説明

浮屋根タンクの梯子装置

【課題】 強風や地震によって浮屋根タンクの浮屋根及び梯子装置が揺動した際に、この梯子装置を構成するローリングラダーが過大な荷重を受けて浮上りや脱輪、捩れなどで損傷しないように安全性と耐久性を向上し、また車輪や取付部材などに摩擦抵抗を生じることなく通常使用時の浮屋根の滑らかな上昇下降機能の向上も図るようにした浮屋根タンクの梯子装置を提供する。
【解決手段】 梯子装置を構成するローリングラダー下端部の車輪が浮屋根上面のレール軌条から脱輪しないように、当該レール軌条の外側面にリブ材で補強した支持アングルを設けるとともに上記車輪のシャフトに一体形成した支持部材を設け、当該支持部材の下端部が上記支持アングルに引っ掛けるように形成した脱輪防止機構をレール軌条の外側に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、浮屋根タンクの浮屋根に設けられている梯子装置が強風や地震によって揺動した際に、過大な荷重を受けて損傷しないように、また摩擦や衝突などによって火花を発生することがないように、安全性と耐久性を配慮した構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図6に示すように、原油その他の揮発性・可燃性液体を貯蔵する浮屋根タンク本体1は、円形平板の底板2と円筒体形状の側板3と、この側板3内部の貯蔵液4の液面上に浮べた浮蓋状の浮屋根5と、箱状のポンツーン6と弾力性を有するシール装置7などとから形成されている。
この浮屋根5の上部には、貯蔵液4の増減による浮屋根5の上下動に追従するように、側板3の上端部に回動自在に軸支された梯子装置、つまりこの梯子装置を構成する手摺や踏板などを備えた階段状のローリングラダー8が架設されている。
このローリングラダー8を利用して、側板3の上端部に設けたステージ9から浮屋根5の上部に作業者や点検作業者など人が昇降して移動できるように形成されている。
このローリングラダー8の下端部には一対の車輪10が取付けられており、この車輪10は浮屋根5の上面所定位置に設けたレール架台11に接輪し滑らかに回転して移動するように形成されている。
【0003】
浮屋根タンクのローリングラダー、梯子装置に関する従来技術の発明には、実公昭63−23351号(特許文献1参照)の「浮屋根式貯槽」、実公平1−15669号(特許文献2参照)の「浮屋根式タンク」、及び実開昭60−47283号(特許文献3参照)「浮屋根式タンク」などの発明がある。
【0004】

特許文献1の「浮屋根式貯槽」の発明には、Fig1に示されるローリングラダー4が、堰板9に衝突しても損傷やスパークなどしないように、ローリングラダー4の直下に位置する堰板9の一部分をFig4〜Fig9に示すように、不燃性で傾動性若しくは伸縮性を有する仕切壁13で構成したものである。
【0005】
また、特許文献2の「浮屋根式タンク」の発明には、Fig1に示される梯子2が堰板4に衝突して火花を発生しないように、梯子2本体の下面及び側面を、弾性を有する軟質材料Mで被覆し、梯子2の直下に位置する堰板4’を、弾性を有する軟質材料Mで形成したものである。
【0006】
さらに、特許文献3の「浮屋根式タンク」の発明には、第1図及び第2図に示される浮屋根2上に降りられるように設けた可動梯子3の先端部に設けられた車輪5が、浮屋根上のガイドレール6から離脱しないように、また浮屋根自体も破損などしないように、第3図及び第4図に示すように、車軸7の両端突出軸部7a上にストッパー8を遊嵌し、このストッパー8は、車軸7aに遊嵌されるスリーブ9を有するL字状のストッパー本体10と、その先端に上向きに突出形成した係止片11とで形成したものである。
【0007】
【特許文献1】特公昭63−23351号
【特許文献2】実公平1−15669号
【特許文献3】実開昭60−47283号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記図6に示す浮屋根タンクは、図7に梯子装置の下端部分を拡大して示すように、台風などの際の強風や地震などによって側板3や貯蔵液体4が変動したり、浮屋根5が揺動した際に、側板3の上端部に回動自在に軸支されたローリングラダー8が、図中Xに示すように強風や揺動によって捩れたり、図中Yに示すように浮屋根3上面のレール架台11から車輪10が脱輪して、損傷や破損などによってローリングラダー8が使用できなくなる場合があった。
また、ローリングラダー8の下端部の車輪10の取付部の近傍が、摩擦や接触などして発熱したり火花を発生する心配も生じた。
【0009】

