説明

消泡剤組成物

本発明は、(A)式(I):Ra(R1O)b2cSiO(4-a-b-c)/2[式中、基及び指数は請求項1に記載のものを表す、但し、合計a+b+c≦3であり、式(I)の全単位の少なくとも50%中で、合計a+b+cは2に等しく、この有機珪素化合物は、式(I)の単位150〜1500個から成っており、この有機珪素化合物の少なくとも10単位中で、cは0とは異なっていることを条件としている]の単位から成っているポリマー有機珪素化合物少なくとも1種を含有している組成物及びその製造法及び消泡剤としてのその使用に関している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、珪素に直接結合した定義のポリエーテル基を有する、選択された有機珪素化合物を有している組成物、その製造法及び消泡剤としてのその使用に関する。
【0002】
所望又は不所望の成分として界面活性化合物を含有している多くの液体系、殊に水性系では、これらの系がガス状物質と多かれ少なかれ強く接触される場合に、例えば排水のガス消毒の際、液体の強力撹拌の際、蒸留−、洗浄−又は染色処理の際又は移し換え工程の際に、気泡形成によって問題が生じることがありうる。
【0003】
この気泡の排除は、機械的方法で又は消泡剤の添加によって行うことができる。この場合に、シロキサンベースの消泡剤が特に効を奏している。シロキサンをベースとしている消泡剤は、例えばDE−AS1519987によれば、ポリジメチルシロキサン中での親水性珪酸の加熱によって製造されている。
【0004】
ポリジメチルシロキサンをベースとしている消泡剤は、ポリジメチルシロキサンが大抵の界面活性剤系、例えば湿潤剤又は液体洗剤と相容性が悪く、非常に望ましくない沈殿析出する傾向がある欠点を有している。
【0005】
従って既に従来から、ポリエーテルシロキサンが、場合によっては良好な相容性が必要である場所で、例えばDE−AS2222998に相応するように、ポリプロピレングリコールと混合して消泡剤として使用されている。このポリエーテルシロキサンは、ポリジメチルシロキサン単位6〜420個及びポリエーテル基を有するシロキサン単位3〜30個を有している。
【0006】
珪酸と並んで少量のポリジメチルシロキサン及びMQ−樹脂を含有していることもできる。これについては、例えばDE−PS2233817を参照すべきである。
【0007】
作用効果は屡々充分ではないので、例えばEP−A341952に記載のように、ポリエーテルシロキサンと多量のポリジメチルシロキサンとの組み合わせ物も使用されている。しかしながらこれらの消泡剤処方物は、貯蔵安定な水性界面活性剤系中での使用のためには好適ではない。
【0008】
本発明の目的物は、
(A)式:
a(R1O)b2cSiO(4-a-b-c)/2 (I)
[式中、
Rは同じ又は異なるのもであってよく、水素原子、SiC−結合している、置換又は非置換の、1価の炭化水素基を表し、
1は同じ又は異なるものであってよく、水素原子又は置換又は非置換の、1価の炭化水素基を表し、
2は、式:
−Z−O−(R5O)k−A (II)
(式中、Zは、置換又は非置換の、2価の炭化水素基であり、R5は同じ又は異なるものであってよく、置換又は非置換の、2価の炭化水素を表し、kは1〜200の整数であり、Aは水素原子又は1価の有機基を表す)の基を表し、
aは0、1、2又は3であり、bは0、1、2又は3であり、cは0、1又は2である、
但し、合計a+b+c≦3であり、式(I)の全単位の少なくとも50%中で、合計a+b+cは2に等しく、この有機珪素化合物は、式(I)の単位150〜1500個から成っており、かつこの有機珪素化合物の少なくとも10単位、好ましくは少なくとも15単位、特別好ましくは少なくとも20単位中で、cは0とは異なっているものであることを条件としている]の単位から成っている少なくとも1種のポリマー有機珪素化合物
並びに
(B)以下の
(B1) 填料粒子 及び/又は
(B2) 式:
3e(R4O)fSiO(4-e-f)/2 (IV)
[式中、
3は同じ又は異なるものであってよく、水素原子又はSiC−結合している、置換又は非置換の、1価の炭化水素基を表し、
4は同じ又は異なるものであってよく、水素原子又は置換又は非置換の、1価の炭化水素基を表し、eは0、1、2又は3であり、fは0、1、2又は3である、
但し、合計e+f≦3であり、オルガノポリロキサン樹脂中の式(IV)の全単位の50%より少ない分中で、合計e+fは2に等しいことを条件としている]の単位からのオルガノポリシロキサン樹脂
から選択される少なくとも1種の添加物
を含有している組成物である。
【0009】
