説明

浣腸容器

【課題】残液量を少なくして良好な使い勝手を実現する。
【解決手段】正面視略三角形状の胴部10の頂部にノズル21を立設し、胴部10は、山折りに折畳み可能な第1の折目11を介して左右対称の側部12、12と底部13とに区分するとともに、谷折りに折畳み可能な第2の折目14、14を介して各側部12を上下に区分する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、残液量が少なく、使い勝手を向上させることができる浣腸容器に関する。
【背景技術】
【0002】
五面体の角錐体の胴部の頭頂部にノズルを立設して形成する浣腸容器が提案されている(特許文献1)。
【0003】
胴部は、左右の平面状の側面と、前後の略三角形状のつま面と、長方形の底面とを有する。また、前後のつま面には、それぞれ逆Y字状の折目が形成され、底面には、前後方向に直線状の折目が形成されている。なお、各折目は、いずれも谷折りに折畳み可能である。そこで、この浣腸容器は、両側面を手指で押圧すると、各つま面、底面がいずれも内側に折り込まれ、ノズルを介して内部の薬液の全量を排出させることができる上、両側面の押圧力をなくしても原形状に復帰することがなく、肛門内に注入した薬液を逆吸引するおそれがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−213060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる従来技術によるときは、五面体の角錐体の胴部は、左右の側面に押圧力を加えるだけでは、各折目を正しく内側に折り込むことができず、折畳み動作の初期において前後の各つま面や底面を軽く内側に押し込むことが必要であって、使い勝手がよくない上、角錐体の胴部は、完全な平板状に折り畳むことが難しく、残液量が過大になりがちであるという問題があった。
【0006】
そこで、この発明の目的は、かかる従来技術の問題に鑑み、胴部を左右対称の側部と底部とに区分することによって、残液量を一層少なくして、良好な使い勝手を実現することができる浣腸容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するためのこの発明の構成は、正面視略三角形状の胴部と、胴部の頂部に立設するノズルとを一体成形してなり、胴部は、山折りに折畳み可能な前後対称の第1の折目を介して左右対称の側部と底部とに区分するとともに、谷折りに折畳み可能な左右対称の第2の折目を介して各側部を上下に区分することにより、各側部の下側をそれぞれ底部上に密接させるようにして折畳み可能であることをその要旨とする。
【0008】
なお、第1の折目は、ノズルの基部から胴部の前後の分岐点まで垂下して斜め下向きに分岐し、各側部の下端と底部の左右の先端との接合部分を介して前後に連続することができ、第2の折目は、それぞれ各側部を横切り、各分岐点の近傍にまで連続することができる。
【0009】
また、各側部は、第2の折目の下側の実効長さを底部の左右の実効長さの1/2相当に設定してもよい。
【発明の効果】
【0010】
かかる発明の構成によるときは、胴部は、第1の折目を介して左右対称の側部と底部とに区分され、各側部は、第2の折目を介して上下に区分されており、各側部の下側をそれぞれ底部上に密接させるようにして折り畳むことにより、内部の薬液量の全量をノズルから排出させることができる。なお、このとき、各側部の上側は、互いに密接する方向に変形させる。また、胴部は、患者自身が自分で使用する場合であっても、片手で一挙動により容易に折畳み操作が可能であり、残液量が実質的にゼロの薬液の注入動作が可能であって、極めて良好な使い勝手を実現することができる。ただし、ここでいう「密接」とは、十分に近接する場合を含むものとする。なお、胴部は、手指により前後方向に押圧して弾性変形させることにより、内部の薬液量の一部のみを排出させることも容易である。
【0011】
山折りに折畳み可能な第1の折目は、ノズルの基部から胴部の前後の分岐点まで垂下させて斜め下向きに分岐させることにより、胴部を左右の側部と底部とに明確に区分することができる。このとき、分岐点より上の分岐前の第1の折目の左右と、分岐点より下の分岐後の第1の折目の上方とには、左右の側部に属する前または後の斜面が形成され、分岐点より下の分岐後の第1の折目の下方には、底部に属する前または後の斜面が形成されている。
【0012】
