説明

消火方法および装置

【課題】トンネル内等の比較的閉鎖された空間において発生する火災を、迅速且つ効果的に消火すると共に保守作業を容易にする消火方法および消火装置を提供すること。
【解決手段】トンネル50の両側壁の少なくとも一方に設置された走行レール10を通って消火部30を火災発生現場の近くへ走行移動させ、トンネル50の壁面に設けられた給水部20の給水口21から消火用水を得て、火災発生車両80に向けて噴射ノズル38からウォーターミストを火災発生源である車両80へ向けて噴射することにより消火する。消火部30は、走行レール10に沿って設けられた電気レール40から走行や通信および制御に必要な動力を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は消火方法および装置に関し、特にトンネル等の細長い空間に沿って予め設けられたレール上を走行して斯かる細長い空間内で発生する火災を迅速且つ効果的に火災を消火する消火方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
1979年7月11日に、日本坂トンネル(全長2045メートル)内で車両7台が玉突き衝突事故を起こし、トンネル内の173台の車両が65時間も燃え続け、7名の死者を出し、2ヶ月間に渡りトンネルが閉鎖されるという重大事故が発生した。
【0003】
また、1999年3月24日には、モンブラン・トンネル(全長11.4キロメートル)内でバターや小麦粉などを運送するトラックから出火して、火が瞬く間にトンネル内に広がり、53時間に渡り燃えた。その後、火災は鎮火されたものの41名の犠牲者を出し、このトンネルは3年間に渡り閉鎖された。
【0004】
更にまた、2001年10月20日には、スイスのアルプス山脈を貫通するサン・ゴッタルド・トンネル内で発生したトラック同士の正面衝突事故で、トラックに積載された古タイヤ等の炎上でトンネル内に有毒ガスが発生し、28名の死傷者を出し、このトンネルはその後2ヶ月間に渡り閉鎖された。
【0005】
また、2005年6月4日には、イタリアとフランスの国境にまたがるアルプス山脈のフレジュス・トンネル(全長13キロメートル)内で走行中の車両が事故で炎上した。その結果、トンネル内は約1000℃近くの高温になり、2名の死者が確認された。
【0006】
このようにトンネル内等の閉鎖状態に近い空間で火災事故が発生すると、内部温度が極めて高温になり、しかも煙や有毒ガス等の発生の危険を伴い、更に内部構造体も高温に晒されて破壊の虞がある。そこで、消防車両等が外部から容易に近付けず、消火や救助が困難であるとともに、一度大規模な火災が発生すると、長期間に渡り閉鎖され、交通渋滞その他の生活上の不便を生じることとなった。
【0007】
斯かるトンネル内での火災事故の重大性に鑑み、トンネル内に自動消火システムを設置する必要性がある。そこで、下記特許文献には斯かる目的の自動消火システムが開示されている。
【特許文献1】特開2004−24381号
【特許文献2】特開2003−278500号
【特許文献3】特開2003−746号
【特許文献4】特開2002−143334号
【特許文献5】特開平11−4908号
【特許文献6】特開平10−165535号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、斯かる従来技術には、それぞれ次の如き幾つかの課題を有する。即ち、上述した特許文献1に記載のトンネル用消火ロボットは、トンネルの上方にレールを配置し、このレール上を走行する消火装置を給水プラグに接続して水噴霧を放出し、併せて区画番号、火災信号および風速の検出等を行っている。しかし、トンネルの上方に設置された消火装置は、保守が困難であり、保守のためにトンネル内の車両の流れを妨げるのみならず、換気装置(ジェットファン)の妨害となる。レールが水管を兼用しているので、強度、重量およびサイズの問題を生じると共に水管の接続が困難である。トンネルの高さは一般に6メートル以下であるので、遠距離、中距離および近距離の何れに対しても水噴霧の放出が困難である。更に、火災発生時のトンネル上方温度は最も高いので、レールや消火装置を破損することなく正常に作動させるのが困難である。通信や検知に内蔵電池を消耗してしまう虞や、トンネル内通信の妨害の虞および誤作動によるトンネル内の車両の通行を妨害する危険が高くなる。
