説明

消火装置

【目的】消火ノズルを素早く移動させて、消火活動を速やかに行なうことである。
【構成】消火ノズル10を移動させる移動機構4と、室内の壁面等の各所に設けられている複数の固定温度センサ1a,2a,3a,…と、消火ノズル10と共に移動するように設けられている移動温度センサ14と、複数の固定温度センサ1a,2a,3a,…からの信号に基づき、消火ノズル10の移動経路を算出すると共に、消火ノズル10の移動の結果得られる移動温度センサ14からの信号に基づき、先に算出した前記移動経路を順次補正し、補正された前記移動経路を順次移動機構4に指示する制御装置50とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、消火ノズルを移動させて消火を行なう消火装置に関する。
【0002】
【従来の技術】消火装置としては、例えば、スプリンクラーシステムがある。これは、建物全体にわたる広域消火ができるので大形ホテルやデパートでは広く普及している。しかし、建物が水浸しになる上、火点以外にも放水されて備品が使用不能になる場合等によって火災以上の被害になることもある。また、小形消火器も普及しているが人手にたよらざるをえず、素人が使用する場合は沈着な行動ができないことが心配される。
【0003】このため、火点を捜し出し、そこを積極的に消火する消火ロボットが開発されてきている。この種の消火装置として、特開昭58−32781号公報に記載されたものがある。この消火装置は、室内をマトリックス状に分割して、分割したそれぞれの所に火災センサを設け、各火災センサから得られる情報に基づき、火点を決めて、そこに消火ノズルを移動させて、消火を行なうというものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】一般的に、室内における火災では、室内の1ヶ所が集中的に燃える場合のほか、室内の複数箇所が燃える場合もある。また、消火装置の設けられている隣室に火災が発生し、消火装置が設けられている室内の温度が上昇することもある。このような場合、前記従来の消火装置では、火点の決定が遅れるか、または決定できないという事態になり、消火活動が遅れてしまうという問題点がある。
【0005】本発明は、このような従来の問題点について着目してなされたもので、消火ノズルを素早く移動させて、消火活動を速やかに行なうことができる消火装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するための消火装置は、消化剤を噴出するノズルと、前記ノズルを移動させる移動機構と、室内の壁面等の各所に設けられている複数の固定火災検知器と、前記ノズルと共に移動するように設けられている移動火気検知器と、複数の前記固定火災検知器および前記移動火災検知器とからの信号に基づき、前記ノズルの目標位置を算出する目標位置算出手段と、前記目標位置算出手段により、目標位置が算出できた場合には、該目標位置への移動経路を前記移動機構に指示し、前記目標位置が算出できなかった場合には、目標位置を見出すための探索移動経路を前記移動機構に指示する指示手段とを備えていることを特徴とするものである。また、前記目的を達成するための他の消火装置は、消化剤を噴出するノズルと、複数の駆動軸を有し、複数の自由度を持たせて前記ノズルを移動させる移動機構と、室内の壁面等の各所に設けられている複数の固定火災検知器と、前記ノズルと共に移動するように設けられている移動火気検知器と、複数の前記固定温度検知器および前記移動火災検知器からの信号に基づき、複数の前記駆動軸のうち一の駆動軸の目標駆動量を決定して、該目標駆動量を前記移動機構に指示し、前記ノズルの移動の結果得られる前記移動火災検知器および複数の前記固定火災検知器からの信号に基づき、複数の前記駆動軸のうち目標駆動量を決定していない駆動軸の目標駆動量を逐次決定して、前記移動機構に指示する指示手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0007】また、前記目的を達成するためのさらに他の消火装置は、消化剤を噴出するノズルと、前記ノズルを移動させる移動機構と