基Rの例は次のものである:アルキル基、例えばメチル−、エチル−、n−プロピル−、イソ−プロピル−、1−n−ブチル−、2−n−ブチル−、イソ−ブチル−、t−ブチル−、n−ペンチル−、イソ−ペンチル−、ネオ−ペンチル−、t−ペンチル基;ヘキシル基、例えばn−ヘキシル基;ヘプチル基、例えばn−ヘプチル基;オクチル基、例えばn−オクチル基及びイソ−オクチル基、例えば2,2,4−トリメチルペンチル基;ノニル基、例えばn−ノニル基;デシル基、例えばn−デシル基;ドデシル基、例えばn−ドデシル基;オクタデシル基、例えばn−オクタデシル基;シクロアルキル基、例えばシクロペンチル−、シクロヘキシル−、シクロヘプチル−基及びメチルシクロヘキシル基;アルケニル基、例えばビニル−、1−プロペニル−及び2−プロペニル基;アリール基、例えばフェニル−、ナフチル−、アンスリル−及びフェナンスリル基;アルカリール基、例えばo−、m−、p−トリル基;キシリル基及びエチルフェニル基;及びアラルキル基、例えばベンジル基、α−及びβ−フェニルエチル基。
【0010】
置換された基Rの例は、オルガノシリル基で置換された炭化水素基、例えばトリメチルシリルエチレン基、並びにオルガノシロキサニル基で置換された炭化水素基、例えば式:
【化1】

の基である。
【0011】
基Rは水素原子を表さないことが有利である。式中のRが水素原子を表す式(I)の単位の全量は、1.0%を下回る、殊に0.2%を下回ることが好ましい。
【0012】
基Rは、場合によりオルガノシリル基で又はオルガノシロキサニル基で置換された、炭素原子数1〜18を有する炭化水素基が好ましく、炭素原子数1〜18を有する線状アルキル基又は炭素原子数6〜9を有する芳香族基が特に好ましく、メチル−、n−ヘキシル−、n−ヘプチル−、n−オクチル−、n−ドデシル−、フェニル−及びエチルフェニル基、殊にメチル基が特別好ましい。基R1は、水素原子又は置換又は非置換の、炭素原子数1〜30を有する炭化水素基が好ましく、水素原子又は炭素原子数1〜4を有する炭化水素基、殊にメチル−又はエチル基が特別好ましい。
【0013】
aは1、2又は3に等しいことが好ましい。
【0014】
bは0又は1に等しいことが好ましく、0が特別好ましい。
【0015】
cは0又は1に等しいことが好ましい。
【0016】
基Zの例は、次のものである:−CH2−CH2−、−CH2−CH(CH3)−、
−CH2−CH2−CH2−、−CH2−CH(CH3)−CH2−、
−CH2−CH2−C64−及び−CH2−CH(CH3)−C64−。
【0017】
基Zが炭素原子数1〜10を有する炭化水素基であることが好ましく、この際、
−CH2−CH2−CH2−が特別好ましい。
【0018】
基Aの例は、基Rに関する前記の基並びにアシル基、例えばアセチル基である。
【0019】
基Aは、水素原子、炭化水素基及びアシル基が好ましく、水素原子、メチル基、アリル基、ブチル基及びアセチル基が特別好ましい。
【0020】
基R5の例は、−CH2−CH2−、−CH2−CH(CH3)−、
−CH2−CH2−CH2−、−CH2−CH(CH3)−CH2−及び
−CH2−CH(CH2−CH3)−である。
【0021】
基R5は−CH2−CH2−又は−CH2−CH(CH3)−であることが好ましい。
【0022】
基R2は、式:
−(CH2x−O−(C24O)m−(C36O)n−(C48O)o−A (V)
[式中、xは1〜10の整数、好ましくは2〜6、特別好ましくは3であり、
mは0又は1〜200の整数であり、nは0又は1〜200の整数であり、
oは0又は1〜200の整数であり、Aは前記のものを表す、
但し、合計m+n+oは1〜200であり、単位(C24O)、(C36O)及び(C48O)は、式(V)の基中に統計学的に分配されているか又はブロックとしても存在できることを条件としている]の基であることが好ましい。
【0023】
mは0又は1〜30の整数に等しいことが好ましい。
【0024】
nは5〜50の整数であることが好ましい。
【0025】
oは0に等しいことが好ましい。
【0026】
成分(A)として使用される有機珪素化合物は、分枝した又は線状のオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0027】
本発明により使用される成分(A)は、式:
2z3-zSi−(O−SiR2x(O−SiRR2yO−SiR3-z2z (III)
[式中、zは同じ又は異なるものであり、0又は1を表し、xは100〜1000の値を有し、yは10〜100の値を有し、
基R及びR2はそれぞれ、前記のものの1つを表し、この際、x個の単位(OSiR2)及びy個の単位(O−SiRR2)は分子中に任意に分配されていてよい]の本質的に線状のオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0028】
