説明

海洋構造物の運搬および設置用船舶並びに海洋構造物の運搬および設置方法

【課題】うねりおよび気象状況とは関係なく使用を可能にし、多数の海洋構造物が特定の時間内で運搬および設置を可能とする海洋構造物を運搬および設置する方法とその船舶を提供する。
【解決手段】海洋構造物を運搬および設置する船舶1.1であって、開口船尾12およびフロア3の後縁を超えて後部に伸びる側壁4.1,4.2に突起部9.1,9.2を備えたU形横断面を有する船体2と、フロアの下方の位置で垂直方向に移動可能な底端を有する甲板昇降式脚柱16.1、16.2、16.3、16.4を備えた船体2に組み込まれた甲板昇降式脚柱システム15.1、15.2、15.3、15.4と、側壁の上端で移動可能なクレーン20を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋構造物の運搬および設置用船舶および海洋物構造物を運搬および設置する方法に関する。当該船舶および方法は、特に沖合の風力タービンを運搬し、設置することを目的とする。
【背景技術】
【0002】
海上での風力タービンを作動は、高い平均風速による高エネルギー収量を見込める。したがって、多くの風力タービンは、海上に設置させるべきである。北海において、いくつかの広域は、風力タービンを設置するために指定されている。これらは、一般的に12マイルのゾーンの外側に位置決められている。水深は、10メートルからその2,3倍である。水深、しばしば40から50mにおよぶ。
【0003】
風力発電基地Alpha Ventusを設置するとき、風力タービンは、オランダの会社HeeremaによってThialf platformを用いて設置された。これは、油田掘削装置を設置するために一般的に用いる非常に大きな1個の設備である。当該1個の設備は、設置施設に長期間にわたって設置されたままである。
【0004】
WO2004/087494A2は、垂直的に位置合わせされる複数台の完成した風力タービンを移送するための船舶を記載している。当該船舶は、船倉から荷揚げ位置まで風力タービンを移送するための手段を備えている。さらに当該船舶は、風力タービンの支持構造上に少なくとも3箇所の荷揚げ位置で固定する締結具を具備する少なくとも3本の綱を有するウインチを備えている。支持構造上の荷揚げ位置に続いている綱の部分は、互いに水平に間隔を置いて配置されるように、荷揚げ位置に配置される。船舶は、ウインチが設置される後部に突き出ていているアームを有する。ウインチによって導かれる綱によって、風力タービンは、それらの支持構造と一緒に下ろすことができる。風力タービンは、レール上の船倉の位置から荷揚げ位置まで移送される。
【0005】
WO2007/091042A1は、風力タービンと同じく海洋構造物を運搬するための方法および装置を記載している。これらは、風力タービンをまっすぐに地面にさし込むことができる支持フレームを有する。支持フレームは、直立配置で運搬船上に保持される風力タービンを荷揚げするために用いられる。運搬船は、搬送フレームが懸架されるピボット式クレーンアームを有する。風力タービンは、クレーンアームを揺動することによって、ドックから運搬船へと運ばれる。設置部位で、風力タービンは反対方向にクレーンアームを揺動することによって、用意された支持構造に載置される。支持構造は、支持フレームと相互作用するフレームを有する。支持フレームは、油圧制御脚を有する複数本の支柱を備えている。支持構造上のフレームは、最終的に脚が留まる支持構造物に対応する数を有する。脚は、油圧制御装置に応じて垂直軸に沿って移動可能であり、風力タービンを支持構造に搭載するための減衰装置を構成する。
【0006】
【特許文献1】国際公開第WO2004/087494A2号
【特許文献2】国際公開第WO2007/091042A1号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、Thialf platformを利用した場合、沖合の風力タービンを設置するには、1〜2日で済むが、その後、他の設置部位に牽引されることを必要とする。風力タービンを設置するために当該設備を使用することは、あまりにも時間と費用がかかり過ぎる。
普通の運搬船で海洋構造物を設置する場合、うねり、海流および風の影響によって著しく妨害される。
【0008】
WO2004/087494A2に記載の特別な船舶の有する不利な点は、風力タービンが支持構造上に予め組立てられて移送される必要があるので、船荷が船舶より上に突き出ているということである。船舶に位置決めされる風力タービンの高さ、または、その数のそれぞれが増加するにつれて、船舶の安定は、ますます損なわれる。これは、船舶の輸送力および使用可能な能力を制限する。