、室内の壁面等の各所に設けられている複数の固定火災検知器と、前記ノズルと共に移動するように設けられている移動火災検出器と、複数の前記固定火災検知器からの信号に基づき、前記ノズルの移動経路を算出すると共に、前記ノズルの移動の結果得られる前記移動火災検知器からの信号に基づき、先に算出した前記移動経路を順次補正し、算出された、および補正された前記移動経路を順次前記移動機構に指示する指示手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0008】ここで、前記固定火災検知器および前記移動火災検知器は、通常の温度センサでもよいが、赤外線センサなどを用いてもよい。
【0009】なお、以上の消火装置において、前記指示手段は、移動温度検知器が前記消火剤噴出温度を超える特定の温度を検知したときに、特定の消火動作を行なうための移動経路を指示するようにしてもよい。具体的には、移動機構がノズルを円弧運動させる機能がある場合、前記特定の温度を検知した時点で、円弧の大きさを変えるとか、円弧運動の周期を変えること等である。また、前記各消火装置に、前記移動温度検知器が、予め定められた特定の温度を検出したとき、外部に対して警報を発する警報手段を設けてもよい。ここで、外部とは、消防署や建物のガス源システム等、火災が発生した際に、何らかの対処等をすべきところである。また、前記各消火装置に、前記移動温度検知器が検知した温度に応じて、前記ノズルの移動速度を変えるよう、前記移動機構に指示する速度指示手段を設けてもよい。さらに、前記各消火装置に、室内において、前記ノズルを移動させない領域、または移動可能な領域を記憶しておく記憶手段を設け、前記経路指示手段が、前記移動させない領域を避けて、または前記移動可能な領域内において、前記ノズルの移動経路を求め、該移動経路を前記移動機構に指示するようにしてもよい。このようにすることにより、例えば、室内の決められた場所に、家具等が固定的に設けられている場合、ここを避けてノズルが移動することができるので、消火活動をよりスムーズに行なうことができる。
【0010】また、前記目的を達成するためのさらに他の消火装置は、消火剤を噴出するノズルと、予め定めた、火災発生の可能性が高い箇所に、前記ノズルを移動させる移動機構と、前記火災発生の可能性が高い箇所近傍に設けられている火災検知器と、前記火災検知器が火災を検知すると、前記移動機構に前記ノズルの移動を指示する指示手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0011】
【作用】室内の温度が上昇してくると、固定温度検知器および移動温度検知器がこれを検知し、指示手段が、これらの検知器からの信号に基づき、消火ノズルの移動経路を決定し、これを移動機構に指示する。移動機構は、この指示に従って、消火ノズルを移動させる。移動経路は、固定温度検知器および移動温度検知器から逐次得られるデータに基づいて、補正される。具体的には、火災が発生した場合、固定温度検知器および移動温度検知器からのデータにより、火点と思われる方向に消火ノズルが近づくよう、指示手段が移動経路を決定する。消火ノズルの移動に伴い、移動温度検知器からのデータにより、火点位置が次第に正確に判明してくるため、このデータに基づき、移動経路を逐次補正して行き、消火ノズルをできるだけ早く火点に向かわせるようにする。火点が不明である場合には、この火点を捜す探索動作をして、火点を捜し出し、このデータに基づいて移動経路が補正される。
【0012】移動温度検知器が、予め定められている消火剤噴出温度を検知すると、消火ノズルから消火剤が噴出されて消火が行なわれる。
【0013】このように、固定温度検知器および移動温度検知器からのデータにより、消火ノズルの移動経路を逐次決定して、この補正されて行く移動経路に従って消火ノズルを移動させているので、固定温度検知器の数量が不足して火点の特定が不十分であったり、火災の拡大により室内の温度分布が複雑であったり、家具や他の設備等の遮られた所に火点がある場合でも、移動温度検知器が固定温度検知器の数量や配列に起因する問題を補い、消火ノズルを火点に対して正確にかつ素早く移動させて、消火活動を速やかに行なうことができる。
