説明

浴室の水改質システム

【課題】浴室内において水垢汚れや微生物による汚れが付着することを防止できる浴室の水改質システムを提供する。
【解決手段】給水源と浴室1内に設けた吐水部2を接続する給水路3に給水源から供給された水に含まれる溶解物質を除去するための除去手段7を備える。吐水部2から除去手段7により溶解物質を除去した水を吐出可能とする。吐水部2として除去手段7によって溶解物質が除去された水を浴室1内に散布する散布装置20を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は浴室に供給される水の改質システムに関する。
【背景技術】
【0002】
浴室に設けたカランやシャワー等から吐出される水は一般的に水道水である(例えば特許文献1参照)。ところで水道水にはカルシウムやマグネシウム、ケイ素等の溶解物質が多く含まれるため、水道水で浴室内を洗浄した場合には、浴室内に残った水道水が蒸発して浴室内において水垢汚れが生じる恐れがあり、また、水道水には細菌の増殖に必要な成分も含まれているので、浴室内には微生物による汚れも発生しやすい。また、ミネラル成分を含む水道水は金属石けんが発生し、該金属石けんの発生により石けんの洗浄力を低下させるという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−190037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の問題点に鑑みてなされたものであって、浴室内において水垢汚れや微生物による汚れが付着することを防止できる浴室の水改質システムを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明に係る浴室の水改質システムは、給水源と浴室1内に設けた吐水部2を接続する給水路3に給水源から供給された水に含まれる溶解物質を除去するための除去手段7を備え、前記吐水部2から除去手段7により溶解物質を除去した水を吐出可能とする浴室の水改質システムであって、上記吐水部2として除去手段7によって溶解物質が除去された水を浴室1内に散布する散布装置20を備えることを特徴とする。
【0006】
浴室1内に設けた吐水部2から除去手段7により溶解物質を除去した水を吐出でき、浴室1に居る人はこの水を利用して、浴室1内をすすいだり、体を洗ったりできる。そしてこの吐水部2から浴室1内に吐出される水はカルシウムやマグネシウム、ケイ素等の溶解物質を除去したものであるため、浴室1内で水垢汚れ、微生物による汚れが付着することを防止できる。また、この場合、吐水部2から吐出される水はミネラル成分が除去されているので、金属石けんの発生を抑えることができ、またこれにより石けんの洗浄力が低下することを防止できる。また、散布装置20により散布した水により浴室1内の広範囲を洗浄できる。
【0007】
また、請求項2は請求項1において、除去手段7によって溶解物質が除去された水、又は除去手段7によって溶解物質が除去されていない給水源からの水を選択的に吐水部2から吐出可能とすることを特徴とする。溶解物質を除去した水が不要な時には除去手段7によって溶解物質が除去されていない水を吐出でき、除去手段7にかかる負荷を低減できる。
【0008】
また、請求項3は請求項1又は請求項2において、除去手段7によって溶解物質が除去された水と除去手段7によって溶解物質が除去されていない給水源からの水とを混合した混合水を吐水部2から吐出可能とし、該吐水部2から吐出される混合水における溶解物質が除去された水と除去されていない水の混合比を調節するための混合比調節手段を備えることを特徴とする。溶解物質を殆ど含まない純度の高い水が不要な時には吐水部2から溶解物質が除去された水と除去手段7によって溶解物質が除去されていない水とを混合した混合水を吐出でき、除去手段7にかかる負荷を低減できる。また、混合水を吐出する際には溶解物質が除去された水と除去されていない水の混合比を所望の混合比に調節でき、所望の混合比の混合水を得ることができる。
【0009】
また、請求項4は請求項1乃3のいずれか1項において、上記除去手段7により溶解物質を除去した除去水と溶解物質を含む濃縮水とに分離し、このうち除去水を上記吐水部25から吐出可能とし、浴室1内に前記濃縮水を吐出する吐出部25を設けることを特徴とする。除去手段7により溶解物質を除去した除去水を生成する際に分離生成された溶解物質を含む水、即ちミネラルを豊富に含む濃縮水を吐出部25から浴室1内に吐出でき、使用者はこれを浴室1内において利用できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、吐水部から浴室内にカルシウムやマグネシウム、ケイ素等の溶解物質を除去した水を吐出でき、浴室内で水垢汚れや微生物による汚れが生じることを防止できる。また、金属石けんの発生を抑えることができ、石けんの洗浄力が低下することを防止できる。また、散布装置により散布した水により浴室内の広範囲を洗浄できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一例の浴室の水改質システムを示す概略構成図である。
