説明

海水による予冷を導入する魚体用急速冷凍法

【課題】冷凍温度の制御を含む適切な冷凍法、および魚体を冷凍した際の適切な保存法の開発。
【解決手段】魚体のための、冷塩化カルシウムブラインを使用する急速冷凍方法であって、以下の工程:i)−1℃〜3℃の冷海水によって、魚体を予冷し、この魚体の中心温度を、2℃〜4℃まで低下させる工程;ii)魚体の中心温度が−45℃〜−40℃になるまで、この魚体を、−55℃〜−50℃の冷塩化カルシウムブライン中に浸漬することによって、この魚体を急速に冷凍する工程;およびiii)この冷凍した魚体を、−42℃〜−38℃の温度で保管する工程、を包含し、この魚体の中心温度は、急速に冷凍する工程において、冷塩化カルシウムブラインの流動性を増加させることによって、60分以内で、2℃〜4℃から−5℃まで、非常に急速に低下される、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、予冷工程および冷却物質として塩化カルシウムブラインを使用する急速冷凍工程を包含する、魚体(例えば、マグロ)用急速冷凍法に関する。より具体的には、本発明は、冷凍した魚体の長期保存のための船において大きな魚体サイズを有する魚体(例えば、マグロ)に適用される急速冷凍法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
魚体を冷凍する場合、ゆっくりとした冷凍は、冷凍の過程で細胞内流体(魚体水分)が膨張するに従って、細胞内流体を細胞膜の外側に漏出する結果になる。冷凍した魚体の解凍を通じて、漏出した流体のいくらかが細胞質に再吸収されたとしても、細胞内流体のこのような漏出は、魚類の栄養、味、色および匂いの低下(劣化)を引き起こす。従って、急速冷凍法により、魚体の細胞の膨張もしくは破壊を最小限にしながら魚体を冷凍することが必要とされている。
【0003】
魚体を冷凍する時間において、魚体の細胞内流体の約80%は、−5℃で凍結する。さらに、魚体の細胞内流体の約90%超が、−10℃で凍結する。最終的に、魚体の細胞内流体の100%が、−18℃で凍結し、細胞内流体のさらなる膨張はもはや生じない。従って、魚体を−5℃付近の温度で急速に冷凍して、魚体の冷凍および解凍を通じた細胞の膨張または破壊から生じる魚体の劣化を最小にすることが必要とされた。
【0004】
2種類の冷凍法(空冷法および冷塩化カルシウムブライン浸漬法)が、魚体を冷凍するために現在使用されている。空冷法によると、魚体は、冷媒としてフレオンガスを使用して−60℃まで冷却した冷凍室で72時間冷凍されなければならない。他方では、冷塩化カルシウムブライン浸漬法を使用すると、−40℃の冷凍魚体を得るために、−50℃の塩化カルシウムブラインに魚体を10〜15時間浸漬することによって、その魚体は凍結され得る。
【0005】
空冷法の場合、空気は、冷媒を用いた従来の熱交換器によって冷却されなければならないので、空気を冷却するための圧縮機、凝縮器、および蒸発器を作動させるために、多くの電気エネルギーが必要とされる。従って、空冷法は、石油および電力供給の費用が高いために、経済的な方法と考えることはできない。
【0006】
他方で、冷塩化カルシウムブライン浸漬法の場合、捕獲された魚体は、冷塩化カルシウムブラインの中に直ぐに浸漬することによって、即凍結される。魚体は、−55℃〜−50℃の冷塩化カルシウムブラインからの直接的な熱伝導作用によって冷凍されるので、魚体を冷凍するのにかかる時間は、絶対的に短縮され得る。さらに、必要な電気エネルギーは、冷凍室中の冷塩化カルシウムブラインを冷却するかまたは循環させるためだけに使用される。このことは、非常に経済的に費用削減になる。
【0007】
