説明

海島型繊維、ポリエステル島繊維の製造方法及び繊維シート

【課題】 廃液の処理が容易で、環境への負荷が小さく、繊維径の揃った細いポリエステル繊維を形成することのできる海島型繊維を提供すること。
【解決手段】 本発明の海島型繊維は、ポリブチレンサクシネートを海成分とし、前記ポリブチレンサクシネートを加水分解酵素により分解除去する条件下で質量減少率が5mass%以下のポリエステルを島成分としている。加水分解酵素がリパーゼであるのが好ましく、島成分はポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートの中から選ばれる樹脂成分からなるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は海島型繊維、この海島型繊維からのポリエステル島繊維の製造方法、及び海島型繊維から形成したポリエステル島繊維を含む繊維シートに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル繊維は風合いが天然繊維に近く、熱に強く、しかも安いため、汎用的に使用されている。このようなポリエステル繊維としては、従来、繊度が0.55dtexを超えるようなものが一般的であり、一部においては、0.11dtex(直径約3.2μm)程度の細いポリエステル繊維も市販されている。このポリエステル繊維の繊度が小さく、細ければ、従来にない用途への展開が期待できるため、更に細いポリエステル繊維が待ち望まれていた。例えば、電気二重層キャパシタ用のセパレータ構成繊維として、更に細いポリエステル繊維を使用すると、セパレータの電気絶縁性能や電解液保持性の向上に加えて、セパレータの厚さを薄くできることによって内部抵抗を低くできるなど、様々な性能を向上させることができる。
【0003】
ポリエステル繊維に限らず、細い繊維を得る方法として、本願出願人は、「生分解性の重合体成分と、該生分解性の重合体成分の除去剤に難除去性の重合体成分とからなることを特徴とする複合繊維。」を提案した(特許文献1)。この特許文献1においては、生分解性の重合体成分として「デンプンやデンプンとエチレンとの共重合体などのデンプン系、キトサン系、セルロース系などの天然高分子系の重合体成分、脂肪族ポリエステル系、バイオセルロース系などの発酵生産系の重合体成分、ε−カプロラクトン、乳酸系、グリコール系、変性ポリビニルアルコール系などの化学合成系のもの」を例示し、除去剤として「溶剤、酵素、微生物」を例示し、更に、除去剤としてアルカリ溶液を使用した場合の難除去性成分として「ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどのポリオレフィン系、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6、ナイロン66、変性ナイロンなどのナイロン系、ポリエステル、変性ポリエステルなどのポリエステル系、エステルエラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー」を例示した。
【0004】
他方で、ポリエステル成分を島成分としポリスチレンを海成分とする海島型繊維の海成分をトリクロロエチレン等の有機溶剤によって除去することにより、ポリエステル島成分からなる細い繊維を得る方法が知られている。
【0005】
【特許文献1】特開平8−188922号公報(請求項1、段落番号0012〜0014など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されている方法により、細いポリエステル繊維を得ようとした場合、つまり、生分解性の重合体成分を海成分とし、ポリエステル成分を島成分とする海島型繊維を紡糸し、この海島型繊維の海成分である生分解性重合体成分をアルカリ溶液で除去した場合、ポリエステル繊維の減量加工としても知られているように、ポリエステル島成分も加水分解されてしまい、ポリエステル島成分からなる細い繊維の繊維径にバラツキが生じるという問題が発生した。
【0007】
他方で、有機溶剤で海成分を除去した場合には、ポリエステル島成分までも除去しないため、繊維径の揃ったポリエステル島成分からなる細い繊維を得ることができるが、廃液の処理に多大な労力がかかり、また、環境への負荷の大きい方法であった。
【0008】
