説明

浮上放出式気散性物質放出器

【課題】 気散性物質を高濃度にして気散性、持続性などを高め、芳香の付与、消臭、抗菌等の機能を高くし、かつ長く維持することができるとともに、不要な時には蓋をして気散性物質の無駄な放出を防止し、気散性物質を効率よく放出させることができる浮上放出式気散性物質放出器を提供する。
【解決手段】 浮上放出式気散性物質放出器1は、上部に開口部11を有する容器3と、容器3内に収容された気散性物質を含む液体または流動性ゲル状の保持媒体2と、容器3の開口部11を覆う着脱可能な蓋4と、蓋4から開口部11を通して容器3内に伸び、保持媒体2内に浸漬されて保持媒体2から浮力を受け、蓋4の開放時に浮上して一部が開口部から突出する浮体13と、浮体13の周囲に形成された浸透式放出膜10と、浮体13の上下動を案内するガイド部14と、浮体13の突出量を調節する調節部材15からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮体の浮上により浸透式放出膜が浮上し、気散性物質を徐々に大気中に気散させて放出するための浮上放出式気散性物質放出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
芳香剤、消臭剤、抗菌剤等の気散性物質を含む溶液または液状ゲル状物を容器内に収容し、容器を部分的に開口させて、ゲル状物に含まれる気散性物質を徐々に大気中に気散させて放出するようにした気散性物質放出器がトイレット用等に使用されている。
【0003】
図2は特許文献1(特開2004−290216号公報)に記載された従来の気散性物質放出器を示し、(a)は使用前、(b)は使用中の状態を示す断面図である。
【0004】
図2において、1は気散性物質放出器であって、芳香剤、消臭剤、抗菌剤等の気散性物質を含む液体からなる保持媒体2を収容する容器3の蓋4から、フェルト等の束からなる毛細管材料束5が保持媒体2内に浸漬するように伸びている。蓋4は使用前は(a)のように密栓され、使用時には(b)のように引き上げて使用される。
【0005】
上記のような従来の気散性物質放出器1は、(a)の密封状態から、(b)に示すように蓋4を引き上げると、フェルト等の束からなる毛細管材料束5は、下端部を保持媒体2内に浸漬した状態で引き上げられる。この状態で、保持媒体2に含まれる芳香剤、消臭剤、抗菌剤等の気散性物質は、容器3より突出した部分の毛細管材料束5から気散して大気中に放出され、芳香の付与、消臭、抗菌等を行う。
【0006】
しかしながら、このような従来の気散性物質放出器1においては、液体からなる保持媒体2に含まれる香料、界面活性剤等の成分がフェルト等の束からなる毛細管材料束5中で析出して目詰まりを起こし、液体状の保持媒体2が容器3中に存在するにもかかわらず、気散性物質の放出が困難になり、気散性物質放出器1として機能しなくなる。また香料等の気散性物質は油性のものが多く、これらを水に溶解するために界面活性剤が配合されるが、油性の気散性物質が多く配合すると、界面活性剤量も多く配合して高濃度にする必要がある。保持媒体の気散性物質および界面活性剤の濃度が高濃度になるほど、目詰まりが激しくなるので、保持媒体2中の気散性物質の濃度を高くすることができない。このため気散性、持続性等の低い低濃度の保持媒体を収容する気散性物質放出器しか得られなかった。さらに毛細管材料束5を引き出すと膨潤するため、元に戻して蓋をすることができず、不要な時でも気散性物質が放出され、無駄が多い。
【0007】
特許文献2(特開2004−267470号公報)には、上記の毛細管材料束5からの気散性を制限するために、毛細管材料束5の周囲を覆う筒状部材を上下動可能に設け、これを容器3内に収容したフロートに取付けた気散性物質放出器が記載されている。この気散性物質放出器では、フロートの上下動に対応して筒状部材を上下動させることにより、毛細管材料束5周囲の露出面積を調整し、これにより気散性物質の気散性を制限している。
【0008】
しかしこのような気散性物質放出器でも、フェルト等の束からなる毛細管材料束5の毛細管現象を利用するものであるため、特許文献1と同様に目詰まりが発生し、気散性物質の濃度を高くして、気散性、持続性等を高くできないとともに、引き出した毛細管材料束5を再度収納して、気散性物質の無駄な放出を防止できないなどの問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−290216号公報
