説明

消火ポンプ装置及び消火設備

【課題】吐出水量を可変可能、且つ、信頼性の高い消火ポンプ装置、及び、消火設備を提供すること。
【解決手段】消火ポンプ装置1を有する消火設備100は、並列に配置された消火ポンプ24、この消火ポンプ24にそれぞれ接続され、定格電力で駆動するモータ23、及び、消火ポンプ24の二次側に設けられた圧力検出器16を有する消火ポンプユニット11と、モータ23を駆動可能な制御盤17と、消火ポンプユニット11の二次側に設けられた放水手段110と、を備え、制御盤17は、圧力検出器16で検出された圧力及び放水手段110の放水状態に基いて、消火ポンプ24の吐出水量が放水手段110から放水される放水量以上となる台数のモータ23を駆動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火ポンプからの吐出量を制御可能な消火ポンプ装置及び消火設備に関する。
【背景技術】
【0002】
ビル等の建造物の火災時に、消火栓又はスプリンクラヘッド等の放水手段へ増圧給水する消火ポンプ装置が知られている。
【0003】
このような消火ポンプ装置を用いてスプリンクラヘッドから水を放水する場合には、建造物に設けられた各スプリンクラヘッドへ給水する給水量は、スプリンクラヘッド毎に決められた放水が可能な給水量が必要となる。例えば、スプリンクラヘッド一つ当たりの放水量が90L/minであり、建造物にスプリンクラヘッドが30箇所に設けられた場合には、消火ポンプ装置は、90L/min〜2700L/minの給水が可能なものが設置される。同様に、消火栓からホースを介して放水する場合であっても、鎮火が可能な所定の給水量が給水可能な消火ポンプ装置が設置される。このため、消火ポンプ装置に用いられるポンプは大型(大口径)のものが用いられている。
【0004】
また、火災が発生した場合に、ポンプの吐出側の圧力に基いてポンプをインバータにより可変速制御する消火ポンプ装置や、高層ビル等に用いる場合には、複数のポンプを直列に接続し、ポンプの吐出側の圧力に基いてインバータにより可変速制御する消火ポンプ装置や、このような消火ポンプ装置を用いた消火設備が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−034529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したような消火ポンプ装置及び消火設備では、次のような問題があった。即ち、上述した消火ポンプ装置に大口径のポンプを用いた場合には、建造物の一部等の小規模火災においては、ポンプの給水量は小水量でよい。しかし、大型のポンプは、吐出する水量が小水量となるように運転した場合には、ポンプの駆動による水温の上昇により、逃し水量を多くする必要がある。
【0007】
また、大口径のポンプは、小水量での運転ではポンプ効率が悪い、という問題がある。また、大口径のポンプに用いるモータは、モータ容量が大きくなるため、起動電力設備や制御盤等の電力設備のコストが高くなる、という問題もある。
【0008】
また、このような消火に用いる場合には、スプリンクラー等の放水手段からの水流(水量)を均一とする必要がある。このようなことから、仕様水量内の圧力差が小さくなる必要があることから、寝カーブ特性を考慮した消火設備に用いるためのポンプの設計・製造が必要となる。このため、給水ポンプ等の他の用途のポンプを使用することができず、消火ポンプとしてそれぞれ設計が必要となることから、ポンプの種類が増加し、製造コスト及び管理コストが向上することもある。
【0009】
また、上述したインバータにより可変速制御する消火ポンプ装置では、インバータにより可変速制御することで、消火ポンプの圧力差を小さくし、水量を均一とすることができても、インバータへの通電が継続して行われているため、その信頼性は低い。即ち、インバータは、電流が通電される時間に比例して、故障等の発生の虞があり、その信頼性は低下することとなる。このため、使用時に、インバータによりモータの可変制御を行なうことができない虞がある。特に、このような、消火ポンプ装置は、火災時(緊急時)に用いられることが主であることから、緊急時に確実に使用可能であることが臨まれる。
