浴室の洗い場床
【課題】複層構造の洗い場床における各層間に空気溜まりが形成されるのを抑制し、さらに基材裏面側への水漏れを防止する浴室の洗い場床を提供する。
【解決手段】基材と、前記基材より浴室内側に積層され、前記基材と周縁部で水密的に接着された可撓性を有する表面層と、前記基材と前記表面層との間の水密的に塞がれた空間に積層された弾性変形可能なクッション層と、前記基材と前記表面層との間の空間を浴室外に連通可能にする空気抜き流路と、を備え、前記空気抜き流路の出口端部は、前記基材が架台に支持されない状態では開放され、前記基材が架台に支持された状態では塞がれることを特徴とする。
【解決手段】基材と、前記基材より浴室内側に積層され、前記基材と周縁部で水密的に接着された可撓性を有する表面層と、前記基材と前記表面層との間の水密的に塞がれた空間に積層された弾性変形可能なクッション層と、前記基材と前記表面層との間の空間を浴室外に連通可能にする空気抜き流路と、を備え、前記空気抜き流路の出口端部は、前記基材が架台に支持されない状態では開放され、前記基材が架台に支持された状態では塞がれることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室の洗い場床に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2には、FRP(Fiber Reinforced Plastic)からなる基材と、発泡層と、軟質材からなる表面層とを積層し一体化した浴室洗い場床が開示されている。
【特許文献1】特開2002−017598号公報
【特許文献2】特開2001−245814号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
複層構造の洗い場床においては、製造時に各層の間に空気溜まりが形成されやすく、各層間の密着が不十分となってしまうことがある。これを防ぐために、各層を積層固定させるための装置にエア抜きの機能を付加することが考えられるが、そうすると装置が複雑化してしまう。また、洗い場床は大面積のものであるため、装置にエア抜きの機能を付加しても、各層界面の面方向全体にわたって完全にエアを排除して接着させることは困難である。
【0004】
また、洗い場床は、製造後、工場からトラックなどで搬送されたり、倉庫などで保管されるが、その際に特に夏は高温環境下に置かれることになる。そのような高温環境下においては、クッション層として発泡体を用いた場合、その発泡体が二次発泡することにより洗い場床内部に空気溜まりが発生することがある。
【0005】
複数構造の洗い場床の各層間に空気が残っていると、剥がれの要因となると共に、空気溜まり部分が膨れることになるため、意匠的に商品価値を大きく低下させることにもなる。また、床面上の膨れは、洗い場床表面における排水性能を悪化させる要因ともなり得る。
【0006】
本発明は上述の問題に鑑みてなされ、複層構造の洗い場床における各層間に空気溜まりが形成されるのを抑制し、さらに基材裏面側への水漏れを防止する浴室の洗い場床を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、基材と、前記基材より浴室内側に積層され、前記基材と周縁部で水密的に接着された可撓性を有する表面層と、前記基材と前記表面層との間の水密的に塞がれた空間に積層された弾性変形可能なクッション層と、前記基材と前記表面層との間の空間を浴室外に連通可能にする空気抜き流路と、を備え、前記空気抜き流路の出口端部は、前記基材が架台に支持されない状態では開放され、前記基材が架台に支持された状態では塞がれることを特徴とする浴室の洗い場床が提供される。また、本発明の一態様によれば、基材と、前記基材より浴室内側に積層され、前記基材と周縁部で水密的に接着された可撓性を有する表面層と、前記基材と前記表面層との間の水密的に塞がれた空間に積層された弾性変形可能なクッション層と、前記基材と前記表面層との間の空間を浴室外に連通可能にする空気抜き流路と、を備え、前記空気抜き流路の途中に、通気性を有するが液体は通さない多孔質膜を設けたことを特徴とする。また、本発明の一態様によれば、基材と、前記基材より浴室内側に積層され、前記基材と周縁部で水密的に接着された可撓性を有する表面層と、前記基材と前記表面層との間の水密的に塞がれた空間に積層された弾性変形可能なクッション層と、前記基材と前記表面層との間の空間を浴室外に連通可能にする空気抜き流路と、を備え、前記基材はパン状に形成され、前記空気抜き流路の出口端部は、前記パン状の基材における上方に立ち上がった水返し壁となる側壁部より内側であって、且つ前記基材の周縁部に載置される壁パネルの浴室内側の面より外側に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複層構造の洗い場床における各層間に空気溜まりが形成されるのを抑制し、さらに基材裏面側への水漏れを防止する浴室の洗い場床が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
浴室の洗い場床に柔らかさを付与するために、弾性変形可能なクッション性を有する材料で洗い場床を構成することが考えられるが、クッション性を有する例えば発泡体は耐水性、耐薬品性、耐衝撃性など、洗い場床として求められる基本性能に優れず、クッション性を有する材料だけで構成した洗い場床は商品として提供しにくい。また、クッション性を有する材料としては発泡体以外にもゴム材があるが、ゴム材はゴム臭がするため、そのような材料を気密性の高い浴室内に、洗い場床という比較的広い面積にわたって用いるのは好ましくない。
【0010】
したがって、発泡体を洗い場床におけるクッション層として設けた場合、浴室内側に露出する表面には、耐水性などのユニットバスの基本性能を満足する材料からなる表面層が別途必要になる。クッション層の表面側にそのような表面層を積層した構造においては、使用者は表面層に触れることになるがその使用者にクッション層の機能(柔らかさ)を感じさせるようにするため、表面層には可撓性が求められる。
【0011】
前述したような特性を満足する表面層やクッション層は荷重を支えるのに十分な強度を確保しにくく、これらの層とは別に、表面層やクッション層より荷重を支えるための強度の大きな基材が必要となる。すなわち、洗い場床に柔らかさを付与しつつ、洗い場床として求められる最低限の基本性能を確保するためには少なくとも基材、クッション層、表面層を組み合わせた構造にする必要がある。
【0012】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る浴室の洗い場床の構成を模式的に示す分解斜視図である。
本実施形態に係る洗い場床は、基材1と、基材1の上に積層されたクッション層4と、クッション層4の上に積層された表面層5とを備える。クッション層4と表面層5は、基材1における浴室内側の面上に積層される。
【0013】
図2に基材1の拡大平面図を示す。
基材1は、例えば、FRP(Fiber Reinforced Plastic)等の熱硬化性樹脂、あるいはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂からなり、浴室外に湯水を漏出させない防水性を有する。基材1は、荷重を受ける床として機能する底面部2aの周縁に水返し壁として機能する側壁部3が設けられた浅底のパン状に成形されている。底面部2aには、排水用開口8が形成され、周縁から排水用開口8に向けて下向き傾斜した1/30〜1/70の排水勾配が付けられている。ここで、この勾配は1/50(1度10分)が好ましい。基材1は、壁パネルや天井パネルや風呂椅子や洗面器などの静荷重、使用者の動荷重を受けても撓んだり破損しない十分な強度を有する。
【0014】
クッション層4は、弾性変形可能であり、例えばウレタン等の発泡体からなる。クッション層4は、基材1の底面部2の表面に接着または溶着固定されている。尚、クッション層4は弾性変形可能なゴム材であっても構わないが、ゴム臭のない発泡体の方が、気密性の高い浴室の洗い場床として利用するには好ましい。
【0015】
表面層5は、クッション層4の表面に接着または溶着固定され、その表面は浴室内に露出し、使用者が触れたり、湯水にさらされる面となる。表面層5は、耐水性、耐薬品性、耐衝撃性などを有すると共に、下層のクッション層4の弾性変形に追従可能な可撓性を有する。表面層5としては、例えば、基材1に用いるFRPよりも薄く且つ軟質なFRPを用いることができる。つまり、使用者が表面層5の上に荷重をかけると(負荷時)、クッション層4が鉛直方向に縮み、接着剤で接着固定されている表面層5もクッション層4の変形に追随するように下方側に撓む。一方、使用者が表面層5の上に荷重をかけた状態から離れたとき(無負荷時)は、クッション層4が鉛直方向に伸び、接着剤で接着固定されている表面層5もクッション層4の変形に追随するように上方側に撓み元に戻る。
【0016】
また、表面層5の表面には、その部分拡大図である図3に示すように、溝5bが形成されている。この溝5bは、表面層5の表面上を図示しない排水口に向けて流れる湯水の排水流路として機能する。また、表面層5の表面に溝5bを形成することで、表面層5の表面に凹凸が形成され、洗い場床面が滑りにくくなる効果も得られる。
【0017】
基材1、クッション層4および表面層5の積層構造を得るにあたっては、それらを一体に熱間成型することにより相互に溶着固定させてもよいし(インサート成形)、基材1の成型加工後に、底面部2aに対してクッション層4を例えば両面テープ等の接着材を用いて貼り付け、さらにそのクッション層4の表面に例えば両面テープ等の接着材を用いて表面層5を貼り付けてもよい。
