説明

海苔の製造方法および製造装置

【課題】海苔の食感向上効果を発現するにあたり、加工時のストレスによる海苔の割れを防止した製造方法および製造装置を得ようとするものである。
【解決手段】生海苔を洗浄した後、該海苔を板状に抄製して板状海苔を形成し、乾燥手段により、で加熱し、乾燥し、該板状海苔を穿孔手段により穿孔した後、焙焼手段により焙焼する焼海苔の製造方法において、穿孔手段を一次元的に2段階以上の複時穿孔動作を実施して、板状海苔を穿孔する。そして穿孔手段を円周に鋸歯状刃を具えた円盤状穿孔工具を部分的に複数個積層配設した穿孔用回転ローラーとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海苔の製造方法及びその製造装置に関する。
【0002】
本発明は、特に、生海苔を洗浄した後、該海苔を板状に抄製して板状海苔を形成し、乾燥手段により、30℃から90℃の範囲で加熱し、水分含量が1%から13%の範囲になるように乾燥し、該板状海苔に穿孔した後、板海苔の表面温度が140℃から250℃になるように設定した焙焼装置で焙焼する焼海苔の製造方法において、穿孔を一次元的に2段階以上の複時動作を実施によって実施することを特徴とする焼のりの製造方法および鋸歯刃を備えた円盤状穿孔工具を積層した穿孔用回転ロールを板状海苔流れ方向に対し、直角に複数本配設し、各円盤状穿孔工具の積層部位が部分的であることを特徴とする海苔の製造装置に関する。
【背景技術】
【0003】
海苔は通常乾燥品もしくはそれを焙焼した状態で流通しているのが一般的であるが、海苔の品質を決定づける主要素として「テクスチャー(硬さ)」があげられる。海苔は柔らかいほど嗜好性が強くなることから、海苔に多数の孔をあけることで食感の改善をはかることが検討されてきている。
【0004】
本発明者等は、この孔に注目し、研究をしてきたところである。
【0005】
多数の孔を製造ライン上で短時間に効率よく穿孔するには、鋸歯刃を備えた円盤状穿孔工具を積層した穿孔用回転ロールによって連続的に実施するなどの方法がとられるが、鋸歯刃を備えた円盤状穿孔工具の積層度を増すことで孔の密度を増加させ、食感改善効果を高めようとすると海苔にストレスがかかり、作業中や流通もしくは喫食時に破れ、割れや欠けが発生しやすくなり、製品としての価値が著しく低下する。
【0006】
通常、鋸歯刃を備えた円盤状穿孔工具を積層した穿孔用回転ロールを用いて海苔に
穿孔する場合、海苔の流れ方向に直角に設置かつ海苔の流れ方向に対する直角列全辺に上記回転ロールを配すが、この場合、孔の密度を増加させるために鋸歯刃を備えた円盤状穿孔工具の積層を増加するにしたがい、海苔へのストレスも増加していくため、作業中や流通もしくは喫食時の破れ、割れや欠けの発生を防止できない。
【0007】
このような状況では、海苔への穿孔数に限度が生じ、食感改善効果を十分に発現させることができない。
【0008】
一方、上記の直角列全辺に高密度に円盤状穿孔工具の積層を行った場合、海苔へのストレスを抑制するためには、海苔の流れ速度を低下させなければならず、生産性が著しく低下する。
【0009】
さらに孔の密度を増加させるために鋸歯刃を備えた円盤状穿孔工具の積層を増加するには、該工具および該工具間の隙間を形成するためのスペーサーの肉厚を薄くしなければならず、それらの強度および精度を高めるために材質の選定や加工方法に制約がおき、装置の製造のコストおよび技術的にも不利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これらの従来の手法においては、海苔の食感改善効果が発現するのに十分な孔の密度を確保しようとすると海苔に割れや欠けが生じて商品価値を著しく失うばかりか、作業速度の低下や製造装置そのもののコストの高騰の問題を有している。また孔の密度を少なくして海苔の食感改善効果を発現させるためには、各孔の面積を大きくすることが有効であるが、この場合、海苔の表面の孔が目立ったり、寿司やおにぎりに巻いた時、ごはんが見えたりすること等による視覚上の商品価値が低下して使用に耐えなくなる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の問題を解決すべく、鋭意研究の結果なされたものである。