【0009】
また、特許文献2に開示されるトンネル内消火システムは、トンネル内壁にステンレス製の防火板を設け、トンネル内壁と防火板間にトンネル内壁に沿って冷却ノズルを設置している。しかし、この消火システムは固定式ノズルを使用するので、火災発生場所へ移動することができず、機動性に欠け、効果的な消火が不可能であるという課題を有する。
【0010】
一方、特許文献3に開示されるトンネル内火災の消火方法および消火設備は、ガイドレールを走行する消火装置をトンネル上方に設け、火災発生場所の両側をウォーターカーテンで遮断し、遮断された領域内に粉末消化剤を放射して消火している。しかし、この消火方法等は、消火装置がトンネルの上方に設置されているので保守作業が困難であり、換気用のジェットファンの妨害となり、更に保守作業のためにトンネル内の車両の流れを妨げる。また、トンネル火災の場合には、トンネル上方の温度は最も高いのでレールおよび消火装置が損傷を受け易いという課題を有する。
【0011】
また、特許文献4に開示されるトンネル内消火システムは、レール上を走行すると共に高周波充電電池を使用する消火装置を設け、火災発生源および風速を検知した後、消化剤を射出することにより消火している。しかし、消火装置がトンネル上方に設置されているので、保守作業が困難である等の上述した従来技術の課題を有すると共に、消化剤や水は大きな重量を有すると共に老化するという課題を有する。また、特許文献5に開示されるトンネル水噴霧設備は、加圧配管に接続されたノズルで水を噴霧し、ノズルは車両通行空間とトンネル壁面間で切替又は方向転換可能であることを特徴としている。しかし、トンネル内に常設される設備であるので、テストや保守が困難であり、誤作動し易く、車両の安全な運転を妨げる虞があり、特にトンネルの全長が長いと装置の検出部品や放出部品も増加し、設置および保守コストが増加するという課題を有する。
【0012】
最後に、特許文献6に開示される火災用ロボットは、トンネルの上方のレール上を走行する消火装置およびこれに水を供給する給水プラグを設け、火災発生源および風速を検知して消火粉末を放出している。しかし、レール等がトンネルの上方に設けられているので、上述した従来技術と同様の課題を有する。
【0013】
上述した従来のトンネル内消火技術の課題を要約すると、次の通りである。即ち、火災センサーが火災を感知した後、制御ユニットによりトンネル内の自動消火システムを始動させて、水又は消化剤を上方から下方向へ放出して消火しているが、火災発生した車両との距離があるので、直接且つ効率的な消火ができない(特に、消火装置が固定式の場合は、この課題が顕著である)。水等を噴霧する場合には、万一消火装置が誤作動すると、走行中の車両の視界を妨げるので、交通事故を誘発する危険があるので安全性の保証が困難である。長いトンネルに沿って多数の固定ノズルを設置すると、検知装置、放出ノズル、配管工事等の費用が増加すると共に保守が困難である。消火設備がトンネルの上部の最も高い位置に取り付けられると、保守が困難であり、保守作業が車両の交通を妨げ、更に火災発生時の高熱により消火設備が損傷し易い。更に、通信障害や蓄電池の消耗等を生じる虞がある。
【0014】
本発明は、従来技術の上述の如き多くの課題に鑑みなされたものであり、これらの課題の前部又は一部を解消又は軽減する消火方法および装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の消火方法は、トンネルの如き両側壁および上壁で囲まれた細長い固定空間内で発生する火災を消火する方法であって、両側壁の何れかの側壁に沿って走行レールを設置するステップと、この走行レールに沿う所定位置に1以上の給水口が形成された消火用水の給水部を設置するステップと、この空間内で火災発生時にこの火災発生場所に最も近い給水口へ走行レールを通って消火部を移動させるステップと、この消火部に給水口を接続して得た消火用水を加圧してウォーターミストを発生させて火災発生源に向けて噴射するステップとを備える。
【0016】
この消火方法の好適実施例によると、走行レールおよび給水部は、空間の両側壁に形成され、これら両側壁の消火部は、同時に火災発生源へ移動し協働して消火する。走行レールに沿って電気レールを設置し、消火部に必要な動作電力を供給するステップを備えている。