【0018】
本実施形態に係る洗い場床はクッション層4を備えるので、使用者がひざをついても痛くないやわらかな感触が得られる。また、床が足になじみ、濡れた足でも滑りにくくできる。さらに、例えば洗面器を床に落としても音が響かない。
【0019】
上述した特許文献1、2では、表面層と基材との線膨張率が異なるため、熱が加わった際に各層の境界面に異なるせん断力が働き、剥がれるおそれがあった。
【0020】
特に、洗い場床は、トラック搬送時に約65℃の環境下に置かれることがあったり、実使用において約40℃の温水がかかることがある。このように洗い場床というものは、大きな温度変化がある環境下に置かれるものなので、線膨張および線収縮が起きるおそれがあり、対策が必要である。ここで、表面層と基材とが近似した線膨張率の材料で形成されていると、それら両者の間に挟まれて接着されているクッション層に対してのせん断力は、クッション層の上面と下面側で略等しくなるため、クッション層が水平方向に伸縮することで発生する各境界面での剥がれの可能性を低減できることになる。
【0021】
ここで、各層の接着力を強力にしておくことで線膨張による剥がれを防止する策もあるが、本実施形態によれば、該接着力のみに依存せずに剥がれを防止することができる。
【0022】
具体的に、本実施形態では、表面層5と基材1はそれぞれ線膨張率の近似した材料を採用することにより、各層の線膨張率の違いによる剥がれという、不安要素を軽減している。特に、表面層5をFRPよりも薄く且つ軟質なFRPにすることで、基材1を表面層5と同質で従来同様のFRPを利用することができるため好ましい。尚、軟質のFRPは、親水素材となるため、洗い場床面上の排水性にとっても有利である。
【0023】
また、本発明の実施形態に係る洗い場床は、図4に模式的に示すような積層構造となっている。図5は基材1の平面図を模式的に示す。
【0024】
基材1には凹部2が設けられている。基材1において凹部2は大部分の面積を占め、凹部2より外側には縁部6が設けられている。縁部6は、図5に示すように、凹部2の周囲全周にわたって設けられている。縁部6の上面は凹部2の底面より高い位置に設けられている。
【0025】
クッション層4は、基材1の凹部2に収容され、凹部2の底面に例えば両面テープ等により接着固定されている。表面層5は、基材1の凹部2に蓋を被せるようにクッション層4の全面を覆っている。表面層5の平面サイズは、クッション層4の平面サイズより大きく、表面層5においてクッション層4からはみ出る縁部5aは、基材1の縁部6の上に積層されている。
【0026】
クッション層4が基材1の凹部2に収まった状態で、クッション層4の側端部と凹部2の側壁面との間には隙間が形成され、その隙間には図6に示すように接着剤15が充填されている。基材1の縁部6の上面には、環状の溝16が形成され、さらにその溝16より外側にも溝18が形成されている。外側の溝18は内側の溝16よりも幅が大きい。内側の溝16には接着剤17が充填され、外側の溝18には両面テープ19が貼り付けられている。表面層5において、クッション層4よりはみ出る縁部5aは、それら接着剤17及び両面テープ19を介して、基材1の縁部6に接着固定されている。
【0027】
すなわち、基材1と表面層5とは全周縁部近傍で水密的に接着され、その水密的に塞がれた空間にクッション層4が収容配置されている。
【0028】
基材1の最外縁部には、前述した水返し用の側壁部3が設けられ、その側壁部3のすぐ内側の部分に、壁パネル101が載置される。壁パネル101における浴室内側の一部は、基材1の縁部6の上に積層された表面層5の縁部5aの上にも載置されている。これにより、表面層5と基材1との境界が浴室内に露出せず、また、表面層5と基材1との境界にシリコン等によって止水処理を施さなくても、壁パネル101と表面層5との間に目地部材を挟み込むことで止水を図れるため、見栄えを損ねず商品価値を高めることができる。
【0029】
表面層5の縁部5aはクッション層4を介さずに基材1の縁部6の上に直接接着固定されているため、壁パネル101が表面層5の上に重なっても、クッション層4の弾性変形によって壁パネル101が傾いたり、クッション層4の復元力が壁パネル101に作用することがない。これにより、壁パネル101及びその上の天井パネルを基材1上に安定して支えることができ、壁パネル101間あるいは壁パネル101と他の部材間のジョイント部分に不所望の隙間が生じることを防いで浴室内の防水性を損ねることがない。
【0030】
クッション層4が弾性変形し、それに追従して可撓性を有する表面層5がたわむことで、使用者は洗い場床の柔らかさを感じることになるが、ユニットバスの洗い場床は、使用者の体重がかかったり(特に風呂椅子に座った時などは集中荷重が加わる)、壁パネルの荷重がかかり、且つ長期的に使用するものでもあるため、長期使用によりクッション層4のへたり(塑性変形)が起こることが懸念される。クッション層4のへたりが生じると、洗い場床の柔らかさが失われるのはもちろん、表面層5の表面に凹部が生じて湯水が溜まり、洗い場床に必要とされている基本性能の一つである排水性が損なわれる可能性がある。
【0031】
クッション層4が弾性変形してつぶれると、自らが有する復元力によって元に戻ろうとするが、この復元力に加えて、さらに、本実施形態によれば、表面層5が、縮んだクッション層4を引っ張り上げる力によってもクッション層4の自然状態への復元を助長することができる。
【0032】
表面層5は洗い場床の最表面を構成する層であるため、しわやたるみが生じないように、ある程度の張力をかけた状態で、クッション層4に覆い被さるように基材1の縁部6に接着固定される。したがって、表面層5に上から荷重がかかって表面層5が下方に撓むと、元の状態(上からの荷重がない状態)に戻ろうとする力がはたらく。表面層5においてクッション層4に覆い被さる部分の裏面はクッション層4と接着されているため、表面層5が元の状態に戻る際に、クッション層4も表面層5に追従して上に引っ張り上げられるようになる。
【0033】
すなわち、クッション層4が弾性変形してつぶれた際、クッション層4自らが有する復元力だけでなく、クッション層4が表面層5の復元に追従する作用もクッション層4の復元に貢献する。これにより、クッション層4は自然状態へと戻りやすくなり、へたりが起こりにくくなる。
【0034】
表面層5はクッション層4に覆い被さるようにその縁部5aが基材1の縁部6に対して接着固定されるため、無負荷状態におけるクッション層4の厚みが基材1の凹部2の深さより大きいと、クッション層4は表面層5から下方に押し付けられる力を受け、クッション性が低減すると共にへたりやすくなる。また、無負荷状態におけるクッション層4の厚みが基材1の凹部2の深さより小さいと、表面層5とクッション層4との間に隙間が形成されクッション性を損ねる可能性がある。したがって、クッション層4に上から荷重が作用しない無負荷状態(自然状態)におけるクッション層4の厚みが、基材1の凹部2の深さと略同一とすることが望ましい。
【0035】
さらに、本実施形態では、基材1の底面部2aに空気抜き流路11を設けている。図7は、本実施形態に係る洗い場床において空気抜き流路11が設けられた部分の断面を示し、図2に示す基材1におけるA−A断面に対応する。
【0036】
空気抜き流路11は、基材1の底面部2aを貫通している。空気抜き流路11の入口端部は、基材1においてクッション層4と対向する部分である底面部2aの表面に開口している。空気抜き流路11の出口端部は、基材1の底面部2aの裏側に開口している。基材1と表面層5との間の空間は、前述したように水密的に塞がれているが、空気抜き流路11を介して、浴室外に連通可能とされる。
【0037】
また、図2に示すように基材1の底面部2aの表面には溝12が形成され、溝12は底面部2aの表面に偏在することなく例えば格子状にレイアウトされている。溝12は基材1におけるクッション層4と対向する底面部2aの全体にわたって僅かに下方に凹んだ形状となっており、各溝12はそれぞれ連通しており、溝12の中は接着剤などによって塞がれないようになっている。尚、溝12は、基材1と表面層5との間の密閉空間全体の残留空気を空気抜き流路11に導けるようクッション層4の周縁部または周縁部より外方側まで形成されていることが好ましい。
【0038】
図8は、本実施形態に係る洗い場床において溝12が設けられた部分の断面を示し、図2に示す基材1におけるB−B断面に対応する。
【0039】
空気抜き流路11の入口端部は、底面部2aの表面において溝12が形成された位置(図2に示す例では例えば4箇所)に形成され、溝12と連通している。なお、空気抜き流路11の個数や溝12の平面パターンは図2に示すものに限るものではない。
【0040】
基材1と表面層5との間の空間は前述したように密閉空間であり、その密閉空間を浴室外に連通させる空気抜き流路11を設けることで、その空間内において空気の熱膨張や発泡体の二次発泡や製造時に生じる基材1と表面層5との間の密閉空間に発生する残留空気を空気抜き流路11を介して浴室外に逃がすことができる。空抜き流路11から離れた箇所で、空気の熱膨張や発泡体の二次発泡が生じても、空気抜き流路11と溝12とが連通しているため、余剰な空気を溝12を介して空気抜き流路11に導くことができる。これにより、表面層5とクッション層4との界面や、クッション層4と基材1との界面に空気溜まりが形成されるのを抑制して、それによる各部材間の剥離を防ぐことができる。また、意匠性や排水勾配を損ねる表面層5の膨れを防げるため、商品価値や排水性を低下させることもない。
【0041】
