説明

浸出廃液からのコバルトおよびニッケルの選択的回収におけるイオン交換樹脂を用いた複合プロセス

浸出廃液からのコバルトおよびニッケルの選択的回収におけるイオン交換樹脂を用いた複合プロセスを対象としている。このプロセスは、ラテライト鉱(M)を処理(1)する工程と、前記ラテライト鉱(M)を(大気中または加圧下で)浸出処理する工程(2)と、を有し、既に稼働中の既存のプラントの固液分離工程からの溶液(2)も可能である。下流のプロセスは、イオン交換複合回路を有し、樹脂(Re)による第1イオン交換工程(3)は、鉄、アルミニウムおよび銅を除去し、pHを上げるための特定の選択性条件を示し、第2イオン交換工程(4)は、ニッケルおよびコバルトの除去を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つの樹脂工程を有する、浸出廃液からのコバルトおよびニッケルの選択的回収におけるイオン交換樹脂を用いた複合プロセスを対象としている。より詳細には、本発明は、第1イオン交換工程が、溶液から鉄、アルミニウムおよび銅を除去すると共に溶液のpHを上げる役割を担い、第2イオン交換工程が、ニッケルおよびコバルトを除去する役割を担う2つの樹脂工程の複合ループを対象としている。
【背景技術】
【0002】
全ての当業者に公知のように、ラテライト鉱中に存在するニッケルおよびコバルトを抽出するための湿式冶金径路がいくつか開発されている。
【0003】
これらの径路の目的は、無機酸を使用することにより、ヒープまたはタンクにおいて大気圧および沸点未満の温度の条件下で、あるいは加圧容器中で、浸出により金属種を可溶化させることにある。次に、得られた溶液に、中和工程(銅、鉄、アルミニウムの除去)、固液分離(任意選択)のほか、少なくとも溶液の精製工程が行われ、最後に、最終的に金属の形で、または中間生成物として回収される。
【0004】
浸出廃液中に存在する金属の選択的回収は、経済的評価の観点(conception)において重要な工程である。なかでも、銅、鉄、アルミニウム、マンガン、マグネシウムなどの多くの不純物の存在は、解決すべき中心的な技術的な課題であると考えられる。
【0005】
選択肢の1つに、イオン交換材料の使用、選択的析出、および溶媒抽出などの物理化学方法が含まれうる。ニッケルとコバルトを例に挙げると、これらの金属は極めて似た化学特性を有する。このため、これらの金属は、混合硫化物または混合水酸化物の形での析出、塩素系の媒質(chloridric medium)中での溶媒を使用した抽出、または高分子樹脂型イオン交換剤の利用のいずれかにより、相互回収操作を容易に行うことができる。
【0006】
イオン交換とは、固体構造を大きく変化させないような固体−水性電解質間での可逆的なイオン交換であると定義することができる。この場合、固体は、無機的性質(例えばゼオライト)、あるいは合成高分子樹脂を主成分とした材料を含む有機的性質のいずれかを有しうるイオン交換材料である。樹脂のマトリクスは、高分子量で不溶性の不規則な巨大分子である三次元弾性炭化水素鎖から構成され、これは、スチレンとジビニルベンゼンの共重合により得られる。マトリクス中では、正または負の官能基が堅固に結合しており(固定イオン)、これが逆の電荷のイオン(逆イオン)によって打ち消されている。これらは、マトリクス内部で自由に移動でき、同じ電荷の別のイオンにより化学量論的に置換されうる。これと対照的に、いわゆる共イオンとは、イオン交換剤中に存在し、固定イオンと同じ電荷を示しうる全てのイオン種である。商用化されている樹脂の主な種類には、官能基の酸性度に応じて弱酸または強酸である陽イオン性樹脂と、塩基性度に応じて強塩基または弱塩基である陰イオン性樹脂のほか、キレート樹脂が含まれる。「両性」と呼ばれる特定の材料は、陽イオン交換と陰イオン交換の両方を行うことができる。
【0007】
キレート樹脂は、溶液中の遷移金属(例えばニッケルおよびコバルト)の陽イオンと、極めて安定したキレート錯体または金属複素環キレートを形成するため、これらを選択的に回収するために開発された。キレートとは、分子の2つ以上の小さい部分と金属イオン間の配位結合により、環が形成されている任意の化合物であると定義することができる。