【0010】
そこで本発明は、吐出水量を可変可能、且つ、信頼性の高い消火ポンプ装置、及び、消火設備を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決し目的を達成するために、本発明の消火ポンプ装置及び消火設備は次のように構成されている。
【0012】
本発明の一態様として、放水手段から放水する水を増圧する消火ポンプ装置において、定格電力で駆動する複数のモータと、給水源に接続された吸込管と、この吸込管を分岐する分岐管と、これら分岐管にそれぞれ設けられ、且つ、並列に配列されるとともに、前記モータにより定格回転数で駆動される複数のポンプと、これらポンプの二次側を合流させるとともに、前記放水手段に接続される吐出管と、この吐出管に設けられ、この吐出管の圧力を検出する圧力検出器と、この圧力検出器により検出された圧力、及び、前記放水手段の放水状態の少なくとも一方に基いて、前記ポンプからの吐出水量が前記放水手段からの放水量よりも多くなる前記モータの駆動台数を判断し、この駆動台数の前記モータを駆動させる制御部と、を備えることを特徴とする消火ポンプ装置が提供される。
【0013】
本発明の一態様として、定格電力で駆動する複数のモータと、給水源に接続された吸込管と、この吸込管を分岐する分岐管と、これら分岐管にそれぞれ設けられ、且つ、並列に配列されるとともに、前記モータにより定格回転数で駆動される複数のポンプと、これらポンプの二次側を合流させるとともに、前記放水手段に接続される吐出管と、前記吐出管に接続され、前記ポンプから吐出された水を放水可能な放水手段と、前記吐出管に設けられ、この吐出管の圧力を検出する圧力検出器と、この圧力検出器により検出された圧力、及び、前記放水手段の放水状態の少なくとも一方に基いて、前記ポンプからの吐出水量が前記放水手段からの放水量よりも多くなる前記モータの駆動台数を判断し、この駆動台数の前記モータを駆動させる制御部と、を備えることを特徴とする消火設備が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、吐出水量を可変可能、且つ、信頼性の高い消火ポンプ装置、及び、消火設備とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施の形態に係る消火ポンプ装置を用いた消火設備を模式的に示す説明図。
【図2】同消火ポンプ装置に用いられる消火ポンプユニットを模式的に示す説明図。
【図3】同消火ポンプ装置の吐出揚程及び吐出水量を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は本発明の一実施の形態に係る消火ポンプ装置1を用いた消火設備100を模式的に示す説明図、図2は同消火ポンプ装置1に用いられる消火ポンプユニット11を模式的に示す説明図、図3は同消火ポンプ装置1の吐出揚程及び吐出水量を示す説明図である。なお、図1中、Cは給水源を、Dは排水部を、Fは建造物のフロアを、Kは電源ケーブルを、Sは信号線をそれぞれ示している。
【0017】
図1に示すように、消火ポンプ装置1は、例えば建造物に設けられた消火設備100に用いられる。消火設備100は、消火ポンプ装置1と、消火ポンプ装置1に接続された放水手段110と、により構成されている。
【0018】
消火ポンプ装置1は、吸込管10と、消火ポンプユニット11と、吐出管12と、呼水手段13と、逃し水手段14と、予備水源15と、圧力検出器16と、制御盤(制御部)17と、を備えている。吸込管10は、貯水槽や水道本管等の給水源Cに接続されている。
【0019】