【0012】
本発明は、海苔の食感改善効果が発現するのに十分な孔の密度を確保するために穿孔を一次元的に2段階以上の複時動作を実施することで、海苔へのストレスを減少させて作業中や流通もしくは喫食時の破れ、割れや欠けの発生を防止する製造方法および上記2段階以上の複時動作を連続的に実施して、海苔を穿孔する海苔の製造装置を提供するものである。
【0013】
本発明は、海苔の製造方法において、生海苔を洗浄した後、該海苔を板状に抄製して板状海苔を形成し、乾燥手段により、30℃から90℃の範囲で加熱し、水分含量が1%から13%の範囲になるように乾燥し、該板状海苔に穿孔した後、海苔の表面温度が140℃から250℃になるように設定した焙焼装置で焙焼するにあたり穿孔を一次元的に2段階以上の複時動作を実施することによって穿孔することを特徴とする海苔の製造方法に関する。
【0014】
さらに鋸歯状刃を備えた円盤状穿孔工具を積層した穿孔用回転ローラーを板状海苔の流れ方向に対し、直角に複数本配設し、各円盤状穿孔工具の積層部位が部分的であることを特徴とする海苔の製造装置に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、海苔の食感を柔らかく改善するに十分な密度の孔をあけても作業中や流通もしくは喫食時の破れ、割れや欠けの発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る海苔の製造方法についての製造プロセス説明図である。
【図2】本発明に係る海苔の製造方法についてのAユニットの配置説明図である。
【図3】本発明に係る海苔の製造方法についてのAユニットの動作説明明図である。
【図4】本発明に係る海苔の製造方法についてのBユニットの配置説明図である。
【図5】本発明に係る海苔の製造方法についてのBユニットの動作説明図である。
【図6】Aユニット及びBユニットで板状海苔の全面に均一に穿孔した状態の説明図である。
【図7】海苔の硬さについての官能評価とテクスチャー(硬さ)値の関係を示す。
【図8】板状海苔をAユニット及びBユニットを用いて穿孔したものの回転ローラーの直径と割れ発生及びテクスチヤー(硬さ)値の関係を示す。
【図9】Aユニット及びBユニットの板状海苔の全面(190mmX210mm)における5mm以上の割れの数を示す。
【図10】Aユニット及びBユニットの板状焼海苔の全面(190mmX210mm)における5mm以上の割れの数を示す。
【図11】Aユニット及びBユニット板状焼海苔の全面(190mmX210mm)における5mm以上の割れの数を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、海苔の製造方法において、生海苔を洗浄した後、該海苔を板状に抄製して板状海苔を形成し、乾燥手段により、加熱し、乾燥し、該板状海苔を穿孔手段により穿孔した後、焙焼手段により焙焼する焼海苔の製造方法において、穿孔手段を一次元的に2段階以上の複時穿孔動作を実施して、板状海苔を穿孔することを特徴とする。
【0018】
本発明は、海苔の製造方法において、前記乾燥手段により、30℃から90℃の範囲で加熱し、水分含量が1%から13%の範囲になるように乾燥することを特徴とする。
【0019】
本発明は、海苔の製造方法において、前記焙焼手段により、板状海苔の表面温度が140℃から250℃の範囲になるように 焙焼することを特徴とする。
【0020】
海苔の製造方法において、前記穿孔手段を一次元的に2段階以上8段階以下の複時穿孔動作を実施することにより海苔を穿孔することを特徴とする。
【0021】
本発明は、海苔の製造方法において、前記穿孔手段を鋸歯状刃としたことを特徴とする。
【0022】
