説明

海藻育成用コンクリートブロック及びその製造方法

【課題】鉄材、砂、貝殻などをコンクリート表面に露出面積を充分広く、かつ強固に配設し海藻の生育・繁茂に適し、激しい海流によっても脱落し難い表面形態を有するコンクリートブロック及びその製造方法の提供を課題とする。
【解決手段】コンクリート成形型枠内の底面上で、一定な層を形成した螺旋状及びカール状の旋盤鉄屑の下半部のみが砂層で埋まった状態とし、その上面からコンクリートを打設し、固化後のコンクリートと結合しない砂を除去して、複雑に絡み合った旋盤鉄屑と砂の一部を混在露出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は海底に沈設して人工魚礁を造成するための海藻育成用コンクリートブロック及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自然な状態に保たれている海岸近傍の浅海域では海底に多種多様な海藻が茂り、多くの魚が棲息する。しかしながら、近年の護岸改修、埋め立て開発、砂利採取などの工事により浅海域における海藻の生育は阻害され、ひいては漁獲量減少をもたらしている。そこで海底に海藻が育成繁茂しやすく、かつ魚類が棲息しやすいコンクリート構造の人工魚礁の設置が行われている。
【0003】
コンクリート人工魚礁表面はアクの発生などにより海藻の育成繁茂には好ましいものではなく、その表面に自然岩石または貝殻を貼り付けることが知られている。また、海藻類が摂取すべき鉄分が本来海水中には殆どないことから、海底に鉄塊を沈める方法、鉄分をコンクリート材の表面に塗布する方法、コンクリート魚礁内外に鉄分、鉄材などを含有または露出させる各種の方法も採用されている。コンクリートブロックの表層部位に鉄系元素を含有配置する製造方法として、特開平5−268854号公報(特許文献1)では、まず型枠の全部又は一部を予め磁化するか、又は、型枠表面に永久磁石か電磁石を取り付け、次に型枠内に磁気テープ、鉄製スラッジ等の鉄系元素を含む産業廃棄物を投入し、磁力をもってこれらを型枠内面に吸着させてコンクリートの表層に固化・付着させることが開示されている。
【0004】
さらに、海藻養殖用コンクリートブロックの表面に鉄材を露出・付着させる方法として、特開平5−192048号公報(特許文献2)には、鉄材や貝殻をセメント、骨材、水などと混練して型枠に流し込んで成形体とする製造方法、コンクリート成形体が硬化する前または硬化した後これらの成形体の表面に、セメントもしくはその他適当な接着材もしくは結合材を介して表面に固着させる製造方法などが開示されている。
【0005】
しかしながら、前記鉄材、貝殻などをコンクリートブロック表面に露出、付着させる方法では、コンクリート表面において鉄材、貝殻を強固かつ充分広く露出させることは難しい。すなわち鉄材、貝殻をセメント、骨材、水などと混練して型枠に流し込み硬化後に得られる鉄材、貝殻の露出部は、それらが型枠に直に押圧接触している部分のみである。また露出したとしても、コンクリート表面から立体的に突出した状態ではなく、コンクリート表面と同じ平面となっている。そしてコンクリート固化後にこれら鉄材、貝殻に対して薄いコンクリートが被っていることは避けられない。従って鉄材、貝殻としての有効な露出面積は小さい。また、別法としてコンクリート硬化の前/後に鉄材、貝殻などを接着材もしくは結合材を介して表面に固着する場合は、露出面積は充分得られるものの一般に高価な接着材を使用しなければならないこと、面接触の付着では脱落が生じ易いなどの問題を抱えている。
【特許文献1】 特開平5−268854号公報
【特許文献2】 特開平5−192048号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上に述べた鉄材、貝殻などを表面に配したコンクリート魚礁の製造方法などの問題点を解消するため、本発明では、鉄材、砂、貝殻などのコンクリート表面における露出面積を充分広く確保すると共に、それらを表層に強固に配設する製造方法の達成を課題とし、さらに表面に配設された鉄材、砂、貝殻の露出面積が広く海藻の生育・繁茂に適し、特に生育中の根付きが不十分な時期の海藻においても海流により脱落し難い表面形態を有するコンクリートブロックの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、鉄材をコンクリートブロックに固着させ、かつ海藻育成に最適な表面形態でコンクリートブロック表面に露出させるために旋盤鉄屑に見られる螺旋状及びカール状の独特な形態に着目した。すなわち、螺旋状及びカール状の旋盤鉄屑は適度な小さい間隙を有し、かつ互いに絡み合いながら複雑な立体的な構造となっている。このことによりコンクリートの表層に埋め込み固着する前に、砂、貝殻などにその半部を埋め込んだ状態とすることができる。すなわちこの埋め込んだ部分を混練した打設コンクリートと接触しない状態に保つことができる。さらにこのような旋盤鉄屑の複雑な立体的構造が、砂、貝殻と混在することによりコンクリートブロック表面の形態として表面積も広く海藻育成床として最適であることを見出した。本発明は、次の通りである。
