説明

浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備

【課題】浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備の耐久性を向上させること。
【解決手段】天然ガスから液化ガスを生成するプラント3と、その液化ガスを貯蔵するタンク5−1〜5−3と、浮体2とを備えている。浮体2のうちのプラント3が配置されるプラント部分15とタンク5−1〜5−3が配置されるタンク部分12との間に配置される船体断面形状変更部分14の断面形状は、タンク部分12に近いほどタンク部分12の断面の形状に類似し、プラント部分15に近いほどプラント部分15の断面の形状に類似している。このような浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備1は、プラントが配置されるプラント部分とタンクが配置されるタンク部分とが直に接合されている他の浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備に比較して、プラント部分15とタンク部分12との間に応力集中が発生しにくく、破壊されにくく、船体強度に関して信頼性が高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備に関し、特に、海洋上で天然ガスから液化ガスを生産し、その液化ガスを貯蔵し、その液化ガスをタンカーに積み出す浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備に関する。
【背景技術】
【0002】
海洋上で天然ガスから液化ガスを生産し、その液化ガスを貯蔵し、その液化ガスをタンカーに積み出す浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備が知られている。このような浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備は、信頼性の向上が望まれ、耐久性を向上させることが望まれている。
【0003】
特表2009−529456号公報には、液化天然ガスの船上再ガス化のための方法が開示されている。その再ガス化法は、陸上へガスとして送るため液体天然ガスを沖合再ガス化するための方法において、LNGを配送船から受取り船へ船舶間積み替え場所で荷降ろしすること;前記受取り船を自身の動力で前記船舶間積み替え場所から、前記船舶間積み替え場所よりも海岸に近い係留場所へ移動させること;前記受取り船上の再ガス化施設を用いてLNGを再ガス化し、前記係留場所で天然ガスを形成すること;及び前記天然ガスを、最終的ユーザーへ送るための陸上ガス分配施設へ移送すること;を含んでいる。
【0004】
特開2000−25690号公報には、上甲板骨材のメンテナンスが容易であり、かつ、鋼材量の負担軽減が可能になるとともに、船体寸法の縮小による係留外力の軽減や洗浄作業効率の向上が図れる浮体式生産・貯蔵・積み出し設備が開示されている。その浮体式生産・貯蔵・積み出し設備は、船体の上甲板上側に上甲板の補強材を設置し、該補強材を架台として、その上部にプロセスモジュールを積載したことを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2009−529456号公報
【特許文献2】特開2000−25690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、より破壊されにくい浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に、発明を実施するための形態・実施例で使用される符号を括弧付きで用いて、課題を解決するための手段を記載する。この符号は、特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態・実施例の記載との対応を明らかにするために付加されたものであり、特許請求の範囲に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0008】
本発明による浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備(1)(61)は、採掘された天然ガスから液化ガスを生成するプラント(3)(63)と、その液化ガスを貯蔵するタンク(5−1〜5−3)(65−1〜65−3)と、プラント(3)(63)とタンク(5−1〜5−3)(65−1〜65−3)とを支持する浮体(2)(62)とを備えている。浮体(2)(62)は、プラント(3)(63)が配置されるプラント部分(15)(72)と、液化ガスタンク(5−1〜5−3)(65−1〜65−3)が配置されるタンク部分(12)(75)と、プラント部分(15)(72)とタンク部分(12)(75)との間に配置される船体断面形状変更部分(14)(74)とを含んでいる。浮体(2)(62)の長手方向(10)(70)に垂直である平面と船体断面形状変更部分(14)(74)とが交差した船体断面形状変更部分断面(35)の形状は、その平面がタンク部分(12)(75)に近いほど、長手方向(10)(70)に垂直である他の平面とタンク部分(12)(75)とが交差したタンク部分断面(31)の形状に類似し、その平面がプラント部分(15)(72)に近いほど、長手方向(10)(70)に垂直であるさらに他の平面とプラント部分(15)(72)とが交差したプラント部分断面(34)の形状に類似している。たとえば、船体断面形状変更部分断面(35)の断面積は、その平面が前記タンク部分(12)(75)に近いほどタンク部分断面(31)の断面積に等しく、その平面がプラント部分(15)(72)に近いほどプラント部分断面(34)の断面積に等しい。