上記特許文献1の「浮屋根式貯槽」の発明は、ローリングラダー4が、堰板9に衝突しても損傷やスパークなどしないように、ローリングラダー4の直下に位置する堰板9の一部分を不燃性で傾動性若しくは伸縮性を有する仕切壁13で構成したものであるが、ローリングラダー4自体は、強風や地震などによる液面変動で強い荷重を受けた場合に、捩れや破損などの損傷を生じることがあった。
【0010】
また、上記特許文献2の「浮屋根式タンク」の発明は、梯子2が堰板4に衝突して火花を発生しないように、梯子2本体の下面及び側面を、弾性を有する軟質材料Mで被覆し、梯子2の直下に位置する堰板4’を、弾性を有する軟質材料Mで形成したものであるが、ローリングラダー4自体は、強風や地震などによる液面変動で強い荷重を受けた場合に、捩れや破損などの損傷を生じる心配があった。

【0011】
さらに、上記特許文献3の「浮屋根式タンク」の発明は、浮屋根2上に降りられるように設けた可動梯子3の先端部に設けられた車輪5が、浮屋根上のガイドレール6から離脱しないように、車軸7の両端突出軸部7a上にストッパー8を遊嵌し、このストッパー8は、車軸7aに遊嵌されるスリーブ9を有するL字状のストッパー本体10と、その先端に上向きに突出形成した係止片11とで形成したものであるが、車輪5の歯の深さ及び幅が小さいために、可動梯子3の大きな水平変動や上下変動によって車輪5がガイドレール6から脱輪することがあり、依然として、台風などの強風や地震時などで貯液が揺動した際に、可動梯子3が捩れたり、係止片11がガイドレール6やフランジ部6aに引っ掛かって外れたりして損傷する心配があった。
また、車輪5の両側フランジ5aの幅がガイドレール6のフランジ部6aの幅と合致して、左右の両側からリジッドに挟んでいるため、車輪5の左右側面方向への移動が規制されて無理な力がかかって損傷したり、強い摩擦抵抗を生じて回転が損なわれたり、さらにストッパー8が自由な動きを拘束しているため、通常使用時の車輪5の円滑な移動が損なわれることがあった。

【0012】

この発明の目的は、上述の従来技術が有する問題点に鑑みてなされたもので、強風や地震によって浮屋根タンクの浮屋根及び梯子装置が揺動した際に、この梯子装置を構成するローリングラダーが過大な荷重を受けて浮上りや脱輪、捩れなどで損傷しないように安全性と耐久性を向上し、また車輪や取付部材などに摩擦抵抗を生じることなく通常使用時の浮屋根の滑らかな上昇下降機能の向上も図るようにした浮屋根タンクの梯子装置に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1の発明に係る浮屋根タンクの梯子装置の構造は、強風や地震などで浮屋根本体や梯子装置を構成するローリングラダーが変動した際に、浮屋根上のローリングラダー下端部の車輪が浮屋根上面のレール軌条から脱輪しないように、当該レール軌条の外側面にリブ材で補強した支持アングルを設けるとともに上記車輪のシャフトに一体形成した支持部材を設け、当該支持部材の下端部が上記支持アングルに引っ掛けるように形成した脱輪防止機構をレール軌条の外側に設けたものである。

【0014】
請求項2の発明に係る浮屋根タンクの梯子装置の構造は、上記請求項1記載のローリングラダーが強風などによる曲げ荷重及び捩れ荷重に対して耐久性を有するように、ローリングラダーの側枠材の間に傾斜材を設けた枠組構造体に形成して剛性を増加するものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明に係る浮屋根タンクの梯子装置の構造は、強風や地震などで浮屋根本体や梯子装置を構成するローリングラダーが変動した際に、浮屋根上のローリングラダー下端部の車輪が浮屋根上面のレール軌条から脱輪しないように、当該レール軌条の外側面にリブ材で補強した支持アングルを設けるとともに、上記車輪のシャフトに一体形成した支持部材を設け、当該支持部材の下端部が上記支持アングルに引っ掛けるように形成した脱輪防止機構をレール軌条の外側に設けたので、レール軌条と支持アングルはリブ材によって一体化されるため剛強度が増加し曲げや変形に対して強い構造となり、車輪及び支持部材の側面左右の移動に対してあそびを持たせて自由度を有しているため、通常の使用時に柔軟性をもって車輪がスムーズに動き円滑に移動するとともに、車輪のシャフトに一体形成した支持部材は強度を有し曲げや変形に対して強い構造であり、強風や地震の際に強い荷重が掛かってもローリングラダー下端部の車輪がレール軌条から脱輪する心配がなく、ローリングラダーが捩れや回転荷重を受けることなく安定するため、ローリングラダー及び支持部材などが破損や損傷することがない。
また、強風などでローリングラダーが変動した際に、支持部材や取付部材などに摩擦や加熱、衝撃を生じることなく、火花を発生して災害に進展する心配もない。

