説明

浸出の抑制されたAZS製品

本発明は、化学物質含有量が、15.5〜22重量%のZrO2、10.5〜15重量%のSiO、1.0から2.5重量%のNaO+KO+LiO、及び、1重量%未満の不純物から成る、融解及び鋳造耐火性AZS型の製品に関する。前記発明は、ガラス炉に対して、特に、その上部構造及び天井部に対して、使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用されるガラス炉の動作温度で、そのガラス質相の浸出(しみ出し)を低い程度にされたAZS(アルミナ−ジルコニア−二酸化ケイ素)型の溶融鋳造耐火性製品に関する。本発明は、ガラス炉の上部構造におけるその製品の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
AZS型の溶融鋳造耐火性製品は、電気アーク炉中に好適な出発物質の混合物を溶融することによって、又は、前記製品に好適な他の任意の溶融技術を用いることによって、得ることができる。この融解した液体は、それから、成形部品を直接得るために、型に流し込まれる。一般に、この製品は、それから、破砕されることなく外気温度に移行される制御冷却サイクルを経る。この作業は、「焼なまし(アニーリング)」として従来技術において周知である。
【0003】
これらのAZS製品は、これらが溶融ガラスと接触するガラス炉の用途に対して数十年に亘って知られている。溶融ガラスによるクラッキング(割れ)及び腐食に対する耐性を高めることに対して、研究がなされている。
【0004】
米国特許第2271366号明細書には、この種の製品を生産することの第1の例が記載されている。この例の結晶解析によって、ジルコニアの結晶及び硝子体マトリックス(又は「相」)のコランダム、すなわちアルファ・アルミナ、が示される。米国特許第2271366号明細書には、アルカリ性酸化物の影響が調査されていない。更に、米国特許第2271366号明細書の表1の例には、ジルコニア含量が22.1%より下であるときに、結晶ムライト相が現れて、溶融ガラスによる腐食に対する耐性の低減がもたらされることが示されている。
【0005】
米国特許第2438552号明細書には、重量において、45%から70%のAl、14%から40%のZrO、9%から12%のSiO、1%から2.2%のNaO、0.4%から1.7%の酸化鉄、0.2%から0.8%のMgO+CaO、を備えるAZS製品が記載されている。しかしながら、これらの製品は、多数の酸化物を含み、製造するのに高価である。米国特許第2438552号明細書には、これらの酸化物のいずれかが任意であることは示唆されていない。
【0006】
仏国特許第0883990号明細書に対応する、米国特許第2271366号明細書は、75%より多くのAl+ZrOを含み、NaOといったアルカリ種を選択的に含む、AZS製品に関するものである。このシリカ含有量は、従って、10%未満でなければならない。
【0007】
しかしながら、米国特許第2271366号明細書、米国特許第2438552号明細書、米国特許第2271366号明細書のいずれの文献も、ガラス中に欠陥を引き起こすガラス質相の浸出の問題に対処していない。
【0008】
欧州特許第0939065号明細書には、B、P、及び、SnO、ZnO、CuO及びMnOの群からの少なくとも一つの酸化物を加えることによって、20%から59%のジルコニアを含むAZS製品から浸出の量を抑制することが提案されている。従来の出発材料の不純物に含まれていないこれらの酸化物を添加することは、製品の過剰コストをもたらし、染色の問題を引き起こしかねない。
【0009】
Saint-Gobain SEFPROで製造されているER-1681、ER-1685、ER-1711といった従来の市販のAZS製品は、重量で、45%から50%のAl、32%から40%のZrO、12%から16%のSiO、そして約1%のNaO、を含んでいる。前記製品は、ガラス炉の製造に適しており、特に、溶融ガラスに接触するゾーン、上部構造、すなわち、溶融ガラスに接触しない頂部より下の壁部、及び、ガラス炉の頂部、に対して好適である。しかしながら、欠陥の数を減らして、そして、生産高を改善するために、上部構造及び頂部に対して使用されている従来の製品は、十分に満足できるという訳ではない。使用されるガラス炉の動作温度で、すなわち上部構造での1500℃の温度で、ガラス質相の浸出に関する問題は、生ずるおそれがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このように、最小限の異なる構成要素の含み、約1500℃で低い程度に浸出を抑えるような新規な溶融鋳造AZS耐火性製品のニーズが存在している。