【0008】
キレート樹脂は、酸性水溶液から、ニッケル、コバルト等の重金属を選択的に除去することを目的とした、湿式冶金用途のためのイオン交換高分子樹脂群を示すものと考えることができる。これらの交換体は、共有結合している官能基を有するコポリマーであり、重金属の大部分の多価陽イオン(ルイス酸)と配位結合を形成することができる1つまたは複数のドナー原子(ルイス塩基)を含む。通常、キレート樹脂内の官能基には、窒素、酸素、リン、硫黄などの原子が含まれる。キレート官能基の例には、アミドキシム、アミノホスホネート、カルバメート類、ポリアミン類(poliamines)、ピリジン類、イミノジアセテート、およびピコリルアミン(picolilamine)が含まれる。クーロン相互作用と疎水性相互作用も存在するものの、金属イオンの高い選択性に対する寄与は、ルイス酸−塩基相互作用に比べて比較的小さい。これらの樹脂は、通常、酸性溶液(硫酸または塩酸)によって再生することができ、このため高効率が達成される。
【0009】
イオン交換樹脂は、水溶媒質中の金属の精製/回収のための技術的な選択肢であると考えられる。この手法は、金属を鉱石から抽出する方法として、必然的に浸出工程を必要とするニッケルラテライト鉱の湿式冶金フローシートの一環をなしている。樹脂技術は、向流式デカンテーション処理(CCD)が使用されている既存のプラントに適用することができ、コストおよび環境への影響を低減させるために、プロジェクトの開発中に浸出の排液に直接適用することができる。
【0010】
浸出は、ヒープまたはタンク中で、大気圧および沸点未満の温度の状態下で、あるいは加圧容器中で、酸性または塩基性の脱溶剤を用いて行うことができる。金属が鉱石から抽出され、水溶液中に可溶化されると、ニッケルおよびコバルトを回収するために、樹脂(好適にはキレート型)を用いたイオン交換法を、パルプまたは溶液の形の排液に適用することができる。
【0011】
ニッケルの選択的吸着のための高分子樹脂を用いたイオン交換法の利用は、溶液中樹脂(resin in a solution)またはパルプ中樹脂(resin in a pulp)の2種類の方法で行うことができる。
【0012】
第1のタイプの操作では、吸着が行われるように、金属が溶解されている溶液が、例えば、樹脂の固定床で濾過される。これに対して、第2のタイプの操作では、撹拌システムによって、鉱石パルプを樹脂に直接接触させており、この結果、パルプの固液分離のための費用のかかる工程を必要とせずに金属の吸着が行われる。接触後、選別あるいはスクリーニングによって樹脂とパルプが分離される。
【0013】
ニッケルラテライト鉱処理フローシートでは、2つの選択肢のいずれも採用することができる。溶液中樹脂を利用するには、事前に固液分離工程が必要となる。この工程は、運転コストおよび資本コストが膨大にかかることに加え、大きな面積を占有し、水を大量に消費することが確認されている。また、固体を洗浄し、溶解している種を回収するのが困難であることから、処理の効率の低さによりニッケルが失われてしまう。このため、多くの場合、パルプ中樹脂を使用する処理が提案されるが、これは、浸出後に、イオン交換剤を使用してパルプ自体に溶解されている金属が回収され、このため固液分離が不要となるためである。
【0014】
酸性浸出からのニッケルの回収に、パルプ中樹脂を用いたプロセスが使用される場合、次のような利点を得ることができる。1)鉄にも選択性を有する従来の樹脂を使用するには、ニッケルの回収前に、事前中和を行う必要がある。水酸化第二鉄は、石灰または石灰石の添加によって容易に析出し、パルプに含有される。2)パルプの酸性度の中和は、接触中に吸着工程自体で行われるため、利便性が高い。石灰または石灰石などの試薬が使用され、中和で生成されるスラリーがパルプに含有される。3)酸性浸出とその後行う中和により、沈降しにくいパルプ、または分離時に洗浄が困難な固体が生成されうる。パルプ中樹脂を使用する処理では、固液分離工程が不要であるため、このような運用上の困難を解消することができる。4)この処理では、収着−浸出の現象が生じる。この理由は、接触中に、中和で析出するニッケルの一部が再浸出され、これが溶液中に戻されると、樹脂によって直ちに吸着されるためである。このため、パルプ中樹脂を利用すると、このような損失を最小限にすることができ、最初に共沈したニッケルの約20%が回収される。
