説明

浮力型磁気方位検知素子

【課題】 環状ボビンの小型化が可能な、励磁巻線を施した浮力型磁気方位検知素子を提供すること。
【解決手段】 環状の空洞を持つ非磁性の環状ボビン11内にその空洞のほぼ半分を占める液体13を封入し、液体13の液面に所要の浮力を持たせて環状コア12を環状コアケース16に収納して浮かせ、環状ボビン11の外周に、導体パターンを具備したフレキシブルなプリント基板(フレキシブル基板)14を巻きつけて結線することにより励磁巻線とし、更に、そのフレキシブル基板14を包み、環状ボビン11の径方向に直交する二つの検出巻線を環状ボビンの中心を通り、交差させて巻回している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地磁気を検出して方位を検出するフラックスゲート方式方位計により構成した浮力型磁気方位検知素子に関し、特に、環状ボビン内の液体上に、環状コアケースに収納した環状磁性コアが浮いている浮力型磁気方位検知素子に関する。
【背景技術】
【0002】
地磁気の南北東西を検出するように構成したフラックスゲート方式磁気方位計の一つに、特許文献1に記載されているように、浮力型磁気方位検知素子がある。この浮力型磁気方位検知素子の従来の構成の一例を図5に示す。図5(a)は正面半断面図、図5(b)は上面図である。図5に示すように、環状コアケース16に収納した環状磁性コア(以下、環状コアと称す)12を、非磁性の環状ボビン11の内部空間に、ほぼ半分を占める液体13を封入して浮かし、環状ボビン11の外周にエナメル等で絶縁された金属線を用いて励磁巻線61を巻回し、さらにその上に検出巻線62を巻回し形成したものである。このような構造の磁気方位検知素子は特に動揺が激しい装置内で使用する方位検出器で用いられている。
【0003】
方位検出器は様々な装置で用いられているが、装置の小型化に対する市場要求は大きく、この要求に対応するために浮力型磁気方位検知素子についても小型化が必要となっている。浮力型磁気方位検知素子の場合、その形状は液体を収納した環状ボビン11の形状でほぼ決定されており、小型化のためには環状ボビン11の形状を小型化する必要がある。
【0004】
【特許文献1】特開平8−219791号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、環状ボビン11の励磁巻線61は、エナメル等で絶縁された金属線をトロイダル巻線機で巻いていた。この場合、環状ボビン11の小型化を行うと、環状ボビン11の中心穴65の形状も必然的に小さくなり、トロイダル巻線機の制約で、巻線が行えないという状況があった。すなわち、環状ボビン11の中心穴65の穴径が小さくなると、巻線機において巻線を行う為に予め線材を巻き取るリングが穴の内部に接触してしまうという問題である。
【0006】
環状ボビン11の高さがある程度あり、さらに巻線の巻太りにより中心穴65中の空間が狭まることから中心穴径縮小の影響は大きく、従来技術では、環状ボビンの小型化を行う上で、トロイダル巻線機による制約により励磁巻線の巻線を行える環状ボビンの寸法に制約があった。
【0007】
本発明の課題は、環状ボビンの小型化が可能な、励磁巻線を施した浮力型磁気方位検知素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するため、本発明の浮力型磁気方位検知素子は、周方向に連続する内部空洞を持つ非磁性の環状ボビン内に該空洞のほぼ半分を占める液体を封入し、該液面に所要の浮力を持たせて環状磁性コアを環状コアケースに収納して浮かせ、前記環状ボビンの外周に励磁巻線を巻回し、更に、該励磁巻線を包み、環状ボビンの径方向に直交する二つの検出巻線を環状ボビンの中心を通り、交差させて巻回してなる浮力型磁気方位検知素子において、前記励磁巻線はフレキシブルなプリント基板上に設けた導体によるパターンを巻きつけて構成している。
【0009】
さらに、前記フレキシブルなプリント基板上に設けた導体によるパターンの両端に前記導体の端部を接続してコイルを構成するための接続端子及び接続部を有していてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の浮力型磁気方位検知素子は、励磁巻線がエナメル等で絶縁された金属線とトロイダル巻線機とを用いずに、フレキシブルなプリント基板を用いることで、トロイダル巻線機の寸法的な制約にとらわれず、環状ボビンの小型化が可能となる。
【0011】