このとき、船体断面形状変更部分断面(35)の断面二次モーメントは、その平面が前記タンク部分(12)(75)に近いほどタンク部分断面(31)の断面二次モーメントに等しく、その平面が前記プラント部分(15)(72)に近いほどプラント部分断面(34)の断面二次モーメントに等しい。このような浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備(1)(61)は、プラントが配置されるプラント部分とタンクが配置されるタンク部分とが直に接合されている他の浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備に比較して、プラント部分(15)(72)とタンク部分(12)(75)との間に応力集中が発生しにくく、破壊されにくい。
【0009】
本発明による浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備(1)(61)は、プラント部分(15)(72)を補強する隔壁(33)をさらに備えている。隔壁(33)とその平面とが交差した隔壁断面の断面積は、その平面がタンク部分(12)(75)に近いほど小さいことが好ましい。
【0010】
本発明による浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備(1)(61)は、船体断面形状変更部分(14)(74)に配置されるバラストタンク(25)(85)をさらに備えていることが好ましい。
【0011】
本発明による浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備(1)(61)は、プラント(3)(63)、及び浮体(2)(62)で消費される用役を供給するための用役設備などが配置されるポンプルーム(22)(82)をさらに備えている。ポンプルーム(22)(82)は、船体断面形状変更部分(14)(74)に配置されることが好ましい。
【0012】
本発明による浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備(1)(61)は、プラント(3)(63)によりその天然ガスから分離されるコンデンセートを貯蔵するコンデンセートタンク(24)(84)をさらに備えている。コンデンセートタンク(24)(84)は、プラント部分(15)(72)のうちの船体断面形状変更部分(14)(74)に近い側に配置されることが好ましい。
【0013】
本発明による浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備(1)(61)は、プラント(3)(63)で消費される用役を供給するための用役設備(23)(83)をさらに備えている。プラント部分(15)(72)は、上甲板(21)(81)をさらに含んでいる。プラント(3)(63)は、上甲板(21)(81)の上に配置される。用役設備(23)(83)は、プラント部分(15)(72)のうちの船体断面形状変更部分(14)(74)から遠い側に配置され、上甲板(21)(81)の下に配置されることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明による浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備は、プラントが配置されるプラント部分とタンクが配置されるタンク部分との間に応力集中が発生しにくく、破壊されにくい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明による浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備を示す平面図である。
【図2】図2は、本発明による浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備を示す正面図である。
【図3】図3は、図2のA−A断面を示し、タンク部分を示す断面図である。
【図4】図4は、図2のB−B断面を示し、プラント部分を示す断面図である。
【図5】図5は、図2のC−C断面を示し、船体断面形状変更部分を示す断面図である。
【図6】図6は、図5のD−D断面を示し、船体断面形状変更部分を示す断面図である。
【図7】図7は、図5のE−E断面を示し、船体断面形状変更部分を示す断面図である。
【図8】図8は、本発明による他の浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備を示す平面図である。
【図9】図9は、本発明による他の浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面を参照して、本発明による浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備の実施の形態を記載する。その浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備1は、図1に示されているように、浮体2とプラント3と複数のタンク5−1〜5−3とローディングアーム6と居住区7とヘリポート8とを備えている。浮体2は、海洋に浮かぶ船体を形成し、プラント3と複数のタンク5−1〜5−3とローディングアーム6と居住区7とヘリポート8とをその海洋上に支持している。
【0017】