【0009】
WO 2007/091042A1に記載の船舶は、単一の風力タービンのマストを移送することだけに適している。支持構造は、別にセットされることを必要とする。据え付けの後、運搬船は、他の風力タービンを積み込むために、港に帰港しなければならない。多数の風力タービンが、風力発電所と同じくして設置されることを必要とする場合に問題となる。
【0010】
この事情に鑑みて、本発明は、うねりおよび気象状況とは関係なく使用を可能にし、多数の海洋構造物が特定の時間内で運搬および設置を可能とする海洋構造物の運搬および設置する方法とその船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、請求項1の機能を有する船舶によって達成される。当該船舶の有利な実施態様は、従属項において言及される。
【0012】
海洋構造物を運搬および設置するための本発明の船舶であって、
開口船尾およびフロアの後縁を超えて後部に伸びる側壁に突起部を備えたU形横断面を有する船体と、
前記船舶底部より下の位置で底端を垂直方向に移動可能となるように船体に組み込まれた甲板昇降式支柱を備える甲板昇降式支柱システムと、
少なくとも一つの側壁の上端で移動可能なクレーンを備える。
【0013】
船体のU形横断面は、特に船舶強化に有利である。したがって、船舶は、特に重い海洋構造物を運搬するのに適している。船舶の流体力学と2つの構造の結合による付加的な効果は、甲板昇降式支柱システムが側壁に組み込みを可能にすることである。海洋構造物を設置する場合、甲板昇降式脚柱を下げることによって、船舶を海底に固定することができる。それによって船舶は、海流および風のうねりの影響に関係なく、安定可能に基準位置で支えられる。マストは。正確に垂直に位置合わせする必要があるので、この構成は、風力タービンを設置するのに有利である。さらに、U形横断面は、側壁の上端が移動可能なクレーン用のベースとして利用可能である点で有利である。したがって、クレーンは、船舶に船積みされる海洋構造物より上で移動することができる。船舶は、クレーンが移動可能な高い船倉を提供するために、フロアの上面に積込盤台を有することが好ましい。移動可能なクレーンによって、積込盤台に格納される海洋構造物は、積み込みができ、突起部へと移動可能である。船体は、突起部の間に積込盤台またはフロアのそれぞれを有さないので、海洋構造物を海底に下ろして設置することができる。船体の前後方向に連続して設置される複数個の海洋構造物は、単一の取外し装置の設置部位に持ってくることができ、順次に設置可能である。したがって、船舶は、特に使用するのに経済的である。クレーンの積荷輸送システムは、高い装着点で海洋構造物を握持することができるので、クレーンは、垂直に位置合わせされる海洋構造物を移送することができる。特に、船舶は、風力タービンのマストおよび垂直に位置合わせされた支持構造を移送および組立てることができる。風力タービンは、支持構造上に装着されるマストを有するユニットとして移送および下ろされる必要がない。したがって、船荷は、WO2004/087494A2の場合と同様に船舶の船体から高く伸びることはない。したがって、船舶は、使用の選択肢が広がる。
【0014】
クレーンは、少なくとも一つの側壁の上端に配置されるレールシステムに沿って移動可能であることが好ましい。
【0015】
一実施態様によれば、クレーンは、両側壁に支持されるクレーン橋梁を有する。運搬物は、それによって船舶の船体に好適に運ばれる。本発明は、クレーンが一側壁だけの上端に移動可能に配置される実施態様を含む。さらに、本発明は、個々に独立したクレーンが両側壁の上端で移動可能な実施態様を含む。
【0016】
他の実施態様によれば、クレーンは、側壁の上端で移動可能な支持体上のクレーン橋梁を支持する門形クレーンである。門形クレーンとしては、船舶が背丈の高い海洋構造物を運搬および設置するために用いることができるように、そのクレーン橋梁を特に高く配置する。他の実施態様によれば、クレーンは、ガントリークレーンである。ガントリークレーンのクレーン橋梁は、側壁の上端で直接支持され、移動可能である。他の実施態様によれば、ガントリークレーンのクレーン橋梁は、側壁の上端の支持体によって支持されるレール上で移動可能である。当該船舶について、特に背丈の高い海洋構造物を運搬および設置できるように、クレーン橋梁は、高く配置される、
【0017】
