説明

浴室建具

【課題】浴室内外の高低差を設けつつも大きな段差を設けることなく、下枠上の水等を容易に排出することが可能な浴室建具を提供する。
【解決手段】浴室内外の境界に設けられ前記浴室の出入口を開閉自在に設けられ、前記出入口を開く際に、前記出入口と隣接する壁部の脱衣室側に設けられた引き込み領域に引き込まれる障子と、前記障子が案内されるレールを備えた下枠と、を有し、前記下枠の上方に当該下枠と間隔を隔てて、前記壁部側から前記レール側に向かって突出し、前記壁部と前記レールとの間の前記下枠上の水を表面張力により前記壁部側に引き寄せる引水突出部と、前記下枠と前記引水突出部との間の空間と前記出入口側の前記下枠上の空間とを連通する連通部と、を有し、前記下枠の上面は、前記レールより浴室側が前記浴室側に向かって高さが低くなる傾斜が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室の出入口を開閉自在に設けられた障子を有する浴室建具に関する。
【背景技術】
【0002】
浴室の出入口を開閉自在に設けられた障子を有する浴室建具としては、浴室の出入口の位置よりも浴室の外側に引き戸の引き込み領域を備えた枠体を有する浴室建具が知られている。このような浴室建具は、引き込み領域の浴室側に設けられている防水性の内装パネルが、浴室建具の下枠に固定されている。また、下枠には、内装パネルの下方に見付け方向の全長に亘って排水溝が設けられており、引き込み領域に進入した水を、排水溝を介して下枠内から浴室側へ排出することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−77769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年バリアフリーの観点から住居内に大きな段差が生じないようにすることが望まれている。ところが、浴室建具は、浴室側の水等が浴室外、例えば脱衣室側に進入することを防止するために、浴室側より浴室外側を高くすることが望ましい。また、上記従来の浴室建具のように、下枠の下方に排水溝などの排水構造を備えると、浴室と浴室外側との間にてより大きな高低差を設けなければならないという課題がある。一方、下枠の下方に排水溝等が設けられていない場合には、下枠上に水等が残留し易くなるという課題がある。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、浴室内外の高低差を設けつつも大きな段差を設けることなく、下枠上の水等を容易に排出することが可能な浴室建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために本発明の浴室建具は、浴室内外の境界に設けられ前記浴室の出入口を開閉自在に設けられ、前記出入口を開く際に、前記出入口と隣接する壁部の脱衣室側に設けられた引き込み領域に引き込まれる障子と、前記障子が案内されるレールを備えた下枠と、を有し、前記下枠の上方に当該下枠と間隔を隔てて、前記壁部側から前記レール側に向かって突出し、前記壁部と前記レールとの間の前記下枠上の水を表面張力により前記壁部側に引き寄せる引水突出部と、前記下枠と前記引水突出部との間の空間と前記出入口側の前記下枠上の空間とを連通する連通部と、を有し、前記下枠の上面は、前記レールより浴室側が前記浴室側に向かって高さが低くなる傾斜が設けられていることを特徴とする浴室建具である。
【0007】
このような浴室建具によれば、壁部とレールとの間の下枠上に進入した水は、壁部側に設けられ、下枠の上方に間隔を隔ててレール側に向かって突出した引水突出部により、水の表面張力にて、壁部側に位置する下枠と引水突出部との間の空間に引き寄せられる。このため、水等が下枠上にて離れて残留し難く、下枠と引水突出部との間の空間内にて繋がった状態で水を溜めることが可能である。このとき、下枠と引水突出部との間の空間は、上方に引水突出部が配置されるため、水が視認されにくくなる。このため、下枠上の水を溜めつつも見映えの良い浴室建具を提供することが可能である。
