説明

浴室用洗い場床

【課題】積層構造と単層構造の両方に利用でき、壁パネルと表面材との間や表面材と基材との間のシール切れを防止できる浴室用洗い場床を提供する。
【解決手段】基材11と、前記基材の上に設けられた表面材30であって、縁部32と、前記縁部よりも内側に設けられ、前記基材に対向する側が後退した凹部31と、を有し、前記縁部において前記基材と接着された表面材と、前記基材と前記凹部との間に設けられたクッション材20と、前記基材及び前記縁部の少なくともいずれかの直上に立設される壁パネル80と前記縁部との間を水密的に塞ぐシール部50と、を備えたことを特徴とする浴室用洗い場が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、浴室用洗い場床に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、浴室ユニットに用いられる洗い場床として、例えば基材とクッション層と表面材とを積層した構造のものがある。
【0003】
例えば、特許文献1(特許第4186127号公報)には、基材に凹部を設け、その凹部内にクッション層を積層し、凹部の縁上に表面材の端部を積層する構造が開示されている。これにより、洗い場床の周囲に設けられる壁パネルと表面材との間や、表面材と基材との間のシール切れが防止できる。しかしながら、このような基材は、凹部が設けられているために、クッション層及び表面材と組み合わせない単層の洗い場床としては用いることができず、積層の床と単層の床とで兼用できず、改良の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4186127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の態様は、積層構造と単層構造の両方に利用でき、壁パネルと表面材との間や表面材と基材との間のシール切れを防止できる浴室用洗い場床を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、基材と、前記基材の上に設けられた表面材であって、縁部と、前記縁部よりも内側に設けられ、前記基材側に対向する側の面が前記縁部に対して凹状に形成された凹部と、を有し、前記縁部において前記基材と接着された表面材と、前記基材と前記凹部との間に設けられたクッション材と、前記基材及び前記縁部の少なくともいずれかの直上に立設される壁パネルと前記縁部との間を水密的に塞ぐシール部と、を備えたことを特徴とする浴室用洗い場床が提供される。
【0007】
本発明の別の一態様によれば、周縁に立ち上がり形成された壁パネルを載置するための水返し部を有する基材と、前記基材の上に設けられた表面材であって、縁部と、前記縁部よりも内側に設けられ、前記基材側に対向する側の面が前記縁部に対して凹状に形成された凹部と、を有し、前記縁部において前記基材と接着された表面材と、前記基材と前記凹部との間に設けられたクッション材と、前記水返し部と前記縁部との間を水密的に塞ぐシール部と、を備えたことを特徴とする浴室用洗い場床が提供される。
【0008】
本発明の別の一態様によれば、洗い場側と浴槽側とを区切るための上方に突出した土手部を有する基材と、前記洗い場側に位置する前記基材の上に設けられた表面材であって、縁部と、前記縁部よりも内側に設けられ、前記基材側に対向する側の面が前記縁部に対して凹状に形成された凹部と、を有し、前記縁部において前記基材と接着された表面材と、前記基材と前記凹部との間に設けられたクッション材と、前記土手部と前記縁部との間を水密的に塞ぐシール部と、を備えたことを特徴とする浴室用洗い場床が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の態様によれば、積層構造と単層構造の両方に利用でき、壁パネルと表面材との間や表面材と基材との間のシール切れを防止できる浴室用洗い場床が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態に係る浴室用洗い場床を例示する模式的断面図である。
【図2】図1のA部を拡大して例示する模式的断面図である。
【図3】第1の実施形態に係る変形例の浴室用洗い場床の要部を例示する模式的断面図である。
【図4】第1の実施形態に係る変形例の浴室用洗い場床の要部を例示する模式的断面図である。
【図5】第1の実施形態に係る変形例の浴室用洗い場床の要部を例示する模式的断面図である。
【図6】第1の実施形態に係る別の変形例の浴室用洗い場床を例示する模式的断面図である。
【図7】実施例の浴室用洗い場床を例示する模式的断面図である。
【図8】実施例の浴室用洗い場床の一部を例示する模式的断面図である。