一実施態様によれば、航海中に突出部の底端が船体の水位線より上に配置されるように、側壁の突起部領域の底部が切り取られている。したがって、当該船舶は、埠頭の上方に船体を保ちつつ航行でき、海洋構造物の積換え場が、突起の間に配置されるように、その船尾がブラケットのように構成されている。積換え場に載置された海洋構造物は、当該船舶に配置され、船舶上に積み卸しするクレーンの助けを借りて積み込みが可能とされる。それ故に、船舶は、港のクレーンを使用せずに港の海洋構造物を積み込むことができる。したがって、港の船荷は、甲板昇降式脚柱を使用せずに積み込むことができる。甲板昇降脚を下ろすことによって船積みする場合、船舶は港のフロアに固定することが好ましい。
【0018】
船舶は、船体に組み込まれたバラストタンクを備えたセミサブマーシブルであり、バラストタンクにバラスト水を充水するために汲み上げ、および/または、バラストタンクからバラスト水をくみ出す。船舶は、設置部位に空のバラストタンクを備えて航行することができる。船舶は、設置部位で水面より低くてより安定するように、水バラストタンクを浸水させることができる。本実施態様において、船舶の位置は、バラストによってさらに安定する。セミサブマーシブルとして構成される場合、船舶は、船荷を船尾から船積みする、および/または、船荷を降ろさなければならない他の搬送目的にも利用することができる。例えば、船舶は、開いた船尾との間で遊動可能な舟橋用鉄舟または他の未着貨物を移送するために用いることができる。
【0019】
船舶は、安定した場所に固定するために少なくとも3台の甲板昇降式脚柱システムを備えることが好ましい。一実施態様によれば、船舶は、3台の甲板昇降式脚柱システムシステムを有し、1台の甲板昇降式脚柱システムは、船体前部の中心軸に組み込まれ、2台の他の甲板昇降式脚柱システムは、船体後部の2つの側壁に組み込まれる。
【0020】
他の実施態様によれば、船舶は、4台の甲板昇降式脚柱システムを有し、2台の甲板昇降式脚柱システムが、船体前部の側壁に互いに対向するように組み込まれ、2台の他の甲板昇降式脚柱システムは、船体後部の側壁に互いに対向するように組み込まれる。本実施態様において、甲板昇降式脚柱システムの外形寸法は、前部甲板昇降式脚柱システムが、2台の後部甲板昇降式脚柱システムより大きな負荷にさらされる3台の甲板昇降式脚柱システムの実施形態の場合と同等になることはない。
【0021】
船舶の船首は、船首突出部の有り無しで従来の方法で構成可能である。他の実施態様によれば、前記船舶は、甲板室が船体上の正面に配置される。船体上の正面に配置される甲板室は、船倉を規制しない。
【0022】
船舶は、推進系を有することはいうまでもない。これは、種々方法で設計可能である。
一実施態様によれば、船舶は、船用プロペラ駆動装置および前後の操縦支援を有する。
一実施態様によれば、船舶は、船用プロペラ・ドライブおよび前後の操縦支援を有する。
船舶が甲板昇降式脚柱で固定される前に、船首姿勢制御に関連した船用プロペラ駆動装置は、船舶が設置部位および港に正確に位置決めされることを可能にする。あるいは、船舶の推進システムは、船舶が正確に操縦可能な方向舵プロペラを備えることができる。
【0023】
他の実施態様によれば、船舶は、自動船位保持装置を有する。自動船位保持装置によって、船舶が海底に甲板昇降式脚柱で固定される前に、船舶は設置部位で自動的に位置決めされることが可能である。
【0024】
他の実施態様によれば、船舶は、垂直に位置合わせされた風力タービンの支持構造および/またはマストを船体に固定するための設備を有する。他の実施態様において、固定設備は、支持構造および/またはマストが挿入可能に船体の表面に台座を備える。マストが穴の相互補間的な円形を有するねじ切りされたリングで載置可能なマストを固定するための円形の穴を台座は有することができる。ねじ込み継手を穴の円形に挿入することによって、マストは、船体に螺合される。一実施態様によれば、螺着されたリングがマストに配置される場合、ねじ込み継手が固定または解除可能となるように、台座は、船体のギャングウエイによって船体にアクセス可能である。
【0025】
他の実施態様によれば、船体は、ラッシュシステム用の締付具を有する。これらは、必要に応じて、特にラッシュシステム用の締結具の端部とクランプ装置上の締結具を有する張力ケーブルおよび/またはロッドである。
【0026】
