で連動部材に連結されていることを特徴とする請求項4記載の浄水機能付き水栓。
【請求項6】
上記スパウトの先端部に配された押し釦と、該押し釦を押し込んだ位置と復帰した位置とで保持する機構とを備えて、操作に応じて上記切換部を駆動して上記流路を切り換える上記押し釦は、その外面に押し込み深さによるところの流路切換状態を示す表示部を備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の浄水機能付き水栓。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2012−92580(P2012−92580A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241214(P2010−241214)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【出願人】(510286330)株式会社杉山バルブ製作所 (1)
【Fターム(参考)】