説明

浸透圧式ガス圧縮システム

【課題】 地球温暖化防止のためには、自然エネルギーの利用を推進する必要があり、海水と淡水の塩分濃度差により生じる浸透圧を利用したエネルギー利用システムの開発が必要である。
【解決手段】 本発明の浸透圧型ガス圧縮システムは、海水と淡水間、あるいは海水と高塩分濃度海水間の浸透圧を利用して、海水と淡水、あるいは海水と高塩分濃度海水との混合海水によりガスを高圧に圧縮するシステムであり、浸透膜室圧とガス圧縮室部、圧縮ガス貯蔵タンク部で構成されており、所要のガスを高圧に圧縮して貯蔵することにより自然エネルギーを利用して上記課題を解決するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水と河川水、海水と工場排水処理装置から排出される淡水系排水、あるいは海水と浸透膜式海水淡水化装置から排出される高塩分濃度海水を利用して、半透膜の浸透圧により圧縮ガスを製造・貯蔵する浸透圧式ガス圧縮システムに関する。
【背景技術】
【0002】
海水と淡水とを半透膜を介して接触させると、淡水が半透膜を透過して海水中に浸透する現象が発生する。この現象は半透膜を介して接する海水と淡水中の塩分濃度が均一になろうとすることにより生じ、25℃の海水と淡水では最大約2.6MPaの浸透圧が発生する。現在、半透膜を利用した発電方式としては下記のものが出願されている。
【0003】
特許文献1は河川水と海底に設置した浸透室を導水配管で連結し、浸透室の半透膜から海水中に流出した淡水相当分を河川水から補給する際、流入して来る河川水の水頭(位置エネルギー)差を利用して水車発電機を回転させて発電する方式である。
特許文献2も特許文献1と同様であり、海中に半透膜と水車発電機を設置して、陸上の河川水と海中の半透膜との水頭差を利用して水車発電機を回転させて発電する方式である。
特許文献3は河川水と表層海水を半透膜室に導き、淡水が半透膜を通して海水中に浸透して生ずる高圧水流により水車発電機を回転させて発電する方式である。
特許文献4は浸透膜式海水淡水化装置を出た高塩分濃度の海水と通常の海水間の塩分濃度差を利用して、海水中の淡水分が半透膜を通して高塩分濃度海水中に浸透して生ずる高圧水流により水車発電機を回転させて発電する方式である。
【特許文献1】特開昭和54-57116
【特許文献2】特開昭和56-121873
【特許文献3】特開昭和58-53684
【特許文献4】特開2003-176775
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半透膜を利用した水車発電機システムの問題点として、設置場所の課題がある。例えば、特許文献1,2の発明は、陸上の河川水が海中の浸透室に送られるときの水頭差を利用して水力発電機を回転させて発電している。しかし、数十メートルの海底に浸透室や発電設備を設置することは運転管理やメンテナンスの面での課題が多く、実用的な発電システムとは言えない。
特許文献3の半透膜式水車発電システムは、海水と河川水が得られれば設置場所を地上とすることができる。
【0005】
しかし、特許文献1〜4に示す半透膜式水車発電機方式は、昼夜を通して一定負荷で連続的に発電できるが、発電容量が比較的小さくてピーク負荷電力に適した実用的な発電システムとは言えない。このため、産業用に利用できる浸透圧利用システムの開発が期待されている。
【0006】
本発明では、半透膜の浸透圧による加圧性能に着目し、半透膜の浸透圧を利用して空気等のガス体を圧縮して利用するシステムについて検討したものである。半透膜による浸透圧を利用したガス圧縮は、機械式圧縮機のように圧縮動力を必要としないため、自然エネルギーを利用した経済的な圧縮方式とすることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、
本発明では、塩分濃度の異なるx,yの液体を、半透膜を介し片側に水室A、反対側に水室Bを配し、水室Aには低塩分濃度の液体x、水室Bには高塩分濃度の液体yを入れた浸透圧室部と、
水室Bの出口側に設けたガス圧縮室部と、
ガス圧縮室部出口側に設けた圧縮ガス貯蔵タンク部とから構成され、
浸透圧室部の液体xから液体yへ浸透した淡水分によりガス圧縮室に封入したガスを圧縮して圧縮ガスを製造・貯蔵する浸透圧式ガス圧縮システム(請求項1)
【0008】
前記浸透圧式ガス圧縮システムにおいて、
液体yを水室Bに供給するポンプB出口と水室Aを連結する配管と弁により、水室Aにも液体yを供給する配管系統を備え、
水室Bへ液体yを入れる排水・給水工程時工程時に、水室Aから水室Bへの浸透現象の発生を防止する機能を持つ浸透圧式ガス圧縮システム(請求項2)
【0009】
前記浸透圧式ガス圧縮システムにおいて、
ガス圧縮室の内壁部周囲、あるいはシリンダー内部に、ガス圧縮により温度が上昇した圧縮ガスおよびシリンダー内部の海水を冷却するための冷却水配管を持つ浸透圧式ガス圧縮システム(請求項3)