【0008】
また、下枠と引水突出部との間の空間と出入口側の下枠上の空間とを連通する連通部を有しているので、下枠と引水突出部との間の空間に溜めた水を出入口側の下枠上に排出することが可能である。
【0009】
さらに、下枠の上面は、レールより浴室側が浴室側に向かって高さが低くなるように傾斜しているので、浴室内外の間にて大きな段差を設けることなく高低差を設けることが可能である。そして、壁部とレールとの間の下枠上に進入した水は、下枠上に設けられた傾斜により壁部側に流れやすくなるため、壁部とレールとの間の下枠上に進入した水を下枠と引水突出部との間の空間に引き寄せることが可能である。また、下枠と引水突出部との間の空間に溜まった水が連通部を通して出入口側の下枠上に排出する際にも、連通部から水が排出され易くなる。このため、下枠の上面の排水性を向上させることが可能である。
【0010】
かかる浴室建具であって、前記壁部を構成して前記出入口を形成する縦骨を有し、前記縦骨は、前記浴室外側に向けて突出され、閉じられた前記障子の戸尻框に当接されて前記縦骨と前記戸尻框との間を止水する止水部材を有しており、前記連通部として、前記縦骨の前記止水部材より前記浴室側に、前記壁部側と前記出入口側とを連通する開口が設けられていることが望ましい。
【0011】
このような浴室建具によれば、壁部を構成する縦骨に設けられて、障子の戸尻框に当接して止水する止水部材が設けられているので、縦骨と障子の戸尻框との間を止水して浴室外側への水の進入を防止することが可能である。また、縦骨には、連通部として止水部材より浴室側に、壁部側と出入口側とを連通する開口が設けられているので、縦骨と障子の戸尻框との間の止水状態を維持したままで、下枠と引水突出部との間の空間に溜まった水が連通部としての開口を通して出入口側の下枠上に排出することが可能である。
【0012】
かかる浴室建具であって、前記連通部は、前記開口の前記出入口側にて当該開口と繋がって、前記水を前記浴室側に導水する浴室側導水部を有する導水部材を有していることが望ましい。
【0013】
このような浴室建具によれば、連通部は開口の出入口側にて当該開口と繋がる浴室側導水部を有する導水部材を有しているので、下枠と引水突出部との間の空間に溜まった水を浴室側に導水してより効果的に排出することが可能である。
【0014】
かかる浴室建具であって、前記壁部は、壁面を形成する面材と、前記下枠に取り付けられるとともに前記面材の下端を保持する壁下枠を有し、前記引水突出部は、前記壁下枠に設けられており、前記開口は、前記縦骨の前記出入口側に偏らせて設けられており、前記導水部材は、前記開口の前記壁部側にて当該開口と、前記下枠と前記引水突出部との間を繋ぎ、前記下枠と前記引水突出部との間の空間の前記水を、前記開口側に導水する壁部側導水部を有することが望ましい。
【0015】
このような浴室建具によれば、導水部材が、縦骨の出入口側に偏らせて設けられている開口の壁部側にて当該開口と、下枠と引水突出部との間を繋ぐ壁部側導水部を有しているので、下枠と引水突出部との間の空間の水が、引水突出部と開口との間で途切れることを防止することが可能である。このため、下枠と引水突出部との間の空間の水を、開口側に確実に導水することが可能である。また、壁部側導水部が、開口と、下枠と引水突出部との間を繋いでいるので、壁下枠の形状を引水突出部のみ開口側に突出させる必要がない。このため、壁下枠を簡単な形状にすることができるとともに、容易に加工することが可能である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、浴室内外の高低差を設けつつも大きな段差を設けることなく、下枠上の水等を容易に排出することが可能な浴室建具を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態に係る浴室建具の縦断面図である。
【図2】本実施形態に係る浴室建具の横断面図である。
【図3】下枠の出入口側の部位を説明するための縦断面図である。
【図4】下枠の壁部側の部位を説明するための縦断面図である。
