説明

浸漬処理設備

【課題】ロールユニットの取付位置を調節可能にするとともに、安定設置させ、容易にロールユニットを着脱させることができる、処理能力、作業性およびメンテナンス性を向上させた浸漬処理設備を提供する。
【解決手段】処理液4を貯留した処理槽2と、この処理槽2内に、駆動ロール3cおよび従動ロール3dからなるロール体3bを上下に並設して一体化した着脱可能なロールユニット3とを備え、ロールユニット3の左右側板3aの外側に取付部材7を固設するとともに、処理槽2の左右側板2bの内側に取付部材7を積載する受台6を固設し、取付部材7と、受台6とに、処理槽2内にロールユニット3を固定させる締結部材8を備える。そして、取付部材7と、受台6とに、ロールユニット3の設置高さおよび傾斜角度を調節する調節部材9を備え、駆動ロール3cは、駆動源からロールユニット3に設けた着脱可能なピニオン軸12aを介して駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理液を貯留した処理槽と、この処理槽内に、駆動ロールおよび従動ロールからなるロール体を上下に並設して一体化した着脱可能なロールユニットとを備え、処理物を処理槽内でロールにより移送させながら処理液に浸漬処理する浸漬処理設備に関し、より詳細には、ロールユニットの左右側板の外側に取付部材を固設するとともに、処理槽の左右側板の内側に取付部材を積載する受台を固設し、取付部材と、受台とに、処理槽内にロールユニットを固定させる締結部材を備えることに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の、シート状や糸状の中間処理物に洗浄や染色、脱脂、アルカリ化、抽出などの機能を付与する処理を行う方法として、処理液を貯留した処理槽に処理物を浸漬させて処理する方法があり、これらの処理を効率的に行うためには、効果的な処理液の選定、処理温度や圧力の調整、処理液に濃度差を与えて処理物と処理液との濃度差を大きく保持するなど各種の方法が考案されている。また、処理方法として、バッチ式と連続式とがあり、バッチ式は処理物を巻物状やシート状にして処理液に浸漬させる方法で行われるが、処理時間が長く、さらには表層と内部とで処理に差が生じるため、比較的少量の処理物の処理時に適用される場合が多い。そして、連続式では、処理槽内に多段のロールを設置し、処理物をこの多段ロールに通過させて処理液と接触させることで、処理物にシワなどを発生させることなく効率的に処理することができる。この処理槽内での連続式処理方法には、例えば、処理液を貯留する槽本体を含み、搬送ローラ間で垂下迂回搬送されたフィルム材に所定処理を連続して行うフィルム材の連続処理槽において、上部ローラと前記処理液中に配設された下部ローラと両ローラ間に張設されたベルトとを含み、ベルトがフィルム材の搬送方向と同方向に回行可能に形成され、かつ前記槽本体内でU字形状に垂下されたフィルム材の両内面間に配設されたベルトガイド装置と、槽本体内でU字形状に垂下されたフィルム材の各内面を該ベルトの各外面に押付け可能にフィルム材の外面側から液を噴出させる液噴出手段とを設ける(特許文献1)ものがあり、このように構成することで、処理液中に導かれたフィルム材は液噴出手段からの液圧流によってその内面がベルトガイド装置のベルトの外面に押付けられて、処理液中での遊動を防止でき、フィルム材は回行するベルトとともに処理液中を迂回されるので、従動ローラとの摩擦抵抗が増大するというような事態を一掃でき、円滑な搬送のもとに高品質で高能率の連続処理ができる、という。また、定着能を有する処理液槽および少なくとも3槽の多段向流方式の水洗又は安定浴槽を有する現像処理装置であって、第1槽及び最終槽以外の水洗槽又は安定浴槽から槽中の水洗水又は安定液を上記定着能を有する処理液槽に送液するポンプを備えた(特許文献2)ものもあり、このような構成により、処理廃液量を従来の多段向流水洗方式以上に低減できて、しかも低減による欠陥を伴わない写真感光材料処理装置を提供できる、という。
【0003】
【特許文献1】実開平6−31865号公報