洗い場床の面方向の全面にわたって効率よい排気性を得るためには、空気抜き流路11の入口端部に連通する溝12は面方向に偏りなく分布させ、また空気抜き流路11を複数箇所に設ける場合には偏りなく分散配置させるのが望ましい。
【0042】
なお、空気抜き流路11の入口端部に連通する溝12は、基材1の底面部2aに限らず、クッション層4における基材1の底面部2aに対向する部分に設けてもよい。
【0043】
発泡体には、個々の気泡が密閉されて独立して存在する独立気泡構造と、気泡が他の気泡や発泡体外部とつながって相互に連続している連続気泡構造とがある。本実施形態に係る洗い場床のクッション層4として用いる発泡体としては、クッション層4のへたり(塑性変形)を抑制する観点から連続気泡構造の発泡体が望ましい。また、連続気泡構造の発泡体の場合には、二次発泡により発生した空気を、つながった連続気泡を介して面方向に分散させたり、空気抜き流路11の入口端部に導くことも期待できる。つまり、二次発泡した空気が、クッション層4内に留まることがないため、該空気は溝12を通過して空気抜き流路11から浴室外に排気することが可能となる。
【0044】
[第2の実施形態]
図9は、本発明の第2の実施形態に係る洗い場床における基材1及びその底面部2aに積層されたクッション層40の平面図を示す。図10は、本実施形態に係る洗い場床において空気抜き流路11が形成された部分の断面図を示す。
【0045】
本実施形態では、クッション層40が複数の分割体40aに分割(図9では例えば4分割)され、複数の分割体40aは互いに隙間41をあけて、基材1の底面部2aの上に並んで接着固定されている。個々の分割体40aも、前述した第1の実施形態に係るクッション層4と同様、弾性変形可能な例えば発泡体からなる。
【0046】
図10に示すように、基材1の底面部2aと個々の分割体40aとは、それら両者間に介在された接着層(例えば両面テープ)23を介して互いに接着固定されている。また、個々の分割体40aと表面層5との間にも接着層(例えば両面テープ)22が介在され、分割体40aと表面層5とは互いに接着固定されている。
【0047】
接着層22、23は、分割される前のクッション層40の表裏面にそれぞれ貼り付けられ、クッション層40は接着層22、23ごと複数の分割体40aに分割されている。大面積のクッション層40を基材1に貼り付けるよりも、より小面積の個々の分割体40aを基材1に貼り付ける方が貼り付け作業性が容易になる。
【0048】
また、各分割体40aの間に形成される隙間41を、空気抜き流路11の入口端部に連通させれば、それら隙間41を前述した第1の実施形態における溝12と同様の役割を担わせることができる。すなわち、各分割体40aの間の隙間41を介して、基材1と表面層5との間の空間内に溜まる空気を空気抜き流路11に導いて、浴室外へと逃がすのを促進させることもできる。
【0049】
なお、図11に示すように、クッション層4を分割せずに、基材1との界面の接着層23だけを分割した場合でも、基材1の底面部2aとクッション層4との間に溝23aを存在させることができるので、その溝23aを介して空気抜き流路11への排気を促進することが可能である。
【0050】
また、クッション層4を分割しない場合で、クッション層4と表面層5との間に介在される接着層22を分割すれば、クッション層4と表面層5との界面に溝を存在させることができるため、表面層5とクッション層4との界面に空気が局所的に閉じこめられて表面層5が膨れることを抑制できる。また、表面層5のクッション層4と対向する面に上方に切り欠かれた溝を形成すれば、表面層5とクッション層4との界面に空気が局所的に閉じこめられて表面層5が膨れることを抑制できる。
【0051】
[第3の実施形態]
洗い場床を建物内の浴室設置場所に設置した状態において、基材1は、図12に示すように、例えば中空角柱状の鋼材からなる架台60を介して、建物の床上に設置される。基材1は、その裏側に突出して設けられたボス部61を有し、架台60を下方から貫通するボルト62の先端側の部分がボス部61にねじ込まれることによって、基材1は架台60に対して固定される。
【0052】
そして、本実施形態では、空気抜き流路51の出口端部56が、基材1が架台60に支持されない状態では開放され(空気抜き流路が浴室外と連通状態)、基材1が架台60に支持された状態では塞がれる(空気抜き流路が浴室外と連通していない状態)構造としている。
【0053】
具体的には、図13に示すように、空気抜き流路51を開閉する開閉弁70を設けている。図13(a)は、開閉弁70によって空気抜き流路51が塞がれていない状態の拡大断面を示し、図13(b)は、開閉弁70によって空気抜き流路51が塞がれた状態の拡大断面を示す。
【0054】
空気抜き流路51は、入口端部52から出口端部56に向かって順に形成された入口流路53、中間流路54および出口流路55を有する。入口流路53の一端は入口端部52に連通し、他端は中間流路54に連通している。中間流路54は入口流路53より小径であり、入口流路53と中間流路54との間には段部58が形成されている。中間流路54において入口流路53に連通する一端の反対側の他端は出口流路55に連通している。出口流路55は中間流路54よりも大径であり、中間流路54と出口流路55との間には段部59が形成されている。出口流路55において中間流路54に連通する一端の反対側の他端は出口端部56に連通している。
【0055】
開閉弁70は、中間流路54を貫通して空気抜き流路51内を上下動自在なロッド部71を有し、そのロッド部71における入口流路53側の一端に掛止部72が設けられている。掛止部72は、入口流路53内を上下動自在であり、中間流路54の内径より大きな径方向寸法を有するため、掛止部72が入口流路53と中間流路54との間の段部58に引っ掛かることで掛止部72のそれ以上の下降が規制される。
【0056】
ロッド部71における上記掛止部72が設けられた一端と、出口端部56側の他端74との間には、中間流路54の内径よりも径方向寸法が大きなフランジ部73が設けられている。フランジ部73は、出口流路55内を上下動自在であり、フランジ部73において中間流路54側に面する上面には弾性変形可能で且つ止水性を有する例えばゴム材料からなるパッキン75が装着されている。パッキン75は、ロッド部71の外周面を囲む環状に形成されている。
【0057】
製造時、トラックでの搬送時、組み立て待機時など、基材1が架台60に支持されない状態では、開閉弁70は図13(a)に示すように、自重により鉛直下方に力を受けるが掛止部72が段部58に引っ掛かってその段部58にぶら下がった状態となる。このとき、掛止部72は段部58に単に当接しているだけで気密に密着していないため、入口端部52から空気抜き流路51内に入ってきた空気を出口端部56に通すことができ、また出口端部56も架台60によって塞がれていないため、上述した洗い場床内部の空気抜きを妨げない。
【0058】
洗い場床が浴室ユニットとして建物内の設置場所に組み付けられ、基材1が架台60の上に支持されると、図13(b)に示すように、開閉弁70の他端74が架台60に当接して開閉弁70が上に押し上げられる。これにより、パッキン75が、開閉弁70のフランジ部73と、中間流路54と出口流路55との間の段部59との間に押しつぶされてそれら両部材に水密的に密着することで、中間流路54から出口流路55にかけての流路が遮断される。さらに、架台60によって出口端部56も塞がれる。この結果、空気抜き流路51を介して湯水が浴室外に漏出することを防げる。
【0059】
基材1と表面層5との間の空間において、空気の熱膨張や発泡体の二次発泡によって各層間に空気溜まりが発生しやすいのは、製造時(特に熱間成型時)、トラックでの搬送や組み立て前の倉庫での保管時(真夏では約65℃の高温環境下になる)などであり、実使用時に湯を使う場合には人体にとっても危険なことからそれほど高温の湯は使われず洗い場床内部に空気溜まりは生じにくい。それよりも、実使用時には浴室外への漏水を防ぐことの方が重要であるため、本実施形態では洗い場床の据え付け後には空気抜き流路51が塞がれるようにしている。
【0060】
また、開閉弁70は、基材1を架台60の上に支持させて固定する作業に伴って自然と空気抜き流路51を閉じるため、工数の増加によって作業者に負担をかけることがない。
【0061】
[第4の実施形態]
図14は、本発明の第4の実施形態に係る洗い場床における、空気抜き流路が設けられた部分の断面斜視図を示す。
【0062】
本実施形態では、基材1の底面部2aに貫通孔として形成された空気抜き流路11の下方(裏側)に、多孔質膜ユニット81を設けている。
【0063】
図15に、多孔質膜ユニット81の分解斜視図を示す。多孔質膜ユニット81は、取付ハウジング82と、スペーサーユニット83と、防塵キャップ84とを有する。
【0064】
取付ハウジング82は、筒部85とこの筒部85に対して一体に設けられた凹部86とを有する。筒部85は、大径部85aと、この大径部85aにおける軸方向の上端部に設けられた小径部85bとを有する。凹部86は、大径部85aの周囲に環状に設けられた環状凹部86aと、この環状凹部86aに対して放射状に設けられた放射状凹部86bとを有する。
【0065】
基材1の底面部2aにおいて空気抜き流路11が形成された部分近傍の裏面には、図14に示すように、筒状のリブ1aが下方に突出して設けられている。また、基材1の底面部2aにおいて溝12形成部の裏面にも下方に突出する板状のリブ1bが設けられている。
【0066】
図14に示すように、筒状リブ1aは、取付ハウジング82の環状凹部86aに嵌め込まれ、板状リブ1bは取付ハウジング82の放射状凹部86b(図15参照)に嵌め込まれる。これにより、取付ハウジング82は、その筒部85が基材1の筒状リブ1aの内側に収容された状態で基材1の裏側に取り付けられる。なお、筒部85の大径部85aの外周面にはシールリング(Oリング)87が装着されており、そのシールリング87が筒状リブ1aの内周面に対して水密に密着している。
