説明

海洋深層水の利用方法

【課題】高血圧等に特に効果のある海洋深層水の利用方法を提供する。
【解決手段】脱塩した淡水の海洋深層水に一晩〜数日間、根昆布を漬け込むことにより根昆布の成分を海洋深層水に溶出させ、成分が溶出した海洋深層水を飲用とし、若しくは、加熱濃縮・乾燥により摂取可能な粉末に、または粉末を成形した錠剤とする。
【効果】根昆布に含まれるラミニンをはじめ、アルギン酸やカリウムといった血圧降下に有効な成分を効率的に抽出し、海洋深層水のミネラル分との相乗効果も加わるため、飲用、粉末または錠剤として摂取することにより、特に高血圧の改善に顕著に薬効をあらわすことができ、また、糖尿病、便秘、高コレステロールなど、広く健康面に薬効がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、深海から汲み上げられる海洋深層水の健康面への利用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海洋深層水は、陸棚外縁部より沖およそ200〜300メートルより深い深海に存在する海水であって、世界的には例えばグリーンランド付近を起源とする大きな流れやその他の地域的流れもあるが、日本では、主に日本海側ではウラジオストック沖合付近を起源とする「日本海固有水」、太平洋側ではオホーツクやアラスカ付近を起源とする「北太平洋中層水」と呼ばれる流れがあって、それを深層水として取水し、普通には逆浸透膜(RO膜)等により脱塩した淡水が、飲食品分野、農業・漁業分野、健康・美容・医療分野等に広く利用されている。
【0003】
海洋深層水の取水箇所は、日本では高知県の室戸や、富山県の滑川や入善、能登半島等の幾つかがあって、起源や海洋環境、取水地点や深さ、温度等により水質や成分が若干異なるものの、いずれの箇所の海洋深層水も、その由来からほゞ同様に低温安定性、富栄養性、清浄性、熟成性、ミネラル特性を具備している。これらの特性が各種分野に良好な効果をもたらしているが、海洋深層水の活性(水分子の活動が活発であること)に注目し、活性が効果の大きな原因であるという考えもある。
【0004】
これについては、水は単独の分子では存在しなく、ぶどうの房のように結合し(しかし、活発に分子が出入りしていると考えられている)、クラスターと称される分子集団として存在しているが、活性があるほどクラスターが小さくなるため、例えば、人間の細胞に浸透しやすくなり、このことで、水の出入りがスムースになることから老廃物が細胞から排除され、こうして健康に良好に作用し、また、食物が柔らかくなるとされる考え方である。ちなみに、海洋深層水の由来を見てみると、元は北極近海の氷が徐々に融けて海底に沈下したもので、それが数百年、数千年をかけて日本近海に到達している。この経過が前記各特性の原因ではあるが、一旦氷であった水には活性が付与されていることも知られている。これが自然界で大規模に行われているので活性が強く、しかも、深海で数千年の長い間の熟成により活性の保存性・持続性が特に具備しているのが海洋深層水であると考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
海洋深層水は、上記のような特性を有することから、健康、美容、医療分野に利用され、殊にアトピー性皮膚炎の治療に有効とされる。高血圧の改善にも有効ではあろうが、従来、特に利用されるという程に効果が期待されていなかった。しかし、高血圧は国民病と言われるほどに多いことから、この発明者、出願人においては、海洋深層水を高血圧の改善に効果的に利用できるよう、鋭意研究と実験を重ねてきた。つまり、この発明は、上記のような実情に鑑みて、高血圧等に特に効果のある海洋深層水の利用方法を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、この発明は、脱塩した淡水の海洋深層水に一晩〜数日間、根昆布を漬け込むことにより根昆布の成分を海洋深層水に溶出させ、成分が溶出した海洋深層水を飲用とし、若しくは、加熱濃縮・乾燥により摂取可能な粉末に、または粉末を成形した錠剤とすることを特徴とする海洋深層水の利用方法を提供する。