【特許文献2】特開2000−89436号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような連続式の処理槽では、ロールの数(処理段数)が少ないため、処理に伴い処理液と処理物との濃度差が徐々に小さくなり、処理液中の必要成分の処理物界面での物質移動速度が低下するため、処理速度も低下してしまうという問題があった。そこで、処理能力を上げるために、処理槽内のロールを処理液中と処理液から出た上下の位置に設置し、多数の処理段数を設けて処理物を浸漬させ、さらに処理時には各処理段の濃度差を大きくするため、処理物の流れ方向と処理液の流れ方向とを向流させる方法がある。この場合、単にロールの数を増やして処理段数を増加させただけでは、設備の大型化を招くとともに、腐食性や浸食性などを有する有害な処理液を、この大型化した設備内に増量させて用いるとともに、大量に貯留しなければならず、また、増加した固設のロールにより処理槽内や各ロールのメンテナンスを容易に行えず、安全性およびメンテナンス性が低下するという問題を生じる。そこで、ロールを上下に複数並設して一体化した着脱可能なロールユニットを用いることで、設備の大型化および処理液を増量させることなく、処理段数を増加させ、処理能力を向上させるとともに、メンテナンス性も向上させることができる。しかしながら、このロールユニットは、左右側板の切込部を処理槽内に設けた仕切り上に位置させ、例えば処理槽の左右側板とロールユニットの左右側板とをボルトなどで締結させる構造のため、処理槽にロールユニットを容易かつ安定的に着脱しずらく、さらには着脱を繰り返すロールユニットを処理槽に設置した際、微妙にずれたロールユニットの高さ位置や傾斜を適切な位置に調節することができず、そのまま処理を行うと、ロール上を移送する処理物が蛇行などによりシワや折れを生じたり、ロールなどに引っ掛かりトラブルを発生させるという問題があった。また、ロールユニットの駆動ロールを駆動させる駆動源が処理槽外に固設されているため、ロールユニットを着脱させる際、その都度密閉構造の軸受けや伝達機構の取り外しおよび取り付けを行う必要があり、作業性が低下するという問題もあった。
そこで、この発明の目的は、ロールユニットの取付位置を調節可能にするとともに、安定設置させ、容易にロールユニットを着脱させることができる、処理能力、作業性およびメンテナンス性を向上させた浸漬処理設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため請求項1に記載の発明は、処理液を貯留した処理槽と、該処理槽内に、駆動ロールおよび従動ロールからなるロール体を上下に並設して一体化した着脱可能なロールユニットとを備え、処理物を前記処理槽内で前記ロールにより移送させながら前記処理液に浸漬処理する浸漬処理設備において、前記ロールユニットの左右側板の外側に取付部材を固設するとともに、前記処理槽の左右側板の内側に前記取付部材を積載する受台を固設し、前記取付部材と、前記受台とに、前記処理槽内に前記ロールユニットを固定させる締結部材を備えることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、前記取付部材と、前記受台とに、前記ロールユニットの設置高さおよび傾斜角度を調節する調節部材を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、前記駆動ロールは、駆動源から前記ロールユニットに設けた着脱可能なピニオン軸を介して駆動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、処理液を貯留した処理槽と、この処理槽内に、駆動ロールおよび従動ロールからなるロール体を上下に並設して一体化した着脱可能なロールユニットとを備え、処理物を処理槽内でロールにより移送させながら処理液に浸漬処理する浸漬処理設備において、ロールユニットの左右側板の外側に取付部材を固設するとともに、処理槽の左右側板の内側に取付部材を積載する受台を固設し、取付部材と、受台とに、処理槽内にロールユニットを固定させる締結部材を備えるので、取付部材と、受台とを締結させることにより、処理槽内にロールユニットを安定設置でき、ロール上を移動する処理物が蛇行などによりシワや折れを生じたり、ロールなどに引っ掛かるトラブルを防止することができる。従って、処理能力および作業性を向上させた浸漬処理設備を提供することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、取付部材と、受台とに、ロールユニットの設置高さおよび傾斜角度を調節する調節部材を備えるので、着脱を繰り返すロールユニットを処理槽に設置した際、微妙にずれたロールユニットの高さ位置や傾斜を適切な位置に調節することができ、ロール上を移動する処理物が蛇行などによりシワや折れを生じたり、ロールなどに引っ掛かるトラブルを防止することができる。