船舶は、種々方法で海洋構造物を備えることができる。一実施態様によれば、船舶は、複数台の風力タービンの支持構造またはマストを船舶の前後軸方向に連続的に配置して均一に、または、風力タービンのマストと支持構造を交互に不均一に配置する。不均一に配備される場合、支持構造は最初に下ろされるので、1台の支持構造は、船舶の船尾の次に配置し、その次にマストを当該支持構造上に設置することが好ましい。船舶の場所は、変更する必要はない。船舶は、一群の支持構造によって追従される一群のマストを不均一に備えることも全く可能である。支持構造が下ろされた後、マストは支持構造に載置して取り付けることができる。この場合、少なくとも1回の位置変更が必要となる。
【0027】
さらに、本発明は、請求項15の特徴を有する方法によって解決される。
【0028】
方法の有用な実施態様は、従属項において適用される。
【0029】
先だって説明した請求項の一つによって船舶上の海洋構造物を運搬および設置する本発明に基づく方法であって、
前記船舶に海洋構造物を船積みし、
船積みした前記船舶を海洋構造物の設置部位に航行し、
前記甲板昇降式脚柱を利用して設置部位の海底に船舶を固定し、
前記設置部位で側壁の後方突起部の間から海洋構造物をクレーンによって下ろし、
前記甲板昇降式脚柱を海底から持ち上げる。
【0030】
一実施態様によれば、船舶は、船積みされる前に甲板昇降式脚柱を有する港のフロアに固定され、当該甲板昇降式脚柱は船積み後、港のフロアから移動する。
【0031】
一実施態様によれば、船舶は、バラストタンクを充水させることによって海底に固定される場合、より深く浸漬される。それによって海底は、堅固な基礎を備えるので、甲板昇降式脚柱の下が圧縮される。
【0032】
他の実施態様によれば、船舶は、船体に備えた甲板昇降式脚柱によって水面から部分的に少なくとも持ち上げられる。これは、甲板昇降式脚柱への荷重を増加させて、より確実に船舶を海底に固定させる。船体が甲板昇降式脚柱によって水面から部分的に持ち上げられた場合、浮力が船体に作用する。この作用は、甲板昇降式脚柱で水面から完全に持ち上げることが可能な船体を備えた船舶の場合と同様のかなりの外形寸法を有する必要がないので、甲板昇降式脚柱システムを軽減する。
【0033】
一実施態様によれば、甲板昇降式脚柱が固定されるまで、船舶は海洋構造物の設置部位で、および/または、自動船位保持装置を有する港の積込み部位で位置決めされる。
【0034】
他の実施態様によれば、船舶は、後方突起部が海洋構造物の積換え場所を取り囲み、当該積換え場所に載置された海洋構造物がクレームによって持ち上げられ、船体に載置されるように、埠頭上に後方突起部を移動させて海洋構造物を船積みすることができる。
【0035】
他の実施態様によれば、船舶は、積換え場所に載置される風力タービンを船積みする。
【0036】
他の実施態様によれば、船舶は、垂直に位置合わせされた風力タービンの支持構造、および/または、マストを船積みし、風力タービンの支持構造および/またはマストは、設置場所に設置される。
【0037】
他の実施態様によれば、船舶は、複数台の風力タービンの支持構造または風力タービンのマストを船舶の前後軸方向に連続して、または、風力タービンのマストと支持構造を交互に船積みし、当該支持構造は、設置位置に設置され、または、風力タービンのマストは、風力タービンの支持構造に載置され、または、交互に当該支持構造は設置され、風力タービンのマストは、当該支持構造上に載置される。
【0038】
本発明は、例示的実施形態の図面に基づいて更に詳細に以下に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1aは風力タービンの支持構造とマストを装備された3台の甲板昇降式脚柱システムを備えた船舶の側面図、図1bはその縦断面図および図1cはその平面図である。
【図2】図2aは風力タービンの支持構造とマストを装備された4台の甲板昇降式脚柱システムを備えた船舶の側面図、図2bはその縦断面図および図2cはその平面図である。
【図3】航行中の図2に示す船舶の縦断面図である。
【図4】設置位置で甲板昇降式脚柱を下ろした図2に示す船舶の縦断面図である。
【図5】支持構造を持ち上げる図2に示す船舶の縦断面図である。
【図6】支持構造を下ろした図2に示す船舶の縦断面図である。
【図7】支持構造を下ろした図2に示す船舶の縦断面図である。
【図8】図3fはマストを持ち上げる図2に示す船舶の縦断面図である。
【図9】マストを移送する図2に示す船舶の縦断面図である。
【図10】支持構造上にマストを位置合わせする図2に示す船舶の縦断面図である。
【図11】支持構造上にマストを載置した図2に示す船舶の縦断面図である。
【図12】甲板昇降式脚柱を下ろし、設置位置で海面から船体を持ち上げた状態を示す図2の船舶の縦断面図である。
【図13】埠頭の風力タービン用積換え場に船舶を操舵する状態を示す縦断面図である。