【0011】
本発明は、このニーズを満たすことを意図する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、この目的は、
重量パーセンテージにおいて、
15.5%から22%のZrO
10.5%から15%のSiO
1.0%から2.5%のNaO+KO+LiO、
1%未満の不純物、
100%への補完物であるAl
の化学組成物を有するという点で注目されうる、溶融鋳造AZS型の耐火性製品によって達成される。
【0013】
本発明者は、驚くべきことに、新たな種(スピーシーズ)を添加すること無く従来のAZS製品の様々な成分間における比率を調整することによって、AZS製品の浸出が抑制されることを見出した。従って、その製造は単純化されて、より安価なものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の製品の化学分析に関して下記において詳述されるように、生産される部品にも、十分な産業的実現可能性がある。
【0015】
特に言及されない限り、全てのパーセンテージは、重量によるパーセンテージである。
【0016】
「不純物」という用語は、使用する出発材料に存在している又は、製品の製造中に生じる以下の構成要素を意味する。すなわち、例えばフッ素、塩素等のハロゲン、カルシウムオキサイド、マグネシウム、硼素、リン、クロミウム、チタン、そして、鉄、を含む。不純物の総量は、1%未満であり、そして好ましくは、不純物の各種の量は、0.5%未満である。さらに好ましくは、不純物の総量は、0.5%未満であり、及び/又は、不純物の各種の量は、0.1%未満である。
【0017】
ジルコニアの量は、浸出に大きな影響を及ぼすことが判明しており、22%未満、好ましくは19%未満に保たれなければならない。
【0018】
対照的に、ジルコニアは少なすぎてもならず、さもないと、その製品は使用中にその耐性を失ってしまう。事実、ジルコニアは、非常に良好な高温耐化学性を有する耐火性の高い構成要素である。本発明によれば、ZrO含量は、15.5%、好ましくは16%より多いものになる。
【0019】
本発明者は、Al/ZrO重量比が浸出耐性の有効性に影響するということをも見出した。好ましくは、Al/ZrO重量比は、2.9以上、より好ましくは3より大きく、さらに好ましくは、3.7より大きい。本発明によれば、Al/ZrO重量比は、好ましくは5.5以下である。
【0020】
シリカ(二酸化ケイ素)含有量は、10.5%以上、好ましくは12%以上である。これにより、製品実現可能性は、有利に向上する。実現可能性は、製造後においてガラス炉の用途に不適当になるひび(クラック)を有しない部品の数を表す。
【0021】
シリカ含有量は、15%以下である。このことにより、高温での、すなわち1500℃以上での機械強度は、有利に改良される。
【0022】
シリカは、ガラス質相の主要な構成要素である。好ましくは、ガラス質相の含量は、重量パーセンテージで、17%以上、好ましくは19%以上であり、及び/又は、24%以下、好ましくは22%以下、である。
【0023】
AZS製品での酸化ナトリウム及び/又はカリウム及び/又はリチウムの存在は、公知技術である。これらは、適切な物理的及び化学的特徴を有するガラス質相を提供するのに通常必要である。本発明によれば、NaO+KO+LiOの量は、1%から2.5%の範囲になければならない。
【0024】
好ましくは、SiO/(NaO+KO+LiO)の重量比は、7以上及び/又は9より小さく、より好ましくは、8未満である。このことにより、本発明の製品の浸出耐性は、有利に高められる。
【0025】
コスト的な理由で、酸化ナトリウムは、好適である。
【0026】
本発明の製品は、従来のAZS製品と、それらの特定の結晶組成物において異なっている。これらは、ガラス質相におけるコランダムの結晶及び遊離(フリー)ジルコニアによって独占的に構成され、共晶アルミナ−ジルコニアの結晶を含んでいない。