従って、処理能力および作業性を向上させた浸漬処理設備を提供することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、駆動ロールは、駆動源からロールユニットに設けた着脱可能なピニオン軸を介して駆動するので、ロールユニットの着脱の際、駆動ロールの動力源の連結部分は、ピニオン軸を貫通軸ハウジングから着脱するだけでよく、容易にロールユニットを着脱させることができる。従って、作業性およびメンテナンス性を向上させた浸漬処理設備を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、この発明を実施するための最良の形態について詳述する。
図1は、本発明の浸漬処理設備の一例を示す側面模式図、図2は浸漬処理設備を構成する処理槽の一部を後方から見た斜視図、図3は浸漬処理設備を構成するロールユニットを後方から見た斜視図である。
【0012】
この例の浸漬処理設備1は、図1に示すように、例えば、フィルム材や半導体ウェーハ基板、繊維などシート状や糸状などの中間処理物5に洗浄や染色、脱脂、アルカリ化、抽出などの機能を付与するための、腐食性や浸食性などを有する処理液4を貯留した処理槽2の中に、ロールユニット3を備えて構成される。この処理液4は、例えば、フッ素化合物、有機溶剤および防食剤などからなる洗浄液や、漂白剤として、亜硫酸塩(例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、メチルエチルケトン、メチレンクロライド、亜硫酸アンモニウムおよび水など)、重亜硫酸塩(例えば、重亜硫酸アンモニウム、重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウムなど)、メタ重亜硫酸塩(例えば、メタ重亜硫酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸アンモニウム他)などの亜硫酸イオン放出化合物や、p−トルエンスルフィン酸、m−カルボキシベンゼンスルフィン酸などのアリルスルフィン酸などを含有するものがあり、それらは腐食性や浸食性などを有するため、浸漬処理設備1は、該設備における中間処理物5の入口1aおよび出口1b以外が全て密閉(図示しない)されて、処理液4や処理液4の蒸気が外部に出ない構造とされる。なお、中間処理物5や処理液4の種類は上記に限定されない。
【0013】
処理槽2は、図2に示すように、ステンレスなどの槽からなり、内部に複数のステンレスなどからなる仕切板2aが左右側板2b間および底板2c上に溶接などで等間隔に固設される。なお、仕切板2aの設置枚数は限定されないが、後述するロールユニット3の上部に有するロール本数nに等しいn枚、もしくは(n−1)枚であることが好ましい。
【0014】
ロールユニット3は、図3に示すように、凹凸部分を有する櫛型形状の左右側板3a間の上部と、下部(左右側板3a凸部の下部)とに、前後位置をずらして取付部材ンレスなどからなる複数のロール体3bが設けられ、この複数のロール体3bは、少なくとも1本の駆動ロール3cと、その他の従動ロール3dとから構成される。なお、図1および図3では、上部に4本の上部ロール3eおよび下部に3本の下部ロール3fが設けられた4段であるが、上部ロール3eは、処理槽2のサイズや処理槽2の仕切板2aの設置枚数および処理条件などに合わせてそれら上部ロール3eの設置間隔を適宜変更し、任意の本数を設けることができる。また、下部ロール3fの設置本数は限定されないが、上部ロール3eの本数nに等しいn´枚、もしくは(n´−1)枚であることが好ましい。さらにロールユニット3の左右側板3a間の長さは、処理槽2の左右側板2b間の長さよりも短く構成される。
【0015】
さらに、ロールユニット3の上部、かつ左右側板3a間であって、上部ロール3eのそれぞれのロール体3bの間には、ロール体3b上を移動する中間処理物5の表層に付着した処理液4の境界膜を剥離させる、従動型の液切りロール3gが設けられる。この液切りロール3gの直径は限定されないが、駆動ロール3cおよび従動ロール3dの直径以下にすることが好ましく、さらには液切りロール3gの設置本数も限定さないが、上部ロール3eの本数nに等しいn´´本、もしくは(n´´−1)本であることが好ましい。