【図14】突起部の間で積換え場を取り囲む状態を示す縦断面図である。
【図15】港のフロアに甲板昇降式脚柱を下ろした状態を示す縦断面図である。
【図16】風力タービンのマストを持ち上げた状態を示す縦断面図である。
【図17】船舶上でマストを下ろす状態を示す縦断面図である。
【図18】移送位置にクレーンを移動させる状態を示す縦断面図である。
【図19】支持構造を持ち上げる状態を示す縦断面図である。
【図20】船体の位置合わせする状態を示す縦断面図である。
【図21】取外し位置で門形クレームの位置合わせをする状態を示す縦断面図である。
【図22】甲板昇降式脚柱を持ち上げた状態で埠頭から航行する様子を示す縦断面図である。
【図23】図23aは支持構造を均一に配備した図2に示す船舶の側面図、図23bはその縦断面図、図23cはその平面図である。
【図24】図24aは風力タービンのマストを均一に配備した図2に示す船舶の側面図、図24bはその縦断面図、図24cはその平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下の異なる実施形態の説明において、対応する部分は、同じ引用符号を付すに留める。
【0041】
図1に示すように、海洋構造物の運搬および設置用船舶1.1は、フロア3および側壁4.1、4.2を備えたU字形状横断面の船体2を有する。
【0042】
船舶は、前方に従来の船首5を有する。さらに、甲板室6が、船舶上の前方域に配置されている。ヘリコプター・ランディングパッド7は、任意選択的に配備される。フロア3および側壁4.1、4.2は、甲板室6の後側壁と同様に、船体2の船倉を区切る。船体の側壁4.1、4.2は、フロア3の後縁8から突き出ている突起部9.1、9.2を有する。船舶が航行する場合、切欠き10.1、10.2を有する各突起部9.1、9.2は、その上端が水位線11より上に配置される。したがって、船舶の船尾12は、側面図においてブラケットの形状に構成されている。突起部9.1、9.2との間に、船体2は、大きな開口13を有する。さらに、開口13は、船尾12の後方を開放している。
【0043】
船体2において位置を決められる推進システム(図示せず)には、船用プロペラ駆動装置、前後操縦支援(例えば船首姿勢制御エンジン)および関連する駆動モータを備えている。
【0044】
フロア3の表面には積込盤台14がある。
【0045】
さらに、甲板昇降式脚柱16.1、16.2、16.3を備える甲板昇降式脚柱システム15.1、15.2、15.3が、船体2に組み込まれている。甲板室6を直接に伴っている船体2の前部において、中央の中心軸17に甲板昇降式脚柱システム15.1が配置されている。船体2の後部において、2つの対向する付加的な甲板昇降式脚柱システム15.2、15.3が、側壁4.1、4.2に組み込まれている。各甲板昇降式脚柱システム15.1、15.2、15.3には、甲板昇降式脚柱16.1、16.2、16.3が案内されるトーションボックスが備えられている。甲板昇降式脚柱16.1、16.2、16.3は、底端にスタンプ形の足18を有する。甲板昇降式脚柱16.1、16.2、16.3は、トーションボックス内を垂直に移動することができる。この目的のために、駆動装置は、例えば、ラックと係合する油圧シリンダまたは歯車を含む甲板昇降式脚柱システム15.1、15.2、15.3に組み込まれる。例えば、甲板昇降式脚柱システム15.1、15.2、15.3の駆動装置は、電動モータを有する。
【0046】
側壁4.1、4.2の上端19.1、19.2に、門形クレーン20が、レール上を移動可能に配備されている。門形クレーン20は、ローラによって底部でレール上に案内される2つの側部支持体21.1、21.2を有する。その上部で、支持体21.1,21.2は、クレーン橋梁22に橋絡される。荷揚げ手段を有する昇降ギア(図示せず)は、クレーン橋梁22に配置される。
【0047】
さらに、門形クレーン20は、側壁4.1、4.2の上端19.1、19.2に沿って門形クレーン20を移動するための駆動装置手段(図示せず)を有する。運搬物が、突起部9.1、9.2の間の開口13から昇降ギアで下ろすことができるように、門形クレーン20は、甲板室6のすぐ後の場所から突起部9.1、9.2まで移動することができる。
【0048】