【図5】下枠の傾斜と連通部材を説明するための斜視図である。
【図6】図6(a)は、縦骨の下端部を下方から見た状態を示す斜視図であり、図6(b)は、縦骨と連通部材にて形成された連通部を下方から見た状態を示す斜視図である。
【図7】浴室建具の下部を脱衣室側から見た斜視図である。
【図8】浴室建具の下部を浴室側から見た斜視図である。
【図9】図9(a)は、連通部材を示す斜視図であり、図9(b)は、連通部材を下方から見た状態を示す斜視図である。
【図10】図10(a)は、レール側への突出量が大きな突出片が設けられている場合を示す縦断面図であり、図10(b)は、下枠上面部にノッチが設けられている場合を示す縦断面図であり、図10(c)は、突出片の下側にモヘアが設けられている場合を示す縦断面図である。
【図11】下枠の変形例を示す縦断面図である。
【図12】複数枚の障子を有する例を説明するための縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係る浴室建具について図面を参照して説明する。
【0019】
本実施形態の浴室建具1は、例えば、図1、図2に示すように、浴室外側となる脱衣室側から見て左側の領域が閉止可能な開口でなる出入口2をなし、右側の領域が壁部3をなして、壁部3の脱衣室側を見付け方向に沿って移動する障子5が、前記出入口2を開閉可能に構成された引き込み戸タイプの建具である。
【0020】
以下の説明においては、建物等に取り付けられた状態の浴室建具1を浴室外側、すなわち脱衣室側から見たときに、上下となる方向を上下方向、左右となる方向を左右方向または見付け方向、浴室内外方向である奥行き方向を見込み方向として示す。また、建具1が備える各部材は、単体の状態であっても建物等に取り付けられた状態にて奥行き方向、左右方向、上下方向となる方向にて方向を特定して説明する。
【0021】
浴室建具1は、浴室内外の境界に設けられる枠体10と、枠体10の浴室外側の部位にて見付け方向に移動可能に設けられ、枠体10における見付け方向の約半分の領域を開閉自在に設けられた障子5と、枠体10が有する下枠14に見付け方向の全域に亘って設けられ、下枠14と障子5との間を止水する下シール材22と、壁部3と障子5との間を止水する止水部材としての縦シール材32と、下枠14の壁部3側と出入口2側とを連通する連通部50を構成する連通部材51と、を有している。
【0022】
枠体10は、左右の縦枠11、12と、上下の横枠13、14と、左右の縦枠11、12のほぼ中央に設けられた縦骨20と、を有している。縦骨20は、見込み方向において左の縦枠11の幅のほぼ半分の幅を有し、浴室内側に設けられており、右の縦枠12は見込み方向において左の縦枠11の幅のほぼ半分の幅を有し、浴室外側に設けられている。
【0023】
そして、縦骨20の浴室外側の部位と右側の縦枠12の浴室側の部位とは、見込み方向における中央近傍にて、見付け方向に対向するように配置されており、この対向する部位にて端部が支持されて、壁部3の浴室外側となる脱衣室側の壁面21aをなす面材21が設けられている。
【0024】
下枠14は、躯体(不図示)に支持されるとともに、図1に示すように、脱衣室側に設けられた額縁30と浴室に設けられた防水パン35との間に架け渡されている。
【0025】
下枠14は、レール17dが設けられている下枠本体16と、図4に示すように、下枠本体16に固定され、出入口2と隣接する壁部3(図2)の脱衣室側の壁面21aを形成する面材21の下端が挿入される壁下枠15とを有している。
【0026】
下枠本体16は、図3に示すように、額縁30(図1)の上部に配置される額縁覆部19と、上方に突出して障子5を案内するレール17dが設けられている下枠平板部17と、額縁覆部19と下枠平板部17との間には下シール材22が嵌合される下シール材嵌合部18とを有している。
【0027】
額縁覆部19と下シール材嵌合部18の上面とはほぼ同じ高さをなしており、下シール材嵌合部18には下方に窪む嵌合溝18aが設けられている。
【0028】
