説明

消臭、抗菌、抗アレルゲン性能を有する繊維製品

【課題】
本発明は、近年の清潔志向の高まりを踏まえ、空気中に浮遊して室内に侵入した花粉アレルゲンや、床から舞い上がるハウスダストのアレルゲンが繊維製品に付着したときに、有効なアレルゲン低減化機能を発現するとともに、優れた消臭・抗菌機能を発揮する繊維製品を提供することを課題とする。
【解決手段】
本発明は、粘土鉱物からなるアレルゲン吸着剤と、
水溶性ヒドラジン誘導体と、多孔質無機物質と、金属酸化物とを含有してなる消臭組成物と、
銀系及び亜鉛系の抗菌剤を含有してなる抗菌組成物とが、
バインダー樹脂により繊維製品の少なくとも一部に付着されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば室内におけるいやな臭い(アンモニア臭、酢酸臭、タバコ臭、腐敗臭)を効率よく除去するのと同時にハウスダストや花粉等のアレルゲンを不活化するようにし、さらに抗菌性能の付与された繊維製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅の高気密化にともない、臭いやハウスダストといわれる塵が室内にこもりやすい構造の住宅になっており、これらの塵がアレルギーを引き起こす原因であるアレルゲンとなり、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎などのアレルギー疾患の症状を多く発症しているといわれている。また、花粉の季節には、扉を開放した時や屋外から人に付着した花粉が、室内に入り込んでアレルギー疾患の症状の原因になるといわれている。また住宅の高気密化によって、室内におけるいやな臭いも室内にこもりやすく、病院や介護施設等における臭いは元より、一般家庭、あるいは自動車、電車、旅客機等の室内空間の臭い等、様々な空間における臭いについて問題とされるようになってきている。
【0003】
アレルゲンには種々なタイプがあり、ダニ(虫体、死骸、抜け殻、糞)、カビ、ペット(毛、フケ)、花粉などがあげられ、アレルギー疾患の主な原因物質として考えられている。これらのアレルゲン対策としては、アレルゲンを室内に入れないようにしたり、入ってしまったアレルゲンを取り除いたり、不活性化する方法が開示されている。
【0004】
例えば特許文献1では、酸化ジルコニウムの無機微粒子化合物、アレルゲン不活化性能のある他の無機化合物、ならびにナノAg微粒子、アミノ酸系界面活性剤を配合し、粒子径が10μm未満の、pHを7.5〜11.5の間に調整した加工剤で繊維製品を加工して、花粉が付着しにくく、また付着したとしても簡単に落ちやすく、残った花粉に対してアレルゲンの不活化が図れる加工剤が提案されている。しかし、この方法では、アレルギー疾患の原因物質や菌には有効ではあるが、消臭能力には劣るものであった。
【0005】
また、特許文献2においては、抗菌・抗ウィルス性、抗アレルゲン性、消臭性の機能材を含有する樹脂塗膜で被覆された建材で、シランカップリング剤によってあらかじめ表面処理されることにより、強固に固着して、長期にわたって抗菌、消臭効果を奏することが可能な技術を開示しているが、繊維製品への加工は無理で消臭能力に満足のいくものではなかった。
【0006】
また、特許文献3において出願人は、室内における、塩基性ガス、酸性ガス、中性ガス、硫黄系ガスのいずれのガスも効率よく除去することのできる消臭布帛に関する技術を開示しているが、アレルゲンの不活化が図れるものではなかった。
【0007】
【特許文献1】特開2006−57212号公報
【特許文献2】特開2008−80210号公報
【特許文献2】特開2009−221621号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の方法でのアレルゲン低減化物質は、そのほとんどがポリフェノールの一種であり、その効果は、認められるものであるが、ポリフェノールは、製造工程で高温の加工工程を通過するときに色の変化があり、効果も減少することから低温で加工せざるをえないものであった。本発明は、空気中に浮遊して室内に侵入した花粉アレルゲンや、床から舞い上がるハウスダストのアレルゲンが繊維製品に付着したときに、有効なアレルゲン低減化機能を発現するとともに、優れた消臭・抗菌機能を発揮する繊維製品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を達成するために、以下の手段を提供する。