【図2】他例の浴室の水改質システムを示す概略構成図である。
【図3】更に他例の浴室の水改質システムを示す概略構成図である。
【図4】更に他例の浴室の水改質システムを示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明する。図1に示す一例の浴室の水改質システムは給水源と浴室1内に設けた吐水部2を接続する給水路3に溶解物質を除去するための除去手段7を設けたものである。
【0013】
給水源は給湯器を介して給水路3に水道水を供給する上水道で構成してある。なお、給水源から供給される水は井戸水や貯留タンクから供給される水であっても良い。
【0014】
吐水部2として浴室1の壁やカウンタ等に設けられるカラン5とカラン5に接続したシャワー装置6を備えている。一本の流路で構成された給水路3の下流側端部はカラン5に接続してあり、給水路3から供給されて除去手段7で溶解物質が除去された処理水をカラン5又はシャワー装置6のいずれか一方から選択的に吐出できるようになっている。
【0015】
除去手段7は給水源から供給された水に含まれる溶解物質等の不純物を除去して純水化する逆浸透膜装置7aで構成してあり、逆浸透膜装置7aはプレフィルタ8とポンプ9、と逆浸透膜フィルタ10を備えている。
【0016】
プレフィルタ8は繊維フィルタ及び活性炭フィルタで構成してあり、繊維フィルタは水中に含まれる5μm以上の比較的大きなごみ、沈殿物、さび、小片などを除去し、活性炭フィルタは繊維フィルタを通過した水に含まれる残留塩素、臭気濁り、有機化合物、塩化炭化水素等を除去する。ポンプ9はプレフィルタ8で前処理がなされた水を昇圧して逆浸透膜フィルタ10に供給するもので、ポンプ9から供給された水が逆浸透膜フィルタ10を透過することで、プレフィルタ8では除去されなかったカルシウムやマグネシウム、ケイ素等の溶解物質等の不純物が略完全に除去されて透過水(除去水)が生成される。また、この時、副次的に前記溶解物質等を高濃度で含んだ濃縮水が分離生成される。そして、このように逆浸透膜フィルタ10により分離生成された透過水及び濃縮水のうち透過水は処理水として下流側の給水路3を介して吐水部2に供給され、濃縮水は浴室1の外部へと排出される。なお、上記逆浸透膜装置7aでは透過水として導電率が1μS/cm以下の純水を生成する。
【0017】
上記水改質システムを利用する場合、カラン5に設けた操作部を操作して給水源から逆浸透膜装置7aを介して吐水部2に水を供給する共に逆浸透膜装置7aのポンプ9を駆動する。これにより逆浸透膜装置7aで溶解物質等の不純物が除去された水(純水)がカラン5の吐水口5aやシャワー装置6のシャワーノズル6aから浴室1内に吐出される。
【0018】
以上説明した本例の浴室の水改質システムは、浴室1内に設けた吐水部2から除去手段7(逆浸透膜装置7a)により溶解物質を除去した水を吐出できる。従って、浴室1に居る人はこの水を利用して、浴室1内をすすいだり、体を洗ったりできる。そして、ここで吐水部2から浴室1内に吐出される水はカルシウムやマグネシウム、ケイ素等の溶解物質を除去したものであるため、浴室1内において水垢汚れ、微生物による汚れが付着することを防止できる。また、吐水部2から吐出される水はミネラル成分が除去されたものであるので、金属石けんの発生を抑えることができ、また、これにより石けんの洗浄力が低下することを防止できる。また、逆浸透膜装置7aでは給水源から供給された水に含まれる残留塩素濃度を低下させることもできるので、吐水部2からは肌への刺激が少ない水を吐出でき、敏感肌の人に有効である。
【0019】
なお、本例では除去手段7を逆浸透膜装置7aで構成したが、溶解物質を除去して高い純度の水を生成できるものであれば従来から利用されている他の除去手段7を利用しても良い。
【0020】
次に他例の水改質システムを図2に示す。なお、以下の説明では一例と同一の構成については同一の番号を付与し、重複する説明は省略する。
【0021】
図2に示す他例の水改質システムは、除去手段7によって溶解物質が除去された水である処理水、又は除去手段7によって溶解物質が除去されていない水である非処理水、又は前記処理水と非処理水を混合した混合水のうち、いずれか一種の水を選択的に吐水部2から吐出できるようにしたものであり、さらに前記混合水における処理水と非処理水の混合比を調節するための混合比調節手段を備えたものである。
【0022】