【0016】
本願発明の要部の1つである駆動ロール3cは、詳細を後述するが、処理槽2の外側に設けられた不図示の駆動モータからの動力がピニオン軸12aなどを介して駆動ロール3cの軸芯sに伝達され、駆動ロール3cが回転する構成とされる。そして、ロールユニット3の櫛型形状を有する左右側板3a間であって、上部ロール3eの2本のロール体3b間の下方と、下部ロール3fのうち、1本のロール体3bの上方との間ごとに等間隔などで上下ステー3iを介してステンレスなどからなる仕切板3hが設けられる。この仕切板3gの設置枚数は、下部ロール体3fの設置本数に等しいことが好ましい。なお、図3では、ロールユニット3の後部に有する上下取付部材3iおよび仕切板3gのみ図示した。
【0017】
そして、処理槽2のそれぞれの仕切板2aを、ロールユニット3の櫛型形状を有する左右側板3aのそれぞれの凹部に挿入するようにするとともに、後述する本願発明要部であるロールユニット3の取付部材7を、処理槽2内の受台6上に積載し、締結部材8で固定して、処理槽2内にロールユニット3が着脱自在に設置される。
【0018】
ここで、中間処理物5を、浸漬処理設備1を用いて浸漬処理する場合は、浸漬処理設備1の入口1aから供給される中間処理物5が、図1の矢印Aの方向で、ロールユニット3の左右側板3a間に並設される上部ロール3eのうち、最も入口1aに近い上部ロール3ea上を、駆動ロール3cの回転駆動力により後方に向って移動し、下方の、処理槽2の最も入口1aに近い仕切板2aaで仕切られた処理段2dの1段目に有する処理液4中に浸漬される。次いで中間処理物5は、処理段2dの1段目の処理液4中であって、ロールユニット3の左右側板3a間の下部に並設される下部ロール3fのうち、最も入口1aに近い下部ロール3fa上を移動して上方に反転し、処理液4中から出て、最も入口1aに近い上部ロール3eaの後方に有する次の上部ロール3eb上を浸漬処理設備1の後方に向って移動する。
【0019】
そして、中間処理物5は、上部ロール3ebと、上部ロール3ebの後方に設けられた液切りロール3gとの間を移動するとき、中間処理物5の表層に付着して流れる境界膜を、液切りロール3gの面で破壊することで、中間処理物5の表層と処理液4との濃度差を確保して、中間処理物5に含まれる有効物質の移動速度が上昇し、処理効率が向上される。次いで中間処理物5は、上部ロール3eb上を介して再び下方に移動し、仕切板2abで仕切られた処理段2dの2段目に有する処理液4中に浸漬される。
【0020】
このとき、処理槽2の各仕切板2aは、後方から順に高さを低くして設けられるとともに、ロールユニット3の各仕切板3hにより、処理槽2内の処理液4が図1の矢印Bの方向である浸漬処理設備1の後方から前方へ向けて流すようにしているため、中間処理物5の移動方向(矢印A)と、処理液4の流れ方向(矢印B)とが向流となり、各処理段2dの処理液4が常に流動されることから、上記同様に中間処理物5と処理液4との濃度差を確保して、中間処理物5に含まれる有効物質の移動速度を上昇させて、処理効率を向上させる構成とされる。なお、処理槽2中を後方から前方に向けて流れる処理液4は、不図示のポンプなどで処理槽2の後方に送液し、循環させることができる。
【0021】
そして、浸漬処理設備1の最も出口1bに近い仕切板2acで仕切られた処理段2dの最終段に有する処理液4中から出た中間処理物5は、最も後方に位置する上部ロール3ec上を介して出口1bから浸漬処理設備1外に送出される。
【0022】
次に、本願発明の特徴である、ロールユニットの締結部材と調節部材およびピニオン軸についてその詳細を説明する。図4は、ロールユニットとロールの取付けを説明するロールユニットの正面模式図である。
【0023】
まず、図3および図4に示すように、処理槽2の、例えば左右側板2bそれぞれの上部内側には、ステンレスなどからなる受台6が固設される。この受台6は、その上面6aが、処理槽2の仕切板2aの上面近傍の高さになるように設けられるとともに、上部にボルトなど締結部材8および調節部材9の嵌合穴6bがそれぞれ設けられる。なお、処理槽2内での受台6の前後設置位置は、処理段2d内外の任意位置とされ、その設置数も左右側板2bそれぞれに合わせて3個以上であってもよく、限定されない。
【0024】