他方で、冷塩化カルシウムブラインを使用する冷却法は、牛肉のような食肉製品に従来から適用されてきた。特許文献1(「Chilling of meat products」)において、食肉製品を冷蔵するためのプロセスが示唆され、このプロセスは、以下の工程を包含する:i)−10〜−65℃の食肉の中心温度までの塩化ナトリウムブラインによる第1の冷蔵工程;ii)−12〜4℃の食肉の中心温度までの塩化カルシウムブラインによる第2の冷蔵工程。この冷却法は、食肉製品の長期保存用に開発されたので、漁船の冷蔵タンク中で魚体を冷凍および保存するために、この冷却法自体を大きなサイズの魚体(例えば、マグロ)に適用することは困難である。
【0008】
しかし、冷蔵タンク中の塩化カルシウムブラインは、漁船の横揺れおよび縦揺れによって、安定に維持することも循環させることもできないので、冷塩化カルシウムブライン浸漬法は、遠洋漁業船での実際の使用に適用するにあたって、いくらかの困難を有する。さらに、冷凍温度の制御を含む適切な冷凍法、および魚体を冷凍した際の適切な保存法の開発が必要とされてきた。
【特許文献1】米国特許第6004607号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、冷凍温度の制御を含む適切な冷凍法、および魚体を冷凍した際の適切な保存法の開発である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従って、遠洋漁業船に、より効率的に適用可能な冷塩化カルシウムブライン浸漬法を提供するために、本発明が行われた。従来の冷却法とは対照的に、本発明は、冷塩化カルシウムブライン浸漬法を提供し、この方法は、i)予冷工程;ii)急速冷凍工程;およびiii)遠洋漁業船において使用する魚体の冷凍保存工程を包含する。
【0011】
本発明は、捕獲されたときの高品質の肉および色を維持しながら、冷凍した魚体(例えば、マグロ)を調製するために、冷却温度または冷凍温度を制御することによる、冷塩化カルシウムブライン浸漬法を開発することによって、達成され得る。この冷塩化カルシウムブライン浸漬法によると、従来の冷凍法と比較して、最小限の電気エネルギー消費にまで費用の削減が達成され得る。
【0012】
本発明の課題は、魚体用急速冷凍方法を提供することである。この方法は、i)−1℃〜3℃の冷海水によって、上記魚体を予冷し、上記魚体の中心温度を、2℃〜4℃まで低下させる工程;ii)上記魚体の中心温度が−45℃〜−40℃になるまで、上記魚体を、−55℃〜−50℃の冷塩化カルシウムブライン中に浸漬することによって、上記魚体を急速に冷凍する工程;およびiii)上記冷凍した魚体を、−42℃〜−38℃の温度で保管する工程を包含し、上記魚体の中心温度は、上記急速に冷凍する工程において、上記冷塩化カルシウムブラインの流動性を増加させることによって、60分以内で、2℃〜4℃から−5℃まで、非常に急速に低下される。
【0013】
さらに、上記予冷する工程は、i)上記海水を冷却し、そして濾過する工程;ii)上記冷却された海水を、魚体予冷タンクに充填する工程;iii)漁穫された魚体を、上記魚体予冷タンク内の−1℃〜3℃の冷海水中に浸漬し、そして冷却する工程;iv)上記魚体予冷タンクから熱吸収デバイスへと、上記海水を戻す工程;v)上記熱吸収デバイス中の海水を再冷却する工程;およびvi)上記再冷却された海水を、システム内で濾過し、そして再利用する工程を包含する。
【0014】
上記急速に冷凍する工程は、i)飽和塩化カルシウムブラインを調製するために、塩化カルシウムを、清浄な水に添加する工程;ii)上記塩化カルシウムブラインを、−55℃〜−50℃まで冷却する工程;iii)上記魚体の中心温度が60分以内で−5℃になるまで、上記予冷した魚体を、冷塩化カルシウムブライン中に浸漬することによって、上記予冷された魚体を非常に急速に冷凍する工程;iv)上記魚体の中心温度が−45℃〜−40℃になるまで、その魚体をさらに急速に冷凍する工程;およびv)上記塩化カルシウムブラインを再冷却し、そして再利用する工程;を包含する。
