説明

浚渫土の処理方法および処理システム

【課題】最終処理工程で生じた水を外部に放流せずに処理工程内で有効に利用し、外部環境に不要な負荷をかけない浚渫土の処理方法および処理システムを提供する。
【解決手段】第一処理工程T1では、浚渫土Sから第一振動ふるい1を用いて粗礫Aを除去し、第二処理工程T2では、第一処理工程T1を経た処理土S1から第二振動ふるい5および遠心分離機9を用いて残存する礫分A1および砂分Bを除去し、第三処理工程T3では、第二処理工程T2を経た処理土S2から第三振動ふるい10および遠心分離機14を用いてシルト分Cを除去し、第四処理工程T4では、第三処理工程T3を経た処理土S3に無機凝集剤H1および高分子凝集剤H2を加え、第四振動ふるい15を用いて、土質分Dと水Wとに分離させ、分離させた水Wを第一処理工程T1に循環させて第二処理工程T2に送る処理土S1の比重調整に利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浚渫土の処理方法および処理システムに関し、さらに詳しくは、最終処理工程で生じた水を外部に放流せずに処理工程内で有効に利用して、外部環境に不要な負荷をかけないようにした浚渫土の処理方法および処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
海底や河川、湖沼の水底を浚渫した際に、浚渫土を減容するための処理方法が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の発明では、遠心分離機や振動ふるい等を使用して浚渫土を分級処理し、分級処理でオーバーフローした分を濃縮槽に入れて沈降分離させる。濃縮槽の上澄み水は、その後、必要に応じてpH調整されて元の水域に放流される(段落0018〜0020)。
【0003】
しかしながら、上澄み水であっても元の水域に放流すると、その水域の生態系に影響を及ぼし、環境に不要な負荷をかけることがある。放流した水に起因する環境負荷を無くすには、放流する水に対して厳格な処理を施す必要がある。これに伴い、処理コストが増大するという問題も生じる。それ故、浚渫土の最終処理工程を経て生じた水は極力、外部に放流しないことが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−212600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、最終処理工程で生じた水を外部に放流せずに処理工程内で有効に利用して、外部環境に不要な負荷をかけないようにした浚渫土の処理方法および処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明の浚渫土の処理方法は、浚渫土から振動ふるいを用いて、礫分を主体とする成分を除去する第一処理工程と、第一処理工程を経た処理土から振動ふるいおよび遠心分離機を用いて、砂分を主体とする成分を除去する第二処理工程と、第二処理工程を経た処理土から振動ふるいおよび遠心分離機を用いて、シルト分を主体とする成分を除去する第三処理工程と、第三処理工程を経た処理土に凝集剤を加えるとともに振動ふるいを用いて、土質分と水とに分離させる第四処理工程とを有し、第四処理工程において分離させた水を第一処理工程に循環させることにより、第二処理工程に送る処理土の比重を調整することを特徴とする。
【0007】
本発明の別の浚渫土の処理方法は、浚渫土から振動ふるいを用いて、礫分を主体とする成分を除去する第一処理工程と、第一処理工程を経た処理土から振動ふるいおよび遠心分離機を用いて、砂分を主体とする成分を除去する第二処理工程と、第二処理工程を経た処理土から振動ふるいおよび遠心分離機を用いて、シルト分を主体とする成分を除去する第三処理工程と、第三処理工程を経た処理土に振動ふるいおよび遠心分離機を用いて、土質分と水とに分離させる第四処理工程とを有し、第四処理工程において分離させた水を第一処理工程に循環させることにより、第二処理工程に送る処理土の比重を調整することを特徴とする。