【0027】
以下の非限定的な実施例は、本発明を例示する目的で付与される。
【0028】
これらの実施例に対する製品を、「従来の」出発材料から製造した。特に、Saint-Gobain ZIRPROで販売される、アルミナ、ジルコニアサンド、炭酸ナトリウム及びCC10ジルコニアを、使用した。
【0029】
ほとんどの場合、カルシウム及びマグネシウム酸化物で、不純物を構成した。
【0030】
エルー(Heroult)式の電気溶融炉中で出発材料を溶解させることによって、製品を得た。そして、出発材料のバッチを、長時間アークを用いて加熱した。
【0031】
加熱の間、酸素を吹きつける(ブローする)ことで、酸化状態及び攪拌を継続した。
【0032】
表1は、試験製品の組成物及びこれらの製品に行った試験の結果を提供する。
【表1】

【0033】
実施例1は、基準製品に対応する。「VP」は「ガラス質相」を意味し、「ND」は、「未決定」を意味する。
【0034】
寸法250×20×250mm[ミリメートル]のブロックが、「貫通」クラックを有さず、及び/又は、20mm以上の長さを有するクラックが無い場合、実現可能性は「良好である」と見なした。前記欠陥は、ガラス炉において使われるときに、ブロックの完全な崩壊をもたらしうる。
【0035】
試験Aで、浸出への製品の耐性を決定した。試験製品の試料は、100mmの長さ及び24mmの直径を有する棒形状で、1500℃で4h[時間]、2サイクルを経た。温度上昇及び下降は、100℃/hであった。この試料の体積変化(a%)を、これらの2サイクルに続いて測定した。この体積変化は浸出値に対応し、a%で表した。基準製品で3.5%が得られたこの体積変化が1.5%未満であるときに、製品は、特に有利であると判断した。
【0036】
試験Bで、蒸気相の腐食に対する耐性を決定した。ガラス炉には、生産されるガラスにおける特定の構成要素の蒸発によって、腐食性大気が存在する。その腐食性大気によって、高温で製品が変性されて、弱体化が生じると、作動中の破砕がもたらされうる。試験Bは、腐食性大気中において100hの間に1500℃で行った。表1は、mmでの、変性領域の厚さを示す。この厚さが基準製品で得られた厚さよりも小さい場合(すなわち5.5mm未満)にのみ、製品が受け入れ可能と判断した。
【0037】
試験Cで、加負荷での崩壊に対する製品の耐性を決定した。この試験は、最大1745℃までの、250℃/hでの急速な温度上昇の間、0.2MPa[メガパスカル]の加負荷を受ける試料の変形を測定することで行った。試料が0.25%まで崩壊した温度を、測定した。その温度は、表1において℃で与えられる。この温度が基準製品で得られた温度、すなわち、1740℃よりも少なくとも高いときに、製品が受け入れ可能であると判断した。
【0038】
表1から、下記の考察を行った。
【0039】
シリカ含有量が10.5%より多く、好ましくは12%より多いとき、そして、ガラス質相の量が19%より多いとき、製品実現可能性は良好である。
【0040】
試験Aの結果は、ジルコニア含量が22%未満であるときに、基準製品に対して大幅に向上している。試験Aの結果は、ジルコニア含量が19%未満であるときに、特に、ナトリウム酸化物の量に対する二酸化ケイ素の量の比率が9未満、好ましくは8未満であるときに、浸出が0.5%未満となり、非常に良好になる。
【0041】
最高の結果の製品は、2.9以上のAl/ZrO比率を有する。好ましくは、本発明の製品は、4.5以下のAl/ZrO比率を有する。
【0042】
試験Bにおいて測定した蒸気相耐食性は、基準製品のものに対して改良された。このために、ジルコニア含量は、15.5%よりも上に保たれなければならない。
【0043】
試験Cにおいて基準製品のものに少なくとも等しい結果を得るために、ガラス質相の量は、24%未満、好ましくは22%未満でなければならない。
【0044】
試験B及びCの結果は、ガラス炉における上部構造又は頂部に、本発明の製品を使用しうることを示している。
【0045】
更に、本発明の製品が基準のAZS製品に比して改善されている膨張特性を有し、結合したジルコニアの変性によける体積収縮が低い、ということを本発明者は観察した。これにより、ブロック間の接合部における開口の問題は、有利に改善される。