【0015】
上記魚体を上記冷塩化カルシウムブライン中に浸漬することによる急速な冷凍の場合、上記冷塩化カルシウムブラインの流速は、0.15m/分〜0.25m/分である。上記魚体中の細胞内流体(fluid)の80%よりも多くが、魚体の中心温度−5℃にて凍結する。上記魚体は、魚体の中心温度が−42℃〜−38℃になるまでに、最終的に冷凍される。
【0016】
本発明は、以下を提供する:
(項目1)
魚体のための、冷塩化カルシウムブラインを使用する急速冷凍方法であって、以下の工程:
i)−1℃〜3℃の冷海水によって、魚体を予冷し、この魚体の中心温度を、2℃〜4℃まで低下させる工程;
ii)魚体の中心温度が−45℃〜−40℃になるまで、この魚体を、−55℃〜−50℃の冷塩化カルシウムブライン中に浸漬することによって、この魚体を急速に冷凍する工程;および
iii)この冷凍した魚体を、−42℃〜−38℃の温度で保管する工程、
を包含し、この魚体の中心温度は、急速に冷凍する工程において、冷塩化カルシウムブラインの流動性を増加させることによって、60分以内で、2℃〜4℃から−5℃まで、非常に急速に低下される、方法。
(項目2)
上記予冷する工程が、
i)上記海水を冷却し、そして濾過する工程;
ii)この冷却された海水を、魚体予冷タンクに充填する工程;
iii)漁穫された魚体を、この魚体予冷タンク内の−1℃〜3℃の冷海水中に浸漬し、そして冷却する工程;
iv)この魚体予冷タンクから熱吸収デバイスへと、海水を戻す工程;
v)熱吸収デバイス中の海水を再冷却する工程;および
vi)この再冷却された海水を、システム内で濾過し、そして再利用する工程、
を包含する、項目1に記載の魚体のための冷塩化カルシウムブラインを使用する急速冷凍方法。
(項目3)
上記急速に冷凍する工程が、
i)飽和塩化カルシウムブラインを調製するために、上記塩化カルシウムを、清浄な水に添加する工程;
ii)この塩化カルシウムブラインを、−55℃〜−50℃まで冷却する工程;
iii)上記魚体の中心温度が60分以内で−5℃になるまで、上記予冷された魚体を冷塩化カルシウムブライン中に浸漬することによって、この予冷された魚体を非常に急速に冷凍する工程;
iv)この魚体の中心温度が−45℃〜−40℃になるまで、この魚体をさらに急速に冷凍する工程;および
v)塩化カルシウムブラインを再冷却し、そして再利用する工程、
を包含する、項目1に記載の魚体のための冷塩化カルシウムブラインを使用する急速冷凍方法。
(項目4)
上記冷塩化カルシウムブラインの流速が、0.15m/分〜0.25m/分である、項目3に記載の魚体のための冷塩化カルシウムブラインを使用する急速冷凍方法。
(項目5)
上記魚体における細胞内流体の80%より多くが、−5℃の魚体中心温度において凍結する、項目4に記載の魚体のための冷塩化カルシウムブラインを使用する急速冷凍方法。
(項目6)
上記魚体の中心温度が−42℃〜−38℃になるまで、上記魚体が最終的に冷凍される、項目3に記載の魚体のための冷塩化カルシウムブラインを使用する急速冷凍方法。
【0017】
本発明は、魚体のための、冷塩化カルシウムブラインを使用する急速冷凍方法を提供することであり、この方法は、
i)−1℃〜3℃の冷海水によって、魚体を予冷し、この魚体の中心温度を、2℃〜4℃まで低下させる工程;
ii)この魚体の中心温度が−45℃〜−40℃になるまで、この魚体を、−55℃〜−50℃の冷塩化カルシウムブライン中に浸漬することによって、この魚体を急速に冷凍する工程;および
iii)この冷凍した魚体を、−42℃〜−38℃の温度で保管する工程、