本発明は、海苔の製造方法において、前記穿孔手段を円周に鋸歯状刃を具えた円盤状穿孔工具としたことを特徴とする。
【0023】
本発明は、海苔の製造方法において、前記穿孔手段を円周に鋸歯状刃を具えた円盤状穿孔工具を複数個積層配設した回転ローラーとしたことを特徴とする。
【0024】
本発明は、海苔の製造方法において、前記円周に鋸歯状刃を具えた円盤状穿孔工具を部分的に複数個積層配設した穿孔用回転ローラーとしたことを特徴とする。
【0025】
本発明は、海苔の製造方法において、板状海苔の移動送り方向に対し、前記円盤状穿孔工具を複数個積層した穿孔用回転ローラーを、直角に複数本配設し、海苔を穿孔することを特徴とする。
【0026】
本発明は、海苔の製造方法において、板状海苔の移動送り方向に対し、前記円盤状穿孔工具を複数個積層した穿孔用回転ローラーを、直角に複数本配置し、各円盤状穿孔工具の積層部位を部分的に配設したことを特徴とする。
【0027】
本発明は、海苔の製造方法において、板状海苔の移動送り方向に対し、前記円盤状穿孔工具を部分的に積層した穿孔用回転ローラーを、直角に2本配置するとともに、一方の穿孔用ローラーの積層部位と他方の穿孔用回転ローラーの積層部位を異ならしめたたことを特徴とする。
【0028】
本発明は、海苔の製造方法において、板状海苔の移動送り方向に対し、前記円盤状穿孔工具を部分的に積層した穿孔用回転ローラーを、直角に4本配置するとともに、第1の穿孔用ローラーの積層部位と第2の穿孔用回転ローラーの積層部位を異ならしめるとともに、第3の穿孔用ローラーの積層部位は、前記第1の穿孔用回転ローラーの積層部位と略同じ位置とし、第4の穿孔用回転ローラーの積層部位は、前記第2の穿孔用回転ローラーの積層部位と略同じ位置とし、各穿孔用回転ローラーの穿孔工具により、海苔を穿孔することを特徴とする。
【0029】
本発明は、海苔の製造方法において、板状海苔の移動送り方向に対し、前記円盤状穿孔工具を部分的に積層した穿孔用回転ローラーを、直角に複数個配置するとともに、各穿孔用回転ローラーの円盤状穿孔工具の積層部位を異ならしめたたことを特徴とする。
【0030】
本発明は、海苔の製造方法において、前記穿孔手段の穿孔用回転ローラーを2乃至8個とし、各々の穿孔用回転ローラーの円盤状穿孔工具の積層部位を異ならしめたたことを特徴とする。
【0031】
本発明は海苔の製造装置であって、少なくとも、海苔を板状に抄製する抄製手段、乾燥手段、板状海苔を穿孔する穿孔手段、焙焼手段とを具えた海苔の製造装置において、該穿孔手段を円盤状穿孔工具を積層した複数の穿孔用回転ローラーとすることを特徴とする。
【0032】
本発明は海苔の製造装置において、前記穿孔手段を複数の穿孔用回転ローラーとし、其々の穿孔用回転ローラーの前記円盤状穿孔工具の積層部位を異ならしめたたことを特徴とする。
【0033】
本発明は海苔の製造装置において、前記穿孔用回転ローラーを2本以上8本以下の範囲で配設し、各回転ローラーにおける各円盤状穿孔工具の積層部位が部分的であり、かつ其々の配設部位が異なることを特徴とする。
【0034】
本発明は海苔の製造装置において、前記各円盤状穿孔工具の穿孔刃部を鋸歯状歯としたことを特徴とする。
【0035】
本発明は、海苔の方法において、板状海苔の移動送り方向に対して、円盤状穿孔工具を部分的に積層した穿孔用回転ローラーを、直角に複数個配置するとともに、各穿孔用回転ローラーの円盤状穿孔工具の積層部位を異ならしめて、複時穿孔動作により、海苔を穿孔することを特徴とする。
【0036】
本発明は、海苔の穿孔装置において、円盤状穿孔工具を部分的に積層した穿孔用回転ローラーと、板状海苔の移動送り方向に対し、直角に複数個配置するとともに、各穿孔用回転ローラーの円盤状穿孔工具の積層部位を異ならしめたことを特徴とする。
【0037】
穿孔手段としては、鋸歯状刃を備えた円盤を積層した回転ローラーを複数用いて回転させ、一次元的に2段階以上の複時動作をおこなって板状海苔に穿孔を行うが、他に円錐穿孔針、その他適宜形状を回転ローラー上に配設したものなども使用でき、海苔に孔を貫通できる構造であればいかなる形状でも効果は発現する。