本発明は、上述のような細いポリエステル繊維を海島型繊維から得る場合に発生する問題点を解決するためになしたもので、廃液の処理が容易で、環境への負荷が小さく、繊維径の揃った細いポリエステル繊維を形成することのできる海島型繊維、この海島型繊維からのポリエステル島繊維の製造方法、及び海島型繊維から形成したポリエステル島繊維を含む繊維シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1にかかる発明は、「ポリブチレンサクシネートを海成分とし、前記ポリブチレンサクシネートを加水分解酵素により分解除去する条件下で質量減少率が5mass%以下のポリエステルを島成分とすることを特徴とする海島型繊維」である。
【0010】
本発明の請求項2にかかる発明は、「加水分解酵素がリパーゼであることを特徴とする、請求項1記載の海島型繊維」である。
【0011】
本発明の請求項3にかかる発明は、「島成分がポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートの中から選ばれる樹脂成分からなることを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の海島型繊維」である。
【0012】
本発明の請求項4にかかる発明は、「請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の海島型繊維を、加水分解酵素により海成分を分解除去することを特徴とするポリエステル島繊維の製造方法」である。
【0013】
本発明の請求項5にかかる発明は、「請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の海島型繊維から形成したポリエステル島繊維を含んでいることを特徴とする繊維シート」である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1にかかる発明によれば、ポリブチレンサクシネートを加水分解酵素により分解除去する条件下で質量減少率が5mass%以下のポリエステルを島成分とし、海成分であるポリブチレンサクシネートを加水分解酵素により分解除去したとしても島成分はほとんど減量されないため、繊維径の揃ったポリエステル島繊維を形成できる海島型繊維である。また、ポリブチレンサクシネートは加水分解酵素によって分解除去でき、この分解されたモノマー等を放置又は廃棄しても環境を破壊することなく処理できる。なお、分解されたモノマー等を利用して再度重合して利用することも可能である。
【0015】
本発明の請求項2にかかる発明によれば、加水分解酵素がリパーゼであるため、海成分であるポリブチレンサクシネートを容易に分解除去できる。
【0016】
本発明の請求項3にかかる発明によれば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、或いはポリトリメチレンテレフタレートは汎用性に優れているため、各種用途に適用できるポリエステル島繊維を形成できる。
【0017】
本発明の請求項4にかかる発明によれば、加水分解酵素によって海成分を除去しているため、繊維径の揃ったポリエステル島繊維を製造できる。また、分解されたモノマー等を放置又は廃棄しても環境を破壊することがない。なお、分解されたモノマー等を利用して再度重合して利用することも可能である。
【0018】
本発明の請求項5にかかる発明によれば、細いポリエステル島繊維を含んでいるため、電気絶縁性、分離性能、液体保持性能、払拭性、隠蔽性、親和性などの各種性能に優れ、厚さの薄い繊維シートであることができる。そのため、電気二重層キャパシタ用セパレータ用途、リチウムイオン二次電池用セパレータ用途、気体又は液体濾過材用途、積層板用基材用途、集電材用途、ワイピング材用途、医療用基材用途、電子写真装置における定着ロールのクリーニングシート用途、などに好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の海島型繊維は加水分解しやすく、分解除去した後の処理をしやすく、また、再利用することによって環境への負荷の小さいポリブチレンサクシネート(以下、「PBS」と表記することがある)を海成分としている。ポリブチレンサクシネートは1,4−ブタンジオールとコハク酸との共重合体であるが、加水分解性を損なわない範囲内で、1,4−ブタンジオール以外の脂肪族ジオール、コハク酸以外の脂肪族ジカルボン酸、脂肪族オキシカルボン酸、或いは環状エステルなどが共重合していても良い。
【0020】
