説明

消耗電極作製方法および消耗電極作製装置

【課題】航空機用のチタンおよびチタン合金の製造において、段取り作業およびすみ肉溶接の作業に要する時間を短縮できるとともに、すみ肉溶接の作業性に優れる消耗電極作製方法および消耗電極作製装置を提供する。
【解決手段】消耗電極式アーク溶解法により溶解されたインゴット2の端面と電極保持用のスタブ3の端面とを、溶接トーチ7を用い、不活性ガス雰囲気または真空雰囲気で、溶接して再溶解用の消耗電極とする消耗電極作製方法であって、スタブ3における溶接する側の端面におけるスタブ直径が、インゴット2における溶接する側の端面におけるインゴット直径よりも小さく、インゴット2の軸を略水平にした状態で、インゴット2とスタブ3の接合面に押しつけ力を発生させながら、インゴット2とスタブ3とを回転可能に支持し、インゴット2とスタブ3の接合部の周囲をすみ肉溶接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消耗電極式アーク溶解法により溶解されたインゴットと電極保持用のスタブの端面とを溶接して再溶解用の消耗電極とする消耗電極作製方法およびそれに用いる消耗電極作製装置に関し、さらに詳しくは、作業時間を短縮できるとともに、製品欠陥の発生を抑制できる消耗電極作製方法およびそれに用いる消耗電極作製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属チタンの工業的な製法としては、クロール法によりスポンジ状チタンを得るのが一般的である。この場合、スポンジ状チタンから金属チタン塊を得るために、スポンジ状チタンから消耗電極を作製し、消耗電極式真空アーク溶解法(Vacuume Arc Remelting:以下、「VAR法」という)により溶解してインゴットを得る1次溶解を行い、さらに、得られたインゴットを消耗電極としてVAR法により再溶解する2次溶解、あるいは3次溶解を行う。
【0003】
VAR法は、不活性ガス雰囲気または真空雰囲気で、溶解対象となる金属を消耗電極とし、銅製坩堝と一定の間隔をあけてその上方に配置し、消耗電極と銅製坩堝とに電流を流してアーク放電を発生させ、その熱により消耗電極を溶融滴下し、坩堝の中に金属を凝固させてインゴットを形成する方法である。
【0004】
2次溶解および3次溶解に用いられる再溶解用の消耗電極は、VAR法により溶解されたインゴットの端面と電極保持用のスタブの端面とを、溶接トーチを用いて溶接することにより作製するのが一般的である。
【0005】
図1は、VAR法により金属を精製する状態を説明するとともに、電極部直径とスタブ直径との関係を説明する図である。同図(a)は電極部直径とスタブ直径とが等しい場合を示し、同図(b)は電極直径よりスタブ直径が小さい場合を示す。VAR法による金属の溶解に用いられるVAR炉の概略構成を同図(a)および(b)に示す。VAR炉10は、アーク熱により溶解滴下する金属を冷却してインゴットにする銅製坩堝12と、真空吸引口15と、真空雰囲気を維持するVAR炉内チャンバー16と、消耗電極を昇降させる昇降装置14とから構成される。VAR炉10は、図示しないが、VAR炉の上部に炉内状況を確認するための覗き窓を備えている。
【0006】
VAR法による2次溶解または3次溶解を行う際には、図1(a)および(b)に示すように、VAR炉の昇降装置14に電極部11aとスタブ11bとを溶接した消耗電極11を取り付け、真空吸引口15から空気を排出して不活性ガス雰囲気または真空雰囲気とし、消耗電極11と銅製坩堝12の間に電圧を印加する。電圧印加にともない消耗電極11と銅製坩堝12の間にアーク13が発生し、アーク熱により電極部11aが溶解滴下する。銅製坩堝12に滴下した溶融金属は、冷却手段を備えた銅製坩堝12により冷却されて凝固し、インゴット2となる。
【0007】
金属精製にともない電極部11aの溶解滴下が進行すると、電極部11aがすべて溶解滴下した後、スタブ11bが溶解滴下する事態となる。スタブ11bが溶解滴下すると、インゴット2にスタブ成分の混入(コンタミネーション)を来たし製品不良を引き起こすばかりではなく、金属の溶解操業に重大な事故を発生させるおそれがある。一方、消耗電極が多く残存している状態で溶解滴下を停止すると、製品歩留りが悪化する。したがって、VAR法による金属溶解では、溶解操業を停止させる終点時期の判定が重要となる。
【0008】
通常、VAR法による金属溶解が進行して電極部11aの残存が少なくなると、アーク熱が電極部11aの上面に伝導して上面温度が上昇することから、金属精製の終点直前には電極部11aの上面の色が変化する。
【0009】
図1(a)に示すように、電極部11aの直径である電極部直径dpと、スタブ11bの直径であるスタブ直径dsが等しい場合は、VAR炉の上部に備えられた覗き窓から電極部の上面は視認できないので、電極部11aの上面の温度変化を確認することができない。
【0010】
図1(b)に示すように、電極部直径dpよりスタブ直径dsが小さい場合は、覗き窓から電極部の上面を視認できるので、電極部11aの上面の温度変化を確認することができる。したがって、電極部直径dpよりスタブ直径dsを小さくすることにより、VAR法による金属精製において終点判定が容易に行える。さらに、電極部直径dpよりスタブ直径dsが小さい場合は、電極部直径dpとスタブ直径dsとが等しい場合と比べてスタブが小型になるので、溶接の際の溶接線を少なくできるとともに、スタブ保守が容易になる。