【図9】第2の実施形態に係る浴室用洗い場床を例示している。
【図10】第2の実施形態に係る変形例の浴室用洗い場床を例示している。
【図11】第3の実施形態に係る浴室用洗い場床を例示する模式的断面図である。
【図12】図11のA部を拡大して例示する模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1の発明は、基材と、前記基材の上に設けられた表面材であって、縁部と、前記縁部よりも内側に設けられ、前記基材側に対向する側の面が前記縁部に対して凹状に形成された凹部と、を有し、前記縁部において前記基材と接着された表面材と、前記基材と前記凹部との間に設けられたクッション材と、前記基材及び前記縁部の少なくともいずれかの直上に立設される壁パネルと前記縁部との間を水密的に塞ぐシール部と、を備えたことを特徴とする浴室用洗い場床である。
この浴室用洗い場床によれば、基材にクッション材を格納するための凹部を形成する必要がないので、積層構造と単層構造の両方に利用できる。また、シール部は、壁パネルと、上下方向に変形しにくい縁部と、の間に配置されるので、壁パネルと表面材との間のシール切れを防止できる。そして、表面材に設けられた凹部にクッション材が格納されるため、表面材へ応力が加えられることがなく、表面材と基材との接着強度が高く、これにより、表面材と基材との間のシール切れを防止できる。
【0012】
また、第2の発明は、周縁に立ち上がり形成された壁パネルを載置するための水返し部を有する基材と、前記基材の上に設けられた表面材であって、縁部と、前記縁部よりも内側に設けられ、前記基材側に対向する側の面が前記縁部に対して凹状に形成された凹部と、を有し、前記縁部において前記基材と接着された表面材と、前記基材と前記凹部との間に設けられたクッション材と、前記水返し部と前記縁部との間を水密的に塞ぐシール部と、を備えたことを特徴とする浴室用洗い場床である。
この浴室用洗い場床によれば、基材にクッション材を格納するための凹部を形成する必要がないので、積層構造と単層構造の両方に利用できる。また、シール部は、前記水返し部と、前記縁部と、の間に配置されるので、基材と表面材との間のシール切れを防止できる。そして、表面材に設けられた凹部にクッション材が格納されるため、表面材へ応力が加えられることがなく、表面材と基材との接着強度が高く、これにより、表面材と基材との間のシール切れを防止できる。
【0013】
また、第3の発明は、洗い場側と浴槽側とを区切るための上方に突出した土手部を有する基材と、前記洗い場側に位置する前記基材の上に設けられた表面材であって、縁部と、前記縁部よりも内側に設けられ、前記基材側に対向する側の面が前記縁部に対して凹状に形成された凹部と、を有し、前記縁部において前記基材と接着された表面材と、前記基材と前記凹部との間に設けられたクッション材と、前記土手部と前記縁部との間を水密的に塞ぐシール部と、を備えたことを特徴とする浴室用洗い場床である。
この浴室用洗い場床によっても、基材にクッション材を格納するための凹部を形成する必要がないので、積層構造と単層構造の両方に利用できる。また、シール部は、土手部と、上下方向に変形しにくい縁部と、の間に配置されるので、土手部と表面材との間のシール切れを防止できる。そして、表面材に設けられた凹部にクッション材が格納されるため、表面材へ応力が加えられることがなく、表面材と基材との接着強度が高く、これにより、表面材と基材との間のシール切れを防止できる。
【0014】
また、第4の発明は、第1〜第3の発明のいずれか1つの発明において、前記凹部の底面と、前記縁部の底面とは、下方に向けて拡開した傾斜部によって繋がっていることを特徴とする浴室用洗い場床である。
この浴室用洗い場床によれば、表面材の厚さが急激に変化しないため、表面材の外観不良が起きにくく、また、表面材のピンスポットに集中負荷がかかることがないため、耐久性にも優れる。さらに、洗い場床の硬い部分と軟らかい部分との境界が緩やかに変化するため、使用者は違和感を得にくい。
【0015】
また、第5の発明は、第1〜第4の発明のいずれか1つの発明において、前記凹部の前記基材とは反対の側の面と、前記縁部の前記基材とは反対の側の面と、は連続した面であることを特徴とする浴室用洗い場床である。
この浴室用洗い場床によれば、使用者に違和感を与えることがなく、積層構造と単層構造の両方に利用でき、壁パネルと表面材との間や表面材と基材との間のシール切れを防止できる。
【0016】
また、第6の発明は、第1〜第5の発明のいずれか1つの発明において、前記凹部は、可撓性を有する程度の厚みで形成されていることを特徴とする浴室用洗い場床である。
この浴室用洗い場床によれば、使用者に軟らかい感触を与えることができる。