【0008】
本発明の浚渫土の処理方法では、第四処理工程において分離させた水の一部を、第二処理工程または第三処理工程の少なくとも一方に供給して、その処理工程に設置された振動ふるいのスクリーン上の処理土に散布することもできる。
【0009】
本発明の浚渫土の処理システムは、第一処理工程に設置されて、浚渫土から礫分を主体とする成分を除去する振動ふるいと、第二処理工程に設置されて、第一処理工程を経た処理土から砂分を主体とする成分を除去する振動ふるいおよび遠心分離機と、第三処理工程に設置されて、第二処理工程を経た処理土からシルト分を主体とする成分を除去する振動ふるいおよび遠心分離機と、第四処理工程に設置されて、第三処理工程を経た処理土に凝集剤を加える凝集剤供給装置と、前記凝集剤が加えられた処理土を土質分と水とに分離させる振動ふるいとを備え、第四処理工程において分離させた水を、第一処理工程に循環させる水循環ラインを設けたことを特徴とする。
【0010】
本発明の別の浚渫土の処理システムは、浚渫土から振動ふるいを用いて、礫分を主体とする成分を除去する第一処理工程と、第一処理工程を経た処理土から振動ふるいおよび遠心分離機を用いて、砂分を主体とする成分を除去する第二処理工程と、第二処理工程を経た処理土から振動ふるいおよび遠心分離機を用いて、シルト分を主体とする成分を除去する第三処理工程と、第三処理工程を経た処理土に振動ふるいおよび遠心分離機を用いて、土質分と水とに分離させる第四処理工程とを有し、第四処理工程において分離させた水を第一処理工程に循環させることにより、第二処理工程に送る処理土の比重を調整することを特徴とする。
【0011】
本発明の浚渫土の処理システムでは、第四処理工程において分離させた水を、第二処理工程または第三処理工程の少なくとも一方の工程に設置された振動ふるいのスクリーン上に供給する水供給ラインを設けたシステムにすることもできる。第二処理工程および第三処理工程に設置される振動ふるいのスクリーンの水平に対する傾斜角度を調整可能な可変構造にしたシステムにすることもできる。第三処理工程に設置される振動ふるいのスクリーンの水平に対する傾斜角度を、第二処理工程に設置される振動ふるいのスクリーンの水平に対する傾斜角度よりも小さく設定したシステムにすることもできる。第二処理工程および第三処理工程に設置される振動ふるいのスクリーンを加振する駆動源をインバータモータにしたシステムにすることもできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、第一処理工程、第二処理工程、第三処理工程、第四処理工程を経ることにより、浚渫土に含まれていた成分を粒子分の大きい順に除去する。最終工程となる第四処理工程では、水と最終的に残った土質分とに分離する。そして、最後に残った水は、外部に放流せずに第一処理工程に循環させるので、外部環境に不要な負荷をかけることがない。しかも、循環させた水を、第二処理工程に送る処理土の比重を調整するために有効利用する。これにより、第一処理工程で処理された処理土を適度な比重のスラリー状にして第二処理工程に送り易くなるので、処理効率を向上させるには有利になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の浚渫土の処理システムの全体概要図である。
【図2】第一処理工程のシステムを例示する説明図である。
【図3】第二処理工程のシステムを例示する説明図である。
【図4】第三処理工程のシステムを例示する説明図である。
【図5】第四処理工程のシステムを例示する説明図である。
【図6】第四処理工程の別のシステムを例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の浚渫土の処理方法および処理システムを実施形態に基づいて説明する。
【0015】
