説明

消火用ノズル装置

【課題】噴出される水流中に空気を混入させることで十分な増勢が得られるようにした放水用ノズル装置を提供する。
【解決手段】給水を受けるノズル取付基体22の中央部から、水を噴出する中央ノズル筒体23を突設し、中央ノズル筒体23の周囲においてノズル取付基体22から、水を噴出する複数の周囲ノズル筒体24を突設する。中央ノズル筒体23および周囲ノズル筒体24の側面に、外部の空気を内部に吸込む空気吸込孔26を直径方向に穿設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のノズル筒体を有する放水用ノズル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
散水ヘッドにおいては、ノズルから噴出される水流中に空気を混入させることで、混気ジェット水を安定よく噴射可能としたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第4045191号公報(第3頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような散水ヘッドを浴室などのシャワーで用いる場合は、低圧水を増勢する節水型ノズルとしての機能が得られるものの、水道水で消火をする際の放水用ノズルまたは水道水で洗浄をする際の放水ノズルとして用いる場合は、十分な増勢が得られず、効果的な消火活動や洗浄効果が得られない。
【0004】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、噴出される水流中に空気を混入させることで十分な増勢が得られるようにした放水用ノズル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載された発明は、給水を受けるノズル取付基体と、このノズル取付基体の中央部から突設されて水を噴出する中央ノズル筒体と、中央ノズル筒体の周囲においてノズル取付基体から突設されて水を噴出する複数の周囲ノズル筒体とを具備し、中央ノズル筒体および周囲ノズル筒体は、側面に穿設されて外部の空気を内部に吸込む空気吸込孔を備えた放水用ノズル装置である。
【0006】
請求項2に記載された発明は、請求項1記載の放水用ノズル装置における中央ノズル筒体が、周囲ノズル筒体より大口径に形成されたものである。
【0007】
請求項3に記載された発明は、請求項1または2記載の放水用ノズル装置におけるノズル取付基体が、少なくとも中央ノズル筒体側から給水側に向かって拡開状のテーパ穴を備えたものである。
【0008】
請求項4に記載された発明は、請求項1乃至3のいずれか記載の放水用ノズル装置における周囲ノズル筒体が、先端に向かって中央ノズル筒体から離反する方向に傾斜されたものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載された発明によれば、中央ノズル筒体および複数の周囲ノズル筒体の内部を流れるそれぞれの水流が空気吸込孔から外部の空気を内部に効率よく吸込むので、中央ノズル筒体から噴出された多量の気泡を含み親水性の増した中央の気液混合水流を中心に、複数の周囲ノズル筒体から噴出された多量の気泡を含み親水性の増した複数条の気液混合水流を合わせた合成水流により、消火や洗浄に必要な増勢を確保でき、効果的な消火活動や洗浄効果が得られる。
【0010】
請求項2に記載された発明によれば、周囲ノズル筒体より大口径に形成された中央ノズル筒体からは、周囲ノズル筒体より多量の気液混合水流を放出できるので、この中央の気液混合水流の先導作用により、消火や洗浄に必要な増勢を確保でき、効果的な消火活動や洗浄効果が得られる。
【0011】
請求項3に記載された発明によれば、ノズル取付基体は、少なくとも中央ノズル筒体側から給水側に向かって拡開状のテーパ穴を備えたので、このノズル取付基体からテーパ穴を経て少なくとも中央ノズル筒体に効率よく水流を案内できる。
【0012】
請求項4に記載された発明によれば、周囲ノズル筒体は、先端に向かって中央ノズル筒体から離反する方向に傾斜されたので、消火や洗浄に必要な放水範囲を確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を、図1乃至図4に示された一実施の形態を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図4は、街角に設置された水道水を用いる消火設備10を示し、この消火設備10を用いるときは、ホース格納ボックス11の扉板12を開けて、給水ホース13を取出し、ホース格納ボックス11の背面板14に固定された管継手15を介して給水ホース13の一端継手部を放水ホース16に接続し、給水ホース13の他端継手部17を、住宅内の台所や洗面所などに設置された水道の蛇口18に接続し、この蛇口18を全開にし、さらに、放水ホース16をホース格納ボックス11から引出し、放水ホース16の先端に接続された放水器19を火災発生箇所に向けて、開閉バルブ20を開き、放水を開始する。
【0015】
図1および図2は、前記放水器19の先端部に螺着された放水用ノズル装置21を示し、給水を受けるノズル取付基体22と、このノズル取付基体22の中央部から突設されて水を噴出する中央ノズル筒体23と、中央ノズル筒体23の周囲においてノズル取付基体22から突設されて水を噴出する複数の周囲ノズル筒体24とを具備している。
【0016】
図3にも示されるように、中央ノズル筒体23および周囲ノズル筒体24には、ノズル取付基体22側に回動工具と係合可能な6角部25が形成され、これらの6角部25の側面に直径方向に穿設されて外部の空気を内部に吸込む空気吸込孔26を備えたものである。
【0017】
中央ノズル筒体23の噴出孔27は、周囲ノズル筒体24の噴出孔28より大口径に形成されている。
【0018】
ノズル取付基体22の外側面には、1対の回動工具係合面29が形成されている。
【0019】