【0014】また、火災発生の可能性が高い箇所近傍に火災検知器を設けたものでは、そこで火災が発生すると、消火ノズルは、直ちに移動機構により、火災発生の可能性が高い箇所に移動させられるので、消火活動を速やかに行なうことができる。
【0015】
【実施例】以下、本発明に係る消火装置の各種実施例について、図1から図11に基づき説明する。なお、各種実施例を説明するにつき、同一部位には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0016】消火装置の第1の実施例について、図1から図8に基づき説明する。本実施例は、図1に示すように、消火装置をホテルの個室に適用した例である。 図1R>1において、1a,1b,…は天井に配置した固定温度センサ、2a,2b,…は壁に水平方向に並べて配置した固定温度センサ,3a,3b,3cは壁に鉛直方向に並べて配置した固定温度センサである。なお、天井に設けられている固定温度センサ1a,1b,…は、図3に示すように、円弧をなすように、配置されている。また、4は消火ロボット本体で、10は消火ノズル、9は消火ノズル10を旋回させるための手首、8は手首9を揺動させるための腕、7は腕8を旋回させるための旋回部、5は本体を固定レール6に沿って移動させる走行部、11は消火剤を消火ノズルに導くフレクシブルホース、12はフレクシブルホース11の途中に設けられたロータリージョイントである。フレクシブルホース11の一端は、図示されていない消火ボンベとつながっている。14は、手首9の先端に設けられている移動温度センサである。また、50は消火ロボット本体4の動作等を制御するための制御装置である。
【0017】ここで、制御装置50の構成について、図2R>2を用いて説明する。同図において、51は制御装置50自身および消火ロボット本体4を制御するためのプログラム等が記憶されているメモリ、52は各種処理を行なうCPU、53および54はそれぞれ消火ロボット4の各駆動軸の制御量等を演算するための掛算器、割算器、58はロボット入出力装置、59は温度センサ入出力装置、60は外部の周辺機器との信号の入出力を行なう周辺入出力装置、55,56,57はインタフェイス回路である。
【0018】ロボット入出力装置58は、消火ロボット4における、消火剤の噴出を制御する制御弁67と、手首軸9a,…と、腕軸8aと、旋回軸7aと、走行軸5aとつながっている。これらの各軸には、軸の駆動量を検出する検出器が接続されており、この検出器からの出力は制御装置50にフィードバックされるようになっている。また、周辺入出力装置60は、火災警報システム61と、電源システム62と、ガス源システム63とつながっており、これらは、それぞれ、通報設備64、電力遮断器65、ガス管ソレノイド弁66とつながっている。なお、本実施例において、目標位置算出手段、経路指示手段、噴出指示手段、および速度指示手段は、制御装置50により構成されている。
【0019】次に、本実施例の消火装置の動作について、図4から図7に示すフローチャートに従って説明する。なお、このフローチャートは、制御装置50の動作を表している。
【0020】室内の温度は、固定温度センサ1a,1b,…、固定温度センサ2a,2b,…、固体温度センサ3a,3b,3c、および移動温度センサ14で、常時、測定されている(ステップ1)。温度測定中に、室内の温度が50℃を超えた場合には(ステップ2)、固定温度センサ1a,1b,…のうち、温度傾斜が最も高い位置までの距離l(現在の消火ノズルの位置からの距離)を計算する(ステップ3)。次に、得られた距離lから、以下に示す(数1)を用いて、消火ノズル10の移動速度V1を求め、この移動速度V1を得るために必要な各軸の駆動量を各軸に出力する(ステップ4)。
1∝(tm−tt)l・・・・・・・・・(数1)
なお、(数1)において、tmは固定温度センサのうち最も高い温度を示すセンサから出力される温度で、ttは移動温度センサ14が示す温度である。