他方、本発明の海島型繊維は前記PBSを加水分解酵素により分解除去する条件下で質量減少率が5mass%以下のポリエステルを島成分としている。そのため、海成分であるPBSを分解除去する条件下であっても、島成分であるポリエステルは分解除去されにくいため、繊維径の揃った細いポリエステル島繊維を発生させることができる。質量減少率が小さければ小さい程、繊維径の揃った細いポリエステル島繊維を発生できるため、質量減少率は1mass%以下であるのが好ましく、0.1mass%以下であるのがより好ましい。加水分解酵素の種類、分解除去条件(温度、時間、濃度など)等によって、質量減少率が変わる可能性があるため、島成分を構成するポリエステルを限定できないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブレチンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の芳香族ポリエステル、ポリアリレート、液晶ポリマー等の全芳香族ポリエステル、或いはポリカーボネート等のポリ炭酸エステルを挙げることができ、これらの中でもポリエチレンテレフタレート、ポリブレチンテレフタレート又はポリトリメチレンテレフタレートは汎用性に優れているため好適である。
【0021】
海成分であるPBSを加水分解する酵素としては、PBSを加水分解除去できれば良く、特に限定するものではないが、例えば、リパーゼ、クチナーゼ、エステラーゼ、プロテアーゼ等を挙げることができ、これらの中でも、PBSを容易に加水分解除去できるリパーゼが好適である。リパーゼとしては、例えば、リゾプス・デレマー(Rhizopus delemar)由来のリパーゼ100890(生化学工業社製)を挙げることができる。なお、加水分解酵素は水又は緩衝液等の水性媒体に含ませた状態で使用できる。この水性媒体は、水溶性有機溶媒又は脂溶性有機溶媒を含有していても良いし、加水分解を促進する界面活性剤、有機物或いは無機物等を含んでいても良い。更に、pHを安定化させ、加水分解酵素の活性が高いように、水性媒体のpHが3〜12(好ましくは5〜9、より好ましくは6〜8)となるように、緩衝剤を添加するのが好ましい。
【0022】
なお、分解除去条件はPBSを分解除去できれば良く、特に限定するものではないが、加水分解酵素の活性が高いように、温度は25〜150℃であるのが好ましく、40〜100℃であるのがより好ましく、40〜80℃であるのが更に好ましい。また、加水分解除去時間は特に限定するものではないが、短ければ短い程、生産性に優れているため、10時間以下であるのが好ましく、5時間以下であるのがより好ましく、3時間以下であるのが更に好ましい。
【0023】
本発明における「質量減少率」とは、加水分解前後における質量減少量(Md)の加水分解前の質量(Mb)に対する百分率をいう。つまり、(Md/Mb)×100の値をいう。
【0024】
本発明の海島型繊維の繊度は特に限定するものではなく、重要なのは海成分であるPBSを除去して発生するポリエステル島繊維の繊度であるため、横断面における島成分の直径(円形断面換算値)が3μm以下(好ましくは2μm以下)であるのが好ましい。また、海島型繊維の繊維長も特に限定するものではなく、連続した長繊維であっても、切断された短繊維であっても良いが、細いポリエステル島繊維を均一に分散させることのできる湿式法により不織布を形成するのが好ましいため、この場合には繊維長は20mm以下であるのが好ましく、0.1〜15mmであるのがより好ましい。なお、海島型繊維の海成分を除去して形成したポリエステル島繊維を切断するのであれば、海島型繊維は長繊維であっても、ポリエステル島繊維が均一に分散した不織布を製造できる。また、島成分の数、海島型繊維の横断面形状、島成分の横断面形状、島成分の直径が1種類であるかどうか、或いは島成分が海島型繊維の長さ方向に連続しているかどうか等は、特に限定するものではない。更に、海成分と島成分との体積比率は特に限定するものではないが、海成分は除去されることから、少なければ少ない程好ましい一方で、少なすぎると島成分同士が固着して、細いポリエステル島繊維を得ることが困難になるため、海成分対島成分の体積比率が60〜10:40〜90であるのが好ましく、50〜20:50〜80であるのがより好ましい。
【0025】
このような本発明の海島型繊維は、通常の複合溶融紡糸法又は混合溶融紡糸法により製造することができる。
【0026】
本発明の海島型繊維は上述のような構成からなるが、本発明の海島型繊維を使用すれば、島成分であるポリエステルまでも分解除去することなく、海成分を除去できるため、繊維径の揃ったポリエステル島繊維を製造することができる。より具体的には、前述のような加水分解酵素(好ましくはリパーゼ)を含む水性媒体(pHは3〜12であるのが好ましい、温度は25〜150℃であるのが好ましい)に、海島型繊維を10時間以下浸漬して、海成分であるPBSを加水分解除去し、細いポリエステル島繊維を製造することができる。
【0027】