下枠平板部17の脱衣室側の端部は、額縁覆部19及び下シール材嵌合部18の上面より僅かに低い位置にて下シール材嵌合部18と繋がっている。ここで、下枠平板部17の脱衣室側の端部と、額縁覆部19及び下シール材嵌合部18の上面との高さの差は、例えば、住宅性能表示において5等級として認定される段差の高さである5mm以下に設定されている。
【0029】
下枠平板部17は、図5に示すように、脱衣室側から見て縦骨20より左側の出入口2側の部位が浴室に至るように形成されており、縦骨20より右側の壁部3側の部位は壁部3の脱衣室側の壁面21aをなす面材21の下端が挿入される壁下枠15と内側シール材31を介して突起17gが係合している。すなわち、下枠平板部17は、見込み方向の長さが、出入口2側が長く、壁部3側が短く形成されている。
【0030】
下枠平板部17の出入口2側の部位は、レール17dが脱衣室側にて突出している下枠上面部17aと、下枠上面部17aの浴室側端部から垂設された鉛直壁部17bと、鉛直壁部17bの下端から水平方向に向かって脱衣室側に延出された延出部17cと、を有している。
【0031】
下枠平板部17の壁部3側の部位は、浴室側の端部より脱衣室側に下方に垂設されて壁下枠15がビス止めされる壁下枠取付部17eが設けられている。すなわち、下枠平板部17の壁部3側の部位は、浴室側の端部が、壁下枠取付部17eより浴室側に突出している。
【0032】
下枠上面部17aのレール17dは、当該レール17d上に移動可能に配置された障子5の下框5aと下シール材嵌合部18とが僅かに間隔を隔てるように配置されており、レール17dに案内されて移動する障子5は、左側に移動されて浴室の出入口2を閉止し、右側に移動されて壁部3の脱衣室側に引き込まれるとともに、浴室の出入口2を開放するように構成されている。すなわち、下枠平板部17の壁部3側の部位の領域が、障子5の引き込み領域に相当する。
【0033】
そして、下枠上面部17aは、レール17dと下シール材嵌合部18との間の下枠上面部17aがほぼ水平に形成され、レール17dより浴室側には、脱衣室側から浴室側に向かって高さが低くなる傾斜が設けられた傾斜部17fが設けられている。傾斜部17fは、出入口2の見込み方向において、例えば壁部3の厚さのほぼ半分の位置にて、互いに傾斜が異なる2つの部位を有しており、傾斜部17fの脱衣室側の部位である脱衣室側傾斜部17iの傾斜の方が、傾斜部17fの浴室側の部位である浴室側傾斜部17jの傾斜より小さく形成されている。ここで、傾斜部17fは、例えば、水のレール17d側へ進入をより効果的に抑えるために、浴室側では傾斜を大きくしつつも傾斜が大きくなり過ぎて段差とならない角度とし、脱衣室側は浴室側より緩やかな傾斜をなすように形成されている。
【0034】
そして、下枠平板部17の浴室側は、浴室の床をなす防水パン35(図1)の脱衣室側に設けられた溝部35aに鉛直壁部17bと延出部17cとが収容されている。
【0035】
防水パン35の溝部35aは、出入口2と隣接する壁部3と見付け方向に沿って並べて設けられ、浴室側の内壁面33aと下枠平板部17の鉛直壁部17bの浴室側の面がほぼ面一になるように構成されている。そして、延出部17cは溝部35aの底35bに載置されて、鉛直壁部17bが溝部35aの浴室側の壁35cと対向するように配置され、下枠上面部17aと鉛直壁部17bとの繋がった部位と、浴室の床をなす防水パン35の上面とはほぼ同じ高さになるように構成されている。
【0036】
壁下枠15は、図4に示すように、縦骨20及び右縦枠12と繋がった、面材21の端部の収容部15bを有する壁下枠本体15aと、壁下枠本体15aの下側に設けられ、下枠平板部17の壁部3側の部位が挿入される、脱衣室側に開放された凹部15cと、凹部15c内に内側シール材31を保持するためのシール材嵌合部15dと、壁下枠本体15aの下端から凹部15cに挿入された下枠平板部17の上方に、レール17d側に向かって突出された引水突出部としての突出片15eと、凹部15cから下方に垂設されて下枠本体16の壁下枠取付部17eにビス止めされる壁下枠固定部15fと、を有している。