【0021】ステップ4では、温度情報が限られており、正確な目標位置の判断ができないことがあるため、全ての駆動軸に対して、駆動量を出力できないことがある。そこで、まず最初は、少なくとも走行軸5aに対して駆動量を出力することとなり、消火ロボット本体4は、とりあえず、火点と思われる方向に走行を開始する。具体的には、図1に示す状態において、例えば、固定温度センサ1a,1b,1cのいずれかが最高温度を示したときには、消火ロボット本体4は窓側に走行を開始し、固体温度センサ1g,1h辺りが最高温度を示したときには入口側に走行を開始することになる。
【0022】ステップ5では、腕軸8aに駆動量が出力されたか否かを判断し、出力されていない場合にはステップ9に進み、出力されている場合には、旋回軸7aに駆動量が出力されたか否かを判断する(ステップ6)。旋回軸7aに駆動量が出力されている場合にはステップ14に進み、出力されていない場合には、固定温度センサ1a,1b,…、固定温度センサ2a,2b,…からのデータから、旋回軸7aの駆動量である旋回角を求め(ステップ7)、目標位置の方向を求めて(ステップ8)、ステップ4に戻り、旋回軸7aの駆動量の駆動量を出力する。ステップ5において、腕軸8aに駆動量が出力されていないと判断されたときには、全ての固体温度センサ1a,2a,3a,…からのデータを用いて、Z軸方向の目標量を求める。Z軸方向の目標量を求める際には、図10に示すように、全ての固体温度センサ1a,2a,3a,…のZ軸方向の座標値を展開して、これからZ軸方向の目標量を求めることになる。
【0023】しかし、現実には、全ての固定温度センサ1a,2a,3a,…からのデータからでもZ軸方向の目標量を定めることができないことがあるため、ステップ10において、Z軸方向の目標量を求めることができたか否かを判断する。Z軸方向の目標量を求められなかった場合には、火災を消火するための消火ノズル10の目標位置を決定するため、探索動作を開始する(ステップ11)。探索動作は、走行軸5aおよび腕軸8aを駆動して、手首9に設けられている移動温度センサ14を動かして行なう。目標位置は、この探索動作で、移動温度センサ14も含めた、全ての温度センサのうち、最も高い値を示したセンサの位置に決定する。 目標位置が決定されると、消火ノズル10の現在位置と目標位置との距離lを求め(ステップ12)、目標位置の方向を求めて(ステップ13)、再び、ステップ4に戻り、腕軸8aに駆動量を出力する。このように、固定温度1a,2a,3a,…および移動温度センサ14からのデータから、少なくとも1の駆動軸の駆動量を求めて、直ちにこの駆動量で該当する駆動軸を駆動させて消火ノズル10を移動させ、移動の結果得られる固定温度1a,2a,3a,…および移動温度センサ14からのデータから、残りの駆動軸の駆動量を逐次求め、消火ノズル10を移動させているので、消火ノズル10を素早くかつ正確に火点に近付けることができる。
【0024】ステップ14では、移動温度センサ14が60℃を超えているか否かを判断する。60℃を超えていなければ、ステップ21に進み、60℃を超えていれば、制御弁67に消火剤噴出を指示する(ステップ15)。この指示により、制御弁67が駆動して、消火ノズル10から消火剤の噴出が開始される。そして、消火のためのノズル10の円弧軌道を計算して、その計算結果から各駆動軸に駆動量を出力する(ステップ16)。このとき、消火ノズル10は、大きな円弧運動を行ないつつ、火点に向かって消火剤を噴出している。
【0025】ステップ17では、移動温度センサ14が80℃を超えたか否かを判断する。80℃を超えていなければ、ステップ14における判断のときと同様に、ステップ21に進み、80℃を超えていれば、以下に示す(数2)を用いて、消火ノズル10の新たな移動速度V2を求め、この移動速度V2を得るために必要な各軸の駆動量を各軸に出力する(ステップ18)。
2=(150−tt)V1/70・・・・・・・・・(数2)
新たな移動速度V2は、移動温度センサ14が示す温度が高くなるほど、つまり、消火ノズル10が火点に近づくにつれて、遅くなる値を示すことになる。
