説明

浴槽装置

【課題】押圧部材によって入浴者にマッサージを施すことができ、押圧部材を清浄に保つことができる浴槽装置を提供する。
【解決手段】浴槽装置において、浴槽の背側面2aに押圧部3を設ける。押圧部3においては、浴槽内に連通したケース5と、押圧部材6と、駆動手段とを設ける。押圧部材6は、駆動手段によって、ケース5内に収納される収納位置とケース5から浴槽内に突出する突出位置との間で移動可能である。また、ケース5内には、押圧部材6が運動をするときに、押圧部材6の外側面とケース5の内側面との間の距離を一定に保つガイド8と、ケース5に対して固定され、押圧部材6の側面に接触する付着防止部材9を設ける。更に、付着防止部材9には、浴槽の内部に向けて傾斜したリップ部分を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽装置に関し、特に、入浴者にマッサージを施す浴槽装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康志向が高まり、入浴中に手軽にマッサージを受けたいという要望が高まっている。このため、浴槽内で入浴者にマッサージを施すマッサージ装置が開発されている。例えば、特許文献1には、浴槽内に設置する浴用マッサージ装置であって、入浴者の背中に接触する面が凸アール面であり、この凸アール面から押し玉をエアーポンプにより突出させる装置が開示されている。特許文献1には、入浴者が浴槽内に座り、背中を凸アール面に接触させた状態で、エアーポンプを作動させて押し玉を突出させることにより、入浴者にマッサージを施すことができると記載されている。また、特許文献2には、水圧によって指圧部材を突出させる浴槽内足裏マッサージ装置が開示されている。
【0003】
しかしながら、特許文献1及び2に記載された技術には以下に示すような問題点がある。すなわち、これらのマッサージ装置は浴槽内において使用するため、皮脂やヌメリなどの汚れが付着しやすい。そこで、浴槽を清掃する際に、マッサージ装置も清掃することになるが、マッサージ装置を停止させているときは、押し玉及び指圧部材等の押圧部材は装置内に収納された状態にあるため、清掃が困難である。特に、押圧部材の側面は、入浴者に接触しないため汚れが付着しやすく、マッサージ装置が停止している状態では露出していないためスポンジ等の清掃用具で擦ることが困難であり、また、浴槽内に水を溜めた状態で洗浄剤等を使用しても、押圧部材の側面には強い水流が届かないため、洗浄効果が小さい。このため、このようなマッサージ装置を実際に使用する際には、押圧部材の清掃性が問題になる。
【0004】
【特許文献1】特開2000−233013号公報
【特許文献2】特開2003−275277号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、押圧部材によって入浴者にマッサージを施すことができ、押圧部材を清浄に保つことができる浴槽装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、浴槽と、前記浴槽の壁面に取り付けられ、前記浴槽内に連通したケースと、前記ケース内に収納される収納位置と前記ケースから前記浴槽内に突出する突出位置との間で移動可能に設けられた押圧部材と、前記押圧部材を前記収納位置と前記突出位置との間で運動させる駆動手段と、前記押圧部材が前記運動をするときに、前記押圧部材の外側面と前記ケースの内側面との間の距離を一定に保つガイドと、前記ケースに対して固定され、前記押圧部材の側面に接触する付着防止部材と、を備えたことを特徴とする浴槽装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、押圧部材によって入浴者にマッサージを施すことができ、押圧部材を清浄に保つことができる浴槽装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る浴槽装置を例示する模式的断面図であり、
図2は、図1に示す浴槽装置の押圧部を例示する模式的断面図であり、
図3は、図2に示す押圧部の付着防止部材を例示する模式的断面図である。
【0009】
図1に示すように、本実施形態に係る浴槽装置1においては、浴槽2が設けられている。また、浴槽2の内壁面、例えば、入浴者Mが通常の姿勢で入浴したときに背中が接触する内壁面(以下、「背側面」という)2aには、上下方向に沿って複数段の押圧部3が設けられている。押圧部3は、例えば、背側面2aの上下方向に延びる中心線の両側に、2列に配列されている。また、浴槽装置1においては、浴槽2の外部に、押圧部3を駆動する駆動手段4が設けられている。駆動手段4には例えばポンプが設けられており、押圧部3に対してエアを供給する。なお、駆動手段4は押圧部3に対して水を供給するものであってもよく、モーター等により機械的な動力を供給するものであってもよい。