【0017】
また、本発明の消火装置は、略一定間隔の両側壁および上壁で区切られた細長い固定空間内で発生する火災を消化する装置であって、両側壁の少なくとも一方に設けられた走行レールと、この走行レール上を走行する消火部と、この消火部に消火用水を供給するため走行レールに沿う適当な位置に設けられた給水口を有する給水部とを備え、消火部を走行レールに沿って火災発生源の近傍へ移動させて給水部からの消火用水を受けて消火することを特徴とする。
【0018】
本発明の消火装置の好適実施形態によると、走行レールは、側壁の基部から所定の高さ位置に設置される。走行レールは、空間の入口から出口に渡り連続的に設置されている。走行レールは、空間の長さ方向に複数個に分割して設置され、各分割された走行レールには少なくとも1台の消火部が配置される。走行レールに沿って電気レールが設けられ、消火部が必要とする動作電力が電気レールから供給される。消火部は、給水部から得た消火用水を加圧してウォーターミスト状にして消火部に設けられた噴射ノズルから火災発生源に向けて噴射される。空間内には、火災情報を得る監視装置が設けられ、消火部は、この監視装置からの火災情報を受信して火災発生源の近傍へ移動する通信モジュールを備えている。この通信モジュールは、無線通信、光ファイバ通信又はこれらの混合通信方式を採用する。走行レール、給水部および消火部は、空間の両側壁に設けられ、これら両側壁の消火部は同時に走行レール上を走行して協働して消火作業を行う。消火部は、火災発生源の前後に少なくとも2台移動させ、火災発生源をウォーターミストにより包囲する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の消火方法および装置によると、次の如き実用上の顕著な効果を有する。即ち、本発明によると、消火空間(例えば、トンネル)の側壁に設けられた走行レールを走行する消火部により消火するので、排気装置の排気動作を妨害することなく、トンネル内を走行する車両の走行(流れ)を止めることなく保守作業が可能であり、しかも火災発生時における消火部の温度も比較的低いので消火部の損傷の危険を少なくすることが可能である。また、トンネル側壁の所定高さ位置に走行レールを設置することにより、路側部分の歩行を可能にし且つ歩行者の歩行を妨害することなく消火部を走行させ、且つ必要な保守作業も容易に行うことが可能である。更に、電気レールを介して消火部に電力および動力を供給することが可能であるので、電池駆動の場合の如き電池の消耗および保守が不要である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明による消火方法および装置の好適実施形態の構成および動作を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
先ず、図1は、本発明による消火装置の好適又は第1実施形態の基本構成を示す。この実施形態は、両側壁と上壁で囲まれた細長い空間(以下、トンネルという)内部で発生する火災を消化する消火装置である。図1は、レール走行式の消火部とトンネル50の一部を示す正面図である。図2は、図1中の矢印A方向から見た図である。
【0022】
この消火装置1は、走行レール10、給水部20、消火部30および電気レール40により構成される。走行レール10は、細長い消火空間(以下、トンネルという)50の両側壁に配設された平行な1対のレールである(尚、図1中にはトンネル50の片側のみを示す)。給水部20は、消火部30に必要な消火液(消火用水)を供給するために、トンネル50の側壁に露出又は埋め込み式で走行レール10に沿って配管されている。そして、この給水部20は、トンネル50の長さ方向に予め決められた間隔(例えば25〜100メートル)で複数個設けられている継手21を有する。ここで、走行レール10は、トンネル50の側壁の基部から所定高さに設置し、トンネル50内の走行車線を走行する車両の火災を効率的に消火可能にすると共に路側(歩道)部分の歩行者等の通行を妨げず且つ必要時に保守要員が消火装置、特に消火部に容易にアクセス可能にするのが好ましい。
【0023】