式(III)中に言及されてはいないが、このオルガノポリシロキサンは、全シロキサン単位の合計に対して10モル%までの他のシロキサン単位、例えば≡SiO1/2−、−SiO3/2−及びSiO4/2−単位を含有することができる。
【0029】
式(III)で示されているオルガノポリシロキサンは、少なくとも1個の基Rがオルガノシリル基又はオルガノシロキサニル基で置換された炭化水素基を表す場合には、例えばEP−A298402中及びEP−A1076073中に記載のポリエーテルシロキサンと同様に、本発明の開示内容に属しているSi−C−結合から生じる分枝を有していることもできる。しかしながら、このような分枝した化合物(A)は好ましくない。
【0030】
本発明による組成物中で使用される有機珪素化合物(A)は、好ましくは500〜1000000mPas、特別好ましくは1000〜100000mPas、殊に5000〜50000mPasの粘度(それぞれ25℃で測定)を有している。
【0031】
本発明により使用される有機珪素化合物は、市販の製品であるか又は珪素化学で慣用の方法によって製造することもできる。
【0032】
例えば有機珪素化合物(A)は、Si−結合した水素原子を有する有機珪素化合物への式:
Z’−O−(R5O)k−A’ (VI)
[式中、Z’は、少なくとも1個の末端脂肪族炭素−炭素−多重結合を有する、置換又は非置換の、1価の炭化水素基であり、A’は、Aについて記載されているものの1つを表し、並びにR5及びkは前記のものの1つを表す]の化合物の付加によって製造することができる。ヒドロシリル化とも称されるこの付加反応は、当業者にとっては公知であり、白金化合物、例えばイソプロパノール中のヘキサクロロ白金酸によって触媒される。この場合に、副反応によりSi−O−C−結合を生じることもでき、他方、殊にA’が水素原子に等しい場合には、少量のSi−H−基が生成物中に残存することもありうる。双方のことは意図されるものではないし好ましくもないが、必ずしも完全に避けることもできない。
【0033】
A’が、末端位脂肪族炭素−炭素−多重結合少なくとも1個を有する、置換又は非置換の、1価の炭化水素基を表す場合には、分枝が生じる。しかしながら、特に式中の基A’が脂肪族炭素−炭素多重結合を有していない、式(VI)の化合物が使用されると、この反応で分枝は生じない。
【0034】
通常、付加反応による本発明による成分(A)の合成時に、Si−結合している水素の量に対して5〜50%のモル過剰量の化合物(VI)が使用される。過剰に使用された量の化合物(VI)は、製品中に残留する。
【0035】
本発明による組成物は、添加物(B)を、それぞれ成分(A)100質量部当たり好ましくは0.1〜30質量部、特別好ましくは1〜15質量部の量で含有している。
【0036】
本発明により使用される添加物(B)としては、もっぱら成分(B1)、もっぱら成分(B2)又は成分(B1)と(B2)とからの混合物が重要であり、この際、後者が好ましい。
【0037】
成分(B1)は、粉末状の、特に疎水性の填料であることが好ましい。
【0038】
成分(B1)は、20〜1000m2/g、特別好ましくは50〜400m2/gのBET−表面積を有することが有利である。
【0039】
成分(B1)は、10μmより小さい、特別好ましくは10nm〜5μmの粒度を有することが有利である。
【0040】
成分(B1)は、100μmを下回る、特に好ましくは1〜20μmの凝集体寸法を有することが有利である。
【0041】
成分(B1)の例は、二酸化珪素(珪酸)、二酸化チタン、酸化アルミニウム、金属石鹸、石英粉、PTFE−粉末、脂肪酸アミド、例えばエチレンビスステアルアミド、微粉砕疎水性ポリウレタンである。
【0042】
成分(B1)として、20〜1000m2/gのBET−表面積、10μmを下回る粒度及び100μmを下回る凝集体寸法を有する、二酸化珪素(珪酸)、二酸化チタン又は酸化アルミニウムを使用することが有利である。
【0043】
成分(B1)としては、珪酸、殊に50〜800m2/gのBET−表面積を有する珪酸が特別好ましい。これらの珪酸は、熱分解法珪酸又は沈降珪酸であることができる。成分(B1)として、前処理された珪酸、即ち慣用の疎水性珪酸も、親水性珪酸も使用可能である。本発明により使用されうる市販の疎水性珪酸の例は、HDK(R)H2000、140m2/gのBET−表面積を有する、ヘキサメチルジシラザンで処理された熱分解法珪酸(Wacker Chemie AG, Deutschlandから市販)及び90m2/gのBET−表面積を有する、ポリジメチルシロキサンで処理された沈降珪酸(Degussa AG, Deutschlandから、Sipernat D10なる名称で市販)である。
【0044】