【0015】
イオン交換は、いくつかの手法によって改善され、非常に有望な結果が得られている技術である。高分子樹脂を用いたイオン交換法を使用することにより、ニッケル鉱フローシートにおいて新しい産業上の利用が提供されると共に、多くの利点が得られる。このような利点としては、溶媒を使用する抽出工程において一般的な試薬の損失がない点、過剰に存在する他の金属に対して濃度の低い金属イオンの一部を効率的に回収および除去できる点、対象の金属の選択性が高い点、分離能が高い点、プロセスの型が柔軟である点(flexible regimes of processes)、プロセスの構成が単純である点、他の不純物に対して対象の金属を高純度かつ高濃度で得られる点、自動化のレベルが高い点がある。水の消費量が低く、水の再利用が可能であるため、このような特徴により、環境への影響を低減できることに加えて、運用コストおよび資本コストを低減できる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ラテライト処理におけるニッケルの選択的回収のための、商用化されている従来の樹脂の利用は、上に開示した全ての利点があるものの、依然として多くの制約と運用上の困難が存在する新しい工業技術である。
【0017】
ここに挙げられる不具合の1つに、溶液のpHを、水素イオンに対する高い選択性の関数として、3.0よりも高い値に上げなければならない点がある。従来の樹脂は、この条件下でのみ、ニッケルに対して選択性を示し、当該金属の高い吸着能を示しうる。しかし、水素イオンが過剰に存在する場合(pHが低い場合)、水素イオンが好適に吸着され、ニッケルの吸着過程が阻害される。
【0018】
別の顕著な不具合として、ニッケル鉱の酸浸出で得られる溶液全体に、ニッケルおよびコバルトに加えて、多くの金属(不純物と呼ばれる)が溶解されている点がある。ニッケルに対して選択性を有する大部分の樹脂は、鉄、銅およびアルミニウムに対しても選択性を有するため、このような不純物を除去するために溶液を処理する事前工程が必要となる。
【0019】
現時点で、このような問題を解決すべく各種の手法が実施されており、例えば、不純物を析出させ、同時にpHを上げるために、浸出の直後に、石灰、石灰石、炭酸ナトリウムまたはアンモニアを添加する中和工程が追加される。
【0020】
中和は、高すぎる溶液の酸性度や、溶液中の不純物の存在などの技術的制約を是正するうえで極めて有効であるものの、ニッケルが不純物と共沈し、多量に失われるという不都合がある。
【0021】
溶液中樹脂の利用を選択した場合に、この中和法で確認されている別の不都合として、費用のかかる固液分離工程が必要となる点がある。
【0022】
溶液中樹脂、パルプ中樹脂のいずれの場合であっても、実際には、図1の処理のフローシートに示すように、pHを上げ、析出によって不純物を除去するために、酸性度を中和するための事前工程が必要である。この中和工程はこの処理で必要であるものの、溶液中樹脂の使用が選択される場合には、既に説明したように、ニッケルが不純物と共沈して失われる点、固液分離工程が必要な点など、大きな不都合がある。
【0023】
パルプ中樹脂の利用は、上で説明した全ての利点を有するにもかかわらず、パルプに接触させるのに高い機械抵抗および抗磨耗性を示す樹脂が市販されていないなど、いくつかの制約と技術的なリスクを有する。上記の理由により、多くの場合、溶液中樹脂の利用が最良の選択肢であると考えられ、このため、鉱石に対して前処理を行う必要があり、析出によってニッケルが失われる、その後に行う費用のかかる固液分離工程が必要となるという不都合がある。
【0024】