なお、海島型繊維からの海成分の除去は、海島型繊維をボビン等に巻き付けた状態や、加水分解酵素を含む水性媒体中に分散させた状態などの繊維状態で行なうことができるし、海島型繊維を用いて繊維シートを形成した後に行うこともできる。しかしながら、繊維シートを形成した後に海成分を除去すると、細いポリエステル島繊維を含んでいるにもかかわらず、海成分が除去されることによって粗い構造の繊維シートとなるため、繊維の状態で海成分を除去して、細いポリエステル島繊維を製造し、このポリエステル島繊維を用いて繊維シートを形成するのが好ましい。
【0028】
本発明の繊維シートは上述のような海島型繊維から形成したポリエステル島繊維を含んでいるため、電気絶縁性、分離性能、液体保持性能、払拭性、隠蔽性、親和性などの各種性能に優れ、繊維シートの厚さの薄いものであることができる。そのため、電気二重層キャパシタ用セパレータ用途、リチウムイオン二次電池用セパレータ用途、気体又は液体濾過材用途、積層板用基材用途、集電材用途、ワイピング材用途、医療用基材用途、電子写真装置における定着ロールのクリーニングシート用途、などに好適に使用することができる。
【0029】
本発明の繊維シートは、例えば、織物、編物、不織布などの形態を挙げることができ、これらの中でも、不織布は製造方法によって、各種性能を付与できるため好適である。特に、本発明のポリエステル島繊維の細さを活かすことができる、厚さが薄く、緻密な構造の湿式不織布であるのが好ましい。なお、本発明のポリエステル島繊維の含有量は繊維シートの使用用途、使用目的等によって異なるため、特に限定するものではない。また、ポリエステル島繊維以外の繊維は繊維シートの使用用途、使用目的等によって異なるため、特に限定するものではない。
【0030】
なお、本発明の繊維シートは常法により製造することができ、好適である湿式不織布は、常法により本発明のポリエステル島繊維を含む繊維ウエブを形成した後に、エマルジョンや粉末などのバインダーで接着したり、繊維ウエブ中に接着繊維を含ませておき、その接着繊維によって接着したり、水流によって絡合したり、或いはこれらを併用して製造できる。一般的に、海島型繊維を使用して繊維シートを形成した後に海成分を除去すると、組織が粗くなるが、そのような組織を許容又は好ましい場合には、海島型繊維を使用して繊維シートを形成した後に海成分を除去することもできる。なお、海島型繊維を使用して繊維シートを形成した後に海成分を除去し、更に水流を作用させて組織を緻密化することもできる。更には、本発明の繊維シートは各種用途に適合するように、親和性付与処理等の各種後処理を実施することができる。
【0031】
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0032】
(実施例1)
海成分として、温度190℃でのメルトインデックス(MI)が20のポリブチレンサクシネート(三菱化学(株)製、品名:AZ−71T)を用意し、島成分として、固有粘度(IV値)が0.65のポリエチレンテレフタレート(東レ(株)製、品番:T−900E、リパーゼ(三菱化学(株)製、品名:GSクリアー)を濃度1mass%に希釈した水溶液(pH:8、温度:50℃)に2時間浸漬させた時の質量減少率は0.1mass%未満)を用意した。
【0033】
次いで、通常の海島型複合溶融紡糸装置を用い、温度280℃に設定した海島紡糸ノズル(ノズル径:0.3mm)に、前記海成分と島成分とを体積比率60:40で供給し、11.88g/min.の速度で吐出した後に、800m/min.で巻き取り、未延伸糸(島数:25、横断面形状:円形)を得た。
【0034】
その後、未延伸糸を繊度約1000dtexに収束したトウを、温度90℃の温浴中を通過させながら2.8倍延伸し、ギロチンカッターにより2mm長に切断し、繊度2.2dtexの海島型短繊維を得た。
【0035】
そして、この海島型短繊維を、リパーゼ(三菱化学(株)製、品名:GSクリアー)を濃度1mass%に希釈した水溶液(pH:8、温度:50℃)に約2時間浸漬して、海成分であるPBSを加水分解除去し、繊維径が1.8μmのポリエチレンテレフタレート島短繊維(繊維長:2mm、横断面形状:円状)を製造した。繊維径のCV値(=繊維径の標準偏差/平均繊維径)は6.0%であった。
【0036】
(比較例1)
実施例1と全く同様にして製造した海島型短繊維を、水酸化ナトリウムを濃度6mass%に希釈した水溶液(pH:14、温度:98℃)に数時間浸漬したが、海成分、島成分共に加水分解されており、繊維径を測定するまでもなく、ポリエチレンテレフタレート島短繊維の繊維径は不均一であった。そのため、水酸化ナトリウムの濃度と温度の組み合わせを、6mass%−60℃、6mass%−30℃、3mass%−98℃、3mass%−60℃、1mass%−98℃、及び1mass%−60℃の組み合わせで行ってみたが、いずれの場合も海成分、島成分共に加水分解され、繊維径を測定するまでもなく、ポリエチレンテレフタレート島短繊維の繊維径は不均一であった。