【0011】
このため、消耗電極を作製する際には、スタブ直径dsを電極部直径dpより小さくするのが好ましい。通常、この場合に、溶接トーチを用いてインゴットとスタブの溶接が行われ、スタブの方がインゴットより小径であることから、すみ肉溶接となる。
【0012】
一方、航空機の機体部品やエンジン部品に用いられるチタンおよびチタン合金は、プレミアムグレードの品位が要求され、コンタミネーション並びに酸化および窒化の発生を防ぐために、厳しい品質管理が必要となる。そのため、消耗電極を作製する際のインゴットとスタブの溶接では、仮溶接を含むすべての溶接において、雰囲気は不活性ガス雰囲気または真空雰囲気で行うこと、および溶接トーチはタングステン等の高融点金属を含まない溶接トーチを用いることが求められる。
【0013】
従来、これらの雰囲気および溶接トーチの条件を満たす消耗電極の作製方法として、VAR炉でスタブとインゴットを炉内溶接して2次、3次電極を作製する方法と、溶接用のチャンバー内で溶接トーチにより作製する方法が用いられていた。
【0014】
図2は、VAR炉内でインゴットとスタブを溶接し、航空機用のチタンおよびチタン合金の製造に用いる消耗電極を作製する手順を説明する図である。VAR炉10は、前記図1で示したものと同じ構成である。VAR炉内でインゴットとスタブを溶接して消耗電極を作製する場合、図2(a)に示すように、昇降装置14にスタブ3を取り付け、真空吸引口15から空気を排出した後、不活性ガス雰囲気または真空雰囲気下でスタブ3とインゴット2の間に電圧を印加することにより、スタブ3とインゴット2の間にアーク13を発生させる。
【0015】
アーク13が発生する熱によりスタブ3の下面およびインゴット2の上面を溶融させた後、図2(b)に示すように、昇降装置14によりスタブ3を下降させてスタブ3とインゴット2とを接合する。その後、溶融したスタブ3とインゴット2が冷却されて凝固することにより、スタブ3とインゴット2が溶接され、2次、3次用消耗電極を作製することができる。
【0016】
VAR炉内でインゴットとスタブを溶接して消耗電極を作製する場合は、VAR炉内チャンバー16を不活性ガス雰囲気または真空雰囲気とすることにより、前述した航空機用チタンおよびチタン合金に要求される雰囲気条件を満たすことができる。しかし、インゴットとスタブとの溶接の際に、溶融したスタブ3およびインゴット2がスプラッシュを発生し、その一部がインゴット2およびVAR炉内チャンバー16の壁面に付着する。
【0017】
インゴット2およびVAR炉内チャンバー16に付着したスプラッシュは、その後のVAR炉を用いた金属溶解において、インゴットに混入してコンタミネーションを発生させるので、すべて除去する必要がある。このため、インゴット2およびVAR炉内チャンバー16に付着したスプラッシュの除去作業に多大な工数を要するとともに、VAR炉の生産性が低下する。
【0018】
さらに、VAR炉内で消耗電極を作製する場合には、スタブ3を溶融して溶接するのでスタブ3の消耗が激しいとともに、インゴット2の端面に溶融プールを形成した後にスタブ3を前記溶融プールへ挿入して溶接する方法であるため、インゴット2の端面の溶融プール深さまでスタブ3が溶け込んでいる。これが原因となるコンタミネーションの発生を確実に回避するために、インゴットを余分に残して溶解操業を停止する必要があるので、製品歩留りが悪化する。
【0019】
溶接用のチャンバー内で溶接トーチにより溶接する方法として、特許文献1で提案される一次溶解の消耗電極の作製方法を用いることができる。特許文献1には、破砕したスポンジ状チタンを押し固めて円弧を2分割または4分割した扇型状のコンパクトとした後、複数のコンパクトを組み合わせた円柱状のコンパクト群とし、コンパクト群およびスタブの中心に芯棒を通して締め付けることにより拘束し、その後、拘束されたコンパクト群およびスタブを溶接することにより1次溶解用の消耗電極を作成する方法が提案されている。
【0020】
特許文献1に提案される消耗電極の作製方法を用い、2次溶解または3次溶解用の消耗電極を作成する場合は、インゴットおよびスタブの中心に芯棒を通す貫通孔を加工した後、芯棒を締め付けることにより拘束されたインゴットとスタブをチャンバーに収容し、その後、チャンバー内を不活性ガス雰囲気または真空雰囲気にした状態ですみ肉溶接して作製することになる。この作製方法では、インゴットに貫通孔を加工する必要があるが、インゴットの全長は500mm〜4000mmであり、全長に亘り貫通孔を加工することは時間を要するので工業的に実施するのは困難である。
【0021】
また、溶接用のチャンバー内で溶接トーチにより溶接する方法として、溶接治具を用いて消耗電極を作製する方法がある。
【0022】