【0038】
回転ローラー全面に鋸歯状刃を積層して穿孔した場合は、穿孔後に割れが発生し、焼加工後その数はさらに増加する。
【0039】
本発明では、2段階の回転ローラーからなるユニット、前記ユニットを2ユニット直列に接続した4段階の回転ローラーからなるユニット、あるいは、4段階の回転ローラーからなるユニットを2ユニット直列に接続した8段階の回転ローラーを用いる。
【0040】
さらに、これらは2段階の回転ローラーからなるユニットを基本とし、第1ローラは、通過する板状海苔の中心部50mm、第2ローラーは、板状海苔の両端70mmに穿孔するよう鋸歯状刃を備えた円盤状穿孔工具を部分的に積層している。
【0041】
前記ユニットを2ユニット直列に接続した4段階の回転ローラーからなるユニットでは、第1ローラは、通過する板状海苔の中心部50mm、第2回転ローラーは、板状海苔の両端70mmに穿孔するよう鋸歯状刃を備えた円盤状穿孔工具を積層し、前段の回転ローラーが穿孔した位置を避けて穿孔する必要がある。すなわち、第3回転ローラーは、第1回転ローラーと略同じ部分であるが、各穿孔された孔位置の間に穿孔するよう鋸歯状刃を備えた円盤状穿孔工具の積層を調整している。第4回転ローラーは、第2回転ローラーと略同じ部分かつ各穿孔位置の間に穿孔するよう鋸歯状刃を備えた円盤状穿孔工具の積層を調整している。
【0042】
4段階の回転ローラーからなるユニットを2ユニット直列に接続した8段階の回転ローラーの場合は、第1、第3、第5及び第7回転ローラーは海苔中心部の略50mm、第2、第4、第6及び第8回転ローラーは海苔両端部の各略70mmの部分に穿孔位置の重なりがないよう調整されている
海苔への穿孔間隔は、9mmから1.5mmの範囲にあることが好ましい。9mmを超える場合は、海苔の硬さの減少による食感向上効果が不十分であり、1.5mm未満の場合は、海苔の強度いわゆるコシが弱くなり、おにぎり、寿司や団子等に供すると海苔に「ひび割れ」や「縮み」が発生して商品価値がなくなる。
【0043】
回転ローラーを2段、4段あるいは8段もうけた製造装置で140枚/分の速度で穿孔したのち、 板状海苔の表面温度140℃から250℃の範囲で焙焼して製した板状焼海苔の全面(190mmX210mm)における割れは見出されない。
【実施例】
【0044】
以下本発明にかかる海苔の製造方法および製造装置についての実施例を図1乃至11とともに説明する。
【0045】
図1に示されるように生海苔の抄製工程、板状海苔の乾燥工程、穿孔工程、加熱工程、さらに任意の大きさに調製する場合は切断工程を経て海苔製品を得る。
【0046】
先ず、生海苔を洗浄し、抄製してメンチ状の板状海苔を作る。
【0047】
ついで乾燥手段により乾燥する。本発明にあっては、30℃〜90℃の熱風により、水分が1%〜13%の範囲になるまで乾燥する。
【0048】
30℃未満の熱風で,乾燥した場合、所定の水分に到達するまでに長時間要するために腐敗などの品質劣化が発生し、90℃を超える熱風で乾燥した場合、海苔の一部
に焦げが生じる等の問題が生じる。水分が1%未満になるまで、乾燥すると、割れや欠けが発生し易くなる。
【0049】
つぎは、穿孔工程である。穿孔手段としては、鋸歯状刃を備えた円盤状穿孔工具を積層した回転ローラーを複数用いて回転させ、一次元的に2段階以上の複時動作をおこなって板状海苔に穿孔をおこなった。
【0050】
穿孔手段としては、他に円錐穿孔針、その他適宜形状を回転ローラー上に配したものなども使用でき、海苔に孔を貫通できる構造であればいかなる形状でもよい。
【0051】
穿孔工程は、乾燥後の板状海苔の穿孔であって、2段階以上の複数段階に分けて穿孔を行なう。さらに各段階の穿孔は、板状海苔の一部分に行うことが良く、複数段階にあって前段と同一部分を避けて、前段穿孔位置を避けて孔の間を穿孔する。上記の各段階における板状海苔の穿孔部位および孔間の最適条件の設定は、生海苔の特性、ミンチ状海苔の厚さ等の特性により行うことは勿論である。