成分(B1)として疎水性珪酸が使用されるべき場合で、例えばそれが組成物の所望の作用効果を得るための消泡剤として有利である場合には、親水性珪酸をその場で疎水性化することもできる。珪酸の疎水性化法は、種々公知である。この場合に、親水性珪酸のその場での疎水性化は、例えば成分(A)中又は(A)と(B2)とからの混合物中に分散された珪酸を100〜200℃の温度に数時間加熱することによって行うことができる。この場合にこの反応を、触媒、例えばKOH及び疎水性化剤、例えば短鎖のOH−末端ポリジメチルシロキサン、シラン又はシラザンの添加によって援助することができる。この処理は、市販の疎水性珪酸の使用の場合にも可能であり、作用効果改良のために寄与することができる。
【0045】
もう一つの可能性は、その場で疎水性化された珪酸と市販の疎水性珪酸との組み合わせ物の使用である。
【0046】
本発明により場合により使用される成分(B2)は、好ましくは、式(IV)の単位からの珪素樹脂(ここで、樹脂中の単位の0〜30%、好ましくは0〜5%中で、合計c+dは2に等しい)である。
【0047】
基R3の例は、基Rについて挙げられている例であり、この際これは、炭素原子数1〜4を有するアルキル基又はフェニル基、殊にメチル基であることが好ましい。
【0048】
基R4の例は、基Rについて挙げられている例であり、この際、炭素原子数1〜4を有するアルキル基が好ましく、メチル−又はエチル基、殊にエチル基が特別好ましい。
【0049】
成分(B2)は、本質的に、R3が前記定義と同じものを表す、R33SiO1/2(M)−及びSiO4/2(Q)−単位から成っているオルガノポリシロキサン樹脂であることが特別好ましく;これらの樹脂は、MQ−樹脂とも称される。M−単位対Q−単位のモル比は、有利に0.5〜2.0の範囲、特別好ましくは0.6〜1.0の範囲内にある。これらの珪素樹脂は更に、遊離ヒドロキシ−又はアルコキシ基10質量%までを含有することができる。この場合に、R3はメチル基であることが有利である。
【0050】
これらのオルガノポリシロキサン樹脂(B2)は、25℃で1000mPasより大きい粘度を有するか又は固体であることが有利である。これらの樹脂のゲルパーミエシヨンクロマトグラフィで測定される重量平均分子量(ポリスチレン標準に対する)は、200〜200000g/モル、殊に1000〜20000g/モルであることが有利である。
【0051】
成分(B2)は、市販製品であるか又は珪素化学で慣用の方法、例えば"Parsonage,J.R.; Kendrick,D.A. (Science of Materials and Polymers Group, University of Greenwich, London, UK SE18 6PF) Spec.Publ.-R.Soc.Chem. 166, 98-106, 1995"、US−A2676182又はEP−A927733に相応する方法によって製造することができる。
【0052】
本発明により使用される添加物(B)が成分(B1)と(B2)との混合物である場合には、この混合物中の(B1)対(B2)の質量比は、好ましくは0.01〜50、特別好ましくは0.1〜7である。
【0053】
本発明による消泡剤処方物は、更なる成分として、もっぱら、式中のcが0に等しい式(I)の単位から成っているオルガノポリシロキサン(C)、殊にポリジメチルシロキサンを含有することができる。
【0054】
本発明により場合によって使用される成分(C)の例は、原則的に、成分(A)又は成分(B2)とは異なっている全ての有機珪素化合物、例えばメチルポリシロキサン、例えば25℃で100〜1000000mPasの粘度を有するポリジメチルシロキサンである。このポリジメチルシロキサンは、例えばR’SiO3/2−(ここで、R’は基Rについて挙げられていると同じものを表す)又はSiO4/2−単位の取り込みによって、全単位の最大5%まで分枝されていてもよい。その場合に、この分枝された又は架橋された(anvernetzten)シロキサンは粘弾性を有する。
【0055】
本発明による組成物が成分(C)を含有する場合には、これは、成分(A)の100質量部に対して好ましくは0.2〜50質量部、特別好ましくは1〜10質量部の量である。
【0056】
好ましい1実施形で本発明による組成物は、成分(C)、殊にポリジメチルシロキサンを含有しない。
【0057】
成分(C)は、市販の製品であるか又は珪素化学に慣用の方法で製造することができる。
【0058】
成分(A)、(B)及び場合による(C)以外に、本発明による組成物は、従来も消泡剤処方物中で使用されていたような全ての他の物質、例えば有機化合物(D)を含有することができる。
【0059】
