説明

浴室

【課題】浴室床表面の残水を容易に除去することができ、防汚性を向上させた浴室を提供する。
【解決手段】排水口8を備えた浴室床1と、前記浴室床1に向けて給配水し浴室床1上全面に水膜を形成させる給配水手段2とを有し、浴室床1は表面に撥水機能を有しており、浴室床1上の水が途切れずに連続的に排水口8に排水されることとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、浴室の床として防水性を有するFRP(繊維強化プラスチック)等の材質からなる防水床パンが用いられ、岩肌模様や石目模様をその表面に形成して意匠性を向上させている。しかし、排水性が悪いと、防水床パンの表面に島状に残水し、長時間経過しても自然乾燥しないという問題があった。そこで、直線状の親水部分と直線状の撥水部分とが平行に接して配置され、親水部分が排水口に連続した浴室床(例えば、特許文献1参照)が提案されている。この浴室床は、親水部分に薄い水膜を形成させることで床表面の残水をより短時間で自然乾燥させることできる。また、乾燥昇温した空気を床部材に供給する換気暖房型浴室(例えば、特許文献2参照)も知られている。
【0003】
ところで、床表面の残水は石鹸垢や皮脂、湯垢等の汚染物質を含んでいる場合がある。この場合には特許文献1または特許文献2のように床表面の残水を乾燥させたとしても、床表面から汚染物質を除去することができず、床表面への汚れの付着、これに起因する悪臭等の問題がある。この問題を解決するために、排水口に向かって傾斜し、撥水機能を表面に有する浴室床が知られている。この浴室床は勾配を利用して床表面の残水を排水口に自動排水させるものであるが、体積の小さな水滴は床の勾配だけでは流れきらず床表面にとどまり、結果として汚染物質を十分に除去することができない。
【特許文献1】特開2004−100358号公報
【特許文献2】特開平11−324355号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、浴室床表面の残水を容易に除去することができ、防汚性を向上させた浴室を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の浴室は、上記の課題を解決するために、以下のことを特徴とする。
【0006】
第1には、排水口を備えた浴室床と、前記浴室床に向けて給配水し浴室床上全面に水膜を形成させる給配水手段とを有し、浴室床表面は表面に撥水機能を有しており、浴室床上の水が途切れずに連続的に排水口に排水されることを特徴とする。
【0007】
第2には、第1の発明において、給配水手段は、浴室床を囲む浴室壁の下部に設けられた配水管であることを特徴とする。
【0008】
第3には、第1又は第2の発明において、浴室床は、水に対する接触角が70°以上の撥水機能を表面に有するものであることを特徴とする。
【0009】
第4には、第1ないし第3のいずれかの発明において、浴室床表面に、排水口を中心として放射状に延びる凹溝が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明によれば、浴室床は表面に撥水機能を有していることにより、浴室床上の水が移動しやすくなる。このような撥水機能を表面に有する浴室床に向けて給配水し浴室床上全面に水膜を形成させることで、浴室床上の水が途切れずに連続的に排水口に排水され、浴室床上に水滴がほとんど残らない。したがって、浴室使用後、石鹸垢や皮脂、湯垢等の汚染物質を含む残水が浴室床表面に残っていても、浴室床上全面に水膜を形成するように水を給配水してこれを排水することにより、浴室床表面の残水が給配水した水と共に排水されて石鹸垢や皮脂、湯垢等の汚染物質が効果的に除去されるため、防汚性が向上する。
【0011】
第2の発明によれば、給配水手段を特定することで、上記発明の効果を大きく向上させることができる。
【0012】
第3の発明によれば、浴室床が、水に対する接触角が70°以上の撥水機能を表面に有するものであることにより、浴室床上の水が排水口に向かってより流れやすくなって一層効果的に排水される。したがって、排水後の浴室床上の水滴量はさらに低減したものとなる。
【0013】
第4の発明によれば、浴室床表面に、排水口を中心として放射状に延びる凹溝が形成されていることにより、排水時には、浴室床上の水がこの凹溝を通じて排水口に向かって連続する流路となって排水される。したがって、浴室床上の水がより効果的に排水され、排水後の浴室床上の水滴量はさらに低減したものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、図面に基づいて本発明の実施形態について説明する。