【0016】
請求項2の発明に係る浮屋根タンクの梯子装置の構造は、上記請求項1記載のローリングラダーが強風などによる曲げ荷重及び捩れ荷重に対して耐久性を有するように、ローリングラダーの側枠材の間に傾斜材を設けた枠組構造体に形成して剛性を増加するので、強風や地震などで浮屋根本体や梯子装置を構成するローリングラダーが変動した際に、枠組構造体のたわみに対する復元性が得られ耐久性が向上しているため、梯子装置に捩れや破損などの損傷を生じることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
この発明に係る浮屋根タンクの梯子装置の構造の実施の形態について、図1乃至図5を参照して説明する。
図1は、梯子装置の下端部近傍を示す斜視説明図である。
図1に示すように、梯子装置を構成するローリングラダー8の下端部に、車輪10が設けられ、この車輪10が接輪し回転して図の矢印Lの方向に水平移動するように、レール架台11の上側面にレール軌条12が設けられている。
なお、ローリングラダー8に設けられている両側の手摺や階段状の踏板などは図示を省略している。
上記レール軌条12の外側面に水平から下方に曲った断面L字形状の支持アングル13を設ける。このL字形状の支持アングル13には、レール軌条12から支持アングル13にわたって、隔離して複数のリブ材17を設ける。
このようにレール軌条12から支持アングル13にわたって、隔離して複数のリブ材17を設けて一体化し補強されているので、レール軌条12と支持アングル13双方の剛強度が増加し、曲げや変形に対して強い構造となっている。
この支持アングル13に下方から左右に間隔、つまりあそびを持たせて入り込むように、上記車輪10のシャフト14に取付けたL字形状の支持部材15を設ける。

【0018】
図1のA部を拡大して図2に示し、さらに詳細に説明する。
車輪10の下端部に位置するレール架台11の上側面には、水平方向の幅が広い断面L字状のアングル材で形成したレール軌条12を設け、車輪10を外側面からガイドし脱輪することなく円滑に走行移動するように形成している。
このレール軌条12の外側面に、水平から下方に曲った断面L字形状の支持アングル13を設け、前記車輪10のシャフト14(図1に示す)に取付けた支持部材15の下端部の断面U字状に曲った溝の部分が、この支持アングル13に下方から周囲に間隔、つまりあそびを持たせて引っ掛けるように形成する。
【0019】
図1及び図2に示すように、ローリングラダー8の車輪10がレール軌条12を回転移動するのに従って(図1の矢印L方向に示す)、支持部材15は支持アングル13に沿って水平に移動する。この際に、ローリングラダー8の車輪10及び支持部材15は、レール軌条12及び支持アングル13に対して左右側面方向に(図1及び2の矢印W方向に示す)あそびを持たせているため動きに自由度があり、浮屋根の昇降に応じてローリングラダー8は左右に無理な力を受けることなく滑らかに追従して上下に移動する。
さらに、強風や地震などで浮屋根やローリングラダー8が揺動しても、車輪10がレール軌条12から脱輪することがなく、ローリングラダー8が曲げ荷重を受けて捩れや損傷などすることがない。
また、強風などでローリングラダー8が変動した際に、上記のようにレール軌条12及び支持アングル13に対して左右側面方向にあそびを持たせて自由度があるため、支持部材15の取付け部及び近傍の部材間には、摩擦や加熱、衝撃を生じることなく、火花を発生して災害に進展する心配もなくなる。
【0020】
図3は、上記支持部材15の実施形態例を示す斜視説明図である。
支持部材15は、長腕状に吊下がる取付部材15aと、底部水平溝状のガイド部材15bと、垂直に立上るフック部材15cとをプレスや圧延(図1及び図2に示す)、或いは図3及び図4に示すように溶接などで一体構造に形成する。
支持部材15は、取付部材15aの上端近傍に設けた取付穴16を介してシャフト14に回転自在に(図の矢印Oで示す)固定する。この支持部材15下部の溝状のガイド部材15bから垂直に立上るフック部材15cの先端は、上記矢印Oで示す回転に伴って円滑に回転し(図の矢印Pで示す)支持アングルなど周囲の部材に接触した場合に、摩擦抵抗を受けないように配慮して半円板形状のフック部材15cに形成する。
さらに一体に形成した支持部材15の曲げ強度を上げるため、必要に応じて取付部材15aの外側面に補強リブ材18を設ける。
【0021】
図4は、支持部材15に被覆材19及び20を設けた場合を示す。
被覆材19は、支持部材15の取付穴16に取付けてシャフト14の外表面を保護する円筒状のブッシュ19aと、取付穴16の外側周囲をカバーする平板リング状の押え板19bとで形成する。
このように取付穴16に被覆材19を設けた場合には、シャフト14との接触を緩和し滑らかに保護する。
また、被覆材20は、支持部材15の取付部材15a内面からガイド部材15b上面から、さらにフック部材15cの内面にわたる凹溝形状に沿って被覆する薄板材20aと、ガイド部材15bの側端面から底部下面を被覆する薄板材20bとで形成する。このように支持部材15に設けた被覆材20は、前記支持アングル13との接触と衝撃に対して緩衝し保護する。
【0022】
上記被覆材19及び20は、周囲の鉄鋼材などの部材と衝突しても発熱や火花を発生しない銅やアルミニウムなどの非鉄金属材などの軟質部材で形成する。
このように、支持部材15の取付部、及び支持アングル13と接触する箇所に非鉄金属部材よりなる被覆材19及び20を設けた場合には、強風や地震などで浮屋根本体や梯子装置を構成するローリングラダー8が変動した際に、支持部材15のシャフト14への取付部や、支持アングル13周囲の部材との摩擦や衝突などによって発熱や火花を発生することがないため、火災などの災害の発生を防止することができる。