【0010】
[1]粘土鉱物からなるアレルゲン吸着剤と、
水溶性ヒドラジン誘導体と、多孔質無機物質と、金属酸化物とを含有してなる消臭組成物と、
銀系及び亜鉛系の抗菌剤を含有してなる抗菌組成物とが、
バインダー樹脂により少なくとも一部に付着していることを特徴とする繊維製品。
【0011】
[2]前記粘土鉱物からなるアレルゲン吸着剤の付着量が0.1〜5.0g/m、前記水溶性ヒドラジン誘導体の付着量が0.1〜5.0g/m、前記多孔質無機物質の付着量が0.1〜5.0g/m、前記金属酸化物の付着量が0.1〜2.8g/m、前記銀系及び亜鉛系の抗菌剤の付着量が0.1〜8.0g/mであることを特徴とする前項1に記載の繊維製品。
【0012】
[3]前記粘土鉱物からなるアレルゲン吸着剤の平均粒径が0.2〜2.5μm、前記多孔質無機物質の平均粒径が10nm〜100μm、前記金属酸化物の平均粒径が10nm〜100μm、前記銀系及び亜鉛系の抗菌剤の平均粒径が2.5μm〜55μmであることを特徴とする前項1または2に記載の繊維製品。
【0013】
[4]前記繊維製品が、セルロース系繊維を含んでいることを特徴とする前項1乃至3のいずれかに記載の繊維製品。
【発明の効果】
【0014】
[1]の発明では、繊維製品に粘土鉱物からなるアレルゲン吸着剤がバインダー樹脂により固着されているので、空気中に浮遊して室内に入り込んだ花粉アレルゲンや、床から舞い上がるハウスダスト等のアレルゲンは、自然対流によって繊維製品に接触し、吸着によって粘土鉱物内の細孔に取り込まれ不活性化することができる。また、水溶性ヒドラジン誘導体がバインダー樹脂に大量に均一に含まれているので、ホルムアルデヒド等の中性ガスの消臭を長期間にわたって十分に行うことができる。さらに、多孔質無機物質を含有しているので、酢酸やアンモニア等の様々な臭気に対して優れた吸着能力を発揮することができ、また、金属酸化物も含有しているので、その強い酸化力で有機物を酸化分解し、酸性ガスや硫黄系ガスの消臭に優れた効果を発揮することができる。全体として各臭気(塩基性ガス、酸性ガス、中性ガス、硫黄系ガス、タバコ臭)に優れた消臭効果を得ることができる。さらに、本発明では、銀系及び亜鉛系の抗菌剤を含有してなる抗菌組成物を繊維製品に固着するので、亜鉛系の抗菌剤により銀の酸化が抑えられ、繊維製品の変色がなく、ブドウ球菌等の雑菌の繁殖を抑制することができる繊維製品とすることができる。
【0015】
[2]の発明では、コストを抑制しつつ、各臭気(塩基性ガス、酸性ガス、中性ガス、硫黄系ガス、タバコ臭)に対する消臭効果と抗菌機能を発現し、また、アレルゲンを効果的に吸着しアレルゲン低減化機能も同時に発揮することができる。
【0016】
[3]の発明では、ザラツキ感のない、繊維製品の風合を生かしたまま、消臭機能とアレルゲン低減化機能と抗菌機能を同時に備えた繊維製品とすることができる。
【0017】
[4]の発明では、繊維製品が、吸水能力のあるセルロース系繊維を含んでいるので、さらにアレルゲン低減化機能が向上し、人が直接肌に触れたときにも心地よい風合の繊維製品とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下本発明をさらに詳しく説明する。室内における繊維製品は多岐に亘っており、例えば、壁紙、カーテン、カーペットや、ソファーや椅子の表皮材、テーブルクロス、ベッドや布団のカバー、シーツや枕カバー、ぬいぐるみ等、多くのものが繊維で作られている。本発明はこれらの繊維製品に、優れた消臭機能とアレルゲン低減化機能と抗菌機能を同時に付与した繊維製品である。
【0019】
本発明に係る繊維製品は、(a)粘土鉱物からなるアレルゲン吸着剤と、(b)消臭組成物と、(c)銀系及び亜鉛系の抗菌剤を含有してなる抗菌組成物とを、バインダー樹脂により繊維製品の少なくとも一部に付着させていることを特徴とするもので、(b)の消臭組成物は、(b−1)水溶性ヒドラジン誘導体と、(b−2)多孔質無機物質と、(b−3)金属酸化物とから構成される。
【0020】
上記構成の繊維製品では、(a)(b)(c)の成分を、繊維製品の少なくとも一部に付着させているので、アレルゲンを不活化し、室内における塩基性ガス(アンモニア、トリメチルアミン等)、酸性ガス(酢酸等)、中性ガス(ホルムアルデヒド等)、硫黄系ガス(硫化水素、メルカプタン類等)の臭気を消臭し、さらに抗菌性能を発揮することができる。