【0017】
また、第7の発明は、第1〜第6の発明のいずれか1つの発明において、前記表面材は、浴室用洗い場床としての基本性能を満足できる程度の硬質性を有していることを特徴とする浴室用洗い場床である。
この浴室用洗い場床によれば、浴室用洗い場床としての基本性能を発揮しつつ、積層構造と単層構造の両方に利用でき、壁パネルと表面材との間や表面材と基材との間のシール切れを防止できる。
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1〜図12は、本発明の実施形態に係る浴室用洗い場床を例示する模式的断面図である。すなわち、図1は、第1の実施形態に係る浴室用洗い場床を例示している。図2は、浴室用洗い場床の要部を例示しており、図1のA部を拡大して例示している。図3〜図5は、第1の実施形態に係る変形例の浴室用洗い場床の要部を例示している。図6は、第1の実施形態に係る別の変形例の浴室用洗い場床を例示している。図7は、実施例の浴室用洗い場床を例示しており、図8は、実施例の浴室用洗い場床の一部を例示している。図9は、第2の実施形態に係る浴室用洗い場床を例示し、図10は、第2の実施形態に係る変形例の浴室用洗い場床を例示している。図11は、第3の実施形態に係る浴室用洗い場床を例示している。図12は、浴室用洗い場床の要部を例示しており、図11のA部を拡大して例示している。
【0019】
(第1の実施の形態)
図1に表したように、第1の実施形態に係る浴室用洗い場床1aは、基材11とクッション材20と表面材30とシール部50とを備える。
【0020】
下層から、基材11、クッション材20及び表面材30の順に積層される。
【0021】
基材11は、硬質な材料で形成される。すなわち、基材11は、浴室外に湯水を漏出させない防水性、及び浴室壁パネル、天井パネル、風呂椅子、洗面器などの静荷重、使用者の動荷重を受けても撓んだり破損しない強度を有する硬質材料から形成される。基材11は、例えば、FRP(Fiber Reinforced Plastic)等の熱硬化性樹脂、あるいはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂に補強を施したものから形成される。基材11は、表面材30及びクッション材20よりも機械的強度が高い。
【0022】
表面材30は、基材11の上に設けられる。
表面材30は、縁部32と凹部31とを有する。表面材30は、縁部32において、基材11と接着されている。
凹部31は、縁部32よりも内側に設けられた部分であり、表面材30と基材11とを積層した時に、基材11の側に対向する側の面が縁部32に対して凹状に形成された部分である。すなわち、凹部31は、基材11に対向する側が後退した部分であり、凹部31は、表面材30と基材11とを積層した時に、下側に開口している。
【0023】
すなわち、表面材30は、厚肉部32aと、厚肉部32aよりも内側に設けられた薄肉部31aとを有しており、厚肉部32aは上記の縁部32に相当し、薄肉部31aは上記の凹部31に相当する。そして、表面材30の凹部31は、可撓性を有する程度の厚みで形成されている。
【0024】
表面材30は、浴室用洗い場床としての基本性能を満足できる程度の硬質性を有している。すなわち、表面材30は、耐水性、耐薬品性、耐摩耗性、耐衝撃性など、洗い場床表面に要求される基本性能(耐久性)を満足する材料から形成されている。表面材30には、例えば、FRP、PVC(塩化ビニル)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、スチレン・ポリエステル・オレフィン・アクリル系の各種エラストマー、EVA、EPDM、シリコンゴムなどのゴム(硬質)系、あるいはこれらを十分な耐久性が期待できる程度の硬さに調整したもの、あるいはこれらをベースに充填材や強化材を加えた複合材料などが用いられる。但し、これらの材料は一例であって、その他、表面材30の材料としては、浴室の一般的な使用に際し十分な耐久性を有するべく強靱な材料であれば良く、前述したものに限られない。
【0025】
クッション材20は、表面材30の凹部31と基材11との間に設けられる。すなわち、クッション材20は、表面材30の凹部31の内部に格納された状態で、表面材30と基材11との間に挟み込まれる。
【0026】
すなわち、凹部31の領域においては、基材11とクッション材20と表面材30とが積層される。一方、縁部32の領域においては、表面材30の縁部32と基材11との間には、クッション材20は介在せず、基材11と表面材30とが積層される。
【0027】