給水路3は給水源と吐水部2を接続する主流路14と、主流路14のバイパス路となる副流路15で構成してあり、主流路14及び副流路15のうち副流路15にのみ逆浸透膜装置7aを設けている。主流路14において副流路15との分岐点18よりも下流側で且つ副流路15との合流点19よりも上流側の箇所と、副流路15において逆浸透膜装置7aよりも上流側の箇所には流量調整機能を有する電磁弁からなる弁16、17を設けている。
【0023】
本例の水改質システムはカラン5やシャワー装置6から上記処理水又は非処理水又は混合水のうちいずれか一種の水を選択的に吐出可能となっている。
【0024】
即ち、吐水部2から処理水を吐出する場合には、給水源から給水路3に水を供給し、且つ弁16を閉じる共に弁17を開き、且つ逆浸透膜装置7aのポンプ9を駆動する。これにより給水路3に供給された水は副流路15側に流れて一例と同様に逆浸透膜装置7aにより処理され、この後、処理水として吐水部2から吐出される。
【0025】
また、吐水部2から非処理水を吐出する場合には、給水源から給水路3に水を供給し、且つ弁17を閉じる共に弁16を開く。これにより給水路3に供給された水は逆浸透膜装置7aを設けた副流路15側には流れず主流路14を流れて吐水部2から逆浸透膜装置7aによって処理されていない非処理水として吐出される。
【0026】
また、吐水部2から混合水を吐出する場合には、給水源から給水路3に水を供給し、且つ弁16、17を共に開き、且つ逆浸透膜装置7aのポンプ9を駆動する。また、この時の各弁16、17の開度は図示しない操作部の操作により予め設定された混合比に応じた開度となる。これにより給水路3に供給された水は主流路14及び副流路15に流れ、この後、合流点19において副流路15を通過して逆浸透膜装置7aにより処理された処理水と主流路14を通過して処理されていない非処理水とが合流し、ここで各弁16、17の開度に対応する比率で処理水と非処理水が混合される。そして、吐水部2から処理水と非処理水とが所定の混合比で混合された混合水として吐出される。つまり本例では流量調整機能を有する弁16、17で混合比調節手段を構成している。
【0027】
既述のように本例の水改質システムは、除去手段7によって溶解物質が除去された水である処理水、又は除去手段7によって溶解物質が除去されていない水である非処理水、又は前記処理水と非処理水を混合した混合水のうち、いずれか一種の水を選択的に吐水部2から吐出できるようにしたので、水は必要であるが溶解物質を除去した水が不要な時や、溶解物質を除去した水は必要であるが純度の高い水が必要ではない時に、吐水部2から非処理水や混合水を吐出でき、除去手段7にかかる負荷を低減できる。また、混合水を吐出する場合には処理水と非処理水の混合比を所望の混合比に調節でき、必要な混合比の混合水を得ることができる。
【0028】
次に更に他例の水改質システムを図3に示す。なお、以下の説明では図2に示す他例の水改質システムと同一の構成については同一の番号を付与し、重複する説明は省略する。
【0029】
本例では、吐水部2として、カラン5及びシャワー装置6に加えて、除去手段7によって溶解物質が除去された水を浴室1内に散布する散布装置20を備えている。また、副流路15における逆浸透膜装置7aよりも下流側の分岐点23に分岐路22の上流端を接続し、該分岐路22の下流側を散布装置20に接続してある。分岐点23には三方電磁弁からなる弁24を設けてあり、弁24を切り替えることで、逆浸透膜装置7aで溶解物質が除去された水を散布装置20に供給し、散布装置2が有する多数のノズル20aから浴室1内に散布できるようにしてある。
【0030】
即ち、散布装置20から処理水を吐出する場合には、給水源から給水路3に水を供給し、弁16を閉じる共に弁17を開き、弁24を散布装置20側に切り替え、逆浸透膜装置7aのポンプ9を駆動する。これにより給水路3に供給された水は副流路15側に流れて逆浸透膜装置7aにより処理され、この後、分岐路22を介して散布装置20から処理水として吐出される。
【0031】
また、カラン5やシャワー装置6から処理水を吐出するには、給水源から給水路3に水を供給し、弁16を閉じる共に弁17を開き、弁24を主流路14側に切り替え、逆浸透膜装置7aのポンプ9を駆動する。これにより給水路3に供給された水は副流路15側に流れて逆浸透膜装置7aにより処理され、この後、主流路14を介してカラン5やシャワー装置6から処理水として吐出される。
【0032】
本例の水改質システムは散布装置20により除去手段7によって溶解物質が除去された水を浴室1内に散布でき、散布した水を用いて浴室1内の広範囲を洗浄できる。
【0033】
なお、上記散布装置20からの処理水の吐出は弁24を手動で切り替えて行っても良いが、例えば入浴後に自動的に散布装置20から処理水が吐出されるようにしても良い。ここで、入浴後の判定の一例としては、例えば浴室1内に人体検知センサを設け、浴室1に人が入って人体検知センサにより人を検知した後に浴室1から人が出て人体検知センサにより人を検知しなくなった時に入浴後であると判定することが挙げられる。
