説明

消波ブロック

【課題】十分な構造強度を有するとともに、安定性と空隙率を飛躍的に向上させた、汎用性の高い消波ブロックを提供する。
【解決手段】基部2を中心として複数の脚部3が外側へ向かって放射状に突出した形状のブロック1であって、少なくとも一つの脚部3において、最太部M(軸線Aと直交する断面の面積が最も大きくなる部分)が、最細部N(軸線Aと直交する断面の面積が最も小さくなる部分)よりも外側に位置し、重心Gから最太部Mまでの軸線A上の寸法mが、重心から脚部3の先端までの軸線A上の寸法Lの0.6倍よりも大きく、重心Gから最細部Nまでの軸線A上の寸法nが、重心Gから脚部3の先端までの軸線A上の寸法Lの0.4倍よりも小さくなるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、港湾、海岸、河川等に設置される消波ブロックに関し、特に、従来の汎用的な消波ブロックと比べ、安定性と空隙率を飛躍的に向上させた消波ブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、テトラポッド(登録商標)などの4脚ブロックを始めとして、様々な形状のコンクリート製消波ブロックが知られている。消波ブロックには、波力等に対し十分な安定性を有していること、十分な構造強度を有していること、及び、波のエネルギーを減殺できるように、積み上げた際、適度な空隙率が得られること、が要求される。
【0003】
消波ブロックに求められる安定性、強度、及び、空隙率は、相互に密接な関連性を有しており、一つの要素のみを重視すると、他の面で問題が生じることがある。例えば、積み上げた際の相互のかみ合わせが良好な形状の消波ブロックは、安定性は高くなるものの、構造強度の面で問題があったり、空隙率が小さく、充分な消波効果を期待できないことがある。また、強度のみを重視し過ぎると、充分な安定性が得られない場合もある。従って、汎用性の高い消波ブロックを設計しようとするときは、各要素のバランスが重要となってくる。
【特許文献1】特公昭47−48734号公報
【特許文献2】実公昭48−1143号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の汎用的な消波ブロックは、脚部が先細りとなっているか、寸胴の(付根部分から先端まで脚部の太さが均一である)ものが多い。これらは、安定性、強度、及び、空隙率という各要素について、脚部の本数、形状、寸法、角度等を工夫することにより、それぞれ一定の水準をクリアしているが、本発明の発明者(ら)は、永年にわたる研究の結果、従来の汎用的な消波ブロックにおいては、安定性と空隙率について一定の限界が存在していること、脚部が先細り或いは寸胴となっている限り、この限界を超えることは難しいということ、反対に、先太りの脚部を有する消波ブロックであれば、そのような限界を超えて、安定性と空隙率を飛躍的に向上させることができる可能性がある、という知見を得るに至った。
【0005】
本発明は、かかる知見のもと、上記のような従来技術の問題を解決すべくなされたものであって、十分な構造強度を有するとともに、安定性と空隙率を飛躍的に向上させた汎用性の高い消波ブロックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る消波ブロックは、基部を中心として複数の脚部が外側へ向かって放射状に突出した形状のブロックであって、複数の脚部のうち少なくとも一つの脚部において、最太部(脚部の軸線と直交する断面の面積(断面の輪郭線の内側の面積)が最も大きくなる部分)が、最細部(軸線と直交する断面の面積(断面の輪郭線の内側の面積)が最も小さくなる部分)よりも外側(重心を基準として外側)に位置し、重心から前記最太部までの軸線上の寸法が、重心から前記脚部の先端までの軸線上の寸法の0.6倍よりも大きく、重心から前記最細部までの軸線上の寸法が、重心から前記脚部の先端までの軸線上の寸法の0.4倍よりも小さくなるように構成されていることを特徴としている。
【0007】
尚、本発明に係る消波ブロックにおいては、最太部における脚部断面の面積が、最細部における脚部断面の面積の2.1倍よりも大きくなるように構成することが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の消波ブロックは、従来の消波ブロックと比べ、積み上げ時における空隙率の向上を期待することができ、その結果、ブロックの製造に使用するコンクリートの量を縮減できるため、堤体の構築に際し、施工コストを低く抑えることができる。また、脚部が先太りとなっているため、積み上げた際、隣接するブロック間相互のかみ合わせが良好となり、高い安定性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、添付図面に沿って本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る消波ブロック1の斜視図であり、図2はその側面図である。図示されているように、この消波ブロック1は、中央の基部2と、基部2を中心として放射状に外側へ突出した四つの脚部3(3a〜3d)とによって構成されている。尚、図2に示す3本の太線(A)は、脚部3a〜3cの各軸線であり、Gは、この消波ブロック1の重心位置を示している。
【0010】
四つの脚部3a〜3dは、いずれも同一形状、同一寸法となっており、天端面の形状、及び、軸線Aと直交する断面の概略形状は、いずれも正三角形である。また、図示されているように、これらの脚部3a〜3dは、最太部M(軸線Aと直交する断面の面積(断面の輪郭線の内側の面積)が最も大きくなる部分)が、最細部N(軸線Aと直交する断面の面積(断面の輪郭線の内側の面積)が最も小さくなる部分)よりも外側(重心Gを基準として外側)に位置しており、その結果、重心Gに近い側(いわゆる「付根」部分)から先端にかけて次第に太くなるような構成となっている。
【0011】
従来の消波ブロックにおいて、本実施形態の消波ブロック1のように、脚部が先太りとなっているものは知られていない。この点で本実施形態の消波ブロック1は特徴的であると言える。そして、本実施形態の消波ブロック1は、次のような条件を満たしている点で更なる特徴を有している。
【0012】