【特許文献2】特開2004−267470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、上記のような従来の問題点を解決するために、浮体の浮上により浸透式放出膜が浮上し、容器に収容された保持媒体に含まれる芳香剤、消臭剤、抗菌剤等の気散性物質の濃度を高くしても、目詰まりさせることなく、最後まで気散させて大気中に放出させることができ、このため気散性物質を高濃度にして気散性、持続性などを高め、芳香の付与、消臭、抗菌等の機能を高くし、かつ長く維持することができるとともに、不要な時には蓋をして気散性物質の無駄な放出を防止し、気散性物質を効率よく放出させることができる浮上放出式気散性物質放出器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は次の浮上放出式気散性物質放出器である。
(1) 上部に開口部を有する容器と、
容器内に収容された気散性物質を含む液体または流動性ゲル状の保持媒体と、
容器の開口部を覆う着脱可能な蓋と、
蓋から開口部を通して容器内に伸び、保持媒体内に浸漬されて保持媒体から浮力を受け、蓋の開放時に浮上して一部が開口部から突出する浮体と、
浮体の周囲に形成された浸透式放出膜と
を備えていることを特徴とする浮上放出式気散性物質放出器。
(2) 浮体が筒状に形成されている上記(1)記載の浮上放出式気散性物質放出器。
(3) 浮体が中空部材で形成されている上記(1)または(2)記載の浮上放出式気散性物質放出器。
(4) 浮体の上下動を案内するガイド部が設けられている上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の浮上放出式気散性物質放出器。
(5) 浮体の突出量を調節する調節部材が設けられている上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の浮上放出式気散性物質放出器。
(6) 浮体の先端部が容器の底部付近まで延びている上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の浮上放出式気散性物質放出器。
(7) 浸透式放出膜が毛細管材料膜である上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の浮上放出式気散性物質放出器。
【0012】
本発明において、保持媒体に保持される気散性物質は、気散により大気中に放出される物質であり、気散性の芳香剤、消臭剤、抗菌剤などが挙げられる。このような気散性物質を保持する保持媒体は、液体または流動性ゲル状の保持媒体である。保持媒体としての液体は、水その他の溶媒に上記の気散性物質を溶解または分散したものであり、気散性物質が油性である場合は、界面活性剤を配合することができ、ゾル、ペースト状のものを含む。流動性ゲルは気散性物質を含む流動性のゲルであり、浮体の浸漬が可能で、浮体に浮力を与え、再度浮体の押込みにより浸漬させることが可能なゲルである。
【0013】
本発明の浮上放出式気散性物質放出器は、このような保持媒体が、上部に開口部を有する容器内に収容され、容器の開口部を蓋で覆い、周囲に毛細管材料膜等の浸透式放出膜が形成された浮体が、蓋から開口部を通して容器内に伸びて、保持媒体内に浸漬されるように形成されている。容器は丸形、角形、筒形など任意の形状で、材質も樹脂、ガラスなど任意の材料で、透明、不透明、色付など任意の外観のものを使用することができる。蓋は容器の開口部を覆うものであればよいが、ねじ等の係合部材を設け、着脱式に開口部を密
閉、開放できるものが好ましい。
【0014】
浮体は、周囲に毛細管材料膜等の浸透式放出膜が形成され、蓋から容器の開口部を通して容器内に伸びて、保持媒体内に浸漬されている。その状態で浮体は、保持媒体から浮力を受けて浮上可能とされ、蓋の開放時に浮上して一部が開口部から突出するように構成されている。このとき浸透式放出膜と容器の開口端間に気散性物質の流路を形成するように構成されていてもよい。浮体の形状、構造は開口部を通して挿入、引出可能な形状、構造であればよいが、開口部に沿ってスライドする筒状のものが、引出時の姿勢を適正に保てるので好ましい。また浮体は比重の小さい材料や独立気泡のスポンジなどにより、内部が詰まった構造の物でもよいが、プラスチックのような軽い材料により中空構造に形成した中空部材からなるものが、材料、構造等の自由度があるので好ましい。さらに浮体はその先端部が容器の底部付近まで延びていると、容器内の保持媒体が実質的に無くなるまで浮力を受けることができるので好ましい。
