説明

浸漬培養方法及び浸漬培養装置

【課題】本発明の課題は、基質である固体バイオマス混合物等を有効利用・リサイクルする培養システム、メタン発酵システムを簡略化、効率よく安価に培養可能な方法及び装置を提供することにある。
【解決手段】課題を解決するための手段は、基質である固体バイオマス混合物等を培養液中に浸漬して培養、該固体バイオマス混合物等内を培養液が均等に且つ往復に且つ繰返し通過することを特徴とする、浸漬培養方法及び浸漬培養装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基質である固体バイオマス混合物等を利用する培養システムを簡略化、効率よく安価に培養可能な方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地球環境問題の解決システムとして、小規模リサイクル社会(バイオマスタウン)の実現・普及が益々望まれてきている。その中で特に、固体バイオマス混合物等を有効利用・リサイクルする培養システム、メタン発酵システムを簡略化、効率よく安価に培養可能にすることは非常に重要である。
【0003】
従来のメタン発酵システムでは、発酵後の排水処理に多大な費用を必要としていたが、近年、排水処理を必要としない所謂乾式発酵(Dry Fermentation)が注目されている。しかしながら、原料を発酵槽内で攪拌を伴いつつ発酵させるだけのシステムでは、攪拌のために消費される電力費の、メタン発生・供給に必要な全費用に占める割合が高くなりすぎ、商業的プラントの構築は困難である。
【0004】
特許文献1、2は、攪拌によらない乾式メタン発酵プラントの例であるが、バイオガス生産効率や生産安定性に問題があり、プラント代、運転コストも安価とは云い難く、国内では全く普及していないのが現状である。また、非特許文献1のように、メタン発酵システムの広範囲な普及を目指して、小型で安価な装置が検討されているが、発酵槽の構造や攪拌の必要性等が実用化の障害になっている。本システムは排水処理の問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−216168
【特許文献2】特表2004−511331
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】柴田浩彦、岡庭良安、小泉佳子、農村向けメタン発酵システムの実証試験、農業農村工学会大会講演会講演要旨集,128〜129,2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明の課題は、上記のような実情に鑑み、基質である固体バイオマス混合物等を利用する培養システムを簡略化、効率よく安価に培養可能な方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の浸漬培養方法は、基質である固体バイオマス混合物等を培養液中に浸漬して培養する方法であって、該固体バイオマス混合物等内を培養液が均等に且つ往復に且つ繰返し通過することを特徴とする。
【0009】
前記浸漬培養方法が、前記固体バイオマス混合物等内を均等に且つ往復に且つ繰返し通過する培養液の運動にガスの浮力を利用することを特徴とする。
【0010】
前記浸漬培養方法が、前記固体バイオマス混合物等内を均等に且つ往復に且つ繰返し通過する培養液の運動にガスの浮力を利用する方法が、フロートを設置した固体バイオマス混合物等の移動床、もしくはサイフォンを設置した固体バイオマス混合物等の固定床、もしくはエアーリフトを設置した固体バイオマス混合物等の固定床であることを特徴とする。
【0011】
前記浸漬培養方法が、ガスはメタン発酵により発生するバイオガスであり、外部からのエネルギーも動力も制御も全くなしに、メタン発酵の進行に従って発生する該バイオガスによって、前記固体バイオマス混合物等内を培養液が均等に且つ往復に且つ繰返し通過することが、簡易・自動的に制御・駆動できることを特徴とする。
【0012】
前記浸漬培養方法が、前記該固体バイオマス混合物等内を培養液が均等に且つ往復に通過を繰返し培養終了後、培養終了固体バイオマス混合物等を取出し、新たな基質である固体バイオマス混合物等と交換して該浸漬培養を繰返すことを特徴とする。