【0037】
(比較例2)
海成分として、イソフタル酸(IPA)変性ポリエチレンテレフタレート(東レ(株)製、変性率:18mol%)を用意し、島成分として、固有粘度(IV値)が0.65のポリエチレンテレフタレート(東レ(株)製、品番:T−900E)を用意した。
【0038】
次いで、通常の海島型複合溶融紡糸装置を用い、温度280℃に設定した海島紡糸ノズル(ノズル径:0.3mm)に、前記海成分と島成分とを体積比率60:40で供給し、11.88g/min.の速度で吐出した後に、800m/minで巻き取り、未延伸糸(島数:25、横断面形状:円形)を得た。
【0039】
その後、未延伸糸を繊度約1000dtexに収束したトウを、温度90℃の温浴中を通過させながら2.8倍延伸し、ギロチンカッターにより2mm長に切断し、繊度2.2dtexの海島型短繊維を得た。
【0040】
そして、この海島型短繊維を、水酸化ナトリウムを濃度3mass%に希釈した水溶液(pH:14、温度:98℃)に数時間浸漬したが、海成分、島成分共に加水分解されており、繊維径を測定するまでもなく、ポリエチレンテレフタレート島短繊維の繊維径は不均一であった。そのため、水酸化ナトリウムの濃度と温度の組み合わせを、3mass%−80℃及び1mass%−98℃の組み合わせで行ってみたが、いずれの場合も海成分、島成分共に加水分解され、繊維径を測定するまでもなく、ポリエチレンテレフタレート島短繊維の繊維径は不均一であった。
【0041】
(比較例3)
海成分として、スルホイソフタル酸(SIPA)変性ポリエチレンテレフタレート(東レ(株)製、変性率:4.5mol%)を用意し、島成分として、固有粘度(IV値)が0.65のポリエチレンテレフタレート(東レ(株)製、品番:T−900E)を用意した。
【0042】
次いで、通常の海島型複合溶融紡糸装置を用い、温度280℃に設定した海島紡糸ノズル(ノズル径:0.3mm)に、前記海成分と島成分とを体積比率60:40で供給し、11.88g/min.の速度で吐出した後に、800m/min.で巻き取り、未延伸糸(島数:25、横断面形状:円形)を得た。
【0043】
その後、未延伸糸を繊度約1000dtexに収束したトウを、温度90℃の温浴中を通過させながら2.8倍延伸し、ギロチンカッターにより2mm長に切断し、繊度2.2dtexの海島型短繊維を得た。
【0044】
そして、この海島型短繊維を、水酸化ナトリウムを濃度3mass%に希釈した水溶液(pH:14、温度:98℃)に数時間浸漬したが、海成分、島成分共に加水分解されており、繊維径を測定するまでもなく、ポリエチレンテレフタレート島短繊維の繊維径は不均一であった。そのため、水酸化ナトリウムの濃度と温度の組み合わせを、3mass%−80℃及び1mass%−98℃の組み合わせで行ってみたが、いずれの場合も海成分、島成分共に加水分解され、繊維径を測定するまでもなく、ポリエチレンテレフタレート島短繊維の繊維径は不均一であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリブチレンサクシネートを海成分とし、前記ポリブチレンサクシネートを加水分解酵素により分解除去する条件下で質量減少率が5mass%以下のポリエステルを島成分とすることを特徴とする海島型繊維。
【請求項2】
加水分解酵素がリパーゼであることを特徴とする、請求項1記載の海島型繊維。
【請求項3】
島成分がポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートの中から選ばれる樹脂成分からなることを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の海島型繊維。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の海島型繊維を、加水分解酵素により海成分を分解除去することを特徴とするポリエステル島繊維の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の海島型繊維から形成したポリエステル島繊維を含んでいることを特徴とする繊維シート。

【公開番号】特開2006−265765(P2006−265765A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−85074(P2005−85074)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(000229542)日本バイリーン株式会社 (378)
【Fターム(参考)】