図3は、溶接用のチャンバー内で溶接治具を用いてインゴットとスタブとをすみ肉溶接して消耗電極を作製する方法を説明する図であり、(a)は正面図、(b)は右側面図である。なお、同図(a)に示す溶接トーチ7およびチャンバー8について、同図(b)での図示は省略してある。図3(a)に示す、消耗電極の作製に用いる消耗電極作製装置1は、真空雰囲気または不活性ガス雰囲気を維持するチャンバー8と、アークを発生させて溶接を行う溶接トーチ7とを備えている。溶接トーチ7は、上下に昇降および角度の変更が可能である。
【0023】
インゴット2とスタブ3とを溶接する際には、インゴット2とスタブ3とを接合した状態で支持する溶接治具9と、溶接治具9を回転可能に支持する台車6とを用いる。図3(b)に示すように、溶接治具9は、ねじが設けられた芯出し棒9bを備えており、芯出し棒9bを締め付けることによりインゴット2およびスタブ3を保持する。また、図3(a)に示すように、溶接治具9は、ねじが設けられた連結棒9aを備えている。連結棒9aにより、溶接治具9と芯出し棒9bとにより保持されたインゴット2とスタブ3とを接合している。
【0024】
台車6は、溶接治具9を回転可能に支持する溶接治具受け部6bと、車輪6aとを備えている。このため、台車6に載せられた溶接治具9を用いてインゴット2とスタブ3とを接合した状態で支持することにより、溶接治具9の回転に伴い、スタブ3およびインゴット2が回転する。
【0025】
次に、溶接治具9を用いてインゴット2とスタブ3とをすみ肉溶接して消耗電極を作製する方法を説明する。図3(a)に示すように、インゴット2およびスタブ3を接合した状態で溶接治具9により保持し、溶接治具9を載せた台車6をチャンバー8に設置する。その後、チャンバー8内を真空雰囲気または不活性ガス雰囲気とし、溶接トーチ7を所定の位置に移動させ、溶接トーチ7によりアーク13を発生させることにより接合部の周囲をすみ肉溶接する。
【0026】
溶接治具を用いた消耗電極の作製方法では、航空機用チタン、チタン合金の場合、インゴットとスタブとをチャンバー外で仮溶接して固定することができないので、溶接治具によりインゴットとスタブとを接合した状態に支持し、インゴットとスタブとをすみ肉溶接する。したがって、前記図3に示す溶接治具を用いてすみ肉溶接をする場合、前述したVAR炉内で溶接する場合に生じるスプラッシュの飛散、スタブの消耗、および溶接部にスタブとインゴットが混合する問題は解決することができるが、以下の問題が生じる。
【0027】
航空機用インゴットは、一般的に、直径300mm〜2000mm、長さ500mm〜4000mmのものが採用されており、その重量は0.5t〜15.0tである。消耗電極作製の段取り作業では、このような重量物であるインゴットを溶接治具により固定する。このため、段取り作業は、作業者の経験に基づく作業にならざるを得ず、作業者の個人技能に依存することから、極めて能率が悪く時間を要する。
【0028】
インゴットとスタブの溶接部の外周には、インゴットとスタブを接合するための連結棒が複数存在し、連結棒はインゴットとスタブとを回転に伴い回転するので、溶接トーチと連結棒が干渉する。溶接作業では、溶接トーチと連結棒との干渉を回避するため、溶接を一旦停止し、溶接トーチを上昇させた後、溶接治具を回転させ、その後、溶接トーチを下降させて外周の一部を溶接するという作業を繰り返し行う必要がある。
【0029】
このため、溶接作業は煩雑となり、時間を要する。さらに、溶接作業において溶接トーチの操作を誤ると、溶接トーチと溶接治具が衝突し溶接装置が破損するばかりでなく、連結棒が溶融してインゴットに付着することによりコンタミネーションを発生させるおそれがある。コンタミネーションの発生は、製品欠陥に結びつくことになる。
【0030】
一般的に、溶接トーチへの冷却水および電力の供給は、上下の昇降および角度の変更を可能にするために、可撓性を有する水冷ケーブルを用いる。水冷ケーブルは内部に電線が挿入されたホースであり、冷却水と電力の供給を行うことができる。また、前述の通り、航空機用のチタンおよびチタン合金の製造では、溶接トーチはタングステン等の高融点金属含まない溶接トーチを用いる必要があり、一般的に、銅または銅合金を電極とした溶接トーチが用いられる。
【0031】
銅または銅合金を電極とした溶接トーチを用いる場合は、溶接トーチの使用寿命を長くするため、大量の冷却水を溶接トーチに供給するので、水冷ケーブルが冷却水の水圧により頻繁に破損する問題がある。
【0032】
以上のように、溶接治具を用いた消耗電極の作製方法では、段取りでの作業時間、すみ肉溶接での作業時間、誤操作による溶接装置破損および製品欠陥の問題、並びに溶接トーチに用いられる水冷ケーブルの水圧破損による問題がある。
【0033】
ここで、水冷ケーブルが水圧により破損する問題に関し、特許文献2では液冷式給電チューブが提案されている。特許文献2で提案される液冷式給電チューブは、内部を冷却液が流れる金属チューブの途中に摺動式ジョイント部を設け、外周面に先端側に向かって漸次拡径するテーパーを施した金属チューブと、内周面にテーパーを施した金属チューブを、ジョイント部で冷却水の水圧を利用して嵌合することにより、耐熱性、耐圧性、可撓性および導電性を有するとしている。
【0034】