本発明によれば、励磁巻線としてのフレキシブルなプリント基板の厚みと所要の巻数を構成する導体パターンの幅寸法のみを考慮して設計すればよいので、環状ボビンの小型化が容易となり、環状ボビンの小型化が可能な、励磁巻線を施した浮力型磁気方位検知素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施の形態を以下に図面に基づき説明する。
【0013】
図1は、本発明による浮力型磁気方位検知素子の一実施の形態を示す正面半断面図、図2はその浮力型磁気方位検知素子の上面図であり、励磁巻線の結線状態を含めて示している。
【0014】
図1において、環状ボビン11の構造および形状は、図5に示した従来の浮力型磁気方位検知素子と同様であり、環状の内部空洞を持つ非磁性の環状ボビン11内にその空間のほぼ半分を占める液体13を封入し、液体13の液面に所要の浮力を持たせて環状コア12を環状コアケース16に収納して浮かせている。
【0015】
ここで、本実施の形態では、環状ボビン11の外周に、導体パターンを具備したフレキシブルなプリント基板(以下、フレキシブル基板と称す)14を巻きつけて結線することにより励磁巻線とし、更に、そのフレキシブル基板14を包み、環状ボビン11の径方向に互いに直交する二つの検出巻線23を環状ボビンの中心を通り、交差させて巻回している(図2)。
【0016】
ここで、フレキシブル基板14は環状ボビン11上の互いに対向する位置に1対を巻きつけ、それと直交する位置にもう1対を巻きつけ、その合計4個を後に述べる方法で結線することにより環状ボビン11に施す励磁巻線としている。
【0017】
フレキシブル基板14は、接続端子部14−1、接続部14−2、導体パターン部14−3からなり、接続端子部14−1および接続部14−2は導体パターン部14−3を環状ボビン11に巻きつけた後、端子板32上で導体パターン部14−3がコイルを構成するように接続され、そのコイルの終端はリード線用接続ピン33によりリード線22に接続される。
【0018】
図2に示すように、外部より入力する励磁用信号線21の片側は、1つのフレキシブル基板14のリード線用接続ピン33(図1)に接続され、リード線22により4つのフレキシブル基板14からなるコイルを直列に接続するようリード線22で各フレキシブル基板の入出力ピン間の接続を行い、励磁用信号線21から励磁電流を入力し励磁を行う。
【0019】
図3は、フレキシブル基板14および端子板の詳細構造を示す図であり、図3(a)はフレキシブル基板14の正面図、図3(b)はその側面図、図3(c)は導体パターン部14−3の部分拡大平面図、図3(d)はその拡大断面図、図3(e)は接続部14−2の部分拡大平面図、図3(f)はその拡大断面図、図3(g)は接続端子部14−1と端子板32の部分拡大断面図を示す。
【0020】
図3に示すように、本実施の形態においては、フレキシブル基板14の厚さは0.2mm、接続端子部14−1の形状は幅4.5mm、長さ20mm、接続部14−2の形状は幅4.5mm、長さ18mm、導体パターン部14−3の形状は幅2.8mm、長さ52mmである。また、フレキシブル基板14は、厚さ100μmのポリエステルやポリイミドフイルム等の絶縁樹脂30の両面に導体として50μmの銅箔31を設置したものを材料とし、その銅箔をエッチング法などでパターン化して形成したものである。導体パターン部14−3に形成されたコイル線幅および線間隔は、ともに0.1mmであり、そのコイル線パターンは絶縁樹脂30の表裏両面に形成されている。ここでは1つのフレキシブル基板14での巻数を26回とするため、1面13本のコイル線パターンが形成されている。コイル線パターンの両側部には0.1mmの導体のない縁部を設けている。
【0021】
接続端子部14−1および接続部14−2では各コイル線パターンを接続してコイルを構成するためのスルーホール35および36がそれぞれ形成されている。図3(g)に示すように、接続端子部14−1の裏面には厚さ1mmのエポキシ樹脂からなる端子板32が強度を補うために一体化されており、スルーホール35にはリード線22と接続するためのリード線接続用ピン33と接続部14−2のコイル線と接続するための接続ピン34が挿入されている。本実施の形態においては、リード線用接続ピン33および接続ピン34はφ0.5mmの金属線を圧入して形成したものである。また接続部14−2のスルーホール36には接続ピン34とのロウ付け用の座37が形成されている。
【0022】