【0010】
図2に示すように、各押圧部3においては、中空のケース5が設けられている。ケース5は浴槽の背側面2aに取り付けられており、その形状は例えば略円筒形であり、その軸方向は例えば背側面2aにおけるケース5が取り付けられた領域に対して略垂直である。以下、押圧部3における浴槽2に向かう方向を「前方」といい、浴槽2から離隔する方向を「後方」といい、各部材の前方側の端部を「前端部」といい、後方側の端部を「後端部」という。
【0011】
ケース5における浴槽2側の端部(前端部)5aは開口されている。また、浴槽の背側面2aにおけるケース5が取り付けられている領域も開口されている。これにより、ケース5は浴槽2の内部に連通されている。更に、ケース5の後端部5bには駆動手段4(図1参照)の配管4aが接続されており、例えば、駆動手段4のポンプによってケース5内にエアが供給される。
【0012】
ケース5内には、押圧部材6が設けられている。押圧部材6の形状は略円柱形であり、その軸方向はケース5の軸方向と一致しており、その軸方向の長さはケース5の軸方向の長さよりも短く、その直径はケース5の内径よりもやや小さい。また、押圧部材6の前端部6a、すなわち先端部の形状は、例えば球体の一部をなしており、後端部6bには、ストッパ7が連結されている。ストッパ7の形状は円板状であり、その軸は押圧部材6の軸と一致しており、その直径はケース5の内径と略等しい。
【0013】
押圧部材6及びストッパ7は、ケース5に対して固定されておらず、それらの軸方向に沿って移動可能である。すなわち、押圧部材6は、前後方向に直線的に移動可能であり、その移動域の後端位置では、押圧部材6の全体又は大部分がケース5内に収納され、その移動域の前端位置では、押圧部材6の前端部6aがケース5から浴槽2内に突出する。以下、上述の後端位置を「収納位置」といい、前端位置を「突出位置」という。また、ケース5にはガイド8が取り付けられている。ガイド8は、押圧部材6が上述の運動をするときに、押圧部材6を案内してその軌道を規制することにより、押圧部材6の外側面とケース5の内側面との間の距離を一定に保つ。
【0014】
そして、ケース5の前端部5aには、付着防止部材9が取り付けられている。これにより、付着防止部材9はケース5に対して固定されている。付着防止部材9の形状は円環状であり、ケース5の内面に沿って配置されている。また、付着防止部材9は軟質な弾性材料によって形成されており、例えばゴムによって形成されている。
【0015】
図3に示すように、付着防止部材9にはリップ部分9aが形成されている。リップ部分9aの形状は円環形のフィン状であり、先端に近いほど細くなっている。従って、図3に示すように、リップ部分9aの断面形状は楔形である。そして、リップ部分9aの先端9bは押圧部材6の側面に接触する。また、リップ部分9aの根元から先端に向かう方向は、浴槽2(図1参照)の内部に向けて傾斜している。すなわち、リップ部分9aの根元9cから先端9bに向かう方向Vは、押圧部材6の側面におけるリップ部分9aの先端9bが接触する領域から押圧部材の中心軸Cに向かう方向Vに対して、浴槽2の内部、すなわち、図3における左側に向けて傾斜している。
【0016】
次に、上述の如く構成された本実施形態に係る浴槽装置の動作について説明する。
先ず、図1に示すように、浴槽2内に水(湯)Wを溜め、入浴者Mが浴槽2内に入り、背中を背側面2aに接触させて入浴姿勢をとる。これにより、押圧部3は、入浴者Mの背中及び腰部の筋肉(背筋)Rに沿って配置される。このとき、押圧部材6は収納位置にあり、前端部6a(図2参照)は、背側面2aと略同一平面にある。
【0017】
この状態で、駆動手段4が各押圧部3を駆動する。例えば、各押圧部3に対してエアを供給する。図2に示すように、このエアは配管4aを介して後端部5b側からケース5内に導入され、ケース5内におけるストッパ7よりも後方側の空間の圧力を高める。これにより、ストッパ7には前方に向かう力が作用し、ストッパ7及び押圧部材6は前方に移動する。この結果、前端部6aはケース5内から浴室2内に突出し、入浴者Mの背筋Rを押圧し、マッサージを施す。やがて、押圧部材6は突出位置に到達する。
【0018】