一方、消火部30は、感知モジュール31、水接続部35および水噴霧ノズル38を有する動力走行制御モジュール32、給水放出モジュール33、アンテナ36および光ファイバ37を備える通信モジュール34を含んでいる。電気レール40は、走行レール10に沿ってトンネル50内に設けられ、消火部30が所定の動作をするため、例えば走行レール10を走行するために必要な電力を供給する。
【0024】
消火部30において、感知モジュール31は、火災情報および位置情報を検知し、動力走行制御モジュール32を制御して、消火部30を火災発生場所に最も近い給水部20へ移動させる。尚、火災情報は、火災発生場所(位置)および温度を含んでいる。動力走行制御モジュール32は、消火部30を駆動して走行レール10上を走行させるために使用される。
【0025】
一方、給水放出モジュール33は、消火部30を給水部20へ位置決めおよび接続するために使用され、消火部30に設けられた接続部35により給水部20の継手21と接続して消火用の水を得る。更に、この消火用水を所定の圧力に加圧して、消火部30に設けられた水噴霧ノズルから送出する。水噴霧ノズル38が水噴霧を必要な距離範囲に放出できる圧力を得る加圧範囲は、例えば10kg/cm〜100kg/cmである。水噴霧ノズル38は、消火用の水噴霧を放出するノズルである。この水噴霧ノズル38を介して霧状の水粒を火災源に向けて側方へ放出することにより、所謂ウォーターミストを火炎中に吹き付け、温度を急速に下げて速やかに消火する。
【0026】
通信モジュール34は、アンテナ36および光ファイバ37を備え、光ファイバ通信、無線通信又はこれらの混合通信方式により消火作業中の情報をセンター(図示せず)へ提供する。また、感知モジュール31、動力走行制御モジュール32および給水放出モジュール33間の通信および制御を行う。
【0027】
次に、図3乃至図6を参照して本発明による消火装置の第2実施形態を説明する。第2実施形態は、トンネルの両側に消火部およびその走行レール等を設ける点で、上述した第1実施形態と相違する。図3は、本発明の消火装置の第2実施形態を、トンネルの正面から見た見取図である。図4は、本発明による消火装置の第2実施形態を、トンネルの側面から見た透視図である。また、図5は、本発明による第2実施形態の消火装置によりトンネル内に霧状水粒(ウォーターミスト)を放出して消火している状態を示す図である。そして、図6は、本発明による消火装置をトンネルの上方から見た透視図である。
【0028】
図3および図5に示す如く、トンネル50の内部且つ上部には、走行する車両からの排気ガスが溜まることによるトンネル50内の空気を清浄化するため、特に長いトンネルの場合には排気ファン60が設けられているのが普通である。更に、図4に示す如く、トンネル50内部の安全状態を、遠隔地に設けられたコントロールセンタ(図示せず)で監視するため、トンネル内の適当な位置に複数のモニタ70が設けられている。
【0029】
トンネル50内を走行する車両80の1台の車両(以下、火災発生車両という)に何らかの原因で火災が発生した場合には、本発明の消火装置1は、直ちに消火作業を開始する。即ち、トンネル50内の両側面に設置した走行レール10上を消火部30が走行して、火災発生車両80に最も近い位置へ移動することにより包囲式消火を行う。
【0030】
この包囲式消火作業を、更に詳細に説明すると、この消火装置1の消火部30は、電気レール40から必要な電力供給を受けて、感知モジュール31により火災情報を検知し、動力走行制御モジュール32を制御する。そして、消火部30を駆動して走行レール10上を所定位置へ走行させる。更に、給水放出モジュール33を介して火災発生車両80に最も近い位置の給水部20の継手21に、消火部30の水接続部35を接続することにより消火用水を得る。更に、給水放出モジュール33にて、消火用水を加圧して水噴霧ノズル38から火災発生車両80に向けてウォーターミストを噴射又は放出して火災現場の温度を降下させながら空気の流入を遮断して火災を消火する。
【0031】
ここで、通信モジュール34は、光ファイバ通信、無線通信又はこれらの混合通信方式により消火情報をコントロールセンタへ提供すると共に感知モジュール31、動力走行制御モジュール32および給水放出モジュール33間の通信や制御に使用される。迅速且つ効果的な消火作業を得るために、火災発生車両80の両側の前後方向に、例えば4個の消火部30で加圧およびウォーターミストの噴射を同時に行うのが好ましい(図5参照)。