【0067】
スペーサーユニット83は、筒部88と、この筒部88の外周面に放射状に突出して設けられたスペーサー部89と、筒部88における軸方向の上端開口を覆って設けられた多孔質膜(選択透過膜)90とを有する。
【0068】
多孔質膜90は、例えば、孔径0.1μm〜10μmの微細孔が多数形成されたPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)樹脂からなり、通気性は有するが、撥水性・防水性に優れ水等の液体は通さない。また、多孔質膜90は、防塵性、耐熱性および耐薬品性にも優れる。
【0069】
スペーサーユニット83の筒部88の下端開口は開放されており、スペーサーユニット83はその下端開口から、取付ハウジング82の小径部85bに嵌め込まれる。
【0070】
スペーサーユニット83には防塵キャップ84が被せられる。防塵キャップ84はスペーサーユニット83のスペーサー部89に対して嵌合し、周方向で隣り合うスペーサー部89とスペーサー部89との間における筒部88の外周面と、防塵キャップ84の内周面との間には隙間が確保される。
【0071】
また、その隙間における下端開口は、取付ハウジング82の大径部85a上端面に対して離間しており、また防塵キャップ84の外周側面と、基材1の筒状リブ1aの内周面との間にも隙間が形成され、さらに防塵キャップ84の上面に対して基材1の空気抜き流路11の出口端部は離間している。
【0072】
本実施形態における空気抜き流路は、基材1の底面部2aに貫通孔として形成された空気抜き流路11に加えて、防塵キャップ84の上面と基材1の底面部2a裏面との間の隙間、防塵キャップ84の外周側面と基材1の筒状リブ1aの内周面との間の隙間、取付ハウジング82の大径部85a上面と防塵キャップ84下端との間の隙間、スペーサーユニット83の筒部88外周面と防塵キャップ84内周面との間の隙間、多孔質膜90と防塵キャップ84との間の隙間、取付ハウジング82の小径部85b内部および大径部85a内部も空気抜き流路として機能する。
【0073】
基材1と表面層5との間の前述した密閉空間内から空気抜き流路11を介して底面部2aの裏側に排気された空気は、前述した空気抜き流路を図14において矢印Aで示すように流れ、浴室外に排気される。
【0074】
そして、本実施形態では、そのような空気抜き流路の途中に、前述した多孔質膜90が設けられているため、熱膨張等により圧力の高まった空気は前述した空気抜き流路を矢印A方向に流れて多孔質膜90を通過できるが、水滴等の液体は多孔質膜90を通過できない。すなわち、本実施形態によれば、上記密閉空間内の余剰空気の排気を実現しつつ浴室外への漏水は防止することができる。
【0075】
また、空気抜き流路の途中に、鉛直下方から鉛直上方に流れを反転させる方向反転部91が存在するため、空気抜き流路11から基材1裏面側に水滴が漏れ出てしまっても、空気に比べて比重の大きな水滴は方向反転部91で鉛直上方に進むことができず、大径部85aに落下する。
【0076】
そして、大径部85aの外周面と筒状リブ1aの内周面との間にはシールリング87が介在され水密が確保されているため、水滴が大径部85a外周面を伝って下方に流れ出ることを防止でき、万が一、シールリング87を越えて下方に水が流れてしまっても、凹部86aに水が堰き止められるため建築物に水が漏れ出る可能性はほとんどない。
【0077】
[第5の実施形態]
図16は、本発明の第5の実施形態に係る洗い場床において角部を含むその近傍部分の平面図を示す。なお、図16においてはクッション層及び表面層は示さず基材1のみを示し、また2点鎖線にて洗い場床の側壁部3のすぐ内側に載置される壁パネル101、102を示している。
【0078】
本実施形態では、基材1の底面部2aにおける角部の表面に溝状の空気抜き流路80を形成している。この空気抜き流路80は、基材1の底面部2aにおいて壁パネル101、102より浴室内側の部分に形成された前述した溝12とつながっている。
【0079】
図16において2点鎖線で示すように、一対の壁パネル101、102が例えば図示しないコーナージョイナーを介して連結されることで浴室コーナーが形成される。その浴室コーナーの裏側における基材1の底面部2の角部には壁パネル101、102が載置されておらず、その部分に、上側が開放された溝状の空気抜き流路80の出口端部80aが形成されている。すなわち、空気抜き流路80の出口端部80aは、基材1における上方に立ち上がった水返し用の側壁部3より内側であって、且つ壁パネル101、102の浴室内側の面101a、102aより外側(裏側)に形成されている。
【0080】
壁パネル101、102と表面層5との境界、および壁パネル101、102どうしの境界には目地部材などが挟み込まれて水密構造となる。したがって、壁パネル101、102の浴室内側の面101a、102aより外側には湯水が漏出せず、壁パネル101、102の浴室内側の面101a、102aより外側はいわゆるドライゾーンとなる。本実施形態における空気抜き流路80の出口端部80aは、そのドライゾーンに設けられているため、前述した開閉弁70のような空気抜き流路80を塞ぐ構造は不要である。
【0081】
空気抜き流路80は上側が開放された溝状に形成されているため基材1には浴室外に通じる孔があいておらず、さらに空気抜き流路80は基材1の側壁部3より内側に形成されているため、浴室内側からたとえ湯水が空気抜き流路80が形成された部分に浸入してきても側壁部3が堰として機能し、湯水が基材1の外に漏出することを防げる。また、出口端部80aを、浴室内側の面101a、102aより外側であって、洗い場床面上面となる表面層5より上方側に配置することで、万が一、空気抜き流路80に水が浸入した場合であっても、浴室外に水が漏水することがない。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る浴室の洗い場床の構成を模式的に示す分解斜視図。
【図2】同洗い場床における基材の拡大平面図。
【図3】同洗い場床における表面層表面の部分拡大図。
【図4】同洗い場床における各層の積層構造を示す模式図。
【図5】図4に示す基材の平面図。
【図6】同洗い場床における壁パネルが載置される部分の拡大断面図。
【図7】同洗い場床において空気抜き流路が設けられた部分の断面図。
【図8】同洗い場床において溝が設けられた部分の断面図。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る洗い場床における基材及びその底面部に積層されたクッション層の平面図。
【図10】同第2の実施形態に係る洗い場床において空気抜き流路が形成された部分の断面図。
【図11】同第2の実施形態に係る洗い場床の変形例を示す断面図。
【図12】本発明の第3の実施形態に係る洗い場床が架台に支持固定された部分の断面図。
【図13】(a)は、同第3の実施形態に係る洗い場床において、空気抜き流路が開閉弁によって塞がれていない状態の拡大断面図であり、(b)は、空気抜き流路が開閉弁によって塞がれた状態の拡大断面図。
【図14】本発明の第4の実施形態に係る洗い場床における空気抜き流路が設けられた部分の断面構造を示す模式図。
【図15】図14に示す多孔質膜ユニットの分解斜視図。
【図16】本発明の第5の実施形態に係る洗い場床において角部を含むその近傍部分の平面図。
【符号の説明】
【0083】
1…基材、4,40…クッション層、40a…クッション層の分割体、5…表面層、11…空気抜き流路、12…溝、80…空気抜き流路、90…多孔質膜、91…方向反転部
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室の洗い場床に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2には、FRP(Fiber Reinforced Plastic)からなる基材と、発泡層と、軟質材からなる表面層とを積層し一体化した浴室洗い場床が開示されている。
【特許文献1】特開2002−017598号公報
【特許文献2】特開2001−245814号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
複層構造の洗い場床においては、製造時に各層の間に空気溜まりが形成されやすく、各層間の密着が不十分となってしまうことがある。これを防ぐために、各層を積層固定させるための装置にエア抜きの機能を付加することが考えられるが、そうすると装置が複雑化してしまう。また、洗い場床は大面積のものであるため、装置にエア抜きの機能を付加しても、各層界面の面方向全体にわたって完全にエアを排除して接着させることは困難である。
【0004】
また、洗い場床は、製造後、工場からトラックなどで搬送されたり、倉庫などで保管されるが、その際に特に夏は高温環境下に置かれることになる。そのような高温環境下においては、クッション層として発泡体を用いた場合、その発泡体が二次発泡することにより洗い場床内部に空気溜まりが発生することがある。
【0005】
複数構造の洗い場床の各層間に空気が残っていると、剥がれの要因となると共に、空気溜まり部分が膨れることになるため、意匠的に商品価値を大きく低下させることにもなる。また、床面上の膨れは、洗い場床表面における排水性能を悪化させる要因ともなり得る。
【0006】
