説明

海岸用ブロック

【課題】消波ブロックの積み上げ、積み増しを容易にし、波力によっても移動しないようにする。
【解決手段】消波ブロック1は、断面が台形であり、底辺に消波ブロック1の上部21を嵌合することができる凹部2が形成してある。上辺から底面に向う貫通穴3を有し、この消波ブロック1を、海底を均して敷設し、一段目の敷設が完了したら、消波ブロック1の上部21に底面の凹部2を嵌め込み2段目以降を積み重ねて設置し、ブロック同士が強固に連結された消波堤とする。消波堤が沈下または海水位が上昇した場合でも既存のブロックの上部21に凹部2を嵌合するだけでよいので、積み増しが容易である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波浪制御あるいは漂砂制御を必要とする海岸を保全するための海岸用ブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
海岸に押し寄せる波浪の消波手段として用いる消波ブロックは、多様な形状のものが提案されているが、図9に示すように、突出する脚を有するブロックや十字型のブロックなど、突出脚を有するブロックを、それらの脚を噛み合わせて積み上げ、消波堤を構築していた。
【0003】
しかしながら、従来の消波ブロックは、ブロックをランダムに相互に噛み合わせて堤体を構築するものであるため、整列した状態に積み上げることができず、ブロックが沈下したり、また、海水位が上昇して積み増しが必要となった場合、上方に単純に積み上げることができず、手間と費用がかかっていた。また、ブロックは一般に平坦な底面を有するものでなく、比較的細長い突出する脚部の海底面やマウンドに接触する面積が小さく、接地圧が大きくなる傾向があった。
【0004】
特許文献1(特許2649338号公報)は、三角形の主体の2つの隅角部より、略直角状に下方に屈曲した脚部を設け、残る隅角部より連結部を形成し、その端部に直交して安定部を形成したものである。
特許文献2(特許2690463号公報)は、前後方向に所定の間隔を有して離間された前壁と後壁とを、平面視X形に立体交差する上梁と下梁とにより連結一体化し、前壁の中央部に前後方向に貫通する導水孔を設けたものである。
また、特許文献3(特許2847339号公報)は、常時海面下に没する状態で水平に配置して使用する中空消波ブロックであって、側面及び底面が全面的に開放され、上面には5〜25%の開口率となるように複数の開口を設けたものであるが、基本的には箱型であって、噛み合い部分を有していないため、積み上げることを想定しておらず、単独使用することしか想定していないものである。
【特許文献1】特許2649338号公報
【特許文献2】特許2690463号公報
【特許文献3】特許2847339号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
波浪の力によって移動したり沈下した場合、消波ブロックを積み上げた設置時の形状が維持されなくなるため、積み上げた当初の状態に戻すために消波ブロックの積み増しや、積み直しが必要であった。
一方、底面が平坦な消波ブロックは、噛み合わせ部を有していないため、積み上げても強固に相互を連結する手段がなく、波浪エネルギーによって容易に移動するため、積み上げて消波堤等の堤体とすることはできなかった。
本発明は、積み上げが容易であり、かつ、積み上げた上下のブロックが強固に噛み合った状態となっていて波力によっても移動しないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
断面が台形であり、底面に台形上部を収容する嵌合凹部が形成され、上面から嵌合凹部に通ずる貫通穴が形成してある消波ブロック。
また、側面から嵌合凹部に通ずる貫通穴及び側面間に貫通穴が形成してある消波ブロックである。
【発明の効果】
【0007】
消波ブロックの接地面積が従来の消波ブロックより比較的大きいため沈下が起こりにくく、また、消波ブロックが沈下したり移動した場合であっても、既設の消波ブロックの上部に順に積み重ねて消波機能を簡単に回復させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施例
本発明を図示の実施例に基づき説明する。
図1及び図2に示すように、消波ブロック1は、無筋コンクリート製で、断面が上辺0.5m、下辺が2.5m、斜辺が2.0mの台形であり、底辺に台形の凹部2が形成されており、凹部2は、消波ブロック1の上部21が嵌合する大きさであり、順に積み上げていくことが可能である。
【0009】