【0010】
前記浸透圧式ガス圧縮システムにおいて、
圧縮ガスが加圧により液体y中に溶解しやすい気体に対しては、ガス圧縮室内部の気液接触面に固体のピストンを備え、ピストンを介在させることにより圧縮ガスと液体yが直接接触することを防止して動作工程を行う浸透圧式ガス圧縮システム(請求項4)
【0011】
前記浸透圧式ガス圧縮システムにおいて、
ガス圧縮の動作工程のサイクルは、吸気、圧縮、送気、排水、給水の工程よりなり、各工程に対応して浸透圧室、水系統、ガス圧縮室、ガス系統の弁制御を行う浸透圧式ガス圧縮システムの運転制御方法(請求項5)
【0012】
前記浸透圧式ガス圧縮システムにおいて、
並列に設置した複数台の浸透圧式ガス圧縮システムの圧縮ガス出口を配管で連結し、各浸透圧式ガス圧縮システムが吸気、圧縮、送気、排水、給水の各工程中にあっても、圧縮ガス貯蔵タンクには常時安定した圧縮ガスを供給できる浸透圧式ガス圧縮システム(請求項6)
【0013】
前記浸透圧式ガス圧縮システムにおいて、
動作流体として淡水と海水を使用し、淡水と海水との間の塩分濃度差を利用してガス圧縮室のガスを圧縮して圧縮ガスを製造する淡水・海水浸透圧式ガス圧縮システム(請求項7)
【0014】
前記浸透圧式ガス圧縮システムにおいて、
動作流体として通常海水と高塩分濃度海水を使用し、通常海水と高塩分濃度海水との間の塩分濃度差を利用してガス圧縮室のガスを圧縮して圧縮ガスを製造する海水・高塩分濃度海水浸透圧式ガス圧縮システム(請求項8)
【0015】
前記海水・淡水浸透圧式ガス圧縮システムにおいて、
定常運転中は、水室Bは大気圧よりも高い状態で常時一定量の海水を流し、
水室Aは出口弁を閉状態として浸透圧により淡水が海水側に流れることにより発生する負圧を利用して、淡水を水室Aに補給する海水・淡水浸透圧式ガス圧縮システムの運転方法(請求項9)
【発明の効果】
【0016】
従来の電動式圧縮機の圧縮効率は低く、多くの電力を必要としているが、浸透圧式ガス圧縮システムでは、ガス圧縮エネルギーは自然エネルギーである浸透圧を利用しているために圧縮動力が不要となり、二酸化炭素の排出がない。
また、浸透圧式ガス圧縮システムは構造や機構が単純であり、回転部や摺動面がなく、設備全体としての低コスト化が可能、スケールアップが容易、保守が簡単と経済的な設備にできる効果がある。
【0017】
浸透圧式ガス圧縮システムにおいて、請求項2に示すような水室Aへの液体yの供給配管を備えることにより、水室Bの淡水で薄まった液体yを新しい液体yとの置換時に、水室A、水室B共に新しい液体yで置換しておき、その後水室Aには液体xを供給して液体yを水室Aから押し出し、水室Aを液体xに置換する工程を経る。
このため、水室Bに新しい液y体を給水後、直ちに水室Aから水室Bに液体xの淡水成分が浸透することが防止され、その後のガス圧縮を効率的に行える効果がある。
【0018】
浸透圧式ガス圧縮システムの圧縮工程においては、ガス圧縮に伴いガス圧縮室のガス温度が上昇する。ガス温度の上昇はガス圧縮効率を低下させるので、請求項3に示す冷却水配管を備えることにより圧縮ガスを冷却してガス圧縮効率を改善できる効果がある。
また、冷却によりシリンダー室内部の液体温度を蒸発温度(海水の場合は約100℃)以下にすることにより、海水ブロー時には大気圧以下になっても、海水フラッシュを防止する効果がある。
【0019】
浸透圧式ガス圧縮システムで圧縮する圧縮ガスが、加圧により液体y中に溶解しやすい気体の場合、ガス圧縮室内面の気液接触面に固体のピストンを介在させて圧縮工程を行うことにより、ガス加圧による液体への溶解を防止できる効果がある。例えば二酸化炭素を圧縮する場合は、圧縮により大量の二酸化炭素が液体y中に溶解するのを防止できる効果がある。
【0020】
ガス圧縮室を吸気、圧縮、送気、排水、給水の各工程中を行わせるために、各工程に対応させて浸透圧室、液体x系統、液体y系統、ガス圧縮室、ガス系統の弁制御を行うことにより、液体x,y間の浸透圧を利用してガス圧縮を効果的に行い、自然エネルギーを効率良く利用できる効果がある
【0021】
一台の浸透式ガス圧縮システムでは、圧縮ガス圧縮室が吸気、圧縮、送気、排水、給水の工程を経るために間歇的に圧縮ガスを送気することなり、ガス圧力の脈動を起こすが、複数台の浸透圧式ガス圧縮システムの圧縮ガス出口配管を連結することにより、各浸透式ガス圧縮システムがどの工程中にあっても圧縮ガス出口圧力は平準化され、圧縮ガス貯蔵タンクには常時安定した圧縮ガスを供給できる効果がある。
【0022】
浸透圧式ガス圧縮システムにおいては、動作液体として淡水・海水を使用し、淡水と海水間の塩分濃度差を利用してガス圧縮室のガスを圧縮して製造することが可能となる。このため、淡水系の河川を持つ臨海工業地域のように淡水と海水が同時に得られる場所であれば、海水・淡水浸透圧式ガス圧縮システムを設置してガス圧縮を行える効果がある。