特許文献2で提案される液冷式給電チューブを、前記図3で示した溶接治具を用いた消耗電極の作製方法に適用すれば、水冷ケーブルが水圧により破損する問題は解決することができるが、前述した段取り作業およびすみ肉溶接での問題は解決することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0035】
【特許文献1】特開昭60−165328号公報
【特許文献2】特開2006−289473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0036】
前述の通り、航空機用のチタンおよびチタン合金の製造において、溶接治具を用いた再溶解用の消耗電極の作製方法では、段取りでの作業時間、すみ肉溶接での作業時間、並びに誤操作による設備破損および製品欠陥の問題がある。
【0037】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、段取りでの作業時間を短縮でき、さらにすみ肉溶接において作業時間を短縮できるとともに、誤操作を抑制できることにより、設備破損および製品欠陥の発生を防止することが可能である消耗電極作製方法および消耗電極作製装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0038】
上記問題を解決するため、種々の試験を行い、鋭意検討を重ねた結果、インゴットとスタブの接合面に押しつけ力を発生させながら、インゴットとスタブとを回転可能に支持することにより、溶接部の外周に連結棒を配置することなく、インゴットとスタブとを接合できることを知見した。
【0039】
すなわち、溶接部の外周に連結棒を配置することなく、インゴットとスタブとを回転可能に支持することにより、すみ肉溶接の作業が簡素化するので、すみ肉溶接の作業に要する時間を短縮できるとともに、誤操作を抑制できることにより、溶接装置の破損の低減、さらに製品欠陥の発生を防止することが可能である。
【0040】
インゴットとスタブとを回転可能に支持する場合、インゴットの溶接しない側の端面(以下、「インゴット非溶接端面」ともいう)と、スタブの溶接しない側の端面(以下、「スタブ非溶接端面」ともいう)とに軸力を付与して、押しつけ力を発生させることにより、設備を簡素にできることを知見した。芯出し棒によりインゴットとスタブを締め付けて、外周面へ力を付与して押しつけ力を発生させることなく、押しつけ力を発生させるからである。
【0041】
さらに、インゴット非溶接端面とスタブ非溶接端面とに軸力を付与する場合、インゴット非溶接端面に軸力を付与するインゴット側心押台と、スタブ非溶接端面に軸力を付与するスタブ側心押台とを用い、インゴットとスタブとを回転可能に支持することにより、設備を簡素にできるとともに、消耗電極作製の段取り作業に要する時間を短縮できることを知見した。インゴット側心押台およびスタブ側心押台を用いてスタブとインゴットを支持することにより、芯出し棒の締め付けに要する時間を短縮できるからである。
【0042】
本発明は、上記の知見に基づいて完成したものであり、下記(1)〜(4)の消耗電極作製方法、および(5)〜(8)の消耗電極作製装置を要旨としている。
【0043】
(1)消耗電極式アーク溶解法により溶解されたインゴットの端面と電極保持用のスタブの端面とを、溶接トーチを用い、不活性ガス雰囲気または真空雰囲気で、溶接して再溶解用の消耗電極とする消耗電極作製方法であって、前記スタブにおける溶接する側の端面におけるスタブ直径が、前記インゴットにおける溶接する側の端面におけるインゴット直径よりも小さく、前記インゴットの軸を略水平にした状態で、前記インゴットと前記スタブの接合面に押しつけ力を発生させながら、前記インゴットと前記スタブとを回転可能に支持し、前記インゴットと前記スタブの接合部の周囲をすみ肉溶接することを特徴とする消耗電極作製方法である。
【0044】
(2)上記(1)に記載の消耗電極作製方法において、前記スタブ直径を、下記(1)式で規定される直径とするのが好ましい。
B×0.1≦A≦B−100 ・・・(1)
ただし、前記スタブ直径をA(mm)、前記インゴット直径をB(mm)とする。
【0045】
(3)上記(1)または(2)に記載の消耗電極作製方法において、前記押しつけ力の値を、前記スタブ重量の1〜1000倍とするのが好ましい。
【0046】
(4)上記(1)〜(3)に記載の消耗電極作製方法では、消耗電極式アーク溶解法により溶解されたインゴットに替えて、スポンジ状チタンを押し固めたコンパクトを円柱状に組み合わせたコンパクト群とすることにより、1次溶解用の消耗電極を作製することができる。
【0047】
(5)消耗電極式アーク溶解法により溶解されたインゴットの端面と電極保持用のスタブの端面とを、溶接して再溶解用の消耗電極を作製する消耗電極作製装置であって、前記インゴットの軸を略水平にした状態で、前記インゴットと前記スタブの接合面に押しつけ力を発生させながら、前記インゴットと前記スタブとを回転可能に支持する支持機構と、不活性ガス雰囲気または真空雰囲気を維持し、前記支持機構に支持されたインゴットおよびスタブを収容するチャンバーと、上下に昇降および角度の変更が可能な溶接トーチとを有すること特徴とする消耗電極作製装置である。
【0048】