図1に例示するように、本発明の処理システムは、第一処理工程T1、第二処理工程T2、第三処理工程T3、第四処理工程T4で構成されている。第一処理工程T1では、浚渫土Sから礫分を主体とした成分(例えば、粗礫A)が除去される。第二処理工程T2では、第一処理工程T1を経た処理土S1から砂分Bを主体とした成分(例えば、残存する礫分A1および砂分B)が除去される。第三処理工程T3では、第二処理工程T2を経た処理土S2からシルト分Cを主体とした成分が除去される。第四処理工程T4では、第三処理工程T3を経た処理土S3が土質分Dと水Wとに分離される。
【0016】
第一処理工程T1には、第一振動ふるい1が備わっている。第一振動ふるい1の下方には第一貯泥槽3および排出コンテナ3aが配置されている。第一振動ふるい1と第一貯泥槽3との間にはスクリューフィーダ3dが配置されている。
【0017】
第一貯泥槽3の中には泥送ポンプ4および攪拌機3bが設置されるとともに、比重計3cが設けられている。送泥ポンプ4に接続されたラインL1は第二処理工程T2に向かって延設されている。
【0018】
第一振動ふるい1は、ホッパ1bと、ホッパ1bの下方に配置されるスクリーン2と、スクリーン2を振動させるインバータモータ1aとを有している。スクリーン2は、所定の目開きを有していて、水平に対して所定の傾斜角度Ag1で、排出コンテナ3aに向かって下方に傾斜するように設置されている。傾斜角度Ag1は例えば、0°〜15°に設定される。傾斜角度Ag1を特定の角度に固定する傾斜角度固定構造にすることもできるが、この実施形態では、傾斜角度Ag1を調整できる傾斜角度可変構造になっている。
【0019】
スクリーン2の目開きは、例えば、25mm程度であり、粗礫Aが通過できない大きさになっている。粗礫Aは、直径相当で例えば25mm以上75mm以下程度の大きさである。
【0020】
平坦なスクリーン2は、インバータモータ1aによって排出コンテナ3aに向かって斜め上方方向に往復加振される。その加振周波数は、例えば30Hz〜60Hz程度である。
【0021】
第二処理工程T2には、第二振動ふるい5と遠心分離機9が備わっている。第二振動ふるい5の下方には第二貯泥槽7および排出コンテナ7aが配置されている。第二貯泥槽7の中には泥送ポンプ8が設置されている。
【0022】
第二振動ふるい5は、遠心分離機9の下方に配置される上側スクリーン6aおよび下側スクリーン6bと、これらスクリーン6a、6bを振動させるインバータモータ5aとを有している。上側スクリーン6aおよび下側スクリーン6bは、所定の目開きを有していて、水平に対して所定の傾斜角度Ag2で、排出コンテナ7aに向かって下方に傾斜するように設置されている。傾斜角度Ag2は例えば、−5°〜+5°に設定される。傾斜角度Ag2のマイナス値は、排出コンテナ7aに向かって上方に傾斜していることを示す。
【0023】
傾斜角度Ag2を特定の角度に固定する傾斜角度固定構造にすることもできるが、この実施形態では、上側スクリーン6aおよび下側スクリーン6bの傾斜角度Ag2が一体的に調整できる傾斜角度可変構造になっている。上側スクリーン6aと下側スクリーン6bとをそれぞれ独立して可変にすることもできる。また、上側スクリーン6aと下側スクリーン6bの傾斜角度Ag2をそれぞれ異なる角度にすることもできる。
【0024】
上側スクリーン6aの目開きは、例えば、0.50mm〜0.71mm程度であり、砂分Bが通過できない構造になっている。砂分Bは、直径相当で例えば0.075mm以上2mm未満程度の大きさである。
【0025】
下側スクリーン6bの目開きは、例えば、5mm程度であり、残存する礫分A1(中礫、小礫)が通過できない大きさになっている。礫分A1は、直径相当で例えば5mm以上25mm未満程度の大きさである。
【0026】
平坦なスクリーン6a、6bは、インバータモータ5aによって排出コンテナ7aに向かって斜め上方方向に往復加振される。その加振周波数は、例えば30Hz〜60Hz程度である。
【0027】
尚、上側スクリーン6aは、下側スクリーン6bに対して前後にずらして配置されていて、上面視では、下側スクリーン6bは上側スクリーン6aに遮断されずに直視できる配置になっている。そして、上側スクリーン6aに遮断されない位置の下側スクリーン6bの上方にラインL1の先端が位置している。