【0015】
図1は本発明の一実施形態に係る浴室の概略構成図であり、図2はその浴室の給配水手段の設置構造を示す断面図である。
【0016】
本実施形態に係る浴室は、図1及び図2に示すように、浴室床1、浴槽3、両側壁4a,4b、外壁5、ドア61を備えた出入口壁6、天井7等で浴室が構成されている。浴室床1には浴槽3側の略中央の位置に排水口8が設けられており、洗体時の汚染水等がこの排水口8から外部に排水されるようになっている。
【0017】
さらに本実施形態に係る浴室は、浴室床1に向けて給配水する給配水手段2を有すると共に、浴室床1は表面に撥水機能を有する。給配水手段2としては、浴室床1上全面に水膜を形成させるものであれば特に限定されるものではなく、水膜の形成方法に応じて適宜選択することができる。水膜の形成方法として、例えば、排水口8の時間当たりの排水量を超える量の水を浴室床1上に給配水することが挙げられる。また、排水口8を閉塞するシャッター等の開閉部材を排水口8に設け、この開閉部材で排水口8を閉じ、その状態で浴室床1全面を覆う量の水を給配水することによっても水膜を形成することができる。したがって、前者の方法で水膜を形成するためには、時間あたり大量の水を給配水することが可能な給配水手段2であることが必要である。例えば、後述するが、大容量の水を供給できる液送ポンプを備えた水タンクが接続された配水管を用いて給配水することが例示される。後者の方法で水膜を形成するためには、浴室床1全面を覆う量の水を給配水できればよいため、例えば、浴室に設置されたシャワーやカランで給配水してもよいし、水を溜めた洗面器等を用いて給配水してもよい。後者の方法で水膜を形成した後、開閉部材を開いて排水口8から浴室床1上の水を排水するが、その排水の間、浴室床1全面にわたって水膜の厚みがほぼ均一な状態で排水されるため、より確実に浴室床1上の水を排水することができる利点がある。
【0018】
いずれの方法においても水膜の厚みは特に制限はなく、水が浴室床上全面に広がって浴室床を覆っていればよい。また浴室床にわたって厚みが均一でなくともよい。
【0019】
本実施形態に係る給配水手段2は、図1及び図2に示すように、浴室床1を囲む両側壁4a,4b及び出入口壁6の下部の壁内に水を供給する硬質塩化ビニル樹脂製の配管22が配設され、その配管22には複数のノズル21が等間隔に斜め下方向、つまり浴室床1に向けて取り付けられ、ノズル21の先端部211から水が広角に噴射されるようになっている。それぞれのノズル21の先端部211は排水口8方向に向けられており、ノズル21の先端部211から噴射された水は浴室床1表面に沿って排水口8方向に流れる。配管22の高さ、配管22に取り付けられるノズル21の数や各ノズル21間の間隔、さらに配管22へのノズル21の取り付け角度等は、ノズル21の先端部211から噴射された水が浴室床1上全面に行き渡るように適宜に調整、設定される。
【0020】
さらに、液送ポンプを備えた水タンク等の水供給部23が配管22に接続されており、液送ポンプを稼動させることによって配管22に水が供給されノズル21の先端部211から噴射される。この水供給部23は排水口の時間当たりの排水量を超える量の水を供給できるものである。また、液送ポンプの稼動は水供給部23に接続された制御部24でおこなわれ、ノズル21の先端部211から噴射された水が浴室床1上全面に行き渡り、浴室床1上全面に水膜が形成されるまで続く。浴室床1上全面に水膜が形成した後、液送ポンプの運転を停止し、水の供給を止める。水の供給を止めると、浴室床1上の水は排水口8からの排水により徐々に減少していく。図2は、ノズル21の先端部211から噴射された水が浴室床1上全面に行き渡り、浴室床1上全面に水膜Bが形成された状態を表している。
【0021】
浴室床1は、上記のとおり、表面に撥水機能を有しているため浴室床1上の水が移動しやすくなっている。よって、浴室床1上全面に覆われた水(水膜)は、排水時、水がつながった状態で引っ張られて排水口8まで容易に到達する、つまり、水が途切れずに連続的に排水されるため、浴室床1上には水残りがほとんどない。これを図3に基づいて説明する。
【0022】