【0023】
図5は、ローリングラダー8の本体下部を補強し剛性を向上する枠組構造体21を示す。
22,22は枠組構造体21の両側面に設ける側枠材、23は側枠材22,22の間に直交して設ける仕切材、24、24a,24bは側枠材22,22の間に交差して渡す傾斜材である。
24aの傾斜材は図の矢印Q方向の回転に対応し、さらに24bの傾斜材は図の矢印R方向の回転に対応して復元するため、枠組構造体21の捩れ剛性とたわみに対する復元性が高まり耐久性が向上する。
このように枠組構造体21に形成することにより、ローリングラダー8の曲げ剛性及び捩れ剛性などが向上するため、強風や地震などで浮屋根本体や梯子装置を構成するローリングラダー8が変動した際に、梯子装置に捩れや破損などの損傷を生じることがない。
【産業上の利用可能性】
【0024】
この発明の浮屋根タンクの梯子装置は、新設の浮屋根タンクの梯子装置に適用することのみならず、既設の浮屋根タンクの梯子装置についても、簡単な支持アングルや支持部材などの補強部材を用いて改造や修復を行うことによって、強風や地震等に対して耐久性、安全性に優れた梯子装置構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】

【図1】この発明に係る浮屋根タンクの梯子装置を構成するローリングラダーの下端部近傍を示す斜視説明図である。
【図2】図1のA部を拡大して示す縦断面説明図である。
【図3】支持部材を示す斜視説明図である。
【図4】支持部材に被覆材を設けた斜視説明図である。
【図5】ローリングラダー下部の枠組構造体を示す説明図である。
【図6】従来例の浮屋根式タンクを示す縦断面説明図である。
【図7】図6に示す従来例の浮屋根式タンクのローリングラダーが、強風や地震などの影響で損傷した状態を示す斜視説明図である。
【符号の説明】
【0026】
1 浮屋根タンク本体
2 底板
3 側板
4 貯蔵液
5 浮屋根
6 ポンツーン
7 シール装置
8 ローリングラダー
9 ステージ
10 車輪
11 レール架台
12 レール軌条
13 支持アングル
14 シャフト
15 支持部材
15a 取付部材
15b ガイド部材
15c フック部材
16 取付穴
17 リブ材
18 補強リブ材
19 被覆材
19a ブッシュ
19b 押え板
20 被覆材
20a 薄板材
20b 薄板材
21 枠組構造体
22 側枠材
23 仕切材
24 傾斜材
24a 傾斜材
24b 傾斜材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
強風や地震などで浮屋根本体や梯子装置を構成するローリングラダーが変動した際に、浮屋根上のローリングラダー下端部の車輪が浮屋根上面のレール軌条から脱輪しないように、当該レール軌条の外側面にリブ材で補強した支持アングルを設けるとともに上記車輪のシャフトに一体形成した支持部材を設け、当該支持部材の下端部が上記支持アングルに引っ掛けるように形成した脱輪防止機構をレール軌条の外側に設けたことを特徴とする浮屋根タンクの梯子装置。
【請求項2】
上記ローリングラダーが強風などによる曲げ荷重及び捩れ荷重に対して耐久性を有するように、ローリングラダーの側枠材の間に傾斜材を設けた枠組構造体に形成して剛性を増加することを特徴とする請求項1記載の浮屋根タンクの梯子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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