本発明は上述の問題に鑑みてなされ、複層構造の洗い場床における各層間に空気溜まりが形成されるのを抑制し、さらに基材裏面側への水漏れを防止する浴室の洗い場床を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、基材と、前記基材より浴室内側に積層され、前記基材と周縁部で水密的に接着された可撓性を有する表面層と、前記基材と前記表面層との間の水密的に塞がれた空間に積層された弾性変形可能なクッション層と、前記基材と前記表面層との間の空間を浴室外に連通可能にする空気抜き流路と、を備え、前記空気抜き流路の出口端部は、前記基材が架台に支持されない状態では開放され、前記基材が架台に支持された状態では塞がれることを特徴とする浴室の洗い場床が提供される。また、本発明の一態様によれば、基材と、前記基材より浴室内側に積層され、前記基材と周縁部で水密的に接着された可撓性を有する表面層と、前記基材と前記表面層との間の水密的に塞がれた空間に積層された弾性変形可能なクッション層と、前記基材と前記表面層との間の空間を浴室外に連通可能にする空気抜き流路と、を備え、前記空気抜き流路の途中に、通気性を有するが液体は通さない多孔質膜を設けたことを特徴とする。また、本発明の一態様によれば、基材と、前記基材より浴室内側に積層され、前記基材と周縁部で水密的に接着された可撓性を有する表面層と、前記基材と前記表面層との間の水密的に塞がれた空間に積層された弾性変形可能なクッション層と、前記基材と前記表面層との間の空間を浴室外に連通可能にする空気抜き流路と、を備え、前記基材はパン状に形成され、前記空気抜き流路の出口端部は、前記パン状の基材における上方に立ち上がった水返し壁となる側壁部より内側であって、且つ前記基材の周縁部に載置される壁パネルの浴室内側の面より外側に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複層構造の洗い場床における各層間に空気溜まりが形成されるのを抑制し、さらに基材裏面側への水漏れを防止する浴室の洗い場床が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
浴室の洗い場床に柔らかさを付与するために、弾性変形可能なクッション性を有する材料で洗い場床を構成することが考えられるが、クッション性を有する例えば発泡体は耐水性、耐薬品性、耐衝撃性など、洗い場床として求められる基本性能に優れず、クッション性を有する材料だけで構成した洗い場床は商品として提供しにくい。また、クッション性を有する材料としては発泡体以外にもゴム材があるが、ゴム材はゴム臭がするため、そのような材料を気密性の高い浴室内に、洗い場床という比較的広い面積にわたって用いるのは好ましくない。
【0010】
したがって、発泡体を洗い場床におけるクッション層として設けた場合、浴室内側に露出する表面には、耐水性などのユニットバスの基本性能を満足する材料からなる表面層が別途必要になる。クッション層の表面側にそのような表面層を積層した構造においては、使用者は表面層に触れることになるがその使用者にクッション層の機能(柔らかさ)を感じさせるようにするため、表面層には可撓性が求められる。
【0011】
前述したような特性を満足する表面層やクッション層は荷重を支えるのに十分な強度を確保しにくく、これらの層とは別に、表面層やクッション層より荷重を支えるための強度の大きな基材が必要となる。すなわち、洗い場床に柔らかさを付与しつつ、洗い場床として求められる最低限の基本性能を確保するためには少なくとも基材、クッション層、表面層を組み合わせた構造にする必要がある。
【0012】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る浴室の洗い場床の構成を模式的に示す分解斜視図である。
本実施形態に係る洗い場床は、基材1と、基材1の上に積層されたクッション層4と、クッション層4の上に積層された表面層5とを備える。クッション層4と表面層5は、基材1における浴室内側の面上に積層される。
【0013】
図2に基材1の拡大平面図を示す。
基材1は、例えば、FRP(Fiber Reinforced Plastic)等の熱硬化性樹脂、あるいはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂からなり、浴室外に湯水を漏出させない防水性を有する。基材1は、荷重を受ける床として機能する底面部2aの周縁に水返し壁として機能する側壁部3が設けられた浅底のパン状に成形されている。底面部2aには、排水用開口8が形成され、周縁から排水用開口8に向けて下向き傾斜した1/30〜1/70の排水勾配が付けられている。ここで、この勾配は1/50(1度10分)が好ましい。基材1は、壁パネルや天井パネルや風呂椅子や洗面器などの静荷重、使用者の動荷重を受けても撓んだり破損しない十分な強度を有する。
【0014】
クッション層4は、弾性変形可能であり、例えばウレタン等の発泡体からなる。クッション層4は、基材1の底面部2の表面に接着または溶着固定されている。尚、クッション層4は弾性変形可能なゴム材であっても構わないが、ゴム臭のない発泡体の方が、気密性の高い浴室の洗い場床として利用するには好ましい。
【0015】
表面層5は、クッション層4の表面に接着または溶着固定され、その表面は浴室内に露出し、使用者が触れたり、湯水にさらされる面となる。表面層5は、耐水性、耐薬品性、耐衝撃性などを有すると共に、下層のクッション層4の弾性変形に追従可能な可撓性を有する。表面層5としては、例えば、基材1に用いるFRPよりも薄く且つ軟質なFRPを用いることができる。つまり、使用者が表面層5の上に荷重をかけると(負荷時)、クッション層4が鉛直方向に縮み、接着剤で接着固定されている表面層5もクッション層4の変形に追随するように下方側に撓む。一方、使用者が表面層5の上に荷重をかけた状態から離れたとき(無負荷時)は、クッション層4が鉛直方向に伸び、接着剤で接着固定されている表面層5もクッション層4の変形に追随するように上方側に撓み元に戻る。
【0016】
また、表面層5の表面には、その部分拡大図である図3に示すように、溝5bが形成されている。この溝5bは、表面層5の表面上を図示しない排水口に向けて流れる湯水の排水流路として機能する。また、表面層5の表面に溝5bを形成することで、表面層5の表面に凹凸が形成され、洗い場床面が滑りにくくなる効果も得られる。
【0017】
基材1、クッション層4および表面層5の積層構造を得るにあたっては、それらを一体に熱間成型することにより相互に溶着固定させてもよいし(インサート成形)、基材1の成型加工後に、底面部2aに対してクッション層4を例えば両面テープ等の接着材を用いて貼り付け、さらにそのクッション層4の表面に例えば両面テープ等の接着材を用いて表面層5を貼り付けてもよい。
【0018】
本実施形態に係る洗い場床はクッション層4を備えるので、使用者がひざをついても痛くないやわらかな感触が得られる。また、床が足になじみ、濡れた足でも滑りにくくできる。さらに、例えば洗面器を床に落としても音が響かない。
【0019】
上述した特許文献1、2では、表面層と基材との線膨張率が異なるため、熱が加わった際に各層の境界面に異なるせん断力が働き、剥がれるおそれがあった。
【0020】
特に、洗い場床は、トラック搬送時に約65℃の環境下に置かれることがあったり、実使用において約40℃の温水がかかることがある。このように洗い場床というものは、大きな温度変化がある環境下に置かれるものなので、線膨張および線収縮が起きるおそれがあり、対策が必要である。ここで、表面層と基材とが近似した線膨張率の材料で形成されていると、それら両者の間に挟まれて接着されているクッション層に対してのせん断力は、クッション層の上面と下面側で略等しくなるため、クッション層が水平方向に伸縮することで発生する各境界面での剥がれの可能性を低減できることになる。
【0021】
ここで、各層の接着力を強力にしておくことで線膨張による剥がれを防止する策もあるが、本実施形態によれば、該接着力のみに依存せずに剥がれを防止することができる。
【0022】
具体的に、本実施形態では、表面層5と基材1はそれぞれ線膨張率の近似した材料を採用することにより、各層の線膨張率の違いによる剥がれという、不安要素を軽減している。特に、表面層5をFRPよりも薄く且つ軟質なFRPにすることで、基材1を表面層5と同質で従来同様のFRPを利用することができるため好ましい。尚、軟質のFRPは、親水素材となるため、洗い場床面上の排水性にとっても有利である。
【0023】
また、本発明の実施形態に係る洗い場床は、図4に模式的に示すような積層構造となっている。図5は基材1の平面図を模式的に示す。
【0024】
基材1には凹部2が設けられている。基材1において凹部2は大部分の面積を占め、凹部2より外側には縁部6が設けられている。縁部6は、図5に示すように、凹部2の周囲全周にわたって設けられている。縁部6の上面は凹部2の底面より高い位置に設けられている。
【0025】
クッション層4は、基材1の凹部2に収容され、凹部2の底面に例えば両面テープ等により接着固定されている。表面層5は、基材1の凹部2に蓋を被せるようにクッション層4の全面を覆っている。表面層5の平面サイズは、クッション層4の平面サイズより大きく、表面層5においてクッション層4からはみ出る縁部5aは、基材1の縁部6の上に積層されている。
【0026】
クッション層4が基材1の凹部2に収まった状態で、クッション層4の側端部と凹部2の側壁面との間には隙間が形成され、その隙間には図6に示すように接着剤15が充填されている。基材1の縁部6の上面には、環状の溝16が形成され、さらにその溝16より外側にも溝18が形成されている。外側の溝18は内側の溝16よりも幅が大きい。内側の溝16には接着剤17が充填され、外側の溝18には両面テープ19が貼り付けられている。表面層5において、クッション層4よりはみ出る縁部5aは、それら接着剤17及び両面テープ19を介して、基材1の縁部6に接着固定されている。