【0046】
本発明の製品の結晶解析は、全体的に、15.5%から22%の遊離ジルコニア結晶、17%から23%のガラス質相、補完物であるコランダム、を示す。全体の見掛け体積に対する気孔の体積の比率として測定される、有孔率は、5%未満である。
【0047】
明らかにわかるように、本発明の製品には、浸出の抑制及び十分な産業的な実現可能性がある。都合のよいことに、本発明の製品は、付加的な種を加えずに、AZS製品の正に従来の構成要素を使用して製造することができる。従って、製造が単純化され、そして、コストが低減される。
【0048】
明らかに、本発明は、例示的そして非限定的な実施例として記載されそして示される実施態様に限られない。
【0049】
特に、本発明は、生産工程によって、又は、使用される溶融炉によって制限されない。溶融及び鋳造AZS製品のための任意の従来の方法が、使用されうる。
【0050】
出発材料を溶融するための適切な処理の1つの例は、仏国特許第208577号明細書に記載されている。その処理において、アーク長さは、還元作用が最小限になるように、調整される。そして、アーク又は発泡ガス、好ましくは空気又は酸素といった酸化ガス、融解質量への攪拌を提供する。例えば、このアーク長さは、ヒッシング(歯擦音)のアーク現象と一致するように決定されてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
AZS型の溶融鋳造耐火性製品であって、
重量パーセンテージにおいて、
15.5%から22%のZrO
10.5%から15%のSiO
1.0%から2.5%のNaO+KO+LiO、
1%未満の不純物、
100%への補完物であるAl
の化学組成物を有するという特徴を有する、AZS型の溶融鋳造耐火性製品。
【請求項2】
Al/ZrOの重量比は、2.9以上、及び/又は、5.5以下であることを特徴とする、請求項1に記載の製品。
【請求項3】
SiO/(NaO+KO+LiO)の重量比は、9未満であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の製品。
【請求項4】
SiO/(NaO+KO+LiO)の重量比は、8未満であるということを特徴とする、請求項3に記載の製品。
【請求項5】
SiO/(NaO+KO+LiO)の重量比は、7より大きいことを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の製品。
【請求項6】
重量パーセンテージにおいて、ZrO含量は、19%以下であることを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の製品。
【請求項7】
重量パーセンテージにおいて、前記不純物の総量は0.5%未満であり、及び/又は、前記不純物の任意の種の量は0.1%未満であることを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の製品。
【請求項8】
ガラス質相の含量は、17%以上及び/又は24%以下であることを特徴とする、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の製品。
【請求項9】
前記ガラス質相の含量は、19%以上及び/又は22%以下であることを特徴とする、請求項8に記載の製品。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の製品の使用方法であって、ガラス炉の上部構造又は頂部に使用するものである、方法。

【公表番号】特表2008−513328(P2008−513328A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−531795(P2007−531795)
【出願日】平成17年9月14日(2005.9.14)
【国際出願番号】PCT/FR2005/002277
【国際公開番号】WO2006/032757
【国際公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(506426269)サン−ゴベン・セントル・ドゥ・レシェルシェ・エ・デチュード・ユーロペアン (42)
【Fターム(参考)】