【0008】
第1の発明は、コンクリート成形型枠内の底面上で、一定の層を形成した螺旋状及びカール状の旋盤鉄屑の下半部のみが砂層で埋まった状態とし、その上面からコンクリートを打設し、固化後のコンクリートと結合しない砂を除去する海藻育成用コンクリートブロックの製造方法である。
【0009】
第2の発明は、コンクリート成形型枠内の底面上で、一定の層を形成した螺旋状及びカール状の旋盤鉄屑の下半部のみが貝殻層で埋まった状態とし、その上面からコンクリートを打設し、固化後のコンクリートと結合しない貝殻を除去する海藻育成用コンクリートブロックの製造方法である。
【0010】
第3の発明は、コンクリートブロック表層に螺旋状及びカール状の旋盤鉄屑と砂が埋設され、かつ該螺旋状及びカール状の旋盤鉄屑と砂の一部が露出している海藻育成用コンクリートブロックである。
【0011】
第4の発明は、コンクリートブロック表層に螺旋状及びカール状の旋盤鉄屑と貝殻が埋設され、かつ該螺旋状及びカール状の旋盤鉄屑と貝殻の一部が露出している海藻育成用コンクリートブロックである。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、螺旋状及びカール状の旋盤鉄屑のコンクリート成形体表面から外部に露出させる部分を予め砂、貝殻などに埋め込んでおき、これらを硬化前の軟らかい混練コンクリートと接触させない製造工程としているから、コンクリートがこれらに付着することがない。すなわち旋盤鉄屑の表面をそのままの裸状態で硬化後のコンクリート表面において露出できる。さらに旋盤鉄屑のコンクリート内に埋め込まれる部分は螺旋状及びカール状を呈しているためコンクリート内においてアンカー効果により容易にコンクリート表層から脱落することがない。
【0013】
コンクリート表面から露出している旋盤鉄屑は螺旋状及びカール状を呈しているため、海水との接触面積が大きく、更に一旦生育が始まった海藻は旋盤鉄屑の多数の狭い間隙に絡みやすく容易に剥離することが無い。さらに本発明では旋盤鉄屑に加えて砂、貝殻を表層に散在させている。これらの砂、貝殻自体は海藻の繁茂育成床として優れている。そして砂、貝殻による複雑な凹凸効果と、海藻に絡み易い多数の間隙を有する旋盤鉄屑の効果とが相乗して海藻の育成繁茂を促進する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて具体的に説明する。
(実施の形態1)図1は(1)コンクリート成形型枠内に旋盤鉄屑を敷き、(2)砂を散布して下半部に堆積させ、(3)その上面から混練コンクリートを打設する製造工程を説明する断面図である。図1(1)に示すように、コンクリート成形型枠11内の敷板10上に、螺旋状およびカール状の旋盤鉄屑1を敷きつめる。本発明で用いるコンクリート型枠は、開口した底の無い型枠又は有底箱タイプ型枠のいずれでもよい。本例で使用した開口した底の無い型枠の場合は、平坦な敷板10上に型枠を載置して、型枠内の底面上に旋盤鉄屑を敷いて一定な層Aを形成する。本発明で使用する旋盤鉄屑は各種鉄材を旋盤加工した時に通常発生する切削屑であり、大部分は数mmから約2cm径、長さは数10cm程度までの螺旋状あるいはカール状を呈しているものである。旋盤鉄屑の中に旋盤工場における他種金属材作業の混在により不可避的に混入してくる少量他の非鉄金属類が含まれていても差し支えない。
【0015】
旋盤鉄屑1は複雑に絡み合っているのでそれを軽く解しながらおおむね5cm程度の一定な層Aを形成した。この一定な層Aの厚さは約3〜10cm程度が好適である。この程度の厚さにおいては、一定な層Aを形成した旋盤鉄屑1の上からその空隙を通して下部の敷板が散在して見える程度である。本実施形態ではコンクリート成形型枠11の内部には格子組みした鉄筋12を設けている。この鉄筋12はコンクリートブロックの強度向上のために配設したもので、小さいブロックの場合は省略することができる。
【0016】
次に図1(2)に示すように、砂2を旋盤鉄屑1の空隙を通して上部から散布して、一定な層Aを成した旋盤鉄屑1の下半部のみが砂層Bで埋まる状態とする。砂2が薄すぎると砂層Bに埋まる旋盤鉄屑1が少なくなり、固化コンクリートの表層に露出する旋盤鉄屑1の露出面積が小さくなる。また、コンクリート型枠内に予め砂層を形成しておき、その上面から旋盤鉄屑を埋め込み一定な層を形成して、旋盤鉄屑1の下半部のみが砂層Bで埋まる状態としても良い。
【0017】