【0032】
コントロールセンタは、必要に応じて(例えば、大規模又は広範囲の火災の場合)に、その他の消火部30を投入して消火作業の救援をすることが可能である。これにより、ウォーターミストの密度や範囲を制御して消火作業効率を高める。消火部30の位置決め(給水部20の継手21との接続)、加圧および放出等は、何れも感知モジュール31又は演算ユニット(図示せず)を通じて判断可能である。また、コントロールは、上述した光ファイバ又は無線通信による自動のみならず、コントロールセンタのスタッフにより手動で行うことにより、万一の場合における消火作業の信頼性の向上を図ることも可能である。
【0033】
図5および図6に示す如く、本発明の消火装置1による消火は、好ましくはトンネル50の両側壁から火災発生源である火災発生車両80の左右両側および前後に位置する4台の消火部30により加圧されたウォーターミストを噴射して温度を下げ、火災発生車両80の火災を消火すると共に隣接する車両への類焼を防止する。尚、感知モジュール31、動力走行制御モジュール32、給水放出モジュール33、通信モジュール34、水接続部35、アンテナ36、光通信ファイバ37および水噴霧ノズル38は、何れも既知であるので、これらの詳細説明は省略する。
【0034】
上述の説明から理解される如く、本発明による消火方法は、トンネル(消火空間)の側壁に走行レールを設けるステップ、この走行レールに沿って消火部を走行(又は移動)させるステップ、この消火部に消火用水を供給する複数の給水口を有する給水部を設けるステップ、空間内の火災発生源へ消火部を移動させ、給水口から消火用水を得てウォーターミストを発生して噴射するステップを備えている。また、消火部が走行、通信および制御に必要な動作電力は、走行レールに沿って設けられた電気レールから供給される。
【0035】
以上、本発明による消火方法および装置の好適実施形態の構成および動作を詳述した。しかし、斯かる実施形態は、本発明の単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではないことに留意されたい。本発明の要旨や精神を逸脱することなく、特定用途に応じて種々の変形変更が可能であること、当業者には容易に理解できよう。例えば、走行レールや消火部は、トンネルの両側壁の一方のみに設けても、両方に設けても良い。また、走行レールや電力レール等は、トンネルの入口から出口まで連続して設けても良いが、特に長いトンネルの場合には、迅速な消火作業を可能にするために、それぞれ少なくとも1台の消火部を有する複数の区分に分割して設けても良い。更に、走行レール上には、複数の消火部を配置しておき、監視装置からの火災情報に基づき火災発生源へ迅速に移動させることも可能である。
【0036】
本発明の消火装置の電気レールは、走行レールと兼用して設けても良い。また、消火部への動作電力は、電気レールに代えて固定電力供給口に接続された電気ケーブルにより供給しても良い。更に、本発明の消火装置は、上述の如きトンネルのみならず、壁面で囲まれた他の類似空間において発生する火災の消火にも適用可能である。トンネルは、横方向のトンネルのみならず立坑にも適用可能である。更に、トンネルは、2車線に限定されることなく、1車線であっても良いこと勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明による第1実施形態の消火装置を示し、トンネルの片側の側壁部分およびこの側壁を走行する消火部を含む正面図である。
【図2】図1中に示す消火装置の矢印A方向から見た図である。
【図3】本発明による第2実施形態の消火装置をトンネルの正面から見た図である。
【図4】図3に示す消火装置をトンネルの側面から見た透視図である。
【図5】図3に示す消火装置によりウォーターミストを噴射して消火状態をトンネルの正面から見た説明図である。
【図6】図3に示す消火装置による消火状態をトンネルの上方から見た説明図である。
【符号の説明】
【0038】
1 消火装置
10 走行レール
20 給水部
21 継手(給水口)
30 消火部
34 通信モジュール
35 水接続部
38 ウォーターミスト噴射ノズル
40 電気レール
50 トンネル(消火空間)
60 排気ファン