【0026】ステップ19では、移動温度センサ14が150℃を超えたか否かを判断する。150℃を超えていなければステップ21に進み、150℃を超えていれば、走行軸5aおよび腕軸8aに停止指令を出力すると共に、火災警報システム61、電源システム62、ガス源システム63に警報信号を出力する(ステップ20)。このとき、火災警報システム61は、通報設備64に対して警報信号を出力し、そこからホテル内の各室、フロントや消防署等に火災発生の旨の警報を発することになる。また、電源システム62は、特定の電力遮断器65に対して電力遮断を指示し、ガス源システム63は、ガス管ソレノイド弁66に対してガス遮断を指示し、火災発生時に適切な状態にする。その後、ステップ14に戻り、同様の動作を繰り返す。
【0027】ステップ14、ステップ17、ステップ19において、各判断基準温度(60℃、80℃、150℃)を超えていないと判断したときには、消火ノズル10が目標位置に達したか否かを判断する(ステップ21)。目標位置に達していなければ、ステップ4に戻り、目標位置に達していれば、一旦、走行軸5aおよび腕軸8aに停止指令を出力した後(ステップ22)、探索動作指令を出力する(ステップ23)。この探索動作中、移動温度センサ14が示す温度が50℃を超えている箇所があれば(ステップ22)、再びステップ14に戻り、50℃を超えている箇所がなければ、全ての固定温度センサのうち50℃を超えているものが有るかを判断する(ステップ25)。50℃を超えているものがあれば再びステップ2に戻り、50℃を超えているものがなければ制御弁67に対して消火剤噴出停止指令を出力した後(ステップ26)、初期位置への移動指令を出力する。
【0028】以上に説明したように、本実施例では、固定温度センサから得られたデータにより、直ちに、火点と思われる方向に移動を開始し、消火ノズルの目標位置が不明である場合には、火点の探索動作を行なって火点を捜し出すので、消火ノズルを火点に対して素早く、かつ正確に移動させることができるので、消火活動を速やかに行なうことができる。なお、本実施例において、Z軸方向の目標量が不明のときに、探索動作をするようにしたが、X軸方向、Y軸方向の目標量が不明のときにも、探索動作をするようにしてもよい。
【0029】次に、消火装置の第2の実施例について、図9および図10を用いて説明する。 本実施例は、図9R>9に示すように、可燃物が収納されている倉庫に消火装置を適用した例である。可燃物が収納される倉庫は、消防法による構造上の制約がある。そこで、消火装置を備えることにより、消防法による構造上の制約を緩和し、可燃物を使用に最も便利な所に、しかもスペース的に有利な位置に収納することを狙っている。
【0030】図9において、1a,1b,…は天井に配置した固定温度センサ、3a,3b,…は壁等に水平方向に並べて配置した固定温度センサ,3a,3b,3cは壁に鉛直方向に並べて配置した固定温度センサである。4aは消火ロボット本体で、10は消火ノズル、9は消火ノズル10を旋回させるための手首、8fは手首9を揺動させるための第2腕、8eは第2腕8fを揺動させるための第2腕、7は第1腕8eを旋回させるための旋回部、30は本体を天井に取付ける固定ベース、11は消火剤を消火ノズルに導くフレクシブルホース、12はフレクシブルホース11の途中に設けられたロータリージョイントである。フレクシブルホース11の一端は、図示されていない消火ボンベとつながっている。14aは、手首9の先端に消火ノズル10の先端よりも突出するように設けられている移動温度センサである。消火ロボット本体4の動作等を制御するための制御装置は、図示されていないが倉庫外に設けられている。なお、この制御装置の基本的構成は、第1の実施例と同様であるが、メモリには、倉庫内において消火ノズル10が移動できる移動可能領域が記憶されている。また、31は石油類、32は紙束、33は雑貨類の入ったダンボール、24はフトン類である。