図2に示すように、消火ポンプユニット11は、吸込管10を複数に分岐する分岐部20と、この分岐部20に接続された分岐管21と、を備えている。消火ポンプユニット11は、前記複数に分岐された分岐管21に、手動で開閉可能な開閉弁22と、モータ23が接続された消火ポンプ24と、逆止弁25と、開閉弁26と、が連続して順次接続されている。また、消火ポンプユニット11は、開閉弁26の二次側にそれぞれ接続された分岐管21を合流させる合流部27と、を備えている。なお、この合流部27には、吐出管28が接続されている。また、消火ポンプユニット11は、合流部27の二次側に蓄圧が可能な圧力容器29を備えている。
【0020】
分岐部20は、消火ポンプ24の数と同数の分岐管21を分岐可能に形成されている。モータ23は、制御盤17に信号線Sを介して接続され、制御盤17から供給された定格電力にて駆動可能に形成されている。また、モータ23は、消火ポンプ24を定格回転数で回転可能に形成されている。
【0021】
消火ポンプ24は、複数台、例えば3台設けられている。これら消火ポンプ24は、その合計の吐出水量が、消火設備100で放水手段110から放水する最大水量と同等以上の水量を吐出可能に形成されている。
【0022】
消火ポンプ24は、並列に複数設けられており、複数の消火ポンプ24を同時に運転することで、放水手段110にて放水される最大放水量が吐出可能な能力を有して形成されている。また、消火ポンプ24は、運転する消火ポンプ24の数により、吐出流量を変更可能に形成されている。即ち、図3に示すように、複数の消火ポンプ24は、放水手段110の作動状況に応じて、単体、又は、複数台での駆動が可能に形成されており、駆動する消火ポンプ24の台数を増加させるにつれて、消火ポンプ24の吐出水量を小水量から最大水量まで可変させることが可能となる。
【0023】
詳しく述べると、図3に示すように、並列に複数台配列された消火ポンプ24は、いずれか1台を駆動したときは、図3中Tに示す吐出揚程及び吐出水量となる。消火ポンプ24を一台駆動した状態で、さらに一台駆動させると、図3中Tに示すように、吐出水量は増大することとなる。同様に、全ての消火ポンプ24を駆動させることで、さらに吐出水量が増大し、図3中Tに示すように、吐出流量が増大することとなる。なお、消火ポンプ24は、定格回転数でモータ23により駆動されるため、この定格回転数は、吐出揚程が略一定であって、ポンプ効率の良い回転数に設定される。このため、消火ポンプ24の吐出水量は、消火ポンプ24の駆動台数が増加する毎に、図3中Q〜Qに示すように、漸次増大することとなる。
【0024】
なお、ここで、小水量及び最大水量とは、駆動する消火ポンプ24の台数によって判別させているが、詳細な吐出水量は、消火ポンプ24の形状、口径及び回転数により適宜設定されるものであり、ここではその詳細は省略する。
【0025】
複数の消火ポンプ24は、消火ポンプ24の放水手段110の作動状況に応じて、駆動又は停止させる消火ポンプ24を、例えば時間毎に交互に運転する交互運転が可能に形成されている。
【0026】
呼水手段13は、吐出管12から分岐して消火ポンプユニット11に接続されている。なお、呼水手段13は、消火ポンプユニット11より高位置に配置されている。呼水手段13は、消火ポンプ24の初動運転時に、消火ポンプ24内に呼水を充填可能に形成されている。このような呼水手段13は、例えば、呼水を貯水する呼水槽30を有している。また、呼水手段13は、呼水槽30と吐出管12との間に設けられた開閉弁31と、消火ポンプユニット11から呼水手段13への通水を防止する逆止弁32と、を備えている。
【0027】
逃し水手段14は、吐出管12から分岐して消火ポンプユニット11に接続された逃し水配管35と、この逃し水配管35に設けられた逆止弁36と、開閉弁37と、を備えている。また、逃し水手段14は、逃し水配管35が、排水部Dに配設されており、逆止弁36及び開閉弁37が開となった場合には、消火ポンプユニット11により増圧された水を排水部Dに逃すことが可能に形成されている。開閉弁37は、制御盤17により開閉される電磁弁であって、各配管内が所定の圧力以上となった場合に開となることで排水部Dに排水可能に形成されている。
【0028】