【0028】
遠心分離機9の流入口9aには送泥ポンプ8から延びるラインL2が接続され、排出口9bは上側スクリーン6aの上面に向いている。遠心分離機9の送出口9cには、第三処理工程T3に向かって延びるラインL2が接続されている。
【0029】
第三処理工程T3には、第三振動ふるい10と遠心分離機14が備わっている。第三振動ふるい10の下方には第三貯泥槽12および排出コンテナ12aが配置されている。第三貯泥槽12の中には泥送ポンプ13が設置されている。
【0030】
第三振動ふるい10は、遠心分離機14の下方に配置されるスクリーン11と、スクリーン11を振動させるインバータモータ10aとを有している。スクリーン11は、所定の目開きを有していて、水平に対して所定の傾斜角度Ag3で、排出コンテナ12aに向かって下方に傾斜するように設置されている。傾斜角度Ag3は例えば、−5°〜+5°に設定される。
【0031】
傾斜角度Ag3を特定の角度に固定する傾斜角度固定構造にすることもできるが、この実施形態では、傾斜角度Ag3が調整できる傾斜角度可変構造になっている。尚、傾斜角度Ag3は、上側スクリーン6aおよび下側スクリーン6bの傾斜角度Ag2よりも小さく設定するとよい。
【0032】
スクリーン11の目開きは、例えば、0.090mm〜0.106mm程度であり、シルト分Cの一部が通過できない構造になっている。シルト分Cは、直径相当で例えば0.030mm以上0.075mm未満程度の大きさである。
【0033】
平坦なスクリーン11は、インバータモータ10aによって排出コンテナ12aに向かって斜め上方方向に往復加振される。その加振周波数は、例えば30Hz〜60Hz程度である。
【0034】
遠心分離機14の流入口14aには送泥ポンプ13から延びるラインL3が接続され、排出口14bはスクリーン11の上面に向いている。遠心分離機14の送出口14cには、第四処理工程T4に向かって延びるラインL3が接続されている。
【0035】
第四処理工程T4には、第四振動ふるい15と無機凝集剤供給装置21aおよび高分子凝集剤供給装置21bが備わっている。無機凝集剤供給装置21aおよび高分子凝集剤供給装置21bの下方には、ミキサ19が配置されている。
【0036】
ミキサ19の下方には第四振動ふるい15が配置され、第四振動ふるい15の下方には水槽22および排出コンテナ17aが配置されている。水槽22と並んで第四貯泥槽17が配置されている。第四貯泥槽17の中には泥送ポンプ18が設置され、水槽23の中には送水ポンプ23が設置されている。
【0037】
第四振動ふるい15は、ミキサ19の下方に配置されるスクリーン16と、スクリーン16を振動させるインバータモータ15aとを有している。スクリーン16は、所定の目開きを有していて、水平に対して所定の傾斜角度Ag4で、排出コンテナ17aに向かって下方に傾斜するように設置されている。傾斜角度Ag4は例えば、−5°〜+5°に設定される。傾斜角度Ag4を特定の角度に固定する傾斜角度固定構造にすることもできるが、この実施形態では、傾斜角度Ag4が調整できる傾斜角度可変構造になっている。
【0038】
スクリーン16の目開きは、例えば、0.022mm〜0.053mm程度であり、土質分Dが通過できない構造になっている。土質分Dは、直径相当で例えば0.030mm未満程度の大きさであり、具体的には残存するシルト分C、粘土やコロイドである。
【0039】
平坦なスクリーン16は、インバータモータ15aによって排出コンテナ17aに向かって斜め上方方向に往復加振される。その加振周波数は、例えば30Hz〜60Hz程度である。
【0040】
第四貯泥槽17の上方にはラインL3の先端が位置している。送泥ポンプ18から延びるラインはミキサ19に接続され、ミキサ19から延びるラインはスクリーン16の上面に向いている。
【0041】