を包含し、この魚体の中心温度は、急速に冷凍する工程において、冷塩化カルシウムブラインの流動性を増加させることによって、60分以内で、2℃〜4℃から−5℃まで、非常に急速に低下される。
【0018】
魚体の冷凍保管の間、ミオグロビンの褐変が起こらないので、本発明の冷塩化カルシウムブライン浸漬方法による、急速冷凍および保管の方法は、魚体のいかなる変化もなしで、2年間より長く、凍結した魚体を保管し得る。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、冷凍温度の制御を含む適切な冷凍法、および魚体を冷凍した際の適切な保存法が開発された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
29.9%の塩化カルシウムで飽和した塩化カルシウムブラインは、凝固点を−55℃まで低下させ得るので、この塩化カルシウムブラインをタンクに供給することによって、この塩化カルシウムブラインは、魚体を冷凍するために使用され得る。従来、約−50℃の冷塩化カルシウムが、魚体を冷凍するために使用されている。
【0021】
図1は、従来の空冷法の魚体冷凍温度と比較した本発明の魚体冷凍温度を示す概略表を示す。
【0022】
暖流性魚類の中心温度は、15℃〜25℃であり、一方、寒流性魚類の中心温度は、10℃〜20℃である。漁穫された魚体の中心温度は、魚の種類に対応して異なるので、この種々の魚の中心温度は、−1℃〜3℃の冷却した海水によって2℃〜4℃の範囲内で予冷されることが、必要である。
【0023】
上記魚体が、−1℃〜3℃の冷却した海水によって予冷された後、その魚体は、その後、魚体の非常に急速な冷凍のために冷塩化カルシウムブライン中に浸漬される。本発明における特徴の1つは、2℃〜4℃から−5℃までの魚体の中心温度が、60分間以内に非常に急速に低下することである。−5℃において、魚体中の細胞内流体(fluid)の80%よりも多くが、凍結される。最終的には、−18℃において、魚体中の細胞内流体(fluid)100%が、凍結される。魚体が−5℃までに急速に冷凍されるべき理由は、魚体細胞中への冷塩化カルシウムブラインの吸収が、細胞内流体(fluid)の膨張を最少にすることによって阻止されるからである。従って、魚体中の細胞内流体(fluid)は、この急速凍結方法に従って、全く生理化学的に劣化することなく、凍結され得る。
【0024】
その後、この魚体は、魚体の中心温度が−45℃〜−40℃になるまで、冷塩化カルシウムブラインによって10時間〜15時間の間、さらに急速冷凍される。この急速冷凍された魚体は、魚体の中心温度−42℃〜−38℃を維持しながら、冷蔵タンク中で保管される。本発明の冷凍方法を使用して、上記魚体は、少なくとも2年間、冷蔵タンク中で冷凍状態として保管され得る。
【0025】
図2は、海水の概略的流れと、予冷を行う予冷タンクの概略図とを示す。
【0026】
海水が、−1℃〜3℃まで冷却された後、その海水は、海水濾過器によって濾過される。その後、その海水は、ポンプによって魚体予冷タンク中に充填される。海水の流動性を増大するための液流動増大器と、海水を冷却するための冷却コイルとが、魚体予冷タンクの底部に適切に設置される。魚体の中心温度は、魚の種類に対応して多岐にわたるので、魚体の中心温度は、魚体予冷タンク中で−1℃〜3℃の冷却された海水によって等しい魚体中心温度として冷却される必要がある。
【0027】
魚体予冷タンク中の海水の温度は、魚体を冷却する間に増加するので、上記予冷タンク中の海水は、4℃未満に冷却するために排熱回収装置へとポンプ操作によって移される。その後、その冷却された海水は、上記濾過器を通して魚体予冷タンクへと再利用される。この予冷工程は、急速冷凍工程の魚体の中心温度が、急速冷凍工程前に等しく2℃〜4℃の範囲内になるように魚体を処理することである。