【0023】
浸透圧式ガス圧縮システムにおいては動作液体として海水・高塩分濃度海水を使用し、高塩分濃度海水と通常海水間の塩分濃度差を利用してガス圧縮室のガスを圧縮して製造することが可能となる。このため、海水が得られれば、淡水が得られない場所でも浸透膜式海水淡水化装置と海水・高塩分濃度海水浸透圧式ガス圧縮システムを設置してガス圧縮を行える効果がある。
【0024】
淡水・海水浸透圧式ガス圧縮システムにおいては、淡水が水室A1から水室B2に浸透することにより発生する水室A1に生じる負圧を利用して、大気圧下の淡水を自然に水室A1に流入させることができる。この運転制御方法により、淡水ポンプの運転が不要となり、所内動力である淡水ポンプ動力を削減できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明は、塩分濃度の異なる液体x・y(主として海水・淡水間あるいは海水・高塩分濃度海水間)の浸透圧式ガス圧縮システムの機器、システム構成、および運転制御方法に関するものである。以下、その動作原理と具体的な実施例について示す。
【実施例1】
【0026】
図2は本発明において、液体xを淡水a、液体yを海水bとした、海水・淡水浸透圧式ガス圧縮の基本的な原理図を示し、(a)〜(e)は各動作工程を示すものである。以下動作工程について説明する。
(a)吸気工程:U字型の容器の下部中央部を半透膜3で仕切り、左に淡水a、右に海水b(通常の海水を言う)を入れる。水室B2の上部には弁24を設けており、海水を規定量入れると弁24を閉止する。このため水室B2の上部には周辺外気状態のガスgが密閉されている。
(b)圧縮工程:水室A1と水室B2の塩分濃度の差により浸透現象(水室A1と水室B2の塩分濃度が同一になろうとする現象)が生じ、淡水aが水室B2に移動し、水室B2には海水bと淡水aとの混合海水(以下海水cと呼ぶ)に満たされ、水室B2の水位が上昇する。この結果、水室B2の上部に密閉されているガスgは圧縮されて圧縮ガスhとなる。この圧力を浸透圧と呼び、25℃の淡水と海水間の浸透圧は理論的には2.6MPaである。
(c)送気工程:圧縮ガスhを、弁24を開放することにより送気して、必要な所に供給する。
(d)排水工程:圧縮ガスhを送気した後には、水室B2の塩分濃度の低下した海水cを系外に排出する。
(e)給水工程:水室A1には水室B2に移動したのと同量の淡水aを補給し、水室B2には海水bを給水して海水cと全量入れ替え、淡水・海水室共に所定の水位に復旧する。同時に、水室B2の上部には周辺外気状態のガスgを充填して(a)の状態に戻る。
【0027】
浸透圧現象は、ファント・ホッフの浸透圧の法則により以下のように表されている。
Π=iRTC
ここで、Π:浸透圧、i:ファント・ホッフ係数、R:ファンデアワールス定数、T:絶対温度、C:液体のモル濃度である。
このため、浸透圧Πは液体中の溶質のモル濃度Cに比例しており、濃度が高いほど浸透圧も高くなる。本発明では海水の塩分濃度が浸透圧を支配することになる。
【0028】
ガス圧縮についてはボイルシャルルの法則に従い、
PV=一定(P:圧力、V:容積)で示される。
浸透圧式ガス圧縮において、圧縮できるガス容積は海水cの水位上昇相当分であり、ガス圧縮室の断面積と海水cの水位上昇の積は水室B2に流入する淡水量Qに等しくなる。すなわち、浸透圧によるガス圧縮圧力は海水b中に透過してくる淡水量Qにより決定されることになる。
ガス圧縮圧力Pは、シリンダー内部に密封されたガス量V、浸透により水室B2側に移動した淡水量Qとすると、下式で表せる。
P=V/(V−Q)
【0029】
図1は実用的な海水・淡水浸透圧式ガス圧縮システム110のシステム構成について示す。浸透圧式ガス圧縮システム110は大別して、浸透圧室部100、ガス圧縮室部101、圧縮ガス貯蔵タンク部102により構成されている。なお、図2の弁開閉状態は圧縮工程時を示す。
浸透圧室部100は水室A1、水室B2、半透膜3、ポンプA4、ポンプB7と各弁5,6,8〜10と配管類により構成される。
ガス圧縮部101は海水cにより封入ガスgを圧縮する部であり、シリンダー部21、冷却水配管28と水・ガス出入口弁22〜26により構成される。
圧縮ガス貯蔵タンク部102は圧縮ガスhを貯蔵する部であり、圧縮ガス貯蔵タンク30、ドレン弁31、管類と、圧縮後のガス温度が高い場合、圧縮ガス貯蔵タンク30に入れる前に冷却する必要があれば圧縮空気冷却器29を持つ構成となる。
【0030】
図3,4により海水・淡水浸透圧式ガス圧縮システム110の動作工程について説明する。
図3(a)は吸気工程を示す。当初、海水系統の水室B入口弁8、水室B出口弁9、ガス圧縮室水ブロー弁23は開とする。ポンプB7を起動して、海水bは水室B2、ガス圧縮室20に入り、ガス圧縮室水ブロー弁23から排出される。