【0027】
すなわち、基材1と表面層5とは全周縁部近傍で水密的に接着され、その水密的に塞がれた空間にクッション層4が収容配置されている。
【0028】
基材1の最外縁部には、前述した水返し用の側壁部3が設けられ、その側壁部3のすぐ内側の部分に、壁パネル101が載置される。壁パネル101における浴室内側の一部は、基材1の縁部6の上に積層された表面層5の縁部5aの上にも載置されている。これにより、表面層5と基材1との境界が浴室内に露出せず、また、表面層5と基材1との境界にシリコン等によって止水処理を施さなくても、壁パネル101と表面層5との間に目地部材を挟み込むことで止水を図れるため、見栄えを損ねず商品価値を高めることができる。
【0029】
表面層5の縁部5aはクッション層4を介さずに基材1の縁部6の上に直接接着固定されているため、壁パネル101が表面層5の上に重なっても、クッション層4の弾性変形によって壁パネル101が傾いたり、クッション層4の復元力が壁パネル101に作用することがない。これにより、壁パネル101及びその上の天井パネルを基材1上に安定して支えることができ、壁パネル101間あるいは壁パネル101と他の部材間のジョイント部分に不所望の隙間が生じることを防いで浴室内の防水性を損ねることがない。
【0030】
クッション層4が弾性変形し、それに追従して可撓性を有する表面層5がたわむことで、使用者は洗い場床の柔らかさを感じることになるが、ユニットバスの洗い場床は、使用者の体重がかかったり(特に風呂椅子に座った時などは集中荷重が加わる)、壁パネルの荷重がかかり、且つ長期的に使用するものでもあるため、長期使用によりクッション層4のへたり(塑性変形)が起こることが懸念される。クッション層4のへたりが生じると、洗い場床の柔らかさが失われるのはもちろん、表面層5の表面に凹部が生じて湯水が溜まり、洗い場床に必要とされている基本性能の一つである排水性が損なわれる可能性がある。
【0031】
クッション層4が弾性変形してつぶれると、自らが有する復元力によって元に戻ろうとするが、この復元力に加えて、さらに、本実施形態によれば、表面層5が、縮んだクッション層4を引っ張り上げる力によってもクッション層4の自然状態への復元を助長することができる。
【0032】
表面層5は洗い場床の最表面を構成する層であるため、しわやたるみが生じないように、ある程度の張力をかけた状態で、クッション層4に覆い被さるように基材1の縁部6に接着固定される。したがって、表面層5に上から荷重がかかって表面層5が下方に撓むと、元の状態(上からの荷重がない状態)に戻ろうとする力がはたらく。表面層5においてクッション層4に覆い被さる部分の裏面はクッション層4と接着されているため、表面層5が元の状態に戻る際に、クッション層4も表面層5に追従して上に引っ張り上げられるようになる。
【0033】
すなわち、クッション層4が弾性変形してつぶれた際、クッション層4自らが有する復元力だけでなく、クッション層4が表面層5の復元に追従する作用もクッション層4の復元に貢献する。これにより、クッション層4は自然状態へと戻りやすくなり、へたりが起こりにくくなる。
【0034】
表面層5はクッション層4に覆い被さるようにその縁部5aが基材1の縁部6に対して接着固定されるため、無負荷状態におけるクッション層4の厚みが基材1の凹部2の深さより大きいと、クッション層4は表面層5から下方に押し付けられる力を受け、クッション性が低減すると共にへたりやすくなる。また、無負荷状態におけるクッション層4の厚みが基材1の凹部2の深さより小さいと、表面層5とクッション層4との間に隙間が形成されクッション性を損ねる可能性がある。したがって、クッション層4に上から荷重が作用しない無負荷状態(自然状態)におけるクッション層4の厚みが、基材1の凹部2の深さと略同一とすることが望ましい。
【0035】
さらに、本実施形態では、基材1の底面部2aに空気抜き流路11を設けている。図7は、本実施形態に係る洗い場床において空気抜き流路11が設けられた部分の断面を示し、図2に示す基材1におけるA−A断面に対応する。
【0036】
空気抜き流路11は、基材1の底面部2aを貫通している。空気抜き流路11の入口端部は、基材1においてクッション層4と対向する部分である底面部2aの表面に開口している。空気抜き流路11の出口端部は、基材1の底面部2aの裏側に開口している。基材1と表面層5との間の空間は、前述したように水密的に塞がれているが、空気抜き流路11を介して、浴室外に連通可能とされる。
【0037】
また、図2に示すように基材1の底面部2aの表面には溝12が形成され、溝12は底面部2aの表面に偏在することなく例えば格子状にレイアウトされている。溝12は基材1におけるクッション層4と対向する底面部2aの全体にわたって僅かに下方に凹んだ形状となっており、各溝12はそれぞれ連通しており、溝12の中は接着剤などによって塞がれないようになっている。尚、溝12は、基材1と表面層5との間の密閉空間全体の残留空気を空気抜き流路11に導けるようクッション層4の周縁部または周縁部より外方側まで形成されていることが好ましい。
【0038】
図8は、本実施形態に係る洗い場床において溝12が設けられた部分の断面を示し、図2に示す基材1におけるB−B断面に対応する。
【0039】
空気抜き流路11の入口端部は、底面部2aの表面において溝12が形成された位置(図2に示す例では例えば4箇所)に形成され、溝12と連通している。なお、空気抜き流路11の個数や溝12の平面パターンは図2に示すものに限るものではない。
【0040】
基材1と表面層5との間の空間は前述したように密閉空間であり、その密閉空間を浴室外に連通させる空気抜き流路11を設けることで、その空間内において空気の熱膨張や発泡体の二次発泡や製造時に生じる基材1と表面層5との間の密閉空間に発生する残留空気を空気抜き流路11を介して浴室外に逃がすことができる。空抜き流路11から離れた箇所で、空気の熱膨張や発泡体の二次発泡が生じても、空気抜き流路11と溝12とが連通しているため、余剰な空気を溝12を介して空気抜き流路11に導くことができる。これにより、表面層5とクッション層4との界面や、クッション層4と基材1との界面に空気溜まりが形成されるのを抑制して、それによる各部材間の剥離を防ぐことができる。また、意匠性や排水勾配を損ねる表面層5の膨れを防げるため、商品価値や排水性を低下させることもない。
【0041】
洗い場床の面方向の全面にわたって効率よい排気性を得るためには、空気抜き流路11の入口端部に連通する溝12は面方向に偏りなく分布させ、また空気抜き流路11を複数箇所に設ける場合には偏りなく分散配置させるのが望ましい。
【0042】
なお、空気抜き流路11の入口端部に連通する溝12は、基材1の底面部2aに限らず、クッション層4における基材1の底面部2aに対向する部分に設けてもよい。
【0043】
発泡体には、個々の気泡が密閉されて独立して存在する独立気泡構造と、気泡が他の気泡や発泡体外部とつながって相互に連続している連続気泡構造とがある。本実施形態に係る洗い場床のクッション層4として用いる発泡体としては、クッション層4のへたり(塑性変形)を抑制する観点から連続気泡構造の発泡体が望ましい。また、連続気泡構造の発泡体の場合には、二次発泡により発生した空気を、つながった連続気泡を介して面方向に分散させたり、空気抜き流路11の入口端部に導くことも期待できる。つまり、二次発泡した空気が、クッション層4内に留まることがないため、該空気は溝12を通過して空気抜き流路11から浴室外に排気することが可能となる。
【0044】
[第2の実施形態]
図9は、本発明の第2の実施形態に係る洗い場床における基材1及びその底面部2aに積層されたクッション層40の平面図を示す。図10は、本実施形態に係る洗い場床において空気抜き流路11が形成された部分の断面図を示す。
【0045】
本実施形態では、クッション層40が複数の分割体40aに分割(図9では例えば4分割)され、複数の分割体40aは互いに隙間41をあけて、基材1の底面部2aの上に並んで接着固定されている。個々の分割体40aも、前述した第1の実施形態に係るクッション層4と同様、弾性変形可能な例えば発泡体からなる。
【0046】
図10に示すように、基材1の底面部2aと個々の分割体40aとは、それら両者間に介在された接着層(例えば両面テープ)23を介して互いに接着固定されている。また、個々の分割体40aと表面層5との間にも接着層(例えば両面テープ)22が介在され、分割体40aと表面層5とは互いに接着固定されている。
【0047】
接着層22、23は、分割される前のクッション層40の表裏面にそれぞれ貼り付けられ、クッション層40は接着層22、23ごと複数の分割体40aに分割されている。大面積のクッション層40を基材1に貼り付けるよりも、より小面積の個々の分割体40aを基材1に貼り付ける方が貼り付け作業性が容易になる。
【0048】
また、各分割体40aの間に形成される隙間41を、空気抜き流路11の入口端部に連通させれば、それら隙間41を前述した第1の実施形態における溝12と同様の役割を担わせることができる。すなわち、各分割体40aの間の隙間41を介して、基材1と表面層5との間の空間内に溜まる空気を空気抜き流路11に導いて、浴室外へと逃がすのを促進させることもできる。
【0049】
なお、図11に示すように、クッション層4を分割せずに、基材1との界面の接着層23だけを分割した場合でも、基材1の底面部2aとクッション層4との間に溝23aを存在させることができるので、その溝23aを介して空気抜き流路11への排気を促進することが可能である。