図2に示されるように、ノズル取付基体22には、放水器19に接続されるネジ部31が形成され、反対側の面には中央を頂点とする傾斜面32が形成され、中央のネジ穴33に対して、周囲のネジ穴34は、外側へ開く方向に向かって傾斜した状態に形成されている。
【0020】
中央のネジ穴33には中央ノズル筒体23のネジ部35が螺着され、周囲のネジ穴34には、周囲ノズル筒体24のネジ部36が螺着されている。これにより、周囲ノズル筒体24は、先端に向かって中央ノズル筒体23から離反する方向に傾斜されている。
【0021】
ノズル取付基体22の中央部には、中央ノズル筒体23側から給水側に向かって拡開状のテーパ穴37が設けられている。
【0022】
このテーパ穴37に臨む中央ノズル筒体23の給水側の孔38より、先端側の噴出孔27は大径に形成され、同様に、各周囲ノズル筒体24の給水側の孔39より先端側の噴出孔28は大径に形成されている。
【0023】
そして、中央ノズル筒体23および各周囲ノズル筒体24の各空気吸込孔26は、大径の噴出孔27,28のうち、小径の孔38,39に近接する位置に開口されている。
【0024】
このような放水用ノズル装置21は、消火用に限らず、洗浄機における洗浄用ノズル装置として用いても良い。
【0025】
次に、この実施の形態の作用効果を説明する。
【0026】
ノズル取付基体22内から中央ノズル筒体23内および複数の周囲ノズル筒体24内に、毎分12リットル以上の水道水を供給すると、それらの小径の孔38,39より大径の噴出孔27,28へと移行する水流が膨張するので、この膨張水流に空気吸込孔26から外部の空気が効率よく吸込まれ、多量の気泡を含んで「砕け散り状態」となった複数条の気液混合水流が、中央ノズル筒体23および複数の周囲ノズル筒体24から放出される。このような水流は、消火や洗浄に必要な増勢を有している。
【0027】
特に、中央ノズル筒体23および複数の周囲ノズル筒体24の内部を流れるそれぞれの水流が空気吸込孔26から外部の空気を内部に効率よく吸込むので、中央ノズル筒体23から噴出された多量の気泡を含み親水性の増した中央の気液混合水流を中心に、複数の周囲ノズル筒体24から噴出された多量の気泡を含み親水性の増した複数条の気液混合水流を合わせた合成水流により、消火や洗浄に必要な増勢を確保でき、効果的な消火活動や洗浄効果が得られる。
【0028】
すなわち、水流中に多量の気泡を含むことで、少ない水量でも流速は大きくなり、大幅な節水効果と、放水距離とを得られる。
【0029】
さらに、消火の場合は、無数の微細な気泡を含むことで、水の表面積が大きくなり、その分、高温の消火対象物から気化熱を奪う面積が大きくなるので、消火効果が大きくなる。
【0030】
一方、洗浄の場合は、水流中に多量の気泡を含むことで、少ない流量でも流速は速くなり、大きな打力を得ることができるので、水の打力による物理的な洗浄効果が大きくなる。
【0031】
周囲ノズル筒体24より大口径に形成された中央ノズル筒体23からは、周囲ノズル筒体24より多量の気液混合水流を放出できるので、この中央の気液混合水流の先導作用により、消火や洗浄に必要な増勢を確保でき、効果的な消火活動や洗浄効果が得られる。
【0032】
ノズル取付基体22は、少なくとも中央ノズル筒体23側から給水側に向かって拡開状のテーパ穴37を備えたので、このノズル取付基体22からテーパ穴37を経て少なくとも中央ノズル筒体23に効率よく水流を案内できる。
【0033】
周囲ノズル筒体24は、先端に向かって中央ノズル筒体23から離反する方向に傾斜されたので、消火や洗浄に必要な放水範囲を確保できる。
【0034】
本発明は、消火や洗浄に用いる放水用ノズル装置に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る放水用ノズル装置の一実施の形態を示す斜視図である。
【図2】同上ノズル装置の断面図である。
【図3】同上ノズル装置の中央ノズル筒体の一部を破断した断面図である。
【図4】同上ノズル装置の応用例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0036】
21 放水用ノズル装置
22 ノズル取付基体
23 中央ノズル筒体
24 周囲ノズル筒体
26 空気吸込孔
37 テーパ穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水を受けるノズル取付基体と、
このノズル取付基体の中央部から突設されて水を噴出する中央ノズル筒体と、
中央ノズル筒体の周囲においてノズル取付基体から突設されて水を噴出する複数の周囲ノズル筒体とを具備し、
中央ノズル筒体および周囲ノズル筒体は、側面に穿設されて外部の空気を内部に吸込む空気吸込孔を備えた
ことを特徴とする放水用ノズル装置。
【請求項2】
中央ノズル筒体は、周囲ノズル筒体より大口径に形成された
ことを特徴とする請求項1記載の放水用ノズル装置。
【請求項3】
ノズル取付基体は、少なくとも中央ノズル筒体側から給水側に向かって拡開状のテーパ穴を備えた
ことを特徴とする請求項1または2記載の放水用ノズル装置。
【請求項4】
周囲ノズル筒体は、先端に向かって中央ノズル筒体から離反する方向に傾斜された
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の放水用ノズル装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−291699(P2009−291699A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−146814(P2008−146814)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【特許番号】特許第4361590号(P4361590)
【特許公報発行日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(598069227)中央理化工業株式会社 (6)
【出願人】(508168066)イーシーテクノ株式会社 (2)
【Fターム(参考)】