プラント3は、ガス田から採掘された天然ガスから液化ガスを生成する。すなわち、プラント3は、前処理設備と液化設備とを備え、または、液化設備のみを備えている。その前処理設備は、セパレータと酸性ガス除去設備と脱湿設備と水銀除去設備とを備えている。そのセパレータは、その天然ガスからコンセンデートと水とを除去することにより、第1天然ガスを生成する。その酸性ガス除去設備は、その第1天然ガスから酸性ガスを除去することにより、第2天然ガスを生成する。その酸性ガスとしては、二酸化炭素と硫化水素とが例示される。その脱湿設備は、その第2天然ガスから水分を完全に除去することにより、第3天然ガスを生成する。その水銀除去設備は、その天然ガスに水銀が含まれているときに、その第3天然ガスから水銀を除去することにより、第4天然ガスを生成する。その水銀を除去する方法としては、炭素吸着法が例示される。なお、プラント3は、このような前処理設備を省略することもできる。
【0018】
その液化設備は、熱交換器と圧縮機と動力装置とを備えている。その動力装置は、その圧縮機を駆動する動力を生成し、たとえば、ガスタービンから形成され、または、モータと発電設備とから形成されている。その液化設備は、その第4天然ガス(その天然ガスに水銀が含まれていないときにその第3天然ガス、前処理設備が省略されているときにその天然ガス)を−162℃以下に冷却することにより、その液化ガスを生成する。その冷却する方法としては、カスケード方式と混合冷媒方式と窒素冷媒方式とが例示される。そのカスケード方式は、複数の段階に分けて液化対象ガスを冷却・液化する方法を示している。その複数の段階では、互いに異なる複数の冷媒がそれぞれ使用される。その混合冷媒方式は、混合した冷媒により液化対象ガスを冷却・液化する方法である。その窒素冷媒方式は、冷却した窒素により液化対象ガスを冷却・液化する方法である。なお、液化設備の一部を船内に配置する場合もある。
【0019】
複数のタンク5−1〜5−3は、それぞれ、球形に形成され周囲を断熱材で囲ってあるモス独立球形タンクに形成されている。複数のタンク5−1〜5−3は、プラント3により生成された液化ガスを低温に保冷することにより、その液化ガスを液体の状態で貯蔵する。なお、タンク5−1〜5−3は、モス独立球形タンクと異なる他の種類のタンクに置換されることもできる。そのタンクとしては、独立方形タンクとメンブレンタンクとが例示される。その独立方形タンクは、直方体状に形成され、その液化ガスを低温に保冷することにより、その液化ガスを液体の状態で貯蔵する。そのメンブレンタンクは、直方体状に形成され、その液化ガスを低温に保冷することにより、その液化ガスを液体の状態で貯蔵する。
【0020】
ローディングアーム6は、屈曲可能である管路とその管路の一端を移動させるアクチュエータとを備えている。その管路の他端は、タンク5−1〜5−3に接続されている。ローディングアーム6は、その液化ガスを輸送するタンカーが浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備1に係船されているときに、その管路の一端をそのタンカーに接続し、その管路を介して複数のタンク5−1〜5−3により貯蔵された液化ガスをそのタンカーに供給する。
【0021】
居住区7は、浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備1の乗員が待機する建家を形成している。ヘリポート8は、浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備1の乗員が搭乗するヘリコプターが離発着する離着陸場を形成している。
【0022】
浮体2は、船首方向10に長い形状に形成され、船首部分11とタンク部分12と船体断面形状変更部分14とプラント部分15と船尾部分16とから形成されている。船首部分11は、浮体2の船首を形成し、浮体2のうちの船首方向10の端を形成している船尾部分16は、浮体2の船尾を形成し、浮体2のうちの船首方向10の反対方向の端を形成しているタンク部分12は、船首部分11と船尾部分16との間に配置され、船首部分11に接合されている。船体断面形状変更部分14は、タンク部分12と船尾部分16との間に配置され、タンク部分12に接合されている。プラント部分15は、船体断面形状変更部分14と船尾部分16との間に配置され、船体断面形状変更部分14に接合され、船尾部分16に接合されている。
【0023】
プラント3は、プラント部分15に支持されている。なお、プラント3は、一部が船体断面形状変更部分14に支持されることもできる。複数のタンク5−1〜5−3は、タンク部分12に支持されている。ローディングアーム6は、タンク部分12に支持されている。居住区7とヘリポート8とは、船首部分11に支持されている。
【0024】
浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備1は、図示されていない係留システムをさらに備えている。その係留システムは、船首部分11に支持されている。その係留システムは、一点係留システムを使用し、一端が海底に固定された係留索の他端を浮体2の船首部分11に接続することにより、浮体2を海底に係留する。その一点係留システムとしては、内部タレット方式や外部タレット方式が例示される。その内部タレット方式は、浮体2に対してその係留索が回転可能にその係留索を船首部分11に接続するタレットが浮体2の内部に配置される係留システムである。その外部タレット方式は、そのタレットが浮体2の外部に配置される係留システムである。浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備1は、このような一点係留システムにより係留されることにより、風波による外力の影響や動揺を低減することができる。その係留システムには、一点係留システムの他に、多点係留システムもある。
【0025】
浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備1は、さらに、図2に示されているように、ポンプルーム22とマシナリールーム23とコンデンセートタンク24とバラストタンク25とを備えている。