すなわち、クッション材20の直上に、表面材30の薄肉部31aが積層され、クッション材20が積層されていない基材11の直上に、表面材30の厚肉部32aが積層される。
【0028】
クッション材20には、弾性変形可能であり、例えばウレタン等の発泡体等を用いることができる。すなわち、クッション材20は、基材11及び表面材30よりも弾性変形し易い。
【0029】
表面材30の凹部31は、可撓性を有する程度の厚みで形成されているため、基材11とクッション材20と表面材30とが積層された浴室用洗い場床1aの床面は、使用者に軟らかい感触を与えることができる。
【0030】
一方、シール部50は、壁パネル80と表面材30の縁部32との間を水密的に塞ぐ。 シール部50には、例えばシリコーンなどの常温硬化型の液状樹脂や、硬質な目地材が用いられる。
【0031】
壁パネル80は、洗い場床の周囲に設けられるものであり、基材11及び縁部32の少なくともいずれかの直上に立設される。
【0032】
このような構成の浴室用洗い場床1aによれば、例えば、基材11にクッション材20を格納するための凹部を形成する必要がなく、基材11の浴室側の面(上面)は、例えば平坦にすることができる。従って、このような基材11は、図1に例示したように、クッション材20と表面材30とをその上に積層して、積層構造の浴室用洗い場床1aとしても利用できるし、例えば、クッション材20や表面材30を積層せず、単層の浴室用洗い場床にも利用できる。
【0033】
例えば、基材11とクッション材20と表面材30とを積層した浴室用洗い場床1aは、ソフト感を持った床となる。もし、このような基材11を単層で用いた場合には、ソフト感を有さないハード床として、基材11が利用可能となる。
【0034】
そして、浴室用洗い場床1aにおいては、基材11及び縁部32の少なくともいずれかの直上に立設される壁パネル80と、表面材30の縁部32と、の間は、シール部50によって水密的に塞がれる。
【0035】
この時、壁パネル80は、表面材30の厚肉部32aである縁部32と対向する。
【0036】
例えば、図2に例示したように、浴室用洗い場床1aにおいては、壁パネル80が基材11の直上に立設している。すなわち、基材11の側壁部12の内側の壁パネル載置部13の上に、壁パネル80が載置される。そして、壁パネル80の浴室内側の側面と、表面材30の縁部32(厚肉部32a)の上面と、にシール部50が形成される。表面材30の縁部32(厚肉部32a)は、凹部31(薄肉部31a)よりも上下方向の変形が小さいので、壁パネル80と縁部32と間のシールに外力が加わりにくい。これにより、壁パネルと表面材との間のシール切れを防止できる。
【0037】
また、表面材30に設けられた凹部31にクッション材20が格納されるため、基材11と表面材30との間にクッション材20が挟み込まれることに起因した応力が、表面材30へ加えられることがない。このため、表面材30と基材11との接着に悪影響を与えることがなく、表面材30と基材11との接着強度は高い。これにより、表面材と基材との間のシール切れを防止できる。
【0038】
このように、浴室用洗い場床1aによれば、積層構造と単層構造の両方に利用でき、壁パネルと表面材との間や表面材と基材との間のシール切れを防止できる浴室用洗い場床が提供できる。
【0039】
また、図3に例示したように、変形例の浴室用洗い場床1bにおいては、壁パネル80が基材11の直上に立設し、壁パネル80の下部と、表面材30の縁部32と、の間に隙間がある。この場合には、壁パネル80の下部の側面と、表面材30の厚肉部32aの側面と、が対向する。この場合には、壁パネル80の下部の側面と、表面材30の厚肉部32aの上面及び側面と、にシール部50が形成される。これにより、シール部50が壁パネル80及び縁部32に接触する面積が、浴室用洗い場床1aよりも拡大し、壁パネル80と縁部32と間の水密的な封止の強度はさらに高められる。
【0040】
また、図4に例示したように、別の変形例の浴室用洗い場床1cにおいては、壁パネル80が縁部32の直上に立設している。この場合には、壁パネル80の下面と、表面材30の厚肉部32aの上面と、が対向する。この場合には、壁パネル80の側面と、表面材30の縁部32の上面と、にシール部50が設けられる。縁部32は、薄肉部31aよりも強度が高いので、シール部50による、壁パネル80と縁部32と間の水密的な封止の強度は高い。
【0041】
また、図5に例示したように、別の変形例の浴室用洗い場床1dにおいては、壁パネル80が縁部32の直上に立設し、壁パネル80の下部に凹部がある。この場合には、壁パネル80の下面及び凹部と、表面材30の厚肉部32aの上面と、が対向する。この場合には、壁パネル80の下部の側面及び凹部と、表面材30の縁部32の上面と、にシール部50が設けられる。この場合もシール部50が設けられる縁部32の強度が高いので、壁パネル80と縁部32と間の水密的な封止の強度は高く、さらに、壁パネル80の下部の凹部にもシール部50が設けられ、シール部50と壁パネル80との接触面積が拡大し、さらに強度が高まる。