予備水源15は、例えば、建造物の屋上等に設けられ、吐出管12に接続されている。予備水源15は、例えば高架槽等であり、消火ポンプユニット11から吐出された水の圧力が低下した場合に吐出管12内へ水を通水可能に形成されている。即ち、予備水源15には、逆止弁38が設けられている。これにより、予備水源15は、予備水源15の水圧が、消火ポンプユニット11から吐出された水圧よりも高圧の場合に、逆止弁38が開となり、予備水源15の水が吐出管12内へ通水可能に形成されている。
【0029】
圧力検出器16は、消火ポンプユニット11から吐出された水の圧力を検出可能に形成されている。圧力検出器16は、制御盤17と信号線Sにより接続されており、検出した圧力の検出データを制御盤17へ送信可能に形成されている。
【0030】
制御盤17は、モータ23の駆動・停止が可能に信号線Sを介してモータ23へ定格電力を通電可能に形成されている。また、制御盤17は、圧力検出器16から送信された検出データを受信可能に形成されている。制御盤17は、電力を供給する電源等に接続される電源ケーブルKを有しており、この電源ケーブルKを介して、制御盤17に電力が供給される。
【0031】
制御盤17は、圧力検出器16及び後述する検出器114から受信した検出データ、及び放水手段110の放水状態を判断するとともに、消火ポンプ24の駆動台数による吐出水量から、駆動が必要な消火ポンプ24の台数を判断する。制御盤17は、判断した消火ポンプ24の駆動が必要な台数から、消火ポンプユニット11の各モータ23の駆動・停止を行なう、消火ポンプ24の台数制御機能を有している。制御盤17は、各モータ23の駆動・停止を検出データに基いて行なうことで、消火ポンプ24の駆動台数を変更し、消火ポンプユニット11からの吐出水量を、小水量から最大水量まで可変することが可能に形成されている。
【0032】
また、制御盤17は、駆動している消火ポンプ24以外の消火ポンプ24(停止している駆動ポンプ24)が、少なくとも一台以上の場合には、所定時間毎に駆動する消火ポンプ24を交代させる所謂交互運転が可能に形成されている。また、制御盤17は、逃し水手段14の開閉弁37を、吐出管12の圧力又は水温に基いて開閉可能に形成されている。
【0033】
放水手段110は、例えば、建造物のフロアF毎に設けられた複数の放水器、例えばスプリンクラー111により構成されている。スプリンクラー111は、吐出管12から分岐して接続され、各フロアに配設された配設管112を有している。また、スプリンクラー111は、配設管112に設けられたフロアF毎に複数設けられたスプリンクラヘッド113と、配設管112とスプリンクラヘッド113との間に設けられ、水量(流量)及び圧力の検出が可能な検出器114と、を備えている。
【0034】
スプリンクラヘッド113は、火災時に、例えば、火災時の熱により開口し放水することで、建造物のフロアに放水可能な放水口を有している。また、スプリンクラヘッド113は、同一フロアに設けられたスプリンクラヘッド113のいずれかが開となり放水した場合に、同一フロア内に設けられた他のスプリンクラヘッド113も開となり連動して放水可能に形成されている。
【0035】
検出器114は、制御盤17と信号線Sを介して接続されている。検出器114は、例えば、配設管112の圧力、スプリンクラヘッド113の開閉状態、及び、流量を検出可能に形成されている。検出器114は、圧力、流量及びスプリンクラヘッド113の開閉状態の少なくともいずれか一から、放水手段110の放水状態を検出し、この放水状態、圧力、流量等の検出データを制御盤17に送信可能に形成されている。
【0036】
このように構成された消火設備100の消火ポンプ装置1によれば、建造物に設置された消火設備100は、消火設備100の点検時以外では、消火ポンプ装置1の運転が常時行なわれることとなる。
先ず、消火設備100の設置直後や消火設備100の点検後の消火設備100の起動及び運転について説明する。
【0037】