【0021】
(a)粘土鉱物からなるアレルゲン吸着剤としては、ベントナイト、モンモリロナイト、ハイデライト、ヘクトライト、雲母、タルクから選ばれる少なくとも1種を含むアレルゲン吸着剤が好ましい。これらの粘土鉱物は、吸湿性能に優れ、空気中の水分を吸収するのと同様に花粉等のアレルゲンを吸着し粘土鉱物内の細孔にとりこむ。アレルゲン性を有する蛋白質は水に溶ける性質があり、粘土鉱物内の細孔にとりこまれたアレルゲンは不活化されることになる。
【0022】
粘土鉱物からなるアレルゲン吸着剤は、無機系なのでフェノール系のアレルゲン低減化剤と比較し耐熱性に優れ、200℃を超える高温で加工する繊維製品に固着さしても、性能低下することなく、繊維製品を変色させないで加工することができる。
【0023】
粘土鉱物は、保水性に優れ化粧品としてもよく使われるものでもあるが、中でも、モンモリロナイトは、層状ケイ酸塩鉱物の一種に分類される粘土鉱物で、結晶構造はケイ酸四面体層−アルミナ八面体層−ケイ酸四面体層の三層が重なっており、その単位層は厚さ約10Å、広がり0.1〜1μmのアスペクト比の高い板状構造で構成され、何層も重なり合った状態で存在することから、極めて大きな表面積を有し、吸着能に優れ、アレルゲン吸着剤として好適である。また、ベントナイトは、モンモリロナイトを主成分とし、他に石英、雲母、長石、ゼオライト等の鉱物を含み、モンモリロナイトのもつ特異な物性が、そのままベントナイトの物性となっている。
【0024】
粘土鉱物からなるアレルゲン吸着剤の繊維製品への付着量は0.1〜5.0g/mであるのが好ましい。0.1g/mを下回ると、十分なアレルゲン吸着機能のある繊維製品が得られない。また、5.0g/mを超えて塗布しても、徒に塗布量を増やすだけで、塗布量の増加に見合った効果が得られるわけではない。さらに好ましいアレルゲン吸着剤の付着量は、0.5〜4.0g/mである。
【0025】
(b)消臭組成物として、(b−1)水溶性ヒドラジン誘導体が挙げられ、特に限定されるものではないが、例えば、カルボジヒドラジド(分子量が90であり、水100gに対する溶解度が25℃において32gである。)、コハク酸ジヒドラジド(分子量が146であり、水100gに対する溶解度が25℃において33.5gである。)などが挙げられる。中でもカルボジヒドラジドは、ホルムアルデヒド等の中性ガスの消臭に優れた性能を有している点で好ましい。
【0026】
前記水溶性ヒドラジン誘導体の繊維製品への付着量は0.1〜5.0g/mが好ましい。0.1g/mを下回ると、十分な消臭機能のある繊維製品が得られない。また、5.0g/mを超えて塗布しても、徒に塗布量を増やすだけで、塗布量の増加に見合った効果が得られるわけではない。
【0027】
(b−2)多孔質無機物質は、多孔質であるので表面積が非常に大きく、これにより臭気に対して優れた吸着能力を発揮することができる。多孔質無機物質としては、特に限定されるものではないが、例えば活性炭、ゼオライト、シリカゲル、麦飯石等が挙げられる。中でも、酢酸やアンモニア等に対して優れた吸着能を発揮するゼオライトを用いるのが好ましい。また、ゼオライトは白色であるので、繊維製品に付着させたときに色の影響が少なく、好ましく用いることができる。前記多孔質無機物質の繊維製品への付着量は、0.1〜5.0g/mが好ましい。0.1g/mを下回ると、十分な消臭機能のある繊維製品が得られない。また、5.0g/mを超えて塗布しても、徒に塗布量を増やすだけで、塗布量の増加に見合った効果が得られるわけではない。より好ましくは0.5〜4.0g/mがよい。
【0028】
(b−3)金属酸化物としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄等が挙げられ、その強い酸化力で有機物を酸化分解する。前記金属酸化物の繊維製品への付着量は0.1〜2.8g/mであるのが好ましい。付着量が0.1g/mを下回るようでは十分な消臭機能のある繊維製品が得られない。また、2.8g/mを超えて塗布したとしても、徒に塗布量を増やすだけで、塗布量の増加に見合った効果が得られるわけではない。より好ましくは0.2〜2.0g/mがよい。
【0029】