【0028】
図3は、冷塩化カルシウムブラインの概略的流れと、急速冷凍を行う冷凍チャンバの概略図とを示す。
【0029】
図3において示されるように、予冷された魚体は、引揚ループによって急速冷凍チャンバ中に移され、このチャンバにおいて、−55℃〜−50℃の塩化カルシウムブラインが、魚体を浸漬するために充填される。上記冷塩化カルシウムブラインは、ブラインクーラーを使用して調製および冷却される。このブラインクーラーは、従来の冷蔵システム(例えば、圧縮機、凝縮器、および蒸発器)によって操作される。その後、冷塩化カルシウムブラインが、ブラインタンクに移される。急速冷凍チャンバ中に冷塩化カルシウムブラインを充填する前に、この冷塩化カルシウムブラインは、従来の濾過器システムを通して濾過される。
【0030】
上記冷塩化カルシウムブラインは、ブライン流入管を通して急速冷凍チャンバ中に充填される。冷塩化カルシウムブラインは、急速冷凍チャンバ中で使用された後に、再利用ポンプによって回収され、そしてブラインクーラーにおいて再冷却される。ブラインクーラーは、冷媒(例えば、フレオンガス)を使用する従来の冷却システムによって操作される。その後、再冷却された塩化カルシウムブラインは、ブラインタンク中に移され、その後、ブライン濾過器中に移される。最後に、この塩化カルシウムブラインは、急速冷凍チャンバ中に再充填される。
【0031】
上記急速冷凍チャンバ内で、予冷された魚体は、この魚体の中心温度が60分以内で−5℃になるまで、この魚体を冷塩化カルシウムブライン中に浸漬することによって、非常に急速に冷凍される。この魚体は、この魚体の中心温度が−45℃〜−40℃になるまで、さらに冷却され、そして冷凍される。
【0032】
上記急速冷凍チャンバ内で、冷塩化カルシウムブラインの流速は、0.15m/分〜0.25m/分である。魚体の中心温度が−5℃になると、この魚体における細胞内流体の約80%〜85%が、凍結する。この魚体は、この魚体の中心温度が−45℃〜−40℃になるまで、さらに急速に冷凍される。
【0033】
急速に冷凍された上記魚体は、冷蔵タンク内に保管され、このタンクで、この魚体の中心温度は、約−42℃〜−38℃に維持される。この魚体は、−42℃〜−38℃で冷凍され、そして保管されるので、少なくとも2年間、魚肉のいかなる劣化も酸化も起こらない。
【0034】
魚体内の色素およびミオグロビンは、保管期間の間、酸化されることなく保存されるので、外観上の劣化および栄養上の劣化は、もはや起こらない。この魚体の劣化が起こると、この劣化は、ミオグロビンの酸化によって生じる、ミオグロビンの褐色への劣化によって、気付かれる。魚肉の冷凍保管の間、ミオグロビンの褐色への劣化が起こらないので、本発明における、冷塩化カルシウムブライン浸漬方法による急速冷凍および保管の方法は、冷凍した魚体を、この魚体のいかなる変化もなしで、2年間より長く保管し得る。この方法は、長期間にわたっていかなる問題もなしに、深海の漁労容器内の魚のための冷凍および保管方法に適用され得る。
【0035】
本発明の有利な効果は、冷塩化カルシウムブラインを使用する、急速冷凍方法を提供することである。この方法において、漁穫された魚体(例えば、マグロ)は、この魚体を−55℃〜−50℃の冷塩化カルシウムブライン中に浸漬することによって、急速に冷凍され、高品質の肉および色を維持している冷凍魚体が準備される。さらに、この急速冷凍方法は、細胞内流体の膨張を減少させ得、その結果、魚体の中心温度が−5℃になるまでこの魚体を急速に冷凍することによる、細胞内への塩化カルシウムブラインの吸収が完全に抑止される。さらに、この冷塩化カルシウムブライン浸漬方法によれば、従来の冷凍方法の電気エネルギーの消費と比較して、最少の電気エネルギーの消費によって、費用の削減が達成され得る。液体の熱移動は、空気の熱移動より7倍〜10倍速いという事実に基づいて、塩化カルシウムブラインは、より良好な熱移動キャリアとして使用され得、その結果、エネルギーが節約される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、従来の空冷方法の魚体冷凍温度と比較した本発明の魚体冷凍温度を示す概略表を示す。