永年にわたる研究の結果、本発明の発明者(ら)は、下記に示すL、m、n、P、Qの各項目が、下記の条件(1)〜(3)のいずれをも満たしている場合に、安定性と空隙率を向上させようとするうえで理想的な消波ブロックを得ることができる、との知見を得るに至った。
L:脚部3の軸線Aの長さ寸法(重心Gから脚部3の先端までの寸法)
m:重心Gから最太部Mまでの寸法(軸線A上の寸法)(最太部Mが軸線A方向に一定の幅を有している場合においては、重心Gから、最太部Mの最も手前側の部分までの寸法)
n:重心Gから最細部Nまでの寸法(軸線A上の寸法)(最細部Nが軸線A方向に一定の幅を有している場合においては、重心Gから、最細部Nの最も外側の部分までの寸法)
P:最太部Mにおける脚部3の断面の面積
Q:最細部Nにおける脚部3の断面の面積
(1)m>0.6L
(2)n<0.4L
(3)P>2,1Q
【0013】
上記の条件(1)は、脚部3の最太部Mが、軸線A上において、重心Gから軸線Aの60%の位置よりも外側に位置していることを規定するものである。本実施形態の消波ブロック1においては、「m=0.936L」となっており、上記の条件(1)を満たしている。
【0014】
上記の条件(2)は、脚部3の最細部Nが、軸線A上において、重心Gから軸線Aの40%の位置よりも内側に位置していることを規定するものである。本実施形態の消波ブロック1においては、「n=0.358L」となっており、上記の条件(2)を満たしている。
【0015】
上記の条件(3)は、最細部Nの断面の面積Qに対し、最太部Mの断面の面積Pが2.1倍以上となることを規定するものである。本実施形態の消波ブロック1においては、「P=2.59Q」となっており、上記の条件(3)を満たしている。
【0016】
本実施形態の消波ブロック1は、上述したように、条件(1)〜(3)を満たすような構成とすることにより、積み上げた場合において各ブロック間に形成される空隙を大きくすることができる。より具体的に説明すると、従来の消波ブロックは、付根部分が最も太く、先端にかけて次第に細くなるような形状のものや、付根部分から先端にかけて太さが均一であるものが殆どで、かかるブロックにおける積み上げ時の空隙率は50〜60%程度であるのに対し、本実施形態の消波ブロック1においては、積み上げ時の空隙率を約68%とすることができる。
【0017】
その結果、堤体の構築に際し、単位体積当たりの使用ブロック数を少なくすることができ、ブロックの製造に使用するコンクリートの量を縮減できるため、堤体の構築に際し、施工コストを低く抑えることができる。
【0018】
また、先太りとなっているため(特に、最太部Mが脚部3の先端部に近い位置にあるため)、積み上げた際、隣接するブロック間相互のかみ合わせが良好となり、高い安定性を得ることができる(ハドソン式によるKD値:約13)。
【0019】
尚、従来の消波ブロックは、殆どのものが無筋で製造されているが、本実施形態の消波ブロック1は、先太りとなっているため、コンクリート内部に鉄筋を配設することによって補強を行っている。但し、鉄筋による補強が必要な部分(ウィークポイント)は、基部2の近傍に集中しており、脚部3の先端部付近については、必ずしも補強を行う必要はない。従って、鉄筋の配設作業も簡略化することができ、材料コストもそれほど嵩まずに済む。
【0020】
図3は、本発明の第2の実施形態に係る消波ブロック11の斜視図である。この消波ブロック11は、図1に示した第1の実施形態の消波ブロック1を基本形状とするものであり、図1の消波ブロック1と同様に、中央の基部12と、四つの脚部13(13a〜13d)とによって構成されている。
【0021】
但し、図1の消波ブロック1と異なり、各脚部13には、各天端面の三つの頂点を中心として、それぞれ張出部14が形成されている。これらの張出部14により、図3の消波ブロック11においては、最細部の断面の面積に対する最太部の断面の面積比が、図1の消波ブロック1よりも大きくなっており、その結果、図1の消波ブロック1よりも更に、安定性及び空隙率の向上を期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る消波ブロック1の斜視図。
【図2】図1の消波ブロック1の側面図。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る消波ブロック11の斜視図。
【符号の説明】
【0023】
1,11:消波ブロック、
2,12:基部、
3,3a〜3d,13,13a〜13d:脚部、
14:張出部、
A:軸線、
G:重心、
L:脚部3の軸線Aの長さ寸法(重心Gから脚部3の先端までの寸法)、
M:最太部、
m:重心Gから最太部Mまでの軸線A上の寸法、
N:最細部、
n:重心Gから最細部Nまでの軸線A上の寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部を中心として複数の脚部が外側へ向かって放射状に突出した形状の消波ブロックであって、
前記複数の脚部のうち少なくとも一つの脚部において、最太部が、最細部よりも外側に位置し、
重心から前記最太部までの軸線上の寸法が、重心から前記脚部の先端までの軸線上の寸法の0.6倍よりも大きく、
重心から前記最細部までの軸線上の寸法が、重心から前記脚部の先端までの軸線上の寸法の0.4倍よりも小さくなるように構成されていることを特徴とする消波ブロック。
【請求項2】
前記最太部における脚部断面の面積が、前記最細部における脚部断面の面積の2.1倍よりも大きくなるように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の消波ブロック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−223373(P2008−223373A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−64623(P2007−64623)
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【出願人】(000236610)株式会社不動テトラ (136)
【出願人】(501241911)独立行政法人港湾空港技術研究所 (84)
【Fターム(参考)】