消火設備100の起動として、まず、電源ケーブルKを電源に接続し、制御盤17に電源を供給する。制御盤17に電源が供給されると、制御盤17は、圧力検出器16及び検出器114から圧力の検出データを受信する。受信した検出データが所定の圧力以下の場合には、制御盤17は、消火ポンプユニット11の各モータ23に電力を供給し、モータ23を定格運転させる。このモータ23の運転により、各消火ポンプ24が駆動される。
【0038】
消火ポンプ24は、吸込管10から分岐された分岐管21内の水を吸込み、増圧させる。消火ポンプ24から吐出された水は、合流部27を介して吐出管28へと通水させる。なお、このとき、消火ポンプ24内に水が充満していない場合には、呼水手段13の開閉弁31を開とし、呼水を行なう。
【0039】
圧力検出器16及び検出器114は、圧力及び放水手段110からの放水量を検出し、検出データを制御盤17へ送信する。消火ポンプ24により増圧された水が所定の圧力となった場合であって、放水手段110により放水がなされていない場合には、制御盤17は、受信した検出データから所定の圧力である旨を判断し、消火ポンプユニット11の1つのモータ23を継続して駆動させるとともに、他のモータ23を停止させる。即ち、制御盤17は、小水量運転として、消火ポンプ24を一つだけ駆動(運転)させる。なお、所定の圧力を複数段設定し、順次消火ポンプ24の駆動を停止させてもよい。
【0040】
制御盤17は、常時小水量運転を行なうと共に、圧力検出器16及び検出器114からの検出データの受信を継続する。例えば、小水量運転を行なっていた場合であっても、圧力が増大した場合や、水温が上昇した場合には、制御盤17は、逃し水手段14の開閉弁37を開とし、逃し水を行なう。また、制御盤17は、消火ポンプユニット11の小水量運転時において、所定時間毎に消火ポンプ24を交互に運転させる。
【0041】
このように消火設備100の起動が行なわれるとともに、消火ポンプ装置1を運転させることで、火災等の緊急時まで、消火設備100が運転・維持されることとなる。
【0042】
次に、火災等の緊急時の際の説明を行なう。
建造物で火災が発生した場合には、火災の熱により、放水手段110のスプリンクラヘッド113が開となる。なお、煙感知器や人為的により制御盤17へと火災である旨の信号が送付されると、スプリンクラヘッド113が開となる構成であってもよい。
【0043】
例えば、建造物の1つのフロアFで火災があった場合には、少なくとも一つのスプリンクラヘッド113が開となると、同一フロアF内のスプリンクラヘッド113が全て開となり、フロアF内へ放水を開始する。
【0044】
このとき、圧力検出器16及び検出器114は、圧力及び流量を検出する。この検出データが制御盤17へ送信されると、制御盤17は、受信した検出データから、吐出管12内の圧力及び現在の放水されている放水量と、駆動されている消火ポンプ24により増圧給水されている圧力及び吐出水量(吐出流量)から、吐出水量が放水量以上か否かを判断する。
【0045】
このとき、放水手段110から放水されている放水量が、1台の消火ポンプ24でまかなえる放水量、即ち、放水量が一台の消火ポンプ24の吐出水量(Q)以下であると判断した場合には、制御盤17は、継続して消火ポンプ24を1台だけ運転させ、消火ポンプ24の二次側へ水の供給を継続させる。
【0046】
また、放水量が一台の消火ポンプ24の吐出水量より多いと制御盤17が判断した場合には、運転中の消火ポンプ24の運転を継続させるとともに、停止している消火ポンプ24のいずれか一方の運転を開始する。即ち、制御盤17は、消火ポンプ24を2台運転させる。また、制御盤17は、圧力を圧力検出器16及び検出器114からの検出データから、2台の消火ポンプ24の吐出水量(Q)が放水量以上か否か判断を行なう。2台の消火ポンプ24の吐出水量が放水量以上である場合には、2台での消火ポンプ24の運転を維持させる。
【0047】