送水ポンプ23から延びる水循環ライン24は、第一処理工程T1の第一貯泥槽3の上方まで延設されている。水循環ライン24の中途には2本の水供給ライン25aが分岐して設けられている。水供給ライン25aはそれぞれ、第二振動ふるい5の上側スクリーン6aの上方、第三振動ふるい10のスクリーン11の上方まで延設されている。それぞれの水供給ライン25aの先端にはシャワーノズル25bが取り付けられている。
【0042】
水供給ライン25aは、必要に応じて設けられる。水供給ライン25aを設ける場合は、第二処理工程T2または第三処理工程T3の少なくとも一方の工程に設置された振動ふるいのスクリーン上に向けて延設する。
【0043】
以下、この処理システムを用いた浚渫土の処理方法を説明する。
【0044】
海底等から浚渫された浚渫土Sは、第一処理工程T1において、ホッパ1bに投入される。投入された浚渫土Sは加振されているスクリーン2の上に載置されて、第一振動ふるい1によって分級される。ここでは、スクリーン2の目を通過できない粗礫Aは、排出コンテナ3aの中に排出、除去される。スクリーン2の目を通過した成分は、スクリューフィーダ3dにより解泥される。その後、第一貯泥槽3に貯留されて攪拌機3bによって攪拌されつつ、処理土S1としてスラリー状態で送泥ポンプ4によってラインL1を通じて第二処理工程T2に送られる。
【0045】
第一貯泥槽3では、第二処理工程T2に送られる処理土S1の比重が調整されるが、これについては、後述する。
【0046】
第二処理工程T2に送られた処理土S1は、第二振動ふるい5によって分級される。処理土S1は、まず、加振されている下側スクリーン6bの上に載置されて、下側スクリーン6bの目を通過できない残存する礫分A1は、排出コンテナ7aの中に排出、除去される。下側スクリーン6bの目を通過した成分は第二貯泥槽7に貯留される。
【0047】
第二貯泥槽7に貯留された成分は、送泥ポンプ8によってラインL2を通じて遠心分離機9の流入口9aに送られる。遠心分離機9に送られた成分はサイクロン遠心分離によって分級される。ここでは、粒子の大きな成分が排出口9bから排出されて第二振動ふるい5によって分級される。
【0048】
排出口9bから排出された成分は加振されている上側スクリーン6aの上に載置される。そして、上側スクリーン6aの目を通過できない砂分Bおよび礫分A1(残留している中礫分や小礫分)は、排出コンテナ7aの中に排出、除去される。上側スクリーン6aの目を通過した成分は、下側スクリーン6bの目を通過して第二貯泥槽7に貯留される。
【0049】
第二貯泥槽7に貯留された成分は泥送ポンプ8によって再度、遠心分離機9に送られる。即ち、第二処理工程T2では、第二振動ふるい5および遠心分離機9による分級が繰り返し実施される。
【0050】
一方、遠心分離機9によって遠心分離された粒子の小さな成分(例えば、粒子が75μmm未満)は、処理土S2として、送出口9cからラインL2を通じて第三処理工程T3に送られる。
【0051】
第二処理工程T2において、処理土S1を最初に下側スクリーン6bによって分級するのは、礫分A1などの粒子が大きな成分が存在するとサイクロン式の遠心分離機9が十分に機能しないためである。
【0052】
第三処理工程T3に送られた処理土S2は、第三貯泥槽12に貯留される。その後、送泥ポンプ13によってラインL3を通じて遠心分離機14の流入口14aに送られる。遠心分離機14に送られた成分はサイクロン遠心分離によって分級される。ここでは、粒子の大きな成分が排出口14bから排出されて第三振動ふるい10によって分級される。
【0053】
排出口14bから排出された成分はスクリーン11の上に載置される。そして、加振されているスクリーン11の目を通過できないシルト分Cは、排出コンテナ12aの中に排出、除去される。スクリーン11の目を通過した成分は第三貯泥槽12に貯留される。
【0054】
第三貯泥槽12に貯留された成分は送泥ポンプ13によって再度、遠心分離機14に送られる。即ち、第三処理工程T3では、第三振動ふるい10および遠心分離機14による分級が繰り返し実施される。
【0055】