その後、駆動手段4から押圧部3にエアが供給されなくなると、押圧部材6は入浴者Mの背中に押圧され、又は水圧により、後方に移動し、収納位置に戻る。なお、ケース5内に押圧部材6を後方に向けて付勢する付勢手段を設けてもよい。このようにして、駆動手段4が押圧部3に対して断続的にエアを供給すると、押圧部材6は収納位置と突出位置との間を往復直線運動する。このとき、押圧部材6はガイド8に案内されて移動するため、その軌道は規制され、押圧部材6の外側面とケース5の内側面との間の距離は一定に保たれる。
【0019】
そして、押圧部材6が往復直線運動する際に、その側面は付着防止部材9のリップ部分9aの先端9bに対して摺動する。すなわち、押圧部材6の側面はリップ部分9aにより擦られる。これにより、押圧部材6の側面に、皮脂及びヌメリ等の汚れが付着しにくくなり、一旦付着した汚れも除去されて、浴槽2内に排出される。このとき、付着防止部材9の形状は環状であるため、押圧部材6の全周に接触する。また、付着防止部材9はケース5の前端部5aに設けられているため、押圧部材6の移動に伴って、押圧部材6の軸方向における長い距離にわたって付着防止部材9が接触する。この結果、押圧部材6の側面における広い領域を洗浄することができる。
【0020】
更に、付着防止部材9にはリップ部分9aが設けられており、このリップ部分9aは浴槽側に傾斜しているため、リップ部分9aの先端9bが押圧部材6に接触することにより、汚れを落とす効果が高まると共に、汚れは浴槽2内に排出され、ケース5の内部には滞留しない。以下、この動作をより詳細に説明する。
【0021】
押圧部材6が前方に移動するときには、押圧部材6に付着した汚れはリップ部分9aの先端9bに後方から衝突する。しかし、このとき、リップ部分9aにおける根元9cから先端9bに向かう方向Vは、汚れの移動方向に対して順方向であるため、汚れの衝突によりリップ部分9aは容易に変形する。このため、汚れは押圧部材6に付着したまま、リップ部分9aの下をくぐり、そのまま前方に通過する。
一方、押圧部材6が後方に移動するときには、押圧部材6に付着した汚れはリップ部分9aの先端9bに前方から衝突する。このとき、リップ部分9aにおける根元9cから先端9bに向かう方向Vは、汚れの移動方向に対して逆方向であるため、汚れはリップ部分9aに引っ掛かり、押圧部材6の側面から剥離される。剥離された汚れは、付着防止部材9よりも前方で浮遊するため、いずれ浴槽2内に排出され、ケース5の内部には侵入しない。
【0022】
更にまた、付着防止部材9はケース5に対して固定されており、一方、押圧部材6とケース5との間の距離はガイド8によって一定に保たれるため、付着防止部材9が押圧部材6に加える力は、押圧部材6の外周全体にわたって均一であり、押圧部材6の前後方向の位置によって変動することもない。このため、均一な洗浄効果を得ることができる。
【0023】
次に、本実施形態の効果について説明する。
上述の如く、浴槽装置1においては、駆動手段4によって押圧部材6に往復運動させることができる。これにより、押圧部材6の前端部6aが入浴者Mの背中を押圧し、入浴者Mにマッサージを施すことができる。
【0024】
また、本実施形態によれば、押圧部材6の往復運動に際して、付着防止部材9が押圧部材6の側面を擦るため、押圧部材6の側面に汚れが付着しにくく、一旦付着した汚れも除去される。更に、付着防止部材9に、浴槽側に傾斜したリップ部分9aが形成されているため、押圧部材が後方に移動するときに集中的に汚れを除去することができ、汚れを浴槽2内に排出してケース5内に滞留させない。更にまた、付着防止部材9をケース5の前端部5aに取り付けることにより、押圧部材6の側面の大部分を洗浄することができる。更にまた、ガイド8を設けることにより、付着防止部材9が押圧部材6に押し付けられる力を均一化し、安定した洗浄効果を得ることができる。
このように、本実施形態によれば、洗浄が困難な押圧部材の側面を清浄に保つことができる。これにより、入浴者は、常に快適な状態で入浴し、マッサージを受けることができる。
【0025】
次に、本実施形態を具現化するために具体例について説明する。
先ず、第1の具体例について説明する。
図4は、本具体例に係る浴槽装置の押圧部を例示する断面図であり、押圧部材が収納位置にある状態を示し、
図5は、本具体例に係る浴槽装置の押圧部を例示する断面図であり、押圧部材が突出位置にある状態を示し、
図6は、本具体例における内周環及び付着防止部材を例示する断面図であり、
図7は、本具体例に係る浴槽装置において付着防止部材をケースから取り外した状態を例示する斜視断面図であり、
図8は、図7に示す状態を浴槽内から見た斜視図である。
なお、図7においては、便宜上、バネは図示を省略されている。
【0026】
図4及び図5に示すように、本具体例に係る浴槽装置の押圧部11は、浴槽の背側面2aに取り付けられている。背側面2aにおける押圧部11が取り付けられている部分には、円形の開口部2bが形成されている。開口部2bの内周面には、ネジ(図示せず)が形成されている。