また、前記消臭組成物における各消臭成分の混合比は、特に限定されないが多孔質無機物質100質量部に対して、金属酸化物20〜400質量部、水溶性ヒドラジン誘導体20〜800質量部の範囲とするのが好ましい。
【0030】
(c)銀系及び亜鉛系の抗菌剤を含有してなる抗菌組成物としては、特に限定されるものではないが、例えば、銀系抗菌剤として、銀ゼオライト、銀担持三酸化二硼素、銀担持リン酸ジルコニウム、酸化銀等を挙げることができる。また、亜鉛系抗菌剤としては、酸化亜鉛、亜鉛担持三酸化二硼素等を挙げることができる。銀化合物は、抗菌効果が大きく人体への毒性が低いことから従来から好ましく使用されているが、銀系抗菌剤のみでは、繊維製品が変色することがあり、亜鉛系抗菌剤と併用することにより、変色を抑えることができる。銀系抗菌剤と亜鉛系抗菌剤の配合比率としては1/30〜1/10が銀の酸化発色を抑えることから好ましい。さらに好ましい配合比率は、1/25〜1/15がよい。また、銀系及び亜鉛系の抗菌剤の繊維製品への付着量は0.1〜8.0g/mが好ましい。付着量が0.1g/m未満では十分な抗菌機能のある繊維製品が得られない。また、また、8.0g/mを超えても大きな抗菌性能の向上はなく、徒にコストを増大することになり好ましくない。より好ましくは0.5〜5.0g/mがよい。
【0031】
バインダー樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ樹脂、アクリルシリコン系樹脂、グリオキザール樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ブタジエン樹脂、メラミン樹脂、エチレンー酢酸ビニル共重合体樹脂、イソブチレン無水マレイン酸共重合体樹脂等を挙げることができる。これら樹脂を2種類以上混合してバインダー樹脂としてもよい。なかでも、アクリル系樹脂はアレルゲン吸着剤との混和性の良さから好適である。
【0032】
本発明において、アレルゲン吸着剤と消臭組成物と抗菌組成物とを繊維製品に担持するには、予めアレルゲン吸着剤と多孔質無機物質と、金属酸化物と、抗菌剤を水に分散せしめておき、バインダー樹脂を配合した後、水溶性ヒドラジン誘導体を溶解せしめて水系樹脂エマルジョン液を作成する。次に、こうして作られた水系樹脂エマルジョン液を繊維製品に、スプレー法や、ロールコーター法、プリント加工等で塗布し、150〜200℃で乾燥してもよいし、繊維製品を水系樹脂エマルジョン液に浸漬し、絞ったあと乾燥して担持させてもよい。例えば、カーペットのようなパイルのある繊維製品については、スプレー法や、プリント加工等でパイルの表面に水系樹脂エマルジョン液を塗布し乾燥するのが効果的である。また、シーツやカーテンのように厚みの薄い繊維製品については、水系樹脂エマルジョン液に浸漬し、絞ったあと乾燥して繊維製品全体に、アレルゲン吸着剤と消臭組成物と抗菌組成物とを担持させるのが好ましい。
【0033】
また、本発明では、前記水系樹脂エマルジョン液に難燃剤や分散剤、増粘剤等の各種添加剤を含有せしめてもよい。難燃剤を含有せしめる場合は、バインダー樹脂100質量部に対して難燃剤を50〜150質量部含有せしめればよい。また分散剤として、非イオン系界面活性剤をアレルゲン吸着剤と消臭組成物と抗菌組成物の0.1〜1.0重量%加えるのが好適である。非イオン系界面活性剤が0.1〜1.0重量%加えられると、加工中にアレルゲン吸着剤や消臭剤、抗菌剤が容器の底に沈殿することが防止され、また、長時間放置しても沈殿することなく良好な組成物がえられる。具体的には、非イオン系界面活性剤としては、脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等が挙げられる。添加剤が0.1重量%より少なければ、薬剤安定性が悪くなり、1.0重量%を超えると銀の影響によって繊維製品が変色するようになり好ましくない。
【0034】
本発明の繊維製品の繊維としては特に限定されるものではなく、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリプロピレン繊維、アクリル繊維、レ−ヨン繊維等の繊維からなるもの等を使用でき、その他麻、綿、羊毛等の天然繊維からなるもの等も使用できるが、特にセルロース系繊維を含んでいるのがより好ましい。セルロース系繊維は、吸湿性に優れていることから、人が直接接触するシーツ等の繊維製品に使用すると、アレルゲン吸着剤の補助的な役割をなして、アレルゲン低減化の効果を向上することができる。