【0015】
浮体の周囲に形成される浸透式放出膜は、毛細管材料膜などのように、保持媒体が浸透して上昇し、表面から気散性物質を放出する多孔質の膜であるが、保持媒体との親和性(ぬれ性)がよく、毛細管現象とともに表面張力等により、保持媒体が浸透式放出膜の表面および全体に浸透して広がるものがよい。このような浸透式放出膜としては、毛細管材料膜など、保持媒体との親和性の高い繊維の集合体からなる膜、特に不織布、例えばポリプロピレンのスパンボンド不織布などが好ましい。浸透式放出膜は、浮体の保持媒体に浸漬される部分だけでなく、浮上したときに液面から突出し気散性物質の放出面となる部分に形成されるが、特に保持媒体に浸漬されない部分を含む浮体の全周囲に形成されるのが好ましい。
【0016】
浮体は、保持媒体内に浸漬した時、浸漬部分の容積、すなわち浸漬により排除された量の保持媒体の重量に相当する浮力を受けるので、蓋の開放時に浮上して一部が開口部から突出する。このとき浮体が適正な位置で停止するように、保持媒体の比重と浮体の重量を決めることができる。浮体は蓋とは別部品で、蓋に取付けられていなくてもよいが、蓋に取付けられて蓋および浸透式放出膜とともに移動するものが、操作性、外観等に優れるので好ましい。浮体が蓋に取付けられている場合、両者を一体的に形成することができる。この場合、浮体と蓋の一体化物と浸透式放出膜の全体が浮力を受けるので、全体の重量を浮力に対応させる必要がある。浮体と蓋の両方またはいずれか一方を中空にしたり、軽量の材料で構成して、全体の重量を調整することができる。
【0017】
蓋の開放により浮体が浮上した時に、容器の開口部に気散性物質流路となる間隙を形成するのが好ましい。浮体は容器の開口端と浸透式放出膜の間に間隙を形成する状態で上下動するのが好ましく、このためには浮体の上下動を案内するガイド部を設けるのが好ましい。ガイド部としては、容器の開口端から立上がる頚部を長くして、浮体が上下動により揺れない構造にしたり、あるいは容器の開口端に筒状その他の浮体の上下動方向を規制する部材を設けるなどにより構成することができる。
【0018】
浮体は、蓋の開放時に浮力により浮上して一部が開口部から突出するように構成されるが、このとき浮体全体が開口部から飛び出さないように、あるいは適正な開度を形成するように、浮体の突出量を調節する調節部材を設けるのが好ましい。このような調節部材としては、浮体の周囲に突出部を形成し、浮体の浮上時にその突出部が容器の開口端やガイド部等に係合するものなどがある。調節部材は容器または浮体と一体的に形成してもよく、別部材で形成してもよい。一体的に形成する場合、容器または浮体の成形時に一体的に形成することができる。別部材で形成する場合、浮体の停止位置を変えられるように、調節部材の取付位置を変えて取付できるものが好ましい。調節部材は弾性変形可能な軟質部材で形成すると、容器への挿入が容易になるので好ましい。
【0019】
本発明の浮上放出式気散性物質放出器は、気散性物質を含む液体または流動性ゲル状の保持媒体を容器内に収容し、周囲に浸透式放出膜を形成した浮体を、開口部を通して容器内に挿入して保持媒体内に浸漬させ、容器の開口部を蓋で覆うことにより製造される。ガイド部を別部材として設ける場合は、浮体の挿入の前または後に、ガイド部を容器の開口部または浮体に取付けて浮体を挿入し、開口部を蓋で覆う。調節部材を別部材として設ける場合は、浮体の挿入の前に、調節部材を容器の開口部または浮体に取付けて浮体を挿入し、開口部を蓋で覆う。
【0020】
上記の浮上放出式気散性物質放出器は、容器の開口部から蓋を外すと、保持媒体内に浸漬された浮体は保持媒体から浮力を受けるので、蓋の開放と同時に浮体が浮上する。これにより浮体および浸透式放出膜の一部が開口部から突出し、突出部分の浸透式放出膜から気散性物質が大気中に放出される。このとき浮体および浸透式放出膜の他の一部は保持媒体内に浸漬されているので、保持媒体または気散性物質は毛細管現象や表面張力により浸透式放出膜中に浸透して上昇し、または表面を上昇して突出部分の浸透式放出膜に補給され、気散性物質が大気中に放出される。この場合、保持媒体または気散性物質は浸透式放出膜中または表面を上昇して突出部分に補給されるが、浸透式放出膜は表面が開放され、膨潤可能となっているので、保持媒体の気散性物質濃度を高くしても、結晶は析出せず、目詰まりの問題は発生しない。
【0021】