【0007】
海洋深層水の利用方法は上記の如くであるから、淡水の海洋深層水に根昆布の有効成分が溶出するが、海洋深層水には、前記のように、小さいクラスターにより細胞に浸透しやすい活性を有するので、水道水等の普通の水で抽出する場合に比較して、根昆布の有効成分が効率的に抽出される。そして、海洋深層水のミネラル分に根昆布の有効成分がプラスされるので、健康面に良好に相乗効果を発揮する。つまり、健康に卓越して有効な飲用水、若しくは、それを乾燥した粉末または錠剤が得られる。
【0008】
成分的に観ると、根昆布には、アルギン酸やフコイダンといった水溶性の食物繊維のほかに、カルシウム、鉄、カリウム、マンガン、亜鉛等のミネラル分が含まれ、また、ビタミンA,C,E、B群、Kなどがバランス良く含まれている。加えて、血圧を下げる特効成分であるラミニンというアミノ酸も含まれている。アルギン酸やフコイダンは、ヌルヌルした溶出成分であるが、粘りけが大変強い食物繊維であるため血糖値の急上昇や便秘を防ぎ、コレステロールの排出を促進する。特に、アルギン酸はナトリウムと結びついてそれを排出するので、アルギン酸はこの点でも血圧を下げる作用を有する。
【0009】
根昆布に含まれるカリウムもナトリウムの排出作用を有し、これも血圧降下に役立つ。根昆布に含まれるナトリウム(塩分)を除去するには、予め水に短時間つけてそれを除去する(請求項2)。ヨウ素は、甲状腺ホルモンの材料となる体に不可欠な成分で不足すると、甲状腺機能低下症に陥りさまざまな症状が現れるが、過剰に摂ると却って甲状腺の働きが悪化して体に害がある成分でもある。しかし、溶出が比較的早いので、根昆布を水に短時間漬けることにより残存するヨウ素の量を不都合なく適度に減らすことができる(請求項2)。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、この発明の海洋深層水の利用方法によれば、根昆布に含まれるラミニンをはじめ、アルギン酸やカリウムといった血圧降下に有効な成分を効率的に抽出し、海洋深層水のミネラル分との相乗効果も加わるため、飲用、粉末または錠剤として摂取することにより、特に高血圧の改善に顕著に薬効をあらわすことができ、また、糖尿病、便秘、高コレステロールなど、広く健康面に薬効があるという優れた効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
根昆布は、普通の昆布に比べて有効成分が多く、コップに入れて水道水などの普通の水に一晩漬け、有効成分を溶出させた水を飲む健康法に特に用いられる。これは周知のことであるが、この発明においては、根昆布を海洋深層水に漬けるため、海洋深層水の活性により根昆布の有効成分が効率的に抽出される。さらにその効率を高めるためには、根昆布を予め粉砕しておくことが望ましい。また、塩分や過剰ヨウ素の弊害を防止する必要があると考える安全性からは、予め水に短時間だけ浸してから使用する。そうすると、健康増進に適する量のヨウ素を摂ることができる。また、この場合の浸し水にも淡水の海洋深層水を使用すると良い。
【0012】
海洋深層水に漬ける時間については、特に温度との関係でさまざまとなり、温度が高く時間が長いほど抽出率が多くなるが、根昆布の抽出水は腐敗しやすいという問題があるため、温度と時間が制約される。したがって、特許請求の範囲において、一晩〜数日間と記載したのは、一応の目安であって、これで厳密に規定したものではない。冷蔵庫において0°C近い温度で保存すれば、さらに長く時間をかけることが可能である。いずれにしても、腐敗を防止するために、夏期には常温を避け冷蔵庫を使用する。また、海洋深層水に有効成分の濃度を高めるためには、根昆布を2〜3回取り替えるようにする。
【0013】