一方、遠心分離機14によって遠心分離された粒子の小さな成分(例えば、粒子が30μmm未満)は、処理土S3として、送出口14cからラインL3を通じて第四処理工程T4に送られる。
【0056】
第四処理工程T4に送られた処理土S3は、第四貯泥槽17に貯留される。その後、送泥ポンプ18によってミキサ19に送られる。また、ミキサ19には無機凝集剤供給装置21aおよび高分子凝集剤供給装置21bから、それぞれ所定量の無機凝集剤H1、高分子凝集剤H2が供給される。無機凝集剤H1としては、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、硫酸バンド等を例示できる。高分子凝集剤H2としては、水溶性ポリアクリルアミド、ポリアクリルアミド、カルボキシルメチルセルロース(CMC)等を例示できる。
【0057】
そして、処理土S3と無機凝集剤H1および高分子凝集剤H2がミキサ19により混合される。これにより土質分Dが凝集して水Wが分離する。この土質分Dと水Wは、第四振動ふるい15によって分級される。ここでは、加振されているスクリーン16の目を通過できない土質分Dは、排出コンテナ17aの中に排出、除去される。スクリーン16の目を通過した水Wは水槽22に貯留される。
【0058】
水槽22に貯留された水Wは、送水ポンプ23によって水循環ライン24を通じて、第一処理工程T1の第一貯泥槽3に送られる。第一処理工程T1では、第一貯泥槽3に貯留されている処理土S1の比重を比重計3bで検知しつつ、送水ポンプ23によって送られる水Wの量をコントロールすることにより、比重を1.5(1.3〜1.6)程度まで小さくする。
【0059】
このように順次、粒子分の大きな成分を除去して、最終工程となる第四処理工程T4では、処理土S3を水Wと最終的に残った土質分Dとに分離させる。そして、分離させた水Wは、外部に放流せずに第一処理工程T1に循環させるので、外部環境に不要な負荷をかけることがない。また、循環させた水Wは、第一処理工程T1から第二処理工程T2に送る処理土S1の比重を調整するために有効に利用される。
【0060】
浚渫土Sは比重が例えば、1.7〜2.0程度であり、そのままでは比重が高すぎるので送泥ポンプ4では効率よく送ることができず、また、遠心分離機9でうまく分級できない。そこで、循環させた水Wを利用して処理土S1の比重を1.5程度まで小さくする。これによって処理効率を向上させるには有利になる。
【0061】
この実施形態では、第四処理工程T4において分離させた水Wの一部を、水供給ライン25aを通じて、振動ふるい5のスクリーン6a、6bの上、振動ふるい10のスクリーン11上に載置された成分(処理土)にシャワーノズル25bで散布している。そのため、スクリーン6a、6b、11の目詰まりが抑制される。これによって、振動ふるい5、10による分級を精度よく迅速に行なうことができ、しかもメンテナンスなしで長時間行なうことができる。この水Wの散布は同様に、第四振動ふるい15のスクリーン16や第一振動ふるい1のスクリーン2に適用することもできる。
【0062】
また、この実施形態では、少なくとも、スクリーン6a、6bの傾斜角度Ag2およびスクリーン11の傾斜角度Ag3を調整可能な可変構造にしているので、処理する成分の性状に応じて適切な傾斜角度に迅速に設定することで、処理効率を向上させることができる。傾斜角度Ag1〜Ag4が過大であると排出、除去される成分の含水率が大きくなり、過小であると処理に要する時間が長くなるので、処理する成分の性状に応じて適切に設定することが必要になる。例えば、スクリーン11の傾斜角度Ag3をスクリーン6a、6bの傾斜角度Ag2よりも小さく設定することにより、分級に比較的時間を要する砂分Bを主体とした成分およびシルト分Cを主体とした成分を、短時間で精度よく分級処理できる。
【0063】