【0037】
壁下枠15は、壁下枠固定部15fが、下枠本体16の壁下枠取付部17eにビス止めされると、下枠平板部17の突起17gが壁下枠15の凹部15cに入り込むとともに、凹部15c内に設けられている内側シール材31を圧縮するように内側シール材31に当接される。これにより、下枠上面部17aにおける壁部3の脱衣室側に進入した水は、壁部3側から下方に流れることなく壁下枠15に沿って、下枠上面部17aと突出片15eの下面との間の空間に溜まるように構成されている。
【0038】
また、下枠上面部17a上には、上方に間隔を隔ててレール17d側に向かって突出された突出片15eは、突出片15eの先端と下枠上面部17aとの距離が2〜3mmに設定されている。このため、壁部3とレール17dとの間、すなわち、引き込み領域に進入した水が、下枠上面部17aの傾斜により壁部3側に導かれ、突出片15eの先端に達すると、水の表面張力により壁部3側に引き寄せられるように構成されている。
【0039】
下シール材22は、下枠本体16の下シール材嵌合部18に設けられた嵌合溝18aに嵌合される嵌合部22aと、嵌合部22aから鉛直方向に立接されて脱衣室側への水の進入を防止する水返し部22bと、嵌合部22aの上端から浴室側に延出されて障子5の下框5aに摺接される障子側止水部22cと、を有している。そして、障子5がレール17dに沿って移動する間には、下枠14に設けられた下シール材22の障子側止水部22cが下框5aに脱衣室側から摺接するように構成されている。
【0040】
縦骨20は、浴室の内壁33と繋がった面を有する浴室側壁部20aと、浴室の出入口2を形成し浴室側壁部20aの出入口2側の端から脱衣室側に延びる出入口側壁部20bと、出入口側壁部20bの脱衣室側の端から右縦枠12の方向に延出された脱衣室側壁部20cと、脱衣室側壁部20cの右縦枠12側の端部に設けられた面材支持部20dと、脱衣室側壁部20cの出入口側に偏らせて配置され、脱衣室側に向かって突出された縦シール材嵌合部20gと、縦シール材嵌合部20gの脱衣室側の端部から右縦枠方向に延出された引き寄せ片20hとを有している。
【0041】
面材支持部20dは、面材21の浴室側の面21bが当接される面材当接部20eと、面材当接部20eの出入口2側に設けられ面材21を脱衣室側から支持する押縁23が嵌合される押縁嵌合部20fと、を有している。この面材支持部20dは、右縦枠12に設けられて左右方向が反転した対称形状に形成された面材支持部12aとともに、押縁23が嵌合されて面材21を支持している。
【0042】
脱衣室側壁部20cに設けられた縦シール材嵌合部20gは、脱衣室側壁部20cの出入口2側の端部に、上下方向に沿って、障子5が有する戸尻框5bの浴室側の面に当接される縦シール材32が嵌合される嵌合溝部20iが、脱衣室側壁部20cから脱衣室側に延出された延出部20jを介して設けられている。
【0043】
縦骨20は、下端において、浴室側壁部20a、出入口側壁部20b、脱衣室側壁部20c、及び、面材支持部20dが、縦シール材嵌合部20g、及び、引き寄せ片20hより下方に長く形成されている。そして、下枠14に縦骨20が接合されると、縦シール材嵌合部20g、及び、引き寄せ片20hの下端が下枠上面部17aに当接されるように構成されている。また、縦シール材嵌合部20gの浴室側となる延出部20jの下端には、図6に示すように、脱衣室側壁部20cと嵌合溝部20iとの間が上方に切り欠かれた切欠部20kが形成されており、延出部20jには、切欠部20kとともに、下枠上面部17a上において壁部3側と出入口2側とを連通する連通部50を形成する導水部材としての連通部材51が取り付けられるように構成されている。ここで、縦骨20と下枠14とが接合された際に、下枠上面部17aと切欠部20kとで形成される開口が、縦骨20の縦シール材32より浴室側に、壁部3側と出入口2側とを連通する連通部50をなす開口に相当する。
【0044】