【0026】
マシナリールーム23は、プラント3、及び浮体2で消費される複数の用役をそれぞれ供給する複数の用役設備を備えている。たとえば、マシナリールーム23は、電力供給設備と冷却水設備などを備えている。その電力供給設備は、プラント3、及び浮体2で消費される電力を生成する。その冷却水設備は、プラント3で消費される冷却水を生成する。
【0027】
ポンプルーム22は、プラント3、及び浮体2で消費される用役を供給するための用役設備などが配置されている。
【0028】
コンデンセートタンク24は、プラント3により生産されるコンデンセートを貯蔵する。バラストタンク25は、浮体2の重量を増したり重量のバランスを取ったり曲げモーメントを軽減したりするためのバラストを積み込む。
【0029】
浮体2は、さらに、上甲板21を備えている。上甲板21は、水平面に沿う板状に形成され、浮体2の上部の概ね全体にわたって配置され、平坦な床を形成している。プラント3は、プラント部分15の上甲板21の上に配置されている。ローディングアーム6は、タンク部分12の上甲板21の上に配置されている。居住区7とヘリポート8とは、船首部分11の上甲板21の上に配置されている。マシナリールーム23とコンデンセートタンク24とは、プラント部分15の上甲板21の下に配置され、プラント部分15に支持されている。ポンプルーム22とバラストタンク25とは、船体断面形状変更部分14の上甲板21の下に配置され、船体断面形状変更部分14に支持されている。タンク5−1〜5−3は、それぞれ、タンク部分12の上甲板21の下と上とに配置され、タンク部分12に支持されている。
【0030】
図3は、船首方向10に垂直である平面がタンク部分12と交差したタンク部分断面を示している。そのタンク部分断面31は、その平面の船首方向10に関する位置に対して概ね一定である。
【0031】
図4は、船首方向10に垂直である平面がプラント部分15と交差したプラント部分断面を示している。そのプラント部分断面34は、その平面の船首方向10に関する位置に対して概ね一定である。プラント部分断面34の形状は、タンク部分断面31の形状と異なっている。
【0032】
図5は、船首方向10に垂直である平面が船体断面形状変更部分14と交差した船体断面形状変更部分断面を示している。その船体断面形状変更部分断面35は、その平面の船首方向10に関する位置に対して変化する。すなわち、船体断面形状変更部分断面35は、その平面の位置が船体断面形状変更部分14のタンク部分12の側の端であるときに、タンク部分断面31の形状に概ね一致している。船体断面形状変更部分断面35は、その平面の位置が船体断面形状変更部分14のプラント部分15の側の端であるときに、プラント部分断面34の形状に概ね一致している。船体断面形状変更部分断面35の形状は、その平面がタンク部分12に近いほどタンク部分断面31の形状に類似し、その平面がプラント部分15に近いほどプラント部分断面34の形状に類似している。
【0033】
図6は、ある平面が浮体2と交差した断面を示している。その平面は、船首方向10に平行である。タンク部分12の縁は、船首方向10に概ね平行である面から形成されている。プラント部分15の縁は、船首方向10に平行である面から形成されている。船体断面形状変更部分14の縁は、タンク部分12の縁とプラント部分15の縁とを直線的につなぐ面から形成されている。船体断面形状変更部分14は、船体断面形状変更部分14の縁を形成する面と船首方向10とのなす角θが概ね−90度より大きく+90度より小さくなるように形成されている。好ましくは−80度以上+80度以下になるようにするのが望ましく、より好ましくは−30度以上+30度以下になるようにするのが望ましい。
【0034】
コンデンセートタンク24は、図4に示されているように、さらに、隔壁33を備えている。隔壁33は、ある平面に沿う板状に形成されている。その平面は、船首方向10に平行であり、かつ、水平面に垂直である。隔壁33は、コンデンセートタンク24を右舷側のタンクと左舷側のタンクとに隔てている。隔壁33は、さらに、プラント部分15の上甲板21に接合され、プラント部分15の底部に接合され、プラント部分15の骨格を形成している。すなわち、隔壁33は、プラント部分15を補強している。
【0035】
隔壁33は、図7に示されているように、一部分が船体断面形状変更部分14に配置されている。その一部分は、船体断面形状変更部分14の上甲板21に接合され、船体断面形状変更部分14の底部に接合されている。隔壁33のうちの船体断面形状変更部分14に配置されている部分と船首方向10に垂直である平面と交差した断面の断面積は、その平面がタンク部分12に近いほど小さい。
【0036】
浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備1は、海洋上で天然ガスから液化ガスを生産し、その液化ガスを貯蔵し、その液化ガスをタンカーに積み出すために利用される。すなわち、浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備1は、所定の海域に係留されているときに、海底のガス田から採掘された天然ガスが供給される。浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備1は、プラント3がその天然ガスからコンデンセートと液化ガスとを生成し、そのコンデンセートをコンデンセートタンク24に貯蔵し、その液化ガスをタンク5−1〜5−3に貯蔵する。浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備1は、タンカーが浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備1に係船されているときに、ローディングアーム6を介して複数のタンク5−1〜5−3により貯蔵された液化ガスをそのタンカーに供給する。