場合により使用される成分(D)は、特に環境圧、即ち900〜1100hPaで、100℃より高い沸点を有する有機化合物、殊に分解せず、蒸留され得ない化合物、殊に鉱油、天然油、イソパラフィン、ポリイソブチレン、オキソアルコール合成からの残分、低分子量の合成カルボン酸のエステル、脂肪酸エステル、例えばステアリン酸オクチル、パルミチン酸ドデシル、脂肪アルコール、低分子量アルコールのエーテル、フタレート、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−コポリマー、燐酸のエステル及びワックスから選択されるものである。
【0060】
場合により使用される成分(D)は、グリコール、グリコールエーテル及びポリグリコール、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−コポリマー、例えば成分(A)の製造時に過剰に使用された化合物(VI)であることが特別好ましい。
【0061】
本発明による組成物は、有機化合物(D)を、それぞれ成分(A)、(B)及び場合による(C)の全質量の100質量部に対して好ましくは0〜1000質量部、特別好ましくは0〜100質量部の量で含有している。
【0062】
本発明による組成物は、成分(D)を含有していることが好ましい。
【0063】
本発明による組成物は、
(A) 少なくとも1種の式(III)の有機珪素化合物、
(B) (B1)填料粒子及び/又は
(B2)式(IV)の単位からのオルガノポリシロキサン樹脂
から選択された少なくとも1種の添加物、
場合により
(C) cが0に等しい、式(I)の単位を含有している有機珪素化合物 及び
場合により
(D) 1種以上の有機化合物
を含有するものが好ましい。
【0064】
本発明による組成物は、
(A) 式(III)の有機珪素化合物 100質量部、
(B) (B1)填料粒子及び/又は
(B2)式(IV)の単位からのオルガノポリシロキサン樹脂
から選択された添加物 0.1〜30質量部、
場合により
(C) cが0に等しい、式(I)の単位を含有する有機珪素化合物 及び
場合により
(D) 1種以上の有機化合物
から成っているものが特別好ましい。
【0065】
殊に、本発明による組成物は、
(A) 式(III)の有機珪素化合物 100質量部、
(B)(B1) 填料粒子 1〜10質量部 及び
(B2) 式(IV)の単位からのオルガノポリシロキサン樹脂
1〜10質量部 及び
(D) 1種以上の有機化合物 0〜1000質量部
から成っているものである。
【0066】
本発明による組成物は、好ましくは粘稠性で、澄明〜不透明の、無色〜帯褐色の液体である。
【0067】
本発明による組成物は、それぞれ25℃で、特に100〜2000000mPas、特別好ましくは500〜50000mPas、殊に1000〜20000mPasの粘度を有する。
【0068】
本発明による組成物は、溶液、分散液又は粉末であることができる。
【0069】
本発明による組成物の製造は、公知の方法により、例えば高い剪断力の使用下に、コロイドミル、ディソルバー又はローターステーター−ホモジナイザー中で、全成分を混合することよって行うことができる。この場合にこの混合工程を、例えば高分散性填料中に含有されている空気の混入を阻止するために、減圧下に行うことができる。引き続き必要な場合には、填料のその場での疎水性化を行うことができる。
【0070】
本発明による組成物がエマルジヨンである場合には、当業者にとってシリコンエマルジヨンの製造のために公知である全ての乳化剤、例えばアニオン性、カチオン性又は非イオン性乳化剤を使用することができる。乳化剤混合物を使用することが好ましく、この際には、少なくとも1種の非イオン性乳化剤、例えばソルビタン脂肪酸エステル、エトキシル化されたソルビタン脂肪酸エステル、エトキシル化された脂肪酸、炭素原子数10〜20を有するエトキシル化された線状の又は分枝したアルコール及び/又はグリセリンエステルを含有すべきである。更に、粘稠化剤として公知の化合物、例えばポリアクリル酸、ポリアクリレート、セルロースエーテル、例えばカルボキシメチルセルロース及びヒドロキシエチルセルロース、天然ゴム、例えばキサンタンゴム及びポリウレタン並びに保存剤及び他の慣用の、当業者に公知の添加物を添加することができる。
【0071】
本発明によるエマルジヨンの連続相は好ましくは水である。しかしながら、エマルジヨンの形の本発明による組成物を製造することもでき、この際に、連続相は、成分(A)、(B)及び場合による(C)から形成されるか又は成分(D)から形成されうる。この場合に、これはマルチプルエマルジヨン(multiple Emulsionen)であることもできる。
【0072】
シリコンエマルジヨンの製造法は公知である。通常この製造は、全ての成分の単純撹拌及び場合により引き続く、ジェットディスパーサー、ローターステーターホモジナイザー、コロイドミル又は高圧ホモジナイザーを用いる均質化によって行われる。