70 モニタ(火災情報監視装置)
80 車両(火災発生源)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの如き両側壁および上壁で囲まれた細長い固定空間内で発生する火災を消火する消火方法において、
前記両側壁の何れかの側壁に沿って走行レールを設置するステップと、該走行レールに沿う所定位置に1以上の給水口が形成された消火用水の給水部を設置するステップと、前記空間内で火災発生時に該火災発生場所に最も近い前記給水口へ前記走行レールを通って消火部を移動させるステップと、該消火部に前記給水口を接続して得た前記消火用水を加圧してウォーターミストを発生させて火災発生源に向けて噴射するステップとを備えることを特徴とする消火方法。
【請求項2】
前記走行レールおよび前記給水部は、前記空間の前記両側壁に形成され、前記両側壁の消火部は、同時に前記火災発生源へ移動して消火することを特徴とする請求項1に記載の消火方法。
【請求項3】
前記走行レールに沿って電気レールを設置し、前記消火部に動作電力を供給するステップを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の消火方法。
【請求項4】
略一定間隔の両側壁および上壁で区切られた細長い固定空間内で発生する火災を消火する消火装置において、
前記両側壁の少なくとも一方に設けられた走行レールと、該走行レール上を走行する消火部と、該消火部に消火用水を供給するため前記走行レールに沿う適当な位置に設けられた給水口を有する給水部とを備え、前記消火部を前記走行レールに沿って火災発生源の近くへ移動させて前記給水部からの消火用水を受けて消火することを特徴とする消火装置。
【請求項5】
前記走行レールは、前記側壁の基部から所定の高さ位置に設置されることを特徴とする請求項4に記載の消火装置。
【請求項6】
前記走行レールは、前記空間の入口から出口に渡り連続的に設置されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の消火装置。
【請求項7】
前記走行レールは、前記空間の長さ方向に複数個に分割して設置され、該各分割された走行レールには前記消火部が少なくとも1台配置されることを特徴とする請求項4、5又は6に記載の消火装置。
【請求項8】
前記走行レールに沿って電気レールが設けられ、前記消火部が必要とする電力が前記電気レールから供給されることを特徴とする請求項4乃至7の何れかに記載の消火装置。
【請求項9】
前記消火部は、前記給水部から得た消火用水を加圧してウォーターミスト状にして前記消火部に設けられた噴射ノズルから前記火災発生源に向けて噴射することを特徴とする請求項4乃至8の何れかに記載の消火装置。
【請求項10】
前記空間内には火災情報を得る監視装置が設けられ、前記消火部は、前記監視装置からの火災情報を受信して前記火災発生源の近傍へ移動する通信モジュールを備えることを特徴とする請求項4乃至9の何れかに記載の消火装置。
【請求項11】
前記通信モジュールは、無線通信、光ファイバ通信又はこれらの混合通信方式を採用することを特徴とする請求項10に記載の消火装置。
【請求項12】
前記走行レール、前記給水部および前記消火部は、前記空間の両側壁に設けられ、前記両側壁の消火部は同時に前記走行レール上を走行して協働して消火作業をすることを特徴とする請求項4乃至11の何れかに記載の消火装置。
【請求項13】
前記消火部は、前記火災発生源の前後に少なくとも2台移動させ、前記火災発生源をウォーターミストにより包囲することを特徴とする請求項4乃至12の何れかに記載の消火装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−7380(P2007−7380A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−354670(P2005−354670)
【出願日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(592082549)インダストリアル テクノロジー リサーチ インスティチュート (3)
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【Fターム(参考)】