連通部材51は、図5、図7、図8に示すように、脱衣室側壁部20cの脱衣室側にて脱衣室側壁部20cに沿って設けられ、縦骨20の切欠部20kの壁部3側と繋がるように形成された壁部側導水部52と、出入口側壁部20bの出入口側に出入口側壁部20bに沿って設けられ、縦骨20の切欠部20kの出入口側と繋がるように形成された浴室側導水部としての出入口側導水部53と、図6、図9に示すように、壁部側導水部52と出入口側導水部53とを連結し切欠部20kと係合される連結部54とを有している。
【0045】
壁部側導水部52は、脱衣室側壁部20cと見込み方向に、突出片15eの突出量とほぼ同じ間隔を隔てて脱衣室側に設けられた壁部側鉛直壁52aと、壁部側鉛直壁52aの上端から浴室側に延出され壁部側鉛直壁52aと脱衣室側壁部20cとの間を覆うように形成された壁部側上部52bとを有している。
【0046】
出入口側導水部53は、出入口側壁部20bの見付け方向の出入口側に配置され、壁部側導水部52とほぼ同様に出入口側壁部20bと間隔を隔てた出入口側鉛直壁53aと、出入口側鉛直壁53aの上端から出入口側壁部20b側に延出され出入口側鉛直壁53aと出入口側壁部20bとの間を覆うように形成された出入口側上部53bとを有している。出入口側鉛直壁53aは、脱衣室側において湾曲して先端が縦骨20の縦シール材嵌合部20gに近接するとように形成されている。
【0047】
連結部54は、縦骨20の下側にて凹部に入り込み壁部側上部52bと出入口側上部53bとを繋ぐ上部連結部54aと、上部連結部54aから上方に延出されて縦骨20の延出部20jに挿入される連結挿入部54bとを有している。
【0048】
すなわち、連通部材51は、壁部3側にて上方と脱衣室側を区画する断面L字状の部位と下枠上面部17aと脱衣室側壁部20cとが切欠部20kに繋がる流路を形成し、切欠部20kに挿入されている連結部54と下枠上面部17aの間を介して、出入口2側にて上方と脱衣室側及び出入口側を区画する断面L字状の部位と下枠上面部17aと出入口側壁部20bとが浴室に向かう流路を形成している。このため、壁下枠15の突出片15eに引き込まれた水を、連通部材51を介して浴室側に導くように形成されている。このとき、出入口側導水部53の出入口側鉛直壁53aの浴室側における端部は、傾斜部17fの傾きが変わる境界部分に位置しているため、下枠上面部17aと突出片15eの下面との間の空間に溜まった水が連通部材51を通って連通部材51の浴室側の端部に至ると、傾斜部17fの傾斜の変化により浴室側に引き寄せられて排水される。
【0049】
本実施形態の浴室建具1によれば、壁部3とレール17dとの間の下枠上面部17a上に進入した水は、壁部3側に設けられ、下枠14の上方に間隔を隔ててレール17d側に向かって突出した突出片15eにより、水の表面張力にて、壁部3側に位置する下枠上面部17aと突出片15eの下面との間の空間に引き寄せられる。このため、水等が壁部3とレール17dとの間の下枠上面部17a上にて離れて残留し難く、下枠上面部17aと突出片15eの下面との間の空間内にて繋がった状態で水を溜めることが可能である。このとき、下枠上面部17aと突出片15eの下面との間の空間は、上方に突出片15eが配置されるため、水が視認されにくくなる。このため、下枠上面部17aの水を溜めつつも見映えの良い浴室建具1を提供することが可能である。
【0050】
また、下枠上面部17aと突出片15eの下面との間の空間と出入口2側の下枠上面部17aの空間とを連通する連通部50を有しているので、下枠上面部17aと突出片15eの下面との間の空間に溜めた水を出入口2側の下枠上面部17a上に排出することが可能である。
【0051】
さらに、下枠上面部17aの上面は、レール17dより浴室側が浴室側に向かって高さが低くなるように傾斜しているので、浴室と脱衣室との間にて大きな段差を設けることなく高低差を設けることが可能である。そして、壁部3とレール17dとの間の下枠上面部17a上に進入した水は、下枠上面部17aに設けられた傾斜により壁部3側に流れやすくなるため、壁部3とレール17dとの間の下枠上面部17a上に進入した水を下枠上面部17aと突出片15eの下面との間の空間に引き寄せることが可能である。
