説明

消火設備

【課題】腐食によるスプリンクラヘッドの水漏れが発生する前に、そのスプリンクラヘッドの腐食状況の悪化を検知できるようにする。
【解決手段】放水口を有するヘッド本体と、該放水口をガスケットを介して塞ぐ弁体とを備えたスプリンクラヘッド3が、配管2に接続される消火設備において;放水口22を有するヘッド本体23と、該放水口22を塞ぐ透明な材料で形成した蓋部材25と、前記放水口22と蓋部材25とにより挟持され、前記スプリンクラヘッドのガスケットよりも薄く形成されたガスケット24と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スプリンクラヘッドが配設されている消火設備に用いられる、水漏れ検出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般ビルや戸建住宅には、消火設備としてスプリンクラヘッドが設置されている。スプリンクラヘッドは、一度建物が竣工してしまうと、その建物が解体されるまではほとんど取り替えることはない。そのため、一度設置すると、何十年という長い期間の間、保守をせずに取り付けられたままとなる。
【0003】
又、スプリンクラヘッドは設置後、建物が取り壊されるまでその機能を保持し、いかなる場合でも火災時には、作動して消火を行わなければならない。そのため、従来のスプリンクラヘッドは、構成部品が耐熱性や耐腐食性に優れたステンレスや青銅等の金属材料で作られている。
【0004】
ところで、スプリンクラ消火設備において、配管を接続する際に、配管や継手部材等を溶接すると、溶接に用いられたフラックスが配管内に残留することがある。このフラックスを除去しないで導水してしまうと、フラックスの化学成分が水に溶けだしてしまう。
【0005】
配管内の水にフラックスの成分が含まれると、スプリンクラヘッドの止圧構造であるメタルパッキンやOリングが溶けてしまい、スプリンクラヘッドから水が漏れるという問題がある。
【0006】
この様なスプリンクラヘッドの腐食の問題を解決するため、スプリンクラヘッドの構成部品を耐腐食性に優れた非金属材料で構成したり(例えば、特許文献1、参照)、又は、配管内に水の代わりに不活性ガスを充填している(例えば、特許文献2、参照)。
【0007】
【特許文献1】特開平11−206907号
【特許文献2】特開平11−262541号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記従来例では、外観からは腐食具合がわからず、実際上は、スプリンクラヘッド自体を配管から取り外してみないと、その腐食状態を確認することはできない。そこで、このスプリンクラヘッドの腐食状態を確認するには、スプリンクラヘッドの取り外しが必要になる
【0009】
しかし、スプリンクラヘッドを取り外す場合には、該スプリンクラヘッドに過度な力が加わる。そのため、点検のため取り外したスプリンクラヘッドは、再使用できないので、新しいものと交換しなければならない。又、日常生活しているスペースにおいてのスプリンクラヘッドの取り外し取り付け作業は、きわめて困難である。そのため、スプリンクラヘッドのシール部分の点検は、事実上できない状況であり、実際に水漏れが発生するまで放置しておくのが現状である。
【0010】
この発明は、上記事情に鑑み、腐食によるスプリンクラヘッドの水漏れが発生する前に、そのスプリンクラヘッドの腐食状況の悪化を検知できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、放水口を有するヘッド本体と、該放水口をガスケットを介して塞ぐ弁体とを備えたスプリンクラヘッドが配管に接続される消火設備において;腐食により生じる水漏れを検出する水漏れ検出器を前記配管に取り付けたことを特徴とする。
【0012】
この発明の水漏れ検出器は、前記ヘッド本体と、該ヘッド本体の放水口をガスケットを介して塞ぐ蓋部材とから構成されることを特徴とする。この発明の蓋部材と前記ヘッド本体の間には、着色塗料が設けられ、水漏れ検出器の蓋部材は透明樹脂で成型されていることを特徴とする。この発明の水漏れ検出器のガスケットは、前記スプリンクラヘッドのガスケットよりも薄いことを特徴とする。この発明のスプリンクラ消火設備は、スプリンクラ配管を戸建住宅に設け、前記水漏れ検出器を前記配管の基端側に設置される水道メータの近傍に取り付けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明は、腐食によって生じる水漏れを検出する水漏れ検出器を前記配管に取り付けたので、該水漏れ検出器で水漏れを検知することにより、スプリンクラヘッドを配管から取り外すことなく、スプリンクラヘッドの腐食状況の悪化を推測できる。即ち、スプリンクラヘッドから生じうる水漏れの危険性を検知することができる。