【0042】
なお、上記の浴室用洗い場床1b〜1dにおいても、表面材30に設けられた凹部31にクッション材20が格納され、表面材30へ応力が加えられることがないので、表面材30と基材11との接着強度は高い。
【0043】
さらに、上記の浴室用洗い場床1a〜1dにおいては、表面材30に設けられた凹部31の内部にクッション材20が格納されるため、表面材30の上面は、段差のない面状にすることができる。すなわち、凹部31の上面(基材11とは反対の側の面)と、縁部32の上面(基材11とは反対の側の面)と、は連続した面である。
これにより、使用者に違和感を与えることがない。
【0044】
ここで、連続した面とは、凹部31と縁部32との境界において、表面材30の上面(基材11とは反対の側の面)に段差がないことを指す。そして、表面材30の上面に、例えば、洗い場床に溜まった水を排水するための各種の形状の溝などが設けられていた場合にも、凹部31の上面と縁部32の上面とは連続した面であり、段差がなければ良い。また、洗い場床に溜まった水を排水するために、洗い場床に傾斜が設けられ、この傾斜に従って表面材30の上面が傾斜を有していても良い。
【0045】
図6に表したように、変形例の浴室用洗い場床1eにおいては、凹部31の底面と、縁部32の底面とは、下方に向けて拡開した傾斜部によって繋がっている。すなわち、表面材30の凹部31凹部31は、凹部31の開口部の側に向けて(すなわち、下方に向けて)、拡開している。これ以外は、浴室用洗い場床1aと同様である。なお、縁部32の底面は、基材11に対向する側の面であり、縁部32の下面である。
【0046】
すなわち、凹部31の側面には、凹部31の下面(基材11に対向し、基材11に対して平行な面)に対して傾斜した傾斜部31sが設けられている。なお、縁部32の下面(基材11に対向し、基材11に対して平行な面)は、凹部31の下面と実質的に平行なので、凹部31の側面の傾斜部31sは、縁部32の下面に対して傾斜している。
【0047】
具体的には、凹部31の開口部の広さが、凹部31の奥に行くに従って小さくなるような傾斜部31sを、凹部31(薄肉部31a)と縁部32(厚肉部32a)との境界に設ける。
【0048】
このように、厚肉部32aと薄肉部31aの間を傾斜状にすることで、表面材30の厚さが急激に変化しないため、表面材30の外観不良(ヒケ等の成形不良)が起きにくい。また、表面材30のピンスポットに集中負荷がかかることがないため、耐久性にも優れる。
【0049】
また、厚肉部32aでは床表面が相対的に硬く、薄肉部31aではクッション材20によって床表面が相対的に軟らかくなるが、傾斜部31sを設けることで、この硬い部分と軟らかい部分との境界が緩やかに変化するため、使用者は違和感を得にくい。もし、厚肉部32aと薄肉部31aとの境界が傾斜状でなく、垂直状である場合には、この境界に当たると違和感を得、特に車椅子などで洗い場床の上を移動した際に顕著となる。これに対し、浴室用洗い場床1dのように厚肉部32aと薄肉部31aとの境界に傾斜部31sを設けることで、この違和感を低減することができる。
なお、傾斜部31sは、図6のように直線状に傾斜するものだけではなく、曲線状に傾斜するものも含む。
【0050】
なお、表面材30の凹部31の傾斜部31sと、基材11と、の間の空間にもクッション材20を挿入しても良い。これにより、厚肉部32aと薄肉部31aとの境界における違和感をさらに低減することができる。なお、この場合には、クッション材20の周縁部には、凹部31の傾斜部31sの傾斜に沿うような傾斜を設けることができ、これにより、クッション材20は、表面材30の凹部31と基材11との間の空間に、この空間からはみ出すことなく、また表面材30に応力を加えることなく、格納できる。
【0051】
なお、このように表面材30の凹部31の側面の傾斜部31sは、上記の浴室用洗い場床1b〜1dのいずれかの場合にも設けることができ、同様の効果を発揮する。
【0052】
(実施例)
本実施形態に係る実施例の浴室用洗い場床について説明する。
図7に表したように、実施例に係る浴室用洗い場床1fにおいては、基材11の上に、凹部31(薄肉部31a)を有する表面材30が積層され、凹部31と基材11との間の空間にクッション材20が挟み込まれて積層されている。表面材30の凹部31の周辺の縁部32(厚肉部32a)において、基材11と表面材30とは接着されている。