この問題は、浸出がヒープ中で行われる場合に顕著に悪化する。この処理の排液は、溶液の形で、溶液中樹脂の工程にそのまま供給することができる。排液は、澄んだ溶液の形の、固体を含まない排液であり、このため、固定樹脂床(例えばカラムなど)に供給するのに適している。事前の処理前工程が必要であることから、析出物に包含されてニッケルが失われる点、固液分離を行ない、精製された溶液をイオン交換カラムに供給しなければならないなど、複雑となる。
【課題を解決するための手段】
【0025】
このため、本発明の目的は、溶液の中和工程(前処理)を不要にするイオン交換樹脂を用いた複合プロセスを提供することにある。
【0026】
本発明の別の目的は、コスト効率の高い方法で浸出の排液の精製を可能にするイオン交換樹脂を用いた複合プロセスを提供することにある。
【0027】
本発明の別の目的は、共沈により析出物中にニッケルが失われるのを防ぐイオン交換樹脂を用いた複合プロセスを提供することにある。
【0028】
本発明の別の目的は、析出物中に生成されるパルプの固液分離を行わなくても済むイオン交換樹脂を用いた複合プロセスを提供することにある。
【0029】
本発明のこれらの目的および利点ならびに他の目的および利点は、イオン交換樹脂を用いた複合プロセスによって達成され、前記プロセスは、第1の陽イオン性樹脂回路処理を有し、その移動イオンは、不純物を吸着すると共に、同時に溶液のpHを上げるために、好ましくはアルカリ金属である。前記複合イオン交換プロセスは、鉄、アルミニウムおよび銅を除去し、pHを上げる特定の選択性条件下で樹脂を使用する第1イオン交換工程と、好ましくは、ニッケルおよびコバルトの除去を可能にするイミノジ酢酸基の樹脂による第2イオン交換工程と、を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明を、添付の図面を参照して以下に説明する。
【0031】
極度の酸性条件下、かつ不純物の高濃度の存在下でニッケルを吸着可能な樹脂(ピコリルアミン(picolilamin)基)が市販されているものの、そのコストは、大部分のニッケル事業には極めて高額であるという点を指摘しなければならない。前記樹脂については、本明細書で提案および推奨する全ての手順は該当しないが、これは、前処理が不要であり、不純物の除去も、pHを上げることさえも不要であるため、前記工程による不都合がないためである。
【0032】
これらの図によれば、本提案の解決策は、pHを上げ、不純物(鉄、アルミニウム、銅など)を析出させることを目的としたパルプの前処理(中和)工程が不要であり、このため、共沈により析出物中にニッケルが失われることがなくなり、析出物中に生成されるパルプの固液分離が不要となる。
【0033】
本提案は、イオン交換樹脂を使用した2段階の複合回路処理を有し、樹脂は同じであっても異なっていても、タイプが異なっていても、官能基が異なっていても、製造業者が異なっていてもよい。イオン交換樹脂を使用したこの2つの工程は、ニッケル、コバルトおよび銅のほか、鉄、アルミニウム、マンガンおよびマグネシウムを高濃度で含む金属が溶解されている、既存のプラントの固液分離工程からの溶液、あるいは、既に開発済みのプロジェクトの浸出工程からの排液に適用されうる。
【0034】
図2に示すフローシートに示すように、イオン交換樹脂を用いた複合プロセスの始点は、従来のプロセスと同様であって、ラテライト鉱(M)が処理される(1)。処理(1)後に、鉱石(M)が(大気中、加圧下あるいはこれらの組合せで)浸出により処理される(2)か、あるいは、既に稼働中の既存のプラントの固液分離工程からの溶液(2)も可能である。
【0035】
このような処理からの排液(E1)は、酸性(pH<2)であると予想され、従来の手順で行われているような前処理工程(1)は行われない。陽イオン性イオン交換複合回路処理の第1工程(3)では、この樹脂の移動イオンは必然的に二ナトリウムの形に調節されたアルカリ金属であり、pHを上げる働きをする。この工程の目的は、不純物(例えば鉄、銅およびアルミニウム)を除去することにあり、このため、樹脂(Re)は、例えば、ニッケル鉱(M)の浸出の排液(2)で得られるような高酸性度条件下で鉄、銅およびアルミニウムを優先的に吸着する。
【0036】