ガス圧縮室20の最低水位(LWL)以上まで海水bが入った状態にして、ガス圧縮室水ブロー弁23、水室B入口弁8・水室B出口弁9を閉止し、ポンプB7も停止する。
その後、ガス圧縮室ガス入口弁24を開とし、ガス圧縮室水ブロー弁23から余剰海水をブローしながらガス圧縮室20の海水レベルを最低水位(LWL)にする。この時圧縮するガスgはシリンダー内部21に吸気される。
運転初期にシリンダー内部に空気が入っている場合は、ガス圧縮室20の上部にベント弁を設けておき、空気をガスで押し出して置換すればよい。
一方、淡水系統の水室A入口弁5、水室A出口弁6は開とし、淡水aはポンプA4により水室A1に送られる。水室A1に淡水aを給水した後は、水室A出口弁6を閉止し、ポンプA4も停止する。
これで圧縮準備が完了したこととなる。
【0031】
図3(b)は圧縮工程を示す。当初、海水bと淡水aは半透膜3を挟んで接しているので、浸透圧により水室A1の淡水aが水室B2の中に入ろうとするが、水室B入口弁8・水室B出口弁9が閉止されているので淡水aが水室B2の中に入ることはできずに、浸透圧のみが発生し、水室B2の圧力が高くなる。
水室B出口弁9を開とすると、海水bの塩分濃度が高いために淡水aは半透膜3を透過して水室B2に入る。水室B2には海水bと淡水aが入り、塩分濃度が低下した海水cの水量が増加してくる。
ガス圧縮室20のシリンダー内21に海水cが流入し始めて水位が上昇すると、ガス圧縮室20のシリンダー21内部に封入されているガスgは圧縮される。シリンダー21の水位上昇は、海水cの塩分濃度の低下ととも遅くなり、浸透圧と逆浸透圧が平衡状態になると停止する。
【0032】
海水bと淡水aの浸透圧によるガス圧縮能力は理論的には2.6MPaであるが、圧縮工程の最終段階では海水cと淡水a間の浸透圧となるために、海水cの塩分濃度をいくらに設定するかが海水b中に浸透する淡水量Qを決定する主要因となる。
半透膜3の耐圧強度はRO膜の場合5.5〜6.8MPaと高く、浸透圧で破壊されることはなく、半透膜の耐圧強度が圧縮圧力に与える影響はない。
【0033】
ガス圧縮に伴いガス温度が上昇する。ガスの温度上昇は圧縮効率を低下させるために冷却することが好ましい。また、海水cの水温が沸騰温度(塩分濃度により異なるが、おおよそ100℃)を超えないようにする必要がある。
これは、圧縮工程後にシリンダー内部が大気圧に開放されたとき、海水cの水温が沸騰温度を超えていると、海水がフラッシュして、水蒸気が発生するのを防止するためである。水蒸気の発生は、その後のガス吸気工程の障害となる恐れがある。
ガス圧縮室シリンダー21内の海水cによっても圧縮ガスhは冷却されてガス温度は低下するが、より効果的に冷却するにはガス圧縮室冷却水配管28を設けるのが良い。
【0034】
図4(c)は送気工程を示す。ガスの圧縮が完了すれば、ガス圧縮室出口弁25を開として、圧縮ガスhを圧縮ガス貯蔵タンク30に送気する送気工程になる。この際、圧縮ガスhをさらに冷却して貯蔵する必要があれば、圧縮空気冷却器29を設けて冷却すればよい。
【0035】
図4(d)は排水・給水工程を示す。ここでは排水と給水工程とを一体化して排水・給水工程として説明する。
送気工程が完了すると、ガス圧縮室出口弁25を閉止し、水室B2、ガス圧縮室20内の海水cをブローする工程に入る。まず、ガス圧縮室水ブロー弁23を開とし、ガス圧縮室20上部に残った圧縮ガスのガス圧力により海水cは押されて、ブロー水fとして排出される。
その後も、水室B2内部やガス圧縮室20のシリンダー21の下部には海水cが残るために、ポンプB7を起動、水室B入口弁8、水室B出口弁9を開として、海水cが海水bと完全に置換するまで海水bを流して、ガス圧縮室水ブロー弁23よりブロー水fとして放出する (排水工程) 。
海水置換が完了後、ガス圧縮室20内の海水bの水位がLWL以上になるようにして、ガス圧縮室水ブロー弁23を閉止、水室B入口弁8、水室B出口弁9を閉止する(給水工程)。以上の工程を海水系の排水・給水工程と呼ぶ。
淡水系統については特に弁操作を要さず、自然に水室A1に淡水が給水される。
その後、ガス圧縮室ガス入口弁24を開、ガス圧縮室水ブロー弁23を微開として、ガス圧縮室20にガスgを導入すると共に、海水bの水位がLELになるとガス圧縮室水ブロー弁23を閉止する。これは圧縮するガスをシリンダー内部に導入する吸気工程(a)になる。
【0036】
海水の排水・給水工程の変形として、図1に示す海水ポンプ出口と水室A1を連絡する水室A連絡配管15を備え、海水の排水・給水工程時には水室A1に海水bを供給するシステムを採用できる。
これは、水室B2の海水cを海水bと置換すると、半透膜を介して直ぐに水室A1の淡水aが水室B2の海水b中に浸透してくるために、海水bの塩分濃度が低下し、ガス圧縮に寄与できない時が発生する。