【0052】
図2は、2段階の回転ローラーからなる穿孔装置の一例を示す模式説明図であり、以下Aユニットと称す。第1ローラーは、通過する板状海苔の中心部50mm、第2回転ローラーは、板状海苔の両端70mmに穿孔するよう鋸歯状刃を備えた円盤状穿孔工具を積層している。両回転ローラーが穿孔する部分は、重複部位が無いように設定する。
【0053】
図3にAユニットをもちいて板状海苔に穿孔する場合の動作説明図を示す。本ユニットを用いて穿孔することにより、板状海苔に割れを発生させることなく、海苔のテクスチャ(硬さ)が減少したことによる食感改善に良好な結果を得た。
【0054】
図4は、4段階の回転ローラーからなる穿孔装置の一例を示す模式説明図であり、以下Bユニットと称す。第1回転ローラーは、通過する板状海苔の中心部50mm、第2回転ローラーは、板状海苔の両端70mmに穿孔するよう鋸歯状刃を備えた円盤状穿孔工具を積層している。第3回転ローラーは、第1回転ローラーと略同じ中心部分で、かつ第1回転ローラーで穿孔された各孔の位置の間に穿孔するよう鋸歯状刃を備えた円盤状穿孔工具の積層を設定している。第4回転ローラーは、第2回転ローラーと略同じ中心部分からずれた部分で、かつ第2回転ローラーで穿孔された各孔の位置の間に穿孔するよう鋸歯状刃を備えた円盤状穿孔工具の積層を設定している。
【0055】
図5にBユニットをもちいて板状海苔に穿孔する場合の動作説明図を示す。本ユニットをもちいて穿孔することにより、Aユニットに比して板状海苔に割れを発生させることなく、高速で加工することが可能となる。
【0056】
また、各回転ローラーの直径は、各回転ローラーの回転速度、回転ローラーの配設間隔などを調整して板状海苔にストレスをかけないように選定する。
【0057】
図6は、上記Aユニット及びBユニットで板状海苔の全面に均一に穿孔した状態の説明図である。板状海苔の外寸は、通常190mmX210mmであり、本発明による穿孔間隔は、9mmから1.5mmの範囲にあることが好ましい。9mmを超える場合は、海苔の硬さの減少による食感改善効果が不十分であり、1.5mm未満の場合は、海苔の強度いわゆるコシが弱くなり、おにぎり、寿司や団子等に供すると海苔に「ひび割れ」や「縮み」が発生して商品価値がなくなる。
【0058】
図7は、海苔の硬さについての官能評価とテクスチャー(硬さ)値の関係を示した結果である。官能評価はパネラー15人による6点評価による平均値で示し、テクスチャー(硬さ)値は、レオナーIIRE2−3305B型(山電製)をもちいて板状海苔小片(12X35mm)に人工唾液サリベート(帝人ファーマ製)を0.105ml塗り、これを4枚重ねてV型プランジャーで測定して算出した加重値であり、N(ニュートン)で表示している。官能評価値とテクスチヤー(硬さ)値は、y=4.9632X+23.039(r=0.9745)で示され、良好な相関関係を得た。
【0059】
図8は、板状海苔をAユニット及びBユニットを用いて穿孔したものの回転ローラーの直径と割れ発生及びテクスチヤー(硬さ)値の関係を示した結果である。Aユニット、Bユニットとも板状海苔の穿孔密度が12孔/cmになるように調整し、120枚/分、160枚/分及び180枚/分の速度で板状海苔を通過させて穿孔した。板状海苔の間隔は、略100mmとした。5mm以上の亀裂は、板状海苔の全面(190mmX210mm)において計数した。
【0060】
回転ローラーの直径は、60mmから160mmの範囲とした。
【0061】
図9は、直径120mmの回転ローラーにおいて、Aユニット及びBユニットとも12孔/cmの穿孔密度に調整しつつ、回転ローラーに鋸歯状刃を積層する部分を0mmから190mmの範囲で変化させたときの板状海苔の全面(190mmX210mm)における5mm以上の割れの数を示す。AおよびBユニットともに全面に鋸歯状刃を積層して穿孔すると割れが生じたが、部分的に穿孔する場合は、積層部分の寸法にかかわらず割れは生じなかった。
【0062】