【0031】次に、図10に示す概略フローチャートに従って、本実施例の動作について説明する。まず、旋回部7の旋回軸への動作信号は、消火ロボット本体4aのまわりに配置された固定温度センサ1a,1b,…の温度傾斜の最も高い所に消火ノズル10が向かうよう出力される。次に、固定温度センサ3a,3b,…の温度傾斜の最も高い所に消火ノズル10が向くように、第1腕8eの軸および第2腕8fの軸に動作信号が出力される。第1腕8eおよび第2腕8fは、初期位置においては折りたたまれて天井近くに収められており、第1腕8eおよび第2腕8fは、運動しながら下降し、手首9および消火ノズル10を下降させる。このとき、手首9に設けられている移動温度センサ14aにより、正確に火点を探索して求める。図9におけるXY平面上における火点の位置しか判明していない場合には、固定ベース30からの半径方向への探索動作を行なうことになる。消火ノズル10の下降経路は、制御装置のメモリに記憶されている移動可能領域に基づき、積荷と積荷との間に消火ノズル10および移動温度センサ14aが入るように、定められている。
【0032】移動温度センサ14が60℃を超えれば消火剤が噴出され、下降するに従って温度上昇する場合には150℃に達するまで下降する。下降するに従って温度降下する場合、60℃以下に降下したときには、火点は別の所にあると判断して上昇し、異なる積荷と積荷との間に下降し、再び探索動作をする。最終的には、移動温度センサ14の温度が40℃以下になった場合には、消火剤の噴出を停止して、初期位置に戻る。
【0033】なお、本実施例においても、第1の実施例と同様に走行用のレールを設けてもよい。但し、逆に、第1の実施例のようにホテルの個室に適用する場合には、消火ノズル10を腕のみで大きく移動させるようにすると、腕の長さが長くなり、見栄えが悪くなるので、腕のみで大きく移動させることは避けた方が良いと思われる。
【0034】次に、図11に基づき、消火装置の第3の実施例について説明する。 本実施例は、図11に示すように、厨房等、火気をよく用いる箇所に消火装置を適用した例である。図11において、2a,2bは壁に設置された固定温度センサ、4bは消火ロボット本体、7cは消火ロボット本体4bの旋回部、8gは腕、9は手首、10は手首8gの先端に設けられている消火ノズル、40は消火ロボット本体4bを壁に対して傾いた状態で支持する固定ベース、43は粉末消火剤が入っている消火ボンベ、11は消火ボンベ43内の消火剤を消火ノズル10に供給するためのフレキシブルホース、46はアラーム、44,45はそれぞれガスコンロである。 固定ベース40には、消火ノズル10がガスコンロ44,45の方向に向くよう、旋回部7cの旋回角度を規制するストッパ41が設けられている。腕8gは、円柱状を成し、旋回部7cから出没可能に形成されており、その上端部には腕8gの突出位置を規制するためのストッパ42が設けられている。消火ボンベ43とフレキシブルホース11との接続部には、図示されていないが消火剤の噴出を制御する制御弁が設けられている。固定温度センサ2a,2bは、火災発生の可能性が高いガスコンロ44,45の近傍に設けられている。なお、消火ロボット本体4bの動作指示等の制御を行なうシーケンス回路は、図示されていないが、消火ロボット本体4の各駆動軸およびアラーム46等と接続されている。
【0035】次に、本実施例の動作について説明する。固定温度センサ2a,2bのいずれかが50℃を越えるとアラーム45が鳴り響く。次に、固定温度センサ2a,2bのいずれかが60℃を越えると、高い温度センサの方に旋回部7cが旋回し、これがストッパ41に当たると、旋回部7cはそこで停止する。このとき、消火ノズル10は火災が発生したと思われるガスコンロの方に向いている。なお、いずれの固定温度センサ2a,2bも60℃を超えているときには、ストッパ41で規制されている範囲内で、旋回部7cは揺動する。次に、腕8gが下方に移動し、ストッパ42がベース40の所定位置に当ると、腕8gの降下が停止する。そして、シーケンス回路からの指示により、制御弁が駆動し、消火剤が消火ノズル10から噴出して、消火が行なわれる。固定温度センサ2a,2bのいずれもが40℃以下になれば消火ノズル10からの消火剤の噴出は停止する。これら一連の動作は、シーケンス回路によってオンオフ制御で行なわれている。 消火活動が終了した時点で、腕8を上方に戻すのは、自動的に行なうようにしてもよいが、ここでは装置の小型化、低コスト化を実現するために、手動で行なうようにした。以上のように、本実施例では、火災を検知した場合には、火災発生の可能性の高いガスコンロ44,45の所に、消火ノズル10が直ちに移動するので、速やかな消火活動を行なうことができる。