次に図1(3)に示すように、旋盤鉄屑1と砂2の混在面の上方から混練したコンクリート4を打設する。打設コンクリートは通常のポルトランドセメントまたは混合セメントに砂や砂利などの骨材と水を加え混練したものを用いる。さらにコンクリートの流動性を増すために混和剤を添加すると、旋盤鉄屑の多数の小間隙に打設コンクリートが侵入し易く旋盤鉄屑がコンクリートに強固に固着する。
【0018】
図2(4)は、打設コンクリートが固化した後、成形型枠を外し反転して旋盤屑埋設面を上にした状態の断面図である。砂2とコンクリート4の界面では、砂がコンクリート表層に固着しているが、その他の砂層の大部分はコンクリートと固着しておらず図2(5)に示すように簡単に除去できる。砂を除去すると砂層Bに埋まっていた螺旋状及びカール状の旋盤鉄屑が表面に露出した海藻育成用コンクリートブロック5が完成する。
【0019】
(実施の形態2)図3(a)は、前記(実施の形態1)の砂に代えて貝殻3を用いて貝殻層Cを形成したものである。同図(a)において、貝殻層Cはコンクリート4の打設工程では型枠底面側にあったものを反転して上側に描かれている。本発明の製造法において貝殻3としては、例えばアサリ、カキ、ホタテなどを用いることができる。本発明では螺旋状及びカール状の旋盤鉄屑と必ず併用するため、螺旋状の間隙に貝殻片が入りやすくするため約5mm以下の微細片とするのが好適である。図3(b)に示すように、貝殻3は固化コンクリートブロックの表層に旋盤鉄屑と絡みながら層をなして混在固着する。
【0020】
図4は、先に実施の形態1で説明した本発明の製造方法による平板タイプのコンクリートブロック5を魚礁型に固設したものである。魚類の隠れ家、生息用の人工魚礁の天板上部や内部床に設置することにより海藻育成繁茂を促し、魚礁としての集魚効果が高まる。必要に応じて、4隅にボルト穴21を設けて海流などにより移動しないように固着する。このように本発明の製造方法による海藻育成用コンクリートブロック5は、人工魚礁に設置する部材として用いることができる。さらに図5に示すように、2基の平板タイプの海藻育成用コンクリートブロック5の4隅に連結脚22を設けて立方体構造として人工魚礁とすることもできる。
【産業上の利用の可能性】
【0021】
本発明は、容易に入手できる螺旋状及びカール状の旋盤鉄屑を、その複雑な立体的構造を利用してコンクリート表層に強固に固着させると共に、海藻育成用として最適に鉄材を露出させた表面形態とする製造である。さらに本方法によるコンクリートブロックは人工魚礁用部材として、あるいは人工魚礁として水産業への利用効果が高いのみならず浅海域の環境浄化へ貢献するものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明における実施の形態1の海藻育成用コンクリートブロックの製造工程を説明する断面図である。
【図2】本発明における実施の形態1の海藻育成用コンクリートブロックの製造工程および海藻育成用コンクリートブロックを説明する断面図である。
【図3】本発明における実施の形態2の海藻育成用コンクリートブロックを説明する断面図である。
【図4】本発明の海藻育成用コンクリートブロックを魚礁部材として利用した斜視図である。
【図5】本発明の海藻育成用コンクリートブロックを人工魚礁として組み立てた斜視図である。
【符号の説明】
【0023】
A・・・螺旋状及びカール状の旋盤鉄屑で形成した一定な層
B・・・砂層
C・・・貝殻層
1・・・螺旋状及びカール状の旋盤鉄屑
2・・・砂
3・・・貝殻
4・・・コンクリート
5・・・海藻育成用コンクリートブロック
10・・・敷板
11・・・コンクリート成形型枠
12・・・鉄筋
20・・・コンクリート人工魚礁
21・・・ボルト穴
22・・・連結脚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート成形型枠内の底面上で、一定の層を形成した螺旋状及びカール状の旋盤鉄屑の下半部のみが砂層で埋まった状態とし、その上面からコンクリートを打設し、固化後のコンクリートと結合しない砂を除去する海藻育成用コンクリートブロックの製造方法。
【請求項2】
コンクリート成形型枠内の底面上で、一定の層を形成した螺旋状及びカール状の旋盤鉄屑の下半部のみが貝殻層で埋まった状態とし、その上面からコンクリートを打設し、固化後のコンクリートと結合しない貝殻を除去する海藻育成用コンクリートブロックの製造方法。
【請求項3】
コンクリートブロック表層に螺旋状及びカール状の旋盤鉄屑と砂が埋設され、かつ該螺旋状及びカール状の旋盤鉄屑と砂の一部が露出している海藻育成用コンクリートブロック。
【請求項4】
コンクリートブロック表層に螺旋状及びカール状の旋盤鉄屑と貝殻が埋設され、かつ該螺旋状及びカール状の旋盤鉄屑と貝殻の一部が露出している海藻育成用コンクリートブロック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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