【0052】
また、出入口側導水部53の出入口側鉛直壁53aの浴室側における端部が、傾斜部17fの傾きが変わる境界部分に位置するように構成したので、下枠上面部17aと突出片15eの下面との間の空間に溜まり連通部材51を通って連通部材51の浴室側の端部に至った水を、傾斜部17fの傾斜の変化により浴室側に引き寄せて、効果的に排水することが可能である。このため、下枠上面部17aの上面の排水性を向上させることが可能である。
【0053】
また、壁部3を構成する縦骨20に設けられて、障子5の戸尻框5bに当接して止水する縦シール材32が設けられているので、縦骨20と障子5の戸尻框5bとの間を止水して脱衣室側への水の進入を防止することが可能である。また、縦骨20には、連通部50として縦シール材32より浴室側に、壁部3側と出入口2側とを連通する切欠部20kが設けられているので、縦骨20と障子5の戸尻框5bとの間の止水状態を維持したままで、下枠上面部17aと突出片15eの下面との間の空間に溜まった水が連通部50を通して出入口2側の下枠上面部17a上に排出することが可能である。
【0054】
また、連通部50は、下枠上面部17aと切欠部20kで形成される開口の出入口2側にて当該開口と繋がる出入口側導水部53を有する連通部材51を有しているので、下枠上面部17aと突出片15eの下面との間の空間に溜まった水を浴室側に導水してより排出し易くすることが可能である。
【0055】
また、連通部材51が、縦骨20の出入口2側に偏らせて設けられている下枠上面部17aと切欠部20kで形成される開口の壁部3側にて当該開口と、下枠上面部17aと突出片15eの下面との間の空間との間を繋ぐ壁部側導水部52を有しているので、下枠上面部17aと突出片15eの下面との間の空間の水が、突出片15eと、下枠上面部17aと切欠部20kで形成される開口との間で途切れることを防止することが可能である。このため、下枠上面部17aと突出片15eの下面との間の空間の水を、下枠上面部17aと切欠部20kで形成される開口側に確実に導水することが可能である。また、壁部側導水部52が、下枠上面部17aと切欠部20kで形成される開口と、下枠上面部17aと突出片15eとの間を繋いでいるので、壁下枠15の形状を突出片15eのみ開口側、すなわち、縦シール材嵌合部20g側に突出させる必要がない。このため、壁下枠15を簡単な形状にすることができるとともに、容易に加工することが可能である。
【0056】
上記実施形態においては、突出片15eのレール17d側への突出量が比較的小さな例について説明したが、図10(a)に示すように、突出片15eの先端が、下枠上面部17aと接触することなく、水が内側シール材31側に引き寄せられれば、よりレール17d側に突出していても良い。この場合には、下枠上面部17a上のより多くの水を、下枠上面部17aと突出片15eの下面との間の空間に溜めることが可能である。また、下枠上面部17a上に存在する水が、より広い範囲において突出片15eに覆われるので、下枠上面部17a上の水をより視認されにくくすることが可能である。
【0057】
また、上記実施形態においては、突出片15eにて、下枠上面部17aの水を、下枠上面部17aと突出片15eの下面との間の空間に引き寄せる例について説明したが、図10(b)に示すように、突出片15eと対向する下枠上面部17aにノッチ17lを設けることにより、下枠上面部17aと突出片15eの下面との間の空間に引き寄せた水を、見付け方向に繋がるように留めることが可能である。また、突出片15eの下側に、水をより引き寄せやすくする引導部材として、例えば、繊維が起毛状(ブラシ状)をなすモヘア36を設けてもよい。このとき、突出片15eの下面には、モヘア36を取り付けるためのモヘア取付部15gが設けられている。この場合には、下枠上面部17a上の水がモヘア36と接触すると、水は下枠上面部17a状に留まろうとする表面張力が破壊されてモヘア36に吸収されるため、水を下枠上面部17aと突出片15eの下面との間の空間に、より効果的に引き寄せることが可能である。