【0013】
基質である固体バイオマス混合物等を培養液中に浸漬して培養する装置であって、該固体バイオマス混合物等内を培養液が均等に且つ往復に且つ繰返し通過することを特徴とする。
【0014】
前記浸漬培養装置が、前記固体バイオマス混合物等内を均等に且つ往復に且つ繰返し通過する培養液の運動にガスの浮力を利用する装置であり、フロートを設置した固体バイオマス混合物等の移動床、もしくはサイフォンを設置した固体バイオマス混合物等の固定床、もしくはエアーリフトを設置した固体バイオマス混合物等の固定床であり、ガスはメタン発酵により発生するバイオガスであり、外部からのエネルギーも動力も制御も全くなしに、メタン発酵の進行に従って発生する該バイオガスによって、前記固体バイオマス混合物等内を培養液が均等に且つ往復に且つ繰返し通過することが、簡易・自動的に制御・駆動できることを特徴とする。
【0015】
以上、課題を解決するための手段は、基質である固体バイオマス混合物等を培養液中に浸漬して培養、該固体バイオマス混合物等内を培養液が均等に且つ往復に且つ繰返し通過することを特徴とする浸漬培養方法及び浸漬培養装置である。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明に係る基質である固体バイオマス混合物等を培養液中に浸漬して培養、該固体バイオマス混合物等内を培養液が均等に且つ往復に且つ繰返し通過することを特徴とする浸漬培養方法及び浸漬培養装置によれば、基質である固体バイオマス混合物等を利用する培養システムを簡略化、排水を発生せずに、効率よく安価に培養可能な方法及び装置を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の浸漬培養における微生物または混合微生物群、これらの含有物について、糸状菌または酵母、バクテリア、アーキア、好熱菌、好気性菌、嫌気性菌の少なくとも1種であって、特にこれらに限定するものではない。そして、目的混合微生物群としては、各種土壌、各種の水類(河川水、湖沼、海水、温泉、排水)、それらのろ過物、各種底泥、動物の消化管内容物、糞便、コンポスト等、またそれらの処理物等が挙げられる。
【0018】
基質である固体バイオマス混合物等について、畜産廃棄物、生ごみ、食品残渣等が挙げられるが、特にこれらに限定するものではない。
【0019】
固体バイオマス混合物等内を培養液が均等に且つ往復に且つ繰返し通過するに必要な空隙が不足する場合、例えば鶏糞には同量程度の破砕枝または稲わら等を混合する方法が挙げられるが、空隙率確保方法等、特にこれらに限定するものではない。
【0020】
固体バイオマス混合物等内を均等に且つ往復に且つ繰返し通過する培養液の運動にガスの浮力を利用する、フロートを設置した固体バイオマス混合物等の移動床として、例えば、該移動床上部に設けたフロート部にガスが溜ることにより移動床が上昇、培養液は前記固体バイオマス混合物等内を下向きに通過し、該フロート部のガスが抜けることにより移動床が下降し、培養液は該固体バイオマス混合物等内を上向きに通過、この昇降サイクルを繰返すことが挙げられるが、フロート部のガスの貯留/放出コントロール等について特に制限はない。また、フロートを設置した固体バイオマス混合物等の移動床であれば、特にこれらに限定するものではない。
【0021】
固体バイオマス混合物等内を均等に且つ往復に且つ繰返し通過する培養液の運動にガスの浮力を利用する、サイフォンを設置した固体バイオマス混合物等の固定床として、例えば、該固定床上部に設けたガス溜めとサイフォンにガスが溜ることにより水位が下降、培養液は前記固体バイオマス混合物等内を下向きに通過し、該ガス溜めのサイフォンからガスが抜けることにより水位が上昇し、培養液は該固体バイオマス混合物等内を上向きに通過、この干満サイクルを繰返すことが挙げられるが、ガス溜めとサイフォン部のガスの貯留/放出コントロール等について特に制限はない。サイフォンを設置した固体バイオマス混合物等の固定床であれば、特にこれらに限定するものではない。
【0022】