図4は、導体パターン部14−3および接続端子部14−1、接続部14−2に形成されたコイル線パターンおよびスルーホール35および36(図3)の配線パターンを模式的に示す図である。図4において、a1からa8は接続端子部14−1の各スルーホールの番号を表し、b1からb6は接続部14−2の各スルーホールの番号を表す。
【0023】
環状ボビン11に導体パターン部14−3が巻回され折り返されて、接続端子部14−1と接続部14−2が接続ピン34により接続される場合、図4において、各スルーホールは、b1とa2、b2とa3、b3とa4、b4とa5、b5とa6、b6とa7がそれぞれ接続ピン34で結合される。この結果、配線の接続は、a1→b1→a2→b2→a3→b3→a4→b4→a5→b5→a6→b6→a7→a8のように結線され、6回巻きのコイルが形成される。
【0024】
図4は、配線の説明のために示したものであるが、本実施の形態においては、同様な接続により表のパターンで13回巻き、裏面のパターンで13巻き、合計26回巻きのコイルが形成される。なお、表と裏のパターンに対応するスルーホールは分離して設けられ、表側の巻き終わりと裏側の巻き始めの配線が接続されるよう形成されている。
【0025】
なお、本実施の形態での環状ボビン11の高さは20mm、環状ボビンの外径は22mm、環状ボビンの内径は5.5mm、励磁巻線幅は2.8mmであり、小型の浮力型磁気方位検知素子を構成している。
【0026】
以上述べたように、本発明により環状ボビンの小型化が可能な、励磁巻線を施した浮力型磁気方位検知素子が得られる。
【0027】
なお、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、環状ボビンの形状や構造、フレキシブル基板の構成、形状、材質および形成されたコイルパターンの形状などは目的とする浮力型磁気方位検知素子の特性、形状などに合わせて設計することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明による浮力型磁気方位検知素子の一実施の形態を示す正面半断面図。
【図2】本発明による浮力型磁気方位検知素子の一実施の形態の上面図。
【図3】フレキシブル基板および端子板の詳細構造を示す図、図3(a)はフレキシブル基板の正面図、図3(b)はその側面図、図3(c)は導体パターン部の部分拡大平面図、図3(d)はその拡大断面図、図3(e)は接続部の部分拡大平面図、図3(f)はその拡大断面図、図3(g)は接続端子部と端子板の部分拡大断面図。
【図4】導体パターンおよび接続端子部、接続部に形成されたコイル線パターンおよびスルーホールの配線パターンを模式的に示す図。
【図5】浮力型磁気方位検知素子の従来の構成の一例を示す図。図5(a)は正面半断面図、図5(b)は上面図。
【符号の説明】
【0029】
6 スルーホールの番号
11 環状ボビン
12 環状コア
13 液体
16 環状コアケース
14 フレキシブル基板
14−1 接続端子部
14−2 接続部
14−3 導体パターン部
21 励磁用信号線
22 リード線
23、62 検出巻線
30 絶縁樹脂
31 銅箔
32 端子板
33 リード線用接続ピン
34 接続ピン
35、36 スルーホール
37 ロウ付け用の座
65 中心穴
61 励磁巻線
a1、a2、a3、a4、a5、a6、a7、a8、b1、b2、b3、b4、b5、b
6 スルーホールの番号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に連続する内部空洞を持つ非磁性の環状ボビン内に該空洞のほぼ半分を占める液体を封入し、該液面に所要の浮力を持たせて環状磁性コアを環状コアケースに収納して浮かせ、前記環状ボビンの外周に励磁巻線を巻回し、更に、該励磁巻線を包み、環状ボビンの径方向に互いに直交する二つの検出巻線を環状ボビンの中心を通り、交差させて巻回してなる浮力型磁気方位検知素子において、前記励磁巻線はフレキシブルなプリント基板上に設けた導体によるパターンを巻きつけて構成したことを特徴とする浮力型磁気方位検知素子。
【請求項2】
前記フレキシブルなプリント基板上に設けた導体によるパターンの両端に前記導体の端部を接続してコイルを構成するための接続端子及び接続部を有することを特徴とする請求項1記載の浮力型磁気方位検知素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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