(6)上記(5)に記載の消耗電極作製装置において、前記インゴットにおける溶接しない側の端面と、前記スタブにおける溶接しない側の端面とに軸力を付与することにより、前記押しつけ力を発生させるのが好ましい。
【0049】
(7)上記(6)に記載の消耗電極作製装置において、前記支持機構は、前記インゴット端面に前記軸力を付与するインゴット側心押台と、前記スタブ端面に前記軸力を付与するスタブ側心押台とを含んで構成するのが好ましい。
【0050】
(8)上記(5)に記載の消耗電極作製装置において、前記溶接トーチとして、内部を冷却液が流れる金属チューブからなり、且つ金属チューブ途中に少なくとも一つの摺動式ジョイント部を有する屈曲可能な液冷式給電チューブであって、前記摺動式ジョイント部は、外筒部内に内筒部が摺動可能に嵌合する二重筒部分を有しており、前記内筒部の外周面の少なくとも軸方向一部には先端側へ向かって漸次拡径する外面テーパー部が形成されており、前記外筒部の内周面の少なくとも軸方向一部には前記外面テーパー部に密接するように同方向へ傾斜した内面テーパー部が形成されている液冷式給電チューブを用いるのが好ましい。
【0051】
本発明において、「インゴットの軸を略水平にした状態」とは、インゴット軸がすみ肉溶接に支障なく水平に維持された状態であって、その軸の傾斜が水平面に対して5°以内を許容することを意味する。
【発明の効果】
【0052】
本発明の消耗電極作製方法によれば、インゴットとスタブの接合面に押しつけ力を発生させながら、インゴットとスタブとを回転可能に支持することにより、溶接部の外周に連結棒を存在させることなく、インゴットとスタブとを接合できる。これにより、すみ肉溶接の作業に要する時間を短縮できるとともに、すみ肉溶接の操作作業が簡易となり誤操作を抑制でき、溶接装置の破損および製品欠陥の発生を防止することが可能である。
【0053】
本発明の消耗電極作製装置によれば、インゴットとスタブの接合面に押しつけ力を発生させながら、インゴットとスタブとを回転可能に支持する支持機構を有する。これにより、溶接部の外周に連結棒を存在させないので、すみ肉溶接の作業に要する時間を短縮できるとともに、すみ肉溶接の操作作業が簡易となり誤操作を抑制でき、溶接装置の破損および製品欠陥の発生を防止することが可能である。
【0054】
さらに、支持機構をインゴット非溶接端面に軸力を付与するインゴット側心押台と、スタブ非溶接端面に軸力を付与するスタブ側心押台とを含んで構成することにより、消耗電極作製の段取り作業に要する時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】VAR法により金属を精製する状態を説明するとともに、電極部直径とスタブ直径との関係を説明する図である。
【図2】VAR炉内でインゴットとスタブを溶接し、航空機用のチタンおよびチタン合金の製造に用いる消耗電極を作製する手順を説明する図である。
【図3】溶接用のチャンバー内で溶接治具を用いてインゴットとスタブとをすみ肉溶接して消耗電極を作製する方法を説明する図であり、(a)は正面図、(b)は右側面図である。
【図4】本発明の消耗電極作製装置の構成例とそれを用いた消耗電極を作製する方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下に、本発明の消耗電極作製装置の構成例を示すとともに、それに用いられる消耗電極作製方法を図面に基づいて説明する。
【0057】
[消耗電極作製装置の構成]
図4は、本発明の消耗電極作製装置の構成例とそれを用いた消耗電極を作製する方法を説明する図である。同図に示す消耗電極作製装置1は、真空雰囲気または不活性ガス雰囲気を維持するチャンバー8と、アークを発生させて溶接を行う溶接トーチ7とを備えている。溶接トーチ7は、上下に昇降および角度の変更が可能である。
【0058】
消耗電極作製装置1は、インゴット2とスタブ3の接合面に押しつけ力を発生させながら、インゴット2とスタブ3とを回転可能に支持する支持機構としてインゴット側心押台4およびスタブ側心押台5を備えている。インゴット側心押台4およびスタブ側心押台5は、水平方向への移動を可能とする車輪6aを備えた台車6上に設置されている。
【0059】
本発明の消耗電極作製装置は、インゴット2の軸を略水平にした状態で、インゴット2とスタブ3の接合面に押しつけ力を発生させながら、インゴット2とスタブ3とを回転可能に支持する支持機構を有する必要がある。
【0060】
インゴット2の軸を垂直にした状態で、インゴット2とスタブ3とを回転可能に支持すると、チャンバー8の高さは、全長が0.5m〜4.0mあるインゴットより高くしなければならない。この場合、地下ピットの掘削や高層構造を用いることとなるので、装置の構造が煩雑となり設備コストが問題となる。このため、インゴット2の軸を略水平にした状態で、インゴット2とスタブ3とを支持する装置構成が、設備コストを抑えることができる。
【0061】
また、インゴット2とスタブ3の接合面に押しつけ力を発生させながら、インゴット2とスタブ3とを支持するのは、溶接時の熱によりインゴット2およびスタブ3において、熱変形による溶接歪みの発生、溶接結合力の低下を防止するためである。さらに、インゴット2とスタブ3とを回転可能に支持するのは、すみ肉溶接作業中に溶接トーチ7を上昇および下降させることなく、インゴット2とスタブ3の溶接を可能にするためである。