浮体が浮上した時に、容器の開口部に気散性物質流路となる間隙を形成する場合は、保持媒体または気散性物質の浸透式放出膜中の上昇とは別に、容器内で保持媒体に含まれる気散性物質が気散し、開口部に形成された気散性物質流路を通って大気中に放出される。これが浸透式放出膜中の気散性物質の放出に加わり、芳香剤、消臭剤、抗菌剤等の気散性物質の大気中への気散量が増大して、芳香の付与、消臭、抗菌等が効果的に行われる。この場合、従来のような気散性物質の目詰まりの問題は発生しないため、保持媒体の気散性物質濃度を高くして、気散性物質放出の効果を高め、またその効果を長く持続させることができる。
【0022】
浮上放出式気散性物質放出器にガイド部が設けられている場合は、浮体はガイド部に沿って上に移動し、突出状態で直立の姿勢を保って、優れた外観を維持する。浮体の突出量は、保持媒体の比重と浮体および浸透式放出膜の合計重量により調整されるが、調節部材を設ける場合は、浮体の浮上時に調節部材が容器の開口端やガイド部等に係合して浮体を停止させ、浮体の突出量を適正値に保つことができる。この場合、気散性物質の放出面を小さい値に保つことができるため、保持媒体の気散性物質濃度を高くして、効果の持続性を高めることができる。
【0023】
上記の浮上放出式気散性物質放出器は、夜間などの不要な時には、浮体を容器内に押込んで蓋を閉じることにより、気散性物質の放出を停止することができ、必要になった時には再度蓋を外すことにより、気散性物質の放出を再開することができ、気散性物質の放出を効率よく行い、持続性を高くすることができる。
【0024】
気散性物質の放出を続けることにより、容器内の保持媒体の液面が下がると、浮体の位置も下がるが、浮体の先端部が容器の底部付近まで延びている場合は、容器内の保持媒体が実質的に無くなるまで浮力を受けることができるので、気散性物質をほぼ完全に使い切ることができる。この場合は、浮体を軽くして浮力を大きくし、調節部材で浮体の浮上を制限することにより、浮力を受ける時間を長くして気散性物質流路の形成時間を長くすることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の浮上放出式気散性物質放出器は、気散性物質を含む液体または流動性ゲル状の保持媒体が容器内に収容され、容器の開口部を覆う着脱可能な蓋から、周囲に浸透式放出膜が形成された浮体が開口部を通して容器内に伸び、保持媒体内に浸漬されて保持媒体から浮力を受け、蓋の開放時に浮体の浮上により浸透式放出膜が浮上して一部が開口部から突出し、突出部の浸透式放出膜から気散性物質を放出するように形成されているので、容器に収容された保持媒体に含まれる気散性物質の濃度を高くしても、目詰まりさせることなく、最後まで気散させて大気中に放出させることができ、このため気散性物質を高濃度にして気散性、持続性などを高め、芳香の付与、消臭、抗菌等の機能を高くし、かつ長く維持することができるとともに、不要な時には蓋をして気散性物質の無駄な放出を防止し、気散性物質を効率よく放出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の浮上放出式気散性物質放出器を示し、(a)は使用前、(b)は使用中の状態をそれぞれ示す断面図である。
【図2】従来の気散性物質放出器を示し、(a)は使用前、(b)は使用中の状態をそれぞれ示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図面により説明する。図1は本発明の浮上放出式気散性物質放出器を示し、(a)は使用前、(b)は使用中の状態をそれぞれ示す断面図であり、図2と同符号は同一または相当部分を示す。
【0028】
図1において、浮上放出式気散性物質放出器1は、上部に開口部11を有する容器3と、容器3内に収容された気散性物質を含む液体または流動性ゲル状の保持媒体2と、容器3の開口部11を覆う着脱可能な蓋4と、蓋4から開口部11を通して容器3内に伸び、保持媒体2内に浸漬されて保持媒体2から浮力を受け、蓋4の開放時に浮上して一部が開口部11から突出する浮体13と、浮体13の周囲に形成された浸透式放出膜10と、浮体13の上下動を案内するガイド部14と、浮体13の突出量を調節する調節部材15から構成されている。
【0029】
