説明

浴槽

【課題】車椅子を簡単に出し入れできる浴槽を提供する。
【解決手段】底部11と、この底部11の外周側から上方に延びる側部12と、からなるバスタブ10を備える。側部12の一部分に上側が解放された開口26が設けられ、開口26には、開口26を開閉する開閉蓋27、及び開閉蓋27の内側に位置し両端がバスタブ10に気密に取り付けられた内蓋31が設けられ、内蓋31は、開口26を閉塞する位置から開口26を解放する位置まで変位自在である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車椅子を簡単に出し入れできる浴槽に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の浴槽は、底部と、底部の外周縁から上方に延びる側部とを有し、浴槽に出入りする際には、側部を跨いでいた。しかし、この浴槽は、車椅子で出入りすることができなかった。そこで、従来から車椅子用の浴槽が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1の浴槽は、四角形の底板と、その四辺に着脱自在に設けられた4個の側板とを有している。そして、車椅子を浴槽内に出し入れする際には、側板の何れか1枚を脱着する。
【特許文献1】特開2007−222595号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の特許文献1の浴槽は、車椅子を出し入れする際に、いちいち側板を脱着しなければならず、手間がかかるという問題があった。
【0004】
本発明の目的は、車椅子などを簡単に出し入れできる浴槽を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は前記課題を解決するために、以下の手段を採用した。
すなわち、本発明は、
底部と、前記底部の外周側から上方に延びる側部と、からなる浴槽本体を備える浴槽であって、
前記側部の一部に上側が解放された開口が設けられ、
前記開口には、前記開口を開閉する開閉蓋と、前記開閉蓋の内側に位置し両端が前記浴槽本体に気密に取り付けられた内蓋が設けられ、
前記内蓋は、前記開口を閉塞する位置から前記開口を解放する位置まで変位自在である浴槽。
【0006】
本発明によれば、入浴時には、開閉蓋によって浴槽本体の開口を閉鎖し、内蓋を開口の閉塞位置に配置し、浴槽内に水を貯める。例えば車椅子が浴槽本体内に出入りする際には、開閉蓋を開けると共に、開口を開放する位置に内蓋を配置する。これにより、側板の上縁を跨ぐことなく浴槽本体に出入りできるので、車椅子でも簡単に出入りできる。
【0007】
ここで、前記開口の下端縁は前記床部の上面と面一に形成され、前記内蓋は前記底部に当接するまで変位自在である構成にできる。この構成により、車椅子の出し入れが更に容易になる。
【0008】
また、前記内蓋は、シートによって構成できる。この構成により、内蓋の構成を簡略化できる。また、前記開閉蓋は、上下方向に折り畳み自在に構成できる。この構成により、開閉蓋の開閉操作が容易になる。
【0009】
また、前記内蓋は、前記浴槽本体の内面を覆う袋状部材の一部分を形成し、前記袋状部材は前記浴槽本体に対して着脱自在である構成にできる。この構成により、袋状部材の取り付けが容易になる。
【0010】
また、前記浴槽本体内の水を給水及び排水する給排水手段と、前記浴槽本体内の水を貯水する貯水手段と、を更に備える構成にできる。この構成により、浴槽本体内の水を繰り返し使用できるので経費節減を図ることができる。
【0011】
また、前記浴槽本体内の水を滅菌する滅菌手段を備える構成にできる。この構成により、浴槽本体内の水を清潔に保持できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、開閉蓋及び内蓋を開けることにより、浴槽本体内に車椅子などを簡単に出し入れできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態という)に係る浴槽について説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本発明は実施形態の構成に限定されない。
【0014】
図1は、本発明に係る浴槽1を示す。この浴槽1は、略四角形の底部11と、底部11の外周側から立ち上がる側部12と、を有する浴槽本体(以下、バスタブと呼ぶ。)10を備えている。側部12の上端部には、湾曲部12aが設けられている。このバスタブ10における底部11の略中央には、バスタブ10内の水を排出する排水口13が設けられている。この排水口13には、水栓50を取り付けるネジが設けられている。更に、底部11の角における外側には、脚部14が設けられている。
【0015】