【0037】
このような浮体2は、曲げモーメントを受ける構造形状が船首方向10に関してゆるやかに変化している。このため、浮体2は、タンク部分とプラント部分とが直に接合されている他の浮体に比較して、タンク部分12とプラント部分15との間に応力集中が発生しにくく、船体強度的に信頼性の高い船体構造となり、浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備1は、耐久性が向上する。すなわち、浮体2は、タンク部分12とプラント部分15との間にその応力集中が発生しにくくなるように、タンク部分12の断面形状とプラント部分15の断面形状とに基づいて船体断面形状変更部分14の船首方向10の長さが設計される。船体断面形状変更部分14の船首方向10の長さとしては、浮体2の船首方向10の長さが380mであるときに、概ね10mが例示されるが、その応力集中を十分に発生しにくくすることができる場合には、1mとすることもできる。
【0038】
浮体2に印加される曲げモーメントは、一般的に、船首または船尾の重量が変化することにより、大きく変化する。浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備1は、コンデンセートタンク24が浮体2の中央近くに配置されていることにより、コンデンセートタンク24に貯蔵されるコンデンセートの重量変化に対する浮体2に印加される曲げモーメントの変動が軽減される。このため、浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備1は、コンデンセートタンク24に貯蔵されるコンデンセートの重量変化に対する浮体2の耐久性が向上する。また、一般的に船体の静水中縦曲げモーメント許容値は、船体中央から前後に船体の長さの0.15倍程度の範囲がもっとも大きい。コンデンセートタンク24を中央近くに配置することは、コンデンセートの重量変化による浮体2に印加される曲げモーメントの最大値も船体中央部に移動することから、許容値の大きな範囲を有効に利用することでき、コンデンセートの重量変化対して必要な船体の補強を軽減もしくは無くすことができる。好ましくは、コンデンセートタンク24の船体中央側の端を船体中央から船体の長さの0.15倍以下に配置することが望ましい。なお、浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備1は、コンデンセートタンク24を船体断面形状変更部分14に配置することにより、コンデンセートタンク24に貯蔵されるコンデンセートの重量変化に対する浮体2の耐久性をさらに向上させることができる。
【0039】
浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備1は、さらに、浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備1に必要な設備を船体断面形状変更部分14に配置することにより、浮体2の耐久性を向上させつつ、浮体2の内部を有効利用し、浮体2の大型化を抑制することができる。浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備1は、さらに、浮体2に船体断面形状変更部分14を形成することにより、浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備1に必要な設備を配置するための空間を広くすることができる、または、その空間を互いに異なる複数の位置に確保することができる。このため、浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備1は、その設備を配置する位置の自由度を向上させることができ、その設備を分散して配置することができる。その結果、浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備1は、その設備を冗長化させることができ、信頼性・安全性を向上させることができる。
【0040】
浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備1は、さらに、プラント3に必要な設備(マシナリールーム23とポンプルーム22と)をプラント3の近くに配置することができる。このとき、マシナリールーム23からプラント3に電力を供給する配線は、より短くすることができ、送電の損失をより低減することができる。マシナリールーム23からプラント3に流体を供給する配管は、より短くすることができ、その流体の輸送の抵抗を低減することができる。その結果、浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備1は、消費電力を低減することができる。
【0041】
なお、コンデンセートタンク24は、コンデンセートタンク24に貯蔵されるコンデンセートの重量変化に対する浮体2に印加される曲げモーメントの変動が十分に小さいときに、プラント部分15の船体断面形状変更部分14の側と異なる他の位置に配置されることができる。その位置としては、プラント部分15の船尾部分16の側が例示される。このような浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備は、既述の実施の形態における浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備1と同様にして、耐久性を維持させることができる。
【0042】