これを防止するために、水室B2の海水cを海水bで置換時に、水室A連絡配管15により同時に水室A1の淡水aも海水bで置換し、水室A1と水室B2の双方に海水bを満たしておき、浸透圧現象が生じない環境にしておく。
圧縮工程に入る前に、ポンプA4を起動し、水室A入口弁5を開として、水室A1に淡水aを供給しながら水室A出口弁6から海水bを押し出し、淡水aに置換する。
その後、ポンプA4を停止、水室A出口弁6を閉止した後、水室B出口弁9を開として、淡水aから海水bへの浸透現象を生じさせことにより、ガス圧縮を効率的に行なう。
【0037】
ガス圧縮室20の構造は基本的にプランジャー型ポンプと同じ構造である。プランジャー型ポンプではシリンダーの中をピストンが上下し、その際にガスを吸気・圧縮・排気するのであるが、ガス圧縮室20ではピストンの役目を海水・淡水の混合水である海水cが行う。シリンダー部21の内面は、圧縮に伴うピストンの役目を液体(海水c)が行うために、ピストン内面とシリンダー外面の接触面のように精密な金属接触面がなく、圧縮ガスをシールする必要性もない。
浸透圧式ガス圧縮システムのガス圧縮室20は大型構造体となるので、シリンダー部21は例えばPCコンクリートのような安価な材料を使用して製造することができる。またシリンダー内部を固体のピストンが往復運動をするものではなく、単に水位が上下するために、ガス圧縮室冷却水配管28はシリンダー内部壁にらせん状に巻いた簡易な構造や、シリンダー内部を自由に横断・縦断する立体的な配管構成を採用することが可能である。
【0038】
水室B2の容積に対するガス圧縮室のシリンダー容積の比は最高圧縮ガス圧力、ガス圧縮率やガス圧縮速度に関係し、重要な設計条件となる。水室B2の容積に対するガス圧縮室20のシリンダー容積比が小さいと、最高圧縮ガス圧力が高くなる、ガス圧縮率が大きくなる、ガス圧縮速度が早くなる特徴がある。しかし、一回あたりの圧縮ガスの製造量が減少する。
最適な容積比は圧縮するガスの種類、必要とする最高圧力、必要とするガス量を考慮して決定すればよい。
【実施例2】
【0039】
海水・淡水浸透圧式ガス圧縮システム110の浸透圧室100の運転方法の改善方法について示す。
定常運転中、水室B2の海水b中に淡水aが段々と浸透してくるために、海水cの塩分濃度も低下してゆき、これに伴い淡水aの浸透速度も低下する。浸透速度の改善方法として、水室B2に新たな海水bを補給することが有効である。この海水bの補給は、高圧になった水室B2中に海水bを送るためにガス圧縮室20のガス圧よりも高圧にする必要がある。ポンプB7で行えればよいが、高圧で大容量のポンプB7の設置は経済的ではないために、小容量で高圧の海水封入ポンプを専用に設置して行えば効果的である。
【0040】
水室A1では、淡水aが水室B2に流出してゆくためにたえず淡水aを補給する必要がある。淡水aの補給に、ポンプA4を常時運転して使用してもよいが、水室A1は淡水aが水室B2に流出してゆくために大気圧よりも負圧になる。このため、ポンプA4を運転しなくとも大気圧に押されて、淡水aは水室A1に自然に流入する。ポンプ動力削減のためにはポンプA4を停止しておくほうが経済的である。
【0041】
浸透圧によるガス圧縮の場合、逆浸透現象により、水室B2の海水bの塩分が徐々に半透膜3を透過して水室A1の内部に進入してくる。水室A1は、水室A出口弁6を閉状態にして運用しているので徐々に水室A1の塩分濃度が高くなり、水室B2と水室A1との塩分濃度差により発生する浸透圧も低下する。
また、淡水中にはSS分も含まれており、徐々に水室A1に蓄積され、半透膜3の目詰まりによる浸透性能の低下が生じる。
さらに、水室A1は負圧状態のために系外からの空気混入、淡水a中の溶解酸素ガスの析出による水室A1内部に酸素ガスの滞留等が発生する。この滞留ガスも半透膜3の浸透圧性能を阻害する。
【0042】
以上のように、運転中には淡水aの配管系等から漏れこむガスや淡水a中に溶け込んだガス成分の再ガス化による浸透性能の低下、水室B2から水室A1の淡水a中に溶け込んでくる塩分による浸透性能の低下、淡水a中に混入する粒子状物質(SS)による半透膜3の目詰まりによる浸透性能の低下等が発生する。
これを防止するため、定期的にポンプA4を使用し、水室A1を加圧状態として水室A出口弁6より汚れた淡水(ガス、塩分、SSを含有した海水)を系外に放出し、清浄な淡水aと交換する水室A1の淡水置換工程が必要である。ただし、請求項2に示し、(0036)で説明する水室A連絡配管を使用する運転方法の場合は淡水置換工程は必要としない。
水室A1の定期的な淡水置換工程を具体的に実施する一つの方法として以下のような方法がある。水室A1側には塩分濃度計、SS濃度計、酸素濃度計を設け、各計測値が規定値を超えるとポンプA4を起動して、水室A1を加圧状態として水室A出口弁6を開放して水室A1の水を新しい淡水aと置換する。淡水置換が完了すると、水室A出口弁6を閉とし、ポンプA4を停止して定常運転状態に戻す。