【0053】
そして、基材11の周縁において、側壁部12の内側の壁パネル載置部13の上に、壁パネル80が立設される。
そして、シール部50は、壁パネル80と縁部32との間を水密的に塞ぐ。
【0054】
本具体例では、基材11の側壁部12の内側に、側壁部12に沿って内側壁部12aが設けられ、側壁部12と内側壁部12aとの間が、壁パネル載置部13となる。壁パネル80の下部の外側の側面は基材11の側壁部12に密着している。一方、壁パネル80の下部の内側の側面と、基材11の内側壁部12aと、の間は離間しており、この間には、シールの補助剤となる発泡性の充填剤51が充填される。そして、表面材30の縁部32と、壁パネル80の下部の側面と、の間に、シール部50が埋め込まれる。シール部50は、充填剤51を覆うように設けられる。
【0055】
一方、基材11の一方の端には、上方に突出した土手部15が設けられている。そして、表面材30は、土手部15に沿うように設けられ、上方に延在する立ち上がり部33を有している。この立ち上がり部33は、クッション材20が格納される凹部31よりも外側にあり、立ち上がり部33は、縁部32の一部と見なされる。
【0056】
表面材30の凹部31は、薄肉部31aであり、この部分にクッション材20が格納されている。凹部31は、凹部31の開口部に向けて拡開している。すなわち、凹部31には傾斜部31sが設けられている。
【0057】
そして、表面材30の上面は段差がない。すなわち、凹部31の上面(基材11とは反対の側の面)と、縁部32の上面(基材11とは反対の側の面)と、は連続した面である。
【0058】
そして、シール部50は、土手部15の立ち上がり面と、表面材30における土手部15に沿った立ち上がり部33の端部と、の間に配置される。すなわち、シール部50は、土手部15と縁部32との間を水密的に塞いでいる。この場合も、下層にクッション材20が積層された部分とは異なる部分において、表面材30と基材11との水密的な封止が行われるので、シール切れを防止できる。
【0059】
これにより、浴室用洗い場床1fにおいては、積層構造と単層構造の両方に利用でき、壁パネルと表面材との間や表面材と基材との間のシール切れを防止できる。
【0060】
図8は、実施例の浴室用洗い場床1fに設けられる排水口の部分を部分的に例示している。図8に例示したように、浴室用洗い場床1fの排水口8に対応して、基材11には排水口部18が設けられている。排水口部18には、排水口トラップ40が取り付けられる。そして、基材11の排水口部18の上に、表面材30の垂下部38が積層されている。表面材30の垂下部38の厚さは、縁部32の厚さよりも薄い。これにより、垂下部38が基材11の排水口部18の形状に沿って位置合わせされることが容易になる。
【0061】
一方、図7に例示したように、基材11の土手部15に沿って設けられる表面材30の立ち上がり部33における厚さは、縁部32における厚さよりも薄い。これにより、立ち上がり部33が柔軟になり、立ち上がり部33が基材11の土手部15の形状に適合し易くなり、立ち上がり部33と土手部15とにおける基材11と表面材30との接着強度が向上する。そして、立ち上がり部33と土手部15とが位置合わせされ、表面材30と基材11との位置合わせが容易となる。
【0062】
このように、本実施形態に係る浴室用洗い場床においては、クッション材20を格納する凹部31の周りに縁部32が設けられ、凹部31の厚さが縁部32の厚さよりも薄ければ良く、例えば、上記の垂下部38や立ち上がり部33のように、排水口8の部分や、縁部32のさらに外側において、厚さが薄い部分が表面材30に設けられても良い。
【0063】
(第2の実施の形態)
図9に表したように、第2の実施形態に係る浴室用洗い場床2aも、基材11と表面材30とクッション材20とシール部50とを備える。
【0064】
浴室用洗い場床2aにおける基材11は、土手部15を有している。土手部15は、洗い場側と浴槽側とを区切るための上方に突出した部分である。そして、この場合も、基材11は、硬質な材料で形成される。
【0065】
そして、浴室用洗い場床1aと同様に、基材11とクッション材20と表面材30とが積層される。すなわち、表面材30は、縁部32(厚肉部32a)と、縁部32よりも内側に設けられ、基材11に対向する側が後退した凹部31(薄肉部31a)と、を有する。表面材30は、縁部32において、基材11と接着されている。そして、クッション材20は、表面材30の凹部31と基材11との間に設けられる。
【0066】
そして、シール部50は、基材11の土手部15と、表面材30の縁部32との間を水密的に塞ぐ。
【0067】