図3(a)は、浴室床1上に島状に残水し、水滴Aが残っている状態を表している。この状態の浴室床1上に給配水手段で水を給配水すると、浴室床1上の水滴Aが給配水した水に吸収されると共に図3(b)に示すように、浴室床1上全面に水膜Bが形成される。水膜B形成後、水の給排水を停止すると、浴室床1上の水は図示していないが図外左側に設置してある排水口からの排水により、浴室床1上の水は徐々に減少していく。浴室床1表面は撥水機能を有しているため浴室床1上の水は移動しやすくなっており、排水口から離れた場所の水であっても、表面張力によって水がつながった状態(水膜が形成された状態)で途切れることなく排水口まで移動して連続的に排水口から排水され、最終的には浴室床1上に水がほとんど残らない。図3(c)は、浴室床1上の水膜Bが途切れることなく排水口に向かって左方向に浴室床1上を移動している状態を表している。
【0023】
したがって、本発明の浴室は、浴室使用後、石鹸垢や皮脂、湯垢等の汚染物質を含む水滴が浴室床表面に残っていても、浴室床上全面に水膜を形成するように水を給配水した後、これを排水することにより、浴室床表面に残っていた水滴が給配水した水と共に排水されて石鹸垢や皮脂、湯垢等の汚染物質を効果的に除去することができ、浴室床表面を洗浄することができる。
【0024】
このように本実施形態に係る浴室の浴室床上の水は途切れずに連続的に排水されるものであるが、例えば、図1に示すように、浴室床1は排水口8が最も低くなるような下り傾斜を有していてもよい。これによって、浴室床1上の水がこの傾斜に沿って流れ、排水口8に向かって集水されやすくなってもいる。床勾配としては0.1°以上5°未満であることが好ましい。0.1°未満では傾斜の効果がほとんど得られず、5°を超える場合には排水口8へ向かう水の流速が速くなりすぎて水が途切れてしまい連続的に排水されない場合があったり、浴室使用者が足を滑らせて転倒する等の危険があるため好ましくない。
【0025】
また、浴室床1表面の撥水機能は、水に対する接触角が70°以上であることが好ましい。これによって、浴室床1上の水が途切れることなく、より一層容易に排水口8まで移動しやすくなる。好適には70°〜90°である。70°未満の場合には、排水時、浴室床1上の水膜が途切れてしまう場合があるため好ましくない。このような撥水機能は、例えば、フッ素系塗料やシリコン系塗料等の撥水性塗料をスプレーコート、リップコート、刷毛塗り等の各種の方法で浴室床1表面に塗布することで実現される。
【0026】
本発明の浴室の別の実施形態として、図4に示すように、浴室床1表面に、排水口8を中心として放射状に延びる凹溝9を設けてもよい。この凹溝9は、排水時、浴室床1上の水がこの凹溝9を通じて排水口8に向かって連続する流路を形成させるためのものである。これによって、浴室床1上の水がより効果的に排水される。このような凹溝9は、例えば、幅2〜10mm、深さ1〜5mmに設定され、断面視形状はU字形やV字形等でもよく特に制限されない。図4では断面視U字形の凹溝9としている。また凹溝9は浴室床1を囲む両側壁や出入口壁まで延びていてもよいし、図4のようにその近傍又は浴室床の中程まで延びるように設けられていてもよい。浴室床1表面上の凹溝9の数は特に制限されるものではないが、凹溝9の数が多すぎると、浴室床1とその上に形成される水膜との接触面積が大きくなり、これに伴って浴室床1上の水の排水時の抵抗が大きくなり、水が途切れてしまう場合があるので好ましくない。このため、浴室床1の大きさにもよるが、例えば5〜10程度の数の凹溝9を設けるようにすれば十分である。
【0027】
上記実施形態では、浴室床を囲む両側壁及び出入口壁の下部にノズルを設置し、三方向から水を噴射しているが、特にこれに限定されるものではない。例えば、排水口と対向する側壁の下部にのみ設置して一方向から水を噴射するようにしてもよい。図1の場合では、出入口壁6の下部にのみ設置して水を噴射するようにしてもよい。ノズルの先端部の形状についても、円形状や幅広形状等、各種形状のものを用いることができる。また、上記実施形態ではノズルの先端部から広角に水を噴射しているが、帯状の水膜を生成するスリットノズルを用いて、浴室床面に沿って帯状の水膜を噴射するようにしてもよい。また、上述したように、排水口を閉塞するシャッター等の閉塞部材で排水口を塞いで水を給配水してもよく、この場合には浴室に設置されたシャワーやカラン、水を溜めた洗面器等を用いて給配水する。さらに給配水される水も、上記実施形態では水タンクから給配水しているが、水道管から給配水してもよいし、浴槽の貯水等を使用することもできる。
【実施例】
【0028】
<実施例1>
松下電工(株)製浴室床材「床ホワイトグレー」(比重1.8、厚み3mm)表面に、関東電化(株)製撥水樹脂「270R」を用いて厚み3μmとなるようにコーティングを施し、撥水機能を表面に有する浴室床を得た。この浴室床表面の水接触角は90°である。
【0029】