【実施例3】
【0043】
図5に海水・淡水浸透圧式ガス圧縮システム110の利用形態の一つとして、工場等104に圧縮空気を供給するシステム構成を示す。図5に示すように複数基(図5では1例として3基の場合で、最上段は送気、中段は圧縮、下段は吸気工程を示す)の海水・淡水浸透圧式ガス圧縮システム110を並列に設置して、圧縮ガス出口配管を連結することにより、各圧縮ガス圧縮室20が吸気、圧縮、送気、排水・給水の各工程中にあっても、1つのシステムの送気工程から別のシステムの送気工程までの時間間隔が短く、圧縮ガス貯蔵タンク30には常時安定した圧縮ガスhを供給することができる。
製造した圧縮ガスhを常時使用するのであれば、アキュームレータ機能を持つ比較的小容量の圧縮ガス貯蔵タンク30によりガス圧力の平準化を行うことができる。
圧縮ガス貯蔵タンク30は用途、貯蔵圧力、貯蔵容積により、地上式や地下式を採用できる。比較的小容量で低圧のものは鋼板製の地上式のものが安価で、メンテナンスも容易となる。高圧、大容積の大型タンクとなれば、地下式として、圧縮ガスの圧力強度は地面の壁面に持たせて、内面に薄いライニング材でガスシールをしたものが経済的となる。
【0044】
製造された圧縮ガスhが空気の場合は工場内の圧縮動力源、バーナ燃焼用空気や雑用空気、さらに塩分や湿分除去等を行えば制御用空気としても使用することができる。また、他のガスの圧縮に使用する場合は化学工業用等にも利用できる。
このような用途において、定期点検等を考慮して、海水・淡水浸透圧式ガス圧縮システム110の補助用として電動式ガス圧縮機103を併用することにより、より信頼性の高いシステムとすることができる。
【実施例4】
【0045】
図6に海水・淡水浸透圧式ガス圧縮システム110の利用形態の一つとして、工場等のボイラー105の燃焼用空気として圧縮空気を供給するシステム構成を示す。通常ボイラーの燃焼用空気は、押し込みファンにより低圧空気を供給しているが、海水・淡水浸透圧式ガス圧縮システム110の方式を採用することにより、押し込みファンの設備や動力を削減することができる。特に、海水・淡水浸透圧式ガス圧縮システム110は加圧空気を供給できるために、加圧燃焼ボイラーへの燃焼用加圧空気の供給に適している。
【0046】
図6に示すシステムの特徴は、複数基(図6では1例として3基の場合で、最上段は送気、中段は圧縮、下段は吸気工程を示す)の海水・淡水浸透圧式ガス圧縮システム110に対して、海水供給系統も淡水系統も一台のポンプB7とポンプA4に集約していることである。
ポンプB7は海水の排水・給水工程、ポンプA4は淡水置換工程に使用するのみで、常時運転する必要性がなく、各海水・淡水浸透圧式ガス圧縮システム110毎に一台設置する必然性はない。このためポンプB7とポンプA4を集約して設置することにより、設備台数を減少させるとともに、常時いずれかの海水・淡水浸透圧式ガス圧縮システム110に海水bや淡水aを供給できるために、ポンプB7やポンプA4の煩雑な起動停止操作がなくなり、動力の起動損失の削減が図れる。
【実施例5】
【0047】
図7に海水・淡水浸透圧式ガス圧縮システムの利用形態の一つとして、二酸化炭素ガスの液化工程に浸透圧式ガス圧縮システム110を利用する場合のシステム構成を示す。図7の最上段は送気工程、中段は圧縮工程、下段は吸気工程を示す。
圧縮ガスとして100%濃度の二酸化炭素ガスを使用してもよいし、燃焼排ガスのように二酸化炭素を含有しているものでも良い。
二酸化炭素ガスjはガス圧縮室20に入り圧縮される。圧縮された二酸化炭素ガスjは二酸化炭素液化器40に送られ、例えばLNG43(-162℃)と熱交換をして、三重点(0.518MPa、-56.6℃)以上に冷却して液化する。液化した液化二酸化炭素kは搬出される。
燃焼排ガスの場合は、液化されなかった残渣ガスn(窒素ガス、残りの二酸化炭素ガス、酸素ガス、一酸化炭素ガス、未燃焼燃料ガス成分等)は大気中に放出される。
LNG43はガス化された天然ガス(NG)nとして、発電所の燃料や都市ガス配管に供給される。二酸化炭素ガスjの液化が難しい場合は、ドライアイスの固体として回収することも可能である。
【0048】
ボイラー等の燃焼排ガスを圧縮する場合、二酸化炭素ガスの分圧が三重点以上に圧縮する必要があるので、二酸化炭素含有率が圧縮圧力を決定することになる。
通常のボイラー燃焼排出ガス中の二酸化炭素ガス濃度は9〜12%程度であり、浸透圧で燃焼排出ガスを2.6MPa迄加圧しても、二酸化炭素ガス分圧は0.23〜0.31MPaと三重点(0.518MPa、-56.6℃)の圧力に到達しない。このため、電動圧縮機103によりさらに圧縮した後に冷却する必要がある。
しかし、最近開発された酸素吹きボイラーでは燃焼排ガス中の二酸化炭素ガス濃度は68%程度と高く、燃焼排出ガスを0.76MPa迄加圧すれば二酸化炭素ガス分圧は三重点よりも高くなり、液化することができる。