消波ブロック1の上辺から底面に形成した凹部2に貫通する直径10〜20cmの穴3が、ほぼ等間隔に形成してあり、消波ブロック1の底面に作用する揚圧力を低減する。また、必要に応じて側面から嵌合凹部に通ずる貫通穴31及び側面間に貫通穴31を形成する。
【0010】
この消波ブロック1を、図3に示すように、海底に構築したマウンド上に隣接させて並べて敷設し、一段目の敷設が完了したら、消波ブロック1の上部21に底面の凹部2を嵌め込み2段目以降を積み重ねて設置して消波堤とする。
この消波ブロック1の配列、及び積み重ねは図4に示すように、多様な設置形態が可能である。
【0011】
消波堤等を供用開始して年月が経過し、消波堤の重量及び波浪の衝撃力によって消波堤が沈下した場合は、新たな消波ブロックを最上段の消波ブロックの上に載置することができ、元通りに簡単に修復することが可能である。
また、地球温暖化等の影響により海水位が上昇し、消波ブロックによって構築した消波堤の天端位置が海水面に対して所定の関係を保てなくなり、消波性能に影響が出る場合も、追加の消波ブロックの積み重ねが容易であり、簡単に回復することができる。
【0012】
応用例
人工リーフ(潜堤)を海岸に沿って設置した場合は、図7に示すように、人工リーフを越えた水流によって、構造物背後に水位上昇が生じる。このため、構造物の両脇から沖側に戻る流れが優勢となり、岸側の局所的な洗掘が生じ、岸側で養浜をおこなっても安定した海浜を保持するのが困難であるが、この発明のブロックは、漂砂制御としても利用することができる。
【0013】
図5及び図6に示すように、ブロック1を海底に敷き並べる。断面台形のブロック1の傾斜と水流が干渉しあって傾斜面に渦が発生し、表面に沿って上昇し、構造物上では沖向きの流れとなる。この沖向き流れを補完するため、構造物の両脇では岸向きの流れが生じ、沖から岸に向けての砂移動を助長する。これによって、漂砂が堆積されるようになり、海岸侵食を防止することが可能となる。また、この沖に向う流れは、沖から到達してくる波のエネルギーを打ち消すことにもなるので、海岸侵食を防止した安定した海浜とすることができる。
【0014】
この発明の消波ブロックの他の応用例としては、図8に示すように、ケーソン等を利用した直立護岸4の前壁に本発明の消波ブロック1を一段または複数段積み重ね、波浪が護岸構造物に直接衝突するのを防止することにも使用できる。更に、護岸として傾斜面に隣接して敷き並べたり、または、人工リーフの捨石マウンドの被覆用として使用することができる。前述のように、この消波ブロックの設置態様は種々あるので、景観としての周囲との調和及び波力等の自然条件を考慮して積み方を選択する。
【産業上の利用可能性】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、断面を台形として底面に嵌入凹部を形成したので、凹部と上辺部を噛み合わせて順に積み重ねて消波堤として一体化することが可能であり、積み増しや積み直しが容易である。また、上面から底面に貫通する穴が、消波ブロックの上辺または側面から底面の凹部に向って、ほぼ等間隔に形成してあり、消波ブロックの底面に作用する揚圧力を低減し、消波ブロックの移動を防止する。
更に、消波ブロックの側面を貫通する穴は、生物の生育の場としての環境を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例の斜視図と断面図。
【図2】本発明の他の実施例の斜視図と断面図。
【図3】本発明のブロックを利用した消波堤の断面図。
【図4】本発明のブロックの配列の態様を示す断面図。
【図5】本発明のブロックを漂砂制御に使用した際の水の流れを説明する断面図。
【図6】本発明のブロックを漂砂制御に使用した際の水の流れを説明する平面図。
【図7】従来の海岸構造物による海岸侵食を説明する平面図。
【図8】本発明のブロックを使用した護岸の断面図。
【図9】従来の消波ブロックの使用例の説明図。
【符号の説明】
【0017】
1 消波ブロック
2 嵌合凹部
3 穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面が台形であり、底面に台形上部を収容する嵌合凹部が形成され、上面から嵌合凹部に通ずる貫通穴が形成してある海岸用ブロック。
【請求項2】
請求項1において、側面から嵌合凹部に通ずる貫通穴及び側面間に貫通穴が形成してある海岸用ブロック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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