【0027】
押圧部11においては、中空のケース12が設けられている。ケース12は、浴槽の外側から浴槽に取り付けられた外側部材13と、浴槽の内側から浴槽に取り付けられた内側部材14とから構成されている。外側部材13は筒状の部材であり、その軸方向に沿って浴槽側から順に、浴槽取付治具15と、中間部材16と、ストッパ筐体17とが一列に連結されている。
【0028】
浴槽取付治具15は短い円管状の部材であり、その軸に沿って延びる内部の貫通口は、浴槽取付治具15の両端において開口している。浴槽取付治具15の前端部には円環状の突起15aが形成されており、突起15aの外周面にはネジ(図示せず)が形成されている。そして、突起15aは浴槽の背側面2aの開口部2b内に挿入され、ネジ止めされている。これにより、外側部材13は浴槽に対して固定されている。
【0029】
中間部材16は、前端部が開口し、後端部が閉じられた円筒カップ状の部材である。中間部材16の後端面はガイド18となっている。すなわち、中間部材16の後端面の中心部分には後方に向けて凸部18aが形成されており、中間部材16の中心軸、すなわち、凸部18aの中心軸に沿って貫通孔18bが形成されている。
【0030】
そして、浴槽取付治具15と中間部材16との間には、ダイアフラム19が挟み込まれている。ダイアフラム19は、軟質な弾性材料からなり、同心円状に凹凸が形成された円形の膜であり、中央部が周辺部に対して表面側及び裏面側に変位可能である。ダイアフラム19の中心には円形の穴が形成されている。
【0031】
ストッパ筐体17も、前端部が開口し、後端部が閉じられた円筒カップ状の部材である。ストッパ筐体17の後端部分の側面には、1つの貫通孔17aが形成されており、ストッパ筐体17の外部に連通されている。貫通孔17aは、浴槽装置の駆動手段に設けられたポンプ(図示せず)に接続されており、このポンプから貫通孔17aを介してストッパ筐体17内にエアが供給される。また、ストッパ筐体17の前端部は中間部材16の後端部に接しており、ガイド18の凸部18aは、ストッパ筐体17の内部に収納されている。
【0032】
一方、内側部材14は円環状の部材であり、外周環21と内周環22とが同心円状に組み合わされている。外周環21においては、浴槽側の端部(前端部)の外周面に鍔21aが設けられている。従って、外周環21における円周方向に直交する断面の形状は、L字状である。外周環21は、浴槽取付治具15の環状の突起15aの内部に浴槽の内側から嵌合されており、鍔21aによって係止されている。これにより、外周環21は浴槽取付治具15に連結されており、浴槽取付治具15を介して浴槽に対して固定されている。
【0033】
内周環22は外周環21に着脱可能に取り付けられている。内周環22における円周方向に直交する断面の形状はJ字状であり、内側に向けて全体が開口し前方に向けて内側部分のみが開口した溝22aが、内周環22の全周にわたって形成されている。そして、内周環22の溝22a内には、円環状の付着防止部材23が嵌め込まれている。付着防止部材23は軟質な弾性材料、例えばゴムにより形成されている。
【0034】
図6に示すように、付着防止部材23の形状はダストシール状であり、本体部分23aと、本体部分23aから延出した1枚のリップ部分23bとから構成されている。本体部分23aは内周環22の溝22a内に収納されており、リップ部分23bは溝22aの開口部から突き出している。リップ部分23bが突き出す方向は、内周環22の中心軸に向かう方向と浴槽の内部に向かう方向(前方)との間の方向である。付着防止部材23は内周環22に対して着脱可能である。
【0035】
そして、外側部材13の浴槽取付治具15の内径及び中間部材16の内径は相互に等しい。以下、この内径を「ケースの内径」という。これに対して、内側部材14の内周環22の内径は、ケースの内径よりもやや小さい。また、ストッパ筐体17の内径は、それよりも更に小さい。
【0036】
また、押圧部11には、押圧部材26が設けられている。押圧部材26の形状は略円柱形であり、その前端部26aは半球状である。押圧部材26の外径はケースの内径よりも小さく、付着防止部材23のリップ部分23bの先端の内径よりもやや大きい。これにより、付着防止部材23のリップ部分23bの先端は、押圧部材26の側面に一定の押圧力をもって接触する。このとき、リップ部分23bの根元から先端に向かう方向は、押圧部材26の側面におけるリップ部分23bの先端が接触する領域から押圧部材の中心軸に向かう方向に対して、前方に傾斜している。また、押圧部材26の軸方向の長さは、内周部材14、浴槽取付治具15及び中間部材16の合計の長さよりもやや長い。