【0014】
この発明は、放水口を有するヘッド本体と、該放水口をガスケットを介して閉鎖する透明樹脂製の蓋部材と、前記蓋部材と前記ヘッド本体の間に着色塗料を設けたので、水が漏れて着色塗料が該水に溶けることにより、水の色が変わるので、外側から水漏れを確認することができる。
【0015】
又、水漏れ検出器のガスケットは、スプリンクラヘッドのガスケットよりも薄く形成されているので、スプリンクラヘッドから水漏れが発生する前に、配管の腐食状況を知ることができる。
【0016】
水漏れ検出器は、水道メータの近傍に取り付けられるので、戸建住宅内に立ち入ることなく、配管の腐食状況を点検することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本件発明者は、配管に複数のスプリンクラヘッドが配設されていると、腐食による水漏れは、各スプリンクラヘッドで同様に発生すると考えた。そこで、該スプリンクラヘッドと同様のシール構造を有する、水漏れ検出手段を用いれば、該スプリンクラヘッドの腐食による水漏れを推測できると考えた。そこで、具体的な水漏れ検出手段について研究実験を重ね、ヘッド本体と、該ヘッド本体の放水口をガスケットを介して塞ぐ蓋部材とを備えた水漏れ検出器を開発した。
【0018】
この水漏れ検出器では、該蓋部材とヘッド本体の間に着色塗料を設け、蓋部材を透明樹脂で成型すると、水漏れが発生した際に着色塗料が水に溶け着色されるので、外部から容易に水漏れを確認することができる。又、ガスケットの厚さを前記スプリンクラヘッドのガスケットよりも薄くすると、スプリンクラヘッドよりも早く水漏れが発生するので、早期に水漏れを検知することができる。
【実施例】
【0019】
この発明の実施例を図1〜図3に基づいて説明する。
戸建住宅Hに敷設された水道本管1には、第2の止水弁13、水道メータ12が順次設けられ、該水道本管1から配管1aが分岐しており、該配管1aの先端には生活用の給水栓14が設けられている。
【0020】
水道本管1からスプリンクラ配管2が分岐しており、該スプリンクラ配管2には、所定間隔をおいて複数のスプリンクラヘッド3が設けられている。前記スプリンクラヘッド3は、図示を省略するが、放水口を有するヘッド本体と、該放水口をガスケットを介して塞ぐ弁体と、該弁体を支持する感熱分離機構と、を備えている。このスプリンクラヘッド3の上流側には、順次、水漏れ検出器21、流水検知装置5、逆止弁6、第1の止水弁7が配設され、又、その下流側には、順次、定流量弁10、末端給水栓11が設けられている。なお、20は制御盤で、流水検知装置5及び図示しない火災感知器等の火災検知手段に接続されている。
【0021】
水漏れ検出器21は、腐食によって生じる水漏れを検出する手段であり、スプリンクラヘッド3のシール部と同一又は類似の構成部品、即ち、放水口22を有するヘッド本体23と、該放水口22をガスケット24を介して塞ぐ蓋部材25と、を備えている。このように、水漏れ検出器21の本体は、スプリンクラヘッド3とほぼ同等な構成で、かつ若干早期にガスケット24による水漏れが発生するように構成される。なお、水漏れ検出器21は、スプリンクラヘッドと同じヘッド本体23を使用することで、製造が容易になるが、ヘッド本体23については、配管2に接続でき、かつガスケット24が取り付けられる放水口22を有する形状を備えているものであれば、どのような形状のものを使用してもよい。
【0022】
ヘッド本体23の接続部外周には、連結管Cと螺合するねじ部23aが設けられ、放水口22の出口縁部には弁座22aが突設されている。ヘッド本体23の下端部には、拡径取付部23bが設けられ、該取付部23bの内周面には、ねじ部23Cが設けられている。
【0023】
ガスケット24は、例えば、スプリンクラヘッド3のガスケットと同一材料の銅により同形状に形成され、円筒本体24aと、該円筒本体24aの上端面を閉鎖する天板壁24bと、該円筒本体24aの下端縁に連続するフランジ24cと、から構成されている。このガスケット24の厚さは、スプリンクラヘッド3のガスケットの厚さよりも薄く形成されている。
【0024】