【0036】以上、本発明に係る各種実施例について説明したが、温度センサの異常やいたずらによる消火剤の噴出を防止するため、温度センサからのデータをあらかじめ定められた方法によって分析することで、1箇の固定温度センサのみによって動作しないよう構成するとよい。また、各種実施例において、火災検知器として、温度センサを用いたが、これは、熱電対又はサーモスタット等でもよく、さらに、火点の位置をある程度検出できるものであれば、赤外線センサ、カラー映像装置等を用いてもよい。また、以上各種実施例では、消火装置をホテル、倉庫、厨房に適用したものを説明したが、この他、ガソリンスタンド、オフィス、プラント等の建築物や航空機や宇宙機なども、本発明に係る消火装置を適用してもよい。
【0037】
【発明の効果】本発明によれば、固定温度検知器および移動温度検知器からのデータに基づき、消火ノズルの移動経路を逐次決定して、この補正されて行く移動経路に従って消火ノズルを移動させているので、消火ノズルを火点に対して正確にかつ素早く移動させることができ、消火活動を速やかに行なうことができる。
【0038】また、火災発生の可能性が高い箇所近傍に火災検知器を設けたものでも、そこで火災が発生すると、消火ノズルは、直ちに移動機構により、火災発生の可能性が高い箇所に移動させられるので、消火活動を速やかに行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る第1の実施例の消火装置の全体斜視図である。
【図2】第1の実施例における制御装置の回路ブロック図である。
【図3】第1の実施例における固定温度センサの配置を示すための説明図である。
【図4】本発明に係る第1の実施例の消火装置の動作を示すためのフローチャートである。
【図5】本発明に係る第1の実施例の消火装置の動作を示すためのフローチャートである。
【図6】本発明に係る第1の実施例の消火装置の動作を示すためのフローチャートである。
【図7】本発明に係る第1の実施例の消火装置の動作を示すためのフローチャートである。
【図8】本発明に係る第1の実施例のZ軸方向の目標量の決定を説明するための説明図である。
【図9】本発明に係る第2の実施例の消火装置の全体斜視図である。
【図10】本発明に係る第2の実施例の消火装置の動作を示すためのフローチャートである。
【図11】本発明に係る第3の実施例の消火装置の全体斜視図である。
【符号の説明】
1a,2a,3a…固定温度センサ、4,4a,4b…消火ロボット本体、6…固定レール、7,7c…旋回部、8,8g…腕、8e…第1腕、8f…第2腕、9…手首、10…消火ノズル、11…フレクシブルホース、12…ロータリジョイント、14…移動温度センサ、30,40…固定ベース、43…消火ボンベ、46…アラーム、50…制御装置、51…メモリ、52…CPU、53…掛算器、54…割算器、61…火災警報システム、62…電源システム、63…ガス源システム、67…制御弁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】消化剤を噴出するノズルと、前記ノズルを移動させる移動機構と、室内の壁面等の各所に設けられている複数の固定火災検知器と、前記ノズルと共に移動するように設けられている移動火気検知器と、複数の前記固定火災検知器および前記移動火災検知器とからの信号に基づき、前記ノズルの目標位置を算出する目標位置算出手段と、前記目標位置算出手段により、目標位置が算出できた場合には、該目標位置への移動経路を前記移動機構に指示し、前記目標位置が算出できなかった場合には、目標位置を見出すための探索移動経路を前記移動機構に指示する指示手段とを備えていることを特徴とする消火装置。
【請求項2】消化剤を噴出するノズルと、複数の駆動軸を有し、複数の自由度を持たせて前記ノズルを移動させる移動機構と、室内の壁面等の各所に設けられている複数の固定火災検知器と、前記ノズルと共に移動するように設けられている移動火気検知器と、複数の前記固定温度検知器および前記移動火災検知器からの信号に基づき、複数の前記駆動軸のうち少なくとも一の駆動軸の目標駆動量を決定して、該目標駆動量を前記移動機構に指示し、前記ノズルの移動の結果得られる前記移動火災検知器および複数の前記固定火災検知器からの信号に基づき、複数の前記駆動軸のうち目標駆動量を決定していない駆動軸の目標駆動量を逐次決定して、前記移動機構に指示する指示手段とを備えていることを特徴とする消火装置。