なお、浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備1は、隔壁33の曲げモーメントに対する変形しにくさが十分に小さいときに、隔壁33を船体断面形状変更部分14に配置することを省略することができる。さらに、浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備1は、プラント部分15またはコンデンセートタンク24が十分な強度を有しているときに、隔壁33を省略することができる。このような浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備は、既述の実施の形態における浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備1と同様にして、耐久性を維持させることができる。
【0043】
図8は、本発明による浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備の実施の他の形態を示している。その浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備61は、浮体62とプラント63と複数のタンク65−1〜65−3とローディングアーム66と居住区67とヘリポート68とを備えている。浮体62は、海洋に浮かぶ船体を形成し、プラント63と複数のタンク65−1〜65−3とローディングアーム66と居住区67とヘリポート68とをその海洋上に支持している。
【0044】
プラント63は、プラント3と同様にして、ガス田から採掘された天然ガスから液化ガスを生成する。複数の液化ガスタンク65−1〜65−3は、液化ガスタンク5−1〜5−3と同様にして、その液化ガスを液体の状態で貯蔵する。ローディングアーム66は、その液化ガスを輸送するタンカーが浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備1に係船されているときに、複数のタンク65−1〜65−3により貯蔵された液化ガスをそのタンカーに供給する。居住区67は、浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備61の乗員が待機する建家を形成している。ヘリポート68は、ヘリコプターが離発着する離着陸場を形成している。
【0045】
浮体62は、船首方向70に長い形状に形成され、船首部分71とプラント部分72と船体断面形状変更部分74とタンク部分75と船尾部分76とから形成されている。船首部分71は、浮体62の船首を形成し、浮体62のうちの船首方向70の端を形成している船尾部分76は、浮体62の船尾を形成し、浮体62のうちの船首方向70の反対方向の端を形成している。プラント部分72は、船首部分71と船尾部分76との間に配置され、船首部分71に接合されている。船体断面形状変更部分74は、プラント部分72と船尾部分76との間に配置され、プラント部分72に接合されている。タンク部分75は、船体断面形状変更部分74と船尾部分76との間に配置され、船体断面形状変更部分74に接合され、船尾部分76に接合されている。
【0046】
プラント63は、プラント部分72に支持されている。なお、プラント63は、一部が船体断面形状変更部分74に支持されることもできる。複数の液化ガスタンク65−1〜65−3は、タンク部分75に支持されている。ローディングアーム66は、タンク部分75に支持されている。居住区67とヘリポート68とは、船首部分71に支持されている。
【0047】
浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備61は、図示されていない係留システムをさらに備えている。その係留システムは、船首部分71に支持されている。その係留システムは、係留索を浮体62の船首部分71に保持させることにより、浮体62を海底に係留する。
【0048】
浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備61は、さらに、図9に示されているように、ポンプルーム82とマシナリールーム83とコンデンセートタンク84とバラストタンク85とを備えている。マシナリールーム83は、マシナリールーム23と同様にして、プラント63、及び浮体62で消費される複数の用役をそれぞれ供給する複数の用役設備を備えている。ポンプルーム82は、ポンプルーム22と同様にして、プラント63、及び浮体62で消費される用役を供給するための用役設備などが配置されている。コンデンセートタンク84は、プラント63により生産されるコンデンセートを貯蔵する。バラストタンク85は、浮体62の重量を増したり重量のバランスを取ったり曲げモーメントを軽減したりするためのバラストを積み込む。
【0049】
浮体62は、さらに、上甲板81を備えている。上甲板81は、水平面に沿う板状に形成され、浮体62の上部の概ね全体にわたって配置され、平坦な床を形成している。プラント63は、プラント部分72の上甲板81の上に配置されている。ローディングアーム66は、タンク部分75の上甲板81の上に配置されている。居住区67とヘリポート68とは、船首部分71の上甲板81の上に配置されている。マシナリールーム83とコンデンセートタンク84とは、プラント部分72の上甲板81の下に配置され、プラント部分72に支持されている。ポンプルーム82とバラストタンク85とは、船体断面形状変更部分74の上甲板81の下に配置され、船体断面形状変更部分74に支持されている。タンク65−1〜65−3は、それぞれ、タンク部分75の上甲板81の下と上とに配置され、タンク部分75に支持されている。
【0050】