第1イオン交換工程(3)の目的は、鉄、銅およびアルミニウムを回収し、ニッケルおよびコバルトは通過させることにある。これが有効に行われるためには、この工程に供給される溶液/パルプのpHが、ラテライト鉱(M)の浸出(2)の排液(E1)の酸性条件と同程度に低く(pHが2.5未満)なければならない。このような条件下で、かつ適切な陽イオン性樹脂またはキレート樹脂を用いることにより、不純物(鉄、銅およびアルミニウム)が、樹脂(Re)に吸着され、このため回収されると同時に、ニッケルおよびコバルトは通過され、溶液に残存する。例えば二ナトリウムの形のアルカリ金属イオンによって再生する樹脂(Re)を使用することは、これらの移動イオンがFe3+、Al3+、およびCu2+のイオンによって交換されて、アルカリ金属イオンが溶液中に戻され、pHを上げるため、基本的に重要である。溶液中に存在するアルカリ金属イオンの塩基性の役割は、溶液のpHを上げることにあり、この結果、溶液がpHを上げた状態でイオン交換樹脂の第2工程に供給されうる。
【0037】
第1工程に連続し、第1工程(3)からの排液(E2)が供給される樹脂の第2工程(4)は、緩やかな酸性条件下で、不純物によって阻害を受けることなく、溶液からニッケルおよびコバルトを回収するために使用される。これが有効に行われるためには、溶液のpHは1超でなければならず、好ましくは、できる限り4.0に近いほうがよいが、このpHは、第1工程の交換再生中に溶液に排出されるアルカリ金属イオンによって得られる。必要に応じて、第1工程と第2工程の間の中間工程において、pHを上げるための塩基性試薬を使用してもよい。このような第2工程の条件下では、キレート樹脂(Re)(好ましくは、コストの点で有利な樹脂であると考えられるイミノジ酢酸官能基を有する)は、鉄、アルミニウムおよび銅に対しても選択性を有する。しかし、これらの不純物は、事前工程で溶液から既に除去されているため、第2工程(4)の樹脂(Re)は、ニッケルおよびコバルトを効率的かつ選択的に再生できる適切な条件下にある。
【0038】
2つの工程の操作条件(例えば、媒質のpH、装置のサイズ、滞留時間、および操作能などの条件)は異なっていなければならない。これらの工程は、処理する排液の要求に応じて、両者に共通の同じ樹脂(Re)を使用しても、または、2つの異なる樹脂(Re)を利用する選択肢も可能である。同じ樹脂(Re)の使用が選択される場合、これは完全に実行可能な代替案であり、このため最も推奨される。
【0039】
本プロセスは、第2工程(4)後は、従来プロセスと同じ工程を辿る。つまり、コバルトイオンとニッケルイオンが担持された樹脂(Re)に対して溶出処理(5)が行われる。すなわち、樹脂(Re)を、溶出剤(例えば塩酸または硫酸または任意のアンモニウム塩)と接触させ、金属を樹脂(Re)から分離させて、樹脂(Re)が再生され、第2工程(4)の回路処理に戻される。溶出(5)の後、必要に応じて、溶剤抽出(6)によってニッケルとコバルトの分離が行われ、金属が、金属の形または他の任意の混合物の形で回収されうる。
【0040】
このため、イオン交換樹脂を用いた複合プロセスは、パルプまたは溶液の形(一般には、ニッケル鉱(M)の浸出のいくつかの形で生成される)の排液を精製することが可能である。
【0041】
本解決策の好ましい概念を記載および図示したが、本発明の範囲から逸脱することなく、ほかの解決策を達成することが可能である点を指摘しなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】ラテライト鉱中のニッケルを抽出するための従来の処理のフローシートである。
【図2】第1段階における不純物の選択的回収と、第2段階における排液からのニッケルおよびコバルトの選択的回収とのイオン交換樹脂の2つの回路処理を利用する複合処理のフローシートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浸出廃液からのコバルトおよびニッケルの選択的回収におけるイオン交換樹脂を用いた複合プロセスであって、ラテライト鉱(M)を処理(1)する工程と、その後、前記ラテライト鉱(M)を(大気中または加圧下で)浸出処理する工程(2)と、を有し、既に稼働中の既存のプラントの固液分離からの溶液(2)の処理を行うオプションを有し、