【0050】
また、クッション層4を分割しない場合で、クッション層4と表面層5との間に介在される接着層22を分割すれば、クッション層4と表面層5との界面に溝を存在させることができるため、表面層5とクッション層4との界面に空気が局所的に閉じこめられて表面層5が膨れることを抑制できる。また、表面層5のクッション層4と対向する面に上方に切り欠かれた溝を形成すれば、表面層5とクッション層4との界面に空気が局所的に閉じこめられて表面層5が膨れることを抑制できる。
【0051】
[第3の実施形態]
洗い場床を建物内の浴室設置場所に設置した状態において、基材1は、図12に示すように、例えば中空角柱状の鋼材からなる架台60を介して、建物の床上に設置される。基材1は、その裏側に突出して設けられたボス部61を有し、架台60を下方から貫通するボルト62の先端側の部分がボス部61にねじ込まれることによって、基材1は架台60に対して固定される。
【0052】
そして、本実施形態では、空気抜き流路51の出口端部56が、基材1が架台60に支持されない状態では開放され(空気抜き流路が浴室外と連通状態)、基材1が架台60に支持された状態では塞がれる(空気抜き流路が浴室外と連通していない状態)構造としている。
【0053】
具体的には、図13に示すように、空気抜き流路51を開閉する開閉弁70を設けている。図13(a)は、開閉弁70によって空気抜き流路51が塞がれていない状態の拡大断面を示し、図13(b)は、開閉弁70によって空気抜き流路51が塞がれた状態の拡大断面を示す。
【0054】
空気抜き流路51は、入口端部52から出口端部56に向かって順に形成された入口流路53、中間流路54および出口流路55を有する。入口流路53の一端は入口端部52に連通し、他端は中間流路54に連通している。中間流路54は入口流路53より小径であり、入口流路53と中間流路54との間には段部58が形成されている。中間流路54において入口流路53に連通する一端の反対側の他端は出口流路55に連通している。出口流路55は中間流路54よりも大径であり、中間流路54と出口流路55との間には段部59が形成されている。出口流路55において中間流路54に連通する一端の反対側の他端は出口端部56に連通している。
【0055】
開閉弁70は、中間流路54を貫通して空気抜き流路51内を上下動自在なロッド部71を有し、そのロッド部71における入口流路53側の一端に掛止部72が設けられている。掛止部72は、入口流路53内を上下動自在であり、中間流路54の内径より大きな径方向寸法を有するため、掛止部72が入口流路53と中間流路54との間の段部58に引っ掛かることで掛止部72のそれ以上の下降が規制される。
【0056】
ロッド部71における上記掛止部72が設けられた一端と、出口端部56側の他端74との間には、中間流路54の内径よりも径方向寸法が大きなフランジ部73が設けられている。フランジ部73は、出口流路55内を上下動自在であり、フランジ部73において中間流路54側に面する上面には弾性変形可能で且つ止水性を有する例えばゴム材料からなるパッキン75が装着されている。パッキン75は、ロッド部71の外周面を囲む環状に形成されている。
【0057】
製造時、トラックでの搬送時、組み立て待機時など、基材1が架台60に支持されない状態では、開閉弁70は図13(a)に示すように、自重により鉛直下方に力を受けるが掛止部72が段部58に引っ掛かってその段部58にぶら下がった状態となる。このとき、掛止部72は段部58に単に当接しているだけで気密に密着していないため、入口端部52から空気抜き流路51内に入ってきた空気を出口端部56に通すことができ、また出口端部56も架台60によって塞がれていないため、上述した洗い場床内部の空気抜きを妨げない。
【0058】
洗い場床が浴室ユニットとして建物内の設置場所に組み付けられ、基材1が架台60の上に支持されると、図13(b)に示すように、開閉弁70の他端74が架台60に当接して開閉弁70が上に押し上げられる。これにより、パッキン75が、開閉弁70のフランジ部73と、中間流路54と出口流路55との間の段部59との間に押しつぶされてそれら両部材に水密的に密着することで、中間流路54から出口流路55にかけての流路が遮断される。さらに、架台60によって出口端部56も塞がれる。この結果、空気抜き流路51を介して湯水が浴室外に漏出することを防げる。
【0059】
基材1と表面層5との間の空間において、空気の熱膨張や発泡体の二次発泡によって各層間に空気溜まりが発生しやすいのは、製造時(特に熱間成型時)、トラックでの搬送や組み立て前の倉庫での保管時(真夏では約65℃の高温環境下になる)などであり、実使用時に湯を使う場合には人体にとっても危険なことからそれほど高温の湯は使われず洗い場床内部に空気溜まりは生じにくい。それよりも、実使用時には浴室外への漏水を防ぐことの方が重要であるため、本実施形態では洗い場床の据え付け後には空気抜き流路51が塞がれるようにしている。
【0060】
また、開閉弁70は、基材1を架台60の上に支持させて固定する作業に伴って自然と空気抜き流路51を閉じるため、工数の増加によって作業者に負担をかけることがない。
【0061】
[第4の実施形態]
図14は、本発明の第4の実施形態に係る洗い場床における、空気抜き流路が設けられた部分の断面斜視図を示す。
【0062】
本実施形態では、基材1の底面部2aに貫通孔として形成された空気抜き流路11の下方(裏側)に、多孔質膜ユニット81を設けている。
【0063】
図15に、多孔質膜ユニット81の分解斜視図を示す。多孔質膜ユニット81は、取付ハウジング82と、スペーサーユニット83と、防塵キャップ84とを有する。
【0064】
取付ハウジング82は、筒部85とこの筒部85に対して一体に設けられた凹部86とを有する。筒部85は、大径部85aと、この大径部85aにおける軸方向の上端部に設けられた小径部85bとを有する。凹部86は、大径部85aの周囲に環状に設けられた環状凹部86aと、この環状凹部86aに対して放射状に設けられた放射状凹部86bとを有する。
【0065】
基材1の底面部2aにおいて空気抜き流路11が形成された部分近傍の裏面には、図14に示すように、筒状のリブ1aが下方に突出して設けられている。また、基材1の底面部2aにおいて溝12形成部の裏面にも下方に突出する板状のリブ1bが設けられている。
【0066】
図14に示すように、筒状リブ1aは、取付ハウジング82の環状凹部86aに嵌め込まれ、板状リブ1bは取付ハウジング82の放射状凹部86b(図15参照)に嵌め込まれる。これにより、取付ハウジング82は、その筒部85が基材1の筒状リブ1aの内側に収容された状態で基材1の裏側に取り付けられる。なお、筒部85の大径部85aの外周面にはシールリング(Oリング)87が装着されており、そのシールリング87が筒状リブ1aの内周面に対して水密に密着している。
【0067】
スペーサーユニット83は、筒部88と、この筒部88の外周面に放射状に突出して設けられたスペーサー部89と、筒部88における軸方向の上端開口を覆って設けられた多孔質膜(選択透過膜)90とを有する。
【0068】
多孔質膜90は、例えば、孔径0.1μm〜10μmの微細孔が多数形成されたPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)樹脂からなり、通気性は有するが、撥水性・防水性に優れ水等の液体は通さない。また、多孔質膜90は、防塵性、耐熱性および耐薬品性にも優れる。
【0069】
スペーサーユニット83の筒部88の下端開口は開放されており、スペーサーユニット83はその下端開口から、取付ハウジング82の小径部85bに嵌め込まれる。
【0070】
スペーサーユニット83には防塵キャップ84が被せられる。防塵キャップ84はスペーサーユニット83のスペーサー部89に対して嵌合し、周方向で隣り合うスペーサー部89とスペーサー部89との間における筒部88の外周面と、防塵キャップ84の内周面との間には隙間が確保される。
【0071】
また、その隙間における下端開口は、取付ハウジング82の大径部85a上端面に対して離間しており、また防塵キャップ84の外周側面と、基材1の筒状リブ1aの内周面との間にも隙間が形成され、さらに防塵キャップ84の上面に対して基材1の空気抜き流路11の出口端部は離間している。
【0072】
本実施形態における空気抜き流路は、基材1の底面部2aに貫通孔として形成された空気抜き流路11に加えて、防塵キャップ84の上面と基材1の底面部2a裏面との間の隙間、防塵キャップ84の外周側面と基材1の筒状リブ1aの内周面との間の隙間、取付ハウジング82の大径部85a上面と防塵キャップ84下端との間の隙間、スペーサーユニット83の筒部88外周面と防塵キャップ84内周面との間の隙間、多孔質膜90と防塵キャップ84との間の隙間、取付ハウジング82の小径部85b内部および大径部85a内部も空気抜き流路として機能する。
【0073】
基材1と表面層5との間の前述した密閉空間内から空気抜き流路11を介して底面部2aの裏側に排気された空気は、前述した空気抜き流路を図14において矢印Aで示すように流れ、浴室外に排気される。
【0074】
そして、本実施形態では、そのような空気抜き流路の途中に、前述した多孔質膜90が設けられているため、熱膨張等により圧力の高まった空気は前述した空気抜き流路を矢印A方向に流れて多孔質膜90を通過できるが、水滴等の液体は多孔質膜90を通過できない。すなわち、本実施形態によれば、上記密閉空間内の余剰空気の排気を実現しつつ浴室外への漏水は防止することができる。
【0075】