当該例において、船舶1.1は、2台の完成した風力タービン23を備えている。風力タービン23は、ロータ23.3を有するジェネレータを支持する支持構造23.1およびマスト23.2に分けられる。支持構造23.1およびマスト23.2は、円錐形に構成された結合域に、垂直に取り付けることができる。支持構造23.1は、三脚台として構成される。三脚台の各足は、海底に打ち込むことができる垂直ガイドスリーブの釘23.4を備えている。この目的のために、杭打ち機は、船舶1.1の船上に担持される。これらは、釘23.4の上端部に装着することができ、船舶1.1の電源によって可撓性を有する供給ラインによって作動させることができる。この電源は、電気的、流体圧作動または空気作用によることがありえる。
【0049】
マスト23.2および支持構造23.1は、船舶1.1の前後方向に沿って交互一列に順番に配置され、支持構造23.1は後部で位置決めされる。
【0050】
風力タービン23の支持構造およびマスト23.2は、垂直に船荷デッキ14に配置される。この位置において、それらは保持されるか、または、定着装置(図示せず)によってそれぞれ固定させることができる。図2における船舶1.2は、4台の甲板昇降式脚柱システム15.1、15.2、15.3、15.4を有するという点で、上記の一実施形態と異なる。当該船舶1.2において、側壁4.1、4.2に組み込まれた対向する2台の甲板昇降式脚柱システム15.1、15.2が前部にある。対照的に、甲板昇降式脚柱システムが、船舶1.2の中央軸17にはない。船舶1.2は、船舶1.1より大きい船倉を有する。
【0051】
図2によれば、門形クレーン20は、船荷をピックアップおよび載置するに突起部9.1、9.2の上方の位置にある。船舶1.1のような船舶1.2は、風力タービン23を船積みされる。
【0052】
船舶または1.2は、波が入るのを防止するために航行中に閉じることができるテールゲート(図示せず)を船尾12に適宜に有する。テールゲートは、船倉の後端、または、好ましくはフロア3の後縁8にそれぞれ配置され、好ましくは側壁4.1、4.2の上端まで伸びる。
【0053】
図3において、自動船位保持装置によって、この場所に保たれる設置部位に到着する船舶が示されている。
【0054】
図4によれば、足18が堅固な海底24.2上のスラッジライン24.1および残物を貫通するように、甲板昇降式脚柱16.1、16.2、16.3、16.4は、設置位置に下ろされる。船体2に作用している浮力が、甲板昇降式脚柱システム15.1、15.2、15.3、15.4を軽減するように、船舶1.2は、甲板昇降式脚柱16.1、16.2、16.3、16.4によってわずかに持ち上げられるだけである。
【0055】
図5によれば、門形クレーン20が、船荷輸送手段(図示せず)で支持構造を持ち上げることができるように、当該門形クレーン20は、後部支持構造23.1の上で移動する。図6によれば、門形クレーン20は、開口13を通して突起部9.1、9.2の間に支持構造23.1を下ろす。図7によれば、釘22.4が打ち込まれるように、支持構造23.1は海底24に位置する。この位置では、支持構造23.1の接続部分は、水位線11より上に伸びている。
【0056】
それから、図8に示す門形クレーン20は、後部マスト23.2に移動し、船荷輸送手段によって当該マスト23.2を持ち上げる。図9および10は、マスト23.2が支持構造23.1に移送される船舶1.2を示している。図11によれば、マスト23.2は、円錐接続部分で支持構造23.1に結合される。船舶1.2は、甲板昇降式脚柱16.1、16.2、16.3、16.4によって支持されるので、支持構造23.1は、非常に正確に垂直に位置合わせされ、マスト23.2に容易に結合させることができる。
【0057】
その後、甲板昇降式脚柱16.1、16.2、16.3、16.4は持ち上げられ、船舶1.2は、他の風力タービン23の部分23.1、23.2が設置される他の設置位置に航行される。
【0058】
図12に図示される他の実施態様によれば、船体2が水位線11より上に配置されるように、船舶1.2は甲板昇降式脚柱16.1、16.2、16.3、16.4によって持ち上げることができる。その効果は、船体および甲板昇降式脚柱システムに対するうねりからの負荷が実質的に減少させられるということである。
【0059】
図13−22は、風力タービン23を船積みするときの船舶1.2を示す。船舶1.2の船尾12は、港の埠頭25へと移動する。これを図13に示す。図14によれば、マスト23.1が待機している突起部9.1、9.2との間に風力タービン23用の積換え場所26を取り囲むように船舶1.2は操舵される。この位置では、船舶1.2は、自動船位保持装置によって保持される。足18が港のフロア27を貫通するように、甲板昇降式脚柱16.1、16.2、16.3、16.4は下げられ、船舶1.2は、図15に示すように、船積み場所に固定される。
【0060】