谷折りに折畳み可能な第2の折目は、左右の側部を横切ることにより、第1の折目と相俟って、胴部を所定の形態に容易に折り畳むことができる。各側部は、第2の折目を介し、上側、下側の相対角度を約90°または90°未満の鋭角に折ることができるからである。
【0013】
各側部は、第2の折目の下側の実効長さを底部の実効長さの1/2相当に設定することにより、各側部の下側を底部の左半部または右半部上に正しく密接させるようにして折り畳むことができ、残液量を最少にすることができる。なお、このとき、各側部は、第2の折目を介して鋭角に折ることにより、原形状に復元することがなく、排出後の薬液を逆吸引するおそれがない。ただし、ここでいう、実効長さとは、側部または底部が形成する曲面に沿う長さ、すなわち曲面の側部または底部を平面状に伸展させたときの長さをいう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】全体斜視図
【図2】全体構成説明図
【図3】全体断面説明図
【図4】要部拡大断面動作説明図
【図5】使用状態説明図(1)
【図6】使用状態説明図(2)
【図7】使用状態説明図(3)
【図8】他の実施の形態を示す構成説明図
【図9】使用状態説明図(4)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を以って発明の実施の形態を説明する。
【0016】
浣腸容器は、正面視略三角形状の胴部10と、胴部10の頂部に立設するノズル21とを一体成形してなる(図1、図2)。ただし、図2(A)〜(C)は、それぞれ正面図、側面図、底面図である。
【0017】
胴部10、ノズル21は、適切な弾性を有する熱可塑性樹脂を使用し、たとえばブロー成形により中空状に一体成形されている(図1、図3)。ただし、図3(A)、(B)は、それぞれ図2(A)、(B)の中央縦断面図である。
【0018】
ノズル21の上端は、ドーム状に丸められ、ノズル孔21aが開口されている。また、ノズル21の下部には、ノズル21の挿入長さを制限する鍔21bが形成されている。
【0019】
ノズル21には、着脱自在のキャップ22が付属している。キャップ22の外周下部には、滑り止め用のローレット22aが形成され、内部天面には、ノズル21のノズル孔21aに適合する突栓22bが垂設されている。
【0020】
胴部10は、前後対称の第1の折目11、11を介し、左右対称の側部12、12と、底部13とに区分されている(図1、図2)。また、左右の側部12、12は、左右対称の第2の折目14、14を介してそれぞれ上下に区分されている。第1の折目11、11は、それぞれノズル21の基部から胴部10の前または後の分岐点11aまで垂下し、斜め下向きに分岐した上、各側部12の下端と底部13の左右の先端との接合部分を介して前後に連続している。第2の折目14、14は、それぞれ各側部12を横切り、第1の折目11、11の前後の分岐点11a、11aの近傍にまで連続している。
【0021】
各側部12は、斜め下向きの尾根部12aと、湾曲する前後の屈曲線12c、12cを介して尾根部12aの両側に形成する前後の斜面12b、12bとを含んでいる(図2(A)、(B))。ただし、尾根部12a、斜面12b、12bは、それぞれ共通の第2の折目14を介して上下に区分されている。また、底部13は、左右に長い長方形の枠状の接地部13aを中央部に形成するとともに(図2(A)、(C))、接地部13aの長辺側に接する屈曲線13d、13d…を介し、前後の斜面13b、13b、左右の斜面13c、13cが形成されている。
【0022】
接地部13aの内部は、上向きに湾曲して浅い凹状に形成されている(図3(A)、(B))。そこで、浣腸容器は、接地部13aを介し、机上などの任意の平面上に安定に起立させることができる。
【0023】
第1の折目11は、山折り可能である(図4(A)の実線、二点鎖線)。また、第2の折目14は、谷折り可能であり(同図(B)の実線、二点鎖線)、屈曲線12cは、平面状に伸展可能である(同図(C)の実線、二点鎖線)。ただし、図4(A)〜(C)は、それぞれ図2(A)のZ1 −Z1 線、Z2 −Z2 線、図2(B)のZ3 −Z3 線矢視相当の拡大断面動作図である。なお、図2(A)の分岐点11aより下の分岐後の第1の折目11についても、図4(A)の第1の折目11と同様に山折り可能であり、図2(C)の各屈曲線13dについても、図4(C)の屈曲線12cと同様に伸展可能である。
【0024】