【0062】
本発明の消耗電極作製装置は、不活性ガス雰囲気または真空雰囲気を維持し、支持機構に支持されたインゴット2およびスタブ3を収容するチャンバー8を有する必要がある。前述の通り、航空機用のチタンおよびチタン合金の製造において、消耗電極の作製にともなうチタンインゴットの酸化および窒化反応を防止するためである。
【0063】
本発明の消耗電極作製装置は、上下に昇降および角度の変更が可能な溶接トーチ7を有する必要がある。溶接トーチ7の角度変更を可能にすると、形成されるビード幅に制限がある場合に、溶接操作性に優れ溶接強度を確保することができる。また、溶接トーチ7を上下に昇降できることにより、溶接トーチとスタブの間隔を調整して、種々の径のインゴットとスタブを溶接できるからである。
【0064】
本発明の消耗電極作製装置は、上述の通り、インゴットとスタブの接合面に押しつけ力を発生させながら、インゴットとスタブとを回転可能に支持する支持機構を有する。このため、溶接部の外周に連結棒を存在させないので、すみ肉溶接の作業に要する時間を短縮できるとともに、すみ肉溶接の操作作業が簡易となり誤操作を抑制でき、溶接装置の破損および製品欠陥の発生を防止することが可能である。
【0065】
本発明の消耗電極作製装置は、支持機構として、インゴット2のインゴット非溶接端面と、スタブ3のスタブ非溶接端面とに軸力を付与することにより、押しつけ力を発生させるのが好ましい。インゴット2およびスタブ3の外周面に力を付与することにより押しつけ力を発生させる場合に比べ、インゴット非溶接端面およびスタブ非溶接端面に力を付与することにより押しつけ力を発生させる方が、設備が簡素になるからである。
【0066】
インゴット非溶接端面およびスタブ非溶接端面に軸力を付与することにより、押しつけ力を発生させる支持機構は、例えば、チャックもしくは心押台を用いた支持機構、または一方にチャックを用い、他方に心押台を用いた支持機構が該当する。
【0067】
軸力は、インゴット非溶接端面およびスタブ非溶接端面の両方に付与してもよく、インゴット非溶接端面またはスタブ非溶接端面の一方に付与して、他方の非溶接端面は支持するのみでもよい。また、軸力は油圧により心押台等を移動させてインゴット非溶接端面またはスタブ非溶接端面に付与してもよく、ねじをトルクレンチ等で締め込むことにより心押台等を移動させてインゴット非溶接端面またはスタブ非溶接端面に付与してもよい。その他、軸力の付与は炉内で使用できるものであれば形式は問わない。
【0068】
本発明の消耗電極作製装置は、支持機構に、インゴット非溶接端面に軸力を付与するインゴット側心押台4と、スタブ非溶接端面に軸力を付与するスタブ側心押台5とを含んで構成するのが好ましい。支持機構にインゴット側心押台4とスタブ側心押台5とを含んで構成することにより、設備を簡素にできるとともに、芯出し棒の締め付けに要する時間を短縮できるので、消耗電極作製の段取り作業に要する時間を短縮できるからである。
【0069】
本発明の消耗電極作製装置は、溶接トーチとして、内部を冷却液が流れる金属チューブからなり、且つ金属チューブ途中に少なくとも一つの摺動式ジョイント部を有する屈曲可能な液冷式給電チューブであって、摺動式ジョイント部は、外筒部内に内筒部が摺動可能に嵌合する二重筒部分を有しており、内筒部の外周面の少なくとも軸方向一部には先端側へ向かって漸次拡径する外面テーパー部が形成されており、外筒部の内周面の少なくとも軸方向一部には前記外面テーパー部に密接するように同方向へ傾斜した内面テーパー部が形成されている液冷式給電チューブを用いるのが好ましい。
【0070】
液冷式給電チューブを用いることにより、前述の通り、溶接トーチにタングステン等の高融点金属含まない銅または銅合金からなる溶接トーチを用いた場合でも、水冷ケーブルが水圧により破損する問題を解決することができるので、溶接トーチに大量の冷却水および大電流を供給することができるからである。
【0071】
[消耗電極作製方法]
次に、本発明の消耗電極作製装置を用いたその作製方法を、前記図4に基づいて説明する。
【0072】
本発明の消耗電極作製方法では、スタブ3における溶接する側の端面におけるスタブ直径が、インゴットにおける溶接する側の端面におけるインゴット直径よりも小さくする必要がある。前述の通り、VAR法による金属精製を行う際に終点判定が容易になるので、スタブ直径は電極部直径より小さいのが好ましいからである。
【0073】
本発明の消耗電極作製方法では、インゴット2とスタブ3の接合面に押しつけ力を発生させながら、インゴット2とスタブ3とを回転可能に支持し、チャンバー8内に収容する。その状態で、チャンバー8内を不活性ガス雰囲気または真空雰囲気とした後、溶接トーチ7を上下に昇降および角度を変更して所定の位置に移動させ、その後、溶接トーチ7によりアーク13を発生させることにより、インゴット2とスタブ3を回転させながら、接合部の周囲をすみ肉溶接する。
【0074】