容器3は透明樹脂により筒形に形成された本体部16の上部が絞られて、円形の開口部11が形成され、その開口端から筒状に立上がる頚部17が形成されている。蓋4はねじ等の係合部材により、容器3の頚部17に着脱式に取付けられ、開口部11を密閉、開放できるようにされている。浮体13は軽量樹脂の中空部材で筒状に形成され、その先端部18が容器3の底部19付近まで延びている。浮体13の上部は、蓋4内に設けられるパッキン21に固着され、浮体13の内部に密閉空間22が形成されている。浮体13の全長にわたる全周囲には、保持媒体との親和性の高い繊維の集合体としてポリプロピレンのスパンボンド不織布などの毛細管材料膜からなる浸透式放出膜10が形成されている。
【0030】
ガイド部14は、弾性変形可能なプラスチック板を円形に巻き、スプリングバックにより容器3の頚部17に圧着させて、浮体13の浸透式放出膜10との間に気散性物質流路12を形成し、浮体13の上下動を案内するように構成されている。調節部材15は、浮体13の周辺部に水平方向に突出し、浮体13の浮上時に容器3の頚部17やガイド部14等に係合して浮体13を停止させるように構成されている。調節部材15は、弾性変形可能な材料で円環状またはフィン状に構成し、浮体13の容器3への挿入を容易にするのが好ましい。調節部材15は浮体13と一体的に形成してもよく、また移動可能に設けてもよいが、その位置は浮体13の突出量に応じて任意に決められる。図1では調節部材15は保持媒体2の液面に近い部分に設けて、浮体13の突出量を抑制するようにしている
が、15aのように浮体13の先端部18に設けてもよく、この場合は保持媒体2が完全に無くなった時に蓋4が閉じ、気散性物質を完全に使い切ることができる。
【0031】
上記の浮上放出式気散性物質放出器1は、気散性物質を含む液体または流動性ゲル状の保持媒体2を容器3内に収容し、周囲に浸透式放出膜10を形成した浮体を、開口部11を通して容器3内に挿入して保持媒体2内に浸漬させ、容器3の開口部11を蓋4で覆うことにより、図1(a)のように製造される。ガイド部14を別部材として設ける場合は、浮体13の挿入の前または後に、ガイド部14を容器3の開口部11または浮体13に取付けて浮体を挿入し、開口部11を蓋4で覆う。調節部材15を別部材として設ける場合は、浮体13の挿入の前に、調節部材15を浮体13に取付けて浮体13を挿入し、開口部11を蓋4で覆う。
【0032】
上記の浮上放出式気散性物質放出器1は、図1(b)のように容器3の開口部11から蓋4を外すと、保持媒体2内に浸漬された浮体13は保持媒体2から浮力を受けるので、蓋4の開放と同時に浮上する。これにより浮体13および浸透式放出膜10の一部が開口部11から突出し、突出部分の浸透式放出膜10から気散性物質が大気中に放出される。このとき浮体13および浸透式放出膜10の他の一部は保持媒体2内に浸漬されているので、保持媒体2または気散性物質は毛細管現象等により浸透式放出膜10中に浸透して上昇し、また表面張力により浸透式放出膜10の面を上昇して突出部分に補給され、気散性物質が大気中に放出される。この場合、保持媒体2または気散性物質は表面が開放された浸透式放出膜10を上昇して突出部分に補給されるので、保持媒体2の気散性物質濃度を高くしても、目詰まりの問題は発生しない。
【0033】
浮体13の浮上により、容器3の開口部11の開口端と浸透式放出膜10との間に気散性物質流路12を形成する。これにより保持媒体2または気散性物質の浸透式放出膜10中の上昇とは別に、容器3内で保持媒体2に含まれる気散性物質が気散し、開口部11に形成された気散性物質流路12を通って大気中に放出される。これが浸透式放出膜10中の気散性物質の放出に加わり、芳香剤、消臭剤、抗菌剤等の気散性物質の大気中への気散量が増大して、芳香の付与、消臭、抗菌等が効果的に行われる。この場合、気散性物質は従来のような目詰まりの問題は発生しないため、保持媒体2の気散性物質濃度を高くして、気散性物質放出の効果を高め、またその効果を長く持続させることができる。
【0034】
浮上放出式気散性物質放出器1にガイド部14が設けられているので、浮体13はガイド部14に沿って上に移動し、突出状態で直立の姿勢を保って、優れた外観を維持する。浮体13の突出量は、保持媒体2の比重と浮体13の重量により調整されるが、調節部材15を設けることにより、浮体13の浮上時に調節部材15が容器3の開口端やガイド部14等に係合して浮体13を停止させ、浮体の突出量を適正値に保つことができる。この場合、気散性物質の放出面を小さい値に保つことができるため、保持媒体2の気散性物質濃度を高くして、効果の持続性を高めることができる。
【0035】