陽イオン性樹脂またはキレート樹脂の複合回路処理を有し、樹脂(Re)による第1イオン交換工程(3)は、鉄、アルミニウムおよび銅を除去し、pHを上げるための特定の選択性条件を示し、第2イオン交換工程(4)は、ニッケルおよびコバルトの除去を可能にすることを特徴とする複合プロセス。
【請求項2】
前記溶液の中和工程(前処理)を省略することができ、共沈により析出物中にニッケルが失われるのを防ぎ、前記析出物に生成されるパルプの固液分離を行わずに済むことを特徴とする、請求項1に記載の浸出廃液からのコバルトおよびニッケルの選択的回収におけるイオン交換樹脂を用いた複合プロセス。
【請求項3】
前記処理によって得られる前記第1工程(3)に供給される前記排液(E1)は酸性(pH<2)であり、この条件下で、適切な陽イオン性樹脂またはキレート樹脂を用いることにより、不純物(鉄、銅およびアルミニウム)が前記樹脂(Re)に吸着されるのに対し、前記ニッケルおよびコバルトは前記第1工程(3)の前記溶液に残存することを特徴とする、請求項1または2に記載の浸出廃液からのコバルトおよびニッケルの選択的回収におけるイオン交換樹脂を用いた複合プロセス。
【請求項4】
前記樹脂(Re)は、前記第1工程(3)において使用される前記条件下で、好ましくは高度に酸性の条件下で鉄、銅およびアルミニウムを吸着し、かつ好ましくは二ナトリウムの形に調節された移動アルカリ金属イオンを含み、前記イオンが、例えばFe3+、Al3+およびCu2+イオンによって交換されて、前記pHを上げることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の浸出廃液からのコバルトおよびニッケルの選択的回収におけるイオン交換樹脂を用いた複合プロセス。
【請求項5】
前記pHを上げ、かつ、ニッケルおよびコバルトの吸着を行う前記第2工程に供給される前記溶液(E2)に対して、より適切な条件、このため、緩やかな酸性度条件を与えるために、必要に応じて、前記第1イオン交換工程と第2イオン交換工程との間に、強塩基性試薬による中間中和工程が行われることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の浸出廃液からのコバルトおよびニッケルの選択的回収におけるイオン交換樹脂を用いた複合プロセス。
【請求項6】
前記第1工程に連続し、前記第1工程(3)からの排液(E2)が供給される前記第2工程(4)において、前記陽イオン性樹脂またはキレート樹脂(Re)は、好ましくはイミノジ酢酸基の官能基を有し、緩やかな酸性条件下で、不純物によって阻害を受けることなく、溶液からニッケルおよびコバルトを回収することを特徴とする、請求項1または2に記載の浸出廃液からのコバルトおよびニッケルの選択的回収におけるイオン交換樹脂を用いた複合プロセス。
【請求項7】
前記第2工程(4)の後、前記処理は、従来の処理と同じ段階に従い、コバルトイオンおよびニッケルイオンが担持された前記樹脂(Re)が、溶出処理(5)を受けて、無機溶液によって再生され、前記第2工程(4)に戻され、前記溶出(5)の後、必要に応じて、溶媒抽出(6)によってニッケルとコバルトの分離が行われ、前記溶液中の前記金属が金属の形または他の任意の形で回収されることを特徴とする、請求項1に記載の浸出廃液からのコバルトおよびニッケルの選択的回収におけるイオン交換樹脂を用いた複合プロセス。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−526136(P2009−526136A)
【公表日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−503374(P2009−503374)
【出願日】平成19年2月2日(2007.2.2)
【国際出願番号】PCT/BR2007/000022
【国際公開番号】WO2007/087698
【国際公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(506395954)
【Fターム(参考)】