【0034】
次に更に他例の水改質システムを図4に示す。なお、以下の説明では図2に示す他例の水改質システムと同一の構成については同一の番号を付与し、重複する説明は省略する。
【0035】
図4に示す更に他例の水改質システムは、上記除去手段7により除去された溶解物質を含む水を吐出する吐出部25として別途カランを浴室1内に設けている。吐出部25は濃縮水流路26を介して逆浸透膜装置7aの逆浸透膜フィルタ10に接続してあり、濃縮水流路26には排水路28を接続してある。濃縮水流路26の排水路28との分岐点27には三方電磁弁からなる弁29を設けてあり、弁29を切り替えることで逆浸透膜装置7aから供給された濃縮水を濃縮水流路26を介して吐出部25から浴室1内に吐出することができる。
【0036】
即ち、吐出部25から浴室1内に濃縮水を吐出するには、既述の吐水部2から処理水を吐出する時、即ち、給水源から給水路3に水を供給し、弁16を閉じる共に弁17を開き、逆浸透膜装置7aのポンプ9を駆動する時に、弁29を吐出部25側に切り替える。これにより逆浸透膜装置7aで透過水(除去水)が生成する際に分離生成された濃縮水は濃縮水流路26を介して吐出部25から浴室1内に吐出される。また、吐水部2から処理水を吐出している時に吐出部25から濃縮水を吐出しないようにするには弁29を排水路28側に切り替えて、逆浸透膜装置7aで生成された濃縮水を排水路28を介して浴室1の外部に排水する。
【0037】
本例の水改質システムは除去手段7により除去された溶解物質を含む水、即ちミネラルを豊富に含む濃縮水を吐出部25から浴室1内に吐出でき、使用者はこれを浴室1内において利用できる。
【0038】
なお、本例では濃縮水流路26から排水路28を分岐し、弁29を切り替えることで、濃縮水を排水路28から排出できるようにしたが、排水路28及び弁29を設けず、吐水部2から処理水を吐出する時に常に吐出部25から濃縮水が吐出されるようにしても良い。また、本例でも図3の例と同様に、副流路15における逆浸透膜装置7aよりも下流側の分岐点23に分岐路22の上流端を接続し、該分岐路22の下流側を散布装置20に接続し、散布装置20から処理水を吐出するか、カラン5やシャワー装置6から処理水を吐出するかを切り替え可能としても良い。
【符号の説明】
【0039】
1 浴室
2 吐水部
3 給水路
7 除去手段
7a 逆浸透膜装置
25 吐出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水源と浴室内に設けた吐水部を接続する給水路に給水源から供給された水に含まれる溶解物質を除去するための除去手段を備え、前記吐水部から除去手段により溶解物質を除去した水を吐出可能とする浴室の水改質システムであって、上記吐水部として除去手段によって溶解物質が除去された水を浴室内に散布する散布装置を備えることを特徴とする浴室の水改質システム。
【請求項2】
除去手段によって溶解物質が除去された水、又は除去手段によって溶解物質が除去されていない給水源からの水を選択的に吐水部から吐出可能とすることを特徴とする請求項1に記載の浴室の水改質システム。
【請求項3】
除去手段によって溶解物質が除去された水と除去手段によって溶解物質が除去されていない給水源からの水とを混合した混合水を吐水部から吐出可能とし、該吐水部から吐出される混合水における溶解物質が除去された水と除去されていない水の混合比を調節するための混合比調節手段を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の浴室の水改質システム。
【請求項4】
上記除去手段により溶解物質を除去した除去水と溶解物質を含む濃縮水とに分離し、このうち除去水を上記吐水部から吐出可能とし、浴室内に前記濃縮水を吐出する吐出部を設けることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の浴室の水改質システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−229980(P2011−229980A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176843(P2011−176843)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【分割の表示】特願2007−306582(P2007−306582)の分割
【原出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】