本発明の消耗電極作製方法は、上述の通り、インゴット2とスタブ3の接合面に押しつけ力を発生させながら、インゴット2とスタブ3とを回転可能に支持することにより、溶接部の外周に連結棒を存在させることなく、インゴット2とスタブ3とを接合できる。これにより、すみ肉溶接の作業に要する時間を短縮できるとともに、すみ肉溶接の操作作業が簡易となり誤操作を抑制でき、溶接装置の破損および製品欠陥の発生を防止することが可能である。
【0075】
本発明の消耗電極作製方法では、スタブ直径を、下記(1)式で規定される直径とするのが好ましい。
B×0.1≦A≦B−100 ・・・(1)
ただし、スタブ直径をA(mm)、インゴット直径をB(mm)とする。
【0076】
インゴット直径B(mm)とスタブ直径A(mm)の差が100mm未満であると、インゴットとスタブをすみ肉溶接する際に、インゴット側の端面にビードを形成できる幅が制限され溶接作業が困難となる。さらに、作製した消耗電極を用いてVAR法による金属精製を行う際にも、温度上昇による電極部上面の色の変化の確認が困難となる。一方、スタブ直径A(mm)がインゴット直径B(mm)の10%未満であると、インゴットを保持する際に強度が問題となるからである。
【0077】
本発明の消耗電極作製方法では、押しつけ力の値は、スタブ重量の1〜1000倍とするのが好ましい。押しつけ力の値をスタブ重量の1倍未満であると、溶接時の発熱に起因する溶接歪みにより、溶接部の結合力が不十分となる事態を引き起こすおそれがある。一方、押しつけ力をスタブ重量の1000倍を超えた値にするには、押しつけ力を付与する装置の剛性を高める必要があり、装置の導入コストが高騰するからである。
【0078】
本発明の消耗電極作製方法では、消耗電極式アーク溶解法により溶解されたインゴットに替えて、スポンジ状チタンを押し固めたコンパクトを円柱状に組み合わせたコンパクト群とすることにより、1次溶解用の消耗電極を作製することができる。2次溶解用および3次溶解用の消耗電極作製方法により、1次溶解用の消耗電極を作製することができるので、作業者の負担を軽減することができるとともに、作業効率を高めることができる。
【0079】
本発明の消耗電極作製方法では、すみ肉溶接の際の、溶接用トーチの軸線とインゴットの端面がなす角度は20°〜70°が好ましい。溶接用トーチの軸線とインゴットの端面がなす角度が20°未満あるいは70°を超えると、インゴットの端面またはスタブの外周面のいずれかに偏ってビードが形成されるので、インゴットとスタブの溶接強度が不十分となるからである。
【0080】
本発明の消耗電極作製方法では、すみ肉溶接は、スタブがインゴットを保持できる強度を確保できればよく、例えば、JISに規定する連続すみ肉溶接により行っても、断続すみ肉溶接により行ってもよい。
【実施例】
【0081】
本発明の消耗電極作製方法および消耗電極作製装置の効果を確認するため、下記の試験を行った。
【0082】
本発明例として、前記図4に示す消耗電極作製装置を用い、本発明の消耗電極作製方法により消耗電極を作製した。比較例として、前記図3に示す消耗電極作製装置を用い、溶接治具によりインゴットとスタブとを接合した状態で、インゴットとスタブとをすみ肉溶接して消耗電極を作製した。さらに、本発明例および比較例ともに、前記図1に示すVAR炉に作製した消耗電極を用いて、VAR法により金属溶解を行った。
【0083】
本発明例では、インゴット側心押台とスタブ側心押台により、インゴットおよびスタブの端面に50kNの軸力を付与し、インゴットとスタブの接合面に押しつけ力を発生させた。
【0084】
本発明例および比較例ともに、インゴットは直径750mm、長さ2510mm、重量5tのものを用い、スタブは直径400mm、長さ800mm、重量450kgのものを用いた。また、本発明例および比較例ともに、すみ肉溶接はチャンバーをアルゴン雰囲気にして行い、出力50kW相当の銅電極プラズマ溶接トーチを用い、接合部の周囲を連続すみ肉溶接(JIS Z3001−2)した。
【0085】
本発明例では、段取り作業に1時間を要し、すみ肉溶接の作業に1時間を要した。比較例では、段取り作業に4時間を要し、溶接作業に3時間を要した。したがって、本発明の消耗電極作製方法および消耗電極作製装置により、段取り作業に要する時間を4分の1に短縮できるとともに、すみ肉溶接の作業に要する時間を3分の1に短縮できることが確認できた。
【0086】
作製した消耗電極を用いたVAR法による金属精製では、本発明例の消耗電極を用いた場合でも、比較例の消耗電極を用いた場合と同等品質のインゴットを得ることができた。このため、本発明の消耗電極作製方法および消耗電極作製装置を、航空機用のチタンおよびチタン合金の製造に適用できることが確認できた。
【0087】
これらより、本発明の消耗電極作製方法および消耗電極作製装置により、航空機用のチタンおよびチタン合金の製造に用いることができる消耗電極を、段取り作業およびすみ肉溶接の作業に要する時間を短縮して作製できることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の消耗電極作製方法によれば、インゴットとスタブの接合面に押しつけ力を発生させながら、インゴットとスタブとを回転可能に支持することにより、溶接部の外周に連結棒を存在させることなく、インゴットとスタブとを接合できる。これにより、すみ肉溶接の作業に要する時間を短縮できるとともに、すみ肉溶接の操作作業が簡易となり誤操作を抑制でき、溶接装置の破損および製品欠陥の発生を防止することが可能である。