蓋部材25は、透明な樹脂により形成され、その外周部には、ねじ部23cと螺合するねじ部25aが設けられ、その上面中央部には、ガスケット24のフランジ24cを押圧する弁体部25bが設けられている。前記弁体部25bの中央部及び該弁体部25bと外周部との間には収納凹部25cが設けられている。この収納凹部25cには水溶性の着色塗料27が収納されている。
【0025】
次に、本実施例の作動について説明する。
ガスケット24が腐食し、弁座22aとフランジ24cとの間に隙間が発生すると、放水口22内の消火水Wは、前記隙間を伝わって収納凹部25cに流入する。そうすると、図2に示すように、収納凹部25c内の着色塗料27が溶けるので、該収納凹部25c内の水は、色、例えば、赤色の付いた水W1になる。
【0026】
蓋部材25は、透明な材料で形成されているので、外部から前記収納凹部25cの水W1を見ることができる。そのため、外部から水漏れを簡単に確認することができる。また、ガスケット24は、スプリンクラヘッド3のガスケットよりも薄く形成されているので、スプリンクラヘッド3よりも早く水漏れが発生する。そのため、早い時期にスプリンクラヘッドの水漏れの可能性を知ることができる。
【0027】
この発明の実施例は、上記に限定されるものではなく、例えば、次の様にしても良い。
(1)水漏れ検出器のガスケットの厚さを、スプリンクラヘッドのガスケットの厚さよりも薄くする代わりに、同一厚さにすること。
【0028】
収納凹部に着色塗料を収容する代わりに、水に触れると変化する材料、例えば、匂いが発生する香料材や、光が発行する発光材料などを収納しても良い。
(3)水漏れ検出器の配設位置は、必要に応じて適宜選択することができる。例えば、a:スプリンクラ配管2のスプリンクラヘッド3と定流量弁10との間、b:スプリンクラ配管2の末端給水栓11の近傍、c:水道本管1の水道メータ12の近傍、などに配設することができる。なお、水道メータ12の近傍に設けると、戸建住宅内に立ち入ることなく配管の腐食状況を点検することができる。
【0029】
(4)水漏れ検出器は、スプリンクラ配管の二次側に常時消火水が充填されている、湿式スプリンクラ消火設備だけではなく、前記二次側に常時圧縮空気や不活性ガスが充填されている乾式スプリンクラ消火設備にも用いることができる。
(5)蓋部材を高さ方向に厚みのあるカップ状に形成してもよい。この場合、蓋部材内に水がたまるので、着色塗料がなくても水漏れの発生を外部から確認することができる。
(6)戸建て住宅でなく一般のビルのスプリンクラ消火設備の配管に水漏れ検出器を取り付けてもよい。この場合、取付位置としては、例えば、流水検知装置や末端試験弁の近傍に設ければよい。このような取付位置だと、定期点検時に、人が立ち入るので、水漏れの検知を行いやすい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施例を示す縦断面図である。
【図2】水漏れ発生時の状態を示す縦断面図で、図1に対応する図である。
【図3】水漏れ検出器の設置状態を示す正面図である。
【符号の説明】
【0031】
22 放水口
23 ヘッド本体
24 ガスケット
25 蓋部材
27 着色塗料
W 水
W1 色の付いた水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放水口を有するヘッド本体と、該放水口をガスケットを介して塞ぐ弁体とを備えたスプリンクラヘッドが配管に接続される消火設備において;
腐食により生じる水漏れを検出する水漏れ検出器を前記配管に取り付けたことを特徴とする消火設備。
【請求項2】
前記水漏れ検出器は、前記ヘッド本体と、該ヘッド本体の放水口をガスケットを介して塞ぐ蓋部材とから構成されることを特徴とする請求項1記載の消火設備。
【請求項3】
前記蓋部材と前記ヘッド本体の間に着色塗料を設け、水漏れ検出器の蓋部材を透明樹脂で成型したことを特徴とする請求項2記載の消火設備。
【請求項4】
前記水漏れ検出器のガスケットは、前記スプリンクラヘッドのガスケットよりも薄いことを特徴とする請求項2、又は、3記載の消火設備。
【請求項5】
前記配管を戸建住宅に設け、前記水漏れ検出器を前記配管の基端側に設置される水道メータの近傍に取り付けたことを特徴とする請求項1、2、3、又は、4記載の消火設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−280637(P2006−280637A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−105139(P2005−105139)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】