底部11の排水口13には、図2に示すように、配管15を介して、濾過フィルタ16、第1の電動三方弁17,ポンプ18、オゾン滅菌装置19、第2の電動三方弁20がこの順に接続されている。第1の電動三方弁17の3個の接続口17a,17b,17cは、それぞれポンプ18、貯水タンク21の下部から延びる配管40、濾過フィルタ16に接続されている。また、第2の電動三方弁20の3個の接続口20a,20b,20cは、それぞれバスタブ10の上部側に延びる配管22、貯水タンク21の上部から延びる配管23、オゾン滅菌装置19に接続されている。貯水タンク21には、貯水タンク20内の水を加熱するためのボイラー24が設けられている。バスタブ10の下には、例えばナガセルフ(登録商標)のような水はけのよい床部材39(図1参照)が敷かれている。
【0016】
なお、図2中の二点差線45は、浴槽本体10の排水口13から貯水タンク21の上部側へ水が流れる方向、一点鎖線46は貯水タンク21の下部側から浴槽本体10の上部側へ水が流れる方向を示す。
【0017】
図1に示すように、バスタブ10における側部12の長辺は、底部11から略垂直に延び、短辺はバスタブ10の内部空間が上広がりとなる方向に傾斜している。側部12の上部側には、側部12の長手方向に沿って手摺り25,25が設けられている。
【0018】
また、側部12の一部、本実施形態では底部11の短辺側には、図3に示すように、上側が解放された開口26が設けられている。本実施形態では、開口26の下端縁26aが底部11の上面と面一になるように形成されている。開口26には、開口26を開閉する開閉蓋27が設けられている。この開閉蓋27の下端部は、底部11にヒンジ28で回転自在に接続されている。
【0019】
また、開閉蓋27は、図4に示すように、上半部27aと下半部27bとに二分割されている。上半部27aと下半部27bはヒンジ29によって接続され、上下方向に折り畳み自在に構成されている。この開閉蓋27は、上側に延ばされた状態でバスタブ10の側
部12における開口26側の端部に当接し、ロック手段30によってロックされる。これにより、開口26が開閉蓋27によって閉鎖される。
【0020】
開口26が開閉蓋27によって閉鎖された状態から、図5に示すように、開閉蓋27の上半部27aがヒンジ29を中心としてバスタブ10の反対方向に略180°回転すると、図6に示すように、上半部27aが下半部27bに当接して開閉蓋27が半開き状態となる。更に、開閉蓋27の下半部27bが、ヒンジ28を中心としてバスタブ10の反対方向に略90°回転すると、図3に示すように、開口26が完全に解放される。
【0021】
開閉蓋27の内側には、図1に示すように、内蓋31が配置されている。この内蓋31は、図7に示すように、袋状部35の一部を形成している。この袋状部35は、バスタブ10の内面に沿って着脱自在に形成されている。袋状部35は、バスタブ10の底部11(図1参照)における内面に沿って配置される底面部36と、バスタブ10の側部12における内面に沿って配置される側面部37と、上記内蓋31とを有している。袋状部35の側面部37の上端部には、バスタブ10の側部12における湾曲部12aに引っ掛ける引掛部37aが設けられている。なお、袋状部35とバスタブ10との間にマジックテープ(登録商標)等の面ファスナーなど、適宜な留め具(図示せず)を設けることにより、袋状部35をバスタブ10に確実に仮止めできる。
【0022】
袋状部35の底面部36には、排水口36aが設けられている。この排水口36aは、バスタブ10における底部11の排水口13に整合位置される。排水口13には、袋状部35の底面部36の上から水栓50が取り付けられる。これにより、排水口13から袋状部35内の水が漏れるのを防止できる。
【0023】
内蓋31は、図7に示すように、袋状部35の底面部36に接続された四角形部32と、この四角形部32と袋状部35の側面部37との間に設けられた第1の三角形部33、及び第2の三角形部34とを有している。本実施形態では、袋状部35は、樹脂製のシートで折り曲げ自在に形成されている。なお、図7中の符号38は、折り線である。
【0024】
この袋状部35をバスタブ10の内側に配置する場合は、図1に示すように、袋状部35をバスタブ10内に挿入し、底面部36をバスタブ10の底部11における内面に沿って配置し、側面部37をバスタブ10の側部12における内面に沿って配置する。そして、側面部37の引掛部37aをバスタブ10における側部12の湾曲部12aに引っ掛ける。これにより、袋状部35は、バスタブ10の内面に沿って配置される。
【0025】
袋状部35は、図8にも示すように、バスタブ10の底部11及び側部12の内面に沿って配置されている。内蓋31は、バスタブ10の開口26を塞ぐように。この内蓋31の四角形部32は、図9に示すように、開口26を解放する位置、本実施形態ではバスタブ10の底部11に当接する位置から、開口26を閉塞する位置を経て、バスタブ10の外側で底部11と面一となる位置まで変位自在である。
【0026】
図8に示すように、バスタブ10の開閉蓋27を閉じた状態で、内蓋31の四角形部32を開閉蓋27の内面に当接するまで立ち上げることにより、バスタブ10の内部空間が袋状部35によって覆われるので、バスタブ10内に水を貯めることができる。
【0027】
また、バスタブ10内に例えば車椅子を出し入れするときは、図9に示すように、開閉蓋27を解放する。次に、内蓋31の四角形部32をバスタブ10の内側又は外側に、バスタブ10の床部と面一になるまで開く。これにより、車椅子を吊り上げたりすることなく、バスタブ10内に簡単に出し入れできる。