【0037】
更に、押圧部材26の後端部26bには、後端部26bを包むように、浅いカップ状のリテナー27が設けられている。また、押圧部材26の後端部26bには、ストッパ28も取り付けられている。ストッパ28は、円柱形のシャフト28aと円板状の鍔28bとから構成されている。シャフト28aの前端部はリテナー27を貫通して押圧部材26の後端部に埋め込まれており、後端部には鍔28bが取り付けられている。更にまた、ガイド18と鍔28bとの間には、鍔28bを後方に向けて付勢するバネ29が設けられている。バネ29はシャフト28aの周囲を巻回している。
【0038】
そして、ダイアフラム19の中央部は、押圧部材26とリテナー27との間に挟み込まれている。なお、シャフト28aはダイアフラム19の穴を挿通している。これにより、押圧部材26はダイアフラム19よりも前方、すなわち浴槽側に配置され、リテナー27はダイアフラム19よりも後方に配置されている。一方、上述の如く、ダイアフラム19の周辺部は、浴槽取付治具15と中間部材16との間に挟み込まれており、ケース12に対して固定されている。これにより、ケース12内の空間はダイアフラム19によって2つの空間に水密的に区画される。そして、ダイアフラム19よりも前方の空間は、浴槽内に連通されているため水が充填され、ダイアフラム19よりも後方の空間は、駆動手段に連通されているためエアが充填される。
【0039】
また、シャフト28aは、ガイド18の貫通孔18a内を摺動自在に挿通している。これにより、押圧部材26及びリテナー27は、ケース12内におけるガイド18よりも前方の空間において前後方向に移動可能とされている。一方、鍔28bは、ケース12内におけるガイド18よりも後方の空間、すなわち、ストッパ筐体17内を前後方向に移動可能とされている。
【0040】
次に、本具体例の動作及び効果について説明する。
上述の如く、ストッパ28のシャフト28aは、ガイド18の貫通孔18a内を前後方向に摺動自在に挿通している。このため、図4に示すように、駆動手段から押圧部11にエアが供給されないときは、バネ29により鍔28bが後方に向けて付勢され、これにより、シャフト28a及び押圧部材26も後方に向けて付勢される。そして、ダイアフラム19の中央部が周辺部よりも後方に位置し、押圧部材26はバネ29の付勢力とダイアフラム19の張力とが釣り合う位置で停止する。このとき、押圧部材26はその移動域の後端位置、すなわち収納位置にあり、押圧部材26の大部分がケース12の内部に収納されている。
【0041】
この状態で、図5に示すように、駆動手段から貫通孔17aを介してストッパ筐体17内にエアが供給されると、エアが充填されている空間、すなわち、ケース12内におけるダイアフラム19よりも後方の空間の圧力が、水が充填されている空間、すなわち、ケース12内におけるダイアフラム19よりも前方の空間の圧力よりも高くなり、鍔28bに前方に向かう力が作用する。この力がバネ29の付勢力を超えると、シャフト28aがガイド18に案内されて、押圧部材26が前方に移動する。これにより、押圧部材26がケース12から浴槽内に突出し、前端部26aが入浴者(図示せず)の背中を押圧する。そして、バネ29が縮みきったところで停止する。このときの押圧部材26の位置が移動域の前端位置、すなわち突出位置である。
【0042】
このとき、押圧部材26の側面は付着防止部材23のリップ部分23bに対して摺動するが、リップ部分23bにおける根元から先端に向かう方向は、押圧部材26の進行方向(前方)に対して順方向であるため、押圧部材26の側面を擦る力は弱い。このため、押圧部材26の側面に汚れが付着していても、リップ部分23bを変形させることでリップ部分23bとの接触部分を通過し、汚れが押圧部材26から剥落しにくい。
【0043】
その後、駆動手段からのエアの供給が停止すると、ケース12内におけるダイアフラム19よりも後方の空間の圧力が低下し、鍔28bに作用していた前方に向かう力が消失する。これにより、バネ29の付勢力により、ストッパ28及び押圧部材26が後方に移動する。そして、図4に示すように、押圧部材26は収納位置まで戻る。
【0044】
このときも、押圧部材26の側面は付着防止部材23のリップ部分23bに対して摺動するが、リップ部分23bにおける根元から先端に向かう方向は、押圧部材26の進行方向(後方)に対して逆方向であるため、押圧部材26の側面を擦る力が強い。このため、押圧部材26の側面に付着した汚れは、リップ部分23bによって擦り落とされ、浴槽内に排出される。
【0045】