例えば、延焼等により、他のフロアFに火災の範囲が広がった場合等には、他のフロアFのスプリンクラヘッド113からも放水が成されることとなる。このとき、制御盤17は、圧力検出器16及び検出器114から受信した検出データから、2台の消火ポンプ24の吐出水量よりも放水量が多いと判断した場合には、停止している消火ポンプ24の運転を開始させる。即ち、制御盤17は、全ての消火ポンプ24を運転させる。消火ポンプ24は、全て(3台)で駆動させたときの吐出水量(Q)が、全てのスプリンクラヘッド113から放水が成された場合であっても、必要水量がまかなえるように形成されている。
【0048】
このため、制御盤17は、圧力検出器16及び検出器114から送信された検出データに基いて、放水手段110による放水量が、消火ポンプ24が単数又は2台(全ての消火ポンプ24以外)でまかなえるまで、全ての消火ポンプ24の運転を維持させる。スプリンクラヘッド113からの放水量が低減した場合には、制御盤17は、必要水量がまかなえる台数の消火ポンプ24を運転させる。
【0049】
このように構成された消火ポンプ装置1を用いた消火設備100によれば、消火ポンプ24を複数台有し、消火ポンプユニット11の二次側の圧力及び流量等に基づいて制御盤17にて運転させる消火ポンプ24の台数を制御することで、消火ポンプ装置1から吐出される水量が調整可能となる。即ち、消火ポンプ装置1は、消火ポンプ24の駆動台数によって、小水量運転から最大水量運転まで、消火ポンプ24の吐出水量を可変とすることが可能となる。
【0050】
また、放水するスプリンクラヘッド113の数によって、必要な水量を吐出可能な台数で消火ポンプ24を運転することが可能となるため、無駄な消火ポンプ24の運転を防止することが可能となり、運転時の消費電力を低減することが可能となる。また、消火ポンプ24の運転は定格運転でよく、放水量以上の吐出水量となる台数の消火ポンプ24を運転するだけでよい。また、消火ポンプ24は、効率のよい回転数である定格回転数で運転するため、ポンプ効率がよい。
【0051】
また、消火ポンプ24は、複数台を並列に接続して運転することで、必要とする最大水量を吐出することが可能となる構成のため、消火ポンプ24自体は小型となる。このため、消火ポンプ24を駆動するモータ23も小型でよく、消火ポンプユニット11の製造コストを低減することが可能となる。また、モータ23は、消火ポンプ24の小型化に伴って、小型となる。これにより、モータ23の駆動に必要な電力も小さくてよく、消費電力を低減させ、電力設備(制御盤17や供給電源)の設置コストも低減することが可能となる。
【0052】
さらに、制御盤17は、消火ポンプ24を交互運転することで、消火ポンプ24の駆動時間を平均化することが可能となる。これにより、消火ポンプ24の連続運転や、各消火ポンプ24のいずれか一が偏って駆動されることによる性能の低下や故障を防止することが可能となる。また、いずれか一つの消火ポンプ24が万が一故障した場合であっても、他の消火ポンプ24を駆動することが可能となるため、放水機能を損なうことなく、確実に放水することが可能となる。このため、消火ポンプ装置1及び消火設備100の信頼性の向上にもなる。
【0053】
上述したように、本実施の形態に係る消火ポンプ装置1を用いた消火設備100によれば、定格回転数により駆動される消火ポンプ24を複数設け、放水手段110の状態によって運転する消火ポンプ24の台数を制御する構成とすることで、安価、且つ、省エネが可能となるとともに、信頼性を向上させることが可能となる。また、複数の消火ポンプ24を交互運転することで、消火ポンプ24の性能の低下や故障を防止することができる。また、万が一の故障時においても、他の消火ポンプ24を駆動可能となり、消火ポンプ装置1及び消火設備100の信頼性を向上させることが可能となる。
【0054】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではない。上述した例では、消火ポンプ24は、3台としたが、これは、全ての消火ポンプ24を駆動させたときに吐出される最大水量が放水手段110により放水される放水量以上となる台数であればよい。また、上述した例では、放水手段110は放水器としてスプリンクラー111を用いる構成としたが、これに限定されない。例えば、スプリンクラー111だけでなく、放水用ホースを用いる構成でもよく、他の構成であてもよい。即ち、火災時に、消火を行なうための放水が可能な構成であれば適用できる。