【請求項3】消化剤を噴出するノズルと、前記ノズルを移動させる移動機構と、室内の壁面等の各所に設けられている複数の固定火災検知器と、前記ノズルと共に移動するように設けられている移動火災検出器と、複数の前記固定火災検知器からの信号に基づき、前記ノズルの移動経路を算出すると共に、前記ノズルの移動の結果得られる前記移動火災検知器からの信号に基づき、先に算出した前記移動経路を順次補正し、算出された、および補正された前記移動経路を順次前記移動機構に指示する指示手段とを備えていることを特徴とする消火装置。
【請求項4】前記固定火災検知器が、室内の壁面等の各所に設けられている固定温度検知器であり、前記移動温度検知器が、前記ノズルと共に移動するよう設けられている移動温度検知器であることを特徴とする請求項1、2または3記載の消火装置。
【請求項5】前記移動温度検知器が予め定められている消火剤噴出温度を検知したときに、前記ノズルからの消火剤の噴出を指示する噴出指示手段とを備えていることを特徴とする請求項4記載の消火装置。
【請求項6】前記指示手段は、前記移動温度検知器が前記消火剤噴出温度を超える特定の温度を検知したときに、特定の消火動作を行なうための移動経路または駆動量を指示することを特徴とする請求項4または5記載の消火装置。
【請求項7】前記移動温度検知器が、予め定められた特定の温度を検出したとき、外部に対して警報を発する警報手段を備えていることを特徴とする請求項4、5または6記載の消火装置。
【請求項8】前記移動温度検知器が検知した温度に応じて、前記ノズルの移動速度を変えるよう、前記移動機構に指示する速度指示手段を備えていることを特徴とする請求項4、5、6または7記載の消火装置。
【請求項9】前記室内において、前記ノズルを移動させない領域、または移動可能な領域を記憶しておく記憶手段を備え、前記指示手段は、前記移動させない領域を避けて、または前記移動可能な領域内において、前記ノズルの移動経路を求め、該移動経路または前記ノズルが該移動経路を通るための前記移動機構の駆動量を、前記移動機構に指示することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7または8記載の消火装置。
【請求項10】消火剤を噴出するノズルと、予め定めた、火災発生の可能性が高い箇所に、前記ノズルを移動させる移動機構と、前記火災発生の可能性が高い箇所近傍に設けられている火災検出器と、前記火災検出器が火災を検知すると、前記移動機構に前記ノズルの移動を指示する指示手段とを備えていることを特徴とする消火装置。

【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図8】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図9】
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【図11】
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【図7】
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【図10】
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【公開番号】特開平5−15611
【公開日】平成5年(1993)1月26日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−172624
【出願日】平成3年(1991)7月12日
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000233295)日立湘南電子株式会社 (195)