図10は、回転ローラーに鋸歯状刃をAユニット、 Bユニットにおいて、板状海苔の穿孔密度が12孔/cmになるように調整しつつ、第1及び第3ローラは海苔中心部の略50mm、第2および第4ローラーは海苔両端部の各略70mmの部分に穿孔するよう調整した穿孔装置で、板状海苔を120枚/分の速度で加工したのち、 海苔表面温度140℃から250℃の範囲で焙焼して製した板状焼海苔の全面(190mmX210mm)における5mm以上の割れの数を調べた結果である。海苔の表面温度は、赤外線放射温度計(チノ製)をもちいて計測した。
【0063】
全面に鋸歯状刃を積層して穿孔した場合は、穿孔後に割れが発生しているが、焼加工後は、さらにその数が増加した。すなわち、穿孔加工時には微細であった割れが焼き加工で拡大するため、穿孔時の海苔へのストレスはできうる限り排除する必要がある。一方、部分的に複時的に穿孔した場合は、焼海苔においても割れの発生は見られなかった。
【0064】
図11は、板状海苔の穿孔密度を2,6,12及び18孔/ cmにAユニット、Bユニット及びBユニットを2台接続して合計8段からなる穿孔装置、2台接続して合計8段の回転ローラーからなる穿孔装置およびBユニット3台接続して合計12段の回転ローラーからなる穿孔装置で板状海苔を160枚/分の速度で加工した後、 海苔表面温度140℃から250℃の範囲で焙焼して製した板状焼海苔の全面(190mmX210mm)における5mm以上の割れの数を調べた結果である。
【0065】
第1、第3、第5、第7、第9および第11回転ローラーは海苔中心部の略50mm、第2、第4、第6、第8、第10および第12回転ローラーは海苔両端部の各略70mmの部分に穿孔位置の重なりがないよう調整されている。海苔の表面温度は、赤外線放射温度計(チノ製)をもちいて計測した。
【0066】
回転ローラーが2段、4段若しくは8段の場合は、焼のりに割れは発生しなかったが、12段では、海苔の表面温度が170℃以上で割れが発現した。さらに12段以上の高段数の装置では、装置自体の構造が複雑かつ精密化が要求されることなどとあわせて回転ローラーは8段以内であることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明によれば、海苔の食感を柔らかく改善するに十分な密度の孔をあけても作業中や流通もしくは喫食時の破れ、割れや欠けの発生を防止できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生海苔を洗浄した後、該海苔を板状に抄製して板状海苔を形成し、乾燥手段により、加熱し、乾燥し、該板状海苔を穿孔手段により穿孔した後、焙焼手段により焙焼する焼海苔の製造方法において、穿孔手段を一次元的に2段階以上の複時穿孔動作を実施して、板状海苔を穿孔することを特徴とする海苔の製造方法。
【請求項2】
前記乾燥手段により、30℃から90℃の範囲で加熱し、水分含量が1%から13%の範囲になるように乾燥することを特徴とする前記請求項1に記載の海苔の製造方法。
【請求項3】
前記焙焼手段により、板状海苔の表面温度が140℃から250℃の範囲になるように 焙焼することを特徴とする前記請求項1又は2に記載の海苔の製造方法。
【請求項4】
前記穿孔手段を一次元的に2段階以上8段階以下の複時穿孔動作を実施することにより海苔を穿孔することを特徴とする前記請求項1乃至3の何れか1項に記載の焼海苔の製造方法。
【請求項5】
前記穿孔手段を鋸歯状刃としたことを特徴とする前記請求項1乃至4の何れか1項に記載の焼海苔の製造方法。
【請求項6】
前記穿孔手段を円周に鋸歯状刃を具えた円盤状穿孔工具としたことを特徴とする前記請求項1乃至5の何れか1項に記載の焼海苔の製造方法。
【請求項7】
前記穿孔手段を円周に鋸歯状刃を具えた円盤状穿孔工具を複数個積層配設した回
転ローラーとしたことを特徴とする前記請求項6に記載の焼海苔の製造方法。
【請求項8】
前記円周に鋸歯状刃を具えた円盤状穿孔工具を部分的に複数個積層配設した穿孔用回転ローラーとしたことを特徴とする前記請求項7に記載の焼海苔の製造方法。