【0073】
本発明による組成物がエマルジヨンである場合には、成分(A)〜(D)5〜50質量%、乳化剤及び粘稠化剤1〜20質量%及び水30〜94質量%を含有している水中油型エマルジヨンが好ましい。
【0074】
本発明による組成物は、自由流動性の粉末としても処方されうる。これは例えば粉末状洗剤中での使用の場合に好ましい。成分(A)、(B)、場合による(C)及び場合による(D)の混合物から出発するこの粉末の製造は、当業者に公知の方法によって、例えばスプレー乾燥又は増成顆粒化(Aufbaugranulation)によって、かつ当業者に公知の添加物を用いて行われる。
【0075】
本発明による粉末は、成分(A)〜(D)2〜20質量%を含有することが好ましい。担持剤(Traeger)としては、例えばゼオライト、硫酸ナトリウム、セルロース誘導体、尿素及び糖が使用される。本発明による粉末の更なる成分は、ワックス又は例えばEP−A887097及びEP−A1060778に記載のような有機ポリマーである。
【0076】
本発明のもう一つの目的物は、本発明による組成物を含有している液状の湿潤剤、洗剤及び清浄剤である。
【0077】
本発明による組成物は、有機珪素化合物をベースとする組成物が従来からも使用されていた全ての分野で使用することができる。殊にこれらは、消泡剤として使用することができる。
【0078】
本発明のもう一つの目的は、本発明による組成物を媒体と混合することを特徴とする、媒体の消泡及び/又は気泡抑制のための方法である。
【0079】
発泡性媒体への本発明による組成物の添加は、好適な溶剤、例えばトルエン、キシレン、メチルエチルケトン又はt−ブタノール中に溶かして、粉末として又は乳液として、直接行うことができる。所望の消泡効果を得るために必要な量は、例えば媒体の種類、温度及び現れる濁りに左右される。
【0080】
本発明による組成物を、濃縮された液状界面活性剤処方物と直接混合させることが有利である。
【0081】
本発明による組成物を、0.1質量ppm〜1質量%の量で、殊に1〜100質量ppmの量で、使用準備された発泡性媒体に添加することが好ましい。濃縮された界面活性剤処方物中には、本発明による組成物0.1〜20質量%、殊に0.5〜5質量%を含有することができる。
【0082】
本発明による方法は、好ましくは−10〜+150℃、特別好ましくは5〜100℃の温度で、かつ環境圧、即ち約900〜1100hPaの圧力で実施される。この本発明による方法は、より高い又はより低い圧力で、例えば3000〜4000hPa又は1〜10hPaで実施することもできる。
【0083】
本発明による消泡剤組成物は、じゃまな気泡を抑制すべき全てのところで使用することができる。これは、例えばタール蒸留又は石油加工処理におけるような非水性系中の場合である。殊に本発明による消泡剤組成物は、水性界面活性剤系中の気泡の除去のために、洗剤及び清浄剤中での使用、繊維材料染色法の場合、ポリマー分散液中の天然ガス洗浄の場合の排水設備中の気泡の除去、及びパルプ製造時に生じる水性媒体の消泡のために殊に好適である。
【0084】
本発明による組成物は、それが消泡剤として取り扱い容易であり、濃縮された界面活性剤処方物と混和可能であり、かつそれは、僅かな添加量で、種々異なる媒体中での長時間保持性の高い作用効果によって優れている利点を有している。このことは経済学的にも環境学的にも極めて有利である。
【0085】
本発明による方法は、実施が簡単であり、かつ非常に経済的である利点を有している。
【0086】
以下に記載の実施例中で、「部」及び「%]の全ての記載は、他に記載のない限り、「質量部」及び「質量%」である。他に記載のない限り、下記の実施例は、環境圧、即ち約1000hPaで、かつ室温、即ち約20℃で、又は室温で反応成分を一緒にする場合に付加的な加熱又は冷却無しに生じる温度で実施される。実施例中に挙げられている全ての粘度記載は、25℃の温度に関連している。
【0087】
相容性の試験
この消泡剤作用効果の試験のために、種々の液体界面活性剤処方物に、それぞれ消泡剤処方物の2%を加える。14日後に、相容性を、次のスケールに従って視覚的に評価する: + =相容性、 0 =僅かに沈殿析出、 − =非相容性。
【0088】
相容性であるか又は僅かな沈殿析出を示した生成物を、その作用効果につき試験した。
【0089】
消泡剤作用効果の試験
この作用効果の試験のために、消泡剤含有界面活性剤処方物の0.1質量%溶液を、加熱されたビーカー中でポンプ循環させて、このポンプ循環された界面活性剤溶液を、高さ10cmから、この界面活性剤溶液の表面上に落とした。この場合に、60分間にわたる気泡増加を連続的に観察した。温度及びポンプ循環速度を、それぞれの実施例に記載している。
【0090】
界面活性剤処方物