【0049】
海水・淡水浸透圧式ガス圧縮システムにおいて、二酸化炭素ガスのように圧縮により流体中に溶解しやすい気体の場合、圧縮により二酸化炭素ガスjが海水c中に溶解する問題が発生する。これを防止するため、圧縮ガスjと海水cが直接接触しないようにする必要がある。その方法として、圧縮室のシリンダー内部21の気液接触面に固体のピストン27を介在させる方法がある。
ピストン27の一方に圧縮ガスhを、反対面に海水cを配して圧縮工程を行うことにより、圧縮ガスhが加圧により海水c中に溶解しやすい気体に対しても本発明の海水・淡水浸透圧式ガス圧縮システム110を使用することが可能である。
ピストン27はシリンダー21の内部を平行移動する必要がある。シリンダーが垂直配置型の場合はフロート式のピストン、シリンダーが水平配置型の場合はピストンクランク式により平行移動を保つ構造にすることができる。
【0050】
本発明の海水・淡水浸透圧式ガス圧縮システム110による二酸化炭素液化方法は、地球温暖化を防止するために、燃焼排ガス中の二酸化炭素ガスを回収し、加圧後にLNG冷熱により液化し、海底貯留や地下貯蔵により二酸化炭素を固定化する技術に適用できる。
火力発電所に化学吸着法による二酸化炭素回収技術を適用すると、発電効率が10%程度低下するために、同一の電力量を得るには化石燃料の使用量が増加し、その結果二酸化炭素の排出量が増加するという、矛盾に陥っている。
しかし、本方式による二酸化炭素液化技術は、浸透圧によるガス圧縮は自然エネルギー利用、LNGによる冷却は廃棄エネルギーの利用と、化石エネルギーを使用せずに行えるため、今後の二酸化炭素回収方法の有力な一つの方法になるものと考えられる。
【実施例6】
【0051】
浸透圧現象は濃度差の異なる液体間に発生する。このため、動作流体は海水bと淡水aに限定されるものではなく、高塩分濃度海水(海水dと呼ぶ)と海水bを動作流体として浸透圧式ガス圧縮システムを構成することが可能である。
この海水・高塩分濃度海水浸透圧型ガス圧縮システム120のシステム構成は図1と同様である。また、動作原理、動作工程についても淡水・海水浸透圧型ガス圧縮システム110と基本的には同様である。
【0052】
図8に(a)は吸気工程、(b)は圧縮工程を示す。送気工程(c),排水・給水工程(d)については記載を省略する。
圧縮工程(b)では、水室A1の海水b中の淡水成分が水室B2に浸透し、高塩分濃度海水dと混ざって海水eとなり、ガス圧縮室20に流入して封入されたガスgを圧縮する。
【0053】
洋上や砂漠の多い地域などでは淡水は貴重品であり、飲料水も簡単に入手できない。このため、海上施設や水資源の少ない地域では、浸透膜式海水淡水化装置が導入されているケース合が多い。浸透膜式海水淡水化装置からは塩分濃度が約2倍となった高塩分濃度海水が排出されており、この高塩分濃度海水は直接放流すると動植物の生態系や環境に影響を及ぼすために、再度海水で希釈して放流されている。
この浸透膜式海水淡水化装置から排出される高塩分濃度海水を海水・高塩分濃度海水浸透圧式ガス圧縮システム120の海水dとして使用することができる。このシステムからブローされる海水eの塩分濃度は海水bよりは高いものの、海水dの半分程度の塩分濃度に減じており、放流による周辺環境への影響も緩和される。
浸透膜式海水淡水化装置と海水・高塩分濃度海水浸透圧式ガス圧縮システム120とのハイブリッド化システムは、海上基地、船舶用、臨海地等、多種の用途に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の浸透圧式ガス圧縮システムの基本構成図である。
【図2】本発明の海水・淡水浸透圧式ガス圧縮システムの動作原理図である。
【図3】本発明の海水・淡水浸透圧式ガス圧縮システムの動作工程を示す図1である。
【図4】本発明の海水・淡水浸透圧式ガス圧縮システムの動作工程を示す図2である。
【図5】本発明の海水・淡水浸透圧式ガス圧縮システムにより圧縮空気を供給するシステム図である。
【図6】本発明の海水・淡水浸透圧式ガス圧縮システムによりボイラー等に燃焼空気を供給するシステム図である。
【図7】本発明の海水・淡水浸透圧式ガス圧縮システムにより二酸化炭素を液化するシステム図である。
【図8】本発明の海水・高塩分濃度海水浸透圧式ガス圧縮システムの動作工程を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
1 水室A
2 水室B
3 半透膜
4 ポンプA(PA)
5 水室A入口弁
6 水室A出口弁
7 ポンプB(PB)
8 水室B入口弁
9 水室B出口弁
10 水室Bブロー弁
15 水室A連絡配管
16 水室A連絡弁
20 ガス圧縮室
21 ガス圧縮室シリンダー
22 ガス圧縮室水入口逆止弁