また、それぞれのスクリーン2、6a、6b、11、16を加振する駆動源をインバータモータ1a、5a、10a、15aにすることで、周波数、振幅等の加振条件を精度よく詳細にコントロールすることできる。そのため、処理する成分の性状に応じた適切な分級を実施し易くなっている。尚、第二処理工程T2に設置される振動ふるい5(スクリーン6a、6b)および第三処理工程T3に設置される振動ふるい10(スクリーン11)だけに対してインバータモータを採用することもできる。
【0064】
浚渫土Sから除去された粗礫A、礫分A1、砂分Bは適宜、資材として利用される。また、シルト分C、土質分Dは所定の処理等を経て利用、或いは、処分されるので、浚渫土Sを大幅に減容することができる。
【0065】
第四処理工程T4は、図6に例示する構成にすることもできる。この第四処理工程T4は、図5に示した無機凝集剤供給装置21a、高分子凝集剤供給装置21bおよびミキサ19に代替して遠心分離機20を配置したものである。この第四処理工程T4によれば凝集剤が不要になる。
【0066】
この第四処理工程T4には、第四振動ふるい15と遠心分離機20が備わっている。第四振動ふるい15の下方には水槽22および排出コンテナ17aが配置されている。水槽22と並んで第四貯泥槽17が配置されている。第四貯泥槽17の中には泥送ポンプ18が設置され、水槽23の中には送水ポンプ23が設置されている。
【0067】
第四貯泥槽17の上方にはラインL3の先端が位置している。送泥ポンプ18から延びるラインは遠心分離機20の流入口20aに接続され、排出口20bはスクリーン16の上面に向いている。遠心分離機20の送出口20cから延びるラインは水槽22に向かって延設されている。送水ポンプ23から延びる水循環ライン24は、第一処理工程T1の第一貯泥槽3の上方まで延設され、水循環ライン24の中途には必要に応じて水供給ライン25aが分岐して設けられる。
【0068】
この第四処理工程T4に送られた処理土S3は、第四貯泥槽17に貯留される。その後、送泥ポンプ18によって遠心分離機20の流入口20aに送られる。遠心分離機20に送られた成分はサイクロン遠心分離によって分級される。ここでは粒子の大きな成分が排出口20bから排出されて第四振動ふるい16によって分級される。
【0069】
排出口20bから排出された成分はスクリーン16の上に載置される。そして、加振されているスクリーン16の目を通過できない土質分Dは、排出コンテナ17aの中に排出、除去される。スクリーン16の目を通過した成分(水W)は水槽22に貯留される。遠心分離機20によって遠心分離された成分(ほぼ水W)は水槽22に貯留される。
【0070】
水槽22に貯留された水Wは、送水ポンプ23によって水循環ライン24を通じて、第一処理工程T1の第一貯泥槽3に送られる。第一処理工程T1では、第一貯泥槽3に貯留されている処理土S1の比重を比重計3bで検知しつつ、送水ポンプ23によって送られる水Wの量をコントロールすることにより、比重を1.5(1.3〜1.6)程度まで小さくする。
【符号の説明】
【0071】
1 第一振動ふるい
1a インバータモータ
2 スクリーン
3 第一貯泥槽
3c 比重計
4 送泥ポンプ
5 第二振動ふるい
5a インバータモータ
6a 上側スクリーン
6b 下側スクリーン
7 第二貯泥槽
8 送泥ポンプ
9 遠心分離機
10 第三振動ふるい
10a インバータモータ
11 スクリーン
12 第三貯泥槽
13 送泥ポンプ
14 遠心分離機
15 第四振動ふるい
15a インバータモータ
16 スクリーン
17 第四貯泥槽
18 送泥ポンプ
19 ミキサ
20 遠心分離機
21a 無機凝集剤供給装置
21b 高分子凝集剤供給装置
22 水槽
23 送水ポンプ
24 水循環ライン
25a 水供給ライン
25b シャワーノズル
W 水
S 浚渫土

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浚渫土から振動ふるいを用いて、礫分を主体とする成分を除去する第一処理工程と、第一処理工程を経た処理土から振動ふるいおよび遠心分離機を用いて、砂分を主体とする成分を除去する第二処理工程と、第二処理工程を経た処理土から振動ふるいおよび遠心分離機を用いて、シルト分を主体とする成分を除去する第三処理工程と、第三処理工程を経た処理土に凝集剤を加えるとともに振動ふるいを用いて、土質分と水とに分離させる第四処理工程とを有し、第四処理工程において分離させた水を第一処理工程に循環させることにより、第二処理工程に送る処理土の比重を調整することを特徴とする浚渫土の処理方法。