海洋深層水に漬けると、根昆布から溶出したアルギン酸やフコイダンなどの有効成分のヌルヌルが根昆布付近に停滞しこれが抽出を妨げることになるので、時間を早めるためには時々水を攪拌して濃度を均等化させる。また、根昆布の面にはヌルヌルが付着しているので、それも全て利用するには最後に遠心分離機等を用いて採取する。いずれにしても、最終的には、根昆布に有効成分が幾分か残ることになるので(例えば、半日漬けると半分弱が残る)、それを他の用途に有効に使用することができる。
【0014】
根昆布の有効成分を抽出した海洋深層水の利用については、基本として、それを飲用する。飲用とする販売形態としては、その飲用水を瓶詰(アンプル化)とする。または、海洋深層水と根昆布とをセットで販売することも考えられる。さらに、商品化を進めるには、サプリメントとして粉末化、または錠剤化する。
【実施例】
【0015】
次に、海洋深層水と根昆布とからなるサプリメントの製造方法として実施した場合について説明する。
【0016】
(根昆布水の製造方法)
原材料
根昆布(北海道羅臼産) 100グラム
海洋深層水(富山県滑川産、脱塩済) 2リットル
【0017】
根昆布は、汚れを布巾等を使って拭き取った後(軽く水洗いしても良い)、それを海洋深層水(真水でも良い)に20分程度漬けて、塩分および過剰なヨウ素を取り除く。それから、冷蔵庫において海洋深層水に2日間漬け込んで根昆布から成分を抽出する。
【0018】
成分が抽出した根昆布水は、180ミリリットルの瓶に入れ蓋を軽く被せた状態において蒸し器で加熱することにより滅菌し、蒸し器の中で蓋を締めて密封する。こうすれば、賞味期限が1年間程度の健康飲用水として提供できる。なお、昆布水は腐敗しやすいけれども、海洋深層水は無菌に近い清浄性を有し、また、雑菌の繁殖を抑制することで知られる活性も持続的に有することから、水道水等を使用する場合と比較して保存性は良好である。また、なめらかで飲みやすい根昆布水が得られた。
【0019】
これを1日1本程度飲用することにより、高血圧、糖尿病、便秘、高コレステロール等に効果がある。これについては、52歳の女性で、最高血圧が180、最低血圧が100であった52歳の女性が、1日に180ミリリットルを1ヵ月の間飲用したところ、それぞれ130、85の正常値に改善された。なお、使用済み根昆布は、漬け込み水が海洋深層水であることから特に柔らかくなっており、煮液のしみ込みも良いので、非常に美味しい佃煮に調理することができた。
【0020】
(根昆布錠剤の製造方法)
根昆布100グラムをミキサーにより粉末にする。それを2〜3分程度さっと水に漬けて、塩分および過剰なヨウ素を取り除く。それを布のフイルターで濾過して根昆布を1リットルの海洋深層水に1日間漬け込んで成分を抽出する。
【0021】
成分が抽出した根昆布水は、加熱して濃縮した後、凍結乾燥することにより成分を粉末とし、それに連結材等を混入して成形することにより錠剤とした。また、使用済み根昆布粉末は、水分を吸収して膨出しネバネバの泥状であるが、これを温風乾燥することにより粉末に戻し、鶏の餌に混ぜて使用したところ、黄身が色鮮やかで張りのある美味しい卵を産卵した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱塩した淡水の海洋深層水に一晩〜数日間、根昆布を漬け込むことにより根昆布の成分を海洋深層水に溶出させ、成分が溶出した海洋深層水を飲用とし、若しくは、加熱濃縮・乾燥により摂取可能な粉末に、または粉末を成形した錠剤とすることを特徴とする海洋深層水の利用方法。
【請求項2】
根昆布を海洋深層水に漬け込む前に、予め水に短時間漬けることにより塩分および過剰なヨウ素を溶出させて取り除いておくことを特徴とする請求項1記載の海洋深層水の利用方法。





【公開番号】特開2007−166990(P2007−166990A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−369699(P2005−369699)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(393005783)
【Fターム(参考)】