23 ガス圧縮室水ブロー弁
24 ガス圧縮室ガス入口弁
25 ガス圧縮室圧縮ガス出口弁
26 ガス圧縮室圧縮ガス出口逆止弁
27 ガス圧縮室ピストン
28 ガス圧縮室冷却水配管
29 圧縮空気冷却器
30 圧縮ガス貯蔵タンク
31 圧縮ガス貯蔵タンク入口弁
32 圧縮ガス貯蔵タンク出口弁
33 圧縮ガス貯蔵タンクブロー弁
40 二酸化炭素液化器
41 二酸化炭素液化器入口弁
42 二酸化炭素液化器出口弁
43 冷媒供給設備
44 冷媒供給入口弁
45 ベント弁
100 浸透圧室部
101 ガス圧縮部
102 圧縮ガス貯蔵タンク部
103 電動式ガス圧縮機
104 需要先(工場等)
105 自家発電用ボイラー等
110 海水・淡水浸透圧式ガス圧縮システム(100,101,102により構成)
120 海水・高塩分濃度海水浸透圧式ガス圧縮システム(100,101,102により構成)
【0056】
a 淡水
b 海水(通常の海水)
c 海水(淡水で塩分濃度が薄くなった海水)
d 海水(高塩分濃度の海水)
e 海水(淡水で塩分濃度が薄くなった高塩分濃度の海水)
f 海水系のブロー水
g 圧縮前のガス
h 圧縮ガス
i 冷却水(i1:冷却水入口 i2:冷却水出口)
j 二酸化炭素ガス
k 液化二酸化炭素
l 冷却用媒体(LNG)
m 冷却用媒体(NG)
n 残渣ガス
x 低塩分濃度水
y 高塩分濃度水


【特許請求の範囲】
【請求項1】
半透膜を介しその両側に水室A・水室Bを配し、水室Aに低塩分濃度の液体x、水室Bには高塩分濃度の液体yを入れた浸透圧室部と、
水室Bの出口側に設けられたガス圧縮室部と、
ガス圧縮室部出口側に設けられた圧縮ガス貯蔵タンク部とからなり、
浸透圧室部の水室Aの液体xから水室Bの液体yへ浸透した淡水分によりガス圧縮室に封入したガスを圧縮して圧縮ガスを製造し、圧縮ガス貯蔵タンクに貯蔵することを特徴とする浸透圧式ガス圧縮システム
【請求項2】
請求項1に記載する浸透圧式ガス圧縮システムにおいて、
液体yを水室Bに供給するポンプB出口と水室Aを連絡する連絡配管と連絡弁を備え、
排水・給水工程時工程時に水室Bへ液体yを入れると共に、水室A連絡配管により水室Aにも液体yを供給して、水室Aから水室Bへの浸透現象の発生を防止する機能を持つことを特徴とする浸透圧式ガス圧縮システム
【請求項3】
請求項1,2に記載する浸透圧式ガス圧縮システムにおいて、
ガス圧縮室の内壁部周囲またはシリンダー内部に冷却水配管を備え
圧縮により温度上昇した圧縮ガスおよびシリンダー内部の海水を冷却することを特徴とする浸透圧式ガス圧縮システム
【請求項4】
請求項1〜3に記載する浸透圧式ガス圧縮システムにおいて、
加圧により圧縮ガスが液体y中に溶解しやすい気体に対しては、ガス圧縮室内部の気液接触面に固体のピストンを備え、
圧縮ガスと液体yが直接接触することを防止して動作工程を行うことを特徴とする浸透圧式ガス圧縮システム
【請求項5】
請求項1〜4に記載する浸透圧式ガス圧縮システムにおいて、
ガス圧縮の動作工程のサイクルは、吸気する工程、圧縮する工程、送気する工程、排水する工程、および給水する工程からなり、このサイクルを連続することによりガス圧縮を行うことを特徴とする浸透圧式ガス圧縮システムの運転制御方法
【請求項6】
請求項1〜5に記載する浸透圧式ガス圧縮システムにおいて、
浸透圧式ガス圧縮システムを複数台設置して、ガス圧縮室の出口配管を連結する圧縮ガス連絡配管系統を備え、
各浸透圧式ガス圧縮システムが吸気、圧縮、送気、排水、給水の各工程中にあっても、圧縮ガス貯蔵タンクには常時安定した圧縮ガスを供給できることを特徴とする浸透圧式ガス圧縮システム
【請求項7】
請求項1〜6に示す浸透圧式ガス圧縮システムにおいて、
液体xを淡水、液体yを海水とすることを特徴とする、海水・淡水浸透圧式ガス圧縮システム
【請求項8】
請求項1〜6に示す浸透圧式ガス圧縮システムにおいて、
液体xを海水、液体yを高塩分濃度海水とすることを特徴とする、海水・高塩分濃度海水浸透圧式ガス圧縮システム
【請求項9】
請求項7に記載する海水・淡水浸透圧式ガス圧縮システムの運転制御方法において、
圧縮工程中には水室Aから淡水が流出しないように水室A出口弁を閉状態とし、
浸透圧により半透膜を通して淡水が海水側に流れることにより発生する水室A内の負圧を利用して、淡水を水室Aに補給することを特徴とする海水・淡水浸透圧式ガス圧縮システムの運転制御方法



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−303769(P2008−303769A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−150708(P2007−150708)
【出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】