その後、図16に示すように、風力タービンがマスト23.2と重なるまで、門形クレーン20は突起部9.1、9.2へと移動する。船荷輸送手段は、マスト23.2に固定され、マストは、図17に示す場所に門形クレーン20によって移送される。この位置において、マストは、適切な定着装置によって船体2に保持および固定される。
【0061】
それから、門形クレーン20は、図18に示すように、後部へと移動する。支持構造23.1は、突起部の間ですでに準備されている。門形クレーン20は、図19に示される位置の突起部9.1、9.2へと向けて移動する。船荷輸送手段は、支持構造23.1を持ち上げ、門形クレーン20は、図20に示される船倉の位置で当該船荷輸送手段を持ち上げる。この図面において、他のマスト23.2は、積換え場26に既に載置されていることを示している。上記の方法において、船舶1.2は、図21に示すように、2台の風力タービンが完全に配備されるまで、門形クレーン20は、他のマスト23.2および支持構造23.1を持ち上げる。その後、図22において、甲板昇降式脚柱16.1、16.2、16.3、16.4は、持ち上げられ、船舶1.2は設置位置に向かう。
【0062】
図23は、船舶1.2に5台の支持構造23.1だけを備える構成を示す。例えば、航行困難な海および気象状況において、背丈のより高くない船荷を移送することが望ましい場合、この配備は、支持構造23.1およびマスト23.2からなる完成した風力タービン23を配備することよりも好ましい。このような方法で船舶1.2に備えることにより、最初に支持構造23.2だけが種々の設置位置に載置される。
【0063】
図24は、船舶1.2にマスト23.2だけを備えた構成を示す。この配備は、好天の場合に好ましく、また、設置位置で既に載置されるマスト23.2を有する支持構造23.1が既に設置位置に載置されている場合に好ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海洋構造物の運搬および設置用船舶であって、
開口船尾(12)およびフロア(3)の後縁(8)を超えて後部に伸びる側壁(4.1、4.2)に突起部(9.1、9.2)を備えたU形横断面を有する船体(2)と、
前記フロア(2)の下方の位置で垂直方向に移動可能な底端を有する甲板昇降式脚柱(16.1、16.2、16.3、16.4)を備えた前記船体(2)に組み込まれた甲板昇降式脚柱システム(15.1、15.2、15.3、15.4)と、
前記側壁(4.1、4.2)の上端(19.1、19.2)で移動可能なクレーン(20)を備える。
【請求項2】
請求項1に記載の船舶において、
前記クレーン(20)は、クレーン橋梁(22)を有する。
【請求項3】
請求項2に記載の船舶において、
前記クレーンは、側壁(4.1、4.2)の上端(19.1、19.2)で移動可能な支持体(21.1、21.2)上でクレーン橋梁(22)を支持する門形クレーン(20)である。
【請求項4】
請求項1ないし3に記載の船舶において、
航行中に前記突起部の底端が船体(2)の水位線(11)の上方に位置するように、前記側壁(4.1、4.2)は、底部上の前記突起部(9.1、9.2)の領域が切り欠かれている。
【請求項5】
請求項1ないし4に記載の船舶において、
セミサブマーシブルである船体は、当該船体(2)に組み込まれたバラストタンクを備え、当該バラストタンクにバラスト水を充水するために汲み上げ、および/または、当該バラストタンクからバラスト水をくみ出す。
【請求項6】
請求項1ないし5に記載の船舶において、
3台の甲板昇降式脚中システム(15.1、15.2、15.3)を有し、
中央軸(17)上の1台の甲板昇降式脚柱システム(15.1)は、船体(2)の前部に組み込まれており、
2台の付加的な甲板昇降式脚柱システム(15.2、15.3)は、2つの側壁(4.1、4.2)の船体(2)の後部に組み込まれている。
【請求項7】
請求項1ないし5に記載の船舶において、
4台の甲板昇降式脚中システム(15.1、15.2、15.3、15.4)を有し、
対向する2台の甲板昇降式脚中システム(15.1、15.2)は、側壁(4.1、4.2)の船体(2)の前部に組み込まれ、
2台の付加的な対向する台の甲板昇降式脚中システム(15.3、15.4)は、側壁(4.1、4.2)の後部(2)に組み込まれる。
【請求項8】
請求項1ないし7に記載の船舶において、
前記船体(2)の前方に甲板室(6)を有する。
【請求項9】
請求項1ないし8に記載の船舶において、
船用プロペラドライブおよび前後操縦支援を有する。
【請求項10】
請求項1ないし9に記載の船舶において、
自動船位保持装置を有する。