【0028】
このように、浴槽1によれば、バスタブ10の側部12に開口26を設け、開口26の下端縁26aを底部11と面一にすると共に、開口26に開閉蓋27、及び開口26を開閉する位置まで変位自在な内蓋31を設けたので、開閉蓋27及び内蓋31を開けることにより、側部12を跨ぐことなくバスタブ10内に出入りできる。また、車椅子などをバスタブ10内に簡単に出し入れできる。車椅子などがバスタブ10内に入った後、開閉蓋27を閉め、内蓋31の四角形部32を開閉蓋27側に立ち上げるか、或いは底部11側に倒してバスタブ10内に水や温水を貯めることができる。四角形部32を、底部11側に倒して水を貯める場合は、開閉蓋27及び開閉蓋27とバスタブ10間の気密性を保持できるように構成する。
【0029】
また、バスタブ10に貯水タンク21及びポンプ18を接続したので、バスタブ10内の水を循環して使用でき、コスト低減ができる。また、水を循環使用する場合には、オゾン滅菌装置19によって水を滅菌できるので、清潔性を保持できる。なお、オゾン滅菌装置に代えて例えば銅など各種の滅菌装置を使用できる。また、貯水タンク21にボイラー20を設けたので、バスタブ10内に人が入るときには、バスタブ10内の水を適温にすることができる。なお、上記の実施形態では、開口26をバスタブ10の短辺側に設けたが、開口26はバスタブ10の長辺側に設けることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る浴槽を示す断面図である。
【図2】本発明に係る浴槽を示す上面図である。
【図3】本発明に係る浴槽本体の開閉蓋を開けた状態を示す斜視図である。
【図4】本発明に係る開閉蓋及び内蓋を閉じた状態を示す斜視図である。
【図5】本発明に係る開閉蓋を開ける方法を示す図である。
【図6】本発明に係る開閉蓋を半開きにした状態を示す斜視図である。
【図7】本発明に係る内蓋及び袋状部を示す斜視図である。
【図8】本発明に係る開閉蓋及び内蓋を閉めた状態を示す図であり、図4のA−A断面図である。
【図9】本発明に係る内蓋の変位量を示す断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 浴槽
10 バスタブ(浴槽本体)
11 底部
12 側部
12a 湾曲部
13 排水口
14 脚部
15 配管
16 濾過フィルタ
17 電動三方弁
17a,17b 出口
18 ポンプ
19 オゾン滅菌装置
20 ボイラー
20 貯水タンク
20 電動三方弁
20a,20b 出口
21 貯水タンク
22 配管
23 配管
24 ボイラー
25, 手摺り
26 開口
26a 下端縁
27 開口
27 開閉蓋
27a 上半部
27b 下半部
28 ヒンジ
29 ヒンジ
30 ロック手段
31 内蓋
32 四角形部
33 三角形部
34 三角形部
35 袋状部
36 底面部
36a 排水口
37 側面部
37a 引掛部
38 折り線
39 床部材
40 配管
45 浴槽本体から貯水タンクへの水の流れ方向
46 貯水タンクから浴槽本体への水の流れ方向
50 水栓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部と、前記底部の外周側から上方に延びる側部と、からなる浴槽本体を備える浴槽であって、
前記側部の一部分に上側が解放された開口が設けられ、
前記開口には、前記開口を開閉する開閉蓋、及び前記開閉蓋の内側に位置し両端が前記浴槽本体に気密に取り付けられた内蓋が設けられ、
前記内蓋は、前記開口を閉塞する位置から前記開口を解放する位置まで変位自在である浴槽。
【請求項2】
前記開口の下端縁は前記床部の上面と面一に形成され、前記内蓋は前記床部に当接するまで変位自在である請求項1に記載の浴槽。
【請求項3】
前記内蓋は、前記浴槽本体の内面を覆う袋状部材の一部分を形成し、前記袋状部材は前記浴槽本体に対して着脱自在である請求項1または2に記載の浴槽。
【請求項4】
前記開閉蓋は、上下方向に折り畳み自在である請求項1から3の何れか1項に記載の浴槽。
【請求項5】
前記浴槽本体内の水を供給及び排水する給排水手段と、
前記浴槽本体内の水を貯水する貯水手段と、
を更に備える請求項1から4の何れか1項に記載の浴槽。
【請求項6】
前記浴槽本体内の水を滅菌する滅菌手段、
を更に備える請求項1から5の何れか1項に記載の浴槽。
【請求項7】
前記内蓋は、シートである請求項1から6の何れか1項に記載の浴槽。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−95591(P2009−95591A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−272210(P2007−272210)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(000155333)株式会社木村技研 (29)
【Fターム(参考)】