このような構成の浴室用洗い場床2aにおいても、基材11にクッション材20を格納するための凹部を形成する必要がなく、基材11の上面は、例えば平坦にすることができる。これにより、基材11は、積層構造の浴室用洗い場床2aとしても利用できると同時に、単層構造の浴室用洗い場床にも利用できる。
【0068】
また、浴室用洗い場床2aにおいては、土手部15の側面と、表面材30の縁部32(厚肉部32a)の上面と、にシール部50が形成される。表面材30の縁部32(厚肉部32a)は、凹部31(薄肉部31a)よりも上下方向の変形が小さいので、土手部15と縁部32と間の水密的な封止の強度は高い。これにより、基材11の土手部15と表面材との間のシール切れを防止できる。
【0069】
そして、この場合も、表面材30に設けられた凹部31にクッション材20が格納されるため、基材11と表面材30との間にクッション材20が挟み込まれることに起因した応力が、表面材30へ加えられることがないため、表面材30と基材11との接着強度は高い。これにより、表面材と基材との間のシール切れを防止できる。
【0070】
また、図10に例示したように、変形例の浴室用洗い場床2bにおいては、土手部15と、表面材30の縁部32と、の間に隙間がある。そして、土手部15の側面と、表面材30の縁部32(厚肉部32a)の側面と、が対向する。この場合には、土手部15の側面と、表面材30の縁部32の上面及び側面と、にシール部50が形成される。従って、土手部15及び縁部32に接触するシール部50の面積がより拡大し、土手部15と縁部32と間の水密的な封止の強度はさらに高められる。
【0071】
なお、既に説明したように、縁部32は、土手部15に沿って立ち上がった立ち上がり部33を有することができる。そして、図7に例示した浴室用洗い場床1fのように、シール部50は、土手部15と、縁部32の一部である立ち上がり部33と、の間を水密的に塞ぐように配置されることができる。これにより、下層にクッション材20が積層された部分とは異なる部分において、表面材30と基材11との水密的な封止が行われるので、シール切れを防止できる。
【0072】
(第3の実施の形態)
図11に表したように、第3の実施形態に係る浴室用洗い場床3aも、基材11と表面材30とクッション材20とシール部50とを備える。
【0073】
基材11は、周縁に壁パネル80を載置するための水返し部14を有する。表面材30は、基材11の上に設けられる。表面材30は、縁部32と、縁部32よりも内側に設けられ、基材11側に対向する側の面が縁部32に対して凹状に形成された凹部31と、を有する。縁部32において、表面材30は、基材11と接着される。クッション材20は、基材11と凹部31との間に設けられる。シール部50は、水返し部14と縁部32との間を水蜜的に塞ぐ。
【0074】
なお、本実施形態においても、基材11、表面材30、クッション材20及びシール部50には、既に説明した材料を適用できる。
【0075】
図12に表したように、基材11の周縁に設けられる水返し部14は、例えば、基材11の中央部の上面よりも上方に立ち上がった第1壁部14aと、第1壁部14aよりも外側において、略水平方向に延在する壁パネル載置部14bと、壁パネル載置部14bの外側において、壁パネル載置部14bの上面よりも上方に立ち上がった第2壁部14cと、を有する。そして、壁パネル載置部14bの上に壁パネル80が載置される。
【0076】
そして、本具体例では、水返し部14の一部である第1壁部14aの側壁と、表面材30の縁部32とが、シール部50によって水密的に塞がれている。シール部50は、少なくとも、水返し部14と、縁部32と、の間に配置される。すなわち、シール部50は、少なくとも、水返し部14と縁部32との間の隙間を覆うように設けられる。
【0077】
本実施形態においても基材11には、凹部を形成する必要がない。これにより、浴室用洗い場床3aは、積層構造と単層構造の両方に利用できる。また、シール部50は、水返し部14と、縁部32と、の間に配置されるので、基材11と表面材30との間のシール切れを防止できる。そして、表面材30に設けられた凹部31にクッション材20が格納されるため、表面材30へ応力が加えられることがなく、表面材30と基材11との接着強度が高く、これにより、表面材30と基材11との間のシール切れを防止できる。
【0078】
本具体例においては、表面材30の上面は、壁パネル載置部14bの上面よりも下方に設定されている。これにより、表面材30の上面に存在する水は、水返し部14を超えて水返し部14よりも外側に溢れることが防げる。
【0079】