【0035】
次ぎに実施例により、本発明を具体的に説明する。なお実施例における各アレルゲン低減性能(不活性化性能)の評価は次のように行った。
【0036】
<アレルゲン低減性能試験>
アレルゲン溶液(0.5%DP溶液)1.26mL中に加工生地(1.5cm×1.5cm)を浸し、35℃で3時間経過後のアレルゲン量を、マイティーチェッカー(住友エンビロサイエンス社製)を用い測定した。発色の様子を目視で確認し、下記の4段階で評価し、評価「−」「+−」を合格とした。
(判定基準)
「−」・・アレルゲンの汚染はない。
「+−」・・ややアレルゲンに汚染されている程度である。
「+」・・アレルゲンに汚染されている。
「++」・・非常にアレルゲンに汚染されている。
【0037】
<消臭試験>
(アンモニア消臭性能)
試験片(10cm×7.5cm)を内容量2リットルの袋内に入れた後、袋内において濃度が10ppmとなるようにアンモニアガスを注入し、1時間経過後にアンモニアガスの残存濃度を測定し、この測定値よりアンモニアガスを除去した総量を算出し、これよりアンモニアガスの除去率(%)を算出した。
【0038】
(硫化水素消臭性能)
アンモニアガスに代えて硫化水素ガスを用いて内容量500ミリリットルの袋内において濃度が10ppmとなるように注入した以外は、上記アンモニア消臭性能測定と同様にして硫化水素の除去率(%)を算出した。
【0039】
(ホルムアルデヒド消臭性能)
アンモニアガスに代えてホルムアルデヒドを用いて袋内において濃度が10ppmとなるように注入した以外は、上記アンモニア消臭性能測定と同様にしてホルムアルデヒドの除去率(%)を算出した。
【0040】
(酢酸消臭性能)
アンモニアガスに代えて酢酸ガスを用いて袋内において濃度が10ppmとなるように注入した以外は、上記アンモニア消臭性能測定と同様にして硫化水素の除去率(%)を算出した。
【0041】
そして、除去率が95%以上であるものを「◎」、除去率が80%以上95%未満であるものを「○」、除去率が70%以上80%未満であるものを「△」、除去率が70%未満であるものを「×」と評価し表1のような結果を得た。
【0042】
<抗菌性能測定>
繊維製品の抗菌試験方法JIS L1902統一法に準拠して抗菌性能を評価した。試験菌体としては黄色ブドウ球菌を用いた。減菌試験布に前記試験菌体を注加し、18時間培養した後の生菌数を計測し、殖菌数に対する生菌数を求め、次ぎの基準に従った。即ちlog(B/A)>1.5の条件下log(B/C)を静菌活性値とし、これが2.2以上である場合を合格とした。但し、Aは無加工品の接種直後分散回収した菌数、Bは無加工品の18時間培養後分散回収した菌数、Cは加工品の18時間培養後分散回収した菌数をそれぞれ表す。実施例1、6と比較例5についてのみ抗菌性能を評価した。
【実施例】
【0043】
<実施例1>
繊維製品としてシーツ(綿100%)を用意した。また、平均粒径が100nmのベントナイト4.7質量部と、平均粒径が10μmのゼオライト5質量部と、平均粒径が10μmの酸化亜鉛2.5質量部、平均粒径10μmの酸化銀1質量部と平均粒径10μmの酸化亜鉛15質量部からなる抗菌剤を7.25質量部を1000質量部の水に加えた後、攪拌機を用いて攪拌を行なうことにより、各粒子が均一に分散された水性液を得た。この混合した水性液にアクリル樹脂12質量部を加えて、攪拌機で攪拌を行ない、さらにカルボジヒドラジド(分子量:90)5質量部を添加攪拌して溶解せしめることによって、水系樹脂エマルジョン液を得た。次に、該水系樹脂エマルジョン液にシーツを浸漬し、マングルで絞り、160℃5分間乾燥させて、消臭・抗菌・抗アレルゲン機能を発現するシーツを作成した。
【0044】
各成分のシーツへの付着量は、ベントナイト0.53g/m、ゼオライト0.56g/m、酸化亜鉛0.28g/m、抗菌剤0.81g/m、カルボジヒドラジド0.56g/mであった。こうして得られたシーツの、アレルゲン低減性能は、「−」の評価であった。また、各種ガスに対する消臭試験と抗菌性能測定を行い、その評価を表1に示した。
【0045】
<実施例2〜11>