次いで、図2および図4に示すように、ロールユニット3の左右側板3a上部であって、処理槽2内にロールユニット3を設置したときの、処理槽2に設けた受台6の上面6aに接する位置には、ステンレスなど金属製の側面視略L字金具やL型取付板などからなる取付部材7が固設される。この取付部材7の水平面7aには、ボルトなどの締結部材8用と調節部材9用にそれぞれ2箇の貫通穴7b,7cが設けられる。
【0025】
ここで、処理槽2内にロールユニット3を設置する際には、前述したように、処理槽2のそれぞれの仕切板2aを、ロールユニット3の櫛型形状を有する左右側板3aのそれぞれの凹部に挿入するようにするとともに、ロールユニット3の取付部材7を、処理槽2内の受台6上に積載し、貫通穴7bと6bとの位置を合わせて締結部材8を締結して、処理槽2内にロールユニット3が固定設置される。
【0026】
このような構成にすることで、ロールユニット3を着脱する際に、作業者は、処理槽2の受台6上にロールユニット3の取付部材7を積載して、締結部材8を締結もしくは外してロールユニット3を一人で容易に着脱することができる。
【0027】
さらに、ロールユニット3の度重なる着脱で、処理槽2と、ロールユニット3との接触部の磨耗や変形などにより、ロールユニット3の設置位置が微妙にずれて傾きを生じた場合、受台6の上面6a上に取付部材7の貫通穴7cを介して設けられた調節部材9を工具などで締めるもしくは緩めることにより、ロールユニット3の設置高さや傾斜角度を調節して、ロールユニット3を最適な設置高さ、および水平に設置できるため、ロール体3b上を移動する処理物が蛇行などによりシワや折れを生じたり、ロール体3bなどに引っ掛かるトラブルを防止して、円滑に処理を行わせることができる。なお、調節部材9は、ロールユニット3の左側板3aおよび右側板3aの両方に設けることに限定されず、左側板3aもしくは右側板3aのどちらかに設けてもよく、さらには設置数も限定されない。また、受台6および取付部材7上の締結部材8と調節部材9との設置位置も限定されない。
【0028】
次に、駆動ロール3cへ動力を伝達する着脱自在に設けたピニオン軸の構造について説明する。この例の駆動ロール3cは、例えば、ロールユニット3の左右側板3a間に並設される上部ロール3eのうち、最も入口1aに近い上部のロール3eaを駆動ロール3cにすることができる。なお、駆動ロール3cは、上部のロール3eaの1本に限定されず、上部ロール3eや下部ロール3fを問わず、設けられたロール体3bの複数を駆動ロール3cにしてもよい。
【0029】
このロールユニット3における駆動ロール3cである上部のロール3eaは、軸芯sが軸受ハウジング10と、この軸受ハウジング10内に組み付けた軸受10aによってロールユニット3の左右側板3aに取り付けられることによって、ロールユニット3の左右側板3a間に回転自在に設けられる。また、下部のロール3faをはじめ、従動ロール3dのロール体3bも、軸芯sが軸受ハウジング10´と、この軸受ハウジング10´内に組み付けられた軸受10a´によってロールユニット3の左右側板3aに取り付けられる。さらには液切りロール3gも不図示の軸芯が軸受ハウジング10´´と、この軸受ハウジング10´´内に組み付けた不図示の軸受によってロールユニット3の左右側板3aに取り付けられる。そして、これら従動ロール3dや液切りロール3gの端部には、符号17などの従動用の歯車などが軸受ハウジング10´,10´´を介して設けてもよい。なお、軸受10a,10a´などは取付部材ンレスなどからなり、さらには有毒な処理液4から軸受の寿命を延ばすため、軸受内に処理液4が浸入しないようエアパージを行うこともできる。
【0030】
そして、駆動ロール3cの一方の軸芯sは、左側板3aまたは左右側板3aに設けられた軸受ハウジング10を貫通してロールユニット3の左側板3aまたは右側板3aの外側に設けられた駆動ピニオン12に噛合う従動ピニオン11に延設される。なお、従動ピニオン11はステンレスなどの金属からなり、駆動ピニオン12はキャストナイロンなどの合成樹脂を用いることにより(従動ピニオン11にキャストナイロンなどの合成樹脂と、駆動ピニオン12に取付部材ンレスなどの金属をそれぞれ用いてもよい)、長期連続運転においても潤滑油を必要とせず、円滑に駆動伝達を行うことができる。
【0031】
さらに、処理槽2の左側板2bまたは右側板2b(駆動ピニオン12および従動ピニオン11側)には、貫通軸ハウジング13がボルトなどで固設され、この貫通軸ハウジング13内に設けられたロールユニット3側の軸受13aに駆動ピニオン12のピニオン軸12aと、貫通軸ハウジング13内に設けられた処理槽2側の軸受13bを介して前記駆動モータに連係する駆動軸14とが取り付けられる。なお、符号15は軸シール、符号16は駆動用タイミングプーリである。