【請求項9】
板状海苔の移動送り方向に対し、前記円盤状穿孔工具を複数個積層した穿孔用回転ローラーを、直角に複数本配設し、海苔を穿孔することを特徴とする前記請求項7又は8に記載の海苔の製造方法。
【請求項10】
板状海苔の移動送り方向に対し、前記円盤状穿孔工具を複数個積層した穿孔用回転ローラーを、直角に複数本配置し、各円盤状穿孔工具の積層部位を部分的に配設したことを特徴とする前記請求項7乃至9の何れか1項に記載の海苔の製造方法。
【請求項11】
板状海苔の移動送り方向に対し、前記円盤状穿孔工具を部分的に積層した穿孔用回転ローラーを、直角に2本配置するとともに、一方の穿孔用回転ローラーの積層部位と他方の穿孔用回転ローラーの積層部位を異ならしめたたことを特徴とする前記請求項8乃至10の何れか1項に記載の海苔の製造方法。
【請求項12】
板状海苔の移動送り方向に対し、前記円盤状穿孔工具を部分的に積層した穿孔用回転ローラーを、直角に4本配置するとともに、第1の穿孔用回転ローラーの積層部位と第2の穿孔用回転ローラーの積層部位を異ならしめるとともに、第3の穿孔用回転ローラーの積層部位は、前記第1の穿孔用回転ローラーの積層部位と略同じ位置とし、第4の穿孔用回転ローラーの積層部位は、前記第2の穿孔用回転ローラーの積層部位と略同じ位置とし、各穿孔用回転ローラーの穿孔工具により、海苔を穿孔することを特徴とする前記請求項8乃至10の何れか1項に記載の海苔の製造方法。
【請求項13】
板状海苔の移動送り方向に対し、前記円盤状穿孔工具を部分的に積層した穿孔用回転ローラーを、直角に複数個配置するとともに、各穿孔用回転ローラーの円盤状穿孔工具の積層部位を異ならしめたたことを特徴とする前記請求項8乃至10の何れか1項に記載の海苔の製造方法。
【請求項14】
前記穿孔手段の穿孔用回転ローラーを2乃至8個とし、各々の穿孔用回転ローラーの円盤状穿孔工具の積層部位を異ならしめたたことを特徴とする前記請求項10項に記載の海苔の製造方法。
【請求項15】
少なくとも、海苔を板状に抄製する抄製手段、乾燥手段、板状海苔を穿孔する穿孔手段、焙焼手段とを具えた海苔の製造装置において、該穿孔手段を円盤状穿孔工具を積層した複数の穿孔用回転ローラーとすることを特徴とする海苔の製造装置。
【請求項16】
前記穿孔手段を複数の穿孔用回転ローラーとし、其々の穿孔用回転ローラーの前記円盤状穿孔工具の積層部位を異ならしめたたことを特徴とする前記請求15に記載の海苔の製造装置。
【請求項17】
前記穿孔用回転ローラーを2本以上8本以下の範囲で配設し、各回転ローラーにおける各円盤状穿孔工具の積層部位が部分的であり、かつ其々の配設部位が異なることを特徴とする前記請求項15又は16に記載の海苔の製造装置。
【請求項18】
前記各円盤状穿孔工具の穿孔刃部を鋸歯状歯としたことを特徴とする前記請求項15乃至17の何れか1項に記載の海苔の製造装置。
【請求項19】
板状海苔の移動送り方向に対し、円盤状穿孔工具を部分的に積層した穿孔用回転ローラーを、直角に複数個配置するとともに、各穿孔用回転ローラーの円盤状穿孔工具の積層部位を異ならしめて、複時穿孔動作により、海苔を穿孔することを特徴とする海苔の穿孔方法。
【請求項20】
円盤状穿孔工具を部分的に積層した穿孔用回転ローラーと、板状海苔の移動送り方向に対し、直角に複数個配置するとともに、各穿孔用回転ローラーの円盤状穿孔工具の積層部位を異ならしめたことを特徴とする海苔の穿孔装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−268771(P2010−268771A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−125560(P2009−125560)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(391017986)株式会社白子 (14)
【Fターム(参考)】