かかる浣腸容器は、キャップ22を取り外してノズル孔21aを開口させた上、親指、人差指を左右の側部12、12に当てがい(図5(A))、他の3指により底部13を支えるようにして片手で上向きに保持し、ノズル21を自身の肛門に挿入して親指、人差指で側部12、12を押圧して胴部10を折り畳むことにより、内部の薬液の全量を排出させることができる(図5(B)、(C))。左右の側部12、12は、それぞれ第2の折目14を介して谷折りされるとともに、第1の折目11、11を介し、それぞれの下側が底部13の左半部または右半部上に密接するようにして折り畳まれるからである。なお、このとき、各側部12の上側は、互いに密接する方向に変形する。ただし、親指、人差指以外の3指による底部13の支持形態は、図5(A)〜(C)のように中指を主体としてもよく、図6(A)〜(C)のように3指の全部を並行させて使用してもよい。
【0025】
浣腸容器は、第1の折目11、11の前後の分岐点11a、11a上に親指と人差指または中指とを当てがい(図7(A))、胴部10を前後方向に押圧して弾性変形させることにより、内部の薬液の一部を排出させてもよい(図7(B)、(C))。このときの胴部10は、前後の押圧力を除去することにより、原形状に容易に復元可能である。
【他の実施の形態】
【0026】
胴部10は、左右の側部12、12を左右に対称的に膨出させてもよい(図8)。ただし、図8(A)〜(D)は、それぞれ斜視図、正面図、側面図、底面図である。
【0027】
各側部12は、第2の折目14の下側の実効長さa、上側の実効長さc、底部13の左右方向の実効長さbとして、c>a≒b/2に設定されている(図8(B))。そこで、胴部10は、第1の折目11、11、第2の折目14、14を介して側部12、12を折り畳むと(図9)、第2の折目14、14を介して各側部12が90°未満の鋭角に折られるため、原形状に復元することがない。ただし、図9(A)〜(C)は、それぞれ胴部10を折り畳んだ状態の正面図、側面図、底面図である。なお、図8、図9の胴部10は、図1、図2の胴部10に比して、側部12、12を膨出させるとともに前後方向に大きくすることにより、内容積を増大させている。ただし、図8、図9において、c≦aとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
この発明は、患者自身が自分で使用する場合の他、介護者が第三者に対して使用する場合にも好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0029】
a、b…実効長さ
10…胴部
11…第1の折目
11a…分岐点
12…側部
13…底部
14…第2の折目
21…ノズル

特許出願人 イチジク製薬株式会社
伸晃化学株式会社

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正面視略三角形状の胴部と、該胴部の頂部に立設するノズルとを一体成形してなり、前記胴部は、山折りに折畳み可能な前後対称の第1の折目を介して左右対称の側部と底部とに区分するとともに、谷折りに折畳み可能な左右対称の第2の折目を介して前記各側部を上下に区分することにより、前記各側部の下側をそれぞれ前記底部上に密接させるようにして折畳み可能であることを特徴とする浣腸容器。
【請求項2】
前記第1の折目は、前記ノズルの基部から前記胴部の前後の分岐点まで垂下して斜め下向きに分岐し、前記各側部の下端と前記底部の左右の先端との接合部分を介して前後に連続することを特徴とする請求項1記載の浣腸容器。
【請求項3】
前記第2の折目は、それぞれ前記各側部を横切り、前記各分岐点の近傍にまで連続することを特徴とする請求項2記載の浣腸容器。
【請求項4】
前記各側部は、前記第2の折目の下側の実効長さを前記底部の左右の実効長さの1/2相当に設定することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか記載の浣腸容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−196329(P2012−196329A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62699(P2011−62699)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(391066308)イチジク製薬株式会社 (1)
【出願人】(000190068)伸晃化学株式会社 (55)
【Fターム(参考)】