固体バイオマス混合物等内を均等に且つ往復に且つ繰返し通過する培養液の運動にガスの浮力を利用する、エアーリフトを設置した固体バイオマス混合物等の固定床として、例えば、該固定床下部に吸入口を設けたエアーリフトにガスが流入・作動することにより水位が下降、培養液は前記固体バイオマス混合物等内を下向きに通過し、該エアーリフトへのガスの流入・作動が停止することにより水位が上昇し、培養液は該固体バイオマス混合物等内を上向きに通過、この干満サイクルを繰返すことが挙げられるが、エアーリフト部へのガス流入・作動コントロール等について特に制限はない。エアーリフトを設置した固体バイオマス混合物等の固定床であれば、特にこれらに限定するものではない。
【実施例】
【0023】
サイフォンを組合わせた干満浸漬培養モデル装置(5Lアクリル製)を用いた試験において、2L牛糞(0.8Kg−dw)を原料にして、55℃、20日間の浸漬培養によるメタン発酵を実施した結果、収率650L−バイオガス/Kg−dwのバイオガス(メタン62%)が発生した。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の浸漬培養方法及び浸漬培養装置は、発酵用または環境浄化用等、あらゆる微生物利用産業分野に応用可能であり、例えば資源やエネルギーの有効活用の分野において、食料環境資源の再生利用や家畜排泄物の管理や利用促進を活性化するための産業に貢献することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基質である固体バイオマス混合物等を培養液中に浸漬して培養する方法であって、該固体バイオマス混合物等内を培養液が均等に且つ往復に且つ繰返し通過することを特徴とする浸漬培養方法。
【請求項2】
前記浸漬培養方法が、前記固体バイオマス混合物等内を均等に且つ往復に且つ繰返し通過する培養液の運動にガスの浮力を利用することを特徴とする、請求項1の浸漬培養方法。
【請求項3】
前記浸漬培養方法が、前記固体バイオマス混合物等内を均等に且つ往復に且つ繰返し通過する培養液の運動にガスの浮力を利用する方法が、フロートを設置した固体バイオマス混合物等の移動床、もしくはサイフォンを設置した固体バイオマス混合物等の固定床、もしくはエアーリフトを設置した固体バイオマス混合物等の固定床であることを特徴とする、請求項2の浸漬培養方法。
【請求項4】
前記浸漬培養方法が、ガスはメタン発酵により発生するバイオガスであり、外部からのエネルギーも動力も制御も全くなしに、メタン発酵の進行に従って発生する該バイオガスによって、前記固体バイオマス混合物等内を培養液が均等に且つ往復に且つ繰返し通過することが、簡易・自動的に制御・駆動できることを特徴とする、請求項2または請求項3の浸漬培養方法。
【請求項5】
前記浸漬培養方法が、前記該固体バイオマス混合物等内を培養液が均等に且つ往復に通過を繰返し培養終了後、培養終了固体バイオマス混合物等を取出し、新たな基質である固体バイオマス混合物等と交換して該浸漬培養を繰返すことを特徴とする、請求項1〜4の浸漬培養方法。
【請求項6】
基質である固体バイオマス混合物等を培養液中に浸漬して培養する装置であって、該固体バイオマス混合物等内を培養液が均等に且つ往復に且つ繰返し通過することを特徴とする浸漬培養装置。
【請求項7】
前記浸漬培養装置が、前記固体バイオマス混合物等内を均等に且つ往復に且つ繰返し通過する培養液の運動にガスの浮力を利用する装置であり、フロートを設置した固体バイオマス混合物等の移動床、もしくはサイフォンを設置した固体バイオマス混合物等の固定床、もしくはエアーリフトを設置した固体バイオマス混合物等の固定床であり、ガスはメタン発酵により発生するバイオガスであり、外部からのエネルギーも動力も制御も全くなしに、メタン発酵の進行に従って発生する該バイオガスによって、前記固体バイオマス混合物等内を培養液が均等に且つ往復に且つ繰返し通過することが、簡易・自動的に制御・駆動できることを特徴とする、請求項6の浸漬培養装置。

【公開番号】特開2013−42664(P2013−42664A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180040(P2011−180040)
【出願日】平成23年8月21日(2011.8.21)
【出願人】(711009176)
【Fターム(参考)】