【請求項2】
浚渫土から振動ふるいを用いて、礫分を主体とする成分を除去する第一処理工程と、第一処理工程を経た処理土から振動ふるいおよび遠心分離機を用いて、砂分を主体とする成分を除去する第二処理工程と、第二処理工程を経た処理土から振動ふるいおよび遠心分離機を用いて、シルト分を主体とする成分を除去する第三処理工程と、第三処理工程を経た処理土に振動ふるいおよび遠心分離機を用いて、土質分と水とに分離させる第四処理工程とを有し、第四処理工程において分離させた水を第一処理工程に循環させることにより、第二処理工程に送る処理土の比重を調整することを特徴とする浚渫土の処理方法。
【請求項3】
第四処理工程において分離させた水の一部を、第二処理工程または第三処理工程の少なくとも一方に供給して、その処理工程に設置された振動ふるいのスクリーン上の処理土に散布する請求項1または2に記載の浚渫土の処理方法。
【請求項4】
第一処理工程に設置されて、浚渫土から礫分を主体とする成分を除去する振動ふるいと、第二処理工程に設置されて、第一処理工程を経た処理土から砂分を主体とする成分を除去する振動ふるいおよび遠心分離機と、第三処理工程に設置されて、第二処理工程を経た処理土からシルト分を主体とする成分を除去する振動ふるいおよび遠心分離機と、第四処理工程に設置されて、第三処理工程を経た処理土に凝集剤を加える凝集剤供給装置と、前記凝集剤が加えられた処理土を土質分と水とに分離させる振動ふるいとを備え、第四処理工程において分離させた水を、第一処理工程に循環させる水循環ラインを設けたことを特徴とする浚渫土の処理システム。
【請求項5】
第一処理工程に設置されて、浚渫土から礫分を主体とする成分を除去する振動ふるいと、第二処理工程に設置されて、第一処理工程を経た処理土から砂分を主体とする成分を除去する振動ふるいおよび遠心分離機と、第三処理工程に設置されて、第二処理工程を経た処理土からシルト分を主体とする成分を除去する振動ふるいおよび遠心分離機と、第四処理工程に設置されて、第三処理工程を経た処理土を土質分と水とに分離させる振動ふるいおよび遠心分離機とを備え、第四処理工程において分離させた水を、第一処理工程に循環させる水循環ラインを設けたことを特徴とする浚渫土の処理システム。
【請求項6】
第四処理工程において分離させた水を、第二処理工程または第三処理工程の少なくとも一方の工程に設置された振動ふるいのスクリーン上に供給する水供給ラインを設けた請求項4または5に記載の浚渫土の処理システム。
【請求項7】
第二処理工程および第三処理工程に設置される振動ふるいのスクリーンの水平に対する傾斜角度を調整可能な可変構造にした請求項4〜6のいずれかに記載の浚渫土の処理システム。
【請求項8】
第三処理工程に設置される振動ふるいのスクリーンの水平に対する傾斜角度を、第二処理工程に設置される振動ふるいのスクリーンの水平に対する傾斜角度よりも小さく設定した請求項4〜7のいずれかに記載の浚渫土の処理システム。
【請求項9】
第二処理工程および第三処理工程に設置される振動ふるいのスクリーンを加振する駆動源をインバータモータにした請求項4〜8のいずれかに記載の浚渫土の処理システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−170934(P2012−170934A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37668(P2011−37668)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000219406)東亜建設工業株式会社 (177)
【Fターム(参考)】