【0055】
また、上述した例では、逃し水手段14の開閉弁37を電磁弁と説明したが、これはリリーフ弁であってもよい。即ち、消火ポンプユニット11により常時吐出される水が高温にならない、又は、各配管(吐出管12等)内の水圧が所定の圧力より増圧した場合に、逃し水が可能であればよい。この他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0056】
1…消火ポンプ装置、10…吸込管、11…消火ポンプユニット、12…吐出管、13…呼水手段、14…逃し水手段、15…予備水源、16…圧力検出器、17…制御盤、20…分岐部、21…分岐管、22…開閉弁、23…モータ、24…消火ポンプ、25…逆止弁、26…開閉弁、27…合流部、28…吐出管、29…圧力容器、30…呼水槽、31…開閉弁、32…逆止弁、35…水配管、36…逆止弁、37…開閉弁、38…逆止弁、100…消火設備、110…放水手段、111…スプリンクラー(自動放水装置)、112…配設管、113…スプリンクラヘッド、114…検出器、D…排水部、F…フロア、K…電源ケーブル、S…信号線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放水手段から放水する水を増圧する消火ポンプ装置において、
定格電力で駆動する複数のモータと、
給水源に接続された吸込管と、
この吸込管を複数に分岐する分岐管と、
これら分岐管にそれぞれ設けられ、且つ、並列に配列されるとともに、前記モータにより定格回転数で駆動される複数のポンプと、
これらポンプの二次側を合流させるとともに、前記放水手段に接続される吐出管と、
この吐出管に設けられ、この吐出管の圧力を検出する圧力検出器と、
この圧力検出器により検出された圧力、及び、前記放水手段の放水状態の少なくとも一方に基いて、前記ポンプからの吐出水量が前記放水手段からの放水量よりも多くなる前記モータの駆動台数を判断し、この駆動台数の前記モータを駆動させる制御部と、
を備えることを特徴とする消火ポンプ装置。
【請求項2】
前記制御部は、停止する前記ポンプが一台以上の場合に、前記ポンプを交互に運転させることを特徴とする請求項1に記載の消火ポンプ装置。
【請求項3】
定格電力で駆動する複数のモータと、
給水源に接続された吸込管と、
この吸込管を複数に分岐する分岐管と、
これら分岐管にそれぞれ設けられ、且つ、並列に配列されるとともに、前記モータにより定格回転数で駆動される複数のポンプと、
これらポンプの二次側を合流させるとともに、前記放水手段に接続される吐出管と、
前記吐出管に接続され、前記ポンプから吐出された水を放水可能な放水手段と、
前記吐出管に設けられ、この吐出管の圧力を検出する圧力検出器と、
この圧力検出器により検出された圧力、及び、前記放水手段の放水状態の少なくとも一方に基いて、前記ポンプからの吐出水量が前記放水手段からの放水量よりも多くなる前記モータの駆動台数を判断し、この駆動台数の前記モータを駆動させる制御部と、
を備えることを特徴とする消火設備。
【請求項4】
前記制御部は、停止する前記ポンプが一台以上の場合に、前記ポンプを交互に運転させることを特徴とする請求項3に記載の消火設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−167157(P2010−167157A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13576(P2009−13576)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000148209)株式会社川本製作所 (161)
【Fターム(参考)】