説明

海水淡水化装置

【課題】ランニングコストを低減できる海水淡化装置を提供すること。
【解決手段】海水から塩分を除去して淡水を取り出す海水淡水化装置100であって、海水の流れを受けて回転する回転体1と、回転体1を駆動源として駆動され海水を吐出する水圧ポンプ2,4と、水圧ポンプ2,4から供給された海水の塩分を除去する逆浸透膜5と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水から塩分を除去して淡水を取り出す海水淡水化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の海水淡水化装置として、水圧ポンプによって加圧された海水を、塩分を除去する逆浸透膜に送り、淡水を取り出すものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−103109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の海水淡水化装置にあっては、逆浸透膜に海水を供給する水圧ポンプが電動モータによって駆動されるものであるため、外部からのエネルギ供給及び電気系統のメンテナンスが必要となる。このため、従来の海水淡化装置では、ランニングコストの負担が大きいという問題があった。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、ランニングコストを低減できる海水淡化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、海水から塩分を除去して淡水を取り出す海水淡水化装置であって、海水の流れを受けて回転する回転体と、前記回転体を駆動源として駆動され、海水を吐出する水圧ポンプと、前記水圧ポンプから供給された海水の塩分を除去する逆浸透膜と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、水圧ポンプは海水の流れを受けて回転する回転体を駆動源として駆動されるため、外部からのエネルギ供給及び電気系統のメンテナンスが不要となる。したがって、設置が容易で設備コストを低減できると共に、ランニングコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態に係る海水淡水化装置の回路図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る海水淡水化装置の模式図である。
【図3】本発明の他の実施の形態に係る海水淡水化装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0010】
図1及び図2を参照して、本発明の実施の形態に係る海水淡水化装置100について説明する。
【0011】
海水淡水化装置100は、海水から塩分を除去して淡水を取り出す装置である。
【0012】
海水淡水化装置100は、海水の流れを受けて回転する回転体としてのプロペラ1と、プロペラ1を駆動源として駆動され海水を吸い込み吐出する低圧ポンプ2と、低圧ポンプ2から供給される海水の水質を調整する前処理装置3と、プロペラ1を駆動源として駆動し前処理装置3にて調整された処理水を吸い込み吐出する高圧ポンプ4と、高圧ポンプ4から供給された処理水の塩分を除去する逆浸透膜5とを備える。
【0013】
プロペラ1は、海面14に浮かぶフロート21に支持されて海水中に配置され、海流や潮流の流れを受けて回転する。プロペラ1に代わり、水車を用いるようにしてもよい。
【0014】
低圧ポンプ2は、フロート21に支持された支柱22を介して海水中に配置されたケーシング23内に収容される。低圧ポンプ2の回転軸はプロペラ1の回転軸と同軸に連結され、プロペラ1の回転により低圧ポンプ2が直接駆動される構造になっている。なお、プロペラ1と低圧ポンプ2は、増速機6を介して連結するのが望ましい。増速機6を設けることによって、海流の流れが弱くプロペラ1の回転速度が遅い場合でも、低圧ポンプ2及び高圧ポンプ4を効率良く回転させることができる。
【0015】
フロート21は、海底に係止された係留ロープ27によって所定の海面範囲に滞在するようになっている。したがって、プロペラ1を海水の流れが速い場所に配置することができるため、低圧ポンプ2を効率良く回転させることができる。
【0016】
低圧ポンプ2に接続された吸込通路7には、海水中の異物を除去するストレーナ8が設けられる。
【0017】
低圧ポンプ2から吐出された海水は、支柱22内に配置された第1海水供給通路9を通じて前処理装置3に供給される。
【0018】
前処理装置3は、フロート21内に配置され、低圧ポンプ2から供給される海水を所定の水質条件に調整する。前処理装置3は、ストレーナ8では除去できなった海水中の細かい異物を除去するフィルタ10と、フィルタ10を通過した処理水を貯水する処理水タンク11とを備える。
【0019】
高圧ポンプ4は、フロート21内に配置され、処理水タンク11に接続された吸込通路12を通じて処理水タンク11内の処理水を吸い込む。高圧ポンプ4から吐出された処理水は、第2海水供給通路13を通じて逆浸透膜5に供給される。逆浸透膜5は、フロート21上に配置されたフィルタ室24内に収容される。