【請求項11】
請求項1ないし10に記載の船舶において、
風力タービン(23)の支持構造(23.1)および/またはマスト(23.2)を垂直に位置合わせされた状態で船体(2)に固定する装置を備える。
【請求項12】
請求項1ないし11に記載の船舶において、
風力タービン(23)の支持構造(23.1)および/またはマスト(23.2)の台座および/またはラッシング・システム用の締付具を備える。
【請求項13】
請求項1ないし12に記載の船舶において、
風力タービン(23)の複数台の支持構造(23.1)またはマスト(23.2)を船舶の前後軸方向に連続して、または、風力タービン(23)のマスト(23.2)と支持構造(23.1)を交互に配置して備える。
【請求項14】
請求項1ないし13に記載の船舶において、
開口船尾(12)を閉じるテールゲートを備える。
【請求項15】
請求項1ないし13に記載の船舶によって海洋構造物を運搬および設置する方法であって、
前記船舶(1)に海洋構造物(23)を船積みし、
船積みされた前記船舶(1)を海洋構造物(23)の設置位置に航行させ、
前記甲板昇降式脚柱(16)を使用して設置位置の海底に船舶(1)を固定し、
前記設置位置で側壁(4.1、4.2)の後方突起部(9.1、9.2)の間から前記海洋構造物(23)をクレーン(20)によって下ろし、
前記甲板昇降式脚柱(16)を海底(24)から解放する。
【請求項16】
請求項15に記載の方法において、
船積みの前に、前記甲板昇降式脚柱(16)によって港のフロア(27)に船舶を固定し、
船積みの後に、前記甲板昇降式脚柱(16)を港のフロア(27)から解放する。
【請求項17】
請求項15または16に記載の方法において、
前記バラストタンクを浸水させることによって海(24)のフロアに前記船舶が固定される場合、当該船舶(1)はより深く浸漬される。
【請求項18】
請求項15または16に記載の方法において、
前記船舶(1)は、甲板昇降式脚柱(16)によって船体(2)を水面から部分的に少なくとも持ち上げる。
【請求項19】
請求項15ないし18に記載の方法において、
前記甲板昇降式脚柱(16)が海底(24)に固定されるまで、前記船舶は海洋構造物(23)の設置位置で自動船位保持装置によって位置決めされる。
【請求項20】
請求項15ないし19に記載の方法において、
前記突起部(9.1、9.2)が、海洋構造物(23)の積換え場(26)を取り囲むように、埠頭(25)上で側壁(4.1、4.2)の後方突起部(9.1、9.2)を移動させて海洋構造物(23)を船舶(2)に船積みし、
前記積換え場(26)に載置された海洋構造物をクレーン(20)によって持ち上げ、船体(2)に載置する。
【請求項21】
請求項16ないし20の一つに記載の方法において、
前記船舶(1)に風力タービン(23)を船積みし、
設置位置で前記風力タービン(23)を設置する。
【請求項22】
請求項15ないし21の一つに記載の方法において、
垂直に位置合わせされた前記風力タービン(23)の支持構造(23.1)および/またはマスト(23.2)を船舶(1)に船積みし、
前記風力タービン(23)の支持構造(23.1)および/またはマスト(23.2) を設置位置に設置する。
【請求項23】
請求項22に記載の方法において、
前記風力タービン(23)の複数台の支持構造(23.1)または複数台のマスト(23.2)を前後軸に連続して、または、風力タービン(23)のマスト(23.2)と支持構造(23.1)を交互に船積みし、
前記支持構造(23.1)を設置位置に設置し、または、風力タービン(23)のマスト(23.2)を風力タービン(23)の支持構造(23.1)に載置し、または、支持構造(23.1)を設置し、支持構造上にマスト(23.2)を載置する。
【請求項24】
請求項15ないし23の一つに記載の方法において、
航行中に前記船舶の船倉をテールゲートによって閉じる。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2012−76738(P2012−76738A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209329(P2011−209329)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(511232215)ノルディック・ヤーズ・ホールディング・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンタク・ハフツング (1)
【Fターム(参考)】