なお、シール部50の上面の形状は、図12に例示したように凸状でもよく、また凹状でも良く、また、直線状の傾斜面でも良く、任意である。また、図12においては、第1壁部14aと壁パネル載置部14bとの接続部、及び、壁パネル載置部14bと第2壁部14cとの接続部は、直角のコーナー部とされているが、直角でなくても良く、また、コーナー部は丸味を有していても良い。
【0080】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、浴室用洗い場床を構成する、基材、表面材、クッション材及びシール部などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0081】
その他、本発明の実施の形態として上述した浴室用洗い場床を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての浴室用洗い場床も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0082】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0083】
1a〜1f、2a、2b、3a…洗い場床(浴室用洗い場床)、 8…排水口、 11…基材、 12…側壁部、 12a…内側壁部、 13…壁パネル載置部、 14…水返し部、 14a…第1壁部、 14b…壁パネル載置部、 14c…第2壁部、 15…土手部、 18…排水口部、 20…クッション材、 30…表面材、 31…凹部、 31a…薄肉部、 31s…傾斜部、 32…縁部、 32a…厚肉部、 33…立ち上がり部、 38…垂下部、 40…排水口トラップ、 50…シール部、 51…充填材、 80…壁パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の上に設けられた表面材であって、縁部と、前記縁部よりも内側に設けられ、前記基材側に対向する側の面が前記縁部に対して凹状に形成された凹部と、を有し、前記縁部において前記基材と接着された表面材と、
前記基材と前記凹部との間に設けられたクッション材と、
前記基材及び前記縁部の少なくともいずれかの直上に立設される壁パネルと前記縁部との間を水密的に塞ぐシール部と、
を備えたことを特徴とする浴室用洗い場床。
【請求項2】
周縁に立ち上がり形成された壁パネルを載置するための水返し部を有する基材と、
前記基材の上に設けられた表面材であって、縁部と、前記縁部よりも内側に設けられ、前記基材側に対向する側の面が前記縁部に対して凹状に形成された凹部と、を有し、前記縁部において前記基材と接着された表面材と、
前記基材と前記凹部との間に設けられたクッション材と、
前記水返し部と前記縁部との間を水密的に塞ぐシール部と、
を備えたことを特徴とする浴室用洗い場床。
【請求項3】
洗い場側と浴槽側とを区切るための上方に突出した土手部を有する基材と、
前記洗い場側に位置する前記基材の上に設けられた表面材であって、縁部と、前記縁部よりも内側に設けられ、前記基材側に対向する側の面が前記縁部に対して凹状に形成された凹部と、を有し、前記縁部において前記基材と接着された表面材と、
前記基材と前記凹部との間に設けられたクッション材と、
前記土手部と前記縁部との間を水密的に塞ぐシール部と、
を備えたことを特徴とする浴室用洗い場床。
【請求項4】
前記凹部の底面と、前記縁部の底面とは、下方に向けて拡開した傾斜部によって繋がっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の浴室用洗い場床。
【請求項5】
前記凹部の前記基材とは反対の側の面と、前記縁部の前記基材とは反対の側の面と、は連続した面であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の浴室用洗い場床。
【請求項6】
前記凹部は、可撓性を有する程度の厚みで形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の浴室用洗い場床。
【請求項7】
前記表面材は、浴室用洗い場床としての基本性能を満足できる程度の硬質性を有していることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の浴室用洗い場床。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−248890(P2010−248890A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43837(P2010−43837)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】