【0020】
第2海水供給通路13には分岐通路20が設けられ、分岐通路20には逆浸透膜5に供給される処理水の圧力を調整するための圧力調整弁28が設けられる。圧力調整弁28を通じて第2海水供給通路13から分岐通路20に導かれた処理水は海水中に排出される。
【0021】
高圧ポンプ4と低圧ポンプ2の回転軸は、図示しないギヤやカップリング等を介して連結される。つまり、高圧ポンプ4も、低圧ポンプ2と同様に、プロペラ1の回転により直接駆動される構造となっている。低圧ポンプ2及び高圧ポンプ4が、請求項1の水圧ポンプに該当する。
【0022】
逆浸透膜5は、水を通す一方、塩類など水以外の不純物を透過させない性質を持つ濾過膜である。逆浸透膜5によって濾過された透過水(淡水)は、逆浸透膜5の下流に設けられた下流側室15から透過水取出通路17を通じて取り出される。取り出された透過水は、海面14に浮かび淡水を貯水可能な淡水タンク25に送られ貯水される。淡水タンク25は、ロープ26によってフロート21に連結される。なお、図3に示すように、下流側室15から取り出された透過水を、送水ホース30を通じて陸上に配置された淡水タンクに送るようにしてもよい。
【0023】
一方、逆浸透膜5によって濾過されなかった濃縮海水は、逆浸透膜5の上流に設けられた上流側室16から排出通路18を通じて海水中に排出される。
【0024】
排出通路18には、高圧ポンプ4の回転軸と同軸に連結された水圧モータ19が設けられる。水圧モータ19は、上流側室16から排出される濃縮海水が持つ流体圧力によって回転し、高圧ポンプ4の駆動を補助するものである。
【0025】
以上の実施の形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0026】
低圧ポンプ2及び高圧ポンプ4は、海水の流れを受けて回転するプロペラ1を駆動源として直接駆動されるものである。このため、低圧ポンプ2及び高圧ポンプ4に対してエネルギを外部から供給する必要がなく、また、低圧ポンプ2及び高圧ポンプ4を駆動するために電気系統を設ける必要がない。したがって、エネルギコスト及びランニングコストを低減することができる。
【0027】
また、低圧ポンプ2及び高圧ポンプ4はプロペラ1を駆動源として直接駆動されるため、自然エネルギにより電動モータを駆動して水圧ポンプを駆動する場合と比較して、エネルギの変換ロスを低減することができる。
【0028】
また、低圧ポンプ2及び高圧ポンプ4を駆動するための電動モータやそれに付随する電気系統が不要であるため、海水淡水化装置100自体をコンパクトにすることができると共に、容易に設置することができ、設備コストを低減できる。さらには、故障し難いという効果も得られる。
【0029】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明に係る海水淡水化装置は、海水から塩分を除去して淡水を取り出す装置として用いることができる。
【符号の説明】
【0031】
100 海水淡水化装置
1 プロペラ
2 低圧ポンプ
3 前処理装置
4 高圧ポンプ
5 逆浸透膜
17 透過水取出通路
18 排出通路
19 水圧モータ
21 フロート
24 フィルタ室
25 淡水タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海水から塩分を除去して淡水を取り出す海水淡水化装置であって、
海水の流れを受けて回転する回転体と、
前記回転体を駆動源として駆動され、海水を吐出する水圧ポンプと、
前記水圧ポンプから供給された海水の塩分を除去する逆浸透膜と、
を備えることを特徴とする海水淡水化装置。
【請求項2】
海面に浮かぶフロートをさらに備え、
前記回転体は、前記フロートに支持されて海水中に配置されることを特徴とする請求項1に記載の海水淡水化装置。
【請求項3】
海面に浮かび淡水を貯水可能なタンクをさらに備え、
前記逆浸透膜によって濾過された透過水は、前記タンクに送られ貯水されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の海水淡水化装置。
【請求項4】
前記逆浸透膜に供給される海水の水質を調整する前処理装置をさらに備え、
前記水圧ポンプは、
吸い込んだ海水を前記前処理装置に供給する低圧ポンプと、
前記前処理装置にて調整された処理水を前記逆浸透膜に供給する高圧ポンプと、を備え、
前記低圧ポンプと前記高圧ポンプの回転軸は連結されてなることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の海水淡水化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−71233(P2012−71233A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216507(P2010−216507)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】