処方物1:ドデシルベンゼンスルホン酸("Marlon AS3−Saeure"なる名称で、Sasol Germany GmbH, Deutschlandから得られる)10質量%、トリエタノールアミン7質量%及びエチレングリコール10単位を有するエトキシル化されたトリデシルアルコール("Lutensol TO 109"なる名称で、BASF AG, Deutschlandから得られる)10質量%を含有している水性処方物。
【0091】
処方物2:密度1.0108及び作用物質含有率40質量%を有している、脂肪アルコールエトキシレートからの混合物。
【0092】
処方物3:密度1.0059及び作用物質含有率36質量%を有している、脂肪酸アルカノールアミドをベースとしているイオン性界面活性剤からの混合物。
【0093】
処方物4:密度1.0131及び作用物質含有率18質量%を有している、アルカンスルホネート及び脂肪アルコールエトキシレートからの混合物。
【0094】
実施例及び比較例中で成分Aとして使用されているポリマー有機珪素化合物は、式:
CH=CH−CH2−O−(C24O)m−(C36O)n−A
の末端位不飽和の脂肪族エーテルEもしくは例4、5及び6中のそれらの混合物とSi−結合した水素を有している有機珪素化合物との付加反応によって製造された(この際、エーテル又はエーテル混合物Eは、それぞれ過剰に使用された)。
【0095】
これにより生じた有機珪素化合物A1〜A9及びAV1〜AV4の構造は、次の第1表中に示されており、式:
(CH33Si−(O−Si(CH32x(O−SiCH32yO−Si(CH33
[式中、R2=−(CH23−O−(C24O)m−(C36O)n−Aを意味する]に相当している。
【0096】
【表1】

【0097】
次の例中で使用されている成分Aは、それぞれ、有機珪素化合物A1〜A9及びAV1〜AV4の85質量%とそれらの製造のために過剰でそれぞれ使用されたエーテル及びエーテル混合物の15質量%とからの混合物A1〜A9及びAV1〜AV4である。
【0098】
成分Bとして、次の物質を使用した:
B11: HDK(R)T40なる商品名で、Wacker Chemie AG, D-Muenchenから得られる、400m2/gのBET−表面積を有する親水性の熱分解法珪酸。
【0099】
B12: HDK(R)H15なる商品名で、Wacker Chemie AG, D-Muenchenから得られる、150m2/gのBET−表面積及び0.8%の炭素含有率を有している疎水性化された熱分解法珪酸。
【0100】
B13: HDK(R)H2000なる商品名で、Wacker Chemie AG, D-Muenchenから得られる、200m2/gのBET−表面積及び2.8%の炭素含有率を有している疎水性化された熱分解法珪酸。
【0101】
B21: 重量平均分子量7900g/モル(ポリスチレン標準に対して)を有している、(29Si−NMR及びIR−分析で)CH3SiO1/2−単位40モル%、SiO4/2−単位50モル%、C25OSiO3/2−単位8モル%及びHOSiO3/2−単位2モル%から成っている、室温で固体の珪素樹脂。
【0102】
成分Dとして、次のものを使用した:
D1:235〜270℃の沸点範囲を有する炭化水素混合物(Exxsol D 100Sなる名称で、Staub & Co Nuernberg, Deutschlandから市販されている)。
【0103】
D2:約100mPasの粘度を有するポリプロピレングリコール(PPG 400なる名称で、F.B.Silbermann GmbH&Co KG D-Gablingenから得られる)。
【0104】
例1〜12及び比較例V1〜V5
それぞれの例及び比較例の処方が第2表中に挙げられている。ここで、「%」は、それぞれ「重量%」である。
【0105】
【表2】

【0106】
個々の消泡剤処方物の製造を、ディソルバーディスクを用いて全成分の単純混合によって行なった。例3及び比較例1(V1)の処方物を、付加的にKOH1500ppmの存在下に、110℃で4時間加熱した。
【0107】
こうして製造された処方物の消泡剤作用効果を、界面活性剤処方物を用いて試験し、かつ、結果を第3〜5表中にまとめる。
【0108】
【表3】

【0109】
【表4】

【0110】
【表5】

【0111】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)式:
a(R1O)b2cSiO(4-a-b-c)/2 (I)
[式中、
Rは同じ又は異なるのもであってよく、水素原子、SiC−結合している、置換又は非置換の、1価の炭化水素基を表し、
1は同じ又は異なるものであってよく、水素原子又は置換又は非置換の、1価の炭化水素基を表し、
2は、式:
−Z−O−(R5O)k−A (II)