水系樹脂エマルジョン液の組成を表1に示す組成にすると共に、繊維製品への各成分の付着量を表1に示す条件に設定した以外は実施例1と同様にして消臭・抗菌・抗アレルゲン機能を発現する繊維製品を作成した。アレルゲン低減性能と、各種ガスに対する消臭試験と、抗菌性能測定の結果を表1に示した。
【0046】
<比較例1〜10>
水系樹脂エマルジョン液の組成を表2に示す組成にすると共に、繊維製品への各成分の付着量を表2に示す条件に設定した以外は実施例1と同様にして消臭・抗菌・抗アレルゲン機能を発現する繊維製品を作成した。アレルゲン低減性能と、各種ガスに対する消臭試験と、抗菌性能測定の結果を表2に示した。
【0047】
なお、比較例8では、セバシン酸ジヒドラジド(分子量230)は、非水溶性であるので、水系樹脂エマルジョン液中に(溶質ではなく)分散質として含有されてザラツキ感のあるものであった。また、比較例9では、アレルゲン低減化剤として植物性のアレルゲン低減化剤(有限会社アルカディア社製SC−DUSTROY)4.7質量部とした以外は、実施例1と同様にしてシーツを得ているが、シーツの色が少し褐色に変化していた。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【0050】
表1、表2から明らかなように、この発明に係る実施例1〜11の繊維製品は、塩基性ガス(アンモニア)、酸性ガス(酢酸)、中性ガス(ホルムアルデヒド)、硫黄系ガス(硫化水素)のいずれの種類の臭気ガスにも優れた消臭効果と、アレルゲン低減化機能を発揮することを確認することができた。さらに、実施例1、6と比較例5の抗菌性能の評価から、この発明に係る実施例に抗菌性能のあることを確認することができた。また、分子量150を超えるヒドラジン誘導体であるセバシン酸ジヒドラジドを付与せしめた比較例8では、ホルムアルデヒドの消臭能力が不十分でざらつき感があった。植物性のアレルゲン低減化剤を付与した比較例9では、シーツの色が褐色に変色し商品にならなかった。また、ゼオライトの粒径の大きな比較例10では、ざらつき感があり、好ましい風合ではなかった。(尚、風合評価については、目視及び手触り感で評価した。)
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の技術は、花粉等のアレルゲン等を不活性化し、多くの臭気を消し、抗菌性能もあるので、例えば、壁紙、カーテン、カーペットや、ソファーや椅子、テーブルクロス、ベッド、布団、シーツや枕カバー、ぬいぐるみ等、多くの繊維製品に利用することができ、さらには繊維製品に限らず、家電製品等のパッケージ、インテリア用小物、家具等にも広く利用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘土鉱物からなるアレルゲン吸着剤と、
水溶性ヒドラジン誘導体と、多孔質無機物質と、金属酸化物とを含有してなる消臭組成物と、
銀系及び亜鉛系の抗菌剤を含有してなる抗菌組成物とが、
バインダー樹脂により少なくとも一部に付着していることを特徴とする繊維製品。
【請求項2】
前記粘土鉱物からなるアレルゲン吸着剤の付着量が0.1〜5.0g/m、前記水溶性ヒドラジン誘導体の付着量が0.1〜5.0g/m、前記多孔質無機物質の付着量が0.1〜5.0g/m、前記金属酸化物の付着量が0.1〜2.8g/m、前記銀系及び亜鉛系の抗菌剤の付着量が0.1〜8.0g/mであることを特徴とする請求項1に記載の繊維製品。
【請求項3】
前記粘土鉱物からなるアレルゲン吸着剤の平均粒径が0.2〜2.5μm、前記多孔質無機物質の平均粒径が10nm〜100μm、前記金属酸化物の平均粒径が10nm〜100μm、前記銀系及び亜鉛系の抗菌剤の平均粒径が2.5μm〜55μmであることを特徴とする請求項1または2に記載の繊維製品。
【請求項4】
前記繊維製品が、セルロース系繊維を含んでいることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の繊維製品。

【公開番号】特開2011−231432(P2011−231432A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102961(P2010−102961)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(390014487)住江織物株式会社 (294)
【Fターム(参考)】