そして、駆動手段から押圧部11に対してエアを断続的に供給すれば、上述の動作により、押圧部材26に所定の移動域内で往復直線運動させることができる。これにより、入浴者に継続的にマッサージを施すことができる。また、このとき、付着防止部材23のリップ部分23bが押圧部材26の側面を擦ることにより、押圧部材26の側面には汚れが付着しにくく、一旦付着した汚れも剥脱される。これにより、押圧部材26の側面を清潔に保つことができる。このとき、付着防止部材23の形状は円環状であるため、略円柱形の押圧部材26の全周に接触する。
【0046】
また、付着防止部材23はケース12の内側部材14に取り付けられているため、押圧部材26の移動に伴って、押圧部材26に対して相対的に長い距離を移動する。この結果、付着防止部材23は押圧部材26の側面の広い領域を洗浄することができる。このため、付着防止部材23は、押圧部材26の円柱部分のうち、浴槽内に出入りする部分の全体を清掃することができる。すなわち、押圧部分26のうち、浴槽内に出入りするため汚れやすく、且つ、突出時には視認されるため目立つ部分を清掃することができる。なお、押圧部材26の先端の球状部は、入浴者にマッサージを施したときには毎回背中に当たるため、汚れが付着しにくく、付着防止部材23によって清掃する必要はない。
【0047】
また、上述の往復運動に際し、ストッパ28のシャフト28aがガイド18の貫通孔18a内を挿通することにより、押圧部材26の軌道が直線状に固定される。これにより、押圧部材26の外側面とケース12の内側面との間の距離を一定に保つことができる。一方、付着防止部材23は内周環22の溝22a内に保持されているため、ケース12に対して固定されている。この結果、付着防止部材23と押圧部材26との間に作用する応力は、押圧部材26の外周全体にわたって均一であり、押圧部材26の前後方向の位置に対しても均一である。このため、押圧部材26の側面を均一な力で擦ることができ、均一な洗浄効果を得ることができる。また、押圧部材26の往復運動を円滑にし、安定させることができる。
【0048】
更に、ケース12の内側部材14の外周環21は、浴槽取付治具15の突起15aに嵌合されているため、浴槽取付治具15を介して浴槽に固定されているが、内周環22は外周環21に対して着脱自在である。このため、図7及び図8に示すように、内周環22は浴槽に対して着脱自在である。そして、内周環22には付着防止部材23が取り付けられているが、付着防止部材23は内周環22に対して着脱可能である。従って、付着防止部材23が劣化したときには、内周環22を浴槽から外し、付着防止部材23を内周環22から外すことにより、付着防止部材23を交換することができる。この結果、浴槽装置を長期間にわたって使用しても、常に安定した洗浄効果を得ることができる。
【0049】
更にまた、内周環22は押圧部11の他の部分に対して着脱自在であるため、ケース12の内部の汚れが気になったときには、内周環22を付着防止部材23ごと取り外して、ケース12の内部をシャワーなどで清掃することができる。これにより、押圧部11の内部を清掃したいというユーザーの要望にも応えることができる。
【0050】
なお、付着防止部材23には完全な止水性を持たせていないため、浴槽内の湯はケース12の内部に侵入してくる。しかし、汚れの侵入は付着防止部材23によって妨げられるため、ケース12内に入ってくる湯の中には汚れが少ない。このため、ケース12の内部においてヌメリ等の繁殖を効果的に抑えることができる。なお、付着防止部材には、完全な止水性を持たせてもよい。
【0051】
更にまた、押圧部11は、ケース12の外側部材13内に押圧部材26等を収納した状態で、浴槽取付治具15の突起15aを浴槽の外側から開口部2b内に挿通させてネジ止めし、その後、内側部材14を浴槽の内側から嵌め込むことにより、簡単に浴槽に取り付けることができる。従って、押圧部11は、浴槽に対して後付けすることが容易である。
【0052】
更にまた、押圧部11においては、エアの圧力とバネ29の付勢力によって押圧部材26に往復運動をさせているため、浴槽の内部及び周辺に電気部品を配置する必要がなく、簡単な構成で押圧部を構成することができる。これにより、漏電及び感電に対する対策並びに水による電気部品の腐食に対する対策などが不要になり、低コストで信頼性が高い浴槽装置を実現することができる。
【0053】
先ず、第2の具体例について説明する。
図9は、本具体例に係る浴槽装置の押圧部を例示する断面図であり、押圧部材が収納位置にある状態を示し、
図10は、本具体例に係る浴槽装置の押圧部を例示する断面図であり、押圧部材が突出位置にある状態を示し、
図11は、本具体例における付着防止部材を例示する断面図である。