(式中、Zは置換又は非置換の、2価の炭化水素基を表し、R5は同じ又は異なるものであってよく、置換又は非置換の、2価の炭化水素基を表し、kは1〜200の整数であり、Aは水素原子又は1価の有機基を表す)の基を表し、
aは0、1、2又は3であり、bは0、1、2又は3であり、cは0、1又は2である、
但し、合計a+b+c≦3であり、式(I)の全単位の少なくとも50%中で、合計a+b+cは2に等しく、この有機珪素化合物は、式(I)の単位150〜1500個から成っており、この有機珪素化合物の少なくとも10単位中で、cは0とは異なっていることを条件としている]の単位から成っている少なくとも1種のポリマー有機珪素化合物
並びに
(B)以下の
(B1)填料粒子、及び/又は
(B2)式:
3e(R4O)fSiO(4-e-f)/2 (IV)
[式中、R3は同じ又は異なるものであってよく、水素原子又はSiC−結合している、置換又は非置換の、1価の炭化水素基を表し、
4は同じ又は異なるものであってよく、水素原子又は置換又は非置換の、1価の炭化水素基を表し、
eは0、1、2又は3であり、fは0、1、2又は3である、
但し、合計e+f≦3であり、オルガノポリロキサン樹脂中の式(IV)の全単位の50%を下回る分中で、合計e+fは2に等しいことを条件としている]の単位からのオルガノポリシロキサン樹脂
から選択される少なくとも1種の添加物
を含有している、組成物。
【請求項2】
式中の基R2は、式:
−(CH2x−O−(C24O)m−(C36O)n−(C48O)o−A (V)
(式中、xは1〜10の整数であり、mは0又は1〜200の整数であり、nは0又は1〜200の整数であり、oは0又は1〜200の整数であり、Aは前記のものを表す、
但し、合計m+n+oは1〜200であり、単位(C24O)、(C36O)及び(C48O)は、式(V)の基中に統計学的に分配されているか又はブロックとしても存在できることを条件としている)の基であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
成分(A)は、式:
2z3-zSi−(O−SiR2x(O−SiRR2yO−SiR3-z2z (III)
[式中、zは同じ又は異なるものであり、0又は1を表し、
xは100〜1000の値を有し、yは5〜100の値を有し、
基R及びR2はそれぞれ、前記のものの1つを表し、ここで、x個の単位(OSiR2)及びy個の単位(O−SiRR2)は分子中に任意に分配されていてよい]の本質的に線状のオルガノポリシロキサンであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
添加物(B)を、成分(A)100質量部に対して0.1〜30質量部の量で含有していることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
成分(C)を含有していないことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
成分(D)を含有していることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
(A)式(III)の有機珪素化合物100質量部、
(B)以下の
(B1)填料粒子、及び/又は
(B2)式(IV)の単位からのオルガノポリシロキサン樹脂
から選択される1種の添加物0.1〜30質量部、
場合により
(C)式中のcが0である、式(I)の単位を含有している有機珪素化合物、及び
場合により
(D)1種以上の有機化合物
から成っているものであることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の組成物を含有している、液状の湿潤剤、洗剤及び清浄剤。
【請求項9】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の組成物と媒体とを混合することを特徴とする、媒体の消泡及び/又は気泡抑制のための方法。
【請求項10】
組成物を0.1質量ppm〜1質量%の量で、使用準備された発泡性媒体に添加することを特徴とする、請求項9に記載の方法。

【公表番号】特表2010−540233(P2010−540233A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527386(P2010−527386)
【出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【国際出願番号】PCT/EP2008/061926
【国際公開番号】WO2009/047066
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】