プラント部分72は、プラント部分15と同様にして、船首方向70に垂直である平面がプラント部分72と交差したプラント部分断面がその平面の船首方向70に関する位置に対して概ね一定である。タンク部分75は、タンク部分12と同様にして、船首方向70に垂直である平面がタンク部分75と交差したタンク部分断面がその平面の船首方向70に関する位置に対して概ね一定である。船体断面形状変更部分74は、船体断面形状変更部分14と同様にして、船首方向70に垂直である平面が船体断面形状変更部分74と交差した船体断面形状変更部分断面がその平面の船首方向70に関する位置に対して変化する。すなわち、その船体断面形状変更部分断面は、その平面の位置が船体断面形状変更部分74のプラント部分72の側の端であるときに、そのタンク部分断面の形状に概ね一致している。その船体断面形状変更部分断面は、その平面の位置が船体断面形状変更部分74のタンク部分75の側の端であるときに、そのプラント部分断面の形状に概ね一致している。その船体断面形状変更部分断面の形状は、その平面がプラント部分72に近いほどそのタンク部分断面の形状に類似し、その平面がタンク部分75に近いほどそのプラント部分断面の形状に類似している。
【0051】
このような浮体62は、浮体2と同様にして、タンク部分75とプラント部分72との間に応力集中が発生しにくく、船体強度的に信頼性の高い船体構造となる。すなわち、本発明による浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備は、船首と船尾とを交換した場合でも、耐久性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0052】
1 :浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備
2 :浮体
3 :プラント
5−1〜5−3:液化ガスタンク
6 :ローディングアーム
7 :居住区
8 :ヘリポート
10:船首方向
11:船首部分
12:タンク部分
14:船体断面形状変更部分
15:プラント部分
16:船尾部分
21:上甲板
22:ポンプルーム
23:マシナリールーム
24:コンデンセートタンク
25:バラストタンク
31:タンク部分断面
33:隔壁
34:プラント部分断面
35:船体断面形状変更部分断面
61:浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備
62:浮体
63:プラント
65−1〜65−3:液化ガスタンク
66:ローディングアーム
67:居住区
68:ヘリポート
70:船首方向
71:船首部分
72:プラント部分
74:船体断面形状変更部分
75:タンク部分
76:船尾部分
81:上甲板
82:ポンプルーム
83:マシナリールーム
84:コンデンセートタンク
85:バラストタンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
採掘された天然ガスから液化ガスを生成するプラントと、
前記液化ガスを貯蔵するタンクと、
前記プラントと前記タンクとを支持する浮体とを具備し、
前記浮体は、
前記プラントが配置されるプラント部分と、
前記タンクが配置されるタンク部分と、
前記プラント部分と前記タンク部分との間に配置される船体断面形状変更部分とを含み、
前記浮体の長手方向に垂直である平面と前記船体断面形状変更部分とが交差した船体断面形状変更部分断面の形状は、
前記平面が前記タンク部分に近いほど、前記長手方向に垂直である他の平面と前記タンク部分とが交差したタンク部分断面の形状に類似し、
前記平面が前記プラント部分に近いほど、前記長手方向に垂直であるさらに他の平面と前記プラント部分とが交差したプラント部分断面の形状に類似している
浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備。
【請求項2】
請求項1において、
前記プラント部分を補強する隔壁をさらに具備し、
前記隔壁と前記船体断面形状変更部分内平面とが交差した隔壁断面の断面積は、前記平面が前記タンク部分に近いほど小さい
浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備。
【請求項3】
請求項1〜請求項2のいずれかにおいて、
前記船体断面形状変更部分に配置されるバラストタンク
をさらに具備する浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかにおいて、
前記プラントで消費される複数の用役をそれぞれ供給する複数の用役設備ポンプが配置されるポンプルームをさらに具備し、
前記ポンプルームは、前記船体断面形状変更部分に配置される
浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備。
【請求項5】
請求項1〜請求項2のいずれかにおいて、
前記プラントにより前記天然ガスから分離されるコンデンセートを貯蔵するコンデンセートタンクをさらに具備し、
前記コンデンセートタンクは、前記プラント部分のうちの前記船体断面形状変更部分に近い側に配置される
浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備。
【請求項6】
請求項5において、
前記プラントで消費される用役を供給するための用役設備をさらに具備し、
前記プラント部分は、上甲板をさらに含み、
前記プラントは、前記上甲板の上に配置され、
前記用役設備は、前記プラント部分のうちの前記船体断面形状変更部分から遠い側に配置され、前記上甲板の下に配置される
浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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