【0089】
本発明の消耗電極作製装置によれば、インゴットとスタブの接合面に押しつけ力を発生させながら、インゴットとスタブとを回転可能に支持する支持機構を有する。これにより、溶接部の外周に連結棒を存在させないので、すみ肉溶接の作業に要する時間を短縮できるとともに、すみ肉溶接の操作作業が簡易となり誤操作を抑制でき、溶接装置の破損および製品欠陥の発生を防止することが可能である。
【0090】
さらに、支持機構をインゴット非溶接端面に軸力を付与するインゴット側心押台と、スタブ非溶接端面に軸力を付与するスタブ側心押台とを含んで構成することにより、消耗電極作製の段取り作業に要する時間を短縮できる。
【0091】
このため、本発明の消耗電極作製方法および消耗電極作製装置を、航空機用のチタンおよびチタン合金の製造に適用することにより、消耗電極の作製に要する時間を短縮できるとともに、製品欠陥の発生を減らし、歩留りを向上させることができ、チタンやチタン合金の製造効率を高めることができる。
【符号の説明】
【0092】
1.消耗電極作製装置、 2.インゴット、 3.スタブ、
4.インゴット側心押台、 5.スタブ側心押台、 6.台車、 6a.車輪、
6b.溶接治具受け部、 7.溶接トーチ、 8.チャンバー、 9.溶接治具、
9a.連結棒、 9b.芯出し棒、 10.VAR炉、 11.消耗電極、
11a.電極部、 11b.スタブ、 12.銅製坩堝、 13.アーク、
14.昇降装置、 15.真空吸引口、 16.VAR炉内チャンバー、
dp.電極部直径、 ds.スタブ直径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消耗電極式アーク溶解法により溶解されたインゴットの端面と電極保持用のスタブの端面とを、溶接トーチを用い、不活性ガス雰囲気または真空雰囲気で、溶接して再溶解用の消耗電極とする消耗電極作製方法であって、
前記スタブにおける溶接する側の端面におけるスタブ直径が、前記インゴットにおける溶接する側の端面におけるインゴット直径よりも小さく、
前記インゴットの軸を略水平にした状態で、前記インゴットと前記スタブの接合面に押しつけ力を発生させながら、前記インゴットと前記スタブとを回転可能に支持し、
前記インゴットと前記スタブの接合部の周囲をすみ肉溶接することを特徴とする消耗電極作製方法。
【請求項2】
前記スタブ直径を、下記(1)式で規定される直径とすることを特徴とする請求項1に記載の消耗電極作製方法。
B×0.1≦A≦B−100 ・・・(1)
ただし、前記スタブ直径をA(mm)、前記インゴット直径をB(mm)とする。
【請求項3】
前記押しつけ力の値を、前記スタブ重量の1〜1000倍とすることを特徴とする請求項1または2に記載の消耗電極作製方法。
【請求項4】
消耗電極式アーク溶解法により溶解されたインゴットに替えて、スポンジ状チタンを押し固めたコンパクトを円柱状に組み合わせたコンパクト群とすることにより、1次溶解用の消耗電極を作製することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の消耗電極作製方法。
【請求項5】
消耗電極式アーク溶解法により溶解されたインゴットの端面と電極保持用のスタブの端面とを、溶接して再溶解用の消耗電極を作製する消耗電極作製装置であって、
前記インゴットの軸を略水平にした状態で、前記インゴットと前記スタブの接合面に押しつけ力を発生させながら、前記インゴットと前記スタブとを回転可能に支持する支持機構と、
不活性ガス雰囲気または真空雰囲気を維持し、前記支持機構に支持されたインゴットおよびスタブを収容するチャンバーと、
上下に昇降および角度の変更が可能な溶接トーチとを有すること特徴とする消耗電極作製装置。
【請求項6】
前記支持機構が、前記インゴットにおける溶接しない側の端面と、前記スタブにおける溶接しない側の端面とに軸力を付与することにより、前記押しつけ力を発生させることを特徴とする請求項5に記載の消耗電極作製装置。
【請求項7】
前記支持機構が、前記インゴット端面に前記軸力を付与するインゴット側心押台と、前記スタブ端面に前記軸力を付与するスタブ側心押台とを有することを特徴とする請求項6に記載の消耗電極作製装置。
【請求項8】
前記溶接トーチとして、内部を冷却液が流れる金属チューブからなり、且つ金属チューブ途中に少なくとも一つの摺動式ジョイント部を有する屈曲可能な液冷式給電チューブであって、前記摺動式ジョイント部は、外筒部内に内筒部が摺動可能に嵌合する二重筒部分を有しており、前記内筒部の外周面の少なくとも軸方向一部には先端側へ向かって漸次拡径する外面テーパー部が形成されており、前記外筒部の内周面の少なくとも軸方向一部には前記外面テーパー部に密接するように同方向へ傾斜した内面テーパー部が形成されている液冷式給電チューブを用いることを特徴とする請求項5に記載の消耗電極作製装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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