【図2】図2は、海水の概略的流れと、予冷を行う予冷タンクの概略図とを示す。
【図3】図3は、冷塩化カルシウムブラインの概略的流れと、急速冷凍を行う冷凍チャンバの概略図とを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚体のための、冷塩化カルシウムブラインを使用する急速冷凍方法であって、以下の工程:
i)−1℃〜3℃の冷海水によって、該魚体を予冷し、該魚体の中心温度を、2℃〜4℃まで低下させる工程;
ii)該魚体の中心温度が−45℃〜−40℃になるまで、該魚体を、−55℃〜−50℃の冷塩化カルシウムブライン中に浸漬することによって、該魚体を急速に冷凍する工程;および
iii)該冷凍した魚体を、−42℃〜−38℃の温度で保管する工程、
を包含し、該魚体の中心温度は、該急速に冷凍する工程において、該冷塩化カルシウムブラインの流動性を増加させることによって、60分以内で、2℃〜4℃から−5℃まで、非常に急速に低下される、方法。
【請求項2】
前記予冷する工程が、
i)前記海水を冷却し、そして濾過する工程;
ii)該冷却された海水を、魚体予冷タンクに充填する工程;
iii)漁穫された魚体を、該魚体予冷タンク内の−1℃〜3℃の冷海水中に浸漬し、そして冷却する工程;
iv)該魚体予冷タンクから熱吸収デバイスへと、該海水を戻す工程;
v)該熱吸収デバイス中の海水を再冷却する工程;および
vi)該再冷却された海水を、システム内で濾過し、そして再利用する工程、
を包含する、請求項1に記載の魚体のための冷塩化カルシウムブラインを使用する急速冷凍方法。
【請求項3】
前記急速に冷凍する工程が、
i)飽和塩化カルシウムブラインを調製するために、前記塩化カルシウムを、清浄な水に添加する工程;
ii)該塩化カルシウムブラインを、−55℃〜−50℃まで冷却する工程;
iii)前記魚体の中心温度が60分以内で−5℃になるまで、前記予冷された魚体を該冷塩化カルシウムブライン中に浸漬することによって、該予冷された魚体を非常に急速に冷凍する工程;
iv)該魚体の中心温度が−45℃〜−40℃になるまで、該魚体をさらに急速に冷凍する工程;および
v)該塩化カルシウムブラインを再冷却し、そして再利用する工程、
を包含する、請求項1に記載の魚体のための冷塩化カルシウムブラインを使用する急速冷凍方法。
【請求項4】
前記冷塩化カルシウムブラインの流速が、0.15m/分〜0.25m/分である、請求項3に記載の魚体のための冷塩化カルシウムブラインを使用する急速冷凍方法。
【請求項5】
前記魚体における細胞内流体の80%より多くが、−5℃の魚体中心温度において凍結する、請求項4に記載の魚体のための冷塩化カルシウムブラインを使用する急速冷凍方法。
【請求項6】
前記魚体の中心温度が−42℃〜−38℃になるまで、前記魚体が最終的に冷凍される、請求項3に記載の魚体のための冷塩化カルシウムブラインを使用する急速冷凍方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−215535(P2007−215535A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−81763(P2006−81763)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(506097690)
【Fターム(参考)】