浴室床上全面に水膜を形成させるために排水口をシャッターで閉じ、上記浴室床に大量の水をカランで給配水した。浴室床上全面に水膜が形成された後は給配水を停止した。シャッターを開いて排水口から浴室床上の水を排水後、浴室床表面の外観を観察すると共に、浴室床上に残る水滴量を測定した。
<実施例2>
給配水手段として図1及び図2の構成のものを使用し、排水口と対向する位置の壁面下部(図1では出入口壁6の下部)に配水管を設けた。浴室床上全面に水膜を形成させるために、排水口の時間当たりの排水量を超える量の水をこの配水管から浴室床に向けて給配水し、浴室床上全面に水膜が形成した後、液送ポンプの運転を停止して水の供給を止めて浴室床上の水を排水した以外は、実施例1と同様にして浴室床表面の外観を観察すると共に、浴室床上に残る水滴量を測定した。なお、この実施例の排水口は実施例1のような排水口を閉塞するシャッターが設けられていない。
<実施例3>
図4に示した浴室床の構成(浴室床表面に排水口を中心として放射状に延びる凹溝を設けた)とした以外は、実施例1と同様にして浴室床表面の外観を観察すると共に、浴室床上に残る水滴量を測定した。
<実施例4>
図4に示した浴室床の構成(浴室床表面に排水口を中心として放射状に延びる凹溝を設けた)とした以外は、実施例2と同様にして浴室床表面の外観を観察すると共に、浴室床上に残る水滴量を測定した。
<比較例1>
浴室床上全面に水膜を形成させることなく、シャワーで浴室床を散水するにとどめて排水を行った以外は、実施例1と同様にして浴室床表面の外観を観察すると共に、浴室床上に残る水滴量を測定した。
<比較例2>
浴室床上全面に水膜を形成させることなく、洗面器で浴室床を散水するにとどめて排水を行った以外は、実施例2と同様にして浴室床表面の外観を観察すると共に、浴室床上に残る水滴量を測定した。
【0030】
表1に結果を示す。
【0031】
【表1】

【0032】
表1の結果より、表面に撥水機能を有する浴室床上全面に水膜を形成するように水を給配水することで、排水後の浴室床上の水滴量が減少することが確認できた(実施例1〜4)。これにより、浴室使用後、石鹸垢や皮脂、湯垢等の汚染物質を含む水滴が浴室床表面に残っていても、一旦、浴室床上全面に水膜を形成するように水を給配水してこれを排水することにより、浴室床表面に残っていた水滴が給配水した水と共に排水されて石鹸垢や皮脂、湯垢等の汚染物質が除去されるため、防汚性を向上させることが可能であることがわかる。
【0033】
一方で、表面に撥水機能を有する浴室床に給配水していても、浴室床上全面に水膜を形成させることなく散水にとどめた場合には、排水後、浴室床上に多量の水滴が残ることが確認できた(比較例1〜2)。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態に係る浴室の概略構成図である。
【図2】図1の浴室の給配水手段の設置構造を示す断面図である。
【図3】排水時の浴室床上の水の状態を説明するための図である。
【図4】本発明の別の実施形態に係る浴室の浴室床の概略構成図である。
【符号の説明】
【0035】
1 浴室床
2 給配水手段
21 ノズル
211 先端部
22 配管
23 水供給部
24 制御部
8 排水口
9 凹溝
A 水滴
B 水膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水口を備えた浴室床と、前記浴室床に向けて給配水し浴室床上全面に水膜を形成させる給配水手段とを有し、浴室床は表面に撥水機能を有しており、浴室床上の水が途切れずに連続的に排水口に排水されることを特徴とする浴室。
【請求項2】
給配水手段は、浴室床を囲む浴室壁の下部に設けられた配水管であることを特徴とする請求項1に記載の浴室。
【請求項3】
浴室床は、水に対する接触角が70°以上の撥水機能を表面に有するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の浴室。
【請求項4】
浴室床表面に、排水口を中心として放射状に延びる凹溝が形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の浴室。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−106381(P2009−106381A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−279529(P2007−279529)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】