上記の浮上放出式気散性物質放出器1は、夜間などの不要な時には、浮体13を容器3内に押込んで蓋4を閉じることにより、気散性物質の放出を停止することができ、必要になった時には再度蓋4を外すことにより、気散性物質の放出を再開することができ、気散性物質の放出を効率よく行い、持続性を高くすることができる。
【0036】
気散性物質の放出を続けることにより、容器3内の保持媒体2の液面が下がると、浮体13の位置も下がるが、浮体13の先端部18が容器3の底部19付近まで延びているため、容器3内の保持媒体2が実質的に無くなるまで浮力を受けることができるので、気散性物質をほぼ完全に使い切ることができる。この場合は、浮体13を軽くして浮力を大きくし、調節部材15で浮体13の浮上を制限することにより、浮力を受ける時間を長くし
て気散性物質流路12の形成時間を長くすることができる。
【0037】
上記の浮上放出式気散性物質放出器1は、容器3に収容された保持媒体2に含まれる気散性物質の濃度を高くしても、目詰まりさせることなく、最後まで気散させて大気中に放出させることができ、このため気散性物質を高濃度にして気散性、持続性などを高め、芳香の付与、消臭、抗菌等の機能を高くし、かつ長く維持することができるとともに、不要な時には蓋4をして気散性物質の無駄な放出を防止し、気散性物質を効率よく放出させることができる。
【実施例】
【0038】
〔実施例1〕:
直径60mmの筒状の容器に、香料を界面活性剤で溶かした水溶液状の保持媒体を10cmの高さに入れ、直径17.8mmの樹脂製の中空材からなる浮体を挿入して、浮体の重量10gのときの液面上の浮体の突出長は5.5cm、15gのときは4.0cm、20gのときは2.1cm、25gのときは1.7cmであった。
【0039】
〔実施例2〕:
実施例1において、容器の直径を90mm、浮体の直径を60.0mmに変更して同様に試験した。浮体の重量36gのときの液面上の浮体の突出長は8.3cm、50gのときは7.9cm、100gのときは6.5cmであった。
【産業上の利用可能性】
【0040】
芳香剤、消臭剤、抗菌剤等の気散性物質を含む溶液または液状ゲル状物からなる保持媒体を容器内に収容し、容器の蓋を開口させて、保持媒体に含まれる気散性物質を徐々に大気中に気散させて放出するようにした気散性物質放出器として利用可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 浮上放出式気散性物質放出器
2 保持媒体
3 容器
4 蓋
5 毛細管材料束
10 浸透式放出膜
11 開口部
12 気散性物質流路
13 浮体
14 ガイド部
15 調節部材
16 本体部
17 頚部
18 先端部
19 底部
21 パッキン
22 密閉空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に開口部を有する容器と、
容器内に収容された気散性物質を含む液体または流動性ゲル状の保持媒体と、
容器の開口部を覆う着脱可能な蓋と、
蓋から開口部を通して容器内に伸び、保持媒体内に浸漬されて保持媒体から浮力を受け、蓋の開放時に浮上して一部が開口部から突出する浮体と、
浮体の周囲に形成された浸透式放出膜と
を備えていることを特徴とする浮上放出式気散性物質放出器。
【請求項2】
浮体が筒状に形成されている請求項1記載の浮上放出式気散性物質放出器。
【請求項3】
浮体が中空部材で形成されている請求項1または2記載の浮上放出式気散性物質放出器。
【請求項4】
浮体の上下動を案内するガイド部が設けられている請求項1ないし3のいずれかに記載の浮上放出式気散性物質放出器。
【請求項5】
浮体の突出量を調節する調節部材が設けられている請求項1ないし4のいずれかに記載の浮上放出式気散性物質放出器。
【請求項6】
浮体の先端部が容器の底部付近まで延びている請求項1ないし5のいずれかに記載の浮上放出式気散性物質放出器。
【請求項7】
浸透式放出膜が毛細管材料膜である請求項1ないし6のいずれかに記載の浮上放出式気散性物質放出器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−55937(P2011−55937A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−206958(P2009−206958)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(592260882)
【Fターム(参考)】