また、空気抜き流路の途中に、鉛直下方から鉛直上方に流れを反転させる方向反転部91が存在するため、空気抜き流路11から基材1裏面側に水滴が漏れ出てしまっても、空気に比べて比重の大きな水滴は方向反転部91で鉛直上方に進むことができず、大径部85aに落下する。
【0076】
そして、大径部85aの外周面と筒状リブ1aの内周面との間にはシールリング87が介在され水密が確保されているため、水滴が大径部85a外周面を伝って下方に流れ出ることを防止でき、万が一、シールリング87を越えて下方に水が流れてしまっても、凹部86aに水が堰き止められるため建築物に水が漏れ出る可能性はほとんどない。
【0077】
[第5の実施形態]
図16は、本発明の第5の実施形態に係る洗い場床において角部を含むその近傍部分の平面図を示す。なお、図16においてはクッション層及び表面層は示さず基材1のみを示し、また2点鎖線にて洗い場床の側壁部3のすぐ内側に載置される壁パネル101、102を示している。
【0078】
本実施形態では、基材1の底面部2aにおける角部の表面に溝状の空気抜き流路80を形成している。この空気抜き流路80は、基材1の底面部2aにおいて壁パネル101、102より浴室内側の部分に形成された前述した溝12とつながっている。
【0079】
図16において2点鎖線で示すように、一対の壁パネル101、102が例えば図示しないコーナージョイナーを介して連結されることで浴室コーナーが形成される。その浴室コーナーの裏側における基材1の底面部2の角部には壁パネル101、102が載置されておらず、その部分に、上側が開放された溝状の空気抜き流路80の出口端部80aが形成されている。すなわち、空気抜き流路80の出口端部80aは、基材1における上方に立ち上がった水返し用の側壁部3より内側であって、且つ壁パネル101、102の浴室内側の面101a、102aより外側(裏側)に形成されている。
【0080】
壁パネル101、102と表面層5との境界、および壁パネル101、102どうしの境界には目地部材などが挟み込まれて水密構造となる。したがって、壁パネル101、102の浴室内側の面101a、102aより外側には湯水が漏出せず、壁パネル101、102の浴室内側の面101a、102aより外側はいわゆるドライゾーンとなる。本実施形態における空気抜き流路80の出口端部80aは、そのドライゾーンに設けられているため、前述した開閉弁70のような空気抜き流路80を塞ぐ構造は不要である。
【0081】
空気抜き流路80は上側が開放された溝状に形成されているため基材1には浴室外に通じる孔があいておらず、さらに空気抜き流路80は基材1の側壁部3より内側に形成されているため、浴室内側からたとえ湯水が空気抜き流路80が形成された部分に浸入してきても側壁部3が堰として機能し、湯水が基材1の外に漏出することを防げる。また、出口端部80aを、浴室内側の面101a、102aより外側であって、洗い場床面上面となる表面層5より上方側に配置することで、万が一、空気抜き流路80に水が浸入した場合であっても、浴室外に水が漏水することがない。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る浴室の洗い場床の構成を模式的に示す分解斜視図。
【図2】同洗い場床における基材の拡大平面図。
【図3】同洗い場床における表面層表面の部分拡大図。
【図4】同洗い場床における各層の積層構造を示す模式図。
【図5】図4に示す基材の平面図。
【図6】同洗い場床における壁パネルが載置される部分の拡大断面図。
【図7】同洗い場床において空気抜き流路が設けられた部分の断面図。
【図8】同洗い場床において溝が設けられた部分の断面図。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る洗い場床における基材及びその底面部に積層されたクッション層の平面図。
【図10】同第2の実施形態に係る洗い場床において空気抜き流路が形成された部分の断面図。
【図11】同第2の実施形態に係る洗い場床の変形例を示す断面図。
【図12】本発明の第3の実施形態に係る洗い場床が架台に支持固定された部分の断面図。
【図13】(a)は、同第3の実施形態に係る洗い場床において、空気抜き流路が開閉弁によって塞がれていない状態の拡大断面図であり、(b)は、空気抜き流路が開閉弁によって塞がれた状態の拡大断面図。
【図14】本発明の第4の実施形態に係る洗い場床における空気抜き流路が設けられた部分の断面構造を示す模式図。
【図15】図14に示す多孔質膜ユニットの分解斜視図。
【図16】本発明の第5の実施形態に係る洗い場床において角部を含むその近傍部分の平面図。
【符号の説明】
【0083】
1…基材、4,40…クッション層、40a…クッション層の分割体、5…表面層、11…空気抜き流路、12…溝、80…空気抜き流路、90…多孔質膜、91…方向反転部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材より浴室内側に積層され、前記基材と周縁部で水密的に接着された可撓性を有する表面層と、
前記基材と前記表面層との間の水密的に塞がれた空間に積層された弾性変形可能なクッション層と、
前記基材と前記表面層との間の空間を浴室外に連通可能にする空気抜き流路と、
を備え、
前記空気抜き流路の出口端部は、前記基材が架台に支持されない状態では開放され、前記基材が架台に支持された状態では塞がれることを特徴とする浴室の洗い場床。
【請求項2】
前記基材が前記架台に支持された状態で、前記空気抜き流路の前記出口端部はパッキンによって水密に塞がれることを特徴とする請求項1記載の浴室の洗い場床。
【請求項3】
基材と、
前記基材より浴室内側に積層され、前記基材と周縁部で水密的に接着された可撓性を有する表面層と、
前記基材と前記表面層との間の水密的に塞がれた空間に積層された弾性変形可能なクッション層と、
前記基材と前記表面層との間の空間を浴室外に連通可能にする空気抜き流路と、
を備え、
前記空気抜き流路の途中に、通気性を有するが液体は通さない多孔質膜を設けたことを特徴とする浴室の洗い場床。
【請求項4】
前記空気抜き流路は、鉛直下方から鉛直上方へと流れを反転させる方向反転部を有することを特徴とする請求項3に記載の浴室の洗い場床。
【請求項5】
基材と、
前記基材より浴室内側に積層され、前記基材と周縁部で水密的に接着された可撓性を有する表面層と、
前記基材と前記表面層との間の水密的に塞がれた空間に積層された弾性変形可能なクッション層と、
前記基材と前記表面層との間の空間を浴室外に連通可能にする空気抜き流路と、
を備え、
前記基材はパン状に形成され、前記空気抜き流路の出口端部は、前記パン状の基材における上方に立ち上がった水返し壁となる側壁部より内側であって、且つ前記基材の周縁部に載置される壁パネルの浴室内側の面より外側に形成されていることを特徴とする浴室の洗い場床。
【請求項1】
基材と、
前記基材より浴室内側に積層され、前記基材と周縁部で水密的に接着された可撓性を有する表面層と、
前記基材と前記表面層との間の水密的に塞がれた空間に積層された弾性変形可能なクッション層と、
前記基材と前記表面層との間の空間を浴室外に連通可能にする空気抜き流路と、
を備え、
前記空気抜き流路の出口端部は、前記基材が架台に支持されない状態では開放され、前記基材が架台に支持された状態では塞がれることを特徴とする浴室の洗い場床。
【請求項2】
前記基材が前記架台に支持された状態で、前記空気抜き流路の前記出口端部はパッキンによって水密に塞がれることを特徴とする請求項1記載の浴室の洗い場床。
【請求項3】
基材と、
前記基材より浴室内側に積層され、前記基材と周縁部で水密的に接着された可撓性を有する表面層と、
前記基材と前記表面層との間の水密的に塞がれた空間に積層された弾性変形可能なクッション層と、
前記基材と前記表面層との間の空間を浴室外に連通可能にする空気抜き流路と、
を備え、
前記空気抜き流路の途中に、通気性を有するが液体は通さない多孔質膜を設けたことを特徴とする浴室の洗い場床。
【請求項4】
前記空気抜き流路は、鉛直下方から鉛直上方へと流れを反転させる方向反転部を有することを特徴とする請求項3に記載の浴室の洗い場床。
【請求項5】
基材と、
前記基材より浴室内側に積層され、前記基材と周縁部で水密的に接着された可撓性を有する表面層と、
前記基材と前記表面層との間の水密的に塞がれた空間に積層された弾性変形可能なクッション層と、
前記基材と前記表面層との間の空間を浴室外に連通可能にする空気抜き流路と、
を備え、
前記基材はパン状に形成され、前記空気抜き流路の出口端部は、前記パン状の基材における上方に立ち上がった水返し壁となる側壁部より内側であって、且つ前記基材の周縁部に載置される壁パネルの浴室内側の面より外側に形成されていることを特徴とする浴室の洗い場床。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2009−102977(P2009−102977A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−173506(P2008−173506)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【分割の表示】特願2007−277983(P2007−277983)の分割
【原出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【分割の表示】特願2007−277983(P2007−277983)の分割
【原出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
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