【0032】
このような構成にすることで、前記駆動モータにより回転される駆動軸14の駆動力が、軸受13aを介してピニオン軸12aから駆動ピニオン12に伝達され、この駆動ピニオン12に噛合う従動ピニオン11から軸受10aを介して駆動ロール3cの軸心sに伝達され、駆動ロール3cが回転する。
【0033】
そして、処理槽2からロールユニット3を取り外す場合は、前記した締結部材8を取り外すとともに、貫通軸ハウジング13の軸受13aから駆動ピニオン12のピニオン軸12aのみを取り外すことにより、従来のように連係される各軸受など多くの部位を取り外す必要がなく、処理槽2からロールユニット3を容易に取り外すことができる。また、処理槽2にロールユニット3を取り付ける場合にも、前記締結部材8とともに、軸受13aにピニオン軸12aのみを取り付けることにより、従来のように軸受など多くの部位を再度取り付ける必要がなく、処理槽2にロールユニット3を容易に取り付けることができる。
【0034】
以上、詳述したように、この例の浸漬処理設備1は、処理液4を貯留した処理槽2と、この処理槽2内に、駆動ロール3cおよび従動ロール3dからなるロール体3bを上下に並設して一体化した着脱可能なロールユニット3とを備え、ロールユニット3の左右側板3aの外側に取付部材7を固設するとともに、処理槽2の左右側板2bの内側に取付部材7を積載する受台6を固設し、取付部材7と、受台6とに、処理槽2内にロールユニット3を固定させる締結部材8を備えるものである。加えて、取付部材7と、受台6とに、ロールユニット3の設置高さおよび傾斜角度を調節する調節部材9を備え、駆動ロール3cは、駆動源からロールユニット3に設けた着脱可能なピニオン軸12aを介して駆動する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の浸漬処理設備の一例を示す側面模式図である。
【図2】浸漬処理設備を構成する処理槽の一部を後方から見た斜視図である。
【図3】浸漬処理設備を構成するロールユニットを後方から見た斜視図である。
【図4】ロールユニットとロールの取付けを説明するロールユニットの正面模式図である。
【符号の説明】
【0036】
1 浸漬処理設備
2 処理槽
2b,3a 左右側板
3 ロールユニット
3b ロール体
3c 駆動ロール
3d 従動ロール
3g 液切りロール
6 受台
6a 上面
6b 嵌合穴
7 取付部材
7a 水平面
7b,7c 貫通穴
8 締結部材
9 調節部材
11 従動ピニオン
12 駆動ピニオン
12a ピニオン軸
13 貫通軸ハウジング
13a,13b 軸受
14 駆動軸
15 軸シール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液を貯留した処理槽と、
該処理槽内に、駆動ロールおよび従動ロールからなるロール体を上下に並設して一体化した着脱可能なロールユニットと、
を備え、処理物を前記処理槽内で前記ロールにより移送させながら前記処理液に浸漬処理する浸漬処理設備において、
前記ロールユニットの左右側板の外側に取付部材を固設するとともに、前記処理槽の左右側板の内側に前記取付部材を積載する受台を固設し、前記取付部材と、前記受台とに、前記処理槽内に前記ロールユニットを固定させる締結部材を備えることを特徴とする浸漬処理設備。
【請求項2】
前記取付部材と、前記受台とに、前記ロールユニットの設置高さおよび傾斜角度を調節する調節部材を備えることを特徴とする、請求項1に記載の浸漬処理設備。
【請求項3】
前記駆動ロールは、駆動源から前記ロールユニットに設けた着脱可能なピニオン軸を介して駆動することを特徴とする、請求項1に記載の浸漬処理設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−149202(P2008−149202A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−336527(P2006−336527)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(000116736)旭化成エンジニアリング株式会社 (49)
【Fターム(参考)】