【0058】
上記実施形態においては、下枠平板部17の出入口2側の部位における浴室側の端部が、浴室の内壁面33aより浴室側により突出することなく溝部35aに収容される例について説明したが、図11に示すように、下枠平板部17の出入口2側の部位における浴室側の端部が、浴室内側に突出して溝部35aを越えて浴室内側に至るカバー突起17kが設けられていてもよい。この場合には、下枠14に設けられたカバー突起17kにより溝部35aが覆われるので、より見映えの良い浴室建具1を提供することが可能である。
【0059】
また、上記実施形態においては、出入口2を開閉可能な障子5を1枚備えた浴室建具1の例について説明したが、図12に示すように、下枠14が、見込み方向に並べて設けられた複数のレール17dを有しており、この複数のレール17dの各々に沿って移動可能な障子5が設けられていてもよい。
【0060】
また、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0061】
1 浴室建具、2 出入口、3 壁部、5 障子、5b 戸尻框、14 下枠、
15 壁下枠、15e 突出片、17 下枠平板部、17a 下枠上面部、
17d レール、17f 傾斜部、20 縦骨、20k 切欠部、21 面材、
22 下シール材、32 縦シール材、35 防水パン、50 連通部、
51 連通部材、52 壁部側連通部、53 出入口側連通部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室内外の境界に設けられ前記浴室の出入口を開閉自在に設けられ、前記出入口を開く際に、前記出入口と隣接する壁部の脱衣室側に設けられた引き込み領域に引き込まれる障子と、
前記障子が案内されるレールを備えた下枠と、
を有し、
前記下枠の上方に当該下枠と間隔を隔てて、前記壁部側から前記レール側に向かって突出し、前記壁部と前記レールとの間の前記下枠上の水を表面張力により前記壁部側に引き寄せる引水突出部と、
前記下枠と前記引水突出部との間の空間と前記出入口側の前記下枠上の空間とを連通する連通部と、
を有し、
前記下枠の上面は、前記レールより浴室側が前記浴室側に向かって高さが低くなる傾斜が設けられていることを特徴とする浴室建具。
【請求項2】
請求項1に記載の浴室建具であって、
前記壁部を構成して前記出入口を形成する縦骨を有し、
前記縦骨は、前記浴室外側に向けて突出され、閉じられた前記障子の戸尻框に当接されて前記縦骨と前記戸尻框との間を止水する止水部材を有しており、
前記連通部として、前記縦骨の前記止水部材より前記浴室側に、前記壁部側と前記出入口側とを連通する開口が設けられていることを特徴とする浴室建具。
【請求項3】
請求項2に記載の浴室建具であって、
前記連通部は、前記開口の前記出入口側にて当該開口と繋がって、前記水を前記浴室側に導水する浴室側導水部を有する導水部材を有していることを特徴とする浴室建具。
【請求項4】
請求項3に記載の浴室建具であって、
前記壁部は、壁面を形成する面材と、前記下枠に取り付けられるとともに前記面材の下端を保持する壁下枠を有し、
前記引水突出部は、前記壁下枠に設けられており、
前記開口は、前記縦骨の前記出入口側に偏らせて設けられており、
前記導水部材は、前記開口の前記壁部側にて当該開口と、前記下枠と前記引水突出部との間を繋ぎ、前記下枠と前記引水突出部との間の空間の前記水を、前記開口側に導水する壁部側導水部を有することを特徴とする浴室建具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−202088(P2012−202088A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66968(P2011−66968)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(390005267)YKK AP株式会社 (776)
【Fターム(参考)】