なお、図9及び図10に示す構成要素のうち、図4及び図5に示した構成要素と同様な機能を発揮する構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0054】
図9及び図10に示すように、本具体例に係る浴槽装置は、前述の第1の具体例に係る浴槽装置(図4参照)と比較して、押圧部の内側部材及び浴槽取付治具の構成が異なっている。すなわち、本具体例に係る浴槽装置の押圧部31においては、浴槽取付治具32は浴槽の背側面2aに形成された開口部2bを挿通していない。一方、内側部材33の長さは、前述の第1の具体例の内側部材14(図4参照)よりも長く、開口部2bを挿通している。そして、浴槽の外部において、内側部材33の後端部が浴槽取付治具32に内部に嵌合している。
【0055】
また、内側部材33は、外周環34及び内周環35から構成されているが、内周環35の断面形状はL字状となっており、内周環35は外周環34の前面の全体及び内周面の前方側部分を覆っている。そして、内周環35の後端部に、内周側及び後方側が開口された溝35aが形成されており、この溝35a内に、円環状の付着防止部材36が収納されている。なお、溝35aの後方側は外周環34によって覆われている。これにより、付着防止部材36は前方側及び外周側が内周環35によって覆われ、後方側が外周環34によって覆われ、内周側は内側部材33の内周面において露出し、押圧部材26に接触する。この結果、内周環35が外周環34に取り付けられた状態では、付着防止部材36は前方側、外周側及び後方側の3方を囲まれて強固に保持され、内周環35が外周環34から取り外された状態では、付着防止部材36は内周面及び後端面の2面が露出するため、交換が容易となる。
【0056】
図11に示すように、付着防止部材36の断面形状は前方側が二叉に分かれたV字状であり、本体部分36aから前方内周側に分岐した枝部分が、リップ部分36bとなっている。更に、内側部材33には、ケース内におけるダイアフラム19よりも前方の空間を浴槽内に連通する通水部37が形成されている。本具体例における上記以外の構成は、前述の第1の具体例と同様である。
【0057】
本具体例においては、内側部材33に、浴槽内とケース内とを連通する通水部37が設けられている。これにより、ケース内の圧力を一定に保ち、押圧部材の往復運動をスムーズにすることができる。すなわち、押圧部材が前方に移動するときには、付着防止部材36の抵抗が少ないため、ケース内の湯は外に出やすい。このため、ダイアフラム19の中央部が前方に移動しても、ケース内におけるダイアフラム19よりも前方の空間の圧力は増加しにくく、ダイアフラムの動作が妨げられることはない。一方、押圧部材が後方に移動するときには、付着防止部材の抵抗が大きく、湯を引き込み難い。このため、仮に通水部37が形成されていないと、ダイアフラムの中央部が後方に移動するのに従い、ケース内におけるダイアフラムよりも前方の空間の圧力が減少し、ダイアフラムの動作を妨げてしまうことがある。しかしながら、本具体例においては、通水部37を介して湯がケース内に出入りするため、ケース内の圧力の変動が少なく、ダイアフラム及び押圧部材の動作を確実にスムーズにすることができる。なお、通水部37の内径は比較的小さくしてあるため、通水部37を介しては、ケース内に汚れが侵入しにくくなっている。本具体例における上記以外の動作及び効果は、前述の第1の具体例と同様である。
【0058】
以上、本発明の実施形態及び具体例を参照しつつ、本発明の特徴を説明した。しかし、本発明は、これらの実施形態及び具体例に限定されるものではない。すなわち、前述の実施形態及び各具体例を適宜組み合わせたもの、並びに、実施形態及び各具体例のいずれかに係る浴槽装置に対して、当業者が構成要素の追加、省略又は設計変更を加えたものも、本発明の要旨を備えたものであれば、本発明の範囲に包含される。
【0059】
例えば、前述の実施形態及び具体例においては、付着防止部材にリップ部分が設けられている例を示したが、本発明はこれに限定されない。また、前述の実施形態及び具体例においては、駆動手段がエアを断続的に供給することにより押圧部材を往復運動させる例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、駆動手段は押圧部に対して水流を断続的に供給してもよく、モーター等により機械的な運動を押圧部に供給してもよい。更に、前述の実施形態及び具体例においては、ケースの形状が円筒状であり、押圧部が往復直線運動を行う例を示したが、本発明はこれに限定されず、押圧部材の外側面がケースの内側面に対して一定の距離を保ったまま運動できればよい。例えば、ケースの形状が円弧状であり、押圧部材が往復円弧運動してもよい。更にまた、押圧部材の形状は円柱形には限定されず、例えば角柱形であってもよい。更にまた、浴槽の内壁面における押圧部が取り付けられる位置も、背側面には限定されず、例えば足側面であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施形態に係る浴槽装置を例示する模式的断面図である。
【図2】図1に示す浴槽装置の押圧部を例示する模式的断面図である。
【図3】図2に示す押圧部の付着防止部材を例示する模式的断面図である。
【図4】第1の具体例に係る浴槽装置の押圧部を例示する断面図であり、押圧部材が収納位置にある状態を示す。
【図5】第1の具体例に係る浴槽装置の押圧部を例示する断面図であり、押圧部材が突出位置にある状態を示す。
【図6】第1の具体例における内周環及び付着防止部材を例示する断面図である。
【図7】第1の具体例に係る浴槽装置において付着防止部材をケースから取り外した状態を例示する斜視断面図である。
【図8】図7に示す状態を浴槽内から見た斜視図である。
【図9】第2の具体例に係る浴槽装置の押圧部を例示する断面図であり、押圧部材が収納位置にある状態を示す。
【図10】第2の具体例に係る浴槽装置の押圧部を例示する断面図であり、押圧部材が突出位置にある状態を示す。
【図11】第2の具体例における付着防止部材を例示する断面図である。
【符号の説明】
【0061】
1 浴槽装置、2 浴槽、2a 背側面、2b 開口部、3 押圧部、4 駆動手段、4a 配管、5 ケース、5a 前端部、5b 後端部、6 押圧部材、6a 前端部、6b 後端部、7 ストッパ、8 ガイド、9 付着防止部材、9a リップ部分、9b 先端、9c 根元、11 押圧部、12 ケース、13 外側部材、14 内側部材、15 浴槽取付治具、15a 突起、16 中間部材、17 ストッパ筐体、17a 貫通孔、18 ガイド、18a 凸部、18b 貫通孔、19 ダイアフラム、21 外周環、21a 鍔、22 内周環、22a 溝、23 付着防止部材、23a 本体部分、23b リップ部分、26 押圧部材、26a 前端部、26b 後端部、27 リテナー、28 ストッパ、28a シャフト、28b 鍔、29 バネ、31 押圧部、32 浴槽取付治具、33 内側部材、34 外周環、35 内周環、35a 溝、36 付着防止部材、36a 本体部分、36b リップ部分、37 通水部、C 中心軸、M 入浴者、R 背筋、V、V 方向、W 水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽と、
前記浴槽の壁面に取り付けられ、前記浴槽内に連通したケースと、
前記ケース内に収納される収納位置と前記ケースから前記浴槽内に突出する突出位置との間で移動可能に設けられた押圧部材と、
前記押圧部材を前記収納位置と前記突出位置との間で運動させる駆動手段と、
前記押圧部材が前記運動をするときに、前記押圧部材の外側面と前記ケースの内側面との間の距離を一定に保つガイドと、
前記ケースに対して固定され、前記押圧部材の側面に接触する付着防止部材と、
を備えたことを特徴とする浴槽装置。
【請求項2】
前記付着防止部材の形状は環状であり、前記付着防止部材は、前記押圧部材の全周に接触することを特徴とする請求項1記載の浴槽装置。
【請求項3】
前記付着防止部材は、先端が前記押圧部材の側面に接触するリップ部分を有し、
前記リップ部分の根元から前記先端に向かう方向は、前記押圧部材の側面における前記先端が接触する領域から前記押圧部材の中心軸に向かう方向に対して前記浴槽の内部に向けて傾斜していることを特徴とする請求項1または2に記載の浴槽装置。
【請求項4】
前記ケースは、
前記浴槽に前記浴槽の内側から取り付けられた内側部材と、
前記浴槽に前記浴槽の外側から取り付けられた外側部材と、
を有し、
前記付着防止部材は、前記内側部材に取り付けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の浴槽装置。
【請求項5】
前記付着防止部材は、前記ケースに対して着脱